IPEの果樹園2007

今週のReview

7/30-8/4

IPEの風

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* 感嘆キー・ワード **********************

平等主義の誤り, 選挙における貧困問題, 住宅金融の失敗, 自動車をやめる, プーチン主義, 韓国人の布教活動と拉致問題, ジンバブエの破滅

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


Asia Times Online, Jul 20, 2007

Bridging the globalism-nationalism gap

By Max Fraad Wolff

この数年で難問が増えた.グローバリゼーションが経済の統合化と相互依存をもたらしているのに,政治情勢はバラバラなままである.

選挙民はますますナショナリスティックになっている.金融取引や企業の国境を超える活動が増える中で,政府には緊張が高まり,関税による威嚇が増えている.経済統合を規制する次の交渉にも合意できない.WTOのドーハ・ラウンドは後退し,行き詰まり,憎しみをもたらした.政治的な理解と議論は,ますます狭隘で,敵対的になっている.どこかで,国際政治と国際経済とは収束しなければなりません.

アメリカは根本的に他の世界に,すなわち,その金融と貿易の構造に依拠している.アメリカは世界貯蓄の64%を輸入し,ますます多くの食料,エネルギー,事務用機器,衣服,おもちゃ,自動車,その他の投入財を輸入している.外国の国民が,資金が,企業が,政府が,文字通り,アメリカの家計や企業,政府に融資している.現在,アメリカ財務省証券の52%が外国人によって所有されている.市場で売買される財務省証券の35%が外国政府機関によって所有される.アメリカの社債の20%,株式の14%も外国の所有である.

しかし,アメリカにおける政治論争からはそんなことを理解できない.アメリカは相互依存や悪影響を無視して,急速に,政治的な政策・声明・行動によって他国を激しく攻撃する国になっている.ロシアとの緊張関係はミニ冷戦とみなされている.アメリカの投資ファンドやヘッジ・ファンドが外国の成長機会に投資することを勧めているのに,中東や東アジアの企業によるアメリカ企業の買収は阻止される.中国製品への大幅な関税引き上げが議会で繰り返し議論されている.中国との貿易戦争を唱える者もいる.

しかし,アメリカの財やサービスは,ますますその多くが輸入されている.アメリカ労働者の外国企業による雇用,輸出産業における雇用は増えている.民間雇用の5%以上がアメリカで活動する多国籍企業によるものだ.外国投資信託への投資はこの何年も高水準である.主要なアメリカ企業がますます外国で営業し,その活動を海外に移している.

アメリカの多国籍企業とその子会社は2004年に3100万人以上を雇用した.企業収益のうち外国から得られるものがGDPよりも急速に増えている.アメリカ企業が外国で得た収入は2007年第一四半期で2920億ドルである.アメリカの指導的な政治家や評論家,ビジネス・リーダーは自由貿易と市場の効率性を世界に向けて訴えている.

経済的な未来は世界中を結び付けている.しかし政治は,世論調査が示すように,政策対立や海外事情について不信,意見の対立がある.その他の世界に対するアメリカの姿勢は,怒りに満ちた告発,離脱の訴え,ますます強まる孤立主義である.

アメリカはますます多くの多くの物資を買い,資金を借り,アメリカの富が彼らの資産に注がれている.しかしながら,彼らは信用されていない.これはアメリカだけの現象ではない.憤懣と「一人でやろう」とする意識はアメリカで,それは主導部門で最善の選択だという感覚はロシアで,国民企業を優先する感覚はフランスで,外国の投資ファンドに対して自国企業を守る意識はドイツで,広まっている.アメリカ,特にその外交に対する外国の意識は強く否定的である.アメリカ人は伝統的な同盟国や新興の地域大国に対する疑いや敵意を持っており,アメリカに対する外国の疑いと,相互に強めあっている.

ラテンアメリカでは資源や選挙をめぐる論争が激しくなり,抗議デモが起きている.ロシア人の怒りや疑念は中央政府の権力集中をもたらす.中国の台頭を恐れる日本人はアメリカにすり寄る.インドとパキスタンは互いを恐れ,そのさまざまな宗派は西洋化や内部対立を恐れる.こうしたすべてのことが経済的な相互依存の高まりにともない,生じている.

アメリカ商務省の副長官によれば,アメリカの清掃・補修における雇用の34%,医療の12%,建設の26%,農業労働の44%,コンピュータ・サイエンスや数学の22%は移民労働者が占めている.移民による経済統合は高まっている.しかし,政治論争や政策はこのことを無視している.2000-05年にアメリカに来た移民労働者は推定800万人である.それに伴う政治統合は進んでいない.アメリカの政策や理解は単に現実を見ていない.移民に関する経済学と政治学は遠く隔たっている.

工業化された世界に,アウトソーシングに関する強い不満が広がっている.それは当然な関心であるが,誇張されている.政治家や法律が国内生産を保護するよう論争は求めている.こうした論争では企業や家計,機関投資家による発展途上諸国への投資が退けられる.

