IPEの果樹園2007

今週のReview

12/24-/29

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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******* 感嘆キー・ワード **********************

ドルの没落, アジア・ハイウェー, 韓国大統領選挙, 国際金融逼迫と中央銀行の協調, 日本の失敗を繰り返すな, 食糧価格の上昇

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT December 13 2007

A physicist’s theory of the transatlantic relationship

By Philip Stephens

FT December 18 2007

The Atlantic becomes a little wider

Richard Haass

(コメント) ベルリンの壁が崩壊し,冷戦が亡くなってからの大西洋同盟は,その再定義に困っています.ソ連という脅威がなくなれば,互いにその存在やコストを受け入れられなくなったのです.しかし,冷戦後の世界がアメリカとヨーロッパの協力を必要とする場面は多くあります.アメリカの力は「相対的に低下」しましたが,その優位は疑いないものです.アメリカは単独で決定する力はないけれど,アメリカと協力しないこともできないのです.

それは19世紀後半に似ています.多くの新興勢力がアメリカと好意的な協力関係を築くかどうか,それによって将来の秩序,もしくは無秩序が決まる,とPhilip Stephensは考えます.

ドイツとフランスに親米的な指導者が選ばれたことで,大西洋同盟は改善するでしょうか? それでも社会的な差は残っており,イラク戦争やグァンタナモ収容所に関する反米主義はなくなっていません.互いに長期的な政策を予測できない状況にあることは,もうひとつの障害です.21世紀はさらにダイナミックで,流動的な事件が起こるでしょう,しかし米欧間で,軍事力の使用に関する立場は一致しません.

外交評議会の会長であるRichard Haassも,同様に不確実性と協力の重要さを,ヨーロッパであれ,日本であれ,韓国,ロシア,中国,などにも協力関係を拡大することを訴えます.


IHT Friday, December 14, 2007

As the dollar slides

By Howard M. Wachtel

世界経済における支配的な準備通貨の地位をドルが失う時がいよいよ来たのか? 60年間も維持してきたが.

ユーロに対してドルが下落した最近の事情はそんな憶測を生んでいる.連銀が金利を三回も引き下げた後,この2年で40%もユーロに対するドルの価値が失われてきた傾向に拍車がかかった.

このいささか難解な金融ニュースは金融市場や外国為替の投機業者の関心事であるだけでなく,ユーロ圏を旅行するアメリカ人も悩ませている.第二次世界大戦以来,ドルは他国の準備通貨であった.それは世界中で受け取られたし,価値が安定していたからだ.

自国の通貨が準備通貨になることは,大いに有利である.アメリカは世界に販売する以上に購入し,巨額の貿易赤字を出しているが,アメリカに物を売る国はドルを外貨準備にすることを強く望んでいる.貿易赤字は債務なのだが,他国がそれを外貨準備にしている限り貿易額を均衡させなくてもよい.この金融的な現実は政治権力をもたらす.なぜなら多くの国がその通貨を得るために準備通貨国の言いなりになるからだ.

ユーロの導入はこうした政治的・金融的な事情を考慮したはずだ.今や,ベネズエラのチャベスも,イランのアフマディネジャドも,ドルの没落を待ち望むヨーロッパ人の一群に仲間入りしている.金融や政治問題を話し合う外交の公式な席ではなく,同様の希望がロシアや中国,中東の指導者たちによって語られている.

各国が準備通貨を決める理由はいろいろある.利回り,リスク,その地位を競う諸国の経済的な強さ,その国の意思決定に関する信頼感,など.

リスクは為替レートの安定性を左右する.ドルを外貨準備とする諸国は,ユーロに対して,保有するドルが40%も価値を失った.特に,ユーロ圏から物やサービスを買うなら.

この数年,特にこの数カ月,こうした要因はドルに対して悪影響を及ぼし,ドルを保有するリスクが急速に高まっている.ユーロ圏の経済は成長を加速し,最近の経済成果に自信を回復している.ドルに対する利回りは2007年悪の連銀による金利引き下げで悪化した.

最後に,アメリカの政策決定に関する一般的な不安がある.それは2003年のイラク戦争に始まり,新しい問題が起きるたびにアメリカの統治能力を疑わせた.

たとえ支配的な準備通貨国であっても,ドルに対する投機が起きても不思議はない.

アジアや中東,ロシアから見れば,彼らの準備通貨の構成は問題を生じさせる.つまり,貿易黒字を今までと同じようにドルで保有して良いのか? 外貨準備をユーロなどに分散させるべきか?

ドル資産に対する利回りは低下した.金利の低下と,アメリカ金融市場の不安定性がその理由である.ドルの見通りは将来のリスクをさらに高めている.このようなときに過去の準備資産ポートフォリオを維持する国などあるだろうか? ドルの主要な準備保有国がユーロに転換しないわけなどあるか?

1999年,ユーロが導入されたとき外貨準備に占めるドルの割合は71%であった.今では65%に低下し,ユーロは25%を占める.EUへの新規加盟諸国がユーロを準備通貨にし始めた.しかし,まだドルを逃れる動きは表面化していない.たとえば中国の外貨準備は1兆4000億ドルに達しており,2007年だけで5000億ドルも増えた.中国は今後,外貨準備を分散する,と明確にしている.

