IPEの果樹園2007

今週のReview

10/1-6

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

中国の監視社会とウォール街, 北京コンセンサス, アメリカ=メキシコ・ハイウェー, キング総裁の苦しい毎日, ジーナの黒人差別問題, 危機の歴史的比較, ミャンマーの僧侶たち, 惑星ガザ, 福田「崖っぷち」内閣の憂鬱

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


WP Wednesday, September 19, 2007

China's Hot Stock: Orwell Inc.

By Harold Meyerson

アメリカ経済は不況の瀬戸際をふらついている.しかし,ヘッジファンドの教祖たちは無限の未来を信じているのだ.すなわち,中国の警察国家である.

ニューヨーク・タイムズが,先週,驚くべき報道を行った.中国の電子監視産業が勃興し,その主要企業はアメリカに協力者がいる.その株式の主要部分をアメリカのヘッジファンドが得ている.うわべは民間企業であるが,実際は中国政府の営利付属機関である.

政府公安局の技術長官であるLi Runsenは,インターネット上で危険思想を監視する警察のトップでもあるが,今は副業として中国治安監視技術(CSST)社の幹部である.この企業はもうすぐNYSEに上場する.

CSSTは,その財務幹部によれば,横断歩道を監視してデモ隊が集まっているところを監視する治安カメラ,そしてインターネット・カフェの利用者の顔を問題人物の顔と照合するコンピューター・ソフトを生産する.こうして中国はテロリストから守られる,という.

しかし中国はテロリストの餌食ではない.それはむしろ賃金を支払われない労働者たちのストライキを監視している.ひどい環境破壊について抗議する人々を,偶像や国家ではなく,神を礼拝したい信者たちを監視する.自由なアイデアの交換に耽るインターネット利用者たち,自立を求めるチベット人たち,そしてもしかすると,もう一度,天安門の爆発を呼びかける民主化支持の呼びかけを監視している.

どれほど多くの市民たちが政府の死滅を願っているか,権威主義的な政府が知っているわけではないから,結局,中国共産党は13億人を監視しなければならない.660の都市がハイテク監視システムをインストールしている,という.ある推定では,監視システムへの投資が,2003年の5億ドルから,2010年には430億ドルに増加する.

こうした数字はウォール街の注意を引き付けた.CSSTは,11000万ドルの転換融資をシカゴのヘッジファンドから得ている.ウォール街の幹部たちは自分たちの投資を,ロンドンやニューヨークの監視カメラと同じことだ,と弁解する.

確かに,アメリカの主要企業は,ヒトラーのナチ,スターリンのソビエト,イランのシャー(そうだ,ハリバートンも!)に投資した長い不潔な歴史を示している.しかし,地獄の中でも区別するなら,アメリカ企業は少なくともゲシュタポやシュタージ(東ドイツの秘密警察),KGB,(イラン)革命防衛隊には投資しなかった.もしかしたら,やろうとしたが失敗しただけかもしれない.いったん中国が共産主義的な弾圧を投資機会に変えてしまえば,資本主義がそうであると言われるように反応するだろう.彼らはそれを望んでいる.莫大な取引があって,民主主義を潰すことにヘッジファンドは賭けるのだ.

資本主義は世界化したが,民主主義はそうではない.統一された世界市場に向かっているけれど,そこには民主主義システムも権威主義システムも住むことができる.レーニン主義的資本主義の中国型モデルは,西側が信奉する民主主義的資本主義を脅かす.それは発展途上国のエリートたちに,権力を維持したまま莫大な富をもたらす,と約束するのだ.もしそうであれば,アメリカはその愛用の神話を放棄しなければならない.つまり,資本主義と民主主義は一緒に進む.市場の拡大は必ず民主化をもたらす,というわけだ.これこそ1990年代に中国に対する最恵国待遇を無期限に拡大するとき論争になったことだ.実際,中国とアメリカの経済は融合した.その結果,アメリカ中西部の製造業は失われて深圳(香港周辺)に移った.その結果は逆のことを示した.マイクロソフト,グーグル,ヤフーのようなアメリカ企業が中国のインターネット検閲を受け入れたのだ.中国における製品の無責任さが,それは民主主義の欠如が直接にもたらしたものだが,そのまま我々の基準となった.

そして今や,ウォール街のもっとも慇懃なオペレーターたちが,言論や信仰,集会の権利に対する中国政府の弾圧に,直接,投資しているのだ.アメリカが金融機関によるレーニン主義的国家を助長するのを規制し,法律で禁じることが望ましい.下院外交委員会はそれを取り上げているが,ホワイトハウスは逃げている.スポークスマンに言わせれば,「アメリカ人が合法的な法人企業に投資するという民間の意思決定に介入するのはよろしくない.」

ブッシュ政権が求められている選択は,資本主義と民主主義,あるいは,資本主義と我々の国益,であるが,スマートな金融機関は資本主義に賭ける.(民主主義も,国益も,無視して.)

NYT September 23, 2007

China in Three Colors

By THOMAS L. FRIEDMAN

Sept. 24 (Bloomberg)

Forget Dog Years -- We Are Living `China Years'

William Pesek

NYT September 24, 2007

Cleaning Up China

(コメント) THOMAS L. FRIEDMANは,中国の民主化と環境保護とを切り離せないものと考えます.中国は共産主義から資本主義に進もうとしているが,それはダーティーな資本主義であって,クリーンな資本主義ではない.司法の独立や言論・出版の自由があって,初めて企業に環境規制を守らせることができる,と.

共産党はすべてを欲しがっています.より高い成長率,より環境に優しい成長モデル,そして誰も異議を申し立てない共産党の支配.三つすべては実現できないだろう,とFRIEDMANは考えます.われわれは三つを得るために民主主義を取るが,彼らはそうではない.もっと違う組み合わせを求める.見つかるかもしれないが,今のところ,環境が破壊され続けている.

William Pesekは,中国の急速な発展に度肝を抜かれたブッシュ大統領に同情しています.25年前に中国を観たから,そのとき何もなかった地区に宇宙コロニーのような超近代建築群で摩天楼を築いてしまった中国人に,感嘆するしかないわけです.

犬はその寿命からいって,人間の7倍のスピードで生きている,と言われます.賃金も,人間関係も,職業も,住宅も,猛烈なスピードで破壊されていきます.スタンダード・チャータード・バンクの上海支店に勤めるシニア・エコノミスト,Stephen Greenは,中国の急激な変貌ぶりを表すのに「中国年」という時間の尺度を考えました.

