IPEの果樹園2007

今週のReview

10/8-13

IPEの風

*****************************

世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

ワシントン・コンセンサスとその後継, ミャンマーの僧侶たち, 金融市場のパニック, IMFの役割, ノーザン・ロックの取り付け

******************************

ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


Asia Times Online, Sep 26, 2007

Beyond the Washington Consensus

By Walden Bello

世界銀行の調査局は組織的にデータを改ざんして,新自由主義的な市場改革が成長を促進し,発展途上国の貧困を減らしたことを示すようにしてきた.これはいわゆるワシントン・コンセンサスの破たんを示す最新のエピソードにすぎない.

1980年代と90年代に絶頂期を迎えたこの開発モデル(ワシントン・コンセンサス)は,サッチャーの言葉を借りればTINAだった.すなわち,TINA="There is no alternative." である.それは政府が参加する経済戦略を拒み,束縛されない市場を開発の運転席に座らせる.

IMFと世界銀行は「構造調整」プログラムを発展途上国に強制することで,1990年代後半までワシントン・コンセンサスを広めた.しかし,あらゆる重要な指標が,すなわち,持続的成長,貧困解消,不平等緩和,が失敗に終わった.この10年の前半に,ワシントン・コンセンサスというラベルは外された.新自由主義は破たんしたまま,その慣性によって,多くのエコノミストや官僚に支持されてきた.しばしば言及されるにもかかわらず,ポスト・ワシントン・コンセンサスなど存在しない.

失敗を認めたので,IMFや世銀はJ.スティグリッツの言う「ワシントン・コンセンサス・プラス」を育成している.すなわち,市場改革は重要だが,それだけでは十分でない.たとえば,金融改革は「シークエンス(順序)」が重要だ.「金融インフラ」が十分整備されていない国が自由化して,大量の資本が流入したためにアジア金融危機が起きたことをIMFも今は認めているからだ.

1990年代のロシアがマフィア資本主義に陥ったことを思えば,IMFと世銀は市場改革に伴う制度改革や法整備により私的所有と契約を強制できるように求めている.また,他にも「グッド・ガバナンス」や「人的資本開発」のための政策,例えば女性への教育,を支持する.

市場と制度の改革を組み合わせることは,いわゆるPRSPs(Poverty Reduction Strategy Papers)で数年前に示されていた.「むき出しの新自由主義」ではなく,その内容とともにプロセスをリベラルなものにした.市民社会の組織を含む「ステークホルダー」に相談して自由化を進めるべきだ,と.

しかし,口当たりを良くしたけれど,所詮,PRSPは構造調整のマクロ政策であった.貿易自由化,規制緩和,民営化,土地と資源の商品化,である.コミュニティーへの相談は裕福でリベラルなNGOsに限られ,より広い社会運動にはなかった.PRSPsとは単に構造調整の第二世代であった.

IMFのラト専務理事が認めたように,制度改革の目的は成長の果実を広く行き渡らせ,最も貧しい人びとが調整コストから保護されること,それによって人々が「正統的な経済政策や構造改革をあきらめてしまう誘惑」を防ぐことだった.

ワシントン・コンセンサスの第二の後継者は,いわゆる「新保守主義的な新自由主義」である.これはジョージ・W・ブッシュ大統領の政府が示す開発政策であり,保守派のアラン・メルツァーが委員長となった多角制度(IMF・世銀などの国際機関)に関する議会報告はそのもとになった.報告書は世界銀行の大幅な削減を求めている.

返済が不可能であるから最貧諸国への債務を免除し,融資よりも譲与せよ,と主張するが,それは政府が市場を改革し,産業や土地,資源を民営化することが条件であった.

さらに,譲与は市場に沿った改革を許容させ,援助政策も直接にアメリカ政府の安全保障政策やアメリカとの協力と結びつく.ワシントン・コンセンサスと比べて,新保守主義のそれは原則を振りかざさないけれど,非自由主義的で,市場は権力の従うのだ.

ワシントン・コンセンサスの第三の継承者は,新構造主義である.1950年代,ラウル・プレビッシュに指導されたこの学派は,新自由主義の政策があまりにも費用を要し,生産的でないと考える.事実,新自由主義者が言うような成長と公平性の間にトレードオフ関係はなく,むしろ「シナジー」がある.

不平等を減らせば,政治的にもマクロ経済的にも安定性が高まって,経済成長を抑えるのではなく高めるだろう.それは貧しい者の貯蓄を増やし,教育レベルを高め,総需要を増やすからだ.それゆえ新構造主義は,累進的な支払移転政策を提唱する.保健,教育,住宅への支出増を含む,人的資本と貧者の生産性上昇を目指す所得再分配である.これはブラジルのルーラ・ダ・シルバ,チリの中道連合など,「良い左翼」の政策だ.

貧者を守り,その能力を高めるように支出を移転することで,チャベスとその友達が行う「悪い左翼」の政策,すなわち生産や市場,賃金に介入する政策と違って,新構造主義は生産における市場の力に介入しない.