世界人口の85%,人口増加のすべてが工業化された成熟経済の外で起きている.将来の潜在的な成長力はそこにある.雇用や,デザイン,金融,生産,市場,広告,嗜好が彼らによって変化し,世界経済に大きな変化をもたらす.要するに,アウトソーシングもインソーシングもますます増えるだろう.保護主義の壁を倒して,開放性を高めるべきだ.我々の経済は統合に依拠するが,政治はそれを脅威とみなし,それを許すべきかどうかで論争している.われわれはこの展開に従って経済を作り変える.それに挑戦する者はいない.しかし,深刻な不満がある.

このギャップを埋める必要がある.

FT July 22 2007

Backlash in rich nations against globalisation

By Chris Giles in London

NYT July 25, 2007

Taxes in the Global Economy

The Wall Street Journal, 27 July 2007

Globalization Study Moves Past Rhetoric

David Wessel

(コメント) グローバリゼーションやそれがもたらす不平等についての論争が,豊かな諸国で重要な政治的転換をもたらしつつあります.日本もその一部なのです.

また,NYTは政府の姿勢を批判します.「アメリカ人は貿易やグローバリゼーションの影響と格闘しているのだから,政府がアメリカの多国籍企業とその株主たちにグローバリゼーションによる利益から公正な税負担を支払わせるように,努力するべきだろう.残念ながら,政策担当者は逆に向かっている.多国籍企業の重役たちに過度の免税措置を与え,労働者にはそれを与えないから,富が少数の者に集中するのを助けている.」

アメリカのオーウェル的な法律American Jobs Creation Actによって2004年に利潤の国内送金を促すため行われた免税措置は,最高で85%まで,国内の税率が免除され,その免税額は900億ドルに達しました.他方,免税された企業は,雇用を増やすどころか,ますます活発に労働者をレイオフしています.

The Wall Street Journalの記事も伝えています.金融部門の主要企業が集まるthe Financial Services Forumによる報告書も,グローバリゼーションの利益が広く行き渡っていないことを認めました.利益は少数に集中し,雇用はますます不安定になっている,と.グローバリゼーションへの反動を回避するために,ビジネスや政府はその利益を分散し,経済変化に苦しむものを助けなければなりません.

しかし,報告書に書くことと,それに同意して利益の一部をあきらめることとは別です.


FT July 19 2007

Summon the ghost of Lloyd George

By Samuel Brittan

所得や富が平等な状態は,達成できないし,望ましいものでもない.

それにもかかわらず,平等主義者たちは不平等を研究することで,実際には再分配など考えてもいないのに,研究者としての得点を稼ぐ.すべての社会科学は価値判断から自由ではない.

Rowntree studyPoverty, Wealth and Place in Britain, 1968-2005)によれば,1970年代に減少した“breadline poor”が,その後増大した.しかし,富裕層や最下層の割合は変動しており,一定の傾向は示していない.OECDの研究では,1980年以来,アメリカやイギリスで不平等が強まり,フランスや日本ではそうでなかった,と示している.

ゴールドマン・サックスの分析では,最上位の分配が増えたのは,国民所得に占める賃金の分配が減ったからであり,それは技術変化や賃金に関するインド・中国との競争がその理由である,という.富裕層がその他の人々の所得から絞り取った,という説明は魅力的だが,適用できない.マイクロソフト社は誰から所得を奪ったというのか?

ジョン・ロールズに従い,われわれは社会のどの地位にあるかを無視して,判断しなければならない.富裕層から奪っても,貧しい者はほとんど何も得られない,と反論されたものだが,今ではそうも言っておれない.ただし,そのような移転はわずかでしかないし,価格統制や管理は「金の卵を産む鶏」を殺してしまう恐れがある.

それにもかかわらず,グローバリゼーションに対してアメリカ議会が使いたがるような,もっと愚かな保護政策より,慎重に検討した財政的な再分配を行う方が望ましい.それは例えば,動機を損なわないような,土地への課税である.かつて二人の偉大な非社会主義者,ウィンストン・チャーチルやロイド・ジョージが第一次大戦に際して擁護したように.


Megan McArdle Harry Potter: the economics The Guardian Friday July 20, 2007

Peter Aspden Harry Potter and the inescapable call of the mid-life crisis FT July 20 2007

Will Hutton Harry Potter and the secret of success The Observer Sunday July 22, 2007

Khaled Diab Our economic alchemy The Guardian Friday July 27, 2007

(コメント) どんなに面白い作品でも,連作になると質が落ちるし,売れるからもっと話を伸ばそう,というのが動機になれば,話は互いに矛盾し,つじつま合わせのような,まったく陳腐な,繰り返しが目立つようになると思います.それがパターンとして受け入れられる場合を除いて.しかし,ハリー・ポッターは本当に死んだのか? シャーロック・ホームズは実は死んでいなかった.ハリーも数年したらよみがえるかもしれない?

それはともかく,小説の成功として桁外れのハリー・ポッターをどう考えたらよいのか? JK Rowlingは,多分,ビートルズやベッカムと並ぶ,グローバリゼーションで儲けた大富豪の一人であることは間違いありません.これもウィンドウズであり,アウトソーシングであり,ソフト・パワーです.たった一人のディズニー・ランド.英語と,英語圏の世界に対するあこがれは,世界中に洪水となって物語を広めました.各地の昔話や言い伝え,お化けや恐怖,独特の人間関係は,その深い意味を失いつつあるでしょう.インディオの言葉のように.

