IPEの果樹園2007

今週のReview

1/1-1/6

IPEの種

*****************************

世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

******* キー・ワード **********************

労働組合の未来, タイの資本規制, グローバリゼーション擁護論, 聖地と共存, ソ連崩壊15周年, 世界経済予測

******************************

ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


The Guardian Thursday December 21, 2006

A perfect union?

Denis MacShane

(コメント) 労働組合に現在,そして将来も,意味があるでしょうか? 資本主義的な経済システムが世界中に拡大したにもかかわらず,それゆえ,労働組合は消滅の危機にあります.階級闘争や分配を争うだけでは,労働組合が再生することはないでしょう.

Denis MacShaneは,組合が統合化するのは必要な過程であるが,それが答えのすべてではない,と考えます.資本の利益にしたがって作り変えられてしまう世界を,労働者の視点から,バランスを回復させることは,労働者自身の組織にかかっている,と.

グローバリゼーションは,組合を解体し,ブルーカラーもホワイトカラーも,労働者の組織化を難しくしました.公共部門を除いて,組織率は下がっています.そして,厳しい競争によって組合を失った民間部門の労働者たちは,公共部門の組合がストライキに訴えることや,高コストを負担することを嫌います.

組合は,もっと雇用をもたらす経済政策を政府に要求するべきです.グローバリゼーションを強いる最大の勢力は年金基金などの機関投資家です.人々は,労働者も含めて,自分の年金を守るために最大の収益を目指し,それゆえ企業は最大の収益を実現できる生産拠点や労働者を選びます.

労働組合は,この21世紀の脱国民国家型資本主義を深く理解しなければ,生き残ることはできません.激しい労働争議や国家による規制を強めるだけでは,企業も労働者も「足による投票」を実行して,労働組合を辞め,規制の多い国から逃げてしまいます.

早急に,労働組合は国際化し,世界的な連携を強めるべきです.インターネットを活用し,社会的なキャンペーンの機運を捉え,国民から支持されて,コミュニティーの再生に指導的な役割を期待されることです.労働組合は独自の立場で,資本家以上に,資本主義をよく理解し,かけがえないパートナーとして信頼され,経済問題の解決策を求められるでしょう.そのためには街頭でピケを張るのではなく,聡明な頭脳を得ることです.

単純なグローバリゼーションを打ち破るために,資本家のさまざまなグループとも協力します.従来の労働運動の分裂した流れは解消され,統合されます.なぜなら過去15年間に数十億の労働者が,中国やインドなどにおいて,基本的な権利も否定されたまま市場に参加しているからです.イギリスの労働組合は,ヨーロッパや北米の組合と協力し,さらに多くの諸国の労働者と連携しなければなりません.この平坦な世界において,労働者の利益と人権を守る新しいセンターが必要です.それは,知識人の遊戯に近い社会フォーラム,NGOs,人々を分断する宗教団体によって達成されることではないでしょう.

労働組合は生まれ変わらなければなりません.


NYT December 21, 2006

Outsize Profits, and Questions, in Effort to Cut Warming Gases

By KEITH BRADSHER

LAT December 24, 2006

Beijing's unlikely pal

By David DeVoss

FT December 26 2006

China’s income gap grows despite pledges

By Geoff Dyer in Shanghai

FT December 27 2006

Chinese equities

(コメント) フロンガスの廃止を求める規制と政策が,奇妙な価格差とブームをもたらしています.フロンガスの排出は,地球温暖化を防止する京都議定書によって規制され,ヨーロッパでは排出権が取引されています.

中国の南東部にある化学工場がフロンガスの廃止による排出権獲得に有利な取引となっています.500万ドルで工場を基準に従う形に改善することは,同じだけの改善をヨーロッパやアメリカ,日本で行うことに比べてはるかに安上がりです.ところが,この500万ドルの投資に,外国企業は5億ドルを支払います.

これはヨーロッパの排出権市場で100倍のプレミアムが付いているからです.地球温暖化に対して,他のガスに比べてフロンガスの影響が非常に強いため,ヨーロッパでは高価格が付き,これに応じて中国の工場には大きな利益が生じています.その利益は,貧しい人々に届かず,中国政府や工場主,ロンドンの銀行化などが分け合っています.あるいは,化学工場が増えている,ということです.

David DeVossは,台湾の事情を紹介します.かつて共産党と激しい内戦を経験したはずの国民党が,台湾の独立を支持する現在の民進党政府を批判します.国民党は,中国経済との統合が望ましいし,中国自身が成長によって民主化されるだろう,と考えます.ただし,アメリカから中国へと,国際関係の位置を逆転することに伴う問題は,十分に予想できません.

Geoff Dyerの記事は,中国の所得格差がラテンアメリカと同じ水準にまで拡大した,という中国社会科学アカデミーの報告を伝えます.胡錦涛政権は「社会的平等」を掲げて,農民への課税を廃止したり,農村から都市への移住を認めたり,改革に努めました.それにもかかわらず,所得格差は拡大しています.

急速な都市化や工業化を経験する国はジニ係数で示される分配の不平等が拡大する,と指摘しています.しかし,中国のジニ係数が増大することについて,エコノミストの評価は分かれます.孤立した農村部が急速に都市との関係を深めているけれど,都市部の不平等は拡大していない,という意見もあります.少なくとも,家計を圧迫している医療費負担の増大を緩和することに政府の関心は向かうようです.