ドルが準備通貨としてとどまる理由は,そのサンク・コスト(埋没費用)である.ドルからの資産分散にはコストがともなう.あまり急激に動かすと,ドル安が加速し,損失が増えるのだ.それはアメリカ以上にドル準備を保有する諸国に負わされる.追加の準備をユーロにすることは徐々に進むが,それはドル安を長引かせるだろう.もし連銀が金利を下げ続ければ,ドル資産の利回りが悪化し,為替リスクが高まり,ドル暴落も起こる.

金利の引き下げも,貿易赤字も,ドル安を加速させる.アメリカ政府がドル安の原因を他人のせいにするのは筋違いだ.21世紀にもアメリカが指導的な国であると示すことが最も重要であり,それは世界金融の事情だけではない.しかし,いつ,どこにあるとは言えないが,世界の屈折点があるはずだ.すなわち,ドルの保有によるコストが,ドルを廃棄するコストを超える点だ.

Foreign Policy, 18 December 2007

Don’t Bet Against the Dollar

Thomas Palley

世界経済はドルで動いている.それが変化することはない.中央銀行の準備の3分の2はドルであり,国際商品価格の表示も,世界貿易の契約も,ドルで行われている.

それでも多くの者がアメリカの貿易赤字やユーロに対するドルの減価を指摘する.そして,ドルの時代が終わると考える.もしそうなれば,ドル安がさらに進み,インフレを高進させるかもしれない.またドル資産への需要が失われ,資産価格は下落し,金利は高騰する.アメリカに不況が訪れ,成長力も奪われる.

幸い,こうした不安は間違いだ.ドルの水準は調整されるだろうが,それは健全なことであり,ドルは最上位にとどまる.本当に重要なことは,アメリカの貿易赤字が職場や需要を流出させていることだ.アメリカの製造業は衰退し,支出を続ける債務が累積している.なぜドルがこの地位にとどまる必要などあるのか? ドルは今もベストの選択である.世界は今も国際取引に通貨を必要としており,ドルに勝るものはない.13兆ドルを超えるGDP,効率的で流動性に富む資本市場をもつ点で,アメリカ経済は規模においても活力においても並ぶものがない.

さらに,それを補う説明として,「最後の買い手」論がある.多くの国がドルを準備として保有するのは,アメリカに対する貿易黒字を好むからだ.その理論では,成長や完全雇用に足りる国内需要が無いから,彼らは輸出に頼っている,という.アメリカは世界最大の消費市場として,自国通貨をドルに対して安く維持し,輸出を増やしたいのだ.すなわち,彼らはドルを買い,それを保有するだろう.この10年の経済史はそれを示している.1990年代後半,アメリカの消費が世界の好況を実現し,それが国内需要の不足を補った.しかし,輸入財への莫大な支出はアメリカの貿易赤字を2006年に7590億ドル,GDPの5.8%にまで増やした.

中国など,東アジア諸国は,特に輸出に頼っている.その政策は貿易黒字と途方もないドルの備蓄をもたらした.財務省によれば,アメリカ国債の保有額は,中国・香港が4550億ドル,日本が5820億ドル.東アジアの国にはドルの外貨準備を減らそうとする動きもあるが,選択肢は限られる.なぜなら彼らは輸出を望んでおり,他国と競争しているからだ.代わりに投資できる資産もない.円はあまりにも利回りが低い.だからユーロに投資するが,それも近年の大幅な増価でリスクがある.

どこかの国がドルを放棄することはありえないだろう.むしろドル建のアメリカ国債から商品や株式に向かうだろう.中国はすでにそう言って,政府系投資信託により実行する計画だ.さらに,今ではユーロに対してドルが大きく減価しているから,アメリカの資産が魅力的になった.世界中の資産がアメリカのドル資産を買い,ドル安が止まる.今後数10年は,他国の経済がアメリカに追いつくにつれて,ドルから他通貨への緩やかな移行が進むだろう.その過程は漸進的であり,現在のシステムは維持されるだろう.

しかし心配事がないとは言えない.アメリカは国際金融の支配を維持しても,経済が停滞することは可能である.アメリカが世界を不況に向けても,アメリカの地位は失われない.なぜならすべての通貨の地位が一緒に後退するから.

だが,ドルの支配に執着することは間違いだ.「強いドル」を支持する政策がドルの過大評価を導いた.むしろ持続可能な繁栄を目指すべきだ.それには過大な貿易赤字を防ぐ水準に為替レートを安定させることが一つの条件だ.それは「健全なドル」を維持し,正しく機能するドルの基準をもたらす.その意味ではユーロの増価はドルへのストライキではなく,歓迎すべきことである.中国の人民元や日本の円は増価するべきだ.そしてアメリカの政策担当者は,次の段階として,将来の為替レートの不整合を予防する制度を築くべきだ.

しかし,それは将来の課題であり,今はドル安を平静に受け入れよう.ドルは下落するが,退場しない.


NYT December 14, 2007

After the Money Gone

By PAUL KRUGMAN

(コメント) アメリカ連銀の400億ドル資金供給計画にも驚かず,クルーグマンは,それが機能しないだろう,と主張します.1987年のブラック・マンデーや1998年のロシア発の国際金融危機には機能したのに.