その変化のスピードは,アメリカの1年を中国人は4分の1年,もしくは2.8カ月で経験し,イギリスの1年は中国の3.1カ月に等しい.中国人は約4倍のスピードで生きるのです.もちろん,中央銀行ならインフレや通貨危機の回数で換算するし,地域格差は示されていません.しかし,中国が経験している変化の速さ,という点で,真実をついています.

有名な話ですが,1991年,世銀の主任エコノミストであったローレンス・サマーズが,環境を汚染する企業は発展途上国に移った方が良い,と示唆しました.さすが,女性は男性より劣っている,という暴言でハーバード大学の総長を辞任した人物です.

しかし,それは正しかったわけです.中国は世界最大の環境汚染国家になりました.「中国は世界の鉄鋼の3分の1,世界のセメントの半分,世界のアルミニウムの3分の1を生産する.アメリカ,ヨーロッパ,日本を合わせたよりも多くの石炭を消費する.その環境悪化は,ディケンズが経験した最悪期のものに匹敵する.大気汚染が年間65万人の死期を早めている.」

温室効果ガスの排出量でも,中国はアメリカを抜こうとしています.もう抜いたかもしれません.その責任は,もちろん,中国政府にあります.しかし先に工業化した諸国の国民は,中国への工業力移転によって,安価な労働者と環境を利用した消費を享受しています.

北京政府も,外国企業も,西側各国の政府も,中国の環境破壊を抑えるために,多くのことができます.特に,アメリカは率先して国際的な環境保護の枠組みを作り,自ら温暖化ガスの排出を抑えることで,中国政府の目標と規範を与える必要があるでしょう.あるいは,中国のせいにして,自分たちの失敗を言い繕うだけでしょうか?

FT September 25 2007

Asia’s challenge to China

By Daniel Twining

アメリカの経済的衰弱,ヨーロッパの政治的不確実さと人口減少,中東の混乱,モスクワとテヘランから西側に対して起こされた挑戦,これらは世界政治が新しい地点に達したことを示している.何世紀もの間,国際社会を形成してきた権力や原則を示した自由諸国が衰退し,資本主義的発展が民主主義をもたらすという楽しい信念を打ち砕いた,止めようのない経済的上昇によって中国が独裁的超大国になるのは,新しい時代の特徴である.自由主義的な西側諸国も,権威主義的近代化という,新しい世界規模の「北京コンセンサス」を受け入れるしかないのか?

アメリカの経済的衰弱,ヨーロッパの政治的不確実さと人口減少,中東の混乱,モスクワとテヘランから西側に対して起こされた挑戦,これらは世界政治が新しい地点に達したことを示している.何世紀もの間,国際社会を形成してきた権力や原則を示した自由諸国が衰退し,資本主義的発展が民主主義をもたらすという楽しい信念を打ち砕いた,止めようのない経済的上昇によって中国が独裁的超大国になるのは,新しい時代の特徴である.自由主義的な西側諸国も,権威主義的近代化という,新しい世界規模の「北京コンセンサス」を受け入れるしかないのか?

アメリカの指導力や大西洋間の団結はまだ重要であるし,中国の軌道は近隣諸国がその増大するパワーをどのように制御するかにかかっている.

北京の指導者たちは,中国の増大する経済・軍事的な威力がアジアを支配するに十分である,と信じている.しかし,パワーの配置だけでなく,共有される政治的価値が,地域の政治を形成するのである.日本とオーストラリアが安全保障条約に調印し,東京は初めてアメリカ以外の国と同盟関係を結んだ.オーストラリアはすでに民主的なインドネシアと結びついている.インドと日本が汎アジア的価値の同盟を結ぶよう,絶大な経済的・軍事的潜在力を持つ日本がインドを促した.日本はインドやオーストラリア,気の進まないアメリカを率いて,中国の戦略家が恐れる「アジア版NATO」を創ろうとしている.

この同盟形成の嵐が衝撃的であるのは,それを率いるのが60年間この地域の安全を保障してきたアメリカではなく,台頭する諸国であるからだ.また新しいアジアの秩序が西側の民主主義の平和を模して,中国を中心とした過去のアジアに戻る階層制ではないことも衝撃的である.

アジアの民主大国は,平和と民主主義が「欠かせない」と理解しているから,基本的な価値に依拠した戦略的同盟を結ぼうとしている.東南アジアの指導者たちも,地域の安定に内外における民主主義が欠かせない,と宣言した.こうして,中国の指導者たちが構想するアジアの世紀とは異なるものが現れる.

外交政策はその国の国内支配と切り離せない.中国の仲間は,北朝鮮,ビルマ,パキスタン,ロシア,中央アジアの独裁国家である.中国が好む上海協力機構は,ユーラシアの権力支配者を集めたものだ.東アジア・サミットにインドやオーストラリアを招くことを,中国は激しく攻撃した.

アジア諸国民は地域の平和を長くアメリカの軍事力に頼りすぎた.国内の合意がないから,アジアの組織はヨーロッパの平和を再現することができない.

中国国内で民主化の圧力が強まり,その管理をめぐって指導部は激しく論争しているが,中国本土の繁栄は結果的に台湾や香港で中国人社会が享受している自由を求めるだろう.その時が来るまで,アジアの基本的な地政学的分割線は,中国とアメリカ,あるいは東と西との間ではなく,北京の権威主義的支配とアジア・太平洋の民主主義国同盟との間にある.

LAT September 25, 2007

Boycotting China? Good luck

By Sara Bongiorni

FT September 25 2007

Piggy bank raid: Beijing acts to quell inflation

By Richard McGregor

FT September 26 2007

Fears that keep the renminbi undervalued

By Richard McGregor

NYT September 28, 2007

Beneath Booming Cities, China Future Is Drying Up

By JIM YARDLEY

(コメント) "A Year Without 'Made in China': One Family's True Life Adventure in the Global Economy."の著者Sara Bongiorniは考えます.中国製のおもちゃには毒がある.中国製品を輸入禁止にするべきだ,とアメリカの(一部)政治家たちは主張しています.しかし,中国製のおもちゃを禁止するなら,おもちゃを禁止することになる,と.子どもたちにどう説明するのか?

