IPEの果樹園2007
今週のReview
12/10-/15
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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バリ環境サミット, ブレジンスキーの米中覇権論, プーチンのロシア, ドル安について, 中国に生まれたら
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
The Guardian Friday November 30, 2007
Nicholas Stern
FT December 2 2007
America holds the key to climate talks
The Japan Times: Monday, Dec. 3, 2007
Main challenge is how to price carbon
By KEMAL DERVIS
WP Monday, December 3, 2007
A New Green Economics
By Ban Ki-moon
SPIEGEL ONLINE - December 3, 2007
US Seeks Alliance with China and India to Block Climate Protection
By Gregor Peter Schmitz in Washington, D.C.
(コメント) 「気候変動は,かつて世界が見たことのある最大の<市場の失敗>である.」 イギリス政府によって作成された気候変動の調査報告において委員長を務めたNicholas Sternはそう書きます.
「問題が世界的な規模である以上,その対策も世界低でなければならない.」 当然,豊かな諸国が真っ先に行動しなければなりません.その原則は三つです.効果的であり,効率的であり,しかも,公平であること.
まず気候変動を効果的に阻むためには,温室効果ガスの十分な削減目標が昼用です.それを2050年までに1990年の水準の50%にする,ということが昨年6月のG8サミットで決まりました.しかし,公平性のためには,豊かな国は80%削減を達成するべきだ.
豊かな国は気候変動を指導するために,三つの行動を取るべきだ.1.森林破壊を防ぐ国際的な計画を進める.2.技術革新を加速する.3.豊かな国が貧しい国に対して,2015年までGDPの0.7%に等しい援助を行う.それは年間1500から2000億ドルになる.
行動しなければ解決できない.行動するのは我々である.それに失敗した場合の破壊的な効果はあまりにも大きく,失敗は許されない.共通の理解によって,行動に向けた合意を形成しよう,とNicholas Sternは主張しています.
「アメリカが合意しなければ意味がない」と,FTは強調します.世界最大の温暖化ガス排出国であり,アメリカが規制を受け入れないなら他国に強制することも難しいのです.しかも,急速に世界の温暖化ガス排出量を増やしている中国やインドを排出規制に従わせるためにも,まずアメリカが従う合意を創らなければならない,と.
潘基文国連事務総長も政治家の指導力を求めます.そして,産業革命,技術変化,グローバリゼーション,と並ぶような人類史の転換として,環境保護を重視します.環境保護は成長を殺ぐとは限らず,それを促す面もあり,世界的なルールがあればビジネス界も積極的に対応するだろう,と考えます.こうした環境規制の国際ルールを作ることが国連の役割だ,というわけです.
「科学者たちは仕事を成し遂げた,今度は政治家たちだ.バリで,彼らの指導力が試される.」
しかし,SPIEGEL ONLINEが載せたGregor Peter Schmitzの記事は,アメリカや中国,インドは環境保護など嫌っている,と指摘します.彼らは表面的には支持しているけれど,国際規制に反対であり,協力してそのような枠組みが誕生するのを阻止するだろう,と.
それに対してドイツやEUは,明確な削減目標の設定とそれを確認し実行を迫るメカニズムを決めなければならない,と主張しています.2012年でl終わる京都議定書の枠組みをどのように変えるのか,議論する必要があるのです.
温暖化ガス排出を減らす決め手として,排出量の上限を決めると同時に,排出権を貧しい諸国や地域にも人口に比例して配分し,それを使いきれない分は販売できる,同時に,排出量の削減に向けた技術移転も促せる,という考えを国際制度において実現する努力が内外で求められています.その場合,上限の設定や価格の決定,技術移転の評価,などに解決を要する難しい問題があるわけです.
FT December 4 2007
Why the climate change wolf is so hard to kill off
By Martin Wolf
The Guardian Wednesday December 5, 2007
We would be fools to banish global business from the great climate battle
Jonathan Freedland
FT December 5 2007
Bali must bring developing nations on board
By Sri Mulyani Indrawati and Robert Zoellick
(コメント) Martin Wolfは,環境保護論の難しさをマルサスの『人口論』にさかのぼるとともに,「オオカミが来た」と叫ぶ少年にたとえます.すなわち,われわれはまだ今の生活水準が維持できる,と考えているからです.
問題は,世界が一つの国ではない,という点にもあります.そのとき削減には三つの問題が追加されるでしょう.すなわち,1.集合行為問題,2.既存の不正義,3.無差別原理,をどうするかです.
1.集合行為問題とは,他国の排出削減によって環境悪化が防げることにただ乗りする国を防げない,ということです.2.不正義は,発展途上諸国が強く意識するように,産業革命以来の温暖化ガスは一握りの裕福な国が生産した,今も,一人当たりにすれば圧倒的な排出量の格差がある(中国やインドでも,アメリカの5分の1,15分の1),という問題です.3.森林破壊,海面上昇,氷河の減少,旱魃,砂漠化,などは世界の最も貧しい人びとに大きな犠牲を強いるでしょう.彼らを環境破壊から守る国家は必ずしも無いのです.他方,世界はほとんど何の役にも立たない防衛費用に多くの支出を行っています.
