IPEの果樹園2007

今週のReview

12/17-/22

IPEの風

*****************************

世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

バリ国際環境会議, 権威主義体制と資本環境1, オバマ, ドル安1,とSDR建振替勘定, 資本主義の転換

******************************

ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


Foreign Policy, December 2007

The Truth About Sovereign Wealth Funds

By Anders Åslund

石油の富が溢れる国は,あなたの国を買い取ってしまうのか? 否,それを心配する必要があるのは,無責任な政府,家父長的な体制に従い,支配者たちのギャンブルの犠牲となっていく国民である.

SWF政府系投資信託を使って,ドバイはソニーの株式,アブダビはシティグループ,中国はブラックストーンへ,それぞれ巨額の投資を行った.それはアメリカの「シェアクロッパー(小作人)経済」を再現するのか?

しかし,アメリカ人やヨーロッパ人が恐れることはない.もしこうした投資を心配するべきものがあるとしたら,それは投資を行っている政府の下にある国民だ.民間人に比べて,政府は投資管理に大きく劣る.何十億ドルも富を切り離すことは有害な副作用をもたらす.だからSWFは独裁者や反権威主義国家において増大しており,投資ギャンブルの結果が好ましくなくても,国民に対して政府は責任を採らない.

SWFは昔からあるが,最近急増している.1970年代に,クウェートやアブダビのような石油を産出する首長国家で,石油価格の上昇による経常収支の黒字と財政の黒字を蓄積する方法としてSWFが始まった.アブダビのSWFは6000から7000億ドルに達している.ノルウェイは1990年に始めた.シンガポール,中国,ロシアなど,今日,その総額は2兆5000億ドルに及ぶと推定される.また,2015年までに12兆ドルに達し,ほぼアメリカ経済の規模に等しくなるという予測がある.

SWF設立の動機は様々だ.石油の富を次世代にまで貯蓄するという称賛される目的がある.しかし,アブダビの民間投資家に任せた方が良いのではないか? また,石油など国際商品価格の大幅な変動に備えるという目的もある.ロシアは「安定化基金」を措いた.しかし,ロシアの財務次官が汚職で逮捕されているではないか? 巨額の経常収支黒字を続けているロシアは中国は,1997-98年のアジアとロシアの通貨危機にIMF融資が頼りにならないことを知った.しかし,4500億ドルや14400億ドルというのは,その目的をはるかに超える額に達しているのではないか? 

国際準備の利回りが低いことはコストである.IMFが指導する多角的な金融体制を強化する方がコストを節約できる.さらに膨張する準備は,為替レートが過小評価されているからであり,それ自体が中期的に維持されるにすぎない.長期においてはインフレによって競争力を失う.ロシアも中国も,外貨を買ってインフレを促すより,インフレを抑えるために通貨価値を切り上げる方が豊かになるし,外貨準備の累積も抑えられる.

要するに,SWFはしばしば彼らにとって怪しい仕組みである.だから経済発展の未完成な,権威主義的体制によって採用されているのであり,その市民たちはまともな経済政策を求める機会がないのだ.例えばシンガポールは,石油ではなく貿易に依存した依存した経済であるが,1960年以来,富をSWFに蓄えている.政府は豊かになっても権威主義体制であり,権威主義体制は民主的な制度よりも経済不況に弱い.シンガポールの選挙されない支配者たちは,経済が悪化したときに権力を維持するため,不満層を買収する必要がある.

民主主義では,政治はそうならないだろう.ノルウェイは巨額のSWFを持つ唯一の民主主義国である.1990年にファンドが設立されてから,選挙のたびに政府が変わった.なぜなら反対派は豊富な資金から多くの支出を約束したからだ.民主主義では,過大な公的準備金を擁護することが難しい.

もちろん外貨準備はいつも必要だし,商品価格は不安定だから,セーフティー・ネットとして大きな準備を要する.しかしSWFはこれと違う.SWFとは,市民たちがその貯蓄を無責任に失ってしまうから,もっとも良く知っている支配者に任せよう,という家父長的,そして経済学的に無意味な主張に依拠している.むしろ減税して,市民たちが貯蓄を増やし,自分で投資するべきだ,と考える方が,経済的であり,民主的だ.

WP Friday, December 7, 2007

SWFs ISO Good Investments

By Gerald Hyman

(コメント) サブプライム・ローン問題で危機に陥ったシティグループにアラブの政府系投資信託(SWF)が75億ドルの投資を行ったせいで株価が持ち直したことを受けて,アメリカやヨーロッパの資本市場はSWFをむしろ,一部,歓迎するようになりました.SWFは国際金融が必要としているリスクを引き受ける投資の主体になれるからです.アメリカ財務省はIMF・世銀に命じてSWFの「ベスト・プラクティス」を示そうとしています.政治的な手段ではなく,国際金融における生産的で責任ある行動を取るためのガイドラインと情報公開・透明性が必要だ,と.


The Guardian Friday December 7, 2007

The surge is a sideshow. Only total US pullout can succeed

Jonathan Steele

LAT December 8, 2007

Beyond preemption

By Matthew Yglesias

(コメント) CIAの報告書がイランの核開発計画を否定したためにブッシュ政権のイラン攻撃は難しくなりました.他方,アメリカはブッシュ政権が終わっても,次の大統領が米軍のイラク駐留を長期化するのではないか,とJonathan Steeleは懸念します.