なぜなら彼女は,自分の家庭だけで,中国製品ボイコットを1年間実行したからです.中国製品を使わない生活が大変な不便を強いるものであることを実感します.

「石油危機」ではなく「ブタ不足」が中国のインフレを育てます.銀行ならぬ,ブタ肉売り場に「取り付け」騒ぎが起きるのでしょうか? 集会の禁止や,夜間外出禁止令が出る・・・?

Richard McGregorは,中国社会における豚肉の重要性を指摘します.それは確かに1989年の手難問事件を引き起こしたインフレ高進を連想させる,と.政策当局は,インフレによって実質金利が低下し,銀行から預金が流出することを心配します.そして,すでにバブルと言われる住宅や株式に向かうのです.

北京の政治的行事日程が金融政策を妨げます.北京オリンピックに向けてインフレの不満と社会不安が醸成され,世界のメディアに実況中継されるのを待っているかもしれません.それは,アメリカとの通商・政治関係を損ないます.中国の貿易や世界のインフレにも影響するでしょう.

しかし,病気の影響は過渡的ですし,政府は価格安定化のため輸送を円滑化し,備蓄を促す,など,対策を取り始めています.・・・「豚肉中央銀行」“piggy bank”の設立計画です.

他方,人民元の為替レート安定化は維持できないでしょう.それが国内の貨幣供給を増やしているからです.もはや価値の下がるドルの準備より,ブタの準備の方が重要だ,と政府も気づいたようです.あるいは,インフレに抗議した民衆と僧侶を軍隊によって蹴散らしたミャンマー政府を真似るのか? 共産党が権力を得たのは,国民党政府がインフレの扱いを誤ったからでした.その歴史を忘れたのか?

中国のベストセラーは『通貨戦争Currency Wars』だそうです.マハティールとソロス,そしてグリーンスパンという名の警官が登場して,ひどい内容も含んでいるようですが,中国の現状を考える役に立ちます.中国は弱くなるドルに対して安定化させており,ユーロに対しては増価するどころか減価しているのです.貿易不均衡の是正より,中国経済自身の過熱を防ぐために,人民元レートの増価が必要です.

JIM YARDLEYは,中国の水不足を伝えています.石油や天然ガス,鉱物だけでなく,飲料水も中国は将来,輸入に頼るのでしょうか? 毛沢東時代の治水や灌漑も問題です.


The Guardian Thursday September 20, 2007

We must weigh the moral cost of withdrawal from Basra and Baghdad

Timothy Garton Ash

CSM September 25, 2007

Why I want to keep fighting in Iraq

By Chris Brady

(コメント) アメリカ軍がイラクから撤退することは,イラクや中東の安定化に役立つのか? それともさらに悲惨な状態を招き,混乱が長引くのか? さまざまな対立した意見があります.誰にも分らない,と言うしかありません.

イラクの政治体制を破壊した以上,アメリカやイギリスには,その秩序を維持し,次の民主的な政府が安定化を実現するのを助ける道義的な責任がある,とTimothy Garton Ashは考えます.もし撤退がイラク国民の虐殺や難民流出をもたらすのであれば,それは避けるべきでしょう.統一イラクを支持する周辺諸国と国連との協力が打開策となることを期待します.アメリカ軍は長期の駐留を求められ,クルド人の独立も展望します.

しかし,イランも協力するでしょうか? あるいは,サルコジの強硬姿勢が失敗し,次の戦争を招くのでしょうか?

イラクに従軍する兵士として,Chris Bradyは駐留を支持しています.外国においても,住民たちの平和を維持するために命を落とす仲間がともにある世界を信じているからです.


LAT September 20, 2007

Going protectionist over a fantasy highway

By Shikha Dalmia and Leonard Gilroy

(コメント) アメリカ国内が保護主義によって屈折するにもかかわらず,NAFTAの理想は引き継がれています.テキサスを通ってアメリカとメキシコを結ぶ高速道路計画the Trans-Texas Corridorです.

この計画は,ドバイ資本によるアメリカの港湾管理企業買収が議会の「安全保障」を理由とした保護主義によって阻まれてから,孤立主義的保守派にとって,アメリカの解体をもくろむ最悪の陰謀として憎まれています.「スーパー・ハイウェイ」は,アメリカ・メキシコ・カナダの共通通貨や単一政府の始まりだ,と言うのです.あるいは,大陸規模でテロリストの侵入を阻み,ジャスト・イン・タイムの配送システムをスピード・アップすることも同一視されます.

「保護主義のパラドックスは,それが守ろうとするものを破壊してしまうことである.」 労働組合はアメリカの自動車や鉄鋼の企業を破壊してしまった.今の孤立主義者は,「主権」の名において,アメリカの「繁栄」を破壊してしまう,と.


LAT September 20, 2007

Microsoft vs. Europe

NYT September 21, 2007

Regulating Microsoft

(コメント) マイクロソフトの独占が,競争や革新を妨げている,というEUと,逆に,革新的な企業が法律の強制介入を招くのであれば,革新について保守的になる,というアメリカの判断が対立しています.

この判決を評価しない意見は,すでにマイクロソフトは独占していない,と考えます.今や孤立したデスクトップ・パソコンを支配することは過去のような独占的地位を意味せず,ブロードバンドでつながった情報交換が重要です.

私には,マイクロソフトに限らず,ソフトウェア産業に適正価格を決める問題が,社会的な正義を損なうように思えてなりません.それがだれであれ,情報空間に割拠する現代の封建領主を,民主的な権力に服従させる原理を示してほしいです.


NYT September 20, 2007

The French Revolution

By ROGER COHEN

(コメント) サルコジが行っているのは,第二次フランス革命だ,とROGER COHENは考えます.それは10個のタブーを破壊することです.

1.アメリカの覇権・資本主義を礼賛し,2.農業の偶像崇拝を止め,3.富者たちと和解・協力し,4.フランス文化よりアメリカ映画を好み,5.イスラエルを突き放してアラブ民衆を称えるポーズを捨てます.

6.ロシアの独裁や外交的脅威を自覚し,7.長時間労働や勤労精神を称え,8.極右の脅しを退け,9.西側軍事同盟を重視し,10.名門大学出身の官僚支配を嫌います.

では,この革命も第二次ナポレオン戦争に至るのでしょうか? イランとのサルコジ戦争によって,あるいはドゴールのように学生反乱や移民暴動に権威を失墜して,EUはヨーロッパの支配権を失い,分裂します・・・?


