IPEの果樹園2007

今週のReview

1/15-1/20

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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中国は世界を揺るがす, グローバリゼーション, ラテンアメリカの地域統合, 日本論, 社会的移動性, 21世紀の独裁者, 非核化, 赤ちゃん生産

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


FT January 4 2007

How China is rising through the innovation ranks

By Geoff Dyer

(コメント) Geoff Dyerは書きます.中国は,革命思想ではなく,その低価格や市場規模によって世界を震撼させてきました.すなわち,靴下から半導体にまで及ぶ“China price”や,4億4000万台の携帯電話や,世界のセメント消費の40%を占める中国市場です.

しかし,次に中国ショックが及ぶのは,科学・技術開発の分野である,と.R&D投資額で日本を抜いた,特許申請件数でドイツを抜いた,などと言われます.しかし,記事は中国がこのまま技術面でも世界を震撼させる,とは考えません.中国の教育・技術革新システムには特有の問題があるからです.

日本や韓国,台湾がやったように,中国政府も科学や技術に投資を増やしてきました.しかし,投資することが成果をもたらす保証はありません.大学や大企業に技術革新を期待するとしても,それが過大な政府介入や国有企業の形態をとっていること,また,人事に政治的な介入があることは,革新的な科学者・技術者を育てる障害になっています.中国の官僚が腐敗しているのは有名だが,同様に,大学も腐敗している,と関係者は言います.儒教の伝統は教育を重視しますが,同時に政府の権威を強調し,革新を抑えます.また,銀行は国有企業への安全な融資に偏っています.

中国から革新の波が起きるとしたら,それは世界中の優れた多国籍企業が,安価なエンジニアを利用するために,中国に開発拠点を設けていることです.また,アメリカでPhDを取る多くの研究者が,中国のブームに便乗するために帰国して,最新の知識だけでなく,革新に必要な組織や思想を広めていくことです.彼らが成功すればするほど,中国は再び,技術でも,世界を震撼させるでしょう.

FT January 10 2007

Protectionism and pollution, China’s twin pitfalls

By Maria Bartiromo

The American Prospect 01.11.07

The China Syndrome

By Joshua Kurlantzick

YaleGlobal, 11 January 2007

Is Southeast Asia Becoming China’s Playpen?

Sheng Lijun

Asia Times Online, Jan 12, 2007

Beijing gives nod to Hong Kong yuan bonds

By John Ng

Asia Times Online, Jan 12, 2007

The Long March to the rule of law

By Kent Ewing

(コメント) Maria Bartiromoは,中国の成長が,保護主義と環境破壊によって制限される,と考えます.米中戦略会談を受けて,中国政府は今後の重点投資分野を決めた.軍備,エネルギー石油・石油化学,石炭,通信,航空・海運,です.その成功の代償は?

ブッシュ大統領の民主化・体制転換は失敗したことで,中国の成長は,自国のみでなく,他国においても民主化弾圧が成長と矛盾しないことを宣伝するようになります.カンボジア,ベトナム,・・・アフリカ諸国.新しい「チャイナ・シンドローム」です.

軍事力を行使することはなくても,中国の影響は東南アジアのバランス・オブ・パワーを変えてしまいます.冷戦終結で,貿易や投資を中国に奪われてしまう,という不安を受け,シンガポールの姿勢も変化しました.ASEAN−中国サミットは毎年開催されています.アメリカの影響が失われたわけではありませんが,ASEANへの積極的な対応を欠いたまま,中国の影響は強まる一方です.

さらに,中国政府は香港で人民元建の債券発行を認める方針です.香港を中心に,人民元の国際金融市場が整備されるでしょう.香港でおこなわれる3月の選挙を前に,人心を掌握したい,という北京政府の思惑もあるのではないか,とJohn Ngは考えます.香港変換10周年を記念する式典に,胡錦涛主席自身が来る,という話もあるようです.

82人の漁民が池を汚染した周辺の工場と工業開発区を何年も訴えてきた話が紹介されています.それも,彼らの声を聞こうとしない国家環境保護庁,さらに公安部を訴えたのです.裁判所が,漸く,その訴えを聞きました.