ブッシュの「増派」作戦は,イラクにおいてどの程度効果があったか不明ですが,少なくともワシントンでは効果があったわけです.政治家たちはたとえ国民の過半数が「即時撤退」を望んでいても,アメリカ軍のイラク駐留に強く反対しなくなりました.

特に,ヒラリー・クリントンはイラク駐留を永続化し,アメリカはアル・カイダを抑えるイラク軍や警察の強化に協力するべきだ,と主張しました.他方,バラク・オバマは16カ月以内の攻撃部隊を帰還させると主張し,その他の部隊はイラクの外に再配置するかもしれない,と答えています.いずれの大統領候補も,1973年のベトナムとのパリ和平会談で認めた完全撤退という主張には至りません.

その理由として,イラクにおけるアメリカ兵の死者が減っている,という傾向を指摘します.しかし,それは続かないだろう,とSteeleは考えます.イラクからの難民は流出し続けており,彼らは帰国の見込みもなく,ひどい状態で暮らしています.

いつの日か,彼らがイラクに戻って,外国の軍隊を打ち破り,その戦いに占める自分たちの貢献を基に新しい政府を打ち立てるでしょう.真の和解に向けて,アメリカ兵が果たす役割は何もない,とSteeleは警告します.ベトナムがそうであったように,イラクでもアメリカは全面的に撤退する,と宣言するしかないのです.

新しい情報によってイラン攻撃はなくなったかもしれません.しかしMatthew Yglesiasは,もし逆に,CIAがイランについて核兵器開発・保有を示す証拠を報告してきたら,民主党の大統領候補たちはイランを攻撃しうるのか? と問います.

9・11を理由に,ブッシュ政権は従来の国際法を無視して,一方的な先制攻撃を正当化しました.この考え方をジョン・エドワードは明確に否定しています.他方,クリントンやオバマは,ブッシュ・ドクトリンの問題を避け,あるいは軍事攻撃の選択肢を残すように不明確に話しています.


The Guardian Friday December 7, 2007

Carbon-taxing the rich

Joseph Stiglitz

世界の破局的な温暖化・気候変動を阻止する枠組みを決めるためにバリの国際会議は開かれる.温室効果ガスの破壊的影響は今や疑いない.それが膨大なコストをもたらすことも明白だ.問題は,我々にできるかどうかではなく,公平かつ効果的な方法で排出量を規制するにはどうすれば良いか,である.

京都議定書は重要な成果であるが,排出量の75%がカバーされていない.最大の排出国アメリカは批准せず,近い将来世界の排出量の半分以上を占める発展途上諸国にも要求がない.アメリカと同様に重要な,森林破壊について何も述べられていない.

アメリカと中国は世界最大の排出国という不名誉な競争を続けている.この数年で中国が1位になるだろう.森林破壊のせいでインドネシアが3位につけている.

バリで採るべき明確な行動は,熱帯雨林保護同盟を支援することだ.それは熱帯雨林を守る発展途上諸国の集まりだ.彼らは補償されたこともなく,環境サービスを提供してきた.森を維持するには資源が必要であり,動機が要る.森を維持する世界的な利益はそのコストを超えている.

国際会議の時期が良くない.ブッシュ大統領は温暖化を疑ってきたし,多角主義を無視した.彼がまだ大統領であり,汚染の責任がある産業と密接な関係がある.それでもバリ・サミットは将来世代のために重要な決定を行える.第一に,世界的な問題であるから,解決のためにすべての国が参加する.第二に,ただ乗りは許されない.そこで,国際社会がその合意に従わない国に対して採れる唯一の効果的な制裁である,貿易の制裁を行う.第三に,地球温暖化はあまりにも重要であるから,その他のすべての手段をこれを実現するために使う.

より良い動機付けを行うことが必要だ.キャップ・アンド・トレードというシステム京都方式を取るか,環境税を採るか,開発諸国と発展途上諸国は考えている.京都方式で難しいのは,開発諸国と発展途上諸国の双方が合意できる排出量の上限を見つけることだ.排出可能な量を決めることは,その国に援助金を与えることになる.その規模は何千億ドル,何兆ドルの規模になる.

1990年を排出量規制の基礎にすることは,発展途上諸国に受け入れられない.もっとGDP高い水準の国々より大きな排出量を求めている.いくらか倫理的な基礎のある唯一の原則は,一人当たり排出量を等しくすることだ.それゆえ,アメリカはすでにこれを使い尽くし,より小さな排出量しかもらえない.しかし,それではあまりにも巨額の資金移転が生じてしまうから,発展諸国が受け入れないだろう.

経済的な効率性から見るなら,排出量に応じてそのコストを支払うべきだ.それを強制するもっとも単純な方法は炭素税である.すべての国が決められた率で環境税を支払うには,国際的な協定が必要であろう.それは実際,労働や投資のような良いことに課税するより,汚染のような悪いことに課税するのだから,意味がある.そのような課税は世界の効率性も改善するだろう.

もちろん,汚染産業はキャップ・アンド・トレードを好む.それは彼らに汚染を止める動機を与えるからだ.排出量を超えれば税金を支払う必要があるだけでなく,その取引で利益をもたらすことも可能だ.さらにヨーロッパはこの方式に習熟しており,多くは他のやり方を嫌っている.しかし,排出量を決める受け入れ可能な原則を示すことは誰にもできなかった.

