IPEの果樹園2008

今週のReview

1/7-1/12

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

アイオワ, 大統領の資格, スティグリッツ, アメリカという債務国の国際管理, 日本のバブルを愚弄した者たち, 中国の台頭と国際秩序

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT December 27 2007

A long, difficult path out of poverty

(コメント) 世界の貧困は大幅に減ったけれど,“bottom billion”は減っていない,という指摘です.どうすればよいのか? 内戦や略奪を終わらせる.そして,インフラと通商政策,と主張します.


BG December 28, 2007

War and peace with the environment

By Ellen Goodman

FT December 30 2007

Putting a price on global warming

(コメント) ゴアはノーベル平和賞の授賞式で演説しました.「人類と自然との戦争は・・・相互確証破壊である.」 これは人類を滅ぼす核戦争の危機に似ているわけです.時間がかかるけれど.この戦争を終わらせる,a green Xmasを願います.

FTも,環境破壊を止めよう,と考えます.しかし,京都議定書に変わる新しい枠組みを決める国際交渉では何も決まりません.もっとシンプルな解決策を・・・ つまり,価格をつけて料金を支払え,Carbon pricingです.ただし,課税と排出権取引の長所と短所をよく理解して利用しながら,もっと改善するべきだ,と.


FT December 28 2007

Obama can end the racial barter

By Christopher Caldwell

The Guardian Saturday December 29, 2007

US politics has been wrecked by rigid party allegiances

Martin Kettle

FT December 30 2007

US fires election starter’s pistol

(コメント) 初めての女性大統領か,初めての黒人大統領か,あるいはポピュリストによる権力の奪取か? オバマは,「新しい政治」を代表します.

ブット女史の暗殺を見れば,アメリカにおいて黒人のアバマが大統領候補者指名を争っていることは民主主義のすばらしい成果です.人種やエスニックと呼ばれる差異,言語や信仰,歴史認識や文化的な差異は,ますます政治の重要な要素になっています.対話や妥協,権力の交代,行政機構や裁判所の公正さ,それができるだけ多くの人に受け入れられる努力を,民主制に依拠する各国はさらに重視するわけです.

The Guardian Thursday January 3, 2008

Who should be the world's most powerful person?

Timothy Garton Ash

誰が世界で最も力のある人間になってほしいか? 今日,アイオワにおける雪の党員集会所と同じく,われわれは投票できないが,この問題を考える.30万人に満たない人びとが党員集会に参加すると予想される.30億人がその結果を注視するだろう.注意して歩いてほしい.アイオワのあなたたちは,われわれの夢を運ぶから.

この問いに答えるには,世界最強の人間に誰でも指名できると考えてみることだ.ネルソン・マンデラ? ダライ・ラマ? 偉大な思想家? 無垢な子供? あなた自身か? どのような選択も歓迎しよう.

現実には,世界最強の人間はアメリカ人がなる.しかも彼もしくは彼女は民主党か共和党の最終候補者であるだろう.ニューヨーク市長,ブルームバーグが超党派の候補として残っているが.

民主党員と共和党員の間で,世界の浮動的な有権者にとって,投票に行かないことは,アメリカ人が言う"no-brainer"(楽な仕事)である.無能で,成果のない,2期の政権を経て,交代のときである.優れた共和党候補があれば難しいかもしれないが,そんな候補はいない.マッケインは高齢であり,常軌を逸している.他の候補も弱点がある.ジュリアーニの性質,ハッカビーのイデオロギー,ロムニーの気骨.

同様に重要なのは,共和党候補の政策だ.それはブッシュ大統領のように,世界にとって好ましくない.気候変動,エネルギー安全保障,持続的な成長について,根本的な転換を嫌う.グァンタナモ,国際テロ,大量破壊兵器,パキスタン.ロムニーのように,「グァンタナモをもう一つ」と言う男に,誰が投票するものか?

だから民主党員が大統領を決めるのだ.私は2007年を熱狂的なオバマ支持派で開始した.2008年は冷静なクリントン支持者になろう.アメリカのイメージを一晩で転換できるのは,オバマ候補だけだ.今もますますアメリカの支持者は世界で減っている.オバマの個性は,そのようなアメリカ社会のイメージを払拭する.最も厳しいアメリカ批判者も彼を称賛し,彼には優れた考えもある.問題は,昨年彼を観察するほど思ったが,彼には大統領になる準備がないことだ.