4億冊の小説を売るとはどういうことか? 子供向けの魔術の本が,聖書や毛沢東語録と,何か共通しているのか? ポッターの成功のカギは,もちろん,アメリカ市場,映画化,インターネット,などです.人々は,一部の人たちが「良い」と薦める本をますます読みます.その内容が何であれ,利益を生むものは褒められるのです.現実の宗教戦争や暗黒時代のレトリックに染まる国際政治も,子どもたちにハリーの活躍を待望させたでしょう.その影響は,今や,中国や発展途上諸国における中産階級形成によっても支持されたのです.

彼女の「賢者の石」は何か? あらゆる金属が黄金に変わる.貧しい未婚の母が,10年で,世界の大富豪にランクインした.そして,世界の小説家にも厳しいグローバル競争と貧富の格差拡大を普及させた.世界はますます,大富豪のための繁殖システムに変わってしまいました.ハリーの魔法も暴走します.

この魔法を逃れる道はあるか? ハーヴァードのHoward Gardener Foreign Policyに提言したそうです.法則1:その社会の最も高額の収入は,平均所得の100倍を超えてはならない.法則2:その50倍を超える資産を蓄積することは許されない.どちらについても,上限を超えた部分は寄付するか,税金として提供する.

問題は,どのようにこの法則を守らせるか? です.


The Japan Times: Friday, July 20, 2007

That hazy, crazy bubbly feel of liquidity

By ROBERT J. SHILLER

(コメント) 「流動性の洪水だ.」「資産価格の上昇は続く.」と言われます.しかし,それは本当でしょうか?

中央銀行が通貨供給を増やしたのであれば,すべての財の価格が上昇して,インフレになるはずです.その兆候はありませんし,金融政策は引き締められています.また,民間貯蓄が大幅に投資に向かうようになった,という「世界貯蓄過剰」説も支持されません.

実際は,金融手段やヘッジ技術の発達で,資産価格が上昇すればそれに応じて信用も拡大する,というバブルの自己正当化が起きているのではないか,というわけです.そして,人々はいつか,この価格水準が現実的ではない,と判断を変更するでしょう.

かつて,バブルが崩壊する前に,いつも,「流動性の洪水」が語られたそうです.


WP Friday, July 20, 2007

Making The Poor Visible

By E. J. Dionne Jr.

LAT July 23, 2007

Reform, the FDR way

By Amity Shlaes

(コメント) ジョン・エドワードは民主党の大統領候補として3位にとどまっているが,しかしすでにアメリカ政治を変えた.彼は「貧困」を大統領選挙のテーマとして確立したのです.

エドワードは,高額のヘアカット,大邸宅,ヘッジ・ファンドから受け取った50万ドル,で批判されています.しかし,民主党が貧困層を重視する姿勢を隠す傾向を翻したのです.

その傾向は1980年代から顕著でした.選挙に勝つためには中産階級に支持されなければなりません.彼らは1970年代のジョンソン(LBJ)大統領が目指した「偉大な社会」を失敗だったと考え,貧困対策を自分たちの利害に反する,と見なすからです.

しかし,中間層の支持を得ることと,貧困対策を唱えることとは,政治的に矛盾するわけではありません.民主党はそれを両方とも重視するべきでした.エドワードはLBJが行った社会政策を称え,その美点を強調しました.

当時,われわれは「貧困との戦い」に敗北した,とエドワードは言います.しかしLBJの時代は多くの正しいことを行った.市民権を守る法律,メディケア,メディケイド,フード・スタンプ,貧しい者のための学校,など.貧困層は半減したのです.

政府が成功することを説得できなければ,どのような社会改良も支持されません.過去の改革を反省して,エドワードは「報酬の改善,機会の提供,家族の重視」を唱えます.またオバマは,母子家庭や犯罪の蔓延が貧困を悪化させている,と訴えます.彼らの演説から,新しい貧困対策が登場しつつあります.

それは経済条件を変えるだけでなく,個人の責任,特に親の在り方を変えようとします.貧困層の社会的な孤立を解消し,彼らの報酬を改善すること,特に貧しい家庭の子供をその誕生期から支援すること.これまで行き止まりの底辺労働だと見なされていた職場を,上昇のための機会につながる場へと変えること.

貧しい子供たちのためにこそ,優秀な教師を集めてはどうか? 富裕層だけでなく,貧困層にも学校を変わるバウチャーを与えてはどうか? アメリカ政治は,貧困対策に新しいアイデアを持ち込み,制度の革新を唱え始めています.

Shlaesの論説も,民主党による議会(と次期大統領?)がルーズベルトの大恐慌に立ち向かった姿勢に学ぶことを求めています.

The Guardian Wednesday July 25, 2007

Barack Obama: the new JFK

Theodore Sorensen

(コメント) オバマはJ.F.ケネディーなのか? その協力者であったSorensenは,誰よりもこの問いに答える資格のある人物です.そして,彼の答えは,YES.