何もしなければ発展途上諸国は発展諸国よりも多くの損失を被る.だから彼らを言いくるめるか,脅して,世界的な排出量規制の枠組みに参加させることは容易であろう.発展諸国は発展途上諸国に支払う最低限の価格を決めればよい.しかし,発展途上諸国は,他の国際制度がそうであるように,排出量規制が彼らを不利な地位に落とすことを心配している.

最後は権力政治の問題だ.ただし現在の世界は25年前とも,10年前とも違う.発展途上諸国でも多くの民主主義国家が現れ,繁栄している.そうした国の市民たちは公平な扱いを要求するだろう.

原則は重要だ.バリの国際会議はこれを忘れてはいけない.地球温暖化は非常に重要であるから,貧しい者たちを苦しめる制度をもう一つ付け加えるような結果は許されない.

Dec. 10 (Bloomberg)

One Night in Bangkok Shows the Folly of Bali

William Pesek

(コメント) 中国やロシアの環境破壊が民主主義の不足を表しているとすれば,環境破壊を防ぐ国際体制にも民主主義が不足しています.アメリカが,中国が,インドが,環境保護に模範を示し,国際的な合意と規範を確立して,政治的なリーダーシップが制度にともなわない限り,環境破壊は止まりません.

温暖化の防止は,成長や開発,金融市場の安定化,民主化とも,複雑な関係があります.温暖化の防止には費用がかかり,資源が必要です.環境対策は生産性上昇を抑え,成長率を引き下げるでしょう.発展した諸国はその環境保護の技術を貧しい諸国にも提供しなければなりません.発展途上諸国の財政再建を求めているIMFも,矛盾した要求をすることに苦しみます.国際貿易や国際収支にも影響が出ます.


WP Friday, December 7, 2007

Ayatollah Putin

By Garry Kasparov

WP Tuesday, December 11, 2007

Russia's Next President

NYT December 12, 2007

Politics, Putin-Style

WP Wednesday, December 12, 2007

Russia's New Oligarchy

By Anders Aslund

IHT Thursday, December 13, 2007

The myth of Putin's success

By Michael McFaul and Kathryn Stoner-Weiss

(コメント) ロシアの議会選挙について,プーチンの統一ロシアが大勝したことを,野党の党首であるGarry Kasparovが論評しています.特にチェチェン戦争を起こしたプーチンに対してその地域で99.5%の投票率や99%の統一ロシア支持票がある,などということにだれも同意できないでしょう.その一方で,モスクワやペテルスブルグでは50%をわずかに超える支持し変えていません.あらゆる合法・非合法の手段を用いて大統領が宣伝したにもかかわらず.

そして・ところが,プーチンはリベラルな若い(42歳)Dmitry Medvedevを後継者に指名したのです.わざと政治力のない,西側に受けの良いリベラル派を大統領にして,自分が実権を握るのだ,と理解されています.あるいは,先週,国会が無力になった上,こうして若いガスブロムの社長,メドヴェージェフを指名したことは,国営エネルギー産業と国家・秘密警察とが結びつく現支配体制の構図を集約しているのでしょう.


NYT December 8, 2007

Trucks Power China Economy, at a Suffocating Cost

By KEITH BRADSHER

(コメント) トラック輸送に依存している中国の成長が,大規模な大気汚染を沿岸地域に拡大しているようです.その問題の複雑さを,記事はこんな風に伝えています.

「トラックによる大気汚染を一掃する問題は中国の指導者たちを悩ませる.

たとえば規制当局は,新しいトラックの排出量基準を引き上げ始めた.他方,何百万台もある古いトラックについては黒い排気ガスを吐くままになっている.産業界や農民により高価な乗り物を購入するよう強制するなら,経済は停滞するだろう.経済には,食糧価格の上昇や他のさまざまな理由で既にインフレ圧力が生じている.

政治的・社会的騒擾とまで言わないが,インフレへの恐怖から,北京政府は,給油所におけるディーゼル価格を世界価格の上昇につれて国営石油会社が引上げることを妨げている.燃料価格が上がるのは,農民にとってその所得を都市の住民より下げることになる.彼らはトラクターを動かすのにディーゼルが必要だ.安価なディーゼル価格は,中国の精巧な輸出マシーンとなっている経済において,製造業すべてへの補助金でもある.

しかし価格統制は悪循環をもたらす.Sinopecのような石油大企業が,販売価格が低すぎるために,ディーゼルを精製して販売するごとに損失を増やすようでは,せいぜい製油所の更新を遅らせるだろう.しかも彼らは海外の安い原油を求めて,大量の鉛を含むディーゼルを作る.それは新しい自動車のより高度な排出量規制を無効にする.」


The Observer Sunday December 9, 2007

Why the Himalayas might not look like this for much longer

Will Hutton

(コメント) リベラルな環境保護団体は,これまでアメリカを非難することで満足していました.アメリカは文明化された世界の最大の汚染者で,その姿勢を転換するには抗議や説得を繰り返し,彼らの意見を変えることだ,と信じることが可能だったわけです.アメリカは民主主義の国であり,国民の多くが環境破壊の誤りに気づけば,政府も変わるはずだ,と.

しかし,これからは違うでしょう.世界最大の汚染者となるのは中国です.そこには民主主義はなく,国民にも国際的な圧力にも反応しない,透明性も説明責任も重視しない政府しかないからです.このまま中国が環境破壊に依存した成長を続ければ,40年以内にヒマラヤの氷河が溶けてなくなるでしょう.それは計り知れない結果を中国だけでなく世界に及ぼします.ヒマラヤから流れる河川は洪水と枯渇を繰り返し,世界の降雨が減って砂漠が広がります.