ある討論で質問に応えて,彼はその問題について対応するためにメキシコとカナダの大統領に電話する,と述べた.カナダには大統領がいない.つまらないことだが,同じようなミスが多くあった.もちろん,経験のない大統領も働きながら学ぶ.しかし,それはブッシュの第1期にそうであったように,非常に危ない.ビル・クリントンも,ルワンダでは行動せず,ボスニアは言うまでもない.核武装したパキスタンが崩壊するかもしれない,ますます世界が危険になっているときに,冒険はしたくない.

クリントン夫妻については,彼らが多くの失敗を経てきたことで,それらをよく知っていると言える.彼らは困難な時を過ごした.もし選ぶとしたら,ヒラリーを選択するのではなく,クリントン夫妻を選ぶのだ.それは二人の大統領かもしれないが,もう一つの優位であろう.

60歳のヒラリーだけでも,まさに侮れない.すべての問題を見事に要約し,完ぺきに答える.アイオワの農民が牛を取引するとき,口の中まで見るように,彼らクリントン夫妻は世界の腹の底まで知っている.

彼女は気の合う仲間か? いいや.少なくとも公人としては.そとづらの温かさはビルが独占する.率直か? 記録はそうではない.弁護士として正直と言える.しかし,世界最強の人が好人物である必要はない.彼女がその職に就いて有能であれば.成熟,知識,責任,タフ,この夫婦は大失敗の8年を取り戻すのに最適だ.さらに彼女を情報や技量に秀でた政治家が補佐する.二人を一緒に雇えるのだ.彼ら二人には,優れた外交の専門家チーム,立場の近い民主主義諸国が手を貸すだろう.それは貴重な同盟関係である.

しかし,世界はアメリカ大統領がブッシュとクリントンで交代するのか,と訊くだろう.だから我々にはオバマも必要なのだ.彼なら数年の厳しい経験を経て,人々を鼓舞する大統領になるだろう.それには副大統領にすることだ.彼女は2期目を望むから,ありそうもないけれど,クリントンとオバマこそ,私の夢の候補者だ.

BG January 4, 2008

Success for one Kennedy, but not the other

By Garrison Nelson

NYT January 4, 2008

The Two Earthquakes

By DAVID BROOKS

WP Friday, January 4, 2008

A Whiff of Revolution From Iowa

By E. J. Dionne Jr.

FT January 4 2008

The first caucus of the revolution

FT January 4 2008

Man in the News: Barack Obama

By Edward Luce

(コメント) アイオワの結果は「革命的」と論評されています.ヒラリー・クリントンが3位に終わったのです.また,共和党ではハッカビーが首位に立ちました.

その結果を知って最初に思ったのは,アメリカの大統領選挙の厳しさ,失敗・失言の怖さと,人柄の好ましさ,人気投票だな,ということでした.この小さな選挙結果が大きな効果を及ぼすとしたら,オバマの好ましさ,さまざまな個性が,プラスに描かれることでしょう.他方,他の候補は敗因を暴かれるのです.

オバマの若さや素人くささ,希望,変革の約束を,信じた人が多かったわけです.多くの論評が指摘してきたように,クリントンは逆転し,圧倒する基盤を持っているのでしょう.そして,民主党候補が最後まで関心を集めるように,互いのマイナスを強調することなく,激しく拮抗する状態が続くことを支持者たちは望むように思います.

ハッカビーの勝利も,一種の異常,ショックです.彼が候補に残る可能性は低いようですが,共和党の支持者や保守層の再編を準備するのでしょう.


FT December 28 2007

Where financial liberalisation got us

FT December 28 2007

From freeze to squeeze: lexicon of a crisis

By Lorien Kite

FT January 2 2008

Bankers are fallible but not replaceable

FT January 2 2008

The era of easy money is over

By Richard Reich

(コメント) 第二次世界大戦後の国際通貨・金融秩序を解体した金融自由化の現状を,自由化として礼賛する論調から,金融危機を迎えて再評価に変わるのは当然です.世界規制を統一する話も出るわけです.