新構造主義はまた,グローバリゼーションを受け入れ,改革の主要目的を世界的な競争力を得ることだ,と言う.所得格差を減らし,貧者の能力を高め,労働力を世界的に競争できるものにする,という新構造主義の改革は,グローバリゼーションを人気者にするとまで言わなくても,堪えられるものにしようと考える.新構造主義は誇りを持って宣言する.新自由主義の「邪道"low road" 」ではなく,自分たちのアプローチこそグローバリゼーションの「本道 "high road" 」である,と.

問題は,新構造主義の改革が思想的に批判しているものに向かうことだ.いわゆる「ヘテロドクス・パラドックス」である.システムとして,包括的に競争力を高める中で,競争力の追求は,新構造主義の政策を事実上の新自由主義思想や政策に沿った政治経済的基礎固めと規制に導いてしまう.結局,新構造主義は,ワシントン・コンセンサス・プラスと同じように,貧困と不平等をもたらし新自由主義政策を逆転させるものではなく,緩和するだけなのだ.ルーラの最貧層の改善に向けた政策があっても,制度としての新自由主義政策は,ブラジルというラテンアメリカ最大の経済において,大量の貧困,不平等,停滞を作り続けている.

世界的な社会民主主義と呼ぶ立場は,新構造主義に新自由主義を加えた以上の何があるのか,明確でない.しかし,それはジェフリー・サックスやデイヴィッド・ヘルド,スティグリッツ,イギリスに慈善団体であるオックスファムなどが提唱しているものだ.

既述の三つのアプローチと違って,彼らは成長と公平性が対立することを認めている.そして,公平性の優位を仰々しく強調する.それはまた,さまざまな問題はあっても,長期的に見れば貿易自由化は利益をもたらす,という新自由主義の核心的な命題を否定する.スティグリッツは,長期的に,貿易自由化が「多くの市民たちの生活を悪化させる」場合もありうる,と言う.

さらに,世界的な社会民主主義は,IMFや世界銀行,知的所有権と関連する取引に関する国際協定(TRIPs)のようなグローバル・ガバナンスの制度やルールを根本的に改革せよ,と要求する.たとえばヘルドは,TRIPsを即座に廃止しないまでも改革せよ,と述べ,スティグリッツは,裕福な諸国が貧しい諸国に対して,相互性や政治経済的な条件を付けずに,単純に開放するべきだ,と述べる.また中所得国も最低開発諸国に市場を開放し,特恵制度を互いに拡大し合えばよい.そうすれば自分たちの幼稚産業が消滅すると恐れなくてもよい,と.

しかし,グローバリゼーションは必要であり,根本的には健全で,もしうまく管理されるなら,多くの者の利益になる,という理解は,世界的な社会民主主義も,古典的な新自由主義,ワシントン・コンセンサス・プラス.新構造主義と同じである.

実際,世界的な社会民主主義を唱える者たちは,自分たちが新自由主義からグローバリゼーションを救い出す,と考える.このことが特に重要になるのは,数年前まで福音のように真理であった前提が崩れたからだ.すなわち,グローバリゼーションは逆転不能どころではなく,世界的社会民主主義は現代のグローバリゼーションが逆転する危険を心配しているのである.1914年の後に起きたように.

サックス=ヘルド=スティグリッツにとって,グローバリゼーションのもたらす利益はそのコストを超えると考える.世界は社会民主主義的な,「開明的なグローバリゼーション」を必要としている,と.そこでは世界的な市場統合が,適度に管理され,進歩的な「世界的社会統合」と一緒に進む.その目標は「自由で公平,公正な世界経済」の基礎を与えることである,とヘルドは言う.そこでは効率的で効果的な世界経済プロセスが,・・・自己決定,民主主義,神健,環境の持続性,とも両立するような形で,機能する.

この主張にもいくつか問題がある.

第一に,新自由主義が中心に据えた構図,すなわち関税障壁や投資の規制を撤廃する,という前提を外して,グローバリゼーションが本質的に意味するような,市場と生産が急速に世界統合するものだろうか? この本質的に不安定な変化を,逆転させることなく減速させ,緩和する,と世界的な社会民主主義は主張するが,彼らは世界的な市場の力が貧困や不平等を生みだす基本的傾向と折り合いをつける.サックスが認めたように,社会民主的なグローバリゼーションは貿易や投資の注目すべき力を利用すると同時に,補償を求める集団行動の限界を知っている,というわけだ.

第二に,同様に疑問であるのは,たとえグローバリゼーションを社会的な公平な枠組みにおいて作用するかもしれないと認めても,それが望ましいのか? という点だ.人々は本当に,国内と国際との境界が消滅した世界経済に機能的に統合されてしまいたいのか? 彼らは地域の支配が及ばない経済の一部になるより,国際経済の気まぐれから守ってほしいと思うのではないか? 実際,グローバリゼーションへの反動はそれがもたらした不平等や貧困から生じているだけでなく,非人格の国際経済に対して経済を支配する幻想が全て失われたと感じる人々からも生じている.