これまで環境破壊と言えば,西側の裕福な生活や資本主義の悪を非難していればよかったでしょう.しかし,これからは違います.環境破壊の多くは貧しい,一党支配の,「管理された民主主義」を採用する発展途上諸国で起きるのです.西側だけでなく,中国や発展途上諸国も環境破壊を防ぐ世界体制に参加しなければなりません.

ヒマラヤの氷河を守ろうとするなら,中国の政治や制度を抜本的に転換しなければなりません.

「環境保護に効果的な政策を採るためには,政府が責任を果たさねばならない.中国には毎週1000か所で環境の抗議活動が行われるが,政府は彼らを無視している.目立ちすぎた環境活動家は逮捕され,あるいは海外渡航が禁止される.環境破壊を引き起こしているのは,こうしてチェック・アンド・バランスを欠いた,世論に反応する能力もない,中国の権威主義体制なのである.」


FT December 9 2007

No single tactic will beat the subprime crisis

By Wolfgang Munchau

FT December 9 2007

The trouble with the Paulson plan

By Clive Crook

(コメント) サブプライム危機はマクロ経済に大きなショックを及ぼすだろうが,どのような政策を採るべきか? とWolfgang Munchauは問います.慎重なマクロ経済運営を維持して,より目的に応じた限定した政策手段で危機を緩和するべきだ,と.すなわち,金融政策はインフレへの警戒を重視し,財政的な支援策や金融規制の改善,サブプライム・ローンの金利を据え置く措置は正しい,と考えます.逆に,危機に驚いてすべてのマクロ政策を一気に大きく緩和するようなことは避けるべきだ,と.

その理由は,金融政策が個別の問題に対応するものではないからです.倒産した住宅融資の銀行があれば,それに関係する者を救済する基金(そして必要なら財政的補助)をアメリカが指導し,ドイツやイタリアも準備しています.同時に,世界的に見れば,国際商品価格が示すように,インフレーションの危険があります.日本が金融緩和に遅れて失敗したのは,1990年代が世界的なディスインフレーションの時期であったからです.

最も回避すべきリスクはアメリカ債券市場の崩壊です.金融緩和による資本移動がそのようなリスクを強めるでしょう.住宅金融の破たんから,世界金融システムの健全性が疑われています.このような時期に単純なインフレ目標だけで政策を動かすことも危険です.

ポールソンHank Paulson財務長官の進める民間による住宅金利の凍結や救済基金計画について,Clive Crookは考えます.これは「市場による解決」なのか? あるいは政府による介入,市場の矯正策なのか? 実際,と考えます,アメリカの住宅市場ほど政治的にゆがめられた市場はないではないか?

この「心温まる」民間の申し出が意味することは何か? 世界金融にとっては何の意味もない.問題は住宅市場がさらに悪化して,信用の調達や債券売買ができなくなることだ,と.民間の仕組みを装うのは政府が訴訟に訴えられるのを避けるためです.日頃,「モラル・ハザード」論を主張するにもかかわらず,財務省のすることはそれを引き起こすでしょう.そして,住宅の差し押さえは,今後,政策の失敗,政府の責任とみなされるでしょう.

NYT ember 10, 2007

Henry Paulson Priorities

By PAUL KRUGMAN

WP Monday, December 10, 2007

Paulson Behind the Curve

By Sebastian Mallaby

NYT ember 10, 2007

Big Banks Scale Back Plan to Aid in Debt Crisis

By ERIC DASH

(コメント) クルーグマンの評価は,“too little, too late and too voluntary.”です.ポールソンの計画は何かを実行するためではなく,何か行動を起こしたような見せかけが必要だから,政府はこの計画を示したかった,と.それは銀行の用意した筋書き通りです.

アメリカに広がる住宅差し押さえに関する対応として,国民には三つの関心があります.金融不安,人道的悲劇,不正義,です.他方,ポールソンの示す案は,投資家の損失を減らすことが重要な目的です.借り手の苦しみも,非人道的な融資方法も問いません.政府は,ごく一部の債務者に対して,自発的な形で救済されるガイドラインを示すにすぎないのです.

住宅の差し押さえは多大なコストを要し,訴訟や下落した価格での売却によって返済の一部に充てるだけです.これは投資家の利益を損なうから止めたいわけです.Barney Frank’s proposalのような労働者家族の救済を避けるために,このような提案をした,と批判します.

政権に迎えられたポールソンは問題を解決する実力者であったはずですが,その成果は乏しいようです.中国,貿易,環境,など,ポールソンは解決していない,とSebastian Mallabyは批判します.しかし,金融不安や住宅市場の暴落に対して,今度こそ彼の実力を発揮するでしょうか?

彼の姿勢は,市場に任せることでした.返済できない者は「家を貸し出す」"become renters"ことが解決であると主張しました.それから政府が介入して再融資を保証しました.そして,ようやく銀行に対して困窮者への金利抑制を求めました.

しかし,サブプライム融資を受けた者が社会的な困窮者や貧困であるとは限りません.また,政府の介入策は住宅融資への不安を高めて,副作用として,融資全体を停滞させるでしょう.市場の失敗が私たちを問題につき落としたのであれば,ポールソンはそれを避けるのではなく,解決しなければなりません.

