今週のReview
12/31-1/5
*****************************
世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
*****************************
******* 感嘆キー・ワード **********************
中国脅威論, メイド・イン・チャイナをボイコットしない理由, アメリカの不況に備えて, 自由貿易論の終わり, 大洪水とノアの時代, アジアの受賞者, 労働組合, 覇権通貨
******************************
ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
IHT Thursday, December 20, 2007
China flexes its new muscle
By Willy Lam
北京政府は,先月,アメリカの空母キティホークの香港訪問をキャンセルした.これは中国の外交政策における歴史的な分水嶺であった.
アメリカのフリゲート艦ルーベンジェームズも新年に香港寄港を望んだが拒否された.これは南シナ海におけるベトナムとの主権争いで中国が示した強硬派の姿勢と一致する.中国はまた,アメリカ,カナダ,ドイツがダライ・ラマに示した歓迎姿勢に対して激しく抗議した.
中国共産党の指導層は,ケ小平や江沢民の時代に西側との衝突や摩擦を避けようとしてきた.しかし数十年の歯ぎしりを終えて,今や公に台湾,チベット,新疆ウィグルへのアメリカの介入を非難している.
キティホークの事件は中国が示した大規模軍事演習と重なっている.その演習領域は南・東シナ海に及び,ロシアが提供したものを独自に改良したミサイルや,ロシアの対艦巡航ミサイルが発射された.人民解放軍は台湾海峡の封鎖だけでなく,アメリカ政府や日本が台湾海峡に「干渉する」ケースを想定している.
その演習は,アメリカの空母が寄港を拒否されてから,台湾海峡を抜けて母校である横須賀基地に帰ったことを,中国が「深刻な懸念」としたことと関係がある.中国は外国艦船が台湾海峡を通過することについて中国政府の承認を求めているのである.台湾海峡はこれまで国際的な海であった.
人民解放軍は,ベトナムが主権を主張するパーセル諸島近海でも演習を行い,ベトナムがこれに抗議した.スプラトリー,パーセルの群島に対する中国の決めた権限に対して,ベトナムの群衆が中国大使館に集まって抗議した.人民解放軍はインドとの国境地帯,シッキム・ブータン・チベットの境界線でも,無人のインド掩蔽壕を撤去している.
中国は最近の中国EUサミットでも目立つ行動を採った.ピーター・マンデルソンEU通商代表が中国の偽物商品の流れを批判したことについて,激しく抗議したのだ.またEU指導者との会合で,温家宝首相はアンゲラ・メルケル首相のダライ・ラマに対するVIP待遇を強く攻撃した.ベルリン政府は間違いを「認め,謝罪せよ」と要求したのだ.
アメリカ,ベトナム,ドイツに対する高官レベルでの紛糾は,人民解放軍のミサイルが人工衛星を撃墜してから起きている.これは人民解放軍の宇宙空間における軍備強化とみなされているが,同様に月探査計画も開始した.これは国内におけるマルクス主義の価値が失われていることに対応する.月の征服が,中国の国力増大と絶えざる革新の勝利を示す,と主張している.
北京政府は,そのような主張が海外で「中国脅威」論を強めることを知っている.しかし,共産党も人民解放軍も,それは復活したドラゴンが太陽の中に正当な地位を占めるために支払う代価であると理解する.
NYT December 21, 2007
A Revisionist Tale: Why a Poor China Seems Richer
By KEITH BRADSHER
FT December 26
Double challenge to Beijing orthodoxy
By Mure Dickie and Jamil Anderlini in Beijing
FT December 27 2007
Chinese stock market
(コメント) しかし,中国の姿は霧の中です.購買力平価による経済規模は大きく修正されました.為替レートの大幅な切り上げが求められています.土地や株式への資金流入と膨張した富裕層が,瞬く間に消滅することもあるでしょう.
Mure Dickie and Jamil Anderliniは,中国政治システムの正当性を奪う二つの事件を伝えています.ひとつは,南京大学元教授Guo Quanによる「新民主党」の創設です.多数の支持を得て,共産党の一党支配を終わらせ,中国に複数政党の政治を実現する,と主張します.
もう一つは,中国の4つの離れた地域で,政府による土地収用に抗議する運動がインターネットによって結びつき,土地所有権によるその主張を公表したことです.地方政府は,しばしば,共有地を農民から取り上げ,開発業者に売って莫大な利益を得ています.
CSM December 21, 2007
Why my family stopped boycotting Chinese goods
By Sara Bongiorni
2年前のある日,7歳の息子は宣言した.「クリスマスにスケートがしたい.」・・・「自分がしたいのはそれだけなんだ.」
それは2005年に中国製品をボイコットしていた家族を苦しめた.スケートボードも含めて,人形,ビデオ・ゲーム,子どもが欲しがる何もかもが中国製品だった.
私たちのボイコットは政治のためでも,製品の安全性のためでもなかった.それは自分の家族と輸出経済がブームを続ける中国との結びつきを測定する実験だった.
ボイコットは我々の生活を一変させた.息子は中国製のおもちゃを熱望した.ドイツ製のレゴや,イタリア製のスニーカーを与えた.それは高くついたし,とうとう息子は夜中に私たちを起こして懇願した.逆に,ボイコットを止めたとき,解放を味わった.「メイド・イン・チャイナ」が我が家に入ることで,生活は安楽になった.