50年を超えて,彼らがともに従ったのは,「恐怖の政治」ではなく「希望の政治」であった,と.だから若者たちが無償で彼らの選挙運動を手伝い,その喜びを分かち合ったのです.


Asia Times Online, Jul 21, 2007

China's unbalanced economic engine

By Zhou Jiangong

FT July 20 2007

China lifts rates, cuts tax on savings

By Mure Dickie in Beijing

FT July 23 2007

China’s gung-ho economy exacts a heavy toll

By Jamil Anderlini and Mure Dickie

FT July 24 2007

China should beware of a backlash

(コメント) 中国経済の過熱は,投資と輸出によるものです.国民の消費を増やすことで,成長を維持しながら対外不均衡も抑制することが求められています.しかし,実際には政府の税収や企業の利潤が増えるばかりで,所得格差が拡大し,消費はそれほど伸びていません.

「名目で,労働者の総所得は1993年以来,年に15%増えてきた.しかし政府の収入や企業の利潤はもっと急激に増大している.1993年以来,政府収入は年率で20%,GDP成長率が倍増した.予算外の収入も増えて,政府は国民所得の30%以上を得ている.」政府系企業は企業部門でも特に優秀な分野を押さえている.

景気過熱とインフレ加速への懸念から,中国は金利を引き上げるようです.しかし,その程度の金利負担で企業が投資をやめるでしょうか? もし貯蓄が促されるだけなら,ますます内外不均衡が強まるわけです.政府のあまりに慎重な政策転換は市場の過熱を冷ますには程遠い,とFTは書きます.

Jamil Anderlini and Mure Dickieが紹介するように,急速な成長によって犠牲にされた自然や生命,そして無視された人々の生活を知ることは痛みを伴います.製紙工場の傍で魚を取っていた漁師は,川が汚染されて魚はすべて死に絶え,畑でも農作物が採れなくなった.住民の多くが病気に苦しんでいる,と訴えます.

急速に工業化の進む農村では,毎年,数1千人が死亡し,数100万人が病気になっている,と記事は推測します.主要河川で,水質の悪化が深刻です.胡錦涛主席は,飲み水の確保を国家の最優先プロジェクトにしました.

バークレー銀行がオランダのABNアムロ銀行を買収する際に,環境破壊が国際的な非難を浴びた三峡ダムへの融資を処分することが問題になっているようです.あるいは,中国が政府の投資ファンドにより外国の企業を買収したり,外国企業が中国で活躍する際の環境に関する行動をEUは求めます.


July 20 (Bloomberg)

Hypocrisy Reigns in Anti-Takeover Defenses

Michael R. Sesit

(コメント) 国際収支不均衡の融資を担ってきた諸国に,国際の低金利を超える投資機会を求めて政府系の投資ファンドを増やす動きがあります.しかし,それはどちらの側にも,投資戦略に関する政府介入が市場で増えることを意味しています.民間の投資ファンドを介した場合でも,問題は残るでしょう.政府は投資保護主義を好み,あるいは,戦略部門への外国人投資を差別します.その規模は莫大であり,先進国の主要銀行でさえ買収できます.


BBC 2007/07/21

Dniester conflict frozen after 15 years

Petru Clej

(コメント) モルドバの一地方であるTrans-Dniesterをめぐるロシアとの紛争が続いています.それは旧ソ連圏でも西寄りの,人口555000人を擁する地域でした.ウクライナやルーマニアにも関係が深い地域です.この地域は他の紛争地域と異なってロシア人の独立運動ではありません.人口構成はモルドバ人,ロシア人,ウクライナ人がほぼ均衡しています.モルドバは武力統一を行わないことを合意していますが,他方で,ルーマニア人の流入を心配しています.

1992年にモルドバがロシアから独立したときに内戦を生じています.Trans-Dniesterは独立を目指し,それをルーマニアとの統合とみなして反対する勢力とが衝突しました.この地域は1924年にスターリンが作りました.今も,ロシア周辺における国境・軍事紛争を解決する力はロシアだけが握っています.それにもかかわらず,NATO諸国と条約を結ぶとか,ロシア軍の撤退を要求したことに,プーチンは激怒しました.

ロシアは内戦に介入し,ロシア以外のいかなる国もその安定化には成功しないことを認めるまで,武器流入を放置(支援)し続けるでしょう.


BG July 22, 2007

The world after George W. Bush

(コメント) 穏健な目標を掲げて大統領になったにも関わらず,ブッシュ氏は9.11の対応においてアメリカ外交の過去の原則を捨ててしまいました.そしてチェイニー副大統領の助言に従い,アメリカの力を過信し,一方的に行使したのです.多くの間違った外交政策により,ブッシュ政権は危険な世界を後継者に残します.イラクやアルカイダへの政策失敗を受けて,ブッシュ政権はイランにも,ロシアにも,敵対的な行動を取ることを控えました.イラク戦争の目的を完全に放棄したくないから,イラクからの撤退を自分では行いたくないのであろう,と論説は指摘します.