中国の株式市場は急速にその規模を拡大してきました.株式市場の規模は9000億ドルに達し,香港で取引されている中国株の規模は16000億ドル,GDPの70%です.それは改革に正貨ですが,まだ,多くの制限が株式の取引を抑制しています.市場の流動性は乏しく,価格変動が激しく,M&Aは非常に限られます.もちろん,市場が不安定化することを決して許さない,漸進主義,という政府の判断からでしょう.


LAT December 21, 2006

Adopt a homeless Angeleno

Patt Morrison

CSM December 22, 2006

At gift-giving time, think of the homeless

LAT December 25, 2006

Giving to county's neediest

(コメント) クリスマスに見る光景です.遠く離れた土地の貧しい子供たちを助けるために募金してほしいとか,毎月20ドルで子供が救えるという広告に賛同するなら,もっと目の前の,ロサンゼルスの「どや街」に住む,ホームレスの子供たちを助けることに資金を提供してはどうか,とPatt Morrisonは呼び掛けます.第三世界の貧困を減らすのと同じように,ホームレスを助ける援助がもっと必要です.

CSMの記事は,教会がスープを配るだけでなく,企業や地方政府がホームレスの解消のために活動していることを伝えます.特に,1990年代になって慢性的なホームレスを収容したり,医療を受けさせたりするコストの増大は,ホームレスを減らす方が行政にとって望ましいという認識を広め,ホームレスの対策を本格化しました.建設業界や大学も対策に参加しました.

しかし,LATが伝えるように,たとえホームレスを解消する資金や住宅建設計画ができても,それを最後に拒むのは地区の住民たちです.すなわち,“not-in-my-backyard mentality”(問題は他所で起こしてくれ)という感情を強く示します.


NYT December 21, 2006

Mr. Bush’s Immigration Realism

BG December 22, 2006

Protect the rights of immigrants

By Roc Snz

LAT December 23, 2006

Racism -- fact or faith?

By Shelby Steele

(コメント) 牛肉加工業者が大量の非合法移民を雇用していたことについて,誰も驚かないが,ブッシュ大統領は寛容であることを求めるコメントを出した.彼らがアメリカで正当な方法により働く道がない以上,現在のシステムでは,こうした非合法移民を生んでしまう,と.そして,彼らがアメリカの市民権を得る道筋を示す,包括的な法案の承認を求めました.

移民たちは世界でも非常に生活費の高い国に来て,低賃金で働いています.非合法移民と低賃金問題とは,解決すべき二重の問題なのです.移民労働者は重要な一部をなしており,生活賃金や必要な医療保障を受けられねばなりません.

移民たちとその家族を助けることは,単に見せかけの問題ではなく,アメリカン・ドリームを実現することを意味する.それは指導者に雇用者の責任を求めることである.正しいことをするという理由だけで,雇用主は職場を改善しない.変化への最善の刺激は,労働者たちが組合を結成して対抗することだ.しかし,多くの雇用主は組合を作る権利を否定しようとする.新しい知事は,政治家として指導力を発揮するべきだ.雇用主たちの責任を追及せよ.

しかし他方で,アメリカでもヨーロッパでも,移民たちを同じ人間として処遇するより,差別し,排除しようとする感情が広まっているのも事実のようです.人種差別・憎悪を理由とした犯罪が増えています.

Shelby Steeleは,むしろレイシズムの社会・政治現象が転換したことを強調します.かつてのような「白人の優位」や支配の人種的な正当化は,既に完全に衰退しました.しかし,たとえば60年代の市民権運動以降,黒人たちは現実を差別されているという確信と結びつけるようになりました.レイシズムを問うとき,それが事実なのか,確信なのか,区別しなければなりません.

The Guardian, December 26, 2006

Fences and smokescreens

Michele Wucker

NYT December 26, 2006

America, the Exam

NYT December 27, 2006

Our Founding Illegals

By WILLIAM HOGELAND

(コメント) 非合法移民であることを知っていながら雇用した場合だけ,雇用主は罪に問われます.この但し書きで,サンディエゴに近い国境のフェンスを建設してきたGolden State Fence Coでさえ非合法移民を雇用していたことを隠していました.

一方では非合法移民が増加することに大騒ぎし,他方では彼らの労働力を裏口から利用できることに慣れ切っている.この論争は容易に解決しないのです.経営者たちが煙幕の向こうで非合法移民を使役しているのに,ブッシュ大統領が700マイルの国境フェンス建設計画案に署名したのは喜劇でした.その予算では,実際,せいぜい70とか90マイルを建設できるだけです.

むしろ世論は変化し,極端な解決策を求めなくなりそうです.

アメリカ移民帰化局の実験的な試みは興味深いです.以下の質問に答えて,正解の人にだけ,アメリカの市民権を与える,というわけです.アメリカ市民権を申請するものに,国旗の星の数や筋など,細かいどうでもよい知識ではなく,アメリカの歴史や民主主義の原理を知ってほしい,と考えたからです.

問1) アメリカ独立戦争の有名な戦場を一つ挙げよ.

問2) アメリカ・インディアンの主要な部族名を一つ挙げよ.