私たちの周りは,再び中国製品でいっぱいになった.そして数か月前から,製品の安全基準が問題になって,私は再び「メイド・イン・チャイナ」を家の中で探している.多くの製品がリコールされた.再びクリスマスが近づくと,中国製品をどうしようか,と思う.
しかし,中国製品を買わない,ということはしない.家族の言い争いを思い出すとか,中国製のおもちゃが危険でないとか,そういうわけではない.2005年に学んだことは,われわれはあまりにも緊密に中国と結びついており,中国に背を向けることはできない,ということだ.ボイコットは,それが家族であれ,国家であれ,自給自足がもはや時代遅れであることを教えた.誰も戦わずして,そしてため息をつくこともなく,独立を捨てたりしない.しかし,静かに,しかも逆戻りできないほど,われわれは中国とその他の世界に向かってしまった.我々の求める,そして必要とする多くのものが,非常に安く手に入ると思うから.
ボイコットが教えた他のことは,私は中国に背を向けたくなかった,ということだ.私が中国の人権問題や環境破壊を改善することは難しいが,こうした関心の解決策は中国に背を向けるのではなく,中国に向き合うことにあると思う.
中国製のスケートボードに乗って喜ぶ息子にも,そうしてほしい.
BG December 21, 2007
America's economic perfect storm
By Robert Kuttner
NYT December 23, 2007
How to Avoid Recession? Let the Fed Work
By N. GREGORY MANKIW
(コメント) カットナーは,ブッシュ政権が自由市場のイデオロギーにとらわれているせいで,アメリカ経済の調整には大きな苦痛が伴うだろう,と考えます.他方,マンキューは逆に,政府が不況を回避するために介入する必要はない,黙ってバーナンキの仕事を見守れ,と主張します.
*******************
金融危機が深まっていく現状は,1930年に似ていなくもない.ところが政府の対応は,少なすぎるし,遅すぎる.
もう一度,大恐慌が来る,とは言わないが,それは民間部門の改善と,多くの制度的な遺産があるからだ.社会保障や(削減されたとはいえ)銀行規制,証券取引委員会,何より連邦準備銀行が,1930年当時よりも強力である.
アメリカは完璧な経済暴風雨の前兆に直面している.金融システムは弱まり,消費者の支出が抑えられ,ドルの価値が揺らいで,インフレ率の再上昇がみられる.
昨年の夏まで,人々は金融緩和に驚いていた.世界は「貯蓄過剰」を享受している,と愚かにもバーナンキ連銀議長は言ったものだ.中国にも,インドにも,民間部門の投資にも,消費者にも,アメリカ政府にも,無限に低利の信用が提供された.
しかし今や,何が本当に起きていたかをわれわれは知っている.銀行は不可解な融資で帳簿を埋めた.彼らはそれを債券として売り,その過程でさらに融資した.結局,民間の金融システムが,規制を無視して,貨幣を印刷したのだ.規制はあったが,証券化で,それは無意味になった.しかし,新しく鋳造された「貨幣」の価値は,その担保の価値でしかない.
投資家たちが担保を調べてみると,それはサブプライム・モーゲージ,ハイリスクのクレジットカード債権,中古車のローン,その他,こうした怪しげな債券を保証する証券類という,汚れたスープであると分かった.それは金融の幻でしかない.住宅価格が下がれば信頼は失われ,信用システムも崩壊した.
連銀も財務省も,危機を解消することはできなかった.一時的な流動性不足は解消できるだろうが,ソルベンシー・リスクは残る.先週,ついに連銀は銀行債務を国有化する第一歩に踏み出した.それでも信用の流れは正常化できていない.他方,消費支出が落ち込み,これまでアメリカの景気を支えてきた住宅市場の活況による消費拡大は失われる.ブッシュ政権のボランティア・アプローチで住宅差し押さえを免れるのは,15-20%でしかない.
信用危機に対する連銀の反応は,金利低下と信用不安によるドル価値の下落,インフレを招いている.外国の中央銀行は,これまで慢性的なアメリカの貿易赤字を進んで融資したが,そのドルを使って銀行,企業,不動産を買うか,あるいは,アメリカからの資本流出につながるだろう.
新しい大統領が決まったら,政府も行動を起こす.
*******************
不況を予感して,議会やホワイトハウスは不安を強めている.彼らは何をなすべきか? その正しい答えは,断じて何もするな,である.
それは政治家たちの望まない助言である.有権者は行動しないことを無能とみなし,政府に憤慨するだろう.しかし,どんな軽い慢性病にも根本的な外科手術を勧める医者を避けるべきであるのと同じように,有権者は経済的な不調に何でも情熱的に対処する政治家に用心した方が良い.
議会が景気循環に対して行った最善の決定は,1913年に連邦準備制度を創ったことだ.現在も,連銀が不況に対する第一の防衛線である.金利を下げると住宅の売上増や株価上昇に向かい,企業の資金調達も容易になる.
金融緩和はドル安をもたらすが,投資家がその国の経済に対する信頼を失ったことで起きるのではないから,何も問題ない.1994年のメキシコや1997年のアジア諸国と違い,アメリカ経済は基本的に健全であり,資本逃避は起こらない.むしろドル安は輸出を増やし,経済を刺激する.
金融緩和に加えて,財政的な刺激が必要なこともある.2003年には,金利が1%にまで下げられ,それでもデフレの心配があった.政府が財政赤字を増やしても減税したのは正しかった.しかし,今は違う.金融緩和の余地があり,デフレよりもインフレが心配されている.