LAT July 22, 2007

Iraq isn't Vietnam, Henry

By Max Boot

(コメント) キッシンジャーがベトナム戦争の和平を実現してノーベル平和賞を獲得した外交的手法に拠って,アメリカはイラク撤退後の破局を回避できるでしょうか?

しかし,キッシンジャーは嘘つきです.その自己正当化に満ちた追憶がイラク撤退の参考にはならない,とBootは主張します.特に,キッシンジャーと周恩来の会談内容から,米中国交回復が北ベトナムを外交的に追い込んだ決め手になった,という主張は間違っているし,今のイラクに適用できません.軍事的解決から外交的解決に,つまり,チェイニーからキッシンジャーへ,という発想は間違いです.


BG July 22, 2007

The mortgage mess

By Mark Zandi

BG July 22, 2007

Subprime lending misconceptions

By Kevin M. Cuffexecutive director of the Massachusetts Mortgage Bankers Association and chairman of the Massachusetts Fair Lending Coordinating Committee

(コメント) 住宅価格が予想外に下落し,あるいは年金が増加せずに,アメリカは金融不安を生じ,世界金融危機にも及ぶ可能性があるわけです.かつて称賛された「証券化」の欠陥が危機の背景です.年金の積立と住宅ローンとを組み合わせ,しかもさまざまなリスクと利回りという味付けで,投資として仲介するビジネスは儲かった.年金は年金ではなく,住宅購入も住宅購入ではなく,すべてリスクとリターンの組み合わせなのです.

それは合理的に分散されたリスクと,すばらしい利益を,双方に約束しました.銀行はますます大きな融資を行い,投資家はそれを証券化して購入できたのです.それゆえ各地で住宅価格は上昇し,誰もが大きな利益を得て幸せでした.

それが転換したのは2004年にFRBが金利を引き上げてからでした.高価格で高金利の住宅を証券化しても売れなくなりました.銀行は儲けがなくなると新しい商売を考えます.これまで基準以下であった住宅や借主に「証券化」ビジネスを拡大したのです.それは問題のある商売でしたから,さっさと儲けて逃げようとする投機家が集まってきたようです.しかも融資や証券化を促すために,最初の返済額は抑えられていました.返済に応じるには追加の融資を得るか,値上がりした住宅を売ればよい,と考えたわけです.

結局,住宅価格は下落し始め,返済も転売もできなくなり,住民たちは追い出され,銀行が売れるはずのない住宅を持て余して,不良債権に苦しむという現実が残りました.低所得者を政府系の金融機関で救済すれば済む,という話ではないわけです.

BGは考えます.1.政府は借り手や貸し手,そして投資銀行を救済してはならない.それは彼らのリスク・ゲームを奨励するだけだ.2.住宅所有者が住宅に住み続けられる解決策を見出すように,銀行や投資家に圧力をかけよ.3.情報を開示し,いい加減な情報でゲームに参加する物に警告するべきだ.4.金融機関の破たんが世界金融システムにまで波及する危険を考慮して,対応を準備しておくべきだ.

他方,Cuff は,この問題がクリントン政権の住宅都市開発局(HUDHenry Cisneros長官のときに始まった,と主張します.それは貧困層にもアメリカン・ドリームを,すなわち,持家を可能にするという政治的なプロジェクトでした.


LAT July 22, 2007

No cars on Wilshire

Michael Balter

LAT July 23, 2007

California dreamin' 2020

By Rick Cole

(コメント) 住宅を解消するために,the Wilshire Boulevard Purple Lineをサンタモニカまで延長する? それではだめだ.Balterは,自動車を追放せよ,そして高速の公共交通と,自転車によって再編するべきだ,と主張します.

「社会批評家であるが"Utopian Essays and Practical Proposals"においてマンハッタンからすべての民間自動車を締め出そうと提案したけれど,それはロサンジェルスの一角から自動車を追い出すより,さらに野心的な提案だ.彼は市長候補がその計画を掲げて立候補してほしいと考えた.『最初の立候補では敗北するだろう』とGoodmanは書く.『彼は極端で,無責任な野心家とみなされるから.しかし,二度目の選挙で彼は勝利する.人々がその計画を真剣に考え,それには意味がある,と理解するだろうから.』」

日本でも,各地の主要都市で交通システムを再編してほしいです.それこそ,地域の政治的意志と能力を試すことになるでしょう.

住環境というだけでなく,もちろん環境問題に応えるためにも,カリフォルニアは自動車への依存と都市のスプロール現象を克服しなければなりません.ミュージシャンたちが呼びかけて,電球を外したり,携帯電話のチャージャーをプラグから抜いたりするだけでは解決しません.

都市の姿や生活スタイルを変えるのは,決して初めての試みではない,とCole は指摘します.1893年にもシカゴではシティ・ビューティフル運動が展開されました.さまざまな街で,人々は開発と自然,伝統を組み合わせるように運動を展開したのです.いつでも地球的な課題に真摯に取り組むことのできる若者でありたい,と.


NYT July 23, 2007

Birth Without the Bother?