Anatol Lieven Pakistan must seek a route from dynasty to unity FT December 28 2007

Bhutto's funeral: A nation convulsed The Guardian Saturday December 29, 2007

Beyond Benazir LAT December 29, 2007

Gabor Steingart Bhutto Killing Caps West's Year of Failure SPIEGEL ONLINE - December 28, 2007

William Dalrymple Pakistan's flawed and feudal princess The Observer Sunday December 30, 2007

Andrew J. Bacevich Bush's best-laid plans LAT December 30, 2007

Imaduddin Ahmed The true colors of Benazir Bhutto BG January 1, 2008

Hassan Abbas Benazir's sacrifice may yet save Pakistan The Guardian Tuesday January 1, 2008

Muhammad Nawaz Sharif The Future Pakistan Deserves WP Tuesday, January 1, 2008

Robert D. Novak What Bhutto Was Worried About WP Monday, December 31, 2007

Anne Applebaum Two Benazir Bhuttos WP Tuesday, January 1, 2008

Ahmed Rashid After Bhutto, Pakistan on Edge YaleGlobal, 1 January 2008

Speak subtly to Pakistan BG January 2, 2008

After Bhutto LAT January 2, 2008

Robert Shrimsley The best approach to dynasty-building FT January 2 2008

Frederick Kempe Bhutto Killing Breeds a Failing Nuclear State Jan. 3 (Bloomberg)

Peter W. Galbraith US needs to get tough with Pakistan BG January 3, 2008

Bill Richardson Musharraf must go BG January 3, 2008

Rosa Brooks A dynasty isn't a democracy LAT uary 3, 2008

WILLIAM DALRYMPLE Bhutto Deadly Legacy NYT January 4, 2008

(コメント) ブット暗殺後のパキスタン政治に関する論説です.


The Guardian Saturday December 29, 2007

Reaching a resolution

Daniel Serwer

(コメント) コソボ,ボスニア,セルビア,の政治的な安定性が問われています.


NYT December 30, 2007

Beijing Olympic Quest: Turn Smoggy Sky Blue

By JIM YARDLEY

(コメント) 北京オリンピックでは,中国のメダルの数より,大気汚染・公害問題が世界を驚かせるかもしれません.


NYT December 30, 2007

An Asian Hub in the Making

By AMY CORTESE

(コメント) 韓国政府が,世界競争の得意分野として取り組む,巨大建造物計画です.国家による世界市場を対象としたインフラ投資は成果を約束するでしょうか? 景気回復,雇用拡大のためのブルドーザーは,金融自由化と世界インフラ!


BBC 2007/12/29

Who owns Mao's millions?

By Michael Bristow

FT December 28 2007

Modernism minus utopia

By Edwin Heathcote

The Guardian Thursday January 3, 2008

Redder than the real thing

Ian Williams

(コメント) 世紀末のウィーンがそうであったように,現代の上海や北京は急速な近代化と建設ブーム,グローバリゼーションの光と闇が渦巻いています.17世紀のウィーンは城壁に囲まれていた.しかし,19世紀末のウィーンは最大の人種でも25%に達することのない多民族帝国の首都であった.そう,NHKの特集は紹介していました.もちろん,オーストリア皇太子の暗殺が第一次世界大戦を始める号令となったことまで,似る必要はありません.

オリンピック競技場やCCTVの強大なタワーなど,雑多な摩天楼が,西側の文明が苦しんだ諸問題を一挙に集約し,衣装としてまとい,ごった煮状態で現れます.1920年代のユートピア的モダニズムが,1980年代以降のヤッピーとホームレス,相反するグローバリゼーションと一緒に,都市を膨張させています.

イギリス労働党は,中国よりも,むしろ台湾に,その理想を多く共有していると感じるでしょう.


NYT December 30, 2007

Immigration and the Candidates

The Guardian Friday January 4, 2008

More migrants, please

Adam Roberts

The Economist print edition, Jan 3rd 2008

MIGRATION: Open up

(コメント) アメリカ大統領候補を争う共和党・民主党の選挙運動は,移民政策,特に,国境管理と非合法移民の扱いを重要な争点にしています.

共和党の候補者たちは,国境警備を強調し,フェンスや要塞化を主張します.また,国内の非合法移民には「アムネスティー」や市民権を容易に認めず,強制送還さえ主張します.こうした主張は現実に有効な解決策ではないし,費用も莫大で,しかもアメリカの経済や国際関係に有害である,と多くの論説は批判します.

アイオワで一位指名を得たハッカビーは,かつて非合法移民を雇用することに寛容であった姿勢から,一転して,安全保障,フェンスの建設や強制送還を主張しています.

