IPEの果樹園2007

今週のReview

11/26-12/1

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

日本, 中国の億万長者, サルコジの試練, ドル安, 北朝鮮, 為替レートの安定化, リスク, ポーランド, ドバイ, ベルギー

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT November 15 2007

The big lessons from Northern Rock

By Martin Wolf

ノーザンロック銀行の窮状は,イギリスの政策担当者と金融部門にとって大きな悩みである.取り付けに直面した金融当局はその預金引き出しを保証し,これまでに少なくとも200億ポンドの負債を支払った.多くの者は,他の金融機関にノーザンロックを買収させるためには,政府による補助が必要になるだろうと考えている.しかし,市場の株価はまだプラスである.これは驚くべきことである.誰が責められるべきか?

ノーザンロックの経営はその脆弱性を形成した.資金調達が急に止まったとき対応できなかった.こうした問題はこの銀行に特有であり,彼らの責任だ.

金融サービス監督局(FSA)を批判する声が多い.破たんの規模を考えると,これは当然だ.しかし,何をすべきであったかは明確でない.FSAがどこまで個別銀行の経営にまで関与するのか? むしろ経営を誤った銀行は破たんさせて,預金者を守るべきではないか? その通りだ.

イングランド銀行の失敗を問う声も多い.イングランド銀行は,市場にもっと早期かつ潤沢に,担保の範囲を広げて,資金を供給するべきだったのか? メルビン・キング総裁はこの批判に応えて,「イングランド銀行は銀行が要望することをするためにあるのではない.この国全体の利益を代表して行動する」と述べた.

なんにせよ,キングの考えでは,そのような資金供給を行ってもノーザンロックは破たんしただろう.それほどの巨額な融資を,もっと寛大な条件で,特定の銀行に行うことは不可能であった.また,たとえそのような融資を行っても,すでに流動性を保持し,融資を削減しようと決めていた他の銀行が,必要な規模の融資をノーザンロックに行うよう促すことはできなかっただろう.イングランド銀行のけちな行動に対する非難は,ノーザンロックに待ち受ける事件とは無関係であった.

イギリス財務省はどうか? イングランド銀行による融資と同時に,速やかに預金を保証しておけば,あるいは,他の金融機関がノーザンロックを買収するように説得するため資金を用意しておけば,良かったのではないか?

後者について,財務省は正しくも反対した.キング総裁が考えたように,財務省がノーザンロックの買収に,さらに300億ポンドを有利な金利で提供するのは間違いだ.シティがそのように考えるなら,それを恥じるべきだ.

しかし,後から見て,危機が公表された時点で,政府は速やかに預金を保証するべきだった.もしノーザンロックが同時に政府の管理下に置かれたら,イングランド銀行の融資も不要であっただろう.株式所有者は一掃され,公的な救済にふさわしいことであった.ビジネスは全体もしくは部分で売却され,残された損失は保証されていない債権者(政府を含む)が負担する.

このことを迅速に進めるには,制度的な枠組みが変えられるべきだった.ほとんど皆が同意していることだが,アメリカのような預金保険制度と金融機関の破たん処理が必要だ.小口の預金者は即座に引き出せて,金融機関は救済が必要なら買収される.

他方,銀行の規制と監督責任をイングランド銀行に移す,もしくは「最後の貸し手」責任をFSAに移す,ということには同意できない.現行制度で協力することは難しいけれど,規制当局が監督する機関に融資もできるというのは,非常に危険である.また,「最後の貸し手」を「債券市場価格の最後の決め手」に拡大することも疑問である.いずれの制度でも,ノーザンロックは救えなかった.

大きな過ちを犯したのは,幸い,一つの金融機関であった.この民間部門の失敗に対する公的な責任追及はやめるべきだ.そして,もっと効果的な預金保険と破綻処理を求めよう.

The Guardian Tuesday November 20, 2007

Northern Rock :The N word

The Guardian Tuesday November 20, 2007

Public interest must come before ideological hangup

Vincent Cablethe Liberal Democrats' Treasury spokesman and acting party leader

NYT November 20, 2007

Options Narrowing as Britain Tries to Stabilize Bank

By JULIA WERDIGIER

Nov. 21 (Bloomberg)

Brown, Darling Are Dithering Over Northern Rock

Matthew Lynn

FT November 22 2007

How Britain can avoid a subprime disaster

Vince Cable

(コメント) ノーザンロックをどうするべきか? 業績は悪化し,買い手がつかない銀行を,このまま損失が出ても融資し続けることはできません.そこで,完全に破産処理するか,あるいは,国有化するか,という議論が始まっています.政府は,一方で失業者を心配し,他方では納税者や有権者を心配しなければなりません.

実際,Vincent Cableが批判するように,政府の処理は後手に回って,莫大な報酬を得ている経営陣はそのまま,他方,ノーザンロックの資産(ケイマン諸島に移ってしまった)は,税金による債務支払いが増すなかでも,手が付けられないようです.他の金融機関から,政府が期待するような夢の買収提案が示されることはなく,こうなったら国有化する必要がある,と主張するわけです.その場合,以前のような国営銀行にするのではなく,処理を進めて民間に再売却することを検討しています.

どのような形であれ,公的な資金が失われるのを防ぐべきです.しかし,どれほどの損失が出るのか,公的な負担はどうなるのか,政府保証がどれほど必要か,・・・さまざまな要因を考えてバランスを取るとき,政治的な交渉による以外に解決の途はありません.

イギリスの住宅市場が,移民による人口増加も加わって,ブームの後,下落する傾向もあります.それは銀行システムにさらに悪い影響をもたらすはずです.