住宅を差し押さえして売却することが住宅市場をさらに悪化させるのであれば,これは集合行為問題です.政府は差し押さえの必要がある住宅融資を特定して負担を軽減するガイドラインを示しました.しかし,問題を解決したわけではないのです.一方では,政府が税金を使って解決しろ,という主張があり,他方では,それを要求する声を抑えるために,財政支出によって景気を刺激せよ,という主張もあります.

ERIC DASHの記事は,民間銀行がサブプライム・ローンを組み込んだSIVsの破たんを回避する基金を設立する計画が不調であることを伝えています.集合行為は実現できず,市場の信認も得られないようです.


NYT ember 10, 2007

Obama American Idea

By ROGER COHEN

WP Tuesday, December 11, 2007

Oprah the Believer

By Eugene Robinson

(コメント) バラク・オバマは,政治家としての経験やテロに対する姿勢について,「大統領になれるほど,タフであるか?」としばしば尋ねられ,彼らしい答え方をしています.

「私は胸を叩いたり,サーベルを振り回したりすることには関心がない.より安全で,より確実な世界を築く決定下すことに関心がある.」「われわれは世界を指導するべきだ.ただし,知恵と判断力を示すことで.我々の指導者としての能力には,自制する力も含まれる.」 アメリカの指導力には,謙虚さを示すことが必要です.ブッシュ政権において失われたのは,アメリカの理想や世界への奉仕を重視する姿勢でした.

あたかもアメリカが世界の情勢に手を出すことをやめさえすれば,世界はもっと良くなるような雰囲気ができてしまいました.アメリカの覇権に対する不満が積み重なっています.

「アメリカの例外主義を私は信じる.ただし,それは軍事力や経済的な支配に拠るものではない.」「われわれの憲法,原則,価値,そして理想において,われわれは例外をなす.世界中の人民が望む理想を実現する声にわれわれは応じる.」 パックス・アメリカーナは,完ぺきではないし,平和をもたらすものでもなく,支持を失っている.しかし,それが失われた世界は誹謗する者の確信を強めるだけだ.

「私が大統領になったら,貧しい国を旅して指導者たちと話すだろう.彼らは私の祖母がアフリカの小さな村で暮らし,そこには水もなく,マラリアやエイズに苦しむ土地であったことを知るだろう.」「それゆえ私は彼らと正直に話し合うことができる.われわれが彼らを助ける必要があり,また,彼らも自分たちで改善する責任があるということについて.ケニアには私の甥たちがいるが,法外な賄賂を支払わないと仕事を得られない.私はそれについて話し合える.」

アル海田はケニア西部,バリ,ニューヨークを攻撃した.オバマの父はケニアにいたし,オバマ氏はインドネシアで学校に通ったことがある.そしてニューヨークの大学に入った.この類似性は驚きであり,彼が示す直観とタフさを結び付ける.

人種問題ほど,アメリカ史上で理想と現実に大きな隔たりがある分野はない.オバマはここでも橋となり,和解を示す.

Eugene Robinsonも書きます.奴隷制と人種差別の時代を持つ国が黒人の大統領を選ぶことは愚かなことだろうか? Oprah Winfreyが黒人有権者に訴えたのはまさにこの点です.「マーチン・ルーサー・キング・ジュニアは夢を持った.」 2万9000人の,ほとんど黒人だけの聴衆を前に,彼女は訴えました.「しかしわれわれは夢見るだけではない.オバマに投票して夢を実現しよう.」

しかし,多くの後塵指導者の中にも不安があります.若すぎる.まだ政治を知らない.たとえば州知事でさえ,過去に二人しか黒人はその地位を得ていない.アメリカの最高位を黒人に委ねることなどないだろう,と.あるいは,オバマは本当に黒人の候補と言えるのか? という批判もあります.アメリカの黒人は常に,選挙でこうした問題に直面します.「今はまだ我慢しろ,という者がいる.そんな忠告に従っていたら,私は今の地位を得ていない.」と,Winfreyは聴衆に語りかけました.それが起こりそうだということは言えないが,それは不可能ではなくなった.


WP Monday, December 10, 2007

Subsidies' Harvest Of Misery

By Jimmy Carter

(コメント) カーター元大統領が子どもの頃,アメリカは大恐慌で,ピーナツと綿を育てる農場に彼は育った,ということに驚きました.そして,そのころアメリカ農民の窮状を救うために出来た法律が今も存在し,それに依拠した綿花栽培への農業補助金が裕福な農場主に巨額の富を保証し,他方アフリカの貧しい農民たちを窮地に追い込んでいる,という事実にも驚くでしょう.これこそ西アフリカ諸国が貿易自由化交渉にも反対した重要な理由でした.アメリカでの綿花生産コストは73セント,西アフリカは21セントだ,と言います.

「最初の目的を実現していない法律が,過剰生産を拡大し,莫大な補助金を最も大規模な生産者たちに与えていることは,まさに悲劇である.この強力なロビー活動の産物は,今やアメリカの小規模な家族農場を罰するとともに,世界でも最も貧しい諸国で多くの家族を破滅させている.

1995-2005年に,最も裕福な10%の綿花農家が補助金の80%以上を得ている.最富裕な1%は補助金の25%を得ており,他方,農家の半数以上は補助金をまったく得ていない.アメリカ農家は世界市場に依存していない.政府が保証した最低価格で購入するからだ.1999-2005年に綿花栽培が得た補助金は180億ドル以上であり,それは綿花の市場価値230億ドルの86%にも達した.」


FT December 10 2007

Adjustment or affliction? Why the dollar’s drop is failing to rebalance the world

By Chris Giles

(コメント) この論説はドル安をめぐる論調を全体として展望しています.一方ではドル危機(ドル建資産からの海外投資家の脱出)が恐れられ,他方ではドル安によるアメリカの経常収支赤字解消が期待されます.