国家がない以上,Wolfは解決のために個人の道徳心だけでなく,その利己心に訴えるべきだ,と考えます.そのために二つの条件を示します.ひとつは,世界中の人が破滅を納得する,たとえば気温が20度上昇するような限界を示すことです.もう一つは,低いレベルで温暖化ガスの排出を認めて繁栄する道を示すことです.
ブッシュ大統領が「テロとの戦い」を標榜するのに日本政府は戸惑ったでしょうが,それ以上に,1940年代の「ファシズムとの戦い」と同様に「環境破壊と戦う」というヨーロッパの政治意識にも多いに戸惑うでしょう.日本政府は,どのような意味でも,環境保護にともなう世界社会の変化と国際政治から,完全に取り残されるように思います.
Jonathan Freedlandは,無限の成長を目指す資本主義のロジックが自然の限界を無視して地球を破壊している,と考えます.しかし,資本主義は火薬も逆襲しており,環境保護によってビジネスが繁栄しつつある,と指摘します.排出権取引の規模は急速に拡大し,世銀の予測では,300億ドルに達するでしょう.
たとえばイギリスのセメント会社が,中国で現地工場に代えて環境保護に適した技術で工場を建てると,温暖化ガスの排出が減ります.これを承認された場合,排出権が配分され,それを市場で売却すれば儲けることもできます.それは汚染源を貧しい地域に押し付けるだけではないか? しかし,温暖化ガスの排出を減らすのは地球全体の問題であり,立地に関わりません.資本主義は革新と利益を結び付ける点で優れており,環境保護の革新的な技術が,こうして世界中に普及するわけです.
Sri Mulyani Indrawati and Robert Zoellickは,発展途上国の開発に役立つような環境保護と融資の枠組みを地球規模の排出権取引市場として構想しています.
WP Friday, November 30, 2007
A Partner For Dealing With Iran?
Zbigniew Brzezinski
ブッシュ政権は,北朝鮮との交渉によってその非核化を成功させるかもしれない.そうであれば,イランの核問題にも交渉は有効だろうか? 同様に,中国の役割を期待できるだろうか?
もし本当に北朝鮮が非核化できたら,アメリカと中国の政府の姿勢が決定的に変わったからだろう.アメリカが多角的な交渉を重視するだけでなく,中国がピョンヤンの非妥協的な態度が破滅をもたらすと考えたからだ.
最近中国を訪れて,指導的な人物たちと私的な対話を重ねたが,私は二つの強い印象を持った.第一に,中国の内的な社会変化の激しさにより,世界的な政治・経済変動に対して中国は脆弱さを増していることだ.中国はペルシャ湾岸で新しい軍事衝突が起きることをひどく心配している.アメリカとイランが大規模に衝突した場合の金融的・政治的な影響を考えれば,この心配は当然であり,よく理解できる.それゆえ中国は,彗星の勢いで世界的な支配を強めているけれど,地政学的に見て現状維持のパワーである.
第二に,中国は,イランに対してアメリカが戦略的な我慢を続けるべきだ,と提唱している.北朝鮮と違って,イランは核保有やその意図を否定しているのである,と彼らは注意する.従って,(それは疑わしいかもしれないが)イランの核保有否定に対して政治的威信を回復し,国際的な制裁を止めて,平和的な核開発について協力するべきだ,と.
中国の考えでは,アメリカはアフマディネジャド大統領へのしっぺ返し戦術を避けた方が良い.それは彼の国内基盤を強化するだけだ.嘘つきだと非難するより,核兵器の排除を確認する交渉に絞るべきだ.
もしイランとの交渉が活発に行われるなら,中国は行き詰まりの打開を助けるだろう.中国とイラン政府は誠意ある関係を維持しており,イランの支配層は統一されておらず,ますます孤立している.中国政府もイラン政府も互いの経済関係が破たんすることを望まない.イランは中国に石油を売り,中国はイランに兵器や工業製品を売る.しかしまた,中国は建設的な役割を果たすためにも,アメリカが戦略的に我慢してくれるように求めている.アメリカが我慢することなく制裁を強めていくなら,制裁には効果がない,と言い始め,「他の選択肢」として軍事衝突が近づいてしまう.
ロシアの不確かな役割にも注意が必要だ.ロシアはイランと話し合い,平和的な解決を強く主張している.ペルシャ湾の軍事衝突はロシアに影響し,そのマイナスの効果が推測できる.国際的な波及効果も考えるなら,ロシアは慎重に行動するだろう.
それにもかかわらず,ロシアはますます反動的な国家になっており,1990年代前半に失った地政学上の地位を少なくとも部分的に回復する試みを公言している.カスピ海や中央アジアの石油に対するアメリカの直接的関与を断ち切ることが,クレムリンの最重要事項に入っている.さらに,より長期的な地政学上の脅威として,資源豊富であるが人口の少ないロシア東部に対する中国の潜在的な拡張と,ロシアが最近その帝国的な支配を失った,人口の多い西側の諸国に対するアメリカの拡張を,モスクワのエリートたちは注目している.