FT November 15 2007

Clarity target for Federal Reserve

(コメント) バーナンキ議長のインフレ・ターゲット論が徐々に制度に取り込まれていることを称賛する論説です.ターゲットなしのターゲット戦略とは,連銀の今後3年間のインフレ予想とリスクへのコメントが公表されることで,市場参加者の関心や行動を決めることができる,ということです.人々がインフレ目標によって行動を制約されることで,金融政策は効果的になるわけです.


FT November 15 2007

Japan’s taxing problem

NYT November 16, 2007

Tokyo Seeking a Top Niche in Global Finance

By MARTIN FACKLER

(コメント)他方,裕福な諸国で最大の債務を負った日本政府は,債務削減の目標を何も示しません.プライマリー・バランスが抑制されたことで,いよいよ赤字削減だけでなく,債務の返済を始める時期です.たとえば,公務員の数を減らす,などして.

数年前,日本経済は巨大で,東京市場は世界の金融センターになるはずでした.道路標識を英語で表示し,いくつかの病院も英語で利用できるようにしました.今も日本のFSAが,外国投資や外国投資家を招いているにもかかわらず,その取引は大きく遅れていました.国内の不況により海外に流出していた貯蓄が,最近の円高で国内市場に戻りつつあります.

外国の専門家を増やし,外国企業の投資や上場を増やし,税率を下げて,英語による人材を増やし,市場の監督や説明において透明性を高める.・・・しかし,実際は日本の金融機関も,監督当局も,自分たちの金融市場を外国の競争相手から隔離・保護したいだけではないか?日本人は金融ビジネスよりも製造業を尊敬する,とMARTIN FACKLERは考えます.その結果,東京証券取引所の地位は下がり続けています.

それを変えるのは,香港や上海が急速に追い上げて,日本の地位を脅かすからです.また,すでに製造業において支配的な役割を中国に奪われてしまいました.ウォール街には世界の主要な金融機関が進出しており,また,ロンドンには多くの新興市場から金融機関が集まっています.東京の衰退は,国内市場の開放と,製造業から金融ビジネスへの転換を政治家や国民がまだ納得していない,という点にある,と金融市場に関わる財務省の元スタッフは考えます.

膨大な個人資産と,急速に発展して投資を求めているアジアが背景にありながら,日本人は規制された自国市場に隠れています.

LAT November 16, 2007

Testing the limits of Japan's friendship

By Michael Zielenziger

(コメント) 福田首相とブッシュ大統領の,少しも注目されない首脳会談について,です.「5年で3人目,もし数えていたら」という言葉に,日本の政治に対するアメリカ人の侮蔑がにじみます.「かつてはアメリカのアジア長期戦略において本質的な同盟関係とみられていた」とも書きます.今や,そうではない.

「普通の国」として,アメリカの同盟国を任じるだけの責任を果たせ,とアメリカ政府がいらだつのは,ある意味で,小沢一郎と似ています.なぜ今もアメリカは日本を必要とするのか?  Michael Zielenzigerの表現は直截です.アメリカ人はトヨタのハイブリッド自動車をアメリカ財務省証券で支払い,アメリカ政府は中国の野心を封じ込めるための軍事基地を日本に置けるからです.

ところが,実際は,インド洋上の給油活動について,北朝鮮のテロ支援国家指定解除について,沖縄米軍基地の財政分担や移転費用の取り扱いについて,アメリカと日本は意見を対立させたまま,関係を悪化させています.それでも重要な同盟国なのか?

アメリカにとって日本は,トニー・ブレアの国と同じような,極東の島国なのでしょうか? クリントンン政権がほとんど無視した日本の役割を,ブッシュ政権は重視しようとしましたが,それも小泉との信頼関係だけ.アメリカが求めた国際的連携を担うのは無理である,と確認したに過ぎません.日米関係においても,小泉後の評価は定まらず,変化から取り残されてしまいます.

憲法が唱える戦争放棄が,国民の絶対平和主義を許しています.国連重視によって修正する道は,常任理事国入りの失敗で後退しました.アメリカは日本が極度に合意を重視し,指導力を期待できない国であると理解しています.デフレに長く苦しみ,中国の台頭に対してもアメリカに頼り,対米貿易黒字を累積するばかりで,中東からの石油を輸入し続けるが戦闘には参加しない.国際政治で孤立し,無視されることを好む国でしかない,というわけです.

FT November 16 2007

US and Japan seek to ease tensions

By Andrew Ward in Washington

(コメント) 日本が北朝鮮との6カ国協議を推進することが,イラクやアフガニスタンで戦うアメリカを最も助ける,と福田首相は述べました.


IHT November 16, 2007

Memories of war, East and West

By Joyce Hor-Chung Lau

(コメント) アメリカ政府によるアジア外交の転換は,第二次世界大戦が終わって60年以上たつが,ドイツに比べて,日本はアジア地域の和解を促せず,指導的役割の承認を得ていません.それゆえ,EUのような,アジアの統合化を指導する機関もできないのです.中国政府は日本の政治家が靖国神社を参拝するたびに非難し,学校で教えることにも互いの説明は食い違ったままです.

中国も日本も,戦争やその記憶,ナショナリズムを政治に利用しています.映画を禁止したり,サッカーの応援でも互いを非難したり,あるいは,ブーイングされても「応援に感謝する」という横断幕を掲げます.「抗日戦争」のゲームでは軍服を着た中国の子供たちが日本兵を倒します.記事は,ドイツとフランスが互いの戦争を商社や敗者として思い出すとしても,このような行為は公式に認められることなどない,と驚きます.


IHT November 16, 2007

China's billionaire bubble

By Peter Kwong

Forbes誌が公表した今年の(個人資産が10億ドルを超える)億万長者746人のうち,415人はアメリカ人だった.そして,中国からも初めて,一気に20人が登場した.しかも,それは3月の時点で,11月には66人に増えた.あるいは,上海で発行されている雑誌では106人がリストアップされた.その理由は,主に株式価格の高騰である.上海の株価はこの18か月で400%上昇した.