問3) エイブラハム・リンカーンの行ったことを一つ挙げよ.

しかし,難しい,高度な英語の能力を求めている,各地で選択的に利用させるのは問題だ,といった反対意見が出ています.しかし,当局は考えます.移民たちが並々ならぬやる気を持っているとしても,それをアメリカで実現するには,十分な知識を持つべきだ,と.・・・ちなみに回答例は,1)Lexington and Concord, Trenton, Princeton, Saratoga, Cowpens, Yorktown, Bunker Hill2)Cherokee, Seminole, Creek, Choctaw, Iroquois, Shawnee, Mohegan, Chippewa, Huron, Oneida, Sioux, Cheyenne, Lakota, Crow, Blackfoot, Teton, Navajo, Apache, Pueblo, Hopi, Inuit3)国家の統一を守った.奴隷を解放した.南北戦争を指揮した.などです.

すべての国は移民によってできた,とWILLIAM HOGELANDは指摘します.アメリカの歴史は非合法移民によって誕生した.アメリカの歴史には,現代の非合法移民とそっくりの事例が多くある.彼ら無しには,今日のわれわれも無い(だから,しきりに非合法移民排斥を訴える連中こそ,アメリカから消えるべきだ),と.


NYT December 21, 2006

Thai Markets Fall on Government’s Financial Moves

By WAYNE ARNOLD

Asia Times Online, Dec 22, 2006

Thailand's man in the hot seat

By Shawn W Crispin

FT December 22 2006

S Korean government fighting won rise

By Anna Fifield in Seoul

LAT December 23, 2006

Emerging market memories

(コメント) タイの資本規制に関する続報です.軍事政権の取った市場介入と,株価暴落に対する方針転換,タイ中央銀行への追従は,その混乱と無能を示しています.タクシンが首相であったら,このような失策は犯さなかっただろう,と論評される始末です.

結局,タイ政府は中国が行っていることをまねたかったのでしょう.短期の資本流入を規制し,外貨準備を増やして通貨価値の増大を防ぎ,資本逃避にも備える.もしそれができないなら,資本流入を抑えるために金利を下げることです.

しかし,アジア諸国は為替レートの増価を嫌い,ましてその乱高下を嫌い,金利引き下げによるインフレやバブルを嫌います.その結果,外貨準備の累積を受け入れています.もしこれを続けるなら,対外赤字や債務による制約を嫌うアメリカ政府は,ドル安を誘導することで,アジア諸国の「為替レート操作」に対抗する? ・・・でしょう.

金曜日,韓国の財務大臣は,USドルに対してウォンが上昇するのを制限するためなら「無限の資源」がある,と言いました.それは自国通貨の増発も辞さない,ということでしょう.テキスト風に,(実質的な)対ドル固定レート制を守るために自国の金融政策を放棄する,もしくは,アメリカからインフレを輸入する,と言い換えても良いわけです.もちろん,ドルや円に対して,既に,過去9年間で最も増加した水準に達しており,世界経済が減速する中で,輸出に依存した経済が不況に陥ることを恐れて発言したわけです.

世界の多くの国が,ますます輸出に依存して成長を目指し,他方で,アメリカもEUも日本も,積極的に世界の需要を管理できないとしたら,2007年はアジアにとって混乱と「新秩序」の年になるかもしれません.

LATは,新興市場へ2006年に流れ込んだ2600億ドルの資本が逆流するリスクを忘れてはならない,と政府や投資家に注意します.


WP Thursday, December 21, 2006; 12:00 AM

Globalization's Unequal Discontents

By William H. Overholt

保護主義者たちは自由貿易を支持する人を,雇用を守り輸入を排除してアメリカの周りに城壁を築く十字軍に対する,ほとんど反逆者・国賊のように非難する.特に,労働者の賃金を引き下げ,企業幹部の報酬を引き上げて,アメリカの所得格差を拡大する,と批判するが,それは一部だけ正しいに過ぎない.

確かに,アメリカの製造業における労働者には,失業した者もいただろう.しかし,全体としての労働者にとって,グローバリゼーションが意味することは保護主義者の主張と大きく異なる.彼らの話には三つの欠陥を指摘できる.

1.保護主義者は失業のすべてを中国との競争に帰して,グローバリゼーションのマイナスの影響を誇張している.事実は,アメリカの失業のほとんどが国内の生産性上昇によるものだ.

2.生活水準の上昇は,賃金水準だけでなく,安価な輸入品によって購買力が増えたことでも実現している.中国からの安価な輸入品だけでも,アメリカの低所得者層の実質所得を510%も改善した.

3.保護主義者はグローバリゼーションがもたらした新規雇用やグローバリゼーションによって守られた雇用を無視している.中国の巨大な市場と,中国との分業を介して高められたアメリカ企業の能力は,モトローラ,IBM,キャタピラー,ボーイング,農場において,多くの高所得雇用をもたらした.

確かに,グローバリゼーションでは開かれた経済において企業による雇用の再編を活発にし,そのようにして初めて各国経済は競争力を維持する.しかしアメリカ経済は,より保護されたフランス経済よりも失業率が低い.もっと保護されている,たとえばラテンアメリカの経済において,失業率は非常に高い.他方,アメリカよりも開かれたシンガポールや香港の失業率は低い.