その理由は,単純です.危機の原因が「流動性の不足」ではなく,「支払い不能」であるからです.健全な企業・銀行でも流動性不足によって倒産することがあります.それは流動性を供給することで助けられます.しかし,不良債権が積み上がった銀行を救済しても損失が増えるだけです.むしろ早めにつぶす方が良いでしょう.

連銀はそれでも,事態を鎮静化するために必要だ,と考えます.そして,今回の危機は金融市場への信頼が失われたことを示しています.住宅市場が銀行の不良債権処理と住宅価格の下落によって回復し,金融市場の信頼回復ができるまで,数年間は解決しない,と考えます.

NYT December 16, 2007

You Can Almost Hear It Pop By STEPHEN S. ROACH

The Facts Say No By MARCELLE CHAUVET and KEVIN HASSETT

Bet the House on It By LAURA TYSON

Not if Exports Save Us By JASON FURMAN

Nobody Knows By JAMES GRANT

Wait Till Next Year By MARTIN FELDSTEIN

(コメント) アメリカは不況になるのか? いろいろな意見が並びます.

STEPHEN S. ROACHは不況が来ると考えます.なぜなら住宅市場の影響はアメリカ人の消費を損なうからです.住宅価格がこれほど下落するのは1933年以来初めてです.それはITバブルの影響がGDPの13%である投資に限られていたことに思えば,GDPの72%に影響するのです.

アメリカの消費不況を,中国やインドの好況が埋め合わせることもありません.まだ,その規模が違いすぎます.また,連銀の積極的な金融緩和政策も,石油価格や食糧の価格が上昇傾向にある以上,インフレの危険を無視できません.むしろ,今度こそバブルに冒されがちな金融政策を改めるべきです.

すでに不況なのか? 既存のデータと統計モデルを使って示されるのは,現在のアメリカ経済が不況にはなっていない,ということです.

LAURA TYSONは,このままでは不況に向かう,と考えます.住宅の差し押さえ,価格下落,モーゲージを組み込んだ債券や金融資産の価格下落,などが悪循環をなしているからです.連銀は金利をさらに下げ,流動性を供給するべきです.政府も,支払い猶予,金利凍結,政府の支払い補助,など,もっと積極的な対応を採るべきです.

JASON FURMANによれば,まだマクロ経済指標に不況は表れていないけれど,問題は金融危機が新しい傾向を示していることです.日本のバブルもそうであったように,金融市場の破たんは広く波及し,長期にわたって消費を損ないます.アメリカを不況から助けるのはドル安だ,と考えます.それは輸入を抑え,輸出を増やしつつあります.これまでの好況の成果を社会保障などに配分し,不況の影響を緩和するべきです.

JAMES GRANTの意見では,経済学者は不況を解消できると信じているが,それを招くこともあり,不況には効用もある.とすれば,政治家が口を出し,債務を増やして不況を回避するより,来るなら受け入れろ,と言いたいのかもしれません.


NYT December 14, 2007

The Deep-Fried Truth

By SARAH MURRAY

(コメント) 食料の自給自足は環境に優しいか? 食料の輸送距離で消費を差別化する「フード・マイル」をMURRAYは批判します.巨大なコンテナで運ぶ穀物は,一つ一つ摘み取った少量の果物や野菜を陸送するよりも,はるかに長距離をエネルギーの少ない消費で運べるからです.

食糧の自給運動は,工業化された農業に反対する人々が支えているのでしょう.しかし,66億人の人口は,しかもその半分が都市に住む以上,大量生産によって食糧を生産しなければ養えない,と主張します.アグリビジネスを批判するのであれば,単純な目標で満足するのではなく,もっと安全で,健康な,環境を持続できる農業をおこなうように要求するべきだろう,と.


NYT December 14, 2007

Age of Riches: A New Breed of Billionaire

By LANDON THOMAS Jr.

(コメント) NYTの記事は,新興市場の新しい富裕層と,彼らの社会慈善事業について紹介しています.かつては所得格差など当たり前の社会であったけれど,新しい富裕層は教育の重要性や社会の改革に積極的な役割を見ているようです.何よりも,自分たちがそうである場合.また,ビル・ゲイツと同じように,慈善事業によって社会的な尊敬を得たいと思うのです.

トルコ,インド,メキシコ,ロシア,など,世界的なクラスの富豪は石油や金融に関わって生まれていますが,それと並んで,製造業でも起業家が育っているようです.彼らは特に教育や医療において寄付を行い,あるいは,直接に建設・運営を担っています.


NYT December 14, 2007

For China and Vietnam, a Highway Link Means Speedy Growth

By DONALD GREENLEES

(コメント) アジア・ハイウェー計画の一部であるベトナムと中国とを結ぶ高速道路,152マイルの建設が始まります.アジア開発銀行が,単独の案件としては最大の,11億ドルを低利融資します.すべての計画が実現すれば87000マイル,アジアの27カ国を結ぶ物流の統合システムです.