Asia Times Online, Jan 5, 2007

Globalization in retreat

By Walden Bello

IHT January 8, 2007

One size does not fit all

Pranab Bardhan

(コメント) Walden Belloはグローバリゼーション反対派です.90年代に流行語となり,「境界が無くなる」,「逆転不可能だ」,などと言われたグローバリゼーションですが,その後,約15年を経て,その予言はいずれも間違いでした.

世界は今も,国民国家の支配を寄せ集めた状態です.特に,EUやアメリカ,中国の支配は,多国籍企業を服従させています.政策による介入も,各地で,産業構造や環境保護に重要な違いを示しています.資本主義のエリートたちが世界経済の管理をするようなことはできず,各国が競争して世界市場を奪い合っています.グローバリゼーションの世界管理体制を示す組織は,IMF,世銀,WTO,いずれも問題を抱え,ときには機能が麻痺しています.

グローバリゼーションが失敗した理由として,1.誇張された楽観論,2.さまざまな問題に,共通の協力体制ではなく,各国が競争的な体制で応じた,3.アメリカ政府のダブル・スタンダード,4.ネオ・リベラリズムの現実離れした主張,5.成長への固執,6.大衆の反抗,を挙げています.

もし戦前のグローバリゼーションを参考にするなら,それを人間的なものに改善するよりも,危機や戦争を防ぐために,グローバリゼーションそのものを抑制し,逆転するほうが望ましい,と.

Pranab Bardhanは,アメリカ型資本主義の世界化,という予想が正しくなかったことを確認します.ソ連が崩壊し,日本型資本主義のブームも去り,EUは失業と停滞に苦しんでいました.アジアの躍進が金融危機で頓挫したために,そのような「勝利」の幻想が一時的に広まったのです.イギリスやアメリカの資本主義には,雇用の安定性や社会保障が不十分です.それだけなら,中国やインドの高成長,東欧やラテンアメリカの混乱にも共通しています.

グローバリゼーションは,世界各地で,ますます環境破壊や社会不安に制約されるでしょう.保護するだけでは十分でなく,これまでにない,もう一つの資本主義を見つけなければなりません.効率性を犠牲にすることなく,公平な,安定した社会を回復できる方法・制度を,いずれの資本主義も探しています.

FT January 9 2007

Globalisation’s future is the big long-term question

By Martin Wolf

(コメント) Martin Wolfは,世界経済の持続的な成長力を問います.これまで世界の高い成長を支えてきたのは,1.特に情報処理能力を飛躍させた技術革新,2.東・南アジアから人類の多数が世界経済に参加したこと,3.「キャッチ・アップ」過程が始まった,4.財・サービス・資本の市場統合である,と.さらに,その背景として,金融秩序が安定していたことも重要でした.そのおかげで,どこかで減速が起きても,それは限定された,過渡的なものに抑えられたのです.それは高利潤や高成長をもたらし,財政赤字や貿易赤字を減らしました.

ところが,もう一つの仮説もある,と言います.すなわち,過剰貯蓄問題です.日本やドイツはかつてほど投資しなくなり,中国は高貯蓄率が続いています.また,産油諸国はかつてよりも慎重な支出にとどまって,アジア諸国の為替市場への介入は過剰な外貨準備を拡大し続けています.国際収支不均衡とドル高や低金利による過剰消費,住宅市場バブル,などが,アメリカその他の諸国に持続できない水準の成長を実現してきたのではないか?

経済のダイナミズムが続くとすれば,後者の仮説は否定されるでしょう.Martin Wolfは,政策的に見て,それは「インフレを抑制できるか?」,「グローバリゼーションを持続できるか?」という,問いに集約できる,と考えます.これらは関連しています.もしインフレが早期に抑制できず,アメリカで軽いものでも不況が起きるなら,保護主義の圧力は世界中で急激に強まるでしょう.

それは最後には,世界政治の不安定要因と呼応し始めます.アメリカは歴史的な敗北を味わいつつあり,イランにまで戦火が及ぶことも考えられます.北朝鮮は核武装し,何よりも,イスラム圏の宗教的な過激集団が政治的・軍事的な力を手に入れるかもしれません.Wolfは,その問題を解決するには政治的指導力が必要であるが,それは国際的に見て,恐るべき希少な財である,と警告します.