しかし,ドル安は新興経済諸国による「ブレトンウッズU」という支えを失いつつあります.ドル安によるユーロ圏の輸出不振も,国際協調を不確実にするでしょう.このアメリカ・ドル,ユーロ圏,新興諸国(特に中国,湾岸産油諸国)・ドル圏,の間に,政治的な信頼関係や合意が欠けています.アメリカの景気や金融政策,政府の姿勢は重要です.しかし同時に,ブレトンウッズUの今後によって,ドル危機が回避されるか,あるいは本格化するか,が決まるでしょう.

そうであれば,次の提案が重要な意味を持ちます.

FT December 10 2007

How to solve the problem of the dollar

By Fred Bergsten

世界経済は厳しい政策対立に直面する.もしその扱いを誤れば,通貨危機が発生するだろう.中央銀行,政府系投資信託,民間投資家など,多くのドル保有者が,明らかに,他の通貨に資産を分散したがっている.外国人のドル保有額が少なくとも20兆ドルを超えているので,その望みを一部でも実現すればドル暴落が起きる.それは市場や世界経済を破壊する.そのような恐怖が公的な意見交換や市場において急速に強まっている.

しかし,保有する通貨を多様化する諸国は資金流入を受け入れたくないのだ.ユーロ圏,イギリス,カナダ,アーストラリア,はすでに自国通貨が大きく増価し過ぎたと信じている.しかし,中国やその他のアジア諸国は通貨の過大評価を避けるために,大規模に介入し続けている.だから,さらに大規模なドルからの資本流出があるとすれば,それは変動レートの通貨を均衡水準より著しく高くまで押し上げるだろう.それは新しい不均衡を生み,世界の成長を大きく減速させるかもしれない.

すべての関係者を満足させる解決策が一つだけある.振替勘定をIMFに設けることだ.これによって不要なドルをSDRsに転換する.SDRは1969年に初めてIMFが創ったが,現在,340億ドル存在する.その勘定が1978-80年において,初期の通貨多様化と,今日の状況によく似たドル暴落を大幅に改善した.

国際的な影響力のある民間投資家たち,議会の指導者たち,並びにIMF理事会も含めて,その(振替勘定を認める)決定は世界の通貨安定性を高めるだろう,と広く合意されている.それが失敗したのは,唯一,1979-80年にアメリカ連銀が金融を引き締め,それに続いて急激なドル高がその存在理由を奪ってしまったからだ.そして,ヨーロッパとアメリカとの間で,さらにドル安が進んだときに増大する名目的な損失をどうするか,合意できなかったからである.

振替勘定の考え方は単純だ.市場においてドルを他の通貨に転換し,ドル安を進める代わりに,公的な保有者はその保有したくないドルをIMFの特別勘定に移す.彼らは一定額のSDR(もしくはSDRで発行された証券)を融資される.それを使って彼らは将来の国際収支赤字を融資できるし,他の合法的な使い道があり,債務を返済しても,他の参加者に移転しても良い.

IMFの加盟諸国は,必要な新しいSDRを発行することで需要に応じることを認めるだろう.それは世界の通貨供給に純増をもたらさない(それゆえインフレも起きない).なぜなら,これはある資産から他の資産への転換に過ぎないから.その勘定はドルの国債に投資されるだろう.もし追加の保証が必要なら,IMFはそれに十分な800億ドルの金を保有している.

すべての国が利益を受ける.過剰だと感じるドルの保有者は,たった一度の取引で,通貨のバスケット(ドル44%,ユーロ34%,円とポンドが11%)で示された資産に転換できる.そしてドルの極端な減価を避け,残ったドル保有の損失やシステムの混乱を避けることができる.

アメリカはより高いインフレのリスクや,ドル暴落により生じるかもしれない潜在的な高金利を避けることができる.そのような事態は,この数年でアメリカの成長が減速し,不況にさえなるかもしれない中で,特に退けるべきだ.

国際金融アーキテクチャーは振替勘定によって大きく強化される.戦後初期のドル危機に際して,IMF加盟諸国は振替勘定を,もはや単一通貨に依存できなくなった国際通貨制度を構築する戦略の中心にSDRを置いた.

1970年代に主要国が変動レート制を採用したことはその戦略を押し進めることを延期したが,それはまた極端な通貨危機を生じて公的な再考を促した.近年,世界的な不均衡と大量の通貨間資本移動は,本質的には固定為替レートに戻った諸国が公的ドル保有を累積したこともあって,SDRの創設と振替勘定の交渉を促した条件を再生した.

振替勘定は国際通貨問題のすべてを解決しないし,安定した世界金融システムを再建する十分条件でもない.

アメリカが対外均衡を回復するにはドルがさらに安くなる必要がある.中国や,その他多くのアジア諸国は,ほとんどの石油輸出国とともに,その通貨価値が増し,長期的にはもっと変動することを受け入れる必要がある.しかし早期に振替勘定を採用することで,現在の不均衡を調整するリスクが最小化され,ドルだけでなくユーロにも依存した二極化した国際通貨システムへの必然的な構造変化を進められる.