確かに,ここにいたるまで連銀は間違いを犯したかもしれない.しかし,後知恵で批判するのはたやすいことだ.むしろ,連銀の政治的独立性を侵すような発言は非常に問題である.連銀の議長や幹部は,現在,望みうる最高のチームである.だから議会にできる最善のことは,バーナンキに仕事をさせることだ.
*******************
どちらの主張もよくできています.どちらも正しい,という論争は,良くあると思います.指導者の責任とは,現実の変化する状況に応じてそれを見極め,行動することで真実を示すことです.
The Japan Times: Tuesday, Dec. 25, 2007
Global economy due for hard landing
By NOURIEL ROUBINI
(コメント) Nouriel Roubiniの診断も基本的に同じです.さまざまなデリバティブと,預金に頼らない金融機関が増えて,市場の不透明性によって相互不信が生じています.だれも資金を出さなくなった,と指摘します.中央銀行の介入も,少なすぎたし,遅すぎた.流動性危機だけではなく,住宅の債務者や銀行,企業が支払い不能ではないか,という問題が解決できません.
ハード・ランディングは避けられない.
NYT December 21, 2007
Arrogance and Warming
WP Friday, December 21, 2007
Bush's 'Axis of Evil,' Six Years Later
By Charles Krauthammer
LAT December 22, 2007
Embrace China
By Nina Hachigian and Mona Sutphen
The Observer Sunday December 23, 2007
The new world order that threatens Uncle Sam
Henry Porter
(コメント) ブッシュ政権がその末期を迎えて,この7年間に行ったことの生産を強いられるはずです.任期制というのは,ある問題を解決し,ある成果を継承し,あるいは,清算するのです.
ブッシュ政権は,環境規制より成長,そして企業利潤を優先しました.冷戦後の国際協調より,「悪の枢軸」と対テロ戦争・新冷戦を提唱しました.中国との対決より,次第に融和政策を継承し,経済摩擦を政治的に管理してきました.
環境政策で興味深いのは,EUの積極的な姿勢には応じないアメリカが,国内の矛盾を抱えて対応に迫られることです.ブッシュ政権が国際合意を拒んだことで,カリフォルニアなど,州ごとの環境規制が強化されるでしょう.また,国際基準が失われることに,自動車産業などは危機感を持ちます.
保守派の批評家Charles Krauthammerは,ブッシュの成果を,イラクに勝って,イランは失敗,北朝鮮は引き分け,と判定します.
イランへの政策は,CIAがNIE(National Intelligence Estimate)から指導権を奪って,核兵器開発を中止した,と判断した.これは間違いだ.イランは数か月で核兵器を生産できる.北朝鮮はプルトニウムの製造を止めた.しかし,精査する必要がある.金正日を脅す強い手段はなく,飴で釣るしかない.すでに保有している核兵器も手放さない.イラクは,その後の混乱にもかかわらず,サダム・フセインとその息子の体制を完全に消滅させた.彼らが世界やアメリカに脅威を与えることはない.アメリカが中東地域の中心に恒久的な軍事基地を得たことは大きな勝利である.・・・
アメリカの家族は,中国製品をすべてボイコットしても,生活できるのだろうか?
アメリカの政治家が思うほど,アメリカ人の多くは中国を脅威とはみなしていません.政治家はしばしば自分たちの責任を棚に上げて,外国を非難します.選挙の年に,アメリカの政治家が中国を非難する言葉を聞く者には冷静さが求められます.
「中国がいつの日か敵対する国になる,という可能性は排除できない.われわれはその脅威にも軍事的に準備しておくべきである.しかし今は,別の課題が重要だ.すなわち,中国の力を世界の緊急問題解決に向けること,中国が大国としてテーブルに着く特権に対して支払うこと.」
「中国の成長はアメリカ人が失業したり賃金を下げたりしている理由になる.しかし,こうした影響に対処する条件を労働者に与えるのは,中国ではなく,アメリカの仕事である.多極化した世界で自国が繁栄する力を損なっている諸問題に対処するのもアメリカの仕事である.破たんした教育制度,高額で非効率な健康保険,財政赤字,老朽化したインフラ,石油消費の過剰,すべては自分で解決しなければならない問題だ.」
「選挙の年は,いつも政治家たちが外国を非難したがる.しかし,アメリカの有権者たちはそれを真に受けず,自分たちが変える力のある自国の問題に焦点を絞るべきだ.」
フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』で,民主主義を政府の最高の形態として称え,今後は管理の問題だけになる,と宣言したけれど,ロシアと中国の現状,また,アメリカやイギリス,ヨーロッパの戦争,金融市場を見れば,まるで逆転したようなありさまです.ダルフールだけでなく,国際政治の焦点においては,ますますアメリカ人の数が減って,中国人の増加が目立つ,というのです.
少なくとも,民主主義や資本主義によってすべての論争が解決された,と思うような人はいなくなりました.
FT December 27 2007
America in 2008: Populism calls the shots
By Clive Crook
FT December 27 2007
Dwindling dollar may be next US security threat
By Daniel Dombey
(コメント) 世論調査では民主党候補が優勢な中で,Mike Huckabeeが共和党候補の争いに加わりました.Clive Crookは,両党の選挙運動において顕著にポピュリズムが強まってきた,と注意します.