民主党の候補者たちは,むしろ一時雇用制度や市民権取得などを整備して,移民労働者の地位を確立し,強制送還よりも同化を促す政策を主張しています.しかし,ニューヨークが非合法移民にも運転免許証の取得を可能にしようとした件では,これを支持したヒラリー・クリントンが,世論の反対を説得できず,態度を変えました.

共和党候補の一人,マッケインも,超党派の移民改革法案を連名で提出しましたが,反移民の世論によって破棄されています.

Adam Robertsは,イギリスの人口の9.7%,約10人に一人が外国生まれである,と指摘します.アメリカでは13%,ただし,第一次大戦直前のピーク,15%からは低下しました.移民は,受入国にも送出国にも,もちろん,移民たちにとっても,大きな利益を実現する,と考えます.しかし,今,大西洋の両側で移民反対の世論が強まっています.

世界全体では,しかし,まだ人口の約3%,2億人が生まれた国以外で暮らしているようです.貧しい農業国が豊かになると,その過程で移民を流出させ,また,より豊かな国は移民を流入させます.若い,勤労意欲に富む移民労働者たちが,国民の嫌う,きつい・厳しい・危険な職場に集中して雇用され,低賃金で働きます.

裕福な諸国では人口が減少し,労働力を維持することが難しい中で,政府によっては移民を受け入れる姿勢に最近転換した国もありました.低・中所得国では熟練労働者が不足し,高所得国ではIT技術者やエンジニアが不足して,移民流入を歓迎・奨励しています.

もちろん,国際テロや移民の社会的な統合化は難しい問題です.しかし,移民を排除することが正しい答えではないことを,政治家たちは国民に説明する勇気を持つべきでしょう.


WP Sunday, December 30, 2007

What Presidents Must Know

By David S. Broder

(コメント) ブット暗殺が,クリスマス気分を吹き飛ばしてしまいました.政治家が常に暗殺の危険にさらされる世界です.新しいアメリカ大統領は,イラク問題や,核兵器を抱えて軍事独裁政権がイスラム過激派を抑えるパキスタン,などと,ただちに打開策を用意しなければなりません.ダルフールで,北朝鮮で,バルカンで,・・・アメリカ大統領となる者は,刻々と決断を迫られ,その能力を結果で試されます.

アメリカ大統領になる資格とは何でしょうか? かつて2000年の民主党大統領候補をアル・ゴアと争ったビル・ブラッドレーが,それを適切に示したそうです.すなわち,

「アメリカ大統領は,いくつかの主要国について『内面まで』知っている必要がある.それは単に要約した解説書のレベルではなく,自分で観察したこと,だからもしその指導者と交渉するためにテーブルに就けば,彼らがどんな圧力を受けているかを理解しなければならない.ブラッドレーはそのような研究を,ソビエト連邦,日本,ドイツ,メキシコについて始めた.しかし,もっと多くの知識が必要だったし,中国についても必要だと感じていた.」

「大統領はこの国(アメリカ)の指導的なエリートたちを知っていなければならない.単に政界だけでなく,ビジネス界,専門家,学会,労働界,・・・政府に必要なスタッフがどこに行ったら見つかるか,わかるように.そして,事態を把握できるように有益な助言を求めて,政策コミュニティーを熟知している必要がある.」


FT December 30 2007

President Clinton, Google grows, $100 oil, but no US recession – this is 2008

(コメント) FTの各記者は,こんな問題について予想しています.

金融逼迫は続くか?/株価は下落するか?/シティグループは破たんするか?/ヒラリー・クリントンがアメリカ大統領になるか?/ムシャラフは職にとどまれるか?/プーチンはどうか?/イランは爆撃されるか?/イラクは解体するか?/サルコジ政権は爆発するか?/京都議定書の次は決まるか?/原油価格は100ドルを超えるか?/アメリカは不況になるか?/イギリスの住宅価格は下落するか?/中国は人民元を切り上げるか?/企業の社会的責任は軽視されるか?/グーグルは次に何をするか?/北京オリンピックは成功するか?


LAT January 1, 2008

We wish ...

(コメント) ロサンジェルスの住民やジャーナリストが,セレブの裁判を観たくないとか,ホームレスの対策が成功してほしい,と願うように,私たちも日本や京都,大阪について,願い事を書いておくべきかもしれません.