不動産会社Country Gardenを上場して中国最高の富豪になったYang Huiyanの資産は170億ドルである.他にも中国のGoogleであるAlibaba.comやアメリカのExxon Mobil Corpを凌ぐにいたったPetroChinaなど,中国の株式市場には富が唸っている.

そのPER64に達し,香港の23,アジア市場の1418に比べて抜き出ている.中国政府もグリーンスパンもバフェットも,中国市場はバブルだと警告している.株式の取引口座数は1億を超えており,2006年末から今までに2700万口座が新規開設された.教師も,年金生活者も,タクシーの運転手も,会計係も,退職金をつぎ込み,住宅を抵当に入れて,「強火炒めの株式」を買い漁っている.

新自由主義に染まった共産党の中国はほとんどすべての社会福祉制度を剥ぎ取ったため,中産階級は貯蓄を株式市場に投げ込み,それによって突然の医療費や退職,高騰する大学授業料や宿舎費用を支払うための貯えを増やそうと考えている.

もし中国共産党がその政策を「中国的な社会主義」と呼ぶなら,中国の株式市場こそ「中国的な自由市場」により変動するのである.

上場企業の8割は1990年代の改革した国有企業であり,それを経営するのは共産党の幹部とその家族である.株式市場に改革する過程で,共産党幹部の子弟は「小君子」として中国のもっとも戦略的かつ利潤の多い産業を乗っ取った.銀行,保健,輸送,電力,資源,メディア,兵器産業である.

小君子たちは政府系銀行から融資を得て,外国のパートナーと組み,その企業を株式市場に上場する.公開される前に,株式の大部分を自分たちで,また管理職やその家族で,分けてしまう.

今,中国の政治で最も力がある集団として,小君子たちは経営企業の内部会計を握っている.彼らは外部の監査にも,操作されない市場にも,何も従わない.国家の規制当局にさえも従うことはない.

自由市場であれば,民間企業は株式を発行して資金を得,成長を刺激する.中国では,それは少額の預金者から貯蓄を奪う手段である.強気の株式保有者たちが株価を引き上げ,政府は保有株を売って莫大な利益を得ている.1兆ドルの市場評価額を持つPetroChinaも,そのごく一部が市場を介して保有されているに過ぎない.経済誌の長者番付は不完全である.なぜなら中国の「国有企業」はその保有が不透明である.実際,中国には既に200人もの10億ドル資産家がいるはずだ.

遅かれ早かれ,この株式バブルは破裂する.政府関係者は内部情報を持ち,難を逃れるから,少額の投資家大衆がその被害を受ける.中国の億万長者は,その登場と同様に,速やかに消滅するだろう.中国の何100万人という中産階級の貯蓄は奪われるだろう.

その政治的帰結は破滅である.温家宝首相は秘密会議で,そのことを考えると冷や汗をかいて夜中に目が覚める,と述べたそうだ.しかし,投資家に優しくすると,オリンピックまで株価は上昇すると信じて投資家はさらに無謀な買いを続ける.それこそが首相の悪夢なのだ.時限爆弾は爆発の時を待っている.

WP Thursday, November 22, 2007

Beijing, Hong Kong & Macau

By Philip Bowring

FT November 22 2007

Chinese bluster on Tibet and Taiwan

(コメント) 共産党の下部は香港のショッピングやマカオでギャンブルに耽っています.他方,中国政府はチベットや台湾に厳しい注文を付け,民主化を弾圧し続けています.


FT November 16 2007

Heroes and zeros

(コメント) スポーツも,貨幣も,国が優劣を決めるわけではありません.イギリスのサッカーでも,日本の相撲でも,外国人の選手が増えることを嫌って,その人数を制限する提案が現れます.FTは,世界中のどこであれ,最も高い報酬を得られるところで選手たちは活躍するべきだ,と考えます.グローバリゼーションはイギリスのサッカーを強くし,その制限が日本の相撲を衰退させるのでしょうか?


FT November 16 2007

Sarkozy squares up to France’s unions

FT November 21 2007

Even in Europe, reform is possible

Johnny Munkhammar

(コメント) 公務員たちの年金制度や解雇をめぐって,サルコジ大統領は改革の最初の大きな抵抗に直面しています.個々の組合と合意を模索するのか,あるいは,原則を確立できるのか?

Johnny Munkhammarの論説は,ヨーロッパの他の改革と比較しています.イタリア,ドイツ,イギリスの経験に学ぶなら,フランスの改革はどうすれば成功するか?

アイルランド,スペイン,ニュージーランド,スウェーデン,アイスランドは改革によって成長を高めました.すなわち,法人税の減税,移民自由化と労働市場の改革,学校の選択,労働規制の緩和,民営化,フラット・タックス,などです.改革は,世界が急速に変化し,技術革新が続く限り必要です.

特殊利益に依拠した反対勢力に対して譲歩すれば,改革の成果も弱まり,結局,失敗します.むしろ,改革を進めれば反対派も従うことが示される,と主張します.反対派の神話と違って,改革によって最大の利益を得たのは,低所得者や失業者であった,と.

イタリアやドイツで改革が成功しないのは,政治的な統一性がなく,一貫した改革を続けられないからである,とMunkhammar考えます.政権が変わると改革は後退してしまいます.左派のブラウンであれ,右派のサルコジであれ,そのイデオロギーの違いにかかわらず,改革を成功させることができるでしょう.反対派を説得する政策と政治的な意志が必要です.

焦点を絞って選挙で勝利した後,改革を加速することで反対派を抑えて成果を示せる,とOECDの報告を示しています.