「ベトナムと中国の兵士たちが,短い,しかし激しい戦闘を30年近く前に行い,銃弾を交わした土地で,もうすぐ高速道路を建設するために,双方の国から建設労働者たちが集まる.高速道路は,かつて厳しく防御されていた地域の境界に新しい富をもたらすと期待されている.」

2012年までに,高速道路は完成し,トラックで3日かかる移動が9時間になるだろう.中国の扶南地方で生産された商品が速やかにベトナムの港から輸出できる.そしてベトナムの輸出業者たちは中国市場に到達できる.」

かつては戦車と軍隊が国境を超えたが,今では貿易と観光で国境を超える,と関係者は期待します.ベトナムは,特に貧しい北部の4州が発展することを重視しています.中国は輸出市場を得られるでしょう.ただし,道路の建設には住民の集団移住という社会的コストがともないます.


Asia Times Online, Dec 15, 2007

A stock crash is just what China needs

By Sheridan Prasso

(コメント) 「中国政府を市民社会の制度の育成に熱心にさせるとしたら,それは何か? 最善の圧力は株式市場の暴落だろう.」

実際,アメリカのエンロンでも,韓国のチェボルでも,株式市場のバブルとその暴落は企業統治を重要な問題にしました.それを改善し,情報の公開や株式の権利を拡大することで復活したのです.中国でもそうだろう,と考えます.

しかし,韓国の金融危機と市場改革が国際秩序の理想だ,と言えるでしょうか?


The stakes in Seoul The Japan Times: Saturday, Dec. 15, 2007

Korea’s liquidity squeeze FT December 17 2007

South Korea’s new president FT December 19 2007

Clouds over Seoul The Guardian Thursday December 20, 2007

FT December 20 2007

Seoul’s bulldozer

Asia Times Online, Dec 21, 2007

The hard part starts for Seoul's new man

Donald Kirk

Asia Times Online, Dec 21, 2007

Promises undermine democracy in Korea

Van Jackson

(コメント) 韓国の大統領選挙で野党の候補が当選し,政権交代が実現しました.新しい保守派のLee Myung Bak大統領が,金大中の始めた太陽政策を継続するか,不安があるようです.

金大中が掲げた二つの外交政策,北との和解,日本との和解・協調は,東アジアの情勢を根本的に変える可能性を示していたと思います.日本政府がそれに応えられなかったのは,本当に,残念でした.

金大中の政策を引き継いだノ・ムヒョンRoh Moo-hyun大統領は弁護士出身で,労働組合や学生を重視しました.特に,太陽政策を継承し,北朝鮮との和解を進めようとしましたが,その反面,北朝鮮に対決姿勢を採ったアメリカや日本との関係は悪化したように思います.反米や反日を不器用に利用した面があったかもしれません.The Japan Timesの論説は,政治的支持を失ってナショナリズムを煽った盧泰愚が退き,ビジネスマンの保守派大統領が登場することで,日本の自民党や財界と大いに協力できるだろう,と期待しています.

しかし,同じ韓国のニュースで,欧米の金融逼迫が韓国に波及している,というのがあります.韓国の銀行は積極的な融資の拡大に走ってきたそうです.新大統領自身が金融ビジネス(BBK)で詐欺の容疑を受けていました.資本流出や輸出の不振で経済が低迷した(4.4%でも!若者は失業におびえる)ことは新大統領への支持を拡大しましたが,解決は容易ではなさそうです.不況や金融危機から,ヨーロッパで起きているように,あるいは,アルゼンチンで起きたように,主要な銀行が競争によって外資に淘汰される事態になるのでしょうか?

北に対する強硬姿勢や保守派の政権は,アメリカや日本と協力することで経済困難も打開する道を模索するでしょう.日本の財界が協力する,というのは,企業の連携や統合化,銀行の買収や資本関係の強化であるとすれば,政治的な協調関係,経済制度の共通化が必要になるでしょう.これは,保守と革新が政権を交代しながら,金大中の掲げた理想を実現する過程なのかもしれません.

一方,左派のThe Guardianは新大統領とその太陽政策見直しを警戒しています.ある意味で,ブッシュ政権が最後に和解を実現しようとしているタイミングと,微妙にずれているわけです.

またLee Myung Bakの経歴は,大阪からの戦後移民で,現代建設で最年少35歳のCEOとなったコリアン・ドリームである,と記事は伝えています.

新大統領は南北和解より人権問題を重視し,北朝鮮を批判し,国連の制裁にも参加するでしょう.そして国内では所得倍増計画や金融ビジネスの開放を唱えます.民営化や外国からの投資,ヘッジ・ファンドの力で韓国経済(そして財閥・チェボル)の活力を復活できるでしょうか? あるいは新国土建設の公共投資とグローバリゼーションのギャンブル嗜好を全開し,新しい東アジア危機の引き金となるでしょうか?

Van Jacksonの論説は,「政治家は嘘をつく」で始まります.それは国境や文化,イデオロギーを超えた真実だ,と.まったく同感です.新大統領となるLee Myung Bakの公約は「747」と呼ばれました.成長率を7%に高める,一人当たりGDPを4万ドルにする,そして,世界第7位の経済大国を実現する,というものです.

民主化後,憲法によって5年の任期を終えれば,大統領は再選されません.つまり,再選を目指して公約を実行する責任がないわけです.韓国では,政治理論の仮説としても,嘘をつくことが奨励されるでしょう.民主的政治システムは未成熟で,大統領選挙のたびに政党そのものが再編されています.むしろ1987年の民主化以前から政界に登場していた集団と,民主化によって政治に参加した集団とが対立している,という指摘がおもしろいです.この政党再編現象は,ますます党の公約を有権者に軽視させます.