しかしラテンアメリカではなく,先進国において使われる場合,「ポピュリズム」という表現には,しっくり理解できないものがあります.大衆迎合の政治姿勢を指すのでしょうか? 国際貿易や外国企業・銀行に対する反感を指すのでしょうか? あるいは,国内政治権力を私物化する大企業やエスタブリシュメントに対する批判を意味するのでしょうか?
Huckabeeは,共和党候補ですが,貿易不均衡を批判し,雇用が流出しているという民主党の主張を採用します.自分は「ワシントン=ウォール街の権力中枢」から嫌われている,と自慢します.また,社会保障制度にも財政支出をもっと増やすように求めます.共和党候補の中で,強い信仰心が好まれているのですが,同時に,他の候補をはるかに超えるポピュリズムが顕著です.
しかし,それをポピュリズムというなら,民主主義や不況対策,社会的弱者に対する政策は,自由市場を強調しない限り,すべてポピュリズムになってしまいます.
Daniel Dombeyは,ドル安が通貨価値の修正にとどまらず,国際政治に影響する,という問題を考察します.なぜならドルの影響力が下がるだけでなく,アメリカが覇権国として担う海外での役割に必要なコストが増えるからです.典型的には,通貨危機に陥る国を救済するのがドルであるという事実が,アメリカに外国の政策に介入する圧倒的な力を与えています.また,北朝鮮に示したように,アメリカの銀行が排除しただけで,世界中の金融システムから排除されます.
つまり,将来はその権力が他の国に,たとえば中国に,握られるのです.石油市場や世界各地の安全保障に関しても,ドルの減価は重大な結果をもたらします.
将来,ポピュリズムとドル安が,アメリカから覇権を失わせる局面を迎えます.
The Guardian Friday December 21, 2007
Foreign takeovers: When Beijing goes buying
Dec. 24 (Bloomberg)
Sovereign Funds Offer U.S. Big Gains, Small Risk
Kevin Hassett
(コメント) 石油資源の国有化,破たんした銀行の国有化,外貨準備の政府管理・運用,などが流行となっています.資源・エネルギー・食糧・環境・対外関係を,政府は常に管理する欲求を持っています.「自由貿易帝国主義」と同じように,これらを「政府管理自由市場」と呼んではどうでしょうか?
ロシア政府や中国政府に,破たんした銀行や自動車会社,投機に失敗した巨大投資銀行,などを救済してもらうのが良いことなのか? あるいは,空港や港湾,通信・放送局や情報産業,主要な都市の土地・不動産,なども,かつて多国籍企業が発展途上諸国に行ったように,黒字国の政府が買収するのでしょうか? それが巨額の対外債務を抱える国に合意された調整ルールであれば,アメリカについても,そうでしょう.
もちろん,再びニクソン・ショックが起きるのです.
LAT December 21, 2007
Christmas' miracle workers
By Alex Frankel
(コメント) 日本ならクロネコヤマトの宅急便(あるいは,ペリカンや佐川)ですが,アメリカならUPSです.クリスマスには,世界中で,彼らの流通革命が魔法のような力を最大限に発揮したでしょう.そして,すべてのサービスの背後にある,国際的な労働の連鎖に感謝するわけです.
FT December 21 2007
Subprime shake-up
NYT December 23, 2007
Tattered Standard of Duty on Wall Street
By BEN STEIN
FT December 23 2007
Crazy crisis may herald the end of new derivative folly
The Guardian, December 25, 2007
Cash starved
Sasha Abramsky
(コメント) FTは,サブプライム改革案はいくつかありますが,連銀による直接の調査と情報開示を求めます.投資や信託における信用,受託者義務についてもFTは言及します.
金融市場の混乱について,The Guardianは整理します.要するに,複雑な信用デリバティブには悪質なものがあったわけです.サブプライム・ローンを証券化して偽装したCDO(the collaterised debt obligation)は止めるべきでした.それに信用を与えた格付け会社の調査もいい加減でした.なんと,これを「ソーセージ効果」と呼ぶそうです.日本であった食肉偽装事件を思い出せば,説明は不要でしょう.
ガルブレイスの『大恐慌』にも,投資信託を使ったバブルと恐慌の激化が指摘されています.同じようなトリックです.SIV(the structured investment vehicle)も批判されています.これは闇銀行に結びついていたようです.
クリスマスを迎えるアメリカにも多くの飢えた人々がいる,ということをSasha Abramskyは紹介しています.おそらく1000万人以上.
Forbes.com, 21 December 2007
2008: Year of Reckoning?
Ernesto Zedillo
(コメント) この論説も,アメリカの金融・財政政策が金融市場の不安を招いた原因だと指摘しています.それに加えて,金融市場の危機が解消されるためには,国際的な金融市場や経済活動の不均衡が解消されなければならないと指摘する点で,国際政策協調を支持する議論までしています.
こうした政策協調の支持論は,先進諸国の経済学者から,全く無視されているテーマです.
NYT December 23, 2007
Trade and Prosperity
WP Wednesday, December 26, 2007
The End of Free Trade
By Robert J. Samuelson
(コメント) 中国については,政治家に比べてアメリカ国民は冷静でした.しかし,貿易やグローバリゼーションについては,急速にその印象が悪化しているようです.