The Guardian Tuesday January 9, 2007

Low wage competition isn't to blame for western job losses and inequality

Will Hutton

IHT Tuesday, January 9, 2007

Globalization story still has a long way to go

By Daniel Altman

(コメント) グローバリゼーションと言っておけば,職を失っても,社会保障が削られても,人々は不満を吐き出せず,曖昧な靄の中に迷い込む.Will Huttonは,そんな風に問題提起します.そして対策と言えば,保護貿易に走るか,あるいは,低税率,低福祉の生存競争に挑むか.

しかし,これは間違いだ.グローバリゼーションは世界の富を増やしているから.われわれの選択肢は広がっているのであって,奪われたわけではない,とHuttonは考えます.問題は,その富から多くのものが排除されていることです.ゲームのルールは西側の一部の者によって作られています.中国でさえ,ルールを書き換えているのではない.その輸出の60%が外国企業によって行われています.

中国は,確かに,ローバーを買い取って工場を中国に運び去りました.しかし,それは中国の絶望的なキャッチ・アップ過程なのです.中国人民は,ドルを買い支え,世界中で利益を上げる多国籍企業を支えています.アメリカの労働組合は,失業や低賃金の理由に中国を責めますが,それはごく小さな部分に過ぎません.製造業はアメリカの雇用の僅かしか代表しておらず,アメリカの賃金の4%しかもらえないとしたら,彼らの生産性が低いのです.たとえそれほど低賃金であっても,賃金が決定的なコストではありません.

Huttonは,アメリカもイギリスも,新しい需要を市場(消費者)の近くで満たす機会は豊富にある,と考えます.それゆえ,政策しだいで,グローバリゼーションを恐れる必要はないのです.もし失業や低賃金が問題であるとしたら,それはM&Aブームを煽り,自分たちの所得を爆発させた経営者たちにあるでしょう.繁栄を求めて刻苦勉励する中国人民を責めるのではなく,均衡を欠いた経済をもたらし,道義を捨て,正統性をも失った,私たちの資本主義を責めるべきなのです.

グローバリゼーションの減速や逆転を説くことが流行っているが,事実は逆である,とDaniel Altmanは主張します.「グローバリゼーションがもたらした成果を理解しようと思うなら,EUの全人口が生存ぎりぎりの水準から中産階級に上昇した,と考えればよい.」 その過程が続くことはすばらしい,と.


FT January 5 2007

The wrong way to bridge the Atlantic

FT January 7 2007

Merkel’s misguided transatlantic trade notions

By Wolfgang Munchau

(コメント) アメリカとEUとの大西洋経済圏に関する論説です.新しくEUサミットの議長になるメルケル首相が,イラクをめぐるアメリカとの和解をきっかけに,欧米間の貿易・投資摩擦解消に意欲的だ,というわけです.

しかし,二国間の交渉やFTA,EPA,などで重要なのは,消費者の利益ではなく,生産者団体のロビイストです.自由化が進まないのは,主権と,生産者団体と,文化摩擦と,それらが対立を生じているからであり,話し合えば調和的に解決できる,という問題ではない,とFTは警告します.むしろ,多角的な自由化を妨げ,保護主義を促すだけでしょう.


The Guardian Friday January 5, 2007

The zone of faith will save us from the sovereignty of the mob

Simon Jenkins

(コメント) 商業主義に冒されたマス・メディアが,ショッキングなニュースや映像を氾濫させることに,Simon Jenkinsは反対します.インターネット上では,次第に,自分で自分のためのメディアを開発し,マス・メディアとの違いが消えています.しかし,メディアが集団を媒介する以上,衝撃よりも,信頼を基礎にしなければなりません.良質のジャーナリズムは,今も必要です.


IHT Friday, January 5, 2007

South America: Toward an alternative future

Noam Chomsky

FT January 9 2007

Left turn ? Chavez shifts up a gear in his drive for ‘21st-century socialism’

By Richard Lapper

NYT January 10, 2007

Venezuelan Plan Shakes Investors

By SIMON ROMERO and CLIFFORD KRAUSS

FT January 11 2007

Chavez's left turn

LAT January 11, 2007

Fidel Chavez?