大阪に立派な政治家の知事が誕生してほしい.派遣や不正規の労働者が差別的な扱いを受けないように,規制や対抗する制度を整備してほしい.優れた時代小説作家が増えてほしい.北朝鮮が平和的な体制転換に向かってほしい.日本の衆議院解散・選挙で政党を再編してほしい.学校教育の質が向上してほしい.漫才やバラエティー番組が半減してほしい.・・・


FT January 1 2008

Prepare for a global economic downturn but not a disaster

By Wolfgang Munchau

The Guardian Wednesday January 2, 2008

Stagflation comet

Joseph Stiglitz

NYT January 2, 2008

The Economy and the New Year

FT January 2 2008

Dollar fear sparks rush to oil and gold

By Javier Blas in London and Michael Mackenzie in New York

(コメント) アメリカは不況になるかもしれません.住宅市場から銀行の資産が傷つき,信用が収縮するからです.金融市場の不安もなくなりません.それは,もしかしたら世界にも波及するでしょう.アメリカ経済の減速で貿易や投資が減るのは仕方ありませんが,為替レートが不安定化して資本移動を刺激するかもしれません.アジアやヨーロッパが,アメリカに代って世界経済を指導する,という期待も虚しいようです.

Joseph Stiglitzは石油価格の上昇に注目します.「今まで,重要な三つの要因が世界の石油価格を引き上げてきた.第一に,大幅に生産性を上昇させながら,中国が高水準の投資,特に教育や技術に投資を行った.そして世界にデフレを輸出した.第二に,アメリカは史上空前の低水準にある金利を利用して,生命維持装置に入る者以外ならだれでも,住宅融資を行ってバブルを膨らませた.最後に,世界中で追い詰められて顎を出した労働者たちは,より低い実質賃金とGDPの割合を受け入れた.」

こんなことは続かない,というわけです.

中央銀行は,確かにインフレを抑えることに成功したかもしれないが,労働者の賃金を低くし,仕事や住宅を奪った.そうであれば,もっと違う目標,例えば世界的な賃金水準の上昇や完全雇用を目指す政策を模索し始めての良いのではないか? と,Stiglitzは考えているのかもしれません.


FT January 1 2008

An Ottoman warning for indebted America

By Niall Ferguson

未来の歴史家たちは我々の時代を振り返って,70年代に匹敵する転換点であったと言うだろう.否,否,1970年代ではない.共和党の大統領が国民の支持を失い,石油価格が高騰し,勝ち目のない戦争を続けている.それは1870年代だ.

ちょっと見ただけでは,その類似性に気がつかない.1870年代はディズレーリのような保守的指導者が,イギリス首相となって,支持を得て,権力をふるっていた.商品価格が下落し,1873年の金融危機とアメリカの大平原から農産物が届くようになってから後,そうであった.通貨は安定し,各国がイギリスに続いて次々に金に固定した.

しかしよく見れば,われわれは1870年代に経験したような大きなパワー・シフトに直面している.これは,過剰に拡大した帝国が対外債務危機に直面して資産を切り売りする物語である.1870年代に衰退していた帝国はオスマン帝国であったが,今はアメリカだ.

クリミア戦争の後,コンスタンチノーブルのスルタンも,そのエジプトの家臣であった副王も,内外の債務を膨張させていた.軍事的,経済的な理由で,借り入れが増えた.クリミア戦争中と後の軍備強化,鉄道と運河の建設,1869年に開通したスエズ運河も含む.しかし特に危険なほどに膨張していたのは,スルタンAbdul Mejidの王宮建設,カイロ・オペラ・ハウスなど,見せかけの消費である.1873年にヨーロッパやアメリカの株式市場が危機を生じたとき,中東の債務危機は避けられなかった.187510月,オスマン帝国は破産を宣言した.

危機は二つの顕著な金融的結果をもたらした.エジプト副王はスエズ運河の株式をイギリスに売った.そして,オスマン帝国の公債が国際管理の下に置かれた.そこにはヨーロッパの債券保有者が代表を送った.重要なことは,債務危機が中東の歳入をヨーロッパへ売却する,あるいは送る必要を生じたことだ.

アメリカの債務危機は,もちろん,形が違う.対外債権は政府と民間の貯蓄不足で消滅し,政府部門が破産するのではなく,サブプライムのモーゲージで借りた人が破産する.

しかし,1870年代のように,この債務危機で資産や歳入の流れが外国の債権者に向かう.しかし今回は,債権者は運河の株式ではなく,銀行の株式を買う.こうしてパワーは西から東に移る.