こうした状況でペルシャ湾地域に政治対立が勃発すれば,モスクワの戦略家がそれを悪いこととして一面的に考えたりしないだろう.石油価格の急激な上昇は中国とアメリカを傷つけ,一層の反米感情に火を付ける.その場合,ヨーロッパはアメリカと距離を取るだろうし,ヨーロッパも中国もロシアのエネルギ―供給により大きく頼るだろう.つまりロシアは金融的にも地政学的にも利益を得るのだ.
ペルシャ湾の深刻な危機はそれほど大きな影響を及ぼす.それは冷戦終結の後に起きた以上に大きな,世界的パワーの配分における劇的シフトかもしれない.それを考えるなら,アメリカと中国との包括的で戦略的な対話が,北朝鮮を扱った共通の経験から,潜在的なイランとの危機にも拡大して行われるのは,時機を得た,歴史的試みであるだろう.
FT November 30 2007
Import a president
IHT Friday, November 30, 2007
A responsible leader
By Mikhail Gorbachev
(コメント) プーチンの後継者探しに関して,グローバリゼーションの時代であれば,有名なフットボール・チームが優れた選手を世界的に奪い合っているように,大統領も優れた政治家を国際的に移動させてはどうか? とFTは指摘します.
Mikhail Gorbachevのプーチン支持は明確であり,それゆえ異様です.民主主義や多様化を支持しながら,プーチンがロシアの政治システムを強化し,その権威を高めたことを歓迎している,と読めます.プーチンは反対派やメディアを弾圧し,ジャーナリストの暗殺を黙認し,憲法を改正しても3期目を目指す情勢があることを認めた上で,なお「民主主義」を支持する? ゴルバチョフはプーチンとの密約が出来たロシア・エリートたちの代弁者なのか?
その不満と疑問は,Anders Åslundの論説によって解消しました.
The Guardian Monday December 3, 2007
Anders Åslund
プーチン大統領はロシア国会の選挙を彼の信任投票に変えてしまった.彼が権力を継承することについては明確に答えないが,その経済政策は明確だ.
国会選挙に際して,プーチンは頻繁に表に出て西側を非難し,1990年代の「カオス」を撃退する姿勢を示した.1999年のチェチェンのように,2003年のオリガーク追放のように,プーチンは憤慨した.
クレムリンは民主的な手続きを無視して政党や候補を選別した.プーチンの統一ロシアだけがメディアを独占した.反対派は選挙活動も集会も妨害され,裁判所に訴えても無視された.国民は統一ロシアを圧倒的に支持するよう求められ,独立した選挙監視は禁じられた.
その結果,国会は正当性を失い,無名の議員ばかりになった.眼に余る選挙違反は,プーチンの正当性も損なっただろう.彼がどこまで権威主義的支配に頼るのか,この哀れな選挙が彼の権力を弱めるかどうか,だけが問題だ.
プーチンの政策は簡単に理解できる.彼は言うこととやることが逆だから.最初は権威主義的な改革派として,実質的な市場改革を実行した.次には単なる権威主義者となり,経済・社会改革を捨てた.1000億ドルの資産を持つユコスを収奪したように,腐敗がはびこった.
プーチンは個人的な専制政治を敷いた.彼はイデオロギーや政党と関係なく,大統領府と秘密警察を通じて支配した.統一ロシアは国家官僚の集団にすぎない.プーチンは他の国家機構から権力を奪った.
個人による権威主義はその創設者無しには維持できない.プーチンの体制はあまりにも中央に権力を集中しており,生き残るためには彼が大統領にとどまるしかない.法律はほとんど無意味であり,彼が命令すれば,憲法裁判所はいつでも彼の三選を認めるだろう.
プーチン体制は派閥と国営企業,そして秘密警察の寄せ集めである.プーチンのKGB組織がぺテルスブルグからこれらを支配しており,彼らに莫大な賄賂がわたっている.しかもプーチンは彼らを互いに戦わせ,彼が仲裁者であり,ゴッドファーザーであることを確かめる.
無名のKGB元職員がインタビューに答えて,彼らがいかに国家による民間企業への強請りを利用して,「静かな再国有化」を実行したか,説明していた.EBRDによれば,プーチンによる再国有化で民間セクターの占める割合がGDPの70%から65%に減少した,という.
再国有化はイデオロギーではなく,皮肉に受け止められた.それはクレムリンの幹部職員たちを養う費用なのだ.プーチンのKGP幹部たちは,このおびただしい収賄の中でも,誰一人逮捕どころか降格もされていない.
再国有化によって経済論議はすっかり国家主義的に変わった.保護主義,国家介入,補助金が支持されている.改革は進まないだろう.財政黒字,経常収支黒字,450億ドルの外貨準備など,最近まで優れたマクロ経済管理を示してきたが,すでに国会選挙前からプーチンはそれを投げ捨てた. 今や最大の関心は,特に食糧のインフレである.食糧価格の上昇は国際的な現象であり,ロシアの経常黒字や資本流入にも原因がある.しかし政府はこうした要因を緩和するより,インフレ的な政策を採った.
昨年,金融政策は緩和され,国会選挙前に年金や社会福祉に大盤振る舞いをした.だからインフレが7%から11%,そして15%に上昇するとしても当然だ.