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) インドのアウトソーシングは,いよいよ,子宮でも始まったのか? 出産という機能も,インターネットで注文すればインドで受注され,赤ん坊が届くようになる・・・

それは不妊治療の末に,子どものいない夫婦が見出す希望です.また,インドの女性には報酬を得る新しい機会を示します.その際,遺伝子情報は治療にも利用され,事前に遺伝子の欠陥をチェックできるし,男女の産み分けもできる.すべては技術に対する支払が行われるならビジネスになり,普及するでしょう.

しかし,人をスマートにしたり,敬虔にしたり,あるいは,障害者を増やしたり減らしたりできる,というのは,禁止するべきだ,とKRISTOFは主張します.


NYT July 23, 2007

The French Connections

By PAUL KRUGMAN

(コメント) 2001年にはアメリカが先行していたインターネット接続も,2006年にはブロードバンドが支配的となり,それにもかかわらずブッシュ政権が取り込んだ業界団体の利益は革新を阻止してしまいました.社会保障制度に限らず,今ではインターネットでも,アメリカはフランスより遅れています.アメリカでは権力による特殊利益の擁護と,自由市場イデオロギーが,実際の革新と競争を歪めているようです.


FT July 23 2007

A misdiagnosis of Germany's malaise

By Ralph Atkins in Frankfurt

FT July 24 2007

Economic truths behind Germany’s recovery

By Michael Burda

(コメント) ドイツはもはや「ヨーロッパの病人」ではなく,輸出でも成長率でも,株式相場でも,好成績を上げています.2003年に『ドイツは救われるか?』という研究を出版したIfo経済研究所の悲観論者Hans-Werner Sinnは,硬い殻に覆われた,高コストの,ビスマルク的福祉システムを引きずるドイツ経済を,所詮,さまざまな部品の最終組み立て地でしかない,と批判していました.東欧の低コスト生産拠点と競争することを恐れて,大企業はドイツに投資することを控えるようになっていました.・・・ドイツ経済は蘇えったのか?

Sinnは,ドイツ経済のハイテク企業を過小評価したようです.また,ドイツの福祉システムや労働市場の改革が成功すれば,生産性が大きく改善する,とも考えていなかったでしょう.もしフィンランドがEUに加盟していなければ,ノキアではなくジーメンスが携帯電話市場を席巻しただろうに,と考えました.しかし,より大きな市場で比較優位を探し,フィンランドの改革からも学ぶことができる,という点が大切です.たとえば,急速な高齢化に対して,高齢者がより長く職場にとどまるような工夫を,ドイツはフィンランドから学びました.

Burdaも,ドイツ経済の成功は株式市場に予想された通りの展開をたどり,消費を刺激し,雇用を増やしつつある,と主張し,世界経済の成長にただ乗りしただけ,という非難は間違いで,サプライ・サイドの改革によってそれを獲得したことを強調します.


WP Tuesday, July 24, 2007

Trickle-Down Lawlessness

By Anne Applebaum

最後に会ったとき,友人のニキータはやつれ,疲れているようだった.彼は歴史家であるが,近頃は歴史資料を探す時間がなかった.むしろモスクワ市当局と争うことに時間を取られていたのだ.市は彼の住む国有アパートから住民を追い出し,開発業者に売却したかったのだろう.彼は長年住んだアパートを出る気でいたが,法律に従えば,市は同じモスクワ中心部に新しいアパートを見つけなければならなかった.そんなものはなかったが.

住民の中にはあきらめたり,モスクワを出ていく者もいた.しかしニキータは法律を信じていた.彼は残った住民を組織して権利を守るために闘った.その結果は,窓が壊されて,何度か泥棒が入った.国有アパートであるのに.

同じ日,ニキータはアパートのトラブルを私に話したが,私は他の友達,アッラからも,息子が耐え難い悲劇にあって心臓まひで死んだ,という話を聞いた.

銀行のマネージャーであった彼のガールフレンドが誘拐されたのだ.彼は何カ月も彼女の解放を求めて交渉した.しかし警察は少しも助けてくれなかった.彼にとってその緊張は大きすぎたのだ.心臓病にかかったこともない彼が,30代で心臓まひになり,死亡した.ニキータと違って,アッラはもう法律を信じていない.

ニキータやアッラの苦悩は特別なものではない.モスクワに1週間いるだけで,私ももっと恐ろしい話を聞いた.友人たちは,その子供や知人たちも,最近,奇怪な事件や,カフカ的な官僚制の迷路,重大な詐欺にあっていた.ある人は,近くの公園で樹木が秘密裏に伐採されているのを見た.私も,深夜,ホテルの部屋から財布を盗まれた.明らかに内部の犯行だ.

こうした話は政治と何の関係もない.しかし,それは最近のロシアについて何事かを伝えている.プーチン主義は外交政策の問題だけではない.彼は気まぐれに軍備削減条約を破り,近隣の小国を脅し,政敵を始末し,冷戦のレトリックを持ち出して西側を困らせる.しかし,彼の国に広まる無法状態は,ふつうの市民たちにとって一層の悪をもたらす.