FT November 16 2007

Gulf currency pegs

FT November 19 2007

Opec’s dollars

(コメント) 産油諸国や中国がドル安やインフレを嫌い,為替レートをドルから切り離すかもしれません.クウェートが試みているように.しかし,石油の輸出に依存した経済は,独自の通貨政策を取るより,ドルに固定した方がうまくいく,とFTは指摘します.

弱さを示したライオンは急速に衰える,とFTはドルに警告します.石油輸入国は,ドルではなく,自国通貨を切り上げて石油を購入するようになるでしょう.また輸出国も,ドル安の弊害を逃れて,さまざまな通貨に資産を分散したいでしょう.中国政府も,切り上げを始める,と市場に告げました.

WP Sunday, November 18, 2007

The Discipline Of the Dollar

By David Ignatius

(コメント) 「次の国がどこか当ててほしい.その通貨価値は世界市場で急速に下落している.投機的な不動産バブルが破裂した.不良債権と不透明性で金融部門が弱っている.経済は不況に向かっており,海外からの巨額の借り入れでその将来を国際投資家の慈悲にゆだねている.」

現在のアメリカ,あるいは,10年前のタイです.しかし,アメリカはタイと違って,自国通貨であるドルによって借りている.もしそうでなかったら,アメリカはとっくにIMFの融資条件を受け入れていたはずです.

それでもアメリカの自由には限界があり,今やドル安が進行しています.それは危機ではなく,アメリカと世界の国際収支不均衡に調整を促しているのです.問題は,それが円滑なものか,劇的なものか,です.投機的な恐怖と欲望は,すでに市場に渦巻いています.つまり,ジミー・カーターの瞬間を経て,タイのパニックが再現する.

The Guardian Wednesday November 21, 2007

We have been warned

Alan Simpson

(コメント) イギリスから見れば,アメリカと中国は互いに成長と債務,石油と通貨を介して依存しており,また,国際的な政治・経済上の優位を奪い合っています.そして,その影響は世界の隅々に及ぶのです.

イギリスがそう感じているのであれば,日本はもっと意識しなければならないでしょう.

FT November 22 2007

Where the dollar’s decline is taking the world

David Hale

最近のドル安は伝統的な経常収支赤字の関心がもたらしたのではない.アメリカ経済は輸出のブームが続いている.ドルに対する不安は,輸出でも,資本市場の格付けでもなく,中国と中東に対する外交政策の失敗から生じている.つまり,最大のリスクはウォール街ではなく,北京とリヤドにある.

ドル安は,アメリカとその通貨であるドルが,中東地域やアジアにおいて準備通貨のままいられるのか,という不安から生じた.

住宅市場から銀行に波及した金融逼迫は,三つの理由でドル安につながる.1.海外投資家はアメリカの住宅抵当証券の主要な投資家である.2.抵当証券から金融市場の収縮が起きた.3.連銀が,他の主要国の協力なしに,利下げを繰り返した.

ドル安は準備通貨としての将来にも不安を生じている.また,伝統的にテキサス出身の財務長官はドル安を,ウォール街出身の財務長官はドル高を好む傾向も変えてしまった.ポールソンは人民元の増価を要請している.ところが,皮肉なことに,それがドルの地位を損なってしまう.このままではポールソンが退任後,ブッシュとテキサスに引きこもるしかない.


SPIEGEL ONLINE - November 16, 2007

An Oasis of Capitalism in North Korea

By Wieland Wagner

CSM November 19, 2007

N. Korea: Tell the truth on forged dollars

By John K. Cooley

Asia Times Online, Nov 20, 2007

Japan, US and the North Korea dilemma

By Donald Kirk

(コメント) 北朝鮮に国際取引にも通用する貴重な外貨を供給しているのは,韓国と共同で開発しているケソン工業地区the Kaesong industrial complexです.4年前に,330ヘクタールの土地において始まった,ということです.中国でも工場を経営したことがある工場長は,北朝鮮の方が労働力の質が良く,何より安い,と言います.約2万人の労働者が,500人の韓国人工場長の下で働きます.

南北友好の証として,また,あまりにも低い北の生活水準を引き上げる手がかりとして,ケソン工業特別区は維持されています.さらに韓国政府は,開発区の規模を倍増し,北の港湾や鉄道など,インフラにも投資する計画です.北朝鮮はthe Kumgangsan観光でも外貨を稼いでいます.

しかし,アメリカや日本との間では北朝鮮の関係を改善するために,まだ重大な障害が残っています.北朝鮮が高品質の偽造100ドル紙幣を使っている疑い,それは戦争に匹敵する,とアメリカ財務省は重視します.

Donald Kirkは,朝鮮半島をめぐって,アメリカと日本が異なる味方と方針を示していることに注目します.福田首相の訪米は顕著に冷淡な扱いを受けた,と考えます.日本人拉致問題に関しては,アメリカも韓国も,まったく重視していません.第二次世界大戦や朝鮮戦争における膨大な犠牲者を真っ先に考えるアメリカや韓国にとって,拉致問題に固執する日本政府の主張は感覚的に受け入れ難いのです.日本の戦後の姿勢も理解されません.

アメリカ政府は,イラクやアフガニスタンにおける日本の協力を,朝鮮半島における日本理解の代償と考えていたかもしれません.そうであれば,ブッシュ氏がこれを見直すのは当然です.

FT November 19 2007

Selling to survive: ad hoc markets take root in North Korea’s parched soil

By Anna Fifield

(コメント) 「北朝鮮は,人民が生き延びる努力を否定する国である,と悟った.」 親族の多くを飢餓で死なせて,自分の始めた麺の販売をやめさせようとする警察に苦難を強いられ,とうとう妻と子供を連れて中国との国境を超えた男性の主張です.「中国では犬でさえも北朝鮮の米を食わないだろう.もっとましなものを出せ,と言う.」

世界で最も厳しい情報統制の国であっても,すでに中国との国境地帯では変化が始まっている,ということです.もはや配給も行えなくなった経済状態の悪化が,北朝鮮の交渉姿勢を軟化させたのでしょう.国境に接する,北朝鮮でもっとも発達した工業地帯でも,仕事はなく,何もしないまま帰宅する日が多い,と亡命者は語ります.