The Khaleej Times, 12 December 2007

Common Currency Caveat

Eckart Woertz

(コメント) バーレーン,クウェート,カタール,オマーン,サウジアラビア,アラブ首長国連邦が集まる湾岸協力会議(GCC)は,ドル・ペッグの離脱を話し合っています.石油輸出から外国人労働者の利用まで,GCCは共通の利益を守っていました.貿易や投資,市民の移動を自由化し,経済統合を進めること,経済を多様化することで,独自の金融政策を採る条件を模索します.


The Guardian Tuesday December 11, 2007

People on the move

Antonio Guterres

(コメント) 国際移民に関する状況と望ましい政策を,UNHCR国連難民高等弁務官の視点から展開した優れた論述です.変則的な移民"irregular" movementsの現状は,さまざまな命がけの越境に示されています.世界の貧困,戦乱,環境破壊,経済破綻から,さまざまな能力を生かしたいという有能な人材の奪い合いまで,世界の移民には現代のグローバリゼーションや国際秩序が反映されています.簡単な国境でのチェックや禁止する法律によって,これらを止めることはできません.

移民は,その当事者や関係者だけでなく,それぞれの社会に素晴らしい経済効果や影響を及ぼします.生まれた国以外で暮らす人々は2億人に達し,世界第5の大国,ブラジルに匹敵します.彼らはもっと合法的に,その権利を認めて,正しく扱われるべきです.そして,もちろん故郷において生きるすべを得られないような混乱状態を解消するべきです.


FT December 11 2007

Why the credit squeeze is a turning point for the world

By Martin Wolf

(コメント) Martin Wolfは世界資本主義の転換点を考えます.

1.金融資本主義に偏ったアングロ・サクソン・モデルへの疑問.ロンドンやニューヨークの金融市場はクローニーによる詐欺的な取引を膨張させた.2.証券化された融資への疑問.3.中央銀行や金融監督への疑問.たとえば,「最後の貸し手」は今も有効なのか? 4.アメリカ政府は,日本政府に説教したような,市場介入への反対を撤回したのか? 5.リスクに関する再評価.新興市場への批判は自分たちの市場に当てはめるべきだった.6.アメリカ市場は「最後の買い手」になれない.7.アメリカの不況は起こりうる.金融緩和より,ドル安と輸出増加が重要だ.8.対外赤字の押し付け合いが始まる.新興経済が大幅な赤字を続けることはできない.彼らが成長するには,誰かがそれを融資しなければならない.アメリカがその役割を縮小するとき,誰がそれを補うのか?

金融市場の大きなショックは,歴史上,人々の支出や貸出のパターンを変化させた,とWolfは指摘します.世界経済の新しいパターンが,大きな断絶やショックを引き起こさずに形成されるかどうか,それが問われています.

The Guardian Thursday December 13, 2007

This crisis spells the end of the free market consensus

Seumas Milne

(コメント) このMartin Wolfの論評に呼応した左派の論説です.アングロサクソン型金融資本主義が繁栄したのは,ソ連崩壊と中国の世界市場参加によって,教育ある安価な労働力の供給が大幅に増えたからだ,と考えます.それは資本主義を悩ましたインフレを抑制し,金利の低下とバブルの持続性を高めたのです.しかし,ようやくその条件が転換し始めたのではないか? その結果として,自由放任の資本主義を賛美してきたイデオロギーが,イギリスでも,アメリカでも,弱まりつつあるのです.


FT December 11 2007

America must resist protectionism

By Michael Bloomberg

SPIEGEL ONLINE - December 11, 2007

The End of Globalization?

By Gabor Steingart in Washington

(コメント) 大統領にも立候補するBloombergは,保護主義や孤立主義の歴史的な失敗を指摘し,アメリカが21世紀においても世界経済の指導的な役割を担うように求めています.そのカギは,中国との貿易や投資を自分たちの機会であり,相互の利益であると理解することです.

Gabor Steingartは,アメリカの政治家に広がる保護主義の傾向を指摘します.アメリカでは,ヒラリー・クリントンも,ポール・サミュエルソンも,自由貿易を批判しました.アメリカ人がグローバリゼーションを無条件に称賛することはなくなったのです.


The helicopters start to drop money FT December 12 2007

Central bank action FT December 12 2007

The charge of the central banks FT December 12 2007

George Magnus Monetary policy is out of sync with reality FT December 13 2007

(コメント) 主要国の中央銀行が協力して,紙幣をばら撒くヘリコプターを発進させています.しかし,ますます融資は中央銀行に頼らなくなっています.規制を改善しなければ,市場は回復しないだろう,とFTは考えます.それはバブル破たん後の日本の状況に似ているのでしょうか? 日本では,土地価格が下落し,銀行の不良債権は増加し続けて,デフレやゼロ金利,量的緩和政策などの論争と政策の迷走が続きました.

不当に高い資産価格が調整されるのは歓迎されたわけです.不良債権に対する政府の介入や融資の削減を是正することは,「モラル・ハザード」と非難されました.円安の加速やインフレの心配もあったのです.


WP Wednesday, December 12, 2007

Food vs. Fuel

By Robert J. Samuelson

(コメント) 穀物から燃料を作ることは,温暖化ガスの削減にそれほど役立つわけではありません.しかも補助金を費やし,世界の穀物価格を上昇させて貧困地域に飢餓を生じます.