もちろんすべてのロシア人が苦しんでいるのではない.統計を見れば,GDP,株価,成長率,ロシア経済の急速な回復が分かる.おそらく,ジュネーブやロンドンに邸宅を建てる石油富豪たちが,石油・天然ガスの価格上昇から利益を得て,経済ブームを起こしている.また,1990年代には遅れるのが当たり前だった年金が時期を守って支払われ,人々を喜ばせた.しかし,明らかに,ロシア経済の成長から利益を得ていないグループがいる.私の多くの友人たち,医者,ジャーナリスト,教師,歴史化,企業家,などだ.もしもっと望ましい時期であれば,彼らは中産階級になったはずの人たちだ.

彼らが共産主義崩壊後の社会に生きていることは,その不幸を説明しない.ワルシャワの友人たちは同じような地位にあるが,ポーランドを運営する連立政権は無秩序であるし,政治腐敗は市幹部にも広がっているが,それでも彼らは繁栄している.途方もない金持ちではないが,その子供たちは外国で勉強し,住宅にはIKEAの本棚がある.彼らは日常生活について恐ろしい話など繰り返して聞かない.彼らは本物の中産階級であり,そのことを気に入っている.

すべての首相が天才ではないが,守らねばならない基本的条件がある.正直な官僚を増やすこと.公共の医療や治安に投資すること.犯罪集団と国家機構とを分離すること.そして,もちろん,司法制度を機能させること.

こうした要素が無いことにより,プーチン人気は説明できる.ロシア人はだれかに責任ある地位を委ねたいのだ.しかしまた,プーチン主義は現状維持につながる.犯罪や無法さは中産階級になれない人々の深刻な問題であるが,権力をもつ者にとっては都合がよいのだ.


FT July 24 2007

Treat illegal immigrants decently

By Jagdish Bhagwati

(コメント) ブッシュ氏の支持した移民法改正は失敗しました.もっとも深刻な欠陥は,改正案のすべてのアイデアがすでに試みられて失敗したものであったことです.国境の管理は,よほど非人間的な扱いを認めない限り成功しません.それは禁酒法時代に密造された酒をマシンガンで破壊したようなことだ,と指摘し,同じ人間に対してできるはずがない,とBhagwatiは考えます.一時雇用制度は有益なものだったが,規模を削減されたため,失敗するはずでした.

Bhagwatiは,完全な市民権を求める法改正が実現しなくとも,現在の非合法移民の状態ははるかに改善されている,と指摘し,それが完全な市民と等しいレベルにまで高めることも可能だ,と主張します.移民の受け入れに積極的な地方政府や町では,それが実現できるでしょう.アメリカ人は,自分たちが移民の国であることを肯定し,人権を擁護する姿勢を誇りにするからです.


WP Wednesday, July 25, 2007

Prius Politics

By Robert J. Samuelson

BG July 27, 2007

The new, evolved capitalism

By William Shutkin

(コメント) トヨタのプリウスはよく売れる.トウモロコシもエタノール燃料の利用が増えるから価格が上がる.それは地球環境を守るわけではないし,経済に良いわけでもなかった.しかし,トヨタは儲かり,カリフォルニア知事が喜び,ジャーナリズムが騒ぎ,農家も得をしました.・・・政治としては,それで十分です.

本当に地球環境を守りたいなら,a)燃費を改善する,b)ガソリン税を引き上げる,c)大型住宅への補助金を廃止する,などが望ましい.しかし,政治家はだれも不人気な政策を望まない.

他方,Shutkinの楽観論は,超富裕層の慈善事業とアメリカ資本主義のダイナミズムを組み合わせて,環境保護ビジネスを起こす「第4セクター」の創造する,というものです.


WP Wednesday, July 25, 2007

Asia's Apostles

By Suki Kim

(コメント) アフガニスタンで韓国人のボランティアが23人も人質になった,というニュースに驚いた以上に,この論説に驚きました.伝統的な仏教や儒教の信仰に代って,キリスト教が国民の半数を占めるようになった背景について,私はほとんど何も知りませんでした.

この論説によれば,韓国でキリスト教が広まったのは,カトリックが18世紀後半,プロテスタントはさらにその1世紀後でした.フィリピンと違って,韓国はキリスト教国に植民地化されたことがなく,多くの学者は韓国の独立を守るという情熱に駆られて,日本でも中国でもない,キリスト教信仰に頼った,と指摘します.

筆者の儒教を尊んだ祖父は,キリスト教を悪魔のように嫌った,と書いています.韓国の経済成長とともに,各宗派は競い合って布教を強め,その際に,世界各地にミッションを派遣していることが宣伝になった,と指摘します.遠くの,もっとも改宗が難しい,より危険な土地でキリスト教を布教する行為を,その宗派の信仰の強さを証明するものとして利用したのです.