こうしてグローバリゼーションは,雇用されている家族と失業した家族の間にある最大の所得較差を抑制している.グローバリゼーションは,世界で約30億人の人々を,生活困難な状態から近代的な生活水準へと引き上げてきた.彼らは食事や住居,衣服を得て,寿命も45歳以下から60歳以上に延びた.世界で最も高い成長率を示しているのは,インド,中国,インドネシアなど,非常に貧しい国や地域だ.

調整を強いられている分野で,多くの家族が失業に苦しみ,貯蓄を失い,住宅を手放すことで,強い不満を持つのは当然である.彼らの苦しみを無視できない.しかし,最大の善意が最悪の結果をもたらすこともある.保護主義者が提案するような政策は,失業を急激に増やすだろう.成長を損ない,世界の緊張を高める.

アメリカや指導者たちは,グローバリゼーションに苦しむ人々に教育や訓練,新しい産業における機会を提供して,グローバリゼーションからの利益を享受できるようにするべきだ.

WP Saturday, December 23, 2006; A21

How Free Trade Hurts

By Byron Dorgan and Sherrod Brown

NYT December 24, 2006

Goodbye, Production (and Maybe Innovation)

By LOUIS UCHITELLE

NYT December 25, 2006

Still Flying High

(コメント) 二人の民主党上院議員Byron Dorgan and Sherrod Brownはアメリカの通商政策を批判します.・・・雇用,公正,中産階級,安定,海外の労働条件改善,アメリカン・ドリーム,環境,労働,大企業だけでなくアメリカの繁栄を優先,・・・

LOUIS UCHITELLEは,アメリカ人が消費する財は何でも外国から輸入され,次第にサービスや革新的な商品まで輸入が増えていることを懸念します.なぜなら製造業が無いのに,それに関わる技術革新も起らないから.たとえ人民元が増価しても,製造業は戻らない・・・?

NYTは,グローバリゼーションの利益を実感できない人々に,アメリカの優秀な企業であるボーイング社も,新興市場からの大量の注文を得ることで蘇えったことを紹介します.


FT December 22 2006

Better times for east Asia's two big powers

The Japan Times: Friday, Dec. 22, 2006

Changes at the United Nations

CSM December 22, 2006

Feeding the hungry and saving lives, the UN is a blessing

By Salil Shetty

CSM December 22, 2006

The UN is not just dysfunctional - it's a criminal enterprise

By Tom DeWeese

(コメント) FTの立場は明確です.世界の安定と繁栄のために,アジアの二大国である日本と中国が友好関係を築くことが望ましい,と.日中の貿易や投資は,それが破壊されるなら,双方に甚大なコストをもたらすでしょう.そうであれば,安倍首相は支持者の歓心を買うために靖国神社に参拝して日中のナショナリズムを刺激するべきではない.胡錦涛主席は,日本非難や歴史を利用してナショナリズムを鼓舞してはならない.そして,アメリカ政府は中国の台頭を牽制するために日本の国家主義高揚を利用してはならない.

他方,The Japan Timesの論説は,潘基文事務総長の就任とボルトン代表の辞任を,特にアジアにとって,新しい国連の誕生として歓迎します.

国連を賛美する意見と,糾弾する意見を,CSMが載せています.国連は,地球規模の公共財を供給する,グローバル・ガバナンスのためのクラブなのか? あるいは,テロリストや独裁国家を延命するだけの,無能な官僚組織なのか?


The Guardian Friday December 22, 2006

Learn from our failures and create a socialist democracy

Gyula Hegyi

(コメント) ハンガリーの政治家Gyula Hegyiが,東欧とラテンアメリカを比較しています.

ハンガリーは今,二つのスキャンダルに直面している.西側所有の企業が,賞味期限の表示をごまかして,腐った肉を供給しようとした.その後,ドイツ企業が何千トンもの国内のゴミをハンガリーの不法廃棄所に持ち込んでいたことも暴露された.こうしたことはハンガリー人にはショックであるが,ラテンアメリカでは何十年もアメリカ企業によって行われた同様の事件に人々が苦しんでいる.自由市場の「理想的」世界においては,ゴミも汚染も,犯罪も,搾取も,自動的に発達した国から遅れた諸国に移転される.だからこそ,新自由主義の教えにもかかわらず,開発の遅れた諸国は強力な政府と規制を必要とする.

なるほど,ラテンアメリカの示す無慈悲な資本主義の歴史が,今や,東欧の現在と近未来をさし示す.その一方で,エネルギーが国有化され,無償の教育や医療,貧しい者への基金の再分配,その他多くの改革がラテンアメリカにもっと優れた未来を示している.もちろん,ヴェネズエラは1989年以前のハンガリーと同じ意味で「社会主義国家」ではありえないが,富の再分配は正しく行われている.


IHT Friday, December 22, 2006

To live and let live, among the olive groves

Firas Aridah

(コメント) ベツレヘムの北西にある小さな村Aboudについて,パレスチナ住民たちの苦しみと希望を伝えます.その村を,かつてイエスもたどった,と記録にあるそうです.昔からキリスト教徒もイスラム教徒も,仲良く一緒に住み,一緒に学校へ通って,昨年末からはイスラエルのユダヤ教徒も加わり,互いの信仰を尊重しながら金曜日の礼拝を欠かしません.