金融・財政政策を引き締めるべきだが,国民への懐柔策を優先するプーチンは嫌うだろう.為替レートを変動させて増価するのを許すより,非公式な価格統制を行う.しかし民営化された経済には通用しない.
ロシアの経済成長は1990年代の改革や石油・天然ガス価格の上昇によって維持されている.成長はすぐに止まるわけではないだろう.しかし,石油・天然ガスの価格上昇にますます依存する.プーチンの三期目には,経済政策がどれほど早く悪化するかを見ることだ.
Charles Grant Learning to live with Putin's Russia The Guardian Monday December 3, 2007
Russia: A managed election The Guardian Tuesday December 4, 2007
Anna Matveeva Putin's election meddling is baffling: it can only backfire The Guardian Tuesday December 4, 2007
A Tale of Two Strongmen NYT December 4, 2007
In Russia, the backward march to czarism continues. WP Tuesday, December 4, 2007
(コメント) NYTは,ロシアとベネズエラにおける独裁的指導者の下の選挙を論評しています.
The Guardian Wednesday December 5, 2007
The new De Gaulle?
Robert Skidelsky
(コメント) ロシアが旧ソ連圏をふたたび支配してミニ帝国主義を建設することはできないでしょう.なぜならロシアは経済力が小さく,周辺の小国でも,独立を維持するために,アメリカやEU,アジアとの関係を交渉材料として利用できるからです.
ロシアがアングロ・サクソン型の資本主義から離脱して,全く異なる体制で繁栄することもないでしょう.それはヨーロッパ型の資本主義と,産業政策による権威主義的,保護主義的な開発モデルとの,折中タイプに向かうとしても,独自に繁栄をもたらす力はないでしょう.
ロシアは,かつてフランスの栄光復活を夢見たドゴール将軍がアメリカとの関係で担った「不本意な同盟国」the "awkward partner"になるだろう,とRobert Skidelskyは予想します.
SPIEGEL ONLINE - November 30, 2007
(コメント) わずか4セントで生産できる1ドル紙幣が世界に途方もない影響を与えます.なぜアメリカの通貨が世界の問題なのか? ドイツの新聞SPIEGELは長い記事を載せています.
たとえばハンブルグの生産工場を訪れたエアバス社のCEO,Thomas Endersは,ドルの為替レートを示すグラフを掲げて説明したそうです.今年に入ってからだけで,ドルはユーロに対して13%も減価している.とうとう1ユーロ=1.50ドルの水準も超えてしまった,と.ドルが1セント安くなるたびに,エアバスは1億ドルのコスト削減を強いられる,というのです.
ドル安は国際収支不均衡を調整してくれる,という楽観が吹き飛んで,それは自分たちの死活問題だ,と彼らが騒ぎ始めています.工場閉鎖や解雇が予定されています.石油が1バレル100ドルに近付いていることも,誰ひとり予想しなかったことです.
「世界はドルに依存している.ドルは世界貿易におけるもっとも重要な通貨である.飛行機,石油,鉄,主要な天然資源の価格がドルで表示される.世界中の中央銀行が,その外貨準備の相当部分をドルで保有している.大陸全体の競争力が世界の準備通貨の価値が変動することで変化する.こうした理由により,ドルの下落は世界経済を危機に陥れる潜在的な力がある.」
それにもかかわらず,アメリカでは同じドルに依拠して,過剰な消費がクレジットカードで支払われ,財政赤字を放置したまま,テロとの戦いにもドルで支払い続けています.こうした借金は何も問題ではなかったのです.アメリカに限っては,外国からの無限の融資が期待できたから.
ところがアメリカの不動産投資はデタラメであり,多くの投資家が損失をこうむり,世界の主要な銀行が担当重役たちを次々に解雇しています.同時に,アメリカの消費者も企業も容易に信用を得られなくなりました.それこそがアメリカの成長を支える基礎であったのです.
わずか数週間前には,ドイツの財務大臣Peer Steinbrückが「ユーロ高」を自慢し,石油が安く買えるから歓迎だ,と述べていました.しかし,今やメルケル首相は,ドル安が深刻な問題である,と考えるわけです.フランスのサルコジ大統領は,もっと明白に,ドル安の意図を疑います.アメリカ政府はドル安によって輸出を伸ばそうとしている.そのような状態を放置すれば,「経済戦争が起きる」と,警告しています.
しかしブッシュ大統領はこれを全く無視しており,アメリカは「強いドル」を好むし,為替レートは市場が決めるべきだ,と述べるばかりです.それは危険な戦略だ,と記事は考えます.市場はドルへの信頼を失いつつあるからです.バーナンキ連銀議長はドル安の危険を認めており,インフレ加速や消費減退,そして成長の減速を心配しています.ドイツにおいては,今のアメリカを1990年代初めに日本に比較して,同じような不況をもたらすと議論しています.
同時に,アメリカの財政赤字と経常収支赤字は膨張し続けています.フンボルト大学のアメリカ人エコノミスト,Michael Burdaは,1930年代のような世界的な不況が起きる可能性を指摘します.将来,覇権がアメリカから中国に移るのは確実であり,問題はその移行期に,どちらもがその役割を担おうとしないことだ,と多くのエコノミストは考えます.