(コメント) Noam Chomskyはラテンアメリカの積極的な意味で変化を伝えています.アメリカの介入と独裁者の伝統という共通の軍事的・政治的脅威,植民地支配という共通の歴史的記憶,そして,ベネズエラなどが提供する共通の石油・天然ガス資源,貿易,輸送,森林保護,・・・ラテンアメリカの未来を,EUに似た,一層の地域共同体で築こうという政治宣言が出るのには,十分な理由があるのです.

1973911日.キッシンジャーはチリのアジェンデ政権がラテンアメリカにおける社会主義革命の「悪い見本」とならないよう,ピノチェトによる軍事クーデタと政府要人の虐殺を支援しました.今や,ピノチェトは死に,ラテンアメリカではルーラ・ダ・シルバに続いて,キルチネル,チャベス,モラレス,チリでもバチェレが,その間に大きな違いがあるとしても,いずれも社会主義の政権を樹立しています.

他方,Richard Lapperは,FTの解説記事として,最近のチャベスの急進的な姿勢に注意しています.特に,1991年に民営化されたベネズエラの情報通信・電力企業であるCanTVを国有化する,という宣言に市場は危機感を高めた,と.チャベスは,政府が「戦略的部門の所有を回復するべきだ」と主張しています.

こうした改革は,シモン・ボリバルのラテンアメリカ革命を継承して21世紀の社会主義をもたらす,という彼の主張の影で,政府閣僚の入れ替え,法制度の改変による大統領職の永久化,批判的マス・メディアの認可取り消しや検閲,などを進める名目でしかない,と批判されるでしょう.それは,一方では外国投資を激減させ,資本逃避を招いて,通貨価値の暴落やインフレをもたらします.資源開発に必要な外国企業の投資や技術も得られなくなるでしょう.他方では,もっと穏健な中道左派の近隣諸国と関係を悪化させ,ラテンアメリカにおける民主主義の原則による地域協力から排除される危険も高まるだろう,と.

投資家たちは,既に,ベネズエラだけでなく,こうした政治危機がラテンアメリカに広がることを懸念し,投資を減らし始めています.しかし,チャベスの野心がどれほど嫌われたとしても,ベネズエラが世界の埋蔵量の7%,800億バレルの原油を持つ,アメリカへの第4位の石油供給国である,という事実は変わりません.他方また,いつか分からないけれど,石油価格の高騰が永久に続くわけでもないのです.

チャベスを再選した国民は,自分たちで市民社会や民主的な選挙を破壊しつつある,とLATは悲観します.


NYT January 5, 2007

The First Energy President

By THOMAS L. FRIEDMAN

NYT January 7, 2007

War and Cheap Oil: A Second Look

By MATTHEW L. WALD

(コメント) サウジアラビアやベネズエラの石油に頼るアメリカはどうするべきか?

THOMAS L. FRIEDMANは,先日亡くなったフォード元大統領にちなんで,エネルギー自律のためのフォード法案,を支持します.それはフォードが,32年前のアラブ諸国による石油禁輸と老いる.ショックに対して,エネルギーの自立を目指した求めた計画の完成です.すなわち,「200の新規原子力発電所を建て,250ヶ所の炭鉱を開設し,150の火力発電所を設け,30ヶ所の石油精製所,20ヶ所の複合型燃料工場,新規油田開発,・・・」

それは,まるで毛沢東の経済開発宣言のように聞こえますが,もちろん,ルーズベルトの軍備拡大計画と比較されています.9・11から大きく遠回りをして,ようやく,ブッシュ大統領は出発すべきだった地点にたどり着いたわけです.

中東全域に戦争が拡大しつつあるなら,石油価格の抑制とアメリカによる軍事的な安全保障の評価は変わらざるを得ない,とMATTHEW L. WALDは考えます.戦争によって中東における石油消費は増え,生産は減って,石油価格を押し上げる要因になっています.


NYT January 5, 2007

Tax Cuts and the Minimum Wage

(コメント) 減税よりも最低賃金引き上げを優先するべきだ,とNYTは主張します.それは減税よりも優れています.なぜなら,財政負担が少なく,長い間無視されてきた貧しい労働者たちを助ける上に,中小企業への負担が大きすぎることもないはずだ,と.