反グローバリゼーション運動のより反響のあるテーマとは,輸出志向成長を終わらせ,内向きの経済発展を求めることだ.それはどこでも可能なところでは商品を地域や国内で生産し,その過程が国内規制に従うようにする,補完性という論理に従っている.

ワシントン・コンセンサスを引き継ぐ4つの立場について根本的な問題は,その分析が生産様式として資本主義のダイナミズムを捉えていないことだ.彼らはグローバリゼーションが資本主義の新しい段階ではなく,1970年代半ばから続く中心部の資本主義経済を覆う過剰蓄積,過剰生産,停滞の危機を克服する絶望的な試みでしかないことを理解していない.

第二次世界大戦後にできた資本と労働との社会民主主義的な妥協を破壊し,貿易と投資に対する各国の障壁を抹殺して,新自由主義的政策は成長と利潤の長期的な減少を逆転しようとした.「世界的なものへの脱出」は,中心部の資本主義大国による再生した帝国主義間競争,新しい資本主義的中枢の勃興,環境破壊,南への強化された搾取,に彩られる激しい対立をもたらす.それはデヴィッド・ハーヴェイが「強奪による蓄積」と呼ぶものであり,世界中に反抗を引き起こすものだ.

グローバリゼーションは資本に危機の蓄積から逃げ道を提供することはできなかった.それゆえ各国の資本家エリートたちはそれをあきらめ,ナショナリスト的保護戦略と,世界市場と世界資源を奪う国家が支援した競争に訴えつつある.アメリカの資本家階級もそうだ.ジェフリー・サックスや他の社会民主主義支持者が,「世界資本主義を啓蒙」し,「グローバリゼーションを人間化する」といったユートピアを描くときに,十分見ていない状況とはこうしたものである.

現代資本主義は逆転不能な破壊のロジックを保持している.グローバリストの破たんした計画を人間化する不可能な任務に従事するより,グローバリゼーションからの撤退を管理することが緊急に必要だ.そうすることで,最初のグローバリゼーションが1914年に終わったとき生じた脱出のための対立,破壊的な展開が蔓延するのを回避するのだ.


NYT September 27, 2007

The Plight of the Loggerhead Turtle

FT September 27 2007

Police Europe’s carbon market

By Simon Tilford

(コメント) アオウミガメの話を読めば,私たちのことのようです.彼らが絶滅を危惧される種属であるのは,その産卵場所が人間による開発で失われるほど近くにあり,しかも彼らの寿命が長いために帰ってくる場所が破壊され,汚染されてしまっているのに気付かないのです.産卵に帰ってくる前に漁師の網や発達した遠洋漁業の船団に誤って捕獲されてしまうことも多い,というわけです.

私たちのさまざまな法律や規制,そして漁業の在り方を含めて,この地球にアオウミガメが生き残る余地を残すためには,あまりにも多くの変更が必要なのです.彼らは絶命するだけで,それに抗議することもありません.

EUの温室効果ガス排出権取引については,各国政府による上限設定や市場取引における価格の決定に,まだ十分な温暖化防止への効果が期待できない状態です.あるものの所有を認めて,取引によって価格を決め,その行動を促す仕組みは,何にでも適用可能な社会システムではないからです.

むしろ,ウミガメの生存権を取引してはどうか・・・? と考えてしまいます.


Save Burma WP Thursday, September 27, 2007

Brian McCartan Monks in the vanguard for regime change Asia Times Online, Sep 28, 2007

Kerry Brown Paranoid, insular and inept, the junta has no plan B The Guardian Friday September 28, 2007

David Gordon Smith India Suffering Fallout from Burma Crisis SPIEGEL ONLINE - September 28, 2007

The junta's enablers in Beijing BG September 29, 2007

Aung Zaw Burma's true leaders The Guardian Saturday September 29, 2007

(コメント) 勇敢な僧侶たちと彼らを支持する何千人もの民衆が求めたことは単純でした.対話です.これに対して,政府は催涙弾と放水車,そして銃撃によって答えました.ワシントン・ポスト紙が示したように,西側諸政府の迅速な対応と声明はこれに呼応したものです.イギリスのブラウン首相は述べました.

「今や全世界がビルマに注目している.正統性を欠いた抑圧体制は,全世界がその説明を求めていることを,知るべきだ.」「人権を無視し,弾圧することが免責された時代は終わっている.」

しかし,問題は,それが全世界ではなかったことです.ロシアも中国も,制裁はおろか,安保理による非難決議にも反対しました.私たちはむしろ,将軍たちが国際法廷によって裁かれ,兵士たちはその命令に従うことを拒むことを望みます.「もしビルマで流血の弾圧が続くなら,ロシアのプーチンと中国の胡錦涛は,お前たちの手がビルマ人の血によって真っ赤に染まる」ことを忘れるな.

Brian McCartanは,世俗の話題から距離を置くはずの僧侶たちが街頭に出て政府の退陣を求めたのは意外なことかもしれないが,これが最初ではない,と指摘します.イギリス植民地支配を終わらせる過程で,僧侶たちが抵抗を組織し,また焼身自殺によって抵抗の意思を示したからです.1988年の大衆抗議に際しても,学生たちに指導されたデモが規律を守り,暴力による報復に至るのを抑えて,実際に多くの僧侶が兵士たちに銃殺された,と述べています.