NYTの論説は,大統領候補争いの論調が保護主義に傾くことを警告しています.技術変化と同じように,保護主義によって貿易を妨げることはアメリカの利益になりません.セーフティー・ネットを整備し,貿易の利益を人々が享受できるように,また,それによって傷つく者にはできるだけ補償するように,と主張します.
Robert J. Samuelsonは,予想通り,自由貿易に批判的です.自由貿易は,重商主義に比べて,それが雇用や成長をもたらす限りで支持されたに過ぎません.しかし,現代の世界経済は,再び新しい重商主義の時代になった,と指摘します.すなわち,プーチン,人民元,ペルーとの貿易協定,そして,チャベス,です.
この論説は,Jeffry Friedenの意見を紹介しています.すなわち,第二次世界大戦後に自由貿易が支持されたのは二つの政治的理由からであった.1.大恐慌を繰り返したくない.2.冷戦のために貿易でも協力する.この二つの理由が失われても,慣性として戦後の自由貿易は守られてきたのです.今までは.
Friedenは,ますます相互依存を深める経済で,しかもナショナリズムが強まるなら,何が次の政治的な接着剤になるか? と問います.まだ,答えは分りません.
NYT December 28, 2007
Trouble With Trade
By PAUL KRUGMAN
アメリカは長く石油や原料を第三世界から輸入してきたし,工業製品を,カナダやヨーロッパ諸国,日本のような豊かな諸国から輸入してきた.
しかし最近,われわれはある分岐点を超えた,われわれはより多くの工業製品を,先進経済ではなく,第三世界から輸入している.我々の工業製品貿易は今や,われわれよりもはるかに貧しい諸国と,はるかに少ない賃金を支払って,行われている.
世界経済全体として,特により貧しい諸国にとって,高賃金諸国と低賃金諸国との貿易が増えることは非常に良いことである.何よりも,それは後進的な経済にとって所得水準を引き上げる最大の希望なのである.
しかしアメリカの労働者にとって,それはあまり積極的なものではない.実際,アメリカと第三世界との貿易が増えることは多くの,おそらくはほとんどの労働者の賃金を引き下げる,と結論するしかないだろう.それは貿易の政治的基礎を非常に難しくする.
経済学について考える.高賃金諸国との貿易はほとんどの,おそらくはすべての労働者の利益になる.1960年代に,自由貿易協定がアメリカとカナダの自動車産業を統合することを可能にした.どちらの国でも自動車産業はより限定された分野の生産に集中し,規模の利益を得た.その結果,すべての分野で,生産性と賃金の上昇が享受されたのだ.
対照的に,経済発展水準大きく異なる諸国が貿易すると,勝者と同じく敗者の大きな階級が生じる.
ハイテク産業でもインドへのアウトソーシングが新聞の見出しになっているけれど,全体としては,高度な教育を受けたアメリカの労働者が貿易によって高賃金や豊富な雇用機会から利益を得ている.たとえば,シンクパッドは今では中国の企業,レボノが生産しているが,その研究開発はノースカロライナで行われている.
しかし,より低い教育しか受けていない労働者は,その雇用が海外に流出し,同じ程度の労働者が他の分野でも生じて,その影響で賃金が低下している.外国との競争で彼らも失業し,雇用を奪い合っている.またウォルマートの低価格は十分な補償にならない.
これは国際経済学の教科書に書いてあることだ.人々の主張とはときに逆であるが,経済理論は自由貿易がその国を豊かにする,と言う.しかし,すべての者に良いことだ,とは言ってない.ただ,1990年代に第三世界の輸出がアメリカの賃金に与える影響が初めて問題になったとき,私も含めて多くの経済学者たちはデータを見た.そして,アメリカの賃金に及ぼす否定的な影響はわずかでしかない,と結論した.
今,問題であるのは,その影響がかつてほどわずかとは言えないことだ.第三世界からの製品輸入が急激に増えたからだ.1990年にはGDPの2.5%であったが,2006年には6%に達した.
しかも,輸入が最も増えているのは,非常に低賃金の諸国からである.もともと「新興工業経済圏」と呼ばれ,工業製品を輸出した韓国,台湾,香港,シンガポールは,1990年の賃金水準でアメリカの約25%であった.しかしそれ以来,われわれの輸入する国は変化し,賃金水準が僅11%のメキシコ,たったの3%か4%でしかない中国へ移っている.
この話にはいくつか条件が付く.たとえば,多くの中国製品には日本など,高賃金経済の部品が含まれている.それでも,グローバリゼーションがアメリカの賃金に及ぼす圧力は増大しているに違いない.
では,私は保護主義を主張するのか? そうではない.グローバリゼーションが,いつ,どこにおいても悪いことだ,と主張するのは間違いだ.逆に,世界市場を比較的開放しておくのは数十億の人々に希望を与える.
しかし,私はこう主張する.自由貿易の利益に疑いを示す政治家たちに,経済学を知らないとか,党主な業界の利益に従っている,と非難することは止めるべきだ.
貿易の制限はアメリカ人のわずかな人々に利益をもたらし,大多数を苦しめる,としばしば主張される.砂糖の輸入割り当てはまさにそうだ.しかし,製造業品については,その逆が正しい,と少なくとも主張できる.高度な教育を受けた労働者は第三世界との貿易増大から明らかに利益を受けるが,少数であり,はるかに多数のものが損失を被る.