Scott North and Charles Weathers All work and no pay in Japan Asia Times Online, Jan 6, 2007

STEPHEN KOTKIN Off the Shelf: Japan’s Retooling Is Distinctly Japanese NYT January 7, 2007

David Pilling Japan to upgrade defence body to ministry FT January 8 2007

SOPHIE RICHARDSON Japan's peculiar silence on rights abuses The Japan Times: Monday, Jan. 8, 2007

A military ministry FT January 9 2007

Japan’s new military ministry is not a threat FT January 9 2007

Japanese brokers FT January 10 2007

Jian Junbo Time for Japan to rejoin Asia Asia Times Online , Jan 11, 2007

(コメント) 日本の改革は,安倍政権下ですっかり迷走を強め,逆噴射し始めました.教育改革,軍備強化,企業優遇,憲法改正,・・・ それを「改革」と呼びさえすれば良いのでしょうか? 「改革症候群」,「改革中毒」,「小泉コンプレックス」,と呼ぶほうが正しいのでは?

しかしSTEPHEN KOTKINは,日本の回復を分析したSteven K. Vogelの好意的な楽観論を紹介しています.日本を悲観する論調が多い中で貴重な視点でしょう.それは日本人の,安倍政権の保守派や自由化論者を除く,国民の多くを納得させるものです.

Vogelは,1990年代に日本は衰退し,何もしなかった,という誤解,そして,アメリカ型の自由市場資本主義を採用しつつある,という間違った印象を退けます.日本は改革に努めてきたし,それはアメリカ型の市場を導入することではなかった,と.むしろ,日本の歴史と政治が改革の姿を決めたのです.Vogelは,それをドイツと同じ「社会的市場経済」だと考えます.

アメリカ企業は株主の利益に従い,労働者を積極的にレイオフし,企業そのものを売買します.しかし,日本の企業は労働者やその家族を株主よりも重視します.たとえ技術や熟練に問題があっても,容易に労働者や仕入先を変えません.それでも,アメリカ企業が効率性や利益を追求するのと違う意味で,日本企業は長期的な効率性や利益を追求しています.社会的な調和や公平性を重視することが,彼らの利益になることを知っているのです.

世界中の関心を中国の成長と変貌に奪われて,日本経済の変化は無視され,あるいは悲観されるだけでした.しかし,記事は言及します.共産党の支配する中国の経済が,アメリカ型の資本主義に向かうだろうか? そんなことはないだろうし,成功するはずもない.もし中国が行き詰まったときは,日本人に教えてもらうことだ,と.

SOPHIE RICHARDSONは,安倍政権が北朝鮮の日本人拉致問題を強調するだけで,その他の人権問題を無視していることに不満を示します.2300万人の北朝鮮国民は,繰り返される飢饉も含めて,絶えず人権を抑圧されています.たとえ食糧援助を政治的に利用して,拉致された数家族の日本人を帰国させることだけが,日本政府の政策なのか?

あるいは,靖国参拝が批判されれば,国内の支持者をなだめるために明治神宮に参拝する,というのが,日本の政治指導者として安倍氏が示す判断なのか?


FT January 6 2007

Moving up the social ladder is never easy

(コメント) 所得階層で示される世代間移動性は,北欧諸国において高く,英米では低い.ヨーロッパ大陸諸国はその中間です.

社会的移動性を高めるために政府ができることとして,単に教育政策だけではない,新しい方向をFTは示しています.すなわち,教育は移動性を改善する効果もあるが,それを妨げる効果もあります.高学歴者の家庭や優秀な学校の地域に高所得者が集中する傾向が示されています.また,たとえ公教育が充実しても,子供にもっと早くから優れた教育を受けさせる裕福な家庭は,社会的移動性を制限します.最後に,社会全体の所得分配が問題です.分配が平等な社会の方が,社会的移動性を妨げる傾向は抑制されます.

日本政府も,この記事,読みましたか?