生活はますます女性たちが山で集める野草や根菜に依存し,売れるものなら何でも売る.それでも生きることは難しい.豆腐を作った残りのおからを粥にして食べている,と.北朝鮮が許した国境地帯における「資本主義」の実験は離陸する気配がありません.

中国側の親類を訪ねるだけでなく,お金を支払って中国との国境を超えることも可能であり,それゆえ収賄も増えているようです.北朝鮮政府は,地方の生存のためにそれを黙認しています.偽物商品のわずかな市場も発達しています.韓国が援助として与えた高品質のコメも売買されています.そこでは物々交換ではなく,さまざまな貨幣が使用されていますが,すべては私造された代用・似非貨幣です.

北朝鮮の薬・麻薬は中国との国境貿易で栄え,中国の取り締まりが強化されてからは,訪問者に販売されている,と言います.ますます多くの北朝鮮からの移民が中国に入って働いています.韓国に入るためには中国の偽造パスポートを買います.中国製品よりも高品質の韓国製品を人々はよく知っています.

市場が拡大して変化を止められなくなれば体制は崩壊することを,金正日たちは知っています.だから改革は限定され,停止するのです.生き延びるために改革を認め,それを止めるというジレンマを繰り返します.中国からの商品や情報の流入は,すでに限界を超えてしまったかもしれない,とAnna Fifieldは考えます.

中国側の朝鮮人たちは,「偉大なる指導者」が亡くなったら何が起きるか,という話を始めています.彼の王国は崩壊を始めているのでしょう.


NYT November 17, 2007

On Strike to Protect the Gains of the Past, With an Eye on the Future

By STEVEN GREENHOUSE

(コメント) 自動車,ブロードウェイ,病院,そしてパリの地下鉄,公務員,・・・欧米では労働組合のストライキが重要な役割を担っているのでしょうか? この記事は,それが防戦的なものであり,後退しながら,交渉のために戦略として示されただけだろう,と述べています.


Guardian Unlimited Saturday November 17, 2007

Dollar denial

Roman Frydman and Michael D Goldberg

「合理的期待」による為替レートのモデルでは,市場が常に均衡から乖離することはない.だから政府にできることは何もない.他方,「行動経済学派」によれば,貨幣の価値は長期にわたって均衡から乖離することができる.ただし,それは市場の心理や不合理な取引が行われるからであり,この場合も介入は必要ないか,無駄である.不合理な市場の流れに対抗する途はない.

しかし,どちらの主張も間違っている.彼らは人々が歴史や社会に対する不完全な理解に基づいて「合理的である」に過ぎないことを無視している.

もしこの不完全な知識を経済モデルの中心に据えるなら,人々の取引が導く均衡水準は多くの要因の一つに注目しているに過ぎない.不完全な知識に応じて,ファンダメンタルズの何に注目するかで,均衡から乖離してしまう.

ユーロが誕生したとき,そのレートは1.16ドルで,それは当時の購買力平価(PPP)と比べて約10%の過小評価であった.当初,ドルはユーロに対して増価し,2002年から着実に減価した.ドル暴落の不安があっても,アメリカ政府には具体的な対策がない.それは為替レートに関する学者の意見が分裂しているからだ.

しかし均衡からの乖離は永久に続かない.マクロ経済のファンダメンタルズから離れれば,逆に,均衡へ戻る動きが気になる.その時には大幅な損失が生じる.だから巨額の投機的なポジションは取れない.

外国為替市場でオープン・ポジションを維持することが危険であることから,中央銀行は均衡からの乖離を制限する新しい介入手段を得る.究極的には為替レートがPPPに戻るのだが,不完全な知識によって,トレーダーたちはそれがすぐに起こるとは考えない.しかし,インフレ率に関して行っている様に,もし中央銀行が定期的にPPPからの重大な乖離を注意するなら,トレーダーたちは均衡からはずれるオープン・ポジションを取る危険に気づくだろう.それは投機を抑え,為替レートの振幅を制限する.

この「振幅制限」案を実行するには,中央銀行が毎月の均衡値を推定して,その推定の包括的な説明とともに,公表すれば良い.いくつかの中央銀行が介入する姿勢を示せば,それは一層効果的になる.

この戦略は予め決められた目標圏に為替レートを導くものではない.予測できない介入の可能性が,中央銀行による均衡の推定値に対するトレーダーたちのリスク意識を高めるのである.

インフレ目標も為替レートを安定化するだろうが,この介入手法はもっと直接に為替レートに影響する.中央銀行が通貨の需給に及ぼす影響はわずかであるが,トレーダーたちにPPPからの乖離を牽制する力は強い.

FT November 19 2007

Technology can help stabilise currency markets

By Richard Olsen and Clive Cookson

(コメント) いわゆるデイ・トレーダーたちは,その日のうちに売買を終了するので金利を課されません.こうしてイールド・カーブが不連続であることを利用して短期売買が膨張し,為替レートの変動を大きくしている,とこの論説は批判します.他方で,キャリー・トレードは長期の金利差を利用して利益を上げようとしますから,為替レートの変動は,長期の動機と短期の利益とは,その格差を一気に為替レートに反映して動揺をもたらします.

もしイールド・カーブが連続的に処理されれば(現在のコンピューターでは毎秒の金利が計算できます),こうした歪みは解消されます.それは銀行の利益を減らすでしょうが,通貨危機によって破産したり,失業したりする貧しい人びとを減らすのです.