私は保護主義者ではない.世界全体のために,貿易問題には市場を閉鎖するより,社会保障制度の強化などで対処してほしい.しかし,貿易を心配する者は正しいのであり,その意見に敬意を払うべきだ.
NYT December 23, 2007
In the Age of Noah
By THOMAS L. FRIEDMAN
私たちの世代は,ノアの局面に入った.
ますます多くの生物種が絶滅する時代に,われわれは生きている.現代の大洪水は世界経済のジャガノート(ビシュヌ神の第8化身クリシュナ神の像.この像を祭る山車に轢き殺されると極楽往生できると信じられている)であり,われわれは史上初めて,実際にノアのように行動する世代なのだ.すなわち,絶滅する種族の最後のオスとメスを世界果てから集めて種を保存している.それでも洪水は,ますます多くの森林,漁場,河川,豊かな土壌を,開発の犠牲にしていく.
気候変動の注目することは重要だ.しかし,炭素の排出にだけ関心を向けて,多様な生命圏の維持を怠れば,トウモロコシから作ったバイオエタノールやパームオイルで土地を侵し,自然破壊につながるだろう.インドネシアのジャワ・ギボン(テナガザル)を保護しようとするJatna Supriatna博士は,そのために森林破壊を止めようとする.森林の保護に利益を持つ企業と連携し,非合法な伐採を取り締まる地方政府と協力し,土壌の侵食を防ぎ,清浄な水を守る地域の村落とも一緒に行動する.
環境保護論は,非合法な伐採業者に買収された役人と戦い,日々の生活に森林が役立っていることを理解していない村人と争う.我々と同じように,インドネシアの人々も,生活はトレード・オフだ,と教えられている.楽しみの多い健康な人々か,あるいは,多くのギボンが住む健康な森林か? 二つの一つ,選択するしかない,と.しかし,真実はその両方を得ることだ.もし私たちがその両方を得ることに失敗すれば,どちらも失うだろう.
たとえノアが現れても,誰も救えない.
FT December 23 2007
Japan set for radical reform of markets
By Michiyo Nakamoto in Tokyo
(コメント) 東京の金融市場を再活性化するための規制緩和が紹介されています.この議論は,欧米で見直しが進むことと矛盾していないでしょうか?
グローバリゼーションによって国内の税制や規制を見直すとともに,新しい監視体制を準備するという,後半部分が聞きたいです.
Dec. 24 (Bloomberg)
Asia's Money Talked in 2007, Humbled West Walked
William Pesek
(コメント) この論説が指摘しているように,10年前はアジアが通貨・金融危機で欧米の投資家に蔑視され,非難され,企業や銀行を買いたたかれました.今や立場は後退し,アジアには資金が豊富で,欧米金融市場が混乱し,投資を求めています.William Pesek は,2007年のアジアを代表する受賞式を考えました.
``Money Talks'' Award: ドバイ,中国,シンガポール,他の政府系投資信託.かつてアメリカに投資することを拒まれましたが,今や救世主です.
``Greetings Earthlings'' Award: 日本の町村官房長官.UFOの存在を信じて,探査活動を命じる? こんな話しか日本政府はしていない!・・・というUFO政府です.
``Bulldozer'' Award: 韓国の次期大統領に決まったイ・ミョンバク氏.規制の撤廃にブルドーザーとなるか.
``Never Mind'' Award: 日本銀行の福井総裁.毎日のようにデフレが撲滅されたと報告し,5年間も金利引き上げを予告し続けた.エコノミストたちは日本が2008年に景気後退に入ると予想し,金利引き下げが必要だろうと言っているが?
``Howard's End'' Award: 昨年まで無名の政治家が,10年余り続いたハワード政権を打倒した.
``Toxic Shock'' Award: 中国へ.世界中が中国製でない商品を探しまわった.David Horseyのマンガには,こんな場面が描かれた.サンタの膝に座って,少年が言います.「有毒でなくて,アジアの貧しい子どもたちが作ったのではない,おもちゃが欲しい.」 すると,サンタは驚きます.「ワオー! 本当にサンタクロースを信じてるぞ・・・」
``Teflon'' Award: どれほど反対されても権力を手放そうとしない,パキスタンのムシャラフ大統領と,フィリピンのアロヨ大統領.
``Defying Gravity'' Award: アジアの株式市場へ.
The Guardian Monday December 24, 2007
Obama's American revolution
Dominique Moisi
BG December 26, 2007
No ordinary candidate
By Jeff Jacoby,
BG December 28, 200
Rallying the middle class
By John Edwards
NYT December 24, 2007
State of the Unions
By PAUL KRUGMAN
(コメント) 前半はアメリカの労働組合と政治に関する興味深い考察です.後半はオバマ候補の主張が労働組合の支持を失っていることへの懸念ではないかと思います.
*******************
かつて,アメリカに強力な中産階級がいた頃,労働組合も強力だった.
これら二つの事実は結びついている.労働組合がその労働者のために良い賃金と便益を得ることは,しばしば非組合の労働者にも利益となった.労働組合はまた,企業や経済エリートの政治的影響力に対する抵抗力にもなっていた.
しかし今では,アメリカの労働運動は,公務員を除いて,かつての影でしかない.1973年,民間部門の労働者のおよそ4分の1は労働組合に加入していた.しかし昨年,その数字はわずか7.4%に落ちていた.