Sept. 21 (Bloomberg)

Fed Cuts, BOE U-Turn Show Limits of Independence

Mark Gilbert

The Independent, 23 September 2007

Uneasy sits the crown: can King rally the Bank of old England?

Simon Evans

(コメント) Mark Gilbert は,アメリカ,ヨーロッパ,イギリスで中央銀行の金融政策がにわかに逆転したことを指摘し,その「独立性」を問います.ちょうどアラン・グリーンスパンの回想録が出版されました.FTのインタビューを受けて,グリーンスパンは述べたそうです.

・・・振り返ってみて明らかなように,グリーンスパンが金利を低くしたまま放置したことがバブルを生んだわけです.なぜもっと早く金利を上げなかったのか? グリーンスパンは答えました.「われわれが完全に道立して,自由裁量を得ている,という仮定は間違いだ.」 金利をもっとゆっくり上げるとか,もっと早く上げるとか,そういうことは「幹部政治家たち」に受け入れられなかっただろう.・・・

つまり,優れた(?)中央銀行家であることの秘訣は,その政治的な主人である者たちが何を考えているかを注意深く観察し,その意味を汲んで自分の行動を修正することなのです.他方,取り付けを防げなかったキング総裁は,金融政策の運転席に市場パニックが座ってしまったことに後から気付いたわけです.

ローマ時代には敵をライオンの餌食にして民衆を喜ばせたけれど,現代のロンドンでは,人々が大蔵省の委員会を見物する,とThe Independentは伝えます.もちろん,キング総裁が市場の餌食になるのを見るためです.ついこの間まで,金融市場だけでなく,首相も大蔵大臣も,キング総裁への信頼を繰り返し述べていたのですが.それは平凡なサッカーチームの人気ほどにも確かではないようです.

1週間も寝ていないようなキング総裁の会見風景,言葉の調子を変えながら後退する「モラル・ハザード」論,・・・ 「なぜ劇場で火事だと叫んだのか?」 ・・・たとえイングランド銀行が救済融資を行った後,ノーザン・ロックを誰かに買収させても,その政治的な介入に株主や債権者が法的な告発をするかもしれません.市場パニックを管理することが難しいわけです.

FT September 23 2007

Beware moral hazard fundamentalists

By Lawrence Summers

(コメント) かつて通貨危機を調べていたとき,「モラル・ハザード」論を読んで,胡散臭い議論だと私も感じました.それは形式的で,中身がありません.問題の核心を避けているように思ったからです.

Lawrence Summersの論説は,モラル・ハザードが問題になる状況を正しく理解していない,と批判します.市場の信頼や安定性を高める行動も,「モラル・ハザード」であると非難して妨げるようなファンダメンタリズムは排除するべきです.

保険に由来するこの概念を金融分野に転用した際,破たんした金融機関を救済すれば,将来さらに多くの破たんと救済融資が生じる,という主張をもたらしました.同様の議論は,たとえば,IMFの融資,LTCMの救済,最後の貸し手,急速な金利引き下げと資産価格の上昇,政府系金融機関,住宅への融資支援(Fannie MaeFreddie Mac),などに拡大されたのです.

Summersは,こうした議論が,民間の保険契約と公的機関の行動理由を混同している,と批判します.もし彼らの間違った批判に従えば,金融部門の効率は低下し,安定性が失われるだろう,と.

1.寝たばこをする人がいるからと言って,消防署を廃止せよ,と主張するのは間違いです.延焼を防ぐことは重要です.むしろ,他者に及ぼす利益を考慮しないために,保険契約に入らないことが問題です.

2.金融において,モラル・ハザードと信頼とは同じコインの裏と表です.パニックになれば,金融機関は支払い不能になってしまいます.パニックを防ぐことで,人々は金融機関を信頼できるのです.そして金融機関は長期の投資ができます.

3.確かに,政府が金融機関の支払いを保証すれば,モラル・ハザードと同じことが生じます.しかし,モラル・ハザードにより保険会社は損害をこうむるけれど,中央銀行は国民の損失を防ぐのです.LTCMが破たんした方が良かった? IMFが赤字国を救済しない方が良い? そんなことはないのです.それは国民の税金も使わないのです.

救済融資を行うに際して中央銀行が考えるべきは,モラル・ハザード論ではなく,1.伝染の可能性(システムの安定性),2.流動性と支払い不能の区別,3.税金の無駄遣い,です.

WP Tuesday, September 25, 2007

Bernanke Takes The Reins

By Robert J. Samuelson

(コメント) 中央銀行家の仕事は,ある意味で矛盾しています.彼らは一方で,インフレを抑えねばなりません.同時に,彼らは金融パニックを回避しなければなりません.前者は通貨供給を絞るように求め,後者は通貨供給の蛇口を開放させるわけです.

中央銀行家は,金融市場におけるストライキ破りです.銀行も投資家も資金を出さず,金融ひっ迫が起きると思えば,中央銀行は介入します.

しかし,「どこに危機なんてあるのか?」 アメリカの景気は好調です.失業率は4.6%.たとえ5%でも危機ではない,とAllan Meltzerは連銀を批判します.バーナンキは金融市場や議会の要求に屈しただけだ,と.その結果,投資家は節度を見失い,賃金は上昇し,ドル安が進んで,インフレの不安が広まってしまうだろう.石油価格も1バレル80ドルを超えています.

連銀は全治でも全能でもありません.個人の判断が試されるのです.ようやくグリーンスパンからバーナンキの時代が来た,というわけです.その評価は,まだ,時間を要します.

FT September 25 2007

Fed must weigh inflation against recession

By Martin Wolf

(コメント) モラル・ハザードは重要だが,それは貧しい者にとってだけである,とMartin Wolfは書きます.危機を回避することは,常に,次の危機の種をまくことだ,とも.ブームの最後にはパニックが来る.これからもそうです.

金利を下げて,パニックを回避したから,これでよかった,と言うわけにはいきません.それは,インフレ(ドル安)が問題になる番だ,と言うだけです.しかも,グリーンスパンが回想したように,中央銀行は独立ではありません.それは政治の産物です.そして,もし金融パニックが海外投資家のドルに対する不信とつながれば(なぜならインフレを選択したから),バーナンキはパニックを防ぐ手段を持っていません.