たとえ建設会社では「ブルドーザー」として社員を動かせても,たった一回のソウル市長の経験だけで韓国の官僚機構を動かせるとは思えない,ともJackson指摘します.大統領選挙は守る必要のない政治宣伝のお祭り騒ぎであり,有権者の楽観を刺激する方が勝ちます.そして短期間の高揚感が去れば,指導者がだれであれ,官僚制の支配と激しい政治対立が再現するでしょう.

韓国の政治システムと文化が変わらない限り,政治的権限を動かせるのは,官僚制か,独裁者です.


NYT December 16, 2007

A Carbon Cap That Starts in Washington

By JUDITH CHEVALIER

FT December 17 2007

Who bears the load? Bali le aves big concessions needed on climate change

By Fiona Harvey and John Aglionby

NYT December 16, 2007

It Too Late for Later

By THOMAS L. FRIEDMAN

NYT December 19, 2007

What Was That All About?

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) 環境問題を,消費者や労働者と結びつけることが重要です.環境規制がない国から輸入した場合,その地球環境に及ぼすコストを消費者が支払う仕組みを考えます.また,環境規制のある国から規制のない国に投資が増えた場合,労働者が職を失うコストを投資家が支払う仕組みを考えます.それは消費者や投資家,そして中国が,負担を強いられる制度です.

世界に共通の環境規制を実施することが最善です.しかし,その実現は望めないでしょう.そこで,主要国と発展途上国とが個別に協力し,規制を助けあう必要があります.互いの環境規制を非難するより,消費者や労働者に注目して,環境破壊のコストを支払わせるシステムを築く方が,各国政府を国際規制に向けた交渉へ向かわせる,と記事は指摘します.

他方,京都議定書に代わる国際的な枠組みをめぐって,裕福な開発諸国と貧しい発展途上諸国,新興工業諸国,などの対立があって,容易に合意を達成できません.開発諸国は,世界的な規模の規制と排出権取引を支持するけれど,貧しい諸国にどの程度,規制の譲歩や例外を認めるか,また融資や財源の移転をするか,合意は難しいようです.国際金融や援助の枠組みを同時に見直すことになるでしょう.

「先に成長する.環境問題は,後で解決する.」 この考え方は滅んだ,とTHOMAS L. FRIEDMANは強調します.しかし,アメリカ政府は排出量の上限や期限,合意のプロセスを約束しません.ブッシュ政権が認めるのは「新技術の必要性」だけです.それは市場を介して少しずつもたらされるでしょう.促進するために市場価格を歪めることも間違いです.

彼らアメリカ政府の専門家たちは国際会議で見事なプレゼンテーションをしたそうです.そして環境保護を話し合うために集まった人々から非難されました.「お前たちは何者だ? どこから来たのか? 惑星ブッシュだ,などという冗談は通じないぞ!」

FRIEDMANは,アメリカ政府が自国を繁栄させ,安全で,技術革新の盛んな,そして同時に,最もクリーンでエネルギー効率の良い国になれば,世界が我々に従うことを主張できる,と考えます.そのためには,市場に任せるのではなく,市場に関与することを求めます.ブッシュ政権にはできないことですが.


The Observer Sunday December 16, 2007

Beware those who would bail us out of this chaos

Will Hutton

(コメント) 2000年の最初の10年は1920年代にますます似てきた,とWill Huttonは考えます.「どちらも過度な豊かさと傲慢な銀行融資,世界は変わった,という不遜な楽観主義が広まっていた.1920年代のブームは,アメリカの銀行システムが崩壊して,スランプに変質した.今日のわれわれにも同様の運命が待ち受けているのか?」

アメリカ連銀とECB,イギリス,スイス,カナダの中央銀行が協力して,500億ドルの資金を供給しました.それはいくらかでも短期的な緊張緩和を促したでしょう.しかし1932年,選挙に勝利して最初に,F.D.ルーズベルトが行ったのは,共和党員たちが社会主義と非難したような,新しい公的機関を設けてアメリカの破たんした銀行を再建することでした.

今や欧米の大銀行には中国や中東の政府系投資信託が大規模に資本注入しています.あるいは,直接に,イギリスの金融規制・監督は強化され,ノーザンロック銀行のような破たん銀行の国有化も進むでしょう.

WP Sunday, December 16, 2007

What Bankers Fear

By David Ignatius

(コメント) David Ignatiusは,銀行も,ヘッジ・ファンドも,投資家も,互いに信用できなくなって,融資や売買が行われなくなった,と指摘します.ケインズは「通貨供給」だけでなく,「流動性選好」を問題にしました.

ケインズが主張した以上に,解決は簡単でしょうか? いまや大恐慌を緩和するために失業者たちを雇い,穴を掘ってお金を埋め,また掘り出す仕事にも失業者たちを雇う,という面倒なこともないのです.「ヘリコプターが離陸して貨幣をばら撒く」だけでよい,と騒いでいます.しかし,たとえ中央銀行が協力して市場に通貨を供給しても,中央銀行の立場は矛盾したものです.