9月以降,中東と東アジアの政府系信託は,シティ,モルガン・スタンレー,メリル・リンチなど,アメリカの主要銀行に投資してきた.銀行が融資を削るより,外国の政府系信託から資本を加える,世界的な救済融資を評論は歓迎した.しかし,これらの「資本注入」はアメリカ金融サービスからの収入が外国政府の手に移されることを意味する.それが,東西の所得格差のかつてない縮小と同時に起きている.

言いかえれば1870年代は,金融のバランスが変化した.古代の東洋的帝国から,西欧にパワーがシフトした.今日,アメリカ,および西側の金融センターから,中東や東アジアの完了にパワーがシフトする.ディズレーリの時代には,債務危機は政治的・金融的問題であり,所得とともに主権の低下を予言した.

エジプトの場合,資産売却は公債の国際管理機関,「国際的」政府の設立に至り,1882年,イギリスの軍事介入と,事実上の植民地化に至った.トルコの場合,債務危機はスルタンの廃止に至り,ロシアの軍事介入と,バルカンにおけるオスマン帝国の地位を致命的に破壊した.

今日の金融変化が,東の輸出・エネルギー新興国へ地政学的なシフトをもたらすスピードは分らない.歴史的類推は,中東とアジアに広がる,アメリカの準帝国的な基地と同盟諸国のネットワークについては前兆とならない.しかし,債務帝国は,遅かれ早かれ,その株式を売るだけでは済まないのだ.


FT January 1 2008

Europe’s urgent need for reform

(コメント) FTから見れば,2008年にヨーロッパ経済が成長を高めるには,コーポラティスト型資本主義を解体して,もっと自由化した資本主義に転換するべきだ,というわけです.


FT January 1 2008

Japan offers a salutary tale in banking crises

By Gillian Tett

(コメント) 史上最悪,7000億ドルの損失を出した日本のバブル処理について,私たちは何度でも思い出す必要があります.現在,アメリカの金融市場を苦しめている不安を, 10年前の日本と比較して,当時の日本を取材していたGillian Tettが考察しています.的確かつ率直で,抑制された叙述に,納得しました.

アメリカのエコノミストや政策担当者たちが自信たっぷりに日銀や日本政府の対応を批判し,政策を指南していた話を,自分たちの番になって実行できるのか? と誰もが思っているわけです.日本政府・大蔵省が護送船団方式で銀行をかばった,株価の人為的な維持を図った(PKOが有名でした),と愚か者の代表のように言われた話を,アメリカ人は思い出しているでしょうか? いい加減な会計基準や損失の先送りで,不良債権処理を長引かせた,という問題はアメリカにないとしても,何でもデリバティブで解決できるとか,信用格付けさえあれば市場で流動性が得られる,という市場万能論は消滅しました.

Gillian Tettは冷静にそれらを評価しています.日本が正しかったわけでもないし,欧米が特に優れていることもないでしょう.銀行システムには危機が繰り返されてきましたし,証券市場や金融機関は規制されていない分野で怪しい発明を繰り返しているのです.それが破たんすると,ふつうの投資家が一斉に市場や銀行の中身を信用できなくなって,資金を引き揚げます.

アメリカの会計基準は市場による資産評価を採用していますから,日本のように損失を隠すことは難しい,と言われます.急速に処理が進むでしょう.おまけに日本よりも資金を調達するルートとしてヘッジファンドや政府系投資信託を利用しています.何よりも,アメリカの金利水準や物価の動向は,不良債権処理の余地を残しています.

しかし,決して楽観はできないのです.規制されていない領域で市場化されたローンやリスクは,互いの不信を生んで,処理や回復を妨げます.アメリカは不況に向かい,企業部門で倒産が急速に増えるかもしれない,と指摘されています.世界中に広まった債権債務関係と国際不均衡の調整が,スムーズに進むとは思えません.最終的な処理を強制されるまで,日本の銀行はデータや責任を言い逃れ,不況を長引かせたことが最大の失敗だった,という中前忠のコメントを引いています.

アメリカやEUの金融当局が,日本よりうまく処理できるのか,まだこれから始まるのです.


From Foreign Affairs , January/February 2008

The Rise of China and the Future of the West

Can the Liberal System Survive?