BG September 29, 2007

Michael Gerson

Burma's brave monks

仏教の偉大さは,苦痛に直面して示される澄みきった勇気にある.その勇気が,今,ビルマに現れた.この国は苦難に蹂躙されている.

若い,裸足の僧侶が,黄褐色の衣をまとって,民主主義を求める行進を静かに行った.群衆に間にはためく幟には,「慈愛の心」と書いてある.それはこの生まれたての世紀にとって良心のシンボルになった.

よく見れば,これらの抗議活動は非暴力であるが,飼いならされた,牙を抜かれたものではない.何人かの僧侶たちが逆さまに持った鉢は,彼らがこの体制の指導者たちから慈善の施しを受けないこと,彼らの悪行があがなわれることはできず,彼らの祖先が称えられることもない,と示している.これらの詠唱する僧侶たちは,精神的に容赦ない攻撃を現体制に行っている.

アメリカの市民権を求める戦いでも,東欧のコミュニズム崩壊でもそうであったように,再び宗教が抑圧社会において支配されざる力であることを証明した.宗教的な反体制派は,独裁者に対する反対を組織できるだけでなく,彼らを道徳的にさいなむのだ.政治的革命は,しばしば,精神における革命として始まる.

しかし精神は,少なくとも一時的に,肉体に固定され,それゆえ棍棒,催涙ガス,投獄に苦しむ.軍事政権はビルマを支配し,われわれが見たように,きわめて残虐になることができる.強制労働,少数民族への戦争,組織的な強姦を行ってきた体制が,僧侶やその他の反対派を殺すことなどためらわない.すでに何千人も殺したのだから.

幸いにも,老齢で,ますます低能な指導部が極めて愚かであるかもしれない.国の奥地に新しい首都を移転するという無謀な決定と,軍事エリートの豪奢な住宅を建設した後,政府の資金が底をついた.その結果,彼らは燃料の価格を5倍に引き上げ,バス運賃や米などの生活必需品の価格も引き上げた.

夏の間,賢明にも,民主化運動は軍事政権の経済運営が失敗しているという批判を繰り返してきた.40年間の支配によって,ビルマの一人当たり所得は隣国タイの5分の1になり,子供の栄養失調が広がっている.

ブッシュ政権はこの経済的不満が体制を動揺させると期待する.軍の上層部は優遇されているが,下層は必需品も欠く状態だ.ラングーンのアメリカ大使館の外に立つ兵士には一日一食しかない,という情報もある.国連でブッシュ大統領が唱えた制裁はこの緊張関係を利用する.

地域の諸国が支持すれば,制裁は効果的になる.もし強い制裁がアメリカ,イギリス,フランスからだけであれば,軍事政権は植民地支配を非難できる.しかし多くのアジア諸国の反応は,弱々しいものか,あるいは,恥知らずであった.インドは伝統的に軍事政権と対決するより取引している.ビルマの天然ガスが欲しいから.中国はまだビルマの主要な経済的支援者である.

イランは世界最大のテロ支援国家だが,中国はビルマからスーダン,ジンバブエに至る人殺しどもの指導的な支援国である.同時に,2008年のオリンピックを主催するために道義的な監視を受ける.ビルマでの責任を顧みず,内政不干渉という原則で言い逃れしているなら,オリンピックでは世界各地の人権問題が注目されるだろう.

近年,民主主義の課題を夢や非現実的なものとして嘲笑うことがよくある.しかし,この場合,軍事政権と僧侶との選択である.それは決して選択の問題ではない.精神によるビルマ革命は成功しなければならない.

Henry Porter The faith of the oppressed can topple the worst tyrants The Observer Sunday September 30, 2007

TOM PLATE China might still the hands of the junta The Japan Times: Sunday, Sept. 30, 2007

Yang Jianli Echoes of Tiananmen Square WP Sunday, September 30, 2007

Burma: More than words The Guardian Monday October 1, 2007

Thant Myint-U Mission impossible? The Guardian Monday October 1, 2007

Gideon Rachman Why sanctions will not fix Burma FT October 1 2007

Bernt Berger Why China has it wrong on Myanmar Asia Times Online, Oct 3, 2007

Bertil Lintner Trade and Security Trump Democracy in Burma – Part I YaleGlobal, 3 October 2007

Andrew Symon Thailand a key to new Myanmar sanctions Asia Times Online, Oct 4, 2007

(コメント) Thant Myint-Uは,国連のガンバリ特使が行う仲介の意義を考えます.基本的な姿勢を決めなければならない,と指摘します.いかなるコストを支払っても体制転換だけを目指すのか? あるいは,非民主的な態勢であっても,より抑圧的でない,中国やベトナムのように成長と生活改善を期待するのか?