Terry Jones They have made a killing The Guardian Saturday January 6, 2007

The Imperial Presidency 2.0 NYT January 7, 2007

Jackson Diehl War Against Time WP Monday, January 8, 2007; A15

Wesley K. Clark The Smart Surge: Diplomacy WP Monday, January 8, 2007; A15

Yitzhak Nakash If U.S. drops the ball, Iraq shatters LAT January 8, 2007

PAUL KRUGMAN Quagmire of the Vanities NYT January 8, 2007

Sally Quinn The Least Immoral Choice WP Wednesday, January 9, 2007; A15

Jonathan Freedland Like a deluded compulsive gambler, Bush is fuelling a new cold war The Guardian Wednesday January 10, 2007

Peter W Galbraith Why the surge won't work The Guardian Wednesday January 10, 2007

Paul Reynolds Taking the Vietnam out of Iraq BBC 2007/01/10

Gareth Porter The perverse logic of Bush's war Asia Times Online , Jan 11, 2007

Margaret Carlson Bush Repeats Same Old, Fatal Mistakes on Iraq Jan. 11 (Bloomberg)

Bush's refusal to face reality BG January 11, 2007

Bush and Iraq The Guardian Thursday January 11, 2007

Nikolas Gvosdev and Ray Takeyh Mr. President, this war is over IHT Thursday, January 11, 2007

The last way forward LAT January 11, 2007

(コメント) ブッシュ大統領は,中間選挙の敗北,ISGの提言,フセイン死刑判決と処刑,などを機会に,イラク政策を転換することを拒みました.

兵士を増やし,莫大な税金と若い兵士の命までつぎ込んで,アメリカ軍はもっぱら多くのイラク国民を殺している,とTerry Jonesは批判します.

チャベスの社会主義も見劣りする? ブッシュの第二帝政についてNYTの論説は批判します.

ブッシュ大統領は,その任期終了までに,増派したアメリカ軍が成果をもたらすことに賭けました.しかし,イラク社会の変化は,ワシントンで決めた時計にしたがうものではありません.


LAT January 6, 2007

The EU's ugly little challenge

By Colum McCann

FT January 8 2007

After 15 amazing years, Europe enters surreal phase

By Gideon Rachman

FT January 9 2007

Competition is the key to Europe’s energy security

By Sam Laidlaw

(コメント) ブルガリアとルーマニアのEU加盟を嫌っている各国では,その不満をヨーロッパ最大のマイノリティー,「ジプシー」あるいは「ロマ」,の問題に関わらせて非難しています.

Gideon Rachmanは,「これはパイプではない」という超現実主義の絵を,EUの組織と比べています.EUの政治家たちは不満を持て余しているようです.

安全保障も,エネルギーも,市場の競争促進策も,トルコ加盟も,・・・ 27カ国,と過剰に膨張した?ヨーロッパ政治を動揺させます.


FT January 7 2007

Democrats must make some hard policy choices

By Steve Rattner

NYT January 7, 2007

Bipartisanship as the First Resort?

The American Prospect 01.08.07

Beyond PAYGO

By Robert Kuttner

(コメント) 民主党が勝利した後のアメリカ議会の論争を予想しています.イラク政策よりも,むしろ内政重視とグローバリゼーションと財政赤字をめぐる経済政策,最低賃金,社会保障制度が重視されるかもしれません.あるいは,政権末期に超党派的な政策を実現するとか,ポピュリズムの波に乗って2008年の大統領選挙を目指すのか?

経済政策といえば,すべてはブッシュ政権がおこなった富裕層への減税政策に戻ります.


FT January 7 2007

Tyranny in the twenty- first century

By Ian Buruma

(コメント) 軍服を着て,自分をサラディンにたとえ,空に向けてライフルを撃ち,銃声をとどろかす,サダムは野蛮な,むしろ旧いタイプの独裁者でした.旧帝国の崩壊や戦乱において現れたこのような独裁者が,確立された民主主義の中から,二度と現れることはないでしょう.武装した信仰集団や世界資本主義の時代に,彼らのスタイルは時代遅れなのです.

しかし,独裁者が消えたわけではありません.新しい独裁者は,むしろ大企業のCEOと同じスタイルを好むでしょう.裕福なビジネスマンで,CEO政治家,スーパー・マネージャー,国家のためではなく,まず自分の利益のために尽くすような男が,独裁者にピッタリです.すでにヒトラーはそれを知っていた,とIan Burumaは考えます.彼はマス・コミュニケーションが絶対的な権力の鍵だと見なしたからです.