By G. John Ikenberry

(コメント) 中国の台頭による国際秩序の変化に関する優れた論説です.G. John Ikenberryは,リアリストが考えるような中国による国際秩序の変容を,決して不可避ではない,と主張します.アメリカによって形成された第二次大戦後の秩序が,次第に中国のパワーが強くなれば挑戦を受け,中国の望むような秩序に作り変えられる,その際,アメリカと中国が軍事的な衝突を引き起こす,というのは,もちろん可能性としてあります.

しかし,核兵器が現れたという事実だけでなく,これまでの歴史にも,パワーのシフトが戦争を回避して行われた場合があります.何よりも,新しいパワーが既存の国際秩序を受容して,存続させる場合がそうでしょう.今の中国も,既存の国際秩序から大きな恩恵を得ているのです.

Ikenberryは,中国がアメリカの秩序を滅ぼすために軍事衝突の辞さない,というリアリストのシナリオを否定するために,二つのことをアメリカ政府(新大統領)に求めていると思います.ひとつは,中国とアメリカの対立ではなく,中国を西側の秩序に取り込むことを目指す.中国と西側・OECDを比ベれば,中国の優位は容易に実現しないのです.軍事的に,市場期後でも,西側は中国からの挑戦を退けるパワーを維持しています.それは同時に,アメリカが西側同盟諸国をまとめ,また中国(そして新興諸国)を取り込む形に国際秩序を再編する姿勢を積極的に示すことです.

また,国際秩序の性格を,特定の国から切り離して,どのような国にとっても望ましいルールや規範として整備することです.すでに,アメリカが築いた戦後の国際秩序には,ブッシュ政権のゆがみを戻せば,そのような性格が顕著でした.中国が国際秩序を受け入れ,参加するためにも,この秩序がアメリカによるものだという期限を消し去ることが必要なのです.

私はこの論説で,日本としても大いに刺激され,アメリカの今後に共感を強めると思いました.


CSMnuary 04, 2008

What to do when oil hits $100 a barrel

The Guardian Friday January 4, 2008

Oil price: Crude lessons from the $100 barrel

NYT January 4, 2008

Dealing With the Dragon

By PAUL KRUGMAN

NYT January 4, 2008

Economy and Geopolitics Decide Where Oil Goes Next

By CLIFFORD KRAUSS

The Wall Street Journal, 4 January 2008

Oil Hits $100, Jolting Markets

Neil King Jr., Chip Cummins, and Russell Gold

(コメント) 石油100ドルの時代をめぐって,多くの論説があります.

この点で,PAUL KRUGMANは,上記のIkenberryに通じる議論をしています.アメリカの外交政策は石油危機を恐れて中東にばかり介入してきたが,見ているところが間違っていないか? 石油が100ドルもするのは,イラクを占領しても解決できない問題があるからだ.つまり,中国経済の成長がそれである,と.

中国を含んだ,石油需給の安定化や温暖化対策を制度化しなければ,アメリカ政府でも成果を上げられないのです.


FT January 3 2008

Business growth is not an end in itself

By Samuel Brittan

(コメント) 行き過ぎた消費社会の終わりを考える,という話です.当然,J.S.ミル,J.M.ケインズ,J.シュンペーターなどが登場します.


FT January 3 2008

The greening of globalisation

YaleGlobal, 3 January 2008

The Invisible Hand of Globalization

Susan Froetschel

(コメント) グローバリゼーションという論争のスタイルは何にでも現れます.問題を解決する条件がますます世界化し,それゆえますます世界的な合意やルール,制度の構築を必要とするからでしょう.


FT January 3 2008

The silver lining in sterling’s decline

By Willem Buiter

(コメント) 中央銀行は金融危機に忙殺され,政府は財政赤字の削減を投げざせない.ますます国際資本移動の安定性や為替レートによる刺激と調整に依拠するようになっている世界を生きる小国にとって,本当に為替レートは円滑な調整を助けてくれるのでしょうか?

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The Economist December 22nd 2007

Postcards from the ledge

Poker: A big deal

Death by overwork in Japan: Jobs for life

Lexington: The spirit of Christmas

(コメント) 金融不安はアメリカ経済を不況にするか? 金融革新の見直しはどこまで進むか? という問題を議論します.トヨタをめぐる過労死裁判が紹介されています.アメリカの悲観主義が,ブッシュ政権のもたらした悪いニュースに集中してしまう点で間違いだ,と指摘します.