次は,グリーンスパンではなく,インフレを抑制したボルカーに学ぶしかないわけです.

FT September 25 2007

Insight: Dwindling US trade deficit could reshape world business

By Jim O’Neill, head of global economics research at Goldman Sachs

BG September 27, 2007

The Greenspan hangover

(コメント) インフレ・ドル安によってアメリカが救済されるとしたら(金融パニックも避けて),そのつけを支払うのは海外投資家と輸出を失う黒字国です.アジア諸国にはその覚悟や準備があるのでしょうか? あるいは,貿易戦争や金融市場崩壊の引き金を引くぞ,と言って,危険な政治取引を始める? 信用を失うのは容易ですが,アメリカにとってその危険は計り知れず,パニックの後でドルの信用を取り戻すことはあまりにも難しい,と警告します.

誰でも,回想録では,自分の好きなように書けます.しかし,今までグリーンスパンの遺産で安定を保っているかに見えたバーナンキが,今度はグリーンスパンの後遺症(二日酔い)に悩まされています.ブッシュの大型減税,住宅バブル,金融市場への救済,・・・


Asia Times Online, Sep 21, 2007

In the playground of the superpowers

By Harun Karcic

(コメント) 中央アジアに関するまとまった考察です.ヨーロッパとアジアの分岐点,マルコ・ポーロも訪れたシルクロードの世界.旧ソ連圏に初めてできたアフガニスタンを空爆するためのアメリカ軍基地.今や,カスピ海の石油を狙うロシア,中国とアメリカなどの西側諸国が,激しい(そして汚い)争奪戦を繰り広げます.

歴史的な部族や宗教の違いから戦闘や殺戮が繰り返され,いずれも専制的な独裁者が部族による政府支配によって平和を維持しています.彼らはアメリカからの軍事・経済援助によって,一時的に,ロシアや中国からの政治的な介入を退け,自由を得たいと思うでしょう.しかし,民主的な秩序など不要だ,と考えます.中東の歴史が繰り返される恐れがあります.


Gary Younge Jena: the next step The Guardian Friday September 21, 2007

Soul-searching in Jena LAT September 21, 2007

Eugene Robinson Drive Time for the 'Jena 6' WP Friday, September 21, 2007

Amina Luqman Jim Crow Comes for Our Kids WP Friday, September 21, 2007

PAUL KRUGMAN Politics in Black and White NYT September 24, 2007

Response to Jena scandal should have shown more anger FT September 25 2007

(コメント) ルイジアナ州の小さな町,ジーナで起きた人種差別に,全米の黒人団体などから抗議の声が上がりました.LATは次のように伝えました.

「ジーナが人種対立の沸騰する鍋になったのは1年足らず前だった.黒人高校生が長い間白人高校生だけの集まる場所であった木の下に座ったのだ.翌日,3本の首つり縄が枝から下がっているのが発見された.深南部においては,それが邪悪で抗争をもたらすシンボルになるのは容易だった.南北戦争後およそ1世紀にわたって黒人へのリンチが普通に行われていたからだ.高校の校長は3人の白人生徒を放校処分にしたかったが,教育委員会はこの事件を単なるいたずらとして,生徒たちをわずか3日間の停学にした.この決定が深刻な結果を招く.」

「白人と黒人が,その後の1年間,双方とも暴行にかかわった.しかし,厳しい刑罰は黒人だけに用意されていたようだ.白人の若者たちがパーティーの席で,黒人生徒をビンで殴った.一人だけが,単なる殴打により告発された.翌日,白人男性が黒人の若者グループにショットガンを見せつけた.彼らは争って彼から銃を取り上げた.この男は告発されず,銃を盗んだということで少年たちが罪を問われた.最後に,6人の黒人青年が学校の体育館の外で白人生徒を殴った.何人かが最初,殺人未遂に問われたが,その被害者は夕方,学校行事に参加するほど元気だった.」

WPにおいてAmina Luqmanも述べています.

「『ジーナの6人』については,何かが黒人社会にくすぶる不満に火をつけた.それは悲しいことに,皮肉なものである.毎日,同じようなことが起きているのだ.考えてみよ.人種により徴発された事件と,コミュニティーの鈍い反応.いつも同じだ.大したことでもない犯罪に対する極端に重い求刑.いつも同じだ.熱心すぎる検察官と,無能な弁護人.そして,全員が白人の陪審員たち.証人も呼ばれず,迅速な有罪判決.どれもかも,いつもと同じだ.残念だけれど,こうした要素はいずれもアメリカの黒人が生きる毎日に何も珍しいことではない.」


LAT September 21, 2007

Outsourcing foreign policy

Rosa Brooks

The Guardian Monday September 24, 2007

Blackwater poisons the well

Ed Harriman

(コメント) イラク増派問題が騒がれている一方で,アメリカ政府が契約した私兵たちが戦争を継続している,という問題も関心を集めました.ブラックウォーターなど,軍事サービス請負企業との契約は,どこまでの戦闘行為を認めているのか? 彼らの行動のどこまでアメリカ政府にも責任があるのか? アメリカは戦争も外交政策も民営化してしまうのか?

最近の事件では,ブラックウォーター社の民兵がバクダッドで銃撃戦の末,イラク人11人を殺し,12人を負傷させた,と言うことです.マリキ首相は責任を追及し,アメリカ政府はもみ消しに動きました.

1年前,イラクのアメリカ寄りと言われる電力大臣が公金横領でイラク裁判所から判決を受けました.判決が渡される前に,グリーン・ゾーン内の警察署にいるDyncorp社の社員が元大臣をアメリカ大使館に連れ込んだ.そして長い議論の後,彼は戻されて2年の判決を受け,数週間後にヨルダンへ「逃亡」した.それからシカゴの家へ帰り,数億ドルに及ぶ疑わしい取引について追及を免れた.」

アメリカ政府はイラクの主権を回復したというが,軍事サービス請負会社がイラク政府を無視して国民を殺害し,イラク政府高官が国民の金を横領するのも許しています.アメリカ国民は莫大な料金を支払い,アメリカ軍兵士の死亡や負傷を減らしているのだから,それで良い,と納得できるのでしょうか?