Dominic Hughes Dutch float 'migrant prison' scheme BBC 2007/11/17

JASON DePARLE Migrant Money Flow: A $300 Billion Current NYT November 18, 2007

MICHAEL LUO Candidates Walk a Tightrope on Immigration NYT November 18, 2007

Michael Skapinker Governments miss the point on immigrants FT November 19 2007

(コメント) オランダは水上に非合法移民を一般の囚人と分けて収容する刑務所を増設しました.ここではIOMが移民たちに帰国を説得します.彼らが犯罪に向かわないよう,他の囚人とは分離する方が良い,と考えます.移民たちはお金を払って非合法に入国し,仕事を探しますが,警察に捕まってここに来ます.

外国で働く人々は,200ドル,300ドルと家族に送金します.しかし,世界全体では,その送金額は3000億ドルに達し,発展途上諸国が受け取っている援助資金の3倍もあります.あるいは,非公式の分も含めると,その50%多い送金があるかもしれません.

移民政策の争点が大統領選挙にどのような影響を与えるのか,共和党も民主党も測りかねているようです.また,イギリス政府が導入するポイント制度も,熟練労働者に限定する制度による,イギリス経済への効果や国民の評価はいまだに不透明です.

制約のない移民が望ましいとしても,それを許すことのできる政府はありません.それゆえ,入国を拒む理由が必要になります.


Asia Times Online, Nov 17, 2007

Playing South Asia's World War III game

By Chan Akya

(コメント) 南アジアにおけるイスラム教徒の避難地としてイギリスが認めたパキスタンの地位は,バングラデシュが独立して失われ,それ以後,パキスタンは開発政策と西側政治が介在した政治混乱に終始した,とChan Akyaは指摘します.開発に向けて秩序を維持したはずのムシャラフにとって,ブッシュが押し付けた「テロとの戦い」やブットが押し付ける「民主主義」など余計なこと,あるいは最大の脅威です.

パキスタンを理解するにはゲーム理論のナッシュ均衡を考えるのが良い,として,こんな風に説明します.参加者は互いを信用できないから,全体の最適な状態には近づけない.それぞれが次善の策によって均衡状態を維持するのです.アメリカはテロと戦うために独裁者を受け入れ,国民は以前と比べて成長をもたらした独裁者を認めている,と.

ところがアメリカはそのゲームブックを破って,今度は亡命中のブット女史を担ぎ出し,民主主義を称えるというゲームに書き換えようとしました.しかしこの主張は,ますますイスラム原理主義が広まるパキスタン民衆に嫌われ,ブットの帰国は大規模な自爆テロによる歓迎を受けました.軍事政権は核のボタンから手を離すことが滅亡を意味すると理解しています.ブッシュ(ライス),ブット,ムシャラフ,誰にとっても事態を改善する機会はありません.

また,南アジアを取り巻く政治状況では,インドと中国が重要です.中国はインドとの対抗関係でパキスタンを支援してきましたが,今ではインドの軍事力を脅威と考えることもなく,むしろアメリカ市場に代ってインド市場への進出を目指しているようです.パキスタンの軍事政権とも良好な関係を維持し,インドとは和解を進めて輸出したい,というわけです.他方,インドでは,改革派の政府が対米協調を目指したことに議会や共産党は反対しており,パキスタンの事態にも戦略的な方針を欠いたまま身動きが取れません.

Chan Akyaの結論によれば,パキスタンの新しいゲームで最も重要なアクターはイスラム原理主義者なのです.そして,彼らがパキスタンの核兵器を得たとき,第三次世界大戦のゲームが始まります.

NYT November 18, 2007

Pakistan Collapse, Our Problem

By FREDERICK W. KAGAN and MICHAEL O辿ANLON

FT November 18 2007

What Musharraf must do now

WP Thursday, November 22, 2007

Musharraf and the Con Game

By Robert Kagan

(コメント) アメリカにとっては,パキスタンの軍の穏健派を親米的な勢力として,テロ撲滅やイスラム過激派掃討で協力し,体制の安定化に期待したいわけです.開発と民主主義の実現には時間がかかるから,と.

他方,ムシャラフの非常事態宣言は,民政移管を迫られ,しかも国内の権力闘争で最高裁判所に辞任を迫られることに対して,軍部が先手を取るために選択されたものです.アメリカには自分たちを支持する以外に選択肢がないから,と考えたのです.

アメリカはパキスタン軍・秘密警察に多くのイスラム過激派やタリバンが混じっていると考えています.それゆえ,軍部を選別し,内部の穏健派・親米派を助け,西側との国際協調路線をアメリカ政府やイラク駐留軍は守るべきだ,と主張します.そして,パキスタンの核兵器・核物質の管理をアメリカ軍が握ることです.

FTは,アメリカ政府とムシャラフが交渉して,パキスタンの法律や民主化に譲歩させるべきだ,と考えています.


The Japan Times: Sunday, Nov. 18, 2007

What the Kaczynksi twins taught Poles

By LESZEK BALCEROWICZa former deputy prime minister and governor of the Central Bank in Poland

(コメント) カチンスキー兄弟の「法と正義党」が選挙に負けて,ようやくポーランドにもまともな政府ができる,と多くのヨーロッパ市民は安堵したわけです.カチンスキーの保守政権は汚職撲滅を掲げて国民の不満を吸収しました.そして改革の成果である成長を横取りし,改革そのものは後退させました.法律や軍隊を歪め,メディアを支配して政府のプロパガンダを流し続けた,と言います.改革は有権者の支持を得るのが難しいことに加えて,汚職を撲滅するという主張にはだれも反対できないのです.すでにポーランドの汚職は他国より減っているのに,彼らは政治に利用し続けました.

改革派としてBALCEROWICZは,本当に汚職を減らすには,政府や政治家の思い通りになる規制や産業分野をなくし,汚職の源泉となる市場に逆らった分配を避けることだ,と主張します.