こうして,将来の制度を確実に予測できる者がおらず,あまりにも多くの不確実さが国際金融には満ちているのです.
記事は,さまざまな国際通貨制度とドルの歴史をたどっています.ニクソン・ショック,プラザ合意,中国による外貨準備の累積,国際収支不均衡,中国や産油諸国のドル離れ,アメリカにおける脱工業化,中国製品の氾濫と依存,など.アメリカ経済の繁栄は単なる幻想にすぎなかった,という批判が強まります.自動車を作ってもビッグ・スリーの赤字が増えるばかりで,労働組合は初任給をわずか14ドルで合意しました.ワシントンのクリーニング店で雇う女性でももっと得ている,と記事は批判します.
アメリカの労働者たちが貧しくなったことが,今の住宅ローン危機の原因です.サブプライム・ローンが銀行の不良債権になると,消費が減り,銀行は融資を控え,不況に向かうでしょう.アメリカのドルがさらに価値を失う理由です.同時に,ドル安でアメリカが輸出を伸ばして企業や雇用を救うとしたら,同様に,ヨーロッパの企業や雇用は脅かされるでしょう.アメリカはドル安を放置し,準備通貨を損なうことで,世界に問題を輸出しています.
エアバスの対策としては為替レートの変動に対するオプション購入だけでなく,アメリカ国内もしくはドル圏の内部に生産拠点を設けることが指摘されます.こうしてエアバス社は,同様の問題を抱える自動車産業に従い,欧米にまたがる世界企業となります.
今後のシナリオについて,ドル安が安定的な調整を促す場合と,膨大なドル建て債権を外国の政府や投資家がパニックになって売却する場合,が指摘されています.世界経済がパニックを回避する鍵は,中国,です.中国がドルを売れば,ドル暴落は現実に起きるでしょう.しかし,アメリカと中国は安定的な調整を維持することに利益を感じています.
それでも米中の政府対話は実行を保証する手段を欠いたままです.アメリカ政府は,明らかに,インフレによって債務を(アジアの負担で)帳消しにする,という誘惑も感じているのです.他方,ECBも,ユーロの増価を防ぐためには介入も辞さない,と言いながら,市場介入は効果がないだろう,と認めています.インフレが強まっても金利を引き上げることはユーロ高を招くので,アメリカの金利に従って金融緩和を続けるでしょう.ユーロ圏のインフレ(そして政治対立)を生じる危険が高まります.
NYT December 1, 2007
The Dollar Is Falling, and That痴 Good News
By TYLER COWEN
FT December 6 2007
Middle East must loosen ties to the dollar
By Gerard Lyons
The Guardian Wednesday December 5, 2007
Dog days for the super dollar
Kenneth Rogoff
(コメント) TYLER COWENは,ドル安がアメリカにとって利益である,と主張します.通貨の価値が高まることはそのまま経済の成功を意味しておらず,将来の繁栄をもたらすわけでもないのです.
中東の経済政策は三つのDで説明できる,とGerard Lyonsは紹介します.人口,多様化,そして,ドルdemographics, diversification and the dollarである.インフレに対して湾岸諸国は金融引き締めを取ったが,アメリカは金融緩和を続けた.その対立は明らかです.
ドル安を受けて湾岸諸国は政策を買えるでしょう,それはドル為替本位に近いでしょう.
ドル暴落は起きていません.中国の金融市場改革が進めば,ドル暴落も可能でしょう.アメリカは今,ようやく覇権国の経済的コストに直面するのです.
IHT Friday, November 30, 2007
Time for serious dialogue
By Gordon Brown and Nicolas Sarkozy
Foreign Affairs , November/December 2007
Asia's Forgotten Crisis
By Michael Green and Derek Mitchell
FT December 6 2007
Defiance undeterred: Burmese activists seek ways to oust the junta
By Amy Kazmin
(コメント) 英仏の指導者(ブラウン首相とサルコジ大統領)がビルマ(ミャンマー)に対して発言しました.2か月前の抗議デモと軍政による激しい弾圧の映像を,国際社会は忘れていないことを示しました.ASEANの憲章が民主主義と人権を公式に目標として示したことを歓迎しています.
アウン・サン・スーチー女史が国連と協力して軍政から民政への移行を進めるという声明を支持しています.英仏だけでなくEUとして,ビルマに対する明確に限定的な制裁と,民主化の進展による経済協力などの支援策とを示すでしょう.ビルマが(軍隊を含む)国内の各勢力や少数民族の意見を代表した民主制として,安定した秩序を再建できるように,周辺諸国や主要国は協力しなければなりません.
しかし,Michael Green and Derek Mitchellの論説は,アメリカの制裁とASEANによる関与政策とが互いに矛盾しており,どちらも軍事政権を改革に進める役に立たなかったことを批判しています.もっと関係諸国,ASEAN,国際機関が協力して軍政の廃止を求めるべきです.日本はASEANとともにもっと重要な役割を果たせるはずです.しかし,この論説でもアメリカと中国の新しい協力関係が注目されます.