軍隊が分裂する兆候は見られない,と言います.そうであれば,短期に,革命的な変化を期待するのは間違いでしょう.中国が最も影響力を行使できるし,ビルマの安定化や経済発展を望んでいるとしても,僧侶たちによる民主的革命を支持するとは思えません.西側と中国に共通の理解がなければ圧力は失敗するでしょう.

孤立した国は市場を介した制裁に対しても抵抗できます.制裁はビルマをより貧しくするだけだろう,と多くの者が悲観します.独立以来,内戦を繰り返している国において,軍隊だけが強固な組織力を保持しており,国民をまとめる勢力を欠いています.たとえ本当に強い制裁措置が合意されても,軍はビルマを崩壊させるまで支配する気である,と懸念されています.

Thant Myint-Uは,制裁よりも,むしろ援助の供与を介して,もっと外交交渉による事態の改善を期待しています.

Foreign Affairs , November/December 2007

Asia's Forgotten Crisis

A New Approach to Burma

By Michael Green and Derek Mitchell

(コメント) ビルマにかかわる様々な政治主体が異なる立場を取ってきました.制裁も,積極的な経済的関与も,軍事政権を改善できなかったわけです.アメリカが国連安保理を介して制裁を求めるのは,効果のない古い政策です.この論説も,近隣諸国も含めた協調的関与政策を求めています.それは北朝鮮の非核化を進める6カ国協議に似たものです.


David Ignatius Markets' World of Worry WP Thursday, September 27, 2007

Jan Krahnen How to revitalise the credit market FT September 27 2007

William Pesek Asia Has Deja Vu as Corruption Leaves Its Mark Sept. 28 (Bloomberg)

Richard Lambert Banana republican banking The Guardian Friday September 28, 2007

John Gapper Three lessons from the credit squeeze FT October 3 2007

Stephen Cecchetti A better way to organise securities markets FT October 4 2007

William Pesek China Enjoys Ben-Carry Trade Thanks to Bernanke Oct. 5 (Bloomberg)

(コメント) かつてハーバート・スタインが述べた,もし市場が持続可能でないならば,いずれ崩壊する,という感覚がよみがえってきたようです.たとえ連銀があっても,バーナンキにできることはわずかでしかない,と.

「思慮深い投資家たちを心配させるもっと深い問題とは,アメリカ経済の脆弱さである.アメリカは自分たちでは許されないほどの消費を外国からの借り入れで維持する国になってしまった.もしこの国が発展途上国であれば,その不安定な経済はとっくに崩壊していたはずだ.1990年代にメキシコやタイがそうであったように.しかし世界の金融超大国として,私たちは自国通貨で借り入れる贅沢を楽しんだ.中国やその他のアジア諸国がドルの紙切れを蓄えている限り,その永久運動装置は機能し続けるように見える.しかし,スタインの『持続不可能性の法則』を思い出すことだ.」David Ignatius

こうして,一方ではアジア通貨危機や「世界を救う緊急救助隊」(グリーンスパン=ルービン=サマーズ)を思い出し,他方では,金融市場の改革が再び議論されています.今度こそ本気で?

しかし,融資の証券化によって売買益とリスク分散を目指したthe collateralised debt obligations (CDOs) marketについては,今も意見が分かれています.こんなものに価格を付けることができるのか? 本当にリスク分散が有効なのか? 個々の投資家がそれを勝手にどう解釈しようと,システムとしては疑問が深まるからです.

Jan Krahnenは,こうした疑念を打ち消すだけの制度を金融市場は証券化に伴って構築してきた,と説得します.この動きが逆転することは不毛であり,その必要はない,というのです.危機を経て,CDOsの正しい評価が行われるようになり,第一次発行者のリストと記録が整備されて公開されるでしょう.こうして市場が信頼を回復するのです.

他方,中国や香港市場のバブルは,バーナンキが自分たちの市場を守るために行う金融緩和でさらに膨張し続けています.世界の金融システムに責任を持つ者はどこにもいない,というのに,それぞれが危機の対応に追われます.「バーナンキ・プット」を前提した投機が香港やアジア市場に広がっているかもしれない,と.

FT October 2 2007

Securitisation: life after death

By Martin Wolf

(コメント) 証券化にもかかわらず,現在進行中の危機は非常に古典的だ,とWolfは考えます.今回の危機において,証券化の利益はよく理解されていますが,その機能が市場に反映されるとき,十分な差異化を行っていない,と言いたいようです.もっと期間やリスクに応じて金利は上昇するべきだ,と.

第一の失敗は,低金利につきもののユーフォリアです.債権者も債務者も過度の楽観に突き動かされていました.第二の失敗は,証券化によって銀行が長期の再建に関する懸念を一掃し,リスクを取らずに融資だけ拡大すれば良い,という間違った拡大戦略に走ったことです.「ダンスが続く限り,誰もそれに気づかない.しかし音楽が止めばどうなるか・・・?

誰が証券を発行し,誰がその元の債権を管理しているのか,よく知らないけれども,その市場を信頼していた人々が,突如として,互いに信用できなくなったのです.Wolfは,証券化が大きな利益をもたらしたことは否定されていないし,過去の銀行業に戻ることはない,として,市場がダンスを学ぶように求めます.