FT September 21 2007

Fed must beware the dollar danger

The International Herald Tribune, 21 September 2007

Managing Globalization

Daniel Altman

(コメント) 危機の第一幕は,サブプライム・ローンの返済不能.どの金融機関が,どこまでかかわっているか.第二幕は,金利上昇と金融ひっ迫.アメリカ連銀が,一気に0.5%も金利を下げる.そして,第三幕へ.ドル不安から,資本逃避.アメリカ発の金融恐慌.海外投資家はドル建て資産から逃げ出し,バーナンキが何をしても,長期金利は上昇して不況を避けられない,とFTは懸念します.

その場合,ユーロが強くなる産業界への影響を,ECBは金融緩和で緩和するように求められるでしょう.そしてECBが認めないと混乱が始まります.他方,アジアは暗黙のドル・ペッグ政策を見直すしかありません.しかし,その場合は累積したドル準備に巨額の損失を出します.いずれにせよ,バーナンキはアメリカが債務国であることを忘れてはいけない,と.

金融市場のグローバリゼーションについて,Daniel Altmanはリスクの見直しを求めています.それは多くの利益をもたらすとしても,遠くのリスクと見えない関係を結び,危機のたびに反省を求めます.グローバリゼーションの利益を実現するとともに,さまざまな金融デリバティブとそのリスクを抑えるような規制の在り方を国際的に合意するべきだ,と思います.

The Guardian Saturday September 22, 2007

Don't look back

Harold James

危機が起きる前も,それが起きている最中も,我々にはよく分らない.逆に,過去の危機については多くのことを知っている.そこで,現在の危機を過去の危機を比べようとする.今,二つの時期が広く議論されている.1907年と1931年だ.

今の金融逼迫が始まったとき,多くの人が歴史的に1907年を重要な前例として取り上げた.それは単にちょうど100年前だからというだけでなく,魅力的な類似点があった.1907年の危機は瞬間的に破壊的で,大幅で短期の景気後退をもたらしたが,結局,容易に解決されたのだ.

1907年のパニックはアメリカで始まり,西部の農家が金利上昇によって穀物で支払い切れず,ニューヨークの金融スキャンダルになった.

今と同じように,突如として,大銀行でさえ互いを信用できなくなった.銀行破たんは基本的に流動性の問題だが,それはいくつかの方法で容易に解決された.すなわち,ニューヨークの銀行同士が手形を交換した,あっとうてきに強力な金融機関,JPモルガンが株価を買い支えた,パニックや流動性への逃避が終わった,ヨーロッパの中央銀行がアメリカ市場に金を供給した.

アメリカ人が学んだ1907年の顕著な教訓とは,金融パニックが起きた際には中央銀行が流動性を回復させる最善の機関だ,というものだった.そしてようやく,金融改革によってアメリカも自分の中央銀行,連邦準備制度を1914年までに作った.その結果,1907年は金融不安の際の呪文になった.流動性問題を理解した中央銀行があるから金融危機は起こり得ない,と.

現代との類似点がある.連銀もECBも最近,世界金融システムに膨大な流動性を供給した.戦略的な地位にある民間機関が市場への信頼を示した.たとえば,ゴールドマン・サックスはグローバル・エクイティー・オポチュニティー・ファンドの危険な資産を公開で買い付けた.

より暗い類似点もある.1930年代の大恐慌では,流動性を供給しても役に立たなかった.この歴史的な類推から,政府のより大きな介入を主張する者もいる.特にパニックに脆弱で,公的な救済を死ぬほど欲しがっている銀行だ.20078月,ドイツの銀行でいくつかが問題の起きる初期段階にあった.彼らはアメリカのサブプライム・モーゲージを買い過ぎていた.そして1931年との類推ばかり議論した.

大恐慌では,銀行の破たんが景気後退を悪化させた.それは国境を超えて広がった.所政府は公的な支援と,預金を保証する法律を必要としただけでなく,不安定化する国際的影響を遮断して自国の金融システムを守るよう求められた.

ナショナリストに偏ったレトリックが2007年の危機でよみがえった.ドイツ人たちは,アメリカのインナーシティーにおける悪質な住宅融資のせいで自分たちが脆弱になった理由を理解しない.イギリスの銀行,ノーザン・ロックはその融資を続けられなくなった金融混乱について,アメリカを非難する.

どちらの歴史的な類似ケースも絶対ではない.われわれは1907年に生きているのではなく,金本位制が中央銀行の追加的な流動性供給を制限してはいない.大恐慌では起きたように,物価が暴落して金融システムを崩壊させることはない.

今日では,1907年と1931年の危機に対する対応は事態を悪化させるだけだろう.流動性を供給し続ければ,住宅や株式,美術品で再びバブルが生じる見込みを強める.政府による銀行システムの安定化は,それが国際的に行われれば,他人に補助金を与えるという不満が納税者から生じる,国内的にだけ行うには,資本移動に対するより大きな管理が必要になり,コストを伴う.どちらの対策も必要ない.

もし歴史的に類推すれば,現代の金融逼迫は19世紀の「古典的危機」に似ている.19371947,1957年.これらのパニックでは,金融革新が不確実さと神経質な対応をもたらしたが,重要で有益な学習過程でもあった.その危機を乗り越えた金融機関はさらなる発展に大いに貢献し,危機に耐えたということで,その後の評価を高めた.

強行に対する最善の対応は,ときには,最善の方法とは,そこにいて,しかも,何もしないことだ.

NYT September 25, 2007

Save the Day

By STEPHEN S. ROACH

(コメント) 許諾お対外赤字と債務を持っているアメリカが,それに見合った金利を支払わねばならないのは当然です.そして赤字を減らすためにドルが弱くなるのも当然です.しかし,これらは非常に難しいバランスです.

STEPHEN S. ROACHは,アメリカの景気があまりにも大きな消費によって維持されていることに注意し,これまで以上に不況を強める住宅バブルと融資の破たんを憂慮します.資本流入も止まり,政治家たちは保護主義を叫び,重要な債権国である中国との摩擦を増やしています.ともにドル不安を強めるでしょう.

ドル安によって輸出が伸びる,という楽観は実現しません.歴史的に切り下げで繁栄した国はないのです.アメリカ自体が,サブプライムだ,と.ドル暴落のリスクを,いつも考えておくように.