一方では,中央銀行は銀行が相互の不信から融資を削ってしまう悪循環を恐れています.しかし他方で,日本政府が行ったような,銀行が不良債権を温存し,いつまでも処理しないで停滞を長引かせた失敗を繰り返したくないのです.たとえ市場に通貨が供給されても,市場が正常化する前には,禿鷹たちが死肉を食らうしかない,と市場関係者は静観しています.

FT December 16 2007

Hold tight, the central banks have no plan

By Wolfgang Munchau

Dec. 17 (Bloomberg)

`Tis Not the Jolly Season for Central Bankers

Caroline Baum

FT December 17 2007

ECB steps up liquidity fight

By Ralph Atkins in Frankfurt, Gillian Tett in London and Krishna Guha in Washington

FT December 17 2007

The Fed must not play Santa to the markets

By Kenneth Rogoff

(コメント) 中央銀行には金融危機ウア不況を回避する手段がある,という思い込みは,もはや消え去ったようだ,とWolfgang Munchauは書きます.5つの中央銀行が流動性を供給したけれど市場の不安は払しょくされず,むしろ市場関係者はこの危機が流動性によるものではない,という確信を深めました.いずれの銀行が倒産の危機に瀕しているか,誰にも分らないのです.不動産市場が底を打つまで,危機の広がりは止まらない,と.

インフレ目標を引き上げる,いわゆるリフレ政策を採るべきか,という問題も議論されているようです.日本銀行はこれも拒んで(おそらくそれも一因となって)停滞を続けました.悪循環が起きると思えば,不動産価格の基準に下限を設けて,政府が積極的に購入することも有効ではないか,と私は思いました.香港政庁でも株価を買い支えたように.

なぜインフレ抑制に厳しい見方を採ってきたECBが,現在,積極的な流動性供給に指導的役割を果たしているのか? 金融危機がデフレ的な効果を事後的に及ぼすから,です.逆に,バブルは実物市場に対しても,事後的にインフレ的な影響を及ぼします.為替レートの安定化や資本移動も,問題を複雑にし,中央銀行のインフレ目標をむしろ曖昧な後追い政策に変形してしまうかもしれません.

市場はいつも連銀の金融政策を批判します.市場が悪化していることを正しく反映していない,というわけです.しかし,「市場参加者たちは,経済学者のローブをまとった連銀総裁など望まない.彼らはいつも,サンタクロースの衣装でいてほしいのだ.」

市場にとって,連銀が重視する2,3年先の経済事情など永遠の未来であり,無意味です.もし金融緩和を急ぎすぎたら,2,3年先にインフレが高まって,金融政策が難しくなるとKenneth Rogoff考えます.

The Wall Street Journal, 17 December 2007

The Global Money Machine

David Roche

FT December 18 2007

Monetary rescue helicopters getting bigger

By Gillian Tett

IHT Wednesday, December 19, 2007

The scourge of liquidity

By Philip Bowring

FT December 19 2007

Money market intervention

FT December 20 2007

Bank regulation

(コメント) David Rocheは,融資と証券化やデリバティブによって市場が作り出す「流動性」に依拠した金融市場の変化を「ニュー・マネタリズム」と呼びます.そして,中央銀行は通貨供給を管理できなくなります.たとえ協力して資金供給しても,資産市場は崩壊し,金融市場の縮小を逆転させることはできません.

世界金融はどうでしょうか? 欧米における金融逼迫と,それを緩和する金融政策の影響は,ドルとの為替レートを安定化する中国の金融当局に一層の金融緩和を強いる結果になる,と指摘します.それは中国のインフレやバブルを爆発させ,急激な金融緩和や不況をもたらすでしょう.

Gillian Tettは,その後も中央銀行の金融市場介入は増大している,と指摘します.まるで日銀の量的緩和のようです.まだ金利がゼロというわけではないですが.金融不安は同じように膨張している,とTettは考えます.

Philip Bowringは,自ら金融監督に失敗した厳しい結果を,市場に通貨を印刷・供給し続けて延期する主要国の中央銀行を,内外に対して無責任だと考えているようです.

FT December 20 2007

No more easy cash: banks must take their losses

By Charles Wyplosz

先週行われた中央銀行による一括流動性供給は見事だった.しかし,銀行間市場が凍結してから5カ月も経つのに,まだ危機は去らない.銀行は現金に飢えている.中央銀行は銀行間市場を回復するのにできることをすべてやった.モラル・ハザードのリスクも冒した.それでようやく「金優大逼迫」を回避したけれど,トンネルの出口は見えない.今や商業銀行が厳しい問いに直面するべきではないか?

彼らはオフ・バランスシートで儲けていながら,その不安から現金を積み上げている.それは互いに相手の金融逼迫を憶測するからだ.慎重さを欠いた行動が,最近の彼らの姿勢だった.

これ以上の通貨供給は永続的な解決策につながらない.つまり,銀行間市場が復活しない.そのためには,銀行が互いに信用できることだ.自己資本の増強が唯一の答えである.シティバンク,USB,モルガン・スタンリーは最近になって行った.巨額の損失を埋めるには新しい株式の発行で賄うしかない.誰が資金を出すかは重要ではない.政府系投資信託でも,解決に役立つ.