Amy Kazminの論説は,ビルマにおける軍政反対と民主化を求める抗議活動が,西側の慈善団体の組織や情報,そして資金を得て拡大したことを明確に述べています.イギリスで教育を受けた学生運動の指導者が,アメリカの団体から資金援助を受けて,非暴力の政治組織を指導します.それを軍事政権は非難の材料に使いますが,抗議運動に参加する人々は国際社会の支持と理解します.
Kosovo: Balkan blues The Guardian Saturday December 1, 2007
Zoran Pajic Stumbling to independence The Guardian Saturday December 1, 2007
Peter Preston Antidote to nationalism The Guardian Monday December 3, 2007
Ilana Bet-El Ending the Balkan curse The Guardian Wednesday December 5, 2007
Timothy Garton Ash The best answer for Kosovo is EU membership - and for Serbia too The Guardian Thursday December 6, 2007
(コメント) EUとロシアの意見は対立し,コソボの独立を合意できませんでした.もしコソボが独立を強行すれば,セルビアの紙幣が国境を超えるかもしれません.そして他の国も分離独立運動を抱えています.
ミロシェビッチの裁判やアルバニア人の虐殺に関する国際的な介入,アメリカ軍を主力としたNATOの空爆から国連による管理を経たコソボの現状を,今またロシアの介入でセルビア政府とコソボ内のセルビア系住民指導者が反発を強めています.さまざまな小国や民族独立運動を抱えるEUの中にも不安がひろがっているようです.
Timothy Garton Ashは,セルビアにおいて苦しめられた,特にミロシェビッチが加えたアルバニア人たちの悲劇を想います.同時に,セルビア人が味わった苦しみも想います.だからこそ,双方のために,一方的ではなく主要諸国との合意や国連との密接な協力体制においてコソボが独立することを望みます.そして,コソボだけでなくセルビアもEUに加盟して,ヨーロッパの国の一つとして平和を守ることで共存し,繁栄するべきだ,と考えます.
「最終的な結果はすべての点で正義をもたらさないだろう.法の定める理想に照らして事は収まらない.歴史はそのようにできていないのだから.それはせいぜい大まかな正義でしかない.無辜のセルビア人たちが,無辜のコソボにおけるアルバニア人たちと並んで,苦しみ,死んでいく.」
「この結末を正しいと判断する歴史のバランス・シートがどのように決まるのか,私にはわからない.そしてどのような状況で,誰が,自決権を持つのか,リベラル派は160年間かけても答えられなかった.」
あたかも中東和平のように,領土の分割や独立,土地交換や住民の移動,民兵の武装解除,など,政治と戦争と暴力の蔓延がヨーロッパの辺境を溶解しているのです.
LAT December 6, 2007
Stopping another Balkan crisis
NYT December 6, 2007
Dangerous, Unfinished Business
(コメント) コソボの一方的な独立宣言後,軍事衝突が起きた場合に何ができるか? LATは主張します.1.NATO軍を増強せよ.2.EUは警察力の強化に協力せよ.3.国連は避難を希望するセルビア人を保護せよ.4.ブッシュ大統領はプーチン大統領と対話してセルビア人の自制を求めよ.
アフガニスタンとイラクに続いて,西側はヨーロッパの核心で新しい戦争を始めるのか?
ロシアのプーチンは東欧における覇権を認めさせるために,コソボのケースを利用しているに過ぎません.そして,ロシアは今も安保理の拒否権を持つことを西側に示しているのです.国内でも周辺地域でも,ロシアは民族問題や民主主義を弾圧によって解決するつもりです.プーチンがセルビアのナショナリズムを支援している限り,セルビアの国内政治がEUやアメリカとの関係改善を積極的に評価する条件が整いません.
西側が政治的に譲歩するまで,チキン・レースになっても良い,とプーチンは計算しているわけです.
Warning tremors in France BG December 2, 2007
Mary Riddell A French lesson we ignore at our peril The Observer Sunday December 2, 2007
(コメント) パリ郊外のVilliers-le-Belで起きた二人の若者の死亡事故が,2年前の暴動を再現しました.サルコジの改革はここでも試されています.
The Guardian, December 2, 2007
Playing complementary roles
Laurens Jan Brinkhorst
(コメント) EU統合の将来に関するベルギーとフランスの対立が紹介されています.この二つの小国はEU統合の出発点であり,そのことなる傾向を代表している,という点で,両国の対立と妥協は重要です.
FT December 2 2007
Rate cutting will not get us out of this mess
By Wolfgang Munchau
FT December 2 2007
Cooler yet the pressure rises: Why a Seventies-style whiff of stagflation may soon be in the air
By Krishna Guha in Washington
FT December 6 2007
That old stagflation dilemma again
By Samuel Brittan
(コメント) Wolfgang Munchauは,金融緩和を求める論調に批判的です.1930年代のアメリカや1990年代の日本を根拠に,金融緩和を早期に実施するよう求めるのは,インフレの予想において間違っている,というのです.デフレが起きれば金融政策は効果が失われるので,その前に2%程度のインフレを達成するべきだ,というのは正しいけれど,今はむしろインフレが高まる心配をしている.また,たとえ景気が減速しても,インフレが予想されるときに,それを金融緩和で刺激するべきではない,と考えます.まさにモラル・ハザードを引き起こすでしょう.