The tyrant’s friend FT September 21 2007

Simon Tisdall Cornering the junta The Guardian Monday September 24, 2007

Monks vs. military in Burma BG September 25, 2007

Isabel Hilton China does not want another Tiananmen Square by proxy The Guardian Tuesday September 25, 2007

David I. Steinberg The Buddhism bomb LAT September 25, 2007

A. Lin Neumann and John Berthelsen Burma’s Growing Dilemma Asia Sentinel, 25 September 2007

(コメント) ビルマもしくはミャンマーの独裁者には友人がいない.アジアでは唯一,北朝鮮の金正日,・・・そして中国です.FTの論説は的確でした.

「怒ったビルマ民衆が初めて街頭で抗議を行ったのは先月,現金が底をついた軍事政権による割り当てられた燃料の価格を500%も引き上げたときだった.それによって突然,運賃など,その他のサービスも値上がりした.体制は反応した.反体制派を探し出し,150名以上を逮捕したのだ.しかし仏教の僧侶たちが抵抗のバトンを引き継いだ.彼らはビルマ人の生活で中心的な役割を占めている.ラングーン,その他で,反政府の行進を行った.お布施をもらう椀を逆さまにして,兵士や役人からの寄付をあからさまに拒む者もいた.軍事政権は,象徴的な意味で,破門にされたのだ.」

価格の引き上げは,ふつうの国でなら,石油価格の上昇によるものです.しかしビルマでは,長年に及ぶ軍事政権の悪政がその正統性を完全に失った事件となりました.

「中国も民主主義ではないが,共産党は少なくとも30年にわたって経済成長を監督し,信用を得ている.また,国内世論やインフレ高進による大衆の不満を非常に気にしている.だから今週,中国政府の管理するすべての価格,電気,水道から,駐車料金まで,価格を凍結した.」

中国政府は独自にビルマ政府に改善を求め,ビルマに合った民主化を進めるように要求しています.しかし,その改革圧力が失敗すれば,世界中で資源を得るために独裁国家と友好関係を築く中国は「独裁者の友人」とみなされるでしょう.

その後,デモは数千人から数万人に増え,軍事政権は軍隊に発砲を命じ,寺院を襲撃して僧侶たちをどこかに連れ去りました.デモを取材していた日本人ジャーナリスト,長井さんが銃撃されて死亡しています.

「民衆の抗議だけでは軍事政権を倒せない」と,Simon Tisdallは断言します.1988年にも,弾圧によって市民3000人が殺された,ということです.西側各国が声明を発表しても無駄であり,実際に,懲罰的な行動を必要としています.主要な取引相手国と近隣諸国がすべて含まれた国際合意による,制裁,封鎖,軍事介入です.

しかし,国際的な警察官を進んで引き受ける国はなく,北朝鮮を観ても,そのような合意は容易に形成できません.特に,中国政府とインド政府が明確な行動を取らなければ,ミャンマー政府は変わりません.両政府とも国際的な関心を無視できません.たとえば,国際世論に応じて,中国はスーダンやジンバブエに対する姿勢を少しずつ変えてきました.

また,国連の潘基文事務総長は国際的な政治圧力の組織化を試されています.

Madeleine Bunting An enlightened politics The Guardian Wednesday September 26, 2007

The Despotism Formerly Known as Burma NYT September 26, 2007

Sarah Buckley Burma's saffron army BBC 2007/09/26

Drew Thompson The world must respond to Burma FT September 26 2007

China and India can help Burmese FT September 26 2007

Monk if you love freedom CSM September 27, 2007

Brian McCartan Moment of truth for Myanmar's military Asia Times Online, Sep 27, 2007

Pepe Escobar Buddha vs the barrel of a gun Asia Times Online, Sep 27, 2007

Timothy Garton Ash Only Burma's neighbours can stop its dictators beating up the Buddha The Guardian Thursday September 27, 2007

Simon Tisdall The Burmese blame game The Guardian Thursday September 27, 2007

Václav Havel Struggling alone The Guardian Thursday September 27, 2007

Saffron repression LAT September 27, 2007

(コメント) 民主化運動と呼ばれる何かは,世界中にあると思います.そして,体制の暴力によって,あるいは,さまざまな制度的な弾圧によって,毎日その犠牲者が増えているのではないでしょうか? 組織された国家の暴力に対して,バラバラな個人が自由や民主化を要求して,勝利するわけがありません.それでも彼らは運動をおこし,何かが変わることを願っています.

彼らも私たちの一部であるなら,毎日のように拘束され,拷問を受け,処刑される人々がいることに,沈黙していることを恥じるべきだと思います.私たちは,抗議の手立てを工夫しなければならないでしょう.たとえどこであれ,闘っている人が,そして不当な処刑によって命を終える人が,私たちの真の良心であったと称え,彼らがいたことに誇りを持てるような日が来ると,誰もが確信できるような,何かが無ければならないと思います.


FT September 21 2007

New Forbes rich list

FT September 24 2007

Hanging up? Slim looks to legacy

By Adam Thomson in Mexico City

The Guardian Wednesday September 26, 2007

A rich man's world

Jeremy Seabrook

(コメント) フォーブズ誌によるアメリカの富豪上位400人は,2007年版で,このリストの最下位に入る者の資産が13億ドル,400人の資産合計額は1兆5400億ドルです.記事は,富豪になるよりも,富豪であり続ける方が難しい,という話です.

おそらくすでにビル・ゲイツを超えた世界一の大富豪,Carlos Slimは,決してソフトウェアの天才ではありません.彼はビジネスの帝国を建設する天才(というより支配者,帝王)であったようです.銀行,保健,スーパーマーケット,アウトレット,レストラン,鉱山,煙草,セメント,そしてテルメックスやアメリカ・モービルなど,ラテンアメリカの通信業界を支配しています.

過小評価された,組織の混乱した企業を見つけて買い取ることに才能があった,と自分の富を正当化します.それを立て直して利益を生むようにしたのは自分だから,それは自分のものである.・・・まあ,たとえそれが真実を一部は示しているとしても,それが独占でなかったら,急速に富を生まなくなるべきではないか?

さて,全然違う話題ですが,並べておくのも面白いでしょう.Jeremy Seabrookの論説は,貧困の考察です.私たちはさまざまな物質的富を求めて自由を失っています.たとえ豊かであるとしても,多くの者は貧しくなっている,と言えるのではないか? 明日にはクズだと思うようなものを集めるために,自分の自由を犠牲にしている毎日です.