NYT November 18, 2007

Crazy Little Thing Called Risk

By PETER L. BERNSTEIN

(コメント) かつて,私が担当する資産運用で儲けた顧客は感謝してくれたが,それは間違っていただろう,とPETER L. BERNSTEINは述べます.

「リスクに対する素朴なアプローチは,経済活動がほとんど農業だけであった時代には,適当であったかもしれない.事実,人類史の大部分で,経済的リスクの主要な源泉は天候であった.しかし,天候については誰にも何もできない.その時代のリスク管理とは,それゆえ,宗教であり,祈祷であり,迷信であった.雨乞いのダンスは九日間の祈り(novena)に対抗した.神の意志や運命に対する訴えだけが,天候のもたらすリスクに対する処方箋であった.」

「リスク管理のモデルは産業革命において根本的に変わった.多くの異なった商品とサービスが市場に参加し,さまざまなリスクが気候に関する単一で長期の関心に取って代わった.納入業者はいくら要求するだろうか? 顧客はいくら払ってくれるだろうか? 我々が開発中の新製品を欲しがるだろうか? 競争相手は攻撃してくるのか? 価格引き下げ戦争になるか? 従業員たちの給与を引き上げるべきか? その場合でも,どれくらいか? 技術者たちは生産工程を効率化できるか? 融資を頼むとき,銀行は喜ぶのか,嫌な顔をするのか? 金利は上がるのか,下がるのか?

リスクは天候でも神様でもなく,市場に存在しており,市場とは結局,膨大な数の投資家たちが行うその時々の意思決定の産物である.だれでも自由に決めることができる,と言うことは,誰もが他者の不都合な意思決定を止めることもできない.自分の将来がますます他者に依存している状態が,市場というリスクをもたらす.・・・だから,たとえ儲かったとしても,私に感謝する必要はない,と.


BG November 19, 2007

The gremlins of free trade

By Michael Stumo and Brian O'Shaughnessy

Foreign Policy, 19 November 2007

Why We Trade

Russell Roberts

(コメント) Michael Stumo and Brian O'Shaughnessyは時代遅れの「自由貿易論」を否定します.その理由は二つです.為替レートが操作されている.VATによって関税が課されている.いずれも政府が市場に介入しているのです.

この主張はいずれも正しいでしょうが,それによって自由貿易を否定することにはなりません.為替レートが変化しないなら,物価や賃金が変化するでしょう.国によって課税率が異なるとしても,それは価格に反映される点で,他のコストと同じです.問題は,それが国内産業や雇用を保護するために,輸入を減らすために導入される,と言う場合です.

Russell Robertsは,逆に,たとえ貿易赤字が大きくても,貿易による雇用増加はその減少よりも大きい,と主張します.過去18か月で,貿易により500万人の雇用が失われた,と共和党の候補者討論で主張するのですが,それは大きな数字であろうか? と問います.アメリカ経済は3か月ごとに500万人の雇用をもたらしているのです.

貿易は雇用に関係する様々な要因の一つに過ぎません.そして貿易を否定することは,自給自足という貧困への道でしかない,と批判します.


Price B. Floyd Public diplomacy isn't PR LAT November 19, 2007

DANIELLE PLETKA Diplomacy With the Devil NYT November 19, 2007

Gideon Rachman America loses faith in imperialism FT November 19 2007

(コメント) アメリカ外交について,さまざまな主張が示されています.ソフト・パワーもしくはメディア・コントロール,リアリスト,帝国主義,など.イラクからイラン,北朝鮮,ハマスに対して,ブッシュ政権の外交政策は明らかに変わりました.戦争を回避したいからです.しかし,保守派はこれがクリントン政権の方針に戻っただけで,失敗するに違いない,と考えます.

もっと言えば,わずか3年で,アメリカは帝国主義礼賛から孤立主義の時代に戻るのか? FTGideon Rachmanは考えます.自由主義の帝国から,衰退するローマへと,アメリカのイメージは変わりました.イスラム原理主義の引き起こす中東の混乱だけでなく,アメリカはロシアの資源や中国の輸出やエネルギー需要に対しても,座視するときではないはずです.しかし深刻な不況になれば,米軍基地に限らず,国際的関与の急速な切り捨てが始まるかもしれません.

支配的な帝国が失われたら,どのようにして秩序は維持されるのか? 開放的な貿易システムや国際金融市場の安定化はどうなるのか? 国連が平和的に実行する,と信じることなどできません.イラクに限らず,もし新興の大国がアメリカに協力することを自分たちの利益であると考えるなら,秩序を維持できるかもしれません.

現代では,中国もインドも,たとえロシアでも,彼らの繁栄が閉鎖的な経済ブロックや軍事的な威嚇によって実現される性質のものであるとは信じないからです.

FT November 22 2007

The west must resist Putin’s claim on the old Soviet space

By Philip Stephens

(コメント) 西側に対するプーチン外交には三つの影響力拡大方針があります.1.旧ソ連圏から西側を締め出す.2.選挙から反対派を締め出す(それを国家民主主義“sovereign democracy”と呼ぶ).3.イランとの友好関係.

プーチンを排除して得られるものは何もない.西側外交としては,ロシアに国内の民主化を重視させるだけでなく,ロシアのビジネスや市民社会を積極的に取り込むことである.そうすれば,イランとの交渉でも,ロシアが西側に協力するよう強く説得できる.それは宥和政策ではない.


FT November 20 2007

Who will pick up the thread after the great unwinding?