明らかに,株主たちはこれを嫌う.しかし,これこそ株式保有である.もし企業が損失を出せば,株主はその負担を分け合う.それを遅らせることは,問題を解決するのではなく,惨状を隠しているだけだ.

非常に少ないコストで中央銀行が資金を供給してくれるので,株主たちはこの問題を避けている.こうしたことをいつまでも許しておく理由はない.生産を延期する戦略は日本に失われた10年をもたらした.世界有数の巨大銀行が損失を出し,株主はその損失を政府の支援策で隠し続けたのだ.しかし結局,損失を被るしかなく,その間に日本経済が支払ったコストは空前絶後の規模だった.この失敗を繰り返してはならない.

当時の日本と非常に似ているのは,銀行が不況の恐怖にただ乗りしていることだ.信用が減少し,不確実さが増しているとき,中央銀行が金融引き締めをする度胸はない,と彼らは考えている.中央銀行が彼らに一定の猶予を与えるのは正しいが,彼らがそれをどのように使うか尋ねる権利がある.わずかな例外を除いて,彼らは何もしない.だからメッセージを送るべきだ.銀行は損失を受け入れて資本を増強せよ.もうすぐ流動性がなくなるぞ,と.

銀行は現金の山に居座っている.中央銀行が明確にするべきことは,年末の決算が終われば銀行間市場のレートが上昇する,ということだ.それは過去数ヶ月間においてあふれていた膨大な流動性を銀行が手放す誘因として必要とされるだけ上昇する.つまり,銀行を脅すのだ.

これまでの経過を考えることだ.中央銀行は長年にわたり金利を非常に低く抑えた.それは不合理なリスクを取って,株主の利益だと言うだろうが,銀行に豊富な利潤をもたらした.同時に,世界中で膨大な外貨準備をもたらした.今こそ,その大規模な逆転が起きるに違いない.

危険な行為はここかしこで損失を生じる.それは過去の利益を相殺するものだ.銀行間市場がよみがえり,こうした損失を受け入れねばならない.幸い,現金は外貨準備に蓄えられ,政府系投資信託として利用できる.循環がこうして閉じられる.

金融的な保護主義者は憤慨するだろう.新参者が我々の企業で重大なシェアを握るのは楽しくないだろうが,安易な融資の時代が失敗であったことも受け入れねばならない.資本主義の基礎は,失敗を負担することだ.これが現状である.この惨状を終わらせることだ.


FT December 16 2007

Speak up Asia, or the west will drown you out

By Chandran Nair

(コメント) アジアの成長,アジアの奇跡と言っても,それらは西側のインテリが言いふらしたことです.1980年代のような「アジアの価値」を唱えるアジア人も虚しいものでした.この論説は,プリンストンやオックスフォード,英語のメディアに頼るのではなく,アジアにも優れたインテリ層が育ち,西側に対抗できるような多様な発言を共有するべきだ,と主張します.そのために企業や政府も大学や研究所,シンクタンク,アジアのメディアを支援し,知識人たちは国境を超えて活発な討論に参加するべきだ,と主張します.


The Guardian Monday December 17, 2007

What makes a country?

Aleksandra Lojek-Magdziarz

NYT December 17, 2007

A Surreal State

By ROGER COHEN

(コメント) 国家はなぜ維持されるのか? それが民族や文化的な同質性,イギリス人らしさや日本人らしさ,ナショナリズムに依拠しなければならない理由はあるのか? 移民が増えることでイギリスの国民性や親密さが失われる,と心配されています.それはグローバリゼーションを無視した人種差別主義や排外主義の発作として,次第に解消されるでしょうか?

2080年には,九州と四国に中国語圏が,北海道の北西部,東北の西部数個所にロシア語圏が成立し,人口構成も「日本生まれの日本人」が50%を下回る状態を続けているかもしれません.東京政府による連邦統治が機能しなくなる,という政治の危機状態に至っても,その時点で世界有数の所得水準や技術水準,金融市場を「日本」が実現しているなら,「国民」はそんなことを気にしません.重要なことは平和や治安であり,日本の四季の美しさであるから,血統に頼らない天皇制度や円の金融市場だけが「日本人」の統一性を継承することに何も問題はない,と人々は思うからです.

ますます憎しみ合う少数民族,住民集団をどうするか? グローバリゼーションでますますEUなどの上位の統治機構に権限を移譲する小さな国家はどうするか? ベルギー分裂を危ぶむ記事を読んで,そんなことを思いました.たとえ連邦政府が200日間も成立しないとしても,「これは危機ではない」と.


IHT Monday, December 17, 2007

A quiet anniversary

By Eamonn Fingleton

(コメント) 南京大虐殺の70周年記念日に関する論説です.19371213日,日本軍の南京占領とともに,市民の虐殺が始まりました.6週間で15万人が殺された,と推定されています.この犠牲者の数や経過について,日本と中国で激しい意見の対立があるわけです.この記事は,日本が中国の経済復興や国際関係の回復に舞台裏で尽力し,中国政府も感謝していること.また,南京市が日本からの援助や投資で繁栄していること,を指摘します.

それでも「南京虐殺」は政治問題や内外の反対派に対する威嚇として,今後とも,繰り返し双方の政治集団が極端な主張を通すために利用する事件になるでしょう.