NYT September 28, 2007

I.M.F. Faces a Question of Identity

By STEVEN R. WEISMAN

BBC 2007/09/28

New IMF boss faces daunting task

By Katie Hunt

FT September 30 2007

Era of empires is over for global bodies

By Alexei Kudrin

(コメント) IMFは,10年前,世界各地の危機に対して融資し,その介入姿勢を批判されたが,それでも金融システムの守護者として認められていました.いまでは,IMFが何か,自分たちでもわかっていない,とSTEVEN R. WEISMANは書きます.赤字国に厳しい注文を付けていた機関が,今や融資先もなく,資金が不足し,財政赤字で職員を解雇し,その金準備も売却しようか,などというのでは当然です.

Dominique Strauss-Kahnが次期IMF専務理事として指名され,世界的な公共財の供給を主張したのは,こうした事情があるからです.4000人のスタッフに見合った仕事を考えなければなりません.トップの指名に関してはロシアが挙げた候補Josef Tosovsky(チェコ元首相・中銀総裁)を退けて,因習的な決定手法を守りましたが,IMFは確かに変わりつつあります.融資よりも政策監視や金融規制・監督の情報提供・技術支援を重視し,トップの使命方式にも変化の予兆がありました.アジアなどから数カ国のクォータ増額を承認し,彼らがIMFから離反することを防ぎました.

しかし,IMFが中国の為替レートに注文を付けたり,EUの労働市場やM&Aに指図したり,あるいは,アメリカ政府の財政赤字削減を命じたりする,などと思うとしたら,それは妄想でしょう.逆に,IMFなど共通のデータ保管所になれば十分だ,というのも極論です.Anne O. Krueger元首席副専務理事は,IMFは保険契約のようなものであって,今,事故が起きていないからという理由で破棄してはならない,と言います.

The Guardian Wednesday October 3, 2007

High noon at the IMF

Kenneth Rogoff

今月,ワシントンで開かれるIMFの会合は,世界経済の決定的な分岐点で,世界の主要な蔵相と中銀総裁を結集させる.

まず,世界的な住宅バブルが崩壊し始めた.アメリカに限らず,スペインなど,主要諸国で麻痺が起きている.さらに,特にヨーロッパにおいて,短期金融市場が世界的な金融逼迫に悩まされている.食糧やエネルギーの価格は記録的な高水準に達し,中国における急速な賃金上昇とともに,世界のインフレを押し上げつつある.最後に,アメリカの生産性上昇は減速している.

こうした圧力が合わさって,中央銀行は高成長経済を維持しにくくなっている.同時に,ドルがこのまま安くなれば,アメリカ政府がどのような行動を取るか,世界中が注視している.為替レートを予測することはあまりにも困難であるが,アメリカの莫大な貿易赤字が減少するまでドルは長期に減価するだろう.

しかし,アジア諸国がそれに抵抗してドルを購入し,より弾力的な通貨に対して過度の圧力をかけており,ユーロやカナダ・ドルは空前の水準に増価している.(1兆4000億ドルも外貨準備を保有して,中国は何をするつもりか? オリンピックに参加する外国の選手たちにドル紙幣を詰め込んだ紙袋でもプレゼントするのか?

ヨーロッパの指導者たちは,当然の不満だが,アメリカがアジアや産油諸国との間で生じさせている貿易赤字のせいで,ヨーロッパの輸出業者が苦しめられる,と主張する.もしアメリカが不況になれば,論争は一気に辛辣さを増す.

IMFの指導部は,4月の会合で通貨に関する交渉を試みたが,成果を上げなかった.今回もIMF会合も中国の共産党大会と並行しているから,合意できないだろう.しかし,サウジアラビアやアルゼンチン,ロシア,特に中国で,インフレ圧力が顕著になっていることから,世界は合意を達成できる瞬間に近づいたのかもしれない.

そうであってほしい.もしアメリカの成長が今の緩やかな減速からより深刻なものに変われば,本当の破局が生じるだろう.連銀はさらに金利を下げるよう強いられるが,ドルの魅力が失われ,同時に,貿易収支の急速な均衡化をもたらす世界需要のアメリカから(他地域へ)のシフトは,ドル暴落への強い圧力になる.私自身がオブスフェルドとの論文で推定したように,貿易赤字を半減するためにもドルの実効レートは20%減価する必要がある.

原則として,そのような減価が世界のすべての諸通貨に対して起きるのであれば,管理できるだろう.しかし,新興諸国がヨーロッパに調整のすべてを押しつけるなら,その結果は破滅であり,ユーロは1ドル50セントから60セント,それ以上に強くなって,貿易が破壊される.

アメリカ議会はすでに通貨の一方的な介入を行っている中国やその他の国に対して,報復のための不吉な法案を準備している.民主党の大統領候補たちはそれを支持している.幸い,IMFは一方的な通貨介入を続けた国に対する行動を取る権利があると認めた.新しいIMF専務理事Dominique Strauss-Kahnが危機を回避するために,迅速に,この新しい権限を行使するだろうか?