しかし,イスラエルの武装入植者は既に二つの入植地を建設し,広大な土地を占拠して何の補償もしません.イスラエル政府は防衛上の理由とは考えられない形で境界線を決め,住民たちを彼らの畑から切り離してしまいました.水とオリーブ畑を失ったAboudの住民は苦しんでいます.

Firas Aridahは,この聖なる土地の司祭として,責任を感じています.教会は学校,病院,老人ホーム,孤児院を建てました.それは恵まれない多くの家族のために役立ち,コミュニティーを結び付けました.しかし,キリスト教,ユダヤ教,イスラム教に原理主義が広まって,寛容さを失っていくことを憂慮します.

・・・われわれは一緒に生きることができる.信仰が異なっても,互いに無条件に,人間として受け入れることだ.神が教えるように,人として皆が公平に扱われねばならない.イスラエルはこれ以上入植地を増やしてはならない.暴力やテロを終わらせるべきだ.・・・


LAT December 22, 2006

How Bush can make Iraq disappear

Rosa Brooks

LAT December 22, 2006

A Congo lesson for Bush

By Adam Hochschild

BG December 24, 2006

Let's get everybody's troops out of everywhere

By Micah Zenko

(コメント) イラク問題は去らないし,良い解決策も見つからない.ブッシュ大統領はどうするべきか? Rosa Brooksは,ホワイトハウスからイラクという文字を消し,イラクから米軍を消すことだ,と言います.Adam Hochschildは,ベルギーのレオポルド国王がコンゴを侵略した歴史から教訓を得ます.侵略の理由は,工業化や輸送に不可欠な重要資源(当時,それはゴムでした)を得ることです.しかも,それを慈善やキリスト教精神で正当化しました.その莫大な利益は王族と関係の深い企業だけが得ました.つまり,・・・今のブッシュ政権のように.結局,レオポルドの銅像や彼の名前が付いた通りは,その後,すべてなくなりました.

Micah Zenkoは,アメリカの新しい外交政策を,一つの原則によって代表させます.「非占領の原則a doctrine of non occupation」です.


BG December 23, 2006

Trading places

By Robert Kuttner

(コメント) 京都議定書を無視し,地球を汚染し続けるアメリカに対して,市場システムを利用して処罰するべきだ,と,フランスのドビルパン元外相など,ヨーロッパ人が考えています.Robert Kuttnerは,アメリカがIMFを利用して新興経済の金融危機を処理し,WTOを利用して知的所有権の保護を強制している,もちろんアメリカの利益を反映させて,そうしたことを考えれば,市場を利用してアメリカに課税する,というのも当然だ,と書いています.世界市場システムは単一の主体になって,私たちの社会を変えていく以上,それを社会的な目的にあった形で利用するのは,アメリカだけがもはや独占できない,難しい問題だ,と.


NICHOLAS D. KRISTOF Fighting Brothels With Books NYT December 24, 2006

Ocean Rescue NYT December 24, 2006

Meat and the Planet NYT December 27, 2006

(コメント) 買春宿で働く女性,海,そして地球を,人類は滅ぼすのか,あるいは,救えるか?


WP Sunday, December 24, 2006; B01

Which Way Did It Go?

By Peter Baker

(コメント) 15年前にゴルバチョフが辞任し,ソビエト連邦は解体されました.しかし,現在のロシアでそれを祝う行事は何もありません.他方,レオにード・ブレジネフの生誕100周年を祝う式典が,先週,盛大に行われました.それはモスクワが世界に君臨した時代のノスタルジアと現代の復興とを重ねて,ロシア国民の大国意識をくすぐるものです.もちろん,現実には独裁と停滞の時代でした.

あれから,西側の資本主義的な民主主義ではなく,放射能物質ポロニウムを使って海外の亡命者を暗殺するような,KGB型の冷笑主義が蔓延するプーチンのロシアは,どのようにして生まれたのか? それは,中国のようでもあり,チャベスのヴェネズエラのようでもあり,ピノチェトのチリのようでもある,その三つをかねた政治体制です.

ライス国務長官は,ロシアには失望している,と語りました.エネルギーと政治が結びつくことは非常に問題である,と.しかし他方で,個人の自由は,かつて想像もしなかったほど,拡大している,と称賛します.

ゴルバチョフは,まだ,社会主義を救済できると考えていました.ソビエト連邦の崩壊をブッシュ大統領(現大統領の父)は「民主主義と自由の勝利」と称賛していました.その後,エリツィンは強烈な前進と後退をもたらしました.選挙は行われましたが,エリツィンが戦車に乗って議会を吹き飛ばしました.国有財産は売却され,一握りの億万長者を生みました.国境は開放されたけれど経済は崩壊し,各共和国は自主性を高め,ついにはチェチェンなどで内戦が起きます.

プーチンの強権政治は,次の時代に,石油価格の高騰と重なって,モスクワの支配を確立しました.石油成金だけでなく,景気回復に沸くモスクワには,巨大なショッピング・モールが続々と建設されているようです.しかし,富は社会を広く十分に潤しておらず,15年を経ても,ソ連崩壊を残念に思う人が61%もいます.すっかり西側のスタイルで食事をする人がスターリンのことを英雄のように語るのです.