1961年以来,世界人口は112%増加し,穀物生産は164%,食肉生産は700%増加した.」と,この論説は紹介します.貧しい国が豊かになれば,人々は食生活を改善し,食肉や酪農製品をより多く消費するようになります.そのためには家畜の飼料が急速に需要を増やすのです.裕福な国では「肥満」が社会問題になります.

せめて裕福な諸国の政治家は,間違った生産補助金や有機燃料への補助金をやめるべきです.


WP Wednesday, December 12, 2007

Labor's Global Push

By Harold Meyerson

(コメント) 労働組合も国際的な戦略を必要としています.グローバリゼーションに対する迅速な対応を,the International Trade Union Conferenceの新しい議長Guy Ryderは目指します.64カ国が集まる新しい世界労働運動がthe Council of Global Unionsとして始まりました.Arcelor Mittalのような企業の多国籍化に対応して,アメリカとイギリスの鉄鋼労組は国際統合を話し合っています.

The Retail, Wholesale and Department Store Unionthe Service Employees International Union (SEIU)the Communications Workers of America (CWA),など.

そして労働運動においても,アメリカと中国の動向が世界秩序を変える基軸となるのです.


FT December 12 2007

Abductees cast a shadow over Japan’s future

By David Pilling

(コメント) 日本が拉致問題に執着することを,北朝鮮の核兵器・開発放棄と国交正常化交渉にとっての障害と見ている欧米の論調に,David Pillingは異議を唱えています.アメリカが北朝鮮への制裁を解除し,国交正常化を交渉することは,日本政府の立場を弱くし,アメリカの裏切りに対して日本の世論が転換する危険がある,という理由です.

私の意見はこの論説に反対です.しかし,こうした主張が日本政府や外務省,保守派政治家には支配的であるかもしれません.これは日本再軍備,核武装論への,保守的地ならしです.


NYT December 13, 2007

Little Headway With China on Finance

By STEVEN R. WEISMAN

FT December 13 2007

Why it is dangerous for Europe to bash China

By Patrick Messerlin and Razeen Sally

(コメント) アメリカ,EU,中国の経済協力会議が充実して,情報交換や政策協力に結びつくかどうかは,世界経済の将来を決める問題です.アメリカの住宅市場とヨーロッパの移民問題が,中国からの融資や貿易摩擦解消の政策協力によって緩和される展望を得るなら,各国の政治家たちは国際協調に大きな期待を寄せ,それに参加しようとするでしょう.逆の場合は,国際関係を悪化させます.

ポールソン財務長官は,中国が「経済ナショナリズム」に偏っている,と不満を示しています.中国は主要産業において中国企業を優先し,外国企業を市場から排除している,と考えます.アメリカ議会では保護主義が強まり,中国に対する制裁決議が準備されています.他方,政府は個々の問題でWTOによる交渉や制裁を求めようとします.

Patrick Messerlin and Razeen Sallyは,EUにおける新しい中国バッシングを,非常に危険だと考えています.2国間の貿易不均衡を強調するのは間違いであり,中国市場はまだまだ不完全であるから為替レートだけで調整できないし,EUと中国が相互の利益を得られる貿易や投資の分野は多くある,と.

******************************

The Economist December 1st 2007

The panic about the dollar

The falling dollar: Losing faith in the greenback

(コメント) アメリカにとって,経常収支の赤字を減らし,金融パニックを緩和し,不況が起きないように,つまり,国内の合理的な選択として,ドル安や金融緩和を歓迎することは当然です.しかし,ある国の為替レートや経常収支の変化は,同時に,外国の為替レートや経常収支を変化させます.ここに,通貨摩擦や貿易摩擦,国際金融不安の震源があるわけです.

すなわち,ドル不安.いよいよドル暴落が近づいたのか? ドルの時代が終わるのか? もし人々が本当に疑い始めたら,イギリスでも,メキシコでも,タイでも,韓国でも,ロシアでも,アルゼンチンでも,そうであったと思いますが,アメリカの通貨は売られ,通貨危機が実現します.

この論説が求めているのは,1.アメリカはドル不安に配慮し,金融緩和を慎重に,抑制して行わなければならない.2.ドル・ペッグしているショックは,緩やかにバスケット・ペッグに移るべきだ.3.中国は国際的な責任ある立場を理解し,国際協調の積極的役割を担える国であることを示すべきだ.

国際通貨としてのドルの役割は,まだ容易に,ユーロや人民元が交代できる条件にない,ということを後の記事は示しています.


The Economist December 1st 2007

Business in Japan: Tuning the hybrid

A special report on business in Japan: Going hybrid

Australia’s political upheaval: A lucky country to run

Lexington: Obama’s moment

(コメント) 日本は「ハイブリッド資本主義」「ジャパン=グロ・サクソン型」に変身しつつある,という特集記事に期待しましたが,私には期待外れの内容でした.日本は指導力や明確な選択を示す国ではなく,むしろ,官僚や業界団体が,市場圧力を回避し,あるいは吸収するために,少しずつ法律や規制,制度を変更し続けてきた,ということを興味深く読みました.

法律や規制の変更が積み重なって,実は,日本資本主義や日本社会の根幹が致命的なほど失われていたのだ,ということのようです.企業統治の転換に比べて,社会や政治に新しいモデルを示すような叙述は何もありません.

オーストラリアでは負けるはずのないハワード首相が選挙に敗北し,政権交代が実現しました.日本の民主党も学んではどうでしょうか? また,オバマ候補の追い上げが興味を引きます.