By Martin Wolf

(コメント) 「アメリカは不況になるのか? この質問には二つの答えがある.すなわち,『誰にも確かなことは分らない.』 そして,『それは重要ではない.』 もっと重要な問いは,『アメリカ経済は<成長の減速>に向かうのか?』 である.その答えは,『その通り.』」

住宅価格は下落し,人々は消費を減らす.連銀はインフレを心配しており,市場が安定すれば金利を引き上げる.石油価格の高騰とドル安があるから,容易にインフレを抑えられない.アメリカの経常収支改善が国内需要の減速を補えるだろうか?  Martin Wolfは否定的です.実際,成長の減速は,教科書にある通り,対外赤字を解消する調整過程です.

問題は,その反対側に託されます.アジアや中東の黒字諸国は,成長を加速することで輸入を増やせるだろうか?


The Guardian Wednesday November 21, 2007

It's hard to imagine a worse outcome for the Balkans

Simon Jenkins

(コメント) コソボとセルビアは,独裁者を追放するNATOの軍事介入を経て,結局,民主的な選挙の結果,再び独立とそれを拒む政府間の軍事衝突を準備しています.民主化は最悪の経過をたどっているわけです.流血はますます,平和的な交渉より,軍事的な強硬派や武装勢力を支配的にします.独立を叫ぶだけで,彼らは英雄になりました.他方,ロシアはコソボの国連加盟に拒否権を行使すると宣言しました.

その状況によって異なる,民主主義や権力政治を理由に,こうした独立派を支持したイギリスの政治家たちは間違っていたのです.セルビアにはロシアが,コソボにはアメリカやヨーロッパが後ろ盾になって,バルカン半島のバルカン化が進みます.独立を求めて戦争しても,コソボは勝者になれない,と.


FT November 21 2007

Dubai built it and the world did come

By John Gapper

(コメント) 今の世界では,お金と意志があれば何でもできる.ドバイはそれを証明しました.油田とそれで得た資金がある.そこで王家は経済的基盤を多様化するため国境を開放し,だれでもこの国に来てビジネスを始めるよう呼びかけました.現在の世界には,高収入を求めてさまよう国籍離脱者が無数に漂流しています.

「私は一群の訪問者や地元住民と一緒にいた.ドバイに大きな事務所を構えるマッキンゼー社のコンサルタントもいた.多くのヨーロッパやアメリカの銀行,そして法律事務所も.ある集団はスペインから,他の集団はベネズエラから,また南アフリカからも来た.その周りには両親がさまざまな土地で生まれたアメリカ人がいた.ヨルダン,パキスタン,台湾.」

「私は自分が一度死んで,天国を追放されたように感じた.」

「アラブ首長国連邦の中でも最も輝いている都市国家には,多くの驚嘆するようなことがある.事務所やホテルの高層ビル群は大理石や黄金で飾られている.塩分の沈殿した何マイルも続く平原が,美しい砂浜に変えられた.莫大な砂漠の土地に<ユニバーサル・シティ・ドバイランド>が建設された.新設の空港は,ヒースローとロサンゼルス空港を合わせたものよりも大きい.」

ドバイの弱点は? 石油価格,文化の混在,極端な階層化.アメリカはテロと戦うために移民を抑制した.他方,ここには民主主義などない.しかし,ここが繁栄をもたらす最高の経済戦略であると認めざるを得ない.


FT November 21 2007

Two fractious Belgiums: a rudderless country is under growing strain

By Sarah Laitner in Brussels

(コメント) 中東で繁栄するドバイと異なり,ヨーロッパの中心部ではベルギーという国家が分裂し,消滅しつつあります.その詳しい報告です.

通読しただけではよく分りませんが,少なくとも,こういう問題です.Belgium, divided between Flanders, its wealthy Dutch-speaking north, and francophone Wallonia in the south, has chugged along without a new federal government for a record 165 days.

北部の豊かなフランダースはオランダ語を話し,南部の貧しいワロニアはフランス語を話す.北部が一層の政治的自律を求めたことに,南部は反対し,伝統的な連立政府の成立を拒んだようです.北部の独立派がベルギーを分割するのではないか,という不安は,ラジオ番組がフィクションとして知らせずに放送し,国民の間にパニックが起きました.

かつては重厚長大産業が栄えた南部も,今では衰退地域となり,社会主義政党が有力です.EU本部が立地し,港湾や新興産業のひしめく北部の繁栄に比べて,莫大な財政移転を受けて生き延びている怠け者たち,と非難されるわけです.北部と南部は歴史的偶然の結果として独立し,ドイツとフランスの緩衝地帯に生き残りました.

しかし,では北部はオランダに併合し,南部はフランスに併合されるのを望むのか? と言うと,そうは行かないようです.彼らは互いを嫌う以上に,隣接する大国との違いを知っています.EUの法律や官僚制度,そして何よりもユーロに守られて,危機の圧力が働かず,ベルギーは政治的な妥協や解決への時間を十分に持っているわけです.

むしろ,独立を求めて政治紛争を続けても何も危険なわけではない,ということを示した点で,EUやユーロ圏にますます政治的独立や自立の動きを強めるでしょう.もはや<歴史的国家>に縛られる必要はないのです.

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The Economist November th 2007

America’s vulnerable economy

America’s economy: Getting worried downtown

Emerging economies: Dizzy in Boomtown

Economics focus: Shock treatment

France: Sarkozy’s Thatcher moment

France on strike: Let battle commence

Japan and America: Looking to the future, stuck in the present

(コメント) アメリカ経済の行方と,新興市場の見通しについて,面白いイラストが気に入りました.アメリカの減速は避けられず,もしかしたら不況に入るでしょう.他方,新興市場の過熱や危機の恐れを診断します.石油価格の高騰がこれまで大きな障害とならなかった理由,そして,今後の心配につて,簡潔に整理しています.

フランスのサルコジ大統領は,いよいよ「サッチャーの瞬間」を迎えます.もし反対する組合に改革を受け入れ焦ることができたら,今後のフランスの改革に勢いを得るでしょう.他方,日本とアメリカの関係は互いに迷惑な気分が増しています.