今では,かつてのように国家に生活をかき乱されることは無いものの,政治に口出す人々を国家は弾圧し,暗殺してしまいます.多くのジャーナリストや富豪,スパイ,亡命者が暗殺されました.リトビネンコの暗殺をプーチンが指示したかどうかは分かりません.これはプーチンが築いた国家の性格なのです.「テロリスト」を暗殺する法律まで成立しました.プーチンは,多くの企業のトップにも支持者を据えて,富の流れをコントロールします.民主主義についての説教など,聞く耳を持ちません.

WP Sunday, December 24, 2006; B05

After the Fall

By Michael McFaul

WP Monday, December 25, 2006; A29

The New Threat To Europe

By Jackson Diehl

(コメント) 当時,世界最大の帝国であったソビエト連邦の解体は,奇跡的に平和な形で行われました.Michael McFaulは,三つの難しい問題を同時に解こうとした,と感嘆します.すなわち,1.新しい国境の画定.2.経済の復興.3.新しい政治システムの構築.平和的な解体は,その通過点でした.問題は,今なお,完全に解かれていません.

ロシアがエネルギーを武器として使用することは,懸念された以上に早く,既に現実となっています.もし冬にエネルギー供給を止めるなら,その人的および経済的な被害は軍事的な攻撃に等しい,とNATOの司令官は認めました.

しかし,エネルギー危機を防ぐことは,ロシア軍の侵攻を食い止めるよりも難しいようです.天然ガスの液化工場を建設し,中央アジアから新しいパイプラインを敷設するなど,莫大な投資を必要とします.しかも,危機を事前に予測することは難しく,各国は緊急時の資源配分を決めなければなりません.それゆえ,どのようにロシアの脅威に対処するべきか,主要国間の意見は分裂したままです.


IHT December 25, 2006

After Kim Jong Il

Catherine Field

(コメント) さて,朝鮮民主主義人民共和国の最後はどうなるでしょうか? 予測不可能な北朝鮮に対して,Catherine Fieldは歴史を振り返ります.第三国を介して国民が流出していることは,東ドイツの崩壊を示唆します.しかし,中国と韓国が「脱北者」を阻止するなら,この可能性は少ないでしょう.

中国を非難することは間違いです.アメリカも,北朝鮮も,日本も,ロシアも,核武装した北朝鮮が混乱に陥ることを避けるべきだと考えています.特に韓国は,ドイツ統一の過程を研究して,今もまま北朝鮮と統合するなら,そのコストは大きすぎる,と考えています.北朝鮮を経済援助し,もっと韓国と近い水準まで改善してから統合するほうが良いのです.それは独裁体制を延命している,と非難されます.しかし,少なくとも金正日はいつか死ぬでしょうし,北の体制も必ず終わるでしょう.


BOB HERBERT The Ninth Ward Revisited NYT December 25, 2006

ANDREW BAIRD False Hopes and Natural Disasters NYT December 26, 2006

Bill Clinton Recovering From Tragedy WP Tuesday, December 26, 2006; A25

(コメント) 同じ災害でも,その社会・政治的背景が異なれば,まったく違う意味を持つものです.

Spike Leeは,ハリケーン・カトリーナに破壊されつくしたニューオリンズのLower Ninth Wardに観た惨状を伝えるため,6時間のフィルムを作りました.「自分の眼で見ることだ.そこで360度回転する.破壊以外には,何も無い.・・・私は1957年に生まれたから,それ以前のことを知らない.しかし私はすぐに理解した.それは戦後の広島や長崎,ベルリンに違いない.」

しかし,人々の記憶は短く,新しい話題に関心は移ってしまう.災害前の危険な状態に戻っただけのパッチ・ワーク的防災,保険会社に見捨てられた被災者,75億ドルのルイジアナ救済計画が,住宅の立替や移転のため実際に支払ったのは,申請のあった89403件中の87件に過ぎない,・・・

他方,2年前,クリスマス休暇で欧米人が訪れていたインドネシアからインド洋沿岸を襲った大津波には,世界中から莫大な寄付が集まりました.しかし,次の津波による被害は防げるでしょうか? 海岸に植林する計画や,緩衝地帯を設ける計画は効果が無く,政治的にも操作されていると批判されます.ノーベル賞経済学者が言うように,被災者に対して援助や防災を施すことは間違いでしょうか? あるいは,低地の住宅建設を認めない都市計画が必要なのでしょうか?


FT December 26 2006

World in progress

古代ローマでは,飛翔する鳥の軌跡を詳しく研究した.それによって間違った選択を回避できると信じたから.現代では,エコノミストたちが同じようなことをしている.

2007年についての話が盛んに行われるが,もっと長期の成長に関する趨勢が変化することには関心が払われない.ほとんどの分析は,せいぜいこの10年かそこらを扱うだけだ.その先を見ることには二つの利点がある.つまり,間違いだと分かるまでに時間がかかる.探すべきものが分かれば,間違いを正すのも容易になる.

最も興味深い事実は,成長が起きたことそのものだ.ローマ帝国が崩壊してから1000年間,ヨーロッパの一人当たりGDPはほとんど変わらなかった.18世紀には,帝国の都市における一人当たり生活水準がフランスやイギリスの生活水準より高かった.それ以前,成長は専ら人口増加によるものだった.