しかし労働組合はなお政治的に重要である.そして経った今,彼らは民主党の醜い政治抗争のど真ん中にいる.
アメリカの労働組合が死んだのは「自然死」である,としばしば想定されている.グローバリゼーションや技術変化が労働組合を時代遅れにした,と.しかし,本当はそうではない.それは1970年代に始まったが,そのときアメリカの財界は,それまで労働組合とおおむね協力していたが,事実上,組織労働者に対して戦争を宣言した.
ビジネス・ウィークを読めばよい.2002年に出版された記事のタイトルは「ウォルマートはどのように組合を追い詰めているか」である.その記事が説明するように,「過去20年にわたって,アメリカ財界は労働者の集団を排除する能力を高めてきた.」・・・
その強硬戦略は,組織労働者に対する根深い敵意を示す政治環境によって可能になった.政治家たちは雇用者側の利益を優先し,また,保守派は民主党の政治基盤を弱めたかったからだ.・・・
しかし時代は変化しつつある.新しく力を持った革新運動が興隆しており,労働組合はその重要な一部である.もっとも有名なものに,サービス労働者国際組合the Service Employees International Union があり,彼らは健康保険改革を推進している.労働組合は来年の選挙で民主党を有利にする重要な要因である.
*******************
そして,アイオワの民主党党員集会に話が向きます.ヒラリー・クリントン,ジョン・エドワード,バラク・オバマの争いは激しく,民主党の大統領候補が選挙に勝つには労働組合の支持が欠かせません.
クリントンとエドワードが労働組合の支持を得ているのに,オバマの演説はむしろ敵対しています.政治の旧弊を廃する,というのは,労働組合の幹部たちには積極的な意味をなさないからです.オバマは,論争の相手を倒すだけでなく,政治基盤を拡大しなければならないでしょう.
NYT December 26, 2007
Denmark Feels the Pinch as Young Workers Flee to Lands of Lower Taxes
By CARTER DOUGHERTY
(コメント) ヨーロッパの小国,デンマークは,“flexicurity”で有名です.すなわち,弾力的で,しかも安定した雇用によって,高い成長率を実現していました.しかし,63%の所得税は,高度な教育を受けた若者たちを,ますますこの国から流出させている,という記事です.
教育は政府によって補助金を受けたデンマークで受け,仕事はEUが保証している加盟諸国のどこかで見つけ,異なる国のカップルが結婚する.彼らはもはや母国に帰らず,高い給与と低い税率を探し,子どもは英語が話せればよい,と考えます.そして,ヨーロッパのパスポートがあればよい,と考えます.
WP Wednesday, December 26, 2007
A Chance to Rein In North Korea
By Nicholas Eberstadt
BBC 2007/12/26
Dramatic 2008 beckons for Balkans
By Nick Thorpe
IHT Thursday, December 27, 2007
The consequences of inflexibility
Dimitri K. Simes
BG December 27, 2007
An Iraqi solution for Iraq
(コメント) 安全保障に関する世界の亀裂が見えます.
FT December 26 2007
Into the sunset: how ex-leaders adjust to life with less power
By Andrew Jack
(コメント) 権力者は,引退したら,何をするのか? という論説です.ますます巨大化する記念建造物,権力を温存するもの,富に換えるもの,再び権力者になりたがるもの,・・・ 政治家は遺産によって回顧されます.戦争によって,もしくは,建築物によって.ピラミッドの時代もそうでした.
FT December 26 2007
It’s a multi-currency world we live in
FT December 27 2007
Currency unions
(コメント) 「外国為替のトレーダーたちがユーロを「トイレット通貨」と呼んだのはそれほど前のことではない.しかし,今ではユーロが上昇し,ドルが下落する.
世界の支配的通貨の時代も入れ替わるだろうか? もちろん,“No” だ.しかし,ドルは90年を経て,最初の競争相手を得た.これは重要なことであり,世界経済にとって,概ね,利益をもたらす.」
なぜなら,FTは通貨間競争が金融当局をますます価値の安定化に縛りつける,と考えるからです.ドルの「途方もない特権」は失われました.
「ドルの支配はもはや当然のことではない.内外の富の保有者たちは,連銀がドルの国内購買力を維持する決定を疑い,それを投げ捨てて,対外価値や長期金利,アメリカ経済に破壊的影響を及ぼすだろう.アメリカの対外債務を見れば,連銀がインフレを選択する大きな圧力を受けている,と彼らは結論するかもしれない.」
なお,通貨同盟に関するFTの短い紹介は,その寿命が概ね50年ほどでしかないことを示しています.すべての通貨制度は,決して永続するものではなく,歴史的な制度転換を果たしました.ユーロの永続性も幻想に過ぎません.実際,かつてないユーロ高は,フランスやドイツといったユーロ圏の中核国に成長の抑制を強いています.他方,ユーロ圏の周辺にあるアイルランドやスペインではバブルが生じました.
イタリアでは,予想された通り,財政的な政策余地を失い,もし不況になって赤字を繰り返せばユーロ圏全体に亀裂を生じる情勢です.
ユーロ高を歓迎するとは,ECBも決して言えないわけです.
Death in Rawalpindi The Guardian Thursday December 27, 2007
・・・暗殺の脅迫を何度も受けていた.彼女はその危険を知っていたし,ロンドンかバーレーンで裕福に暮らす富を蓄えていたが,それでも帰国することを選択した彼女の勇気は本物である.そして,軍部の支配地域にも入って遊説し,暗殺された.