もちろん,IMFそのものが深刻な危機にある.その使命や正当性に関する多くの問題がある.良くも悪くも,今の厳しい状況は新しい機会である.もし蔵相たちがバーナンキやトリシェの周りに集まって金融緩和を求めるだけであれば,残念なことだ.もしヨーロッパ諸国の大臣たちが為替レートの問題で行き詰まり,長期の成長より,むしろ短期の需要を刺激するために財政赤字をごまかす方法で考えを共有し始めるとしたら,一層ひどいことになる.

この数年,蔵相と中銀総裁はIMFの会合を世界的な高成長について自画自賛する場所にしていた.実際は彼らのせいかではなく,グローバリゼーションと中国が最も貢献していたのだが.今度は,それだけでうまく行かない.


WP Friday, September 28, 2007

Detroit's Creative Bargain

By E. J. Dionne Jr.

The Wall Street Journal, 28 September 2007

Let’s Have a Real Debate on Globalization

Matthew J. Slaughter

FT September 30 2007

A new road for American unionism

By Clive Crook

(コメント) UAWとGMとの合意について,多くの論説が書かれました.アメリカの自動車産業は国際競争により海外に生産拠点を移して投資を続けています.国内では労働組合の組織率が低下し,賃金も減少しました.

そこで両者は話し合い,アメリカ国内の投資に必要な条件として,退職者に対する企業の支払い負担を制限することにしたわけです.信託基金を設けて,年金や保険をそこから支払える限度額に抑えます.基金は,企業が成功すれば増えるし,失敗すれば減ります.他方,負担を軽減された企業は国内投資を続けることができ,これによって国内雇用の水準を確保します.

Matthew J. Slaughterは,典型的な,そして正統的な,経済学によるグローバリゼーションの擁護論です.アメリカ大統領は自動車工場の労働者に支持を訴えるとき,同時にハノーヴァーや中国,インドの企業や労働者が彼らの選択に関係していることを考えてほしい,というわけです.

UAWの労働者たちが展示会で示すように,グローバリゼーションは直接に彼らの利益を脅かしているでしょう.だから貿易を減らし,彼らとの関係を断つべきでしょうか? アメリカは部門によっては職場をアウトソーシングしましたが,同時に多くの部品や職場をインソーシングしました.アメリカに向けて直接投資が行われています.アメリカ経済の生産性はそれによっても改善しているでしょう.

さらに消費者の利益を考えるなら,自動車に関してですら多くの利益を受けていることが明白です.価格についてだけでなく,革新的な商品や多様性をもたらし,消費者の満足は大きく高められています.GMはアメリカ市場を失ったものの,世界全体では,特に中国市場において抜群の伸びを示しています.

これは自由貿易についても経済学が示してきたことです.グローバリゼーションに対して門戸を閉ざすのではなく,その受益者から徴税して,国内政策による支援制度や助成策に支出し,グローバリゼーションで傷ついた者の不満を解消することです.


Asia Times Online, Sep 29, 2007

Capitalism does work

By Chan Akya

(コメント) アメリカが金融危機や産業衰退を示し,中国が急速に成長していることが示すのは,資本主義は最高のシステムだという確信であり,少々の不況やバブル破たんでこれを失うべきではない,というアジアの強気な主張です.


NYT September 30, 2007

9/11 Is Over

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) 9・11の大統領政治は終わらせてほしい.次の大統領は9・12である.すなわち,9・11はアメリカ人を混乱させ,そのバランスを見失わせた,と.今やそれらを過去のものにしなければならないから.グアンタナモ収容所ではなく,自由の女神を支持する大統領を得たい.

ドルが安くなっても,アメリカは観光客を失い,投資を失いました.遠くの戦争ではなく,国内のインフラを再構築する大統領を得たい.かつてアメリカが世界の基準であったが,今はそうではない.中国の自動車はEUの環境基準をクリアできることを自慢しています.シリコンバレーではなく,カナダのバンクーバーがハイテク拠点として発達しています.

9・11によってアメリカは愚かになった,とTHOMAS L. FRIEDMANは後悔します.もう十分だ.9・12について語る者を次の大統領にしよう,と.

NYT October 1, 2007

The Politics of Confidence

By ROGER COHEN

(コメント) アメリカの関心はテロに偏り,アジアは成長,ヨーロッパは統合や環境問題に,それぞればらばらな関心を強調しています.次のアメリカ大統領は,多くの国に関心を向け,さまざまな連携・同盟を組織できる人物が望まれる,と.

大統領が変わることについて,これほど多くの根本的な転換が期待されるのは,ブッシュ政権の失敗に国民が辟易しているからでしょうが,アメリカの政治システムや大統領制のメリットかもしれません.日本については? ・・・日本を安保理常任理事国として迎えるだけでは十分でなく,中国やインド,ブラジル,アフリカからも国際的な代表国を迎えようと提案しています.