現代の支配者はメディアを支配し,パンとサーカスに代わる,現代の娯楽を提供します.そのためには,サッカー・チームの一つや二つは持っているのです.マスコミの成功は娯楽に依存し,誘惑,幻想,騒々しい異端分子を利用します.こうして現代の独裁者が,アフリカやラテンアメリカの密林ではなく,私たちの中から生まれます.

シルヴィオ・ベルルスコーニがイタリアで(あるいは,タクシンがタイで)成功したのは,その先駆けとなりました.彼は自分の所有するテレビ局を利用して,大衆をプロパガンダと娯楽に酔わせました.そして,他の政治家には夢のようなことでも,自分ならできる,とマッチョ・スタイルを売り込んだのです.CEO政治家たちは信仰集団とも手を組むでしょう.・・・既にアメリカで見られるように.


LAT January 7, 2007

Arab nationalism's last gasp

By Robert D. Kaplan

BG January 9, 2007

A classic imperial predicament

By H.D.S. Greenway

(コメント) 国民国家の枠組みを無視して,さまざまな小さな部族や信仰集団が人々の忠誠心を集め,武装して争います.

「アラブのジレンマを解くのは政治的自由しかない,と主張するのは正しい.問題は,その過程が何十年も流血の事態を続けることだった.結局,ヨーロッパでも,われわれが知っているような安定した民主主義が現れるまで,数世紀を要した.このダーウィン的な激動の過程では,脱植民地の土地にわれわれが見た,がたがたの政治的構築物ではなく,ヒズボラやマフディー軍団のような,武装した社会福祉組織に極めて近いものが,政治的正統性の新しい形態となるのである.」

サダム・フセインのでたらめな裁判とお粗末な処刑が示しているのは,アメリカが事実上保護してきた結果,サダムがシーア派の戦利品として報復のために処刑されるのを引き伸ばしただけだった,ということです.どのような意図で帝国を拡大し,支配しようとしても,永久に自分たちで支配することはできない.アメリカが何を言おうとも,イラク政府は選挙によって権力を定め,自分たちで動き出す.イギリスがかつて帝国各地で苦しんだように,支配の実際は現地の恐るべき軍閥たちに委ねて,帰国するしかなくなるのです.

Niall Ferguson Promoting disorder in Somalia LAT January 8, 2007

JONATHAN STEVENSON A Fleeting Victory in Somalia NYT January 8, 2007

(コメント) ソマリア介入は,破綻国家の救済になるでしょうか? あるいは,アフガニスタンやイラクのように,アメリカの軍事介入による政治的不安定化,内戦とテロの蔓延という,失敗ケースになるのでしょうか?


David R. Francis Euro gives dollar a run for the money CSM January 08, 2007

William Pesek Time for Asia to Kick Its Strong-Dollar Habit Jan. 8 (Bloomberg)

Andy Mukherjee China Can Do Better Than Swap Dollars for Oil Jan. 9 (Bloomberg)

(コメント) アジア諸国の成長は,工場よりも,アイデアにかかっている,とWilliam Pesekは主張します.それが,ドルに対する割安ペッグ政策から,自国通貨の変動・増価政策への転換を求めるでしょう.製品の輸出だけでなく,強い通貨はインフレを抑制し,資本を流入させ,資産相場を高め,借り入れコストを下げます.中産階級の購買力を高め,国内の政治不安や,国際収支不均衡の解消にも役立つでしょう.

いずれの国も世界市場に参加すれば,安価な製品から,安価なサービス,そして次第に,革新的な商品を輸出するようになります.アジアもその時期が来た,とPesekは主張します.

Andy Mukherjeeは,中国の1兆ドルにおよぶ外貨準備を批判します.そんなに蓄積するくらいなら,もっと必要な国内の社会保障制度を整備してはどうか,と.


The Wall Street Journal, 8 January 2007

A World Free of Nuclear Weapons

George P. Shultz, William J. Perry, Henry A. Kissinger, and Sam Nunn

CSM  January 10, 2007

A Middle East free of nuclear weapons

By Bennett Ramberg

The Guardian Thursday January 11, 2007

Neither sanctions nor bombs will end the Iran nuclear crisis

Roger Howard

The Japan Times: Thursday, Jan. 11, 2007

Britain's nuclear dilemma

By DAVID HOWELL

(コメント) 核のない世界.アメリカの超党派的な安全保障・軍事専門家たちが,ようやく,核による抑止力を否定する声明を出しました.