蒸気機関とその後の発明がすべてを変えた.しかし,技術進歩なしには,なぜこれほど生活水準の改善は難しいのか? 人々は貯蓄し,投資するのであるから,より多く生産できるはずである.確かに最初の鋤を発明したとき,農業生産性は大きく伸びた.しかし,不断に発明をもたらさない限り,二番目の鋤はそれほど大きな改善をもたらさない.それどころか,より機械化が進めば,生産を維持するためにも,その更新に多くの資本が必要だった.長期的に消費を増やすため貯蓄を増やすことはできるが,それも数十年しか続かない.

世界的な貯蓄過剰についておしゃべりが起きたけれど,世界の貯蓄は十分には程遠いだろう.それは貯蓄が将来世代のために倹約することである以上,当然だ.むしろ奇妙に思えるのは,アメリカほど資本を引き寄せる国がないということだ.最近のアメリカの魅力とは,1990年代半ば以来,他の開発諸国に比べてアメリカが技術革新に先んじる神秘的な能力にある.それは習慣的な知識である.データが異なる事実を示し始めても.

The Guardian, December 26, 2006

2007: a storm is brewing

Larry Elliott

LAT December 26, 2006

The future's so bright?

By Lawrence H. Summers

The Guardian Wednesday December 27, 2006

Will the dam break in 2007?

Joseph Stiglitz

The Guardian Thursday December 28, 2006

2007: the Chinese new year

Martin Jacques

Guy de Jonquieres The shape of things to come FT December 27 2006

(コメント) Larry Elliottの論説は悲観的です.エコノミストは過去の趨勢を延長して「予測」することが多く,信用できない.2007年のシナリオとしては,楽観(中国も,インドも,アメリカも成長を維持,もしくは不況を回避して,世界経済の成長を持続),現状維持(中央銀行家たちの絶妙の金融政策でソフトランディングに成功),悲観(クラッシュと世界恐慌),を示します.3匹の熊が戻って来たとき,粥が食べられてしまったことを知れば,彼女をどうすると思うか?

メディアは暗い記事を書き,ジャーナリストやエコノミストも繰り返し警告しているのに,市場は歓心が内容です.世界は市場の楽観に満ち溢れています.この二つは交わらないのか? どちらが間違っているのか? とLawrence H. Summersは問います.

過去の記録は市場の判断を支持するけれど,市場は視野が狭い.グリーンスパンが警告したとき,それに従った賢明な投資家はむしろ大きく損をした.正常な市場がリスクを処理する技術は進んだが,異常な時期には経験も理解も不足している.市場が正しいと信じる者は,過去のクラッシュを市場が予想しなかったことも知っておくべきだ.ケネディーの名文句を借りて,恐れるべきはただ市場が恐れを持たないことだ,と結んでいます.

Joseph Stiglitzは,新自由主義がラテンアメリカで後退し,アメリカでも中間選挙が,アメリカ人の尊重する基本的価値を否定したブッシュ政権に方針転換を求めた,と最初に指摘します.経済はどうでしょうか? 中東そのものがリスクであり,アメリカ経済の減速もリスクです.FRBは金融政策を失敗し,住宅市場にバブルを生じ,その挙句,バブルの破裂で家計から富を奪いました.他方,公共による財政黒字を富裕層への減税で消耗し,肝心なときに利用できません.世界的な不均衡も,基本的に,アメリカ自身の国内不均衡が是正されなければ,中国やヨーロッパがいくら為替レートの調整に苦しんでも,解消されないでしょう.市場が示す異常なプレミアムの水準は,歴史的趨勢に戻るはずです.

Martin Jacquesは,中国の変化する要因に注目しています.Guy de Jonquieresは,アジアに関する重大事件を整理しています.


FT December 27 2006

Japan’s top daily forces war reappraisal

By David Pilling

The Guardian Thursday December 28, 2006

Beyond the bitter past

Orville Schell

(コメント) David Pillingが紹介するほど読売新聞や渡部恒雄氏がそれほど政治力を持っているのか分かりませんが,日本の世論を中国とのナショナリズム対立にしないと確認してほしいです.この記事は,むしろ読売新聞と渡辺氏がFTを利用して,日中の和解を宣伝するために書かせたものではないでしょうか?

左派のThe Guardianも,読売新聞が特集記事を出版したことについて紹介しています.読売の特集は,安倍首相が中国を訪問する環境を作るために書かれた,と示唆します.安倍首相の優等生ぶりを見ると,渡辺氏の方がよほどニクソン的です.


FT December 27 2006

A scary vacuum in world leadership

The Guardian Thursday December 28, 2006

Reality strikes back, but let's not have too much realism

Timothy Garton Ash

(コメント) アナン,シラク,ブレア,プーチン,ブッシュ,・・・世界の政治エリートたちには,来年,選挙による真空状態が生じます.メルケルや安倍が世界を指導する力にどれほど期待できるでしょうか? 二人が最善を尽くしても,権力の真空は残り,恐怖を生む,と.