The Guardian, December 18, 2007

Vote - or else

Peter Singer

(コメント) オーストラリアでは東京が法律で義務付けられています.一人が投票してもしなくても,政権が変わるわけではありません.人々は「フリー・ライダー」の誘惑に負けてしまうでしょう.しかし投票率が下がれば,国民の中では少数の政治集団が政治を支配する危険があります.

それを防ぐためには,投票を強制的に行う仕組みも必要です.オーストラリアでは投票しないと,あとでその理由を説明するよう要求する手紙を受け取るそうです.旅行や仕事など,正当な理由なしに棄権した場合,若干の罰金を支払わねばなりません.それは効果的なようで,投票率は90%に達しています.それは罰金のコストだけでなく,多くの人が投票すればするほど,選挙による民主主義が社会的規範となって,棄権する者が非難を受けるからです.

憲法改正の国民投票法でも最低有効投票率を決めなかった日本の政治家たちは,それを大いに反省して,新たに投票促進法を成立させてほしいです.


FT December 18 2007

The dangers of living in a zero-sum world economy

By Martin Wolf

(コメント) Martin Wolfは考えます.産業革命は豊かさをもたらし,それは国際秩序と民主主義を安定させました.もし産業革命によって人々が豊かになる機会を得られなければ,彼らは奪い合うことで豊かになろうとしたはずです.奴隷制度や帝国主義の歴史が示しているように.しかし,そのような時代は過去のものとなりました.戦争は,富をもたらす産業革命や自由貿易をいまだに実現できない破たん国家の内戦として,残っているに過ぎません.

それゆえ,環境保護やCO2規制を自由主義者は伝統的に嫌うのです.もし自由な取引を規制し,成長を損なうなら,それは人々が豊かになるという希望を奪い,改革の政治的な基盤を失わせます.世界は再びゼロサム秩序に戻り,地域の略奪集団に占拠されるのではないか? しかし,環境破壊を放置することも同様に将来の成長を奪う心配があります.


YaleGlobal, 18 December 2007

As Immigration Debate Generates Heat, Dust Gathers on a Workable Plan

Joseph Chamie and Michael S. Teitelbaum

FT December 20 2007

Schengen at 24

(コメント) アメリカとヨーロッパにおける移民論争の現状を要約した記事です.アメリカでは議会,ヨーロッパでは国境管理の廃止,が焦点になっています.


William Pesek Robin Hood Makes Unwelcome Appearance in Japan Dec. 19 (Bloomberg)

Japan needs to revive consumption FT December 19 2007

Japan falters FT December 19 2007

William Pesek Meet Woman Who Lived to Tell About the Yakuza Dec. 20 (Bloomberg)

(コメント) 福田首相は,都市から奪って地方の貧しい民に施しをする,似合わないけれど,ロビン・フッドになって自民党の人気回復を図っている,とWilliam Pesekは紹介しています.しかし本当の問題は,景気回復が賃金上昇や,若者による新企業の増加につながらないことだ,と.

もう一つは,ヤクザの紹介です.


Asia Times Online, Dec 20, 2007

Christmas is made in China

By Lester R Brown

YaleGlobal, 20 December 2007

“Silent Night” in China

Peter Kwong and Dušanka Miščević

(コメント) アメリカ人が購入するクリスマス製品の7割から8割が中国で生産されたものである.子どもたちはサンタクロースが中国人だと思うだろう・・・!

他方,中国でもクリスマスを祝う行事が増えています.新興の世界でも神々は奪い合いを続けます.中国の優秀な学生はアメリカに留学し,クリスマスも含めて,英語圏の発想を広めるソフト・パワーになります.

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The Economist December 8th 2007

The end of cheap food

Food prices: Cheap no more

China’s new labour law: Union of the state

Lexington: The case for John McCain

Pay in Germany: How low can you go?

(コメント) 世界の食糧価格が上昇していることについて,特集記事があります.これが興味深いものでした.価格上昇の理由は,ひとつは中国やインドなどの新興諸国が所得の上昇とともに肉を消費し始めたことです.豚や牛を育てるために多くの食糧が需要されています.さらに,最近の価格上昇は,アメリカが補助金を与えて,エタノールを国内のトウモロコシから作ったことです.これが他の作物に対する耕地を奪っています.アメリカはブラジルのサトウキビによるエタノールの生産に対抗するために,多くの補助金を与えました.

この特集記事がおもしろいのは,食糧価格の上昇を歓迎していることです.これは世界中で貧しい農民たちを助けるでしょう.また,裕福な諸国の間違った農業政策や通商政策を破棄する機会となり,世界の貿易自由化を推進するでしょう.しかし,同時に,食糧価格の上昇がもっとも厳しい結果をもたらすのは,日本などの食糧輸入国であり,また,世界の貧しい都市住民,食糧消費者たちです.それは激しい政治的闘争の時期をもたらすのかもしれません.

価格シグナルを歪めるのではなく,貧しい者の生活を補助せよ,と記事は訴えます.

中国の労働法も,マッケインの共和党大統領候補者指名も,ドイツの最低賃金法も,興味深い,優れた社会制度と再分配をあつかう記事です.日本で,同じような議論があればよいのですが.