Krishna Guhaは,このインフレが原材料に対する中国やインドの需要増大によって生じており,すなわちインフレの歴史的な構造変化が起きているのであって,短期的な金融政策の変更で対応できない,というRogoffの主張を紹介しています.たとえアメリカの成長が減速しても,インフレは抑えられない,という意見もあります.偏った形であれ,世界的な完全雇用が近づいているのかもしれません.生産のキャパシティーが地域によってどの程度限界に近付いているのか,それを見極めなければなりません.
これは今まで低インフレのまま金融緩和を続け,成長や融資を拡大し続けたアメリカの金融政策が,住宅市場の破たんやドル安だけでなく,新興市場の拡大や景気過熱を伴って世界的なインフレに転化したのである,と指摘しています.それは次第にインフレ期待を生じて,長期にわたるインフレと低成長という,1970年代のスタグフレーション問題を再現するかもしれません.
Samuel Brittanによれば,金融政策の新しい目的は,従来のように各国が需要を調整するのではないのです.石油ショック後のインフレから学んだように,金融政策で外からのショックに対して需要水準を安定化してはならない,というのです.国際金本位制と同じような長期の価格安定化を目指すのが良いだろう,ということです.
The Guardian Monday December 3, 2007
Free trade for Wall Street
Dean Baker
(コメント) 自由貿易を支持するかどうか,と質問することは重要ではない.国内の未熟練労働者から賃金や雇用を奪う「自由貿易」ではなく,金融サービスの「自由貿易」を主張するべきだ,とDean Bakerは考えます.つまり,「デトロイトのための自由貿易ではなく,ウォール街のための自由貿易を!」
NYT December 4, 2007
By DAVID BROOKS
あなたがもし中国に生まれたら.
あなたは一人っ子で,2人の親と4人の祖父母にかわいがられる.ときには,甘やかされた小皇帝と呼ばれる.
儒教の伝統,特に階層を重んじ,勤勉であることを重んじる.学校へ行って膨大な漢字を覚える.中国の強烈な人的資本育成策に従う.
現代の中国は才能に取りつかれた社会である.中国社会のエリートたちが才能を取り込もうとする.NBA(アメリカのバスケットボール・リーグ)がそうするように.それは厳格にして妥協を許さないエリート主義だ.
あなたは学校にすすんで,エリートの大学に進学すること,そのためには試験で最高の成績を取ることが必要である,と理解する.中国の生徒たちは1000年以上もこうした試験を受けてきた.
試験はすべての心の鍛錬を要しない.勤勉さと記憶力だけが重要だ.あなたの思春期は,試験と,受験学校と,準備のための時間に奪われる.
およそ900万人が毎年試験を受ける.その最上位1%だけがエリートの大学に入る.その他の者はせいぜい何人かが二流の大学に行くだけだ.彼らの将来は閉ざされたわけではないが,成功の見込みは小さい.良心の期待を裏切ったと感じて,こうした学校では自殺率が高くなる.
あなたは成功して北京大学に入る.教授たちを神のように扱い,良い成績がとれたら共産党に入ることができる.西側の人々は共産党を何か政治的イデオロギーと関係あると思っているが,中国には豊かになること以外,政治哲学は存在しない.共産党は巨大な機構であり,一緒に富貴を極めるための社会的ネットワークである.
あなたは特に優れた子供で,大学でも素晴らしい成績を残す.あなたには多くの可能性がある.アメリカ系の多国籍企業に就職して,資本家の訓練を経て中国に戻り,企業を起こしても良い.しかしあなたは政府官庁へ入ることに決めた.その方がリスクは少なく,(裏金で)豊かになれて,しかも国家に奉仕できる.
ある意味では,選択に意味はない.ビジネスでも政府でも,あなたには同じことだ.西側では政府とビジネス・エリートは対立するが,中国では二つが同じ社会組織に属し,協力して繁栄する.
あなたの人生は協調型官僚支配the corpocracyによって決まる.イデオロギーに違いはないが,異なる社会ネットワークがパワーと富を求めて激しく競い合う.だから才能を求めるのだ.勤勉に働き,組織管理に貢献する.あなたは鉄鋼や通信の国営企業において幹部になる.そして急速に上昇する.
アメリカ人と話せば,共産主義にはいろいろな不気味な考えが持たれていると分かる.あなたは彼らに,中国はもはや共産主義国ではない,と言う.それは全く違うシステム,能力主義的な家父長制である.こんな冗談を言う.アイヴィー・リーグが共産党を乗っ取って,その名前を変えなかっただけだ.ハーヴァード大学の同窓会が軍隊を持っているようなものだ.
これは有能な者の政府である.彼らが社会を支配し,賢明な父親のように行動する.市民に相談することもあるが,多くの場合,何が最大の善であるかは支配階級が自分たちで決める.
能力主義の協調型支配は敵対するパワーを吸収する.独自に力をつけてきた中産階級や,政府を批判していた民主化運動も,今では多くを吸収してしまった.協調型支配体制は固定していない.中国の弱点を認めて,近代化のために改革を行う.それが政治秩序を脅かさない限り.