韓国人は多くの戦闘地域で殺害されています.誘拐され,首を切り落とされました.子供を含む1000人もの韓国人がカブールで入国を阻まれたそうです.改宗を禁止しているアフガニスタンに布教することを,キリスト教会は説明しません.ノムヒョン大統領自身もカトリックで,渡航禁止にしなかったことが論争になっています.しかし,「誰も,かつて儒教の静寂に満たされていたこの国が,世界で最も過激な福音主義者の国家に変わってしまったことを疑問に思わない.」


FT July 25 2007

Japan will never go nuclear-free

By David Pilling

(コメント) 柏崎原発の地震による火災や破損に関して,Pillingは二つの疑問を示しています.1.原発は民間が営利活動として運営しています.だからこそ,その安全基準を政府が定めて,厳しく検査しているのか? 2.そもそも地震の多い島国に世界の原発の10分の1が集中しなければならないのか?

日本政府は,バブル破たんと金融危機に関して,同じような疑問に応えられませんでした.事実を隠して,損失を小さく見せるという操作を,民間も政府も繰り返したのです.原発事故についても同じではないのか? IMFやIAEA,あるいは,アメリカや周辺諸国が国際調査団を派遣する方がよいのではないか?

他方,Pillingは日本政府が原発を放棄しないことに同情的です.日本には資源がない,という抜きがたい不安を,諸外国は理解しなければならない,と.もし食糧やエネルギーを封鎖されたら,日本人は生きていけない,という恐怖が政策を支配しています.それで本当に良いのでしょうか?

Interactive timeline: Abe’s sinking popularity FT July 26 2007

Raphael Minder East Asia faces carry trade risk FT July 26 2007

Japan: The gift of the gaffe The Guardian Friday July 27, 2007

Michael Mackenzie and Saskia Scholtes and Paul J Davies ‘Wake-up call’ for investors FT July 27 2007

(コメント) その他の点でも,日本は不安によって関心を持たれるだけです.安倍政権が崩壊する不安,円キャリー・トレードと,逆転の不安.

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The Economist July 14th 2007

Can Europe’s recovery last?

Germany’s economy: Back above the bar again

Kosovo’s future: A new battlefield

South Korea’s financial markets: Do as I say, not as I do

(コメント) ヨーロッパの景気回復やドイツの経済成長は,世界景気の回復による循環的なものにすぎないのか? それとも改革が成功したのか? ユーロ圏内ではサルコジがECBを批判し,経済政策の主権を政府に取り戻すと主張しています.また,ドイツや日本もそうですが,労働市場の改革がもたらした一時的雇用のプラスの側面を経済指標は誇張しているのではないか?

コソボも韓国も,政治危機と経済危機をロシアやアメリカが介入して一時的に鎮静化できたように見えても,実際には,その社会における正当な秩序を認められるかどうかわからない,という問題を示していると思います.


The Economist July 14th 2007

Zimbabwe: How to stay alive when it all runs out

ジンバブエの経済は崩壊している.首都ハラレでは,10人に8人が失業しており,インフレ率は公式の統計でも3700%を超えます.実際はその倍以上である.

中央銀行総裁が敗退したにもかかわらず,ムガベは商店に警察を送り,価格を下げさせた.彼らは損を覚悟で売るしかない.その結果,果てしない行列ができて,人々は店にあるものを何でもつかんだ.工場は生産をやめると接収された.価格を十分に下げなかった多くの商店主が逮捕された.

料理油,石鹸,肉,など,基本的な品も商店の棚から消えてしまい,スーパーには高価な輸入品以外何もない.陳列棚は空っぽで,パンもない.料理油の価格が教師の給与の約3分の1もして,一人二本までしか買えない.女性たちは店から店へ,砂糖や小麦粉などの商品を探して歩くだけで一日が終わる.

ガソリンも輸入されていたが,価格の強制引き下げで町から消えた.警察や兵士の守るスタンドには,80台以上も自動車が長蛇の列である.人々は公共輸送手段に頼るが,それもガソリン不足でめったに走らない.ハラレの大通りには自宅に帰るために自動車を待つ人々がいっぱいである.満員のピックアップ・トラックに,まだ飛び乗る人がいる.朝の出勤だけで何時間もかかる.

闇市では,法外な価格で何でも売っている.ハラレから3キロの貧しい地区で,料理油や砂糖,小麦粉が買えた.しかし,警察の摘発に遭って,ますます地下に潜った.ハラレから20キロ離れた所に住む40歳の女性教師は,月給が190万ジンバブエ・ドルである.それは公定レートでなら7600ドルだが,闇レートでは7ドル60セントの価値しかない.彼女は裏庭で野菜を育て,それだけを食べて生きている.

水も,電気も,ガスも,ほとんど来ない.彼女は子供たちを食べさせ,学校へやるために,お金を借りて物を買い,南アフリカかザンビアへ向かう.そこで物を売るのだ.多くの人がこうした交換で生きる.闇商人は何でも手に入るし,為替レートや銀行口座からの引き出し,資金の移転に通じている.取引には大幅な利益が含まれる.公定レートで外貨を得る者たちは特に大きな利益を得ている.250ジンバブエ・ドルでUSドルを得て,闇市場では25万ジンバブエ・ドルになる.

すでに300万人以上が国外に逃れた.まだ少数のエリートが経済を破壊している.地元の商人は,あと6カ月で政府は崩壊する,という.その後,ジンバブエは回復する,と.