「ブット女史の遺産には善悪が混じっている.彼女はなしうる以上の約束をした.女性初の首相を二期務めたが,市民社会のルールを確立できなかった.宗教学校の近代化や女性の社会進出には成果を上げた.パキスタンに莫大な債務を負わせ,夫とともに汚職の嫌疑を受けた.ムシャラフが市民社会を攻撃したことに抵抗したけれど,それも両義的であった.最高裁判事の自宅軟禁解除を要求したのも,自分への免罪がその裁判所の評価に拠るからである.」
Jo Johnson Exit hope? Bhutto’s killing leaves Pakistan on the brink FT December 27 2007
・・・「アナリストたちは警告する.軍はパンジャブ州の州都Lahoreにおける大衆的抗議を弾圧するのに武力を行使するのは大いに躊躇するだろう.それがブット派の懐柔にムシャラフ将軍を引退させるよう強いるからだ.ブット女史はオックスフォードとハーヴァードで学び,多くのアメリカ議員が知っており,彼女の死はムシャラフ将軍のワシントンにおける支持をさらに失わせただろう.」
アメリカ政府は今も,イスラム過激派と戦うためにパキスタン軍部と協力しなければならないが,しかし,これ以上軍事政権を支持できない,というジレンマから抜け出せません.
Murderous blow to Pakistan’s stability FT December 27 2007
David Ignatius Headlong WP Friday, December 28, 2007
・・・「彼女がオックスフォードの卒業生になったとき出会ったことを覚えている.尊厳や眠気を催すオックスフォード・ユニオンの討論会をかき回していた.彼女はローリング・ストーンズのTシャツを着ていた.」
「ブットは,アメリカで過ごした大学生活から木曜日の暗殺に至るまで,大胆不敵であった.パキスタンは彼女の持った確信と勇気を得て,近代世界を受け入れるべきだ,という不動の信念があった.民主主義や自由,開放性を,スローガンとしてではなく,生き方として信じていた.彼女は完ぺきではなかった.二期目の収賄罪は本当だ.しかし,彼女は自由主義と寛容さ,変革のパキスタンを代表する人だった.」
それは「殺人政治」の典型だった,と考えます.9・11やイラクの生活で示すものと同じです.そして論説は,ムシャラフを責めてはいけない,と主張します.ムシャラフも9階の暗殺を生き延びた男であり,ブットと同じくイスラム過激派の一掃を願っている,と.
同時に,アメリカが試みたブットとムシャラフの政治的な和解のアレンジは失敗したのです.太陽に孤立した小さな島でもない限り,世界政治をアメリカが望ましいと思う形でアレンジできる余地はほとんどありません.何が起きるのか,誰が支配するのか,パキスタンの人々が決めるしかありません.
Ahmed Rashid The Dangerous Void Left Behind WP Friday, December 28, 2007
Bhutto: 'Don't let militants set the agenda' CSM December 28, 2007
Democracy assassinated BG December 28, 2007
Huma Yusuf Coming of age in the Benazir Bhutto era BG December 28, 2007
Tariq Ali A tragedy born of military despotism and anarchy The Guardian Friday December 28, 2007
Simon Tisdall All eyes on Musharraf The Guardian Friday December 28, 2007
Arif Rafiq After Benazir Bhutto The Guardian Friday December 28, 2007
After Benazir Bhutto NYT December 28, 2007
David Ignatius The Legacy of Benazir Bhutto WP Friday, December 28, 2007
Teresita C. Schaffer Pakistan at an Uncertain Hour WP Friday, December 28, 2007
Assassination in Pakistan WP Friday, December 28, 2007
Anatol Lieven Pakistan must seek a route from dynasty to unity FT December 28 2007
(コメント) パキスタンのブット元首相が暗殺されたニュースに驚きました.先日の帰国歓迎集会で多数の死者が出たにもかかわらず,その後の取り締まりができていないというのは,政治指導者や警察・治安組織が間違っていると思います.選挙によって権力を平和的に移譲できる政治状態にはないのです.パキスタンの未来に何が正しい答えなのか,私にはわかりません.
******************************
The Economist December 15th 2007
Central banks: A Christmas package for banks
Corporate restructuring: The walking dead
Property bubbles: Been there, done some of that
Disputes in the South China Sea: Whale and Spratlys
Japan’s foreign policy: The return of the Fukuda doctrine
Immigration and the presidential race: Cooking up a row
Turkey’s economy: A cloud no bigger than a hand
Economics focus: The uncomfortable rise of the rupee
(コメント) ざっと見て,これが面白い記事です.金融市場の危機と中央銀行の国際協調による金融緩和が行われて,なお,解決の道が見えません.破産処理の難しさが特集記事にもなっています.日本が経験した土地・株式のバブルについて,今まで散々,欧米の専門家は間違いを指摘していたのです.今,彼らがそれを経験しています.政策の失敗というより,システムの欠陥だ,と言いだすでしょう.
日本の親中国外交が福田政権の最大の支持基盤かもしれません.アメリカ大統領選挙では,移民政策の論争が大きな争点となりそうです.そして,資本移動と通貨の増価を,制限するのか,あるいは受け入れるのか,多くの新興市場が迷います.経常赤字の膨らむトルコと,ルピーの増価を抑える対策を取りたいインドに関する叙述がおもしろいです.