FT September 30 2007

How not to tackle the volatile euro/dollar

By Wolfgang Munchau

(コメント) ユーロをめぐる論争が再発しました.誰が為替レートについての責任を持つのか? 金利やインフレ,財政赤字についても紛糾しましたが,今度は為替レートです.フランスのサルコジ大統領が,ユーロは強すぎるのに,ECBは無視している,と非難しました.


FT September 30 2007

Wanted: another British migration

By Tim Leunig

(コメント) イギリスの都市についての考察です.人が集まり,賃金も上昇し,特にサービス部門で多くの雇用をもたらします.しかし規制する必要はない,と.それが税収をもたらし,インフラを整備すると,そのうち成長が他の地域に移っていくからです.都市計画よりも,むしろ移動を促すこと.


NYT October 1, 2007

Subcontracting the War

LAT October 3, 2007

Accept the Blackwater mercenaries

By Max Boot

NYT October 3, 2007

Sinking in a Swamp Full of Blackwater

By MAUREEN DOWD

(コメント) かつてメン・イン・ブラックとは悪性の宇宙人を始末する捜査官でしたが,今では市民を殺す傭兵たちです.

ブラックウォーターがバクダッドの武装集団掃討作戦で市民を殺しました.彼らは戦争を理由に罪を問われません.戦争は政治的にあまりにも重要であるから,政府が民間の請負会社社員(イラクに約5万人)に発注するべきサービスではありません.

「アメリカ兵は彼らを嫌う.なぜなら同じような任務で莫大な報酬を得ているから.イラク人は彼らを嫌う.なぜならイラクの主権が侵されていることのシンボルだから.多くのアメリカの左翼も彼らを嫌う.なぜなら戦争で利益を上げる連中だから.」

兵士でもない彼らが市民を殺すことに怒りが集中します.しかし,それは彼らの法律を無視した残虐行為に対してです.もし彼らの任務や権限が明確に制限され,その利用が適切に監督されるなら,今後とも重要な役割を担う,とMax Bootは支持します.

******************************

The Economist September 22nd 2007

Will the credit crisis trigger a downturn?

The global economy: The turning point

Violence in China’s school: Hard lessons

Myanmar: Monks on the march

Segregation and Little Rock: Fifty years on

Mining in Peru: Revolt in the Andes

(コメント) 住宅価格の下落や短期金融市場の麻痺は,人々が恐れていた世界的な金融恐慌の始まりか? 記事は,アメリカの経済的な健全性はまだ高いとみています.EUもユーロ高にまだ耐えられます.そして何より,中国など新興市場の拡大は,むしろ十分にショックを吸収できるでしょう.

その中国でも学校に侵入した暴漢が児童を殺害するような事件が続いている,と知りました.アメリカでは,かつて人種差別や隔離で有名だった町に,今も歴史的な記念行事を行うことのできない抑圧された事情が継続しており,その最初の事件の激しさに驚きます.

資源を採取する外国企業の投資を,地域住民の生活改善につなぐためには,まだ十分な条件が整備されていないようです.


The Economist September 22nd 2007

Britain’s bank run: The Bank that failed

The politics of a bank run: Labour’s moment of peril

Securitisation: When it goes wrong

Button wood: Mismatch of the day

Economics focus: Confidence trick

(コメント) この間の重要論点は取り付け騒動でした.ブラウン首相が蔵相になって行ったイングランド銀行の独立性による三局体制の金融制度改革は,この取り付け事件で信用を失いました.「素晴らしい新世界」がそのマイナスの効果を示したのです.

債権の証券化は金融市場や銀行経営を大きく変え,合理化したはずでした.しかし,金融革新は必ず次の危機で重要な役割を演じ,見直される,という歴史があるようです.少なくとも,自分の帳簿からリスクが消えただけで安心してしまった銀行や金融監督官は間違っていた,と分りました.

流動性危機は銀行の融資行動にとって本質的な問題です.記事はキンドルバーガーの示す歴史から,@銀行が友人や職員を動員して取り付けの際に並ばせ,現金を細かい紙幣で,ゆっくり数えて渡した,と紹介しています.もちろん,その職員は裏口から現金を返しに来ます.あるいは,A人々の動揺がすぐに鎮まることを期待して窓口を閉鎖する銀行もありました.しかし,「銀行休日」が引き出しに来る人の機会を減らせたのは,インターネットがなかったからです.

Bそれに代って,救済融資を行う合意ができた場合もあります.たとえば,信用のある大きな銀行が買収してしまうのです.これも,今のように株主に説明を求められると,大銀行でもやりにくくなります.中央銀行が「最後の貸し手」を委ねられるまで,C市場のパニックにはJ.P.モルガンのような個人が救済融資に応じていました.その後,E中央銀行が設立されたのです.

中央銀行の特別融資はバジョット原理に従うはずでしたが,問題は複雑でした.預金者が並び始めると政治家は我慢できず,中央銀行の救済を求めたからです.他方,F預金保険制度は取り付けを防ぐことができませんでした.預金者はいかなる損失も,不便も,嫌ったからです.他方,G安易に政府が預金の全額返済を保証した場合,グレシャムの法則が働き,銀行の悪化が進行します.それは一層の危機に至るのです.