多くの者が教育を受けた家父長制が中国に良いことだと信じている.中国経済は繁栄している.何十万人,何百万人が貧困から脱出できた.アメリカのどこよりも上海のショッピング・モールは輝いている.超高層のオフィスビルが乱立し,道路にはアウディの高級車がひしめく.
あなたは協調型支配の成果を誇りに思うだろう.そして中国近代化の次の段階に進む.製造業からサービス業へ.しかし,ここで首をひねるだろう.トップ・ダウンの記憶力がフレキシブルな,革新に満ちた,情報経済を指導できるだろうか.彼らがどれほど有能でも.
そんな考えが,夜中にふと頭をよぎる.
Asia Times Online, Dec 4, 2007
China's toddler tycoons
By Catherine Jiang
Asia Times Online, Dec 5, 2007
The coming China crash
By Martin Hutchinson
(コメント) 中国の株価が崩壊するのか,何度も調整しながら上昇を続けるのか? 中国の支配層とその富の偏りが政治的な反発を招くのか? こうした記事がますます増えるのでしょう.
NYT December 5, 2007
In Japan, Rural Economies Wane as Cities Thrive
By MARTIN FACKLER
(コメント) 秋田県能代市の話です.小泉構造改革で市場自由化や大型流通店舗の立地が自由になりました.また公共工事は削られ,入札の談合や価格カルテルは廃止されて,中国からの安価な輸入品が価格を引き下げます.イオンの進出計画を市は雇用をもたらすものとして歓迎しましたが,商工会議所が反対して阻止しました.
若者は流出し,商店街はさびれ,雇用や所得が減少し続けるのは,新しい競争に適応する努力が足りないからでしょうか? 中国からの観光客を誘致し,インターネットでも販売する,・・・? その模索が成功しなければ,もう一つ,ゴーストタウンができます.
Robert Kagan Time to Talk to Tehran WP Wednesday, December 5, 2007
The new intelligence on Iran BG December 5, 2007
THOMAS L. FRIEDMAN Intercepting Iran痴 Take on America NYT December 5, 2007
David Ignatius The Myth of the Mad Mullahs WP Wednesday, December 5, 2007
David S. Broder Openings in an Altered World WP Wednesday, December 5, 2007
VALERIE LINCY and GARY MILHOLLIN In Iran We Trust? NYT December 6, 2007
David Miliband Why we must not take the pressure off Iran FT December 5 2007
(コメント) 米中による世界平和を展望するBrzezinskiの論説にリアリストの示す国際秩序転換の凄みを感じました.日本は将来の位置について考えているでしょうか?
アメリカとイランの長く厳しい対立は,中東世界の覇権をめぐる争いでもあります.しかしCIA(National Intelligence Estimate)が出した新しい報告書はイランの核開発がすでに打ち切られていると主張しています.これにより,ブッシュ政権は孤立し,その強硬路線も支持を失うでしょう.任期内に軍事攻撃を行う可能性はない,と言われています.新しい条件で,しかも次期大統領に向けて,アメリカは幅広い対話により国際政治を動かし始めるようです.
しかし,それでもブッシュ大統領は強硬姿勢を変えていませんし,それを支持する意見も出ています.
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The Economist November 24th 2007
Mr Palestine
Northern Rock: Pulling the plug
European migration: Fear of foreigners
Canada’s guest workers: Not such a warm welcome
Europe and immigration: The trouble with migrants
The dollar: Time to break free
Currencies and oil: Countdown to lift-off
(コメント) ブッシュ大統領が中東和平の実現に動くこともできる,と論説は訴えます.アッバスとオルメルトを励ましてヨルダン川西岸のパレスチナ人たちが生活を改善する方策を合意させることができるのです.双方の国内政治状況を打開するため,ブッシュ氏が権力・軍事力を背景として明確に語るなら.
ノーザンロックの赤字を放置しても,民間銀行への売却を急いでも,イギリス国民は大きな負担を強いられ,しかも金融システムの不安定さはぬぐえません.今となっては完全に国有化して,一定期間を経て売却することです.移民に関する報告や論争が急激に増えています.ドル安に対して湾岸諸国が対策を実行し始めました.しかし,ドルとユーロのバスケットに移行することも完全な解決ではありません.
The Economist November 24th 2007
The sound of success: A special report on Austria
(コメント) オーストリアはコーポラティズムの本場として注目していた国ですが,その成功の原因はハプスブルク帝国の首都であったことかもしれない,というのです.オーストリアは小国で,グローバリゼーションの衝撃を受けとめて「創造的破壊」を続けるモデルとなりました.しかし,その起源を考えるなら,1930年代の政治対立が再現することを恐れてコンセンサスを重視した政治文化を共有し,さらにハプスブルク帝国の首都として多くの少数民族と混じり合い,優れた宥和と寛容の文化を広めた歴史にあるようです.
EUの拡大による新加盟諸国に対して,オーストラリアの企業や銀行は,他の欧米資本に先駆けて,積極的に進出し,そのキャッチアップと成長加速を享受しました.