Asia Times Online, Sep 22, 2007

Welcome to Planet Gaza

By Pepe Escobar

LAT September 22, 2007

The war on Gaza's children

By Saree Makdisi

LAT September 22, 2007

Want electricity? Stop the rockets

By Benny Morris

(コメント) イスラエルの軍隊が,幅わずか8キロ,長さ23キロのガザ地区を,この地球から消滅させるために,燃料や電気の供給を断ち始めました.敵対する者たちを他の惑星に移してしまうような暴挙を許せるものか!? とPepe Escobarは抗議します.ガザとは,150万の住民が集まる世界で最も過密な地区であり,すでに人口の半分が貧困線を下回り,人口の半分が15歳以下で,人口の3分の1が難民である土地です.

・・・「ようこそ,惑星ガザへ!」 

貿易禁止.移動も禁止.イスラエルの刑務所にいる子供や友人を訪ねることもできない.金融も封鎖され,遅かれ早かれ次の軍事侵攻がある.ライス国務長官だけでなく,世界には「見ざる,言わざる,聞かざる」人ばかり.ガザを支配するのが,イスラエルを滅ぼすと主張するハマスだから? 誰が誰を滅ぼすのか?

ガザの子どもたちはどうなるのか? イスラエルの封鎖は多くの子供たちを苦しめています.彼らには,学校もなく,食料もない.


LAT September 24, 2007

Fewer migrants mean more benefits

By Mark Krikorian

(コメント) 移民を管理することが望ましい結果をもたらす,という主張には,いつも一定の根拠があります.問題は,それが本当に利益なのか? どうやって管理するのか? ということです.

アメリカで強まる移民に対する規制強化で,移民たちに自発的な帰国を促し,それが大いに成果をもたらしつつある,という論説です.すなわち,アメリカの未熟練労働者が雇用を得て,賃金も上昇し,学校にも病院にも余裕が生まれて,社会支出は抑えられた,・・・というのですが.それは少なくとも短期的で,部分的に示されたにとどまります.


WP Sunday, September 23, 2007

College Sex: Going Home Alone

By Christopher Beam and Nick Summers

(コメント) カレッジ・セックスに関する論説です.


FT September 24 2007

The wrong lessons from Munich

By Gideon Rachman

The Guardian Tuesday September 25, 2007

Iran and the US must talk

Martin Woollacott

BG September 26, 2007

How to build US-Iran relations

By Abbas Maleki and Kaveh L. Afrasiabi

(コメント) ミュンヘン会談はヒトラーに対する間違った宥和政策として,チェンバレン首相の歴史的な汚名となっています.邪悪な体制とは対決を避けても効果がない.できる限り早く叩くことだ,と.それはイランに対する宥和政策についても言えるのか?

Gideon Rachmanは,チェンバレンの行動を評価して,「ミュンヘンの教訓」を正確に描きます.チェンバレンはヒトラーとの世界戦争を遅らせることに成功した.ヒトラーはチェコスロバキアの分割ではなく,即座に開戦を望んでいた.1939年に戦争は始まったが,その間にイギリスは空軍を増強している.イギリスはナチス・ドイツによる征服を許さなかった.・・・

すべての邪悪な体制が戦争を望んでいるわけではありません.それは平和的に体制を転換する可能性を秘めています.できるだけ早く戦争をすることが正しい,という教訓は間違いです.アンソニー・イーデンが失敗したのも,この教訓をナセルに当てはめたからだ,と.

Ahmadinejad's crack-up LAT September 25, 2007

Mr. Ahmadinejad Speaks NYT September 25, 2007

Anne Applebaum Playing Democrat At Columbia WP Tuesday, September 25, 2007

(コメント) イランのアフマディネジャド大統領がコロンビア大学で講演したそうです.そして呪詛や悪罵を尽くして我流の演説をすることで,アメリカの聴衆にその愚かさを十分理解させた,というわけです.


Sept. 25 (Bloomberg)

Life Is a Party in Japan for All Wrong Reasons

William Pesek

(コメント) 福田首相が決まったとき,「崖っぷち内閣」と称することの中身に疑問を感じました.なるほど,自民党にとってはそうでしょう.しかし,日本国民をどこに導くというのですか? ・・・崖っぷち? 国民や投資家に支持されるだろうか?

「まず何よりも,私は自民党をよみがえらせたい.国民の信頼を得るために,政策を着実に実行する政党に生まれ変わることだ.」 首相としては,とWilliam Pesekは要求します.

「まず何よりも,経済成長の利益を国民に広く行き渡らせること,日本の膨大な債務を減らすこと,生産性を高めること,そして,人口の減少を食い止め,問題が続発する年金制度を改革することである.」

アメリカの日本政治に対する不満は,その一党独裁制にあります.自民党だけが政権を担当して,弱者や敗者に財政的な補償を約束し,市場をゆがめてきた.財政赤字に無頓着な体質が根づいてしまった.自民党だけでは,日本は回復できない,と.

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The Economist September 15th 2007

Why they should stay

Japan: The trouble with one-party rule

America’s economy: It ain’t easy

(コメント) イラク政策の転換があるか,というペトレイアス将軍の証言.安倍首相の辞任に見られる,日本の政治システム全体に対する根深い不信・嫌悪.インフレから金融パニックに目標を取り換えたアメリカ金融政策.2週間前に世界が関心を寄せた驚きの展開です.2週間経って,日本についての関心だけが失われました.


The Economist September 15th 2007

Cambodia: Innocence for sale

The border: Free trade and fireballs

Magnets for money: A special report on financial centres

Currencies: Another shoe to drop

(コメント) カンボジアは貧しい国だと思っていたのですが,その国にもベトナム人が少数いて,差別されている,ということです.彼らの多くは女性が売春して家族を養いました.近年,アジアでは処女の売買が盛んになり,プノンペンではベトナム系の娼窟が政府の取り締まりに遭っています.以前は公然と行われた売春や少女の売買が地下にもぐって,さらに把握することも難しくなったといいます.

NAFTAにより,メキシコのトラック輸送がアメリカやカナダにも乗り込むのは時間の問題でした.しかし,最近の政治的な流れは逆向きです.私はこの点で,労働基準や環境保護を理由にメキシコのトラックを締め出すことが目的になるとしたら,賛成できません.もっと良い解決策はないのでしょうか?

特集記事は金融センターの紹介です.何という魅力もないように思いましたが,世界都市の描写が最後に出てきます.極端な貧富の差も含めて,金融センターの功罪を考えます.