世界政治において2007年はリアリズムの年になります.Timothy Garton Ashは,それが危険な幻想を捨てるという意味なら望ましいが,理想主義を無視するだけならひどい話だと考えます.大国の権謀術数や国益だけを重視する旧リアリズムに戻るのではなく,現実に依拠したリアリズムにより国際社会を育てるべきだ,と.


FT December 27 2006

Behold Marx’s twitch

By John Thornhill

(コメント) グローバリゼーションによる破壊と世界の不平等な分配状態が刺激となって,また,悪しき共産主義の現実が葬られたことで,貧しい諸国やプロレタリアート,ヨーロッパの知識人,など,マルクスへの関心を強めています.今こそ,マルクスを読むべきだ!?


The Guardian Wednesday December 27, 2006

Scots and English would pay dearly for ending the union

David Clark

(コメント) 通貨統合と同じで,多文化主義や連邦制は,イングランドとスコットランドの同盟を解体する契機をふくんでいるようです.グローバリゼーション,EU,北海油田,ナショナリズム,移民論争,その他,政治のダイナミズムは構造を変化させたというわけです.平和的な分離,新しい統合,小国としての利益.もちろん,大国には有利な点もあります.しかし,大国であることが難しい時代になるのかもしれません.


The Ford presidency LAT December 27, 2006

Gerald R. Ford, 1913-2006 BG December 28, 2006

Mark K. Updegrove Ford's legacy of healing BG December 28, 2006

In praise of ... President Ford The Guardian Thursday December 28, 2006

David Hume Kennerly Becoming president IHT Thursday, December 28, 2006

Jonah Goldberg Jerry Ford's magic LAT December 28, 2006

BOB HERBERT Lessons Never Learned NYT December 28, 2006

Gerald R. Ford NYT December 28, 2006

DAVID HUME KENNERLY Becoming the President NYT December 28, 2006

BARRY WERTH Reversal of Fortune NYT December 28, 2006

George F. Will Gerald Ford's Perfect Pitch WP Thursday, December 28, 2006; A27

Ron Nessen Moral Leadership WP Thursday, December 28, 2006; A27

(コメント) ジェラルド・フォードと言われても,彼がアメリカ大統領であったことを知っている日本人は少ないでしょう.アメリカ人なら知っている? そうでもない,と思いました.しかし,彼は「良い時期」に亡くなったのです.フォードとは,ニクソンがベトナム戦争やドル危機に苦しみ,ウォーターゲート事件で弾劾される前に辞任した後,予期せぬ大統領職に就いた人物です.戦後国際秩序再編の嵐に巻き込まれながら,彼は両党の和解や,政治に対する国民の信頼回復に努めました.イラク戦争と占領政策に苦悩し,中間選挙に敗北したブッシュ政権について,彼の部下であったチェイニーやラムズフェルドについて,死後に公開する約束で,ウッドワード記者のインタビューにも応じていたのです.


FT December 28 2006

Hitting the big time with that air guitar

(コメント) インターネット世界に,YouTube, MySpaceが示すような,新世代のサイトが拡大しつつあるようです.それは,普通の人々が,誰でも自由に,ビデオ,写真,ブログ,などを提供し,利用し合って,編集し,独自の新しい楽しみを発見する世界です.専門家や職業と,アマチュアの境界線は消えてしまうでしょう.人々が自由に集まる場所があれば,そこにビジネスや利益も発生するわけです.

******************************

The Economist, December 2nd 2006

Don’t mess with Russia

The Litvinenko affair: Murder most opaque

Russian energy: After Sakhalin

Financial centres: Think local

Rural poverty: A job for all seasons

Eastern Europe’s stars: The dynamic duo

(コメント) ロシアのエネルギー政治には辟易させられます.かつてKGBについて言われたジョークを記事は紹介しています.「そいつを連れて来い.私が罪を用意するから.」 今度はサハリンUプロジェクトが狙われました.ロシアの資本が入っていない巨大プロジェクトです.東アジアの有望な市場を狙えます.標的を決めたら,今度の罪は何にするか? 環境規制にしよう・・・.

プーチンはもちろん,国内政治の要求から,こうした野蛮な手法を選択するのです.国内政治は,疑う余地もないギャング支配です.それは,ロシアの権力が分裂し,弱いことを示している,と論説は指摘します.ロシアの政治的崩壊が世界最大の油田の上で起き,しかも,その頃,中国が経済成長を離陸させて資源やエネルギーを渇望し始めたことに,国際政治は将来も苦しめられます.

これまでの新興市場が成長を加速し,大量の資本が流入し始めると,必ず,国際金融センターへの誘惑に政治家たちは翻弄されました.ドバイもそうでしょうか?

私には,ヒスパニックの非合法移民労働者たちがカリフォルニアの農業を支える現状を,日本の近未来と重ねて見るほうが刺激的です.彼らの雇用が次第に他の分野や地域にも拡大し,長期的には,上昇する経過をたどるようです.しかし当面,低賃金と差別はなくなりそうもありません.国境にフェンスを築けば,移民たちは帰国を遅らせ,家族を呼び寄せるでしょう.そして,その賃金に見合って,都市にはスラムが形成されます.

東ヨーロッパの小国がEU加盟によって成長のキャッチ・アップに成功したのは確実です.そして,ユーロと資本流入,インフレ,賃金上昇,などにより,今後の経済運営が試されます.