核によって平和を維持できたのは,それが冷戦下の米ソに集中管理されていたからです.それでさえ,核が偶発的にも使用されなかったのは幸運でした.北朝鮮のような小国やテロリストが利用する可能性も考えると,もはや核武装によって核兵器の使用を抑止することは不可能です.

20年前,レーガンとゴルバチョフのレイキャビク会談において,核兵器の全廃が検討されました.論説はそれを受けて,世界の指導者たちが核兵器の全廃という企画に参加するよう,核事故のリスクを減らす,核保有国はその核兵器を減らす,短距離核を全廃する,アメリカは超党派で包括的な核禁止条約を批准する,核管理の質を高める,ウラン濃縮や核燃料を国債管理する,新しい核保有国を増やさない,などの提案を行います.それはまた,核に関わる脅威を予防する効果的な行動を取る必要を生じます.

イスラエルの非核化をふくむ,中東核自由圏a Middle East nuclear weapons-free zone (MENFZ)について,Bennett Rambergは考えます.かつてと違い,既にイスラエルは軍事的に優越しており,むしろ核の拡散を心配しています.

イランやイギリスの核武装は,どうするべきか?


NYT January 9, 2007

Some Progress in Global Trade Effort

By STEVEN R. WEISMAN

LAT January 11, 2007

Hope for the world’s poor farmers

(コメント) 絶滅に瀕したはずの貿易自由化交渉が,回復のきっかけを見出すか? それは,結局,米欧間の首脳会談にかかっています.それは過去において何度も期待はずれに終わりました.「合意文書が出来上がるまで信じることはできない.できれば血で書いてほしい.」

アメリカ政府がEUに農産物補助金の削減を提案したところで,交渉は頓挫したままでした.ブッシュ政権は貿易交渉の権限を議会から得なければなりません.さらに,大統領の任期も終わってしまいます.ダヴォスで開かれる2週間の世界経済フォーラムで交渉を行い,その間にできた合意をブラジルやインドにも売りつける.それが失敗すれば,ドーハ・ラウンドの最後の最後に残されたチャンスも消えるわけです.ブッシュもバロッソも国民に合意文書を売り込むため,政治的資本を尽くさなければなりません.

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The Economist, December 23rd 2006

Tabloid press: A right royal scandal that spawned Britain’s popular press

Shopping and philosophy: Post-modernism is the new black

Buying babies, bit by bit: An international guide to baby-making

(コメント) この特集号は《精神》だけを扱うのか,と思ったら,後半を読むと,タブロイド紙,ショッピングの哲学,賄賂の経済学,そして,赤ちゃんの売買,です.なるほど,これも《精神》ですか.スキャンダルやゴシップに耽り,買い物と自分のことに夢中になり,心を買収するにとどまらず,最後は小さな命も「生産」し,「売買」する.人間というのは,よほど変わった生き物です.

イギリスのタブロイド紙が低俗で下品でありながら,民衆による政治への関心や関与を強めることに貢献したとか,政治家が民衆の意見に注意するようになる重要なプロセスを担っていた,という歴史は興味深いです.

しかし,特に最後の赤ちゃん生産における国際分業の誕生過程には驚きます.子供のできない夫婦があって,精子や卵子の提供,子宮の有償による利用・貸し出しを認める国もある,となれば,その質や価格,規制に応じて,人々(そして,精子,卵子)は国から国へ移動するわけです.・・・赤ちゃん生産のグローバリゼーション.

「(人工的に子供を作ることを)容認する国は,すぐに,多数の外国患者を処置するようになった.ヨーロッパ中から女性たちが人工授精のためにデンマークを訪れた.それはデンマークが,良く管理された,品質チェックを行う,しかも,精子の匿名性を保証する国であったからだ.スウェーデンの病院に来る患者より,デンマークに行く患者の方が多くなった.スペインでは卵子を提供する女性に支払うことが合法であった.だから卵子を求めて女性たちはスペインに飛んだ.世界中から,女性たちは代理出産契約を求めてカリフォルニアに飛んだ.なぜならカリフォルニアでは,『本当の』母親として法的に認められた女性が,妊娠するのではなく,それを委託することができたからだ.」