IPEの果樹園2006
今週のReview
12/11-12/16
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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未来の地域統合, ドル暴落? イラク政策の転換, イギリスの核軍備, 多文化主義,
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
The Globalist November 30, 2006
By George Magnus
NYT December 2, 2006
Plan for South American Pipeline Has Ambitions Beyond Gas
By JENS ERIK GOULD
(コメント) EUが世界の未来を示す一つのモデルであり,そこでも示されたように,エネルギー供給と安全保障,そして貿易・輸送問題,さらに通貨・金融問題が結びついていると言えるのです.中東の産油諸国やロシアが,中国やアジア諸国と新しい連携を模索するのは,将来の地域同盟や経済統合をもたらすかもしれません.また,ラテンアメリカでも,アメリカがメキシコの経済安定化と石油資源を重視するように,ラテンアメリカにおける国際的なパイプライン建設は,巨額の長期投資と,それを支持する国際政治同盟をもたらすでしょう.
George Magnusは,2000年以上にも渡り,絹,スパイス,そして石油が,その時代の富と政治とを密接に関わらせたことを強調します.世界宗教や帝国も,これらのルートにしたがって盛衰を繰り返したわけです.
再びシルクロードが文明の中心になるとき,世界の富や政治権力の構造は大きく転換します.世界の金融や景気変動も,中東から南アジア,中国を軸にして変わるだろう,とMagnusは考察しています.「新シルクロード」では,技術や消費財,労働者も,国境を越えて利用されます.そのよう超国家的協力を促す制度,政治的な意志があるとは,まだ,誰も信じていませんが.
ベネズエラのチャベス大統領は,5000マイルのパイプラインによって天然ガスを近隣諸国に供給する計画を進めています.しかし,この巨額の投資を誰が,アメリカに頼らず,どのように行うのでしょうか? 建設や投資をめぐって,ロシアや中国とも関係を緊密にするでしょう.他方,パイプラインが建設されれば,環境や少数民族への影響は著しく破壊的だ,と予測されています.
Nov. 30 (Bloomberg)
Dollar's Dive Depends on Fed Zigging as ECB Zags
Mark Gilbert
NYT December 1, 2006
Economic Storm Signals
By PAUL KRUGMAN
FT December 2 2006
A lower dollar helps the global economy
The Guardian Saturday December 2, 2006
US dollar: Everybody's problem
NYT December 2, 2006
Volatile Dollar May Not Be Scary to Washington
By STEVEN R. WEISMAN
(コメント) アメリカ経済の減速とドル暴落は,常に,話題として漂っています.アメリカにおける住宅バブルの破裂が,どのような結果をもたらすのか,楽観と悲観が入り乱れています.ドル安も,世界の不均衡を調整するために有益なのか,それとも調整の幅を超えてドル暴落と金融市場の混乱,世界不況に至るのか.
人民元が20%増価するよりも,ドルが20%減価するほうが,世界経済にとって望ましいのではないか? そして,日本やヨーロッパの成長率が高まるなら,変動レートに依拠した国際通貨システムはすばらしい,と支持者が増えるでしょう.FTの記事は,世界中が「緩やかに調整する」ことを求めます.
しかし実際には,各国の国内政治が重要です.中間選挙後のブッシュ政権,北朝鮮や教育基本法にこだわる安倍首相,メルケル首相の外交やフランスの大統領選挙,ブレア後のイギリス,あるいは,北京オリンピックや,台湾の総統選挙でしょうか.
The Guardianの論説は,ドル安がイギリスの消費者を喜ばせる以上に,世界全体の問題になるだろう,と考えます.アメリカは,ドル高を他国の問題として無視しますが,ドル安は自国にも脅威であると考え,協調を模索するでしょう.ドル安は,次第にアメリカの輸出を増やすかもしれませんが,当面,輸入価格を上昇させ,インフレと金利引き上げ(あるいは,住宅バブル破裂後の金利引き下げ中止)を予想させます.アメリカの景気が悪くなって輸入を減らすのです.ドル安は,ヨーロッパや日本,中国の問題です.
ポールソン財務長官が,1兆ドルに迫る貿易赤字を持つアメリカの立場を「強いドルが再考の国益」というのは,ユーロの間違いだろう,IIEのバーグステンは批判し,アメリカは貿易赤字が減るのを歓迎する,と主張しました.他方,ユーロは極端に負担を強いられている,と,フランスはアメリカだけでなく,日本や中国を批判します.
アメリカ・EU・アジアの三角国際政治・通貨交渉が制度化される可能性はあるのか,それを試す時期が来たわけです.たとえポールソンとバーナンキが訪中して説得しても,中国政府は,「世界市場に参加するために国内で厳しい調整を実行してきた上に,さらに輸出を困難にして,社会・政治不安を高めるような急激な人民元高を受け入れる余地はない」と,強く反対するはずです.
もし資本移動にまで影響が及べば,大幅なドル安が進むことでアメリカへの投資が有利になるまで,一気に急激なドル安が進む,という予想が実現する領域が見え始めます.一体,ドル以外に何に投資するのか? という反論は間違いだと思います.アメリカは大幅な赤字国であり,海外の投資家たちは協調を信じることができません.パニックは遍在します.
FT December 3 2006
The waning dollar and a not-so-brave new world
By John Plender
FT December 3 2006
Europe will not escape the impact of dollar depreciation
By Wolfgang Munchau
FT December 4 2006
Europe bets on weathering a US downturn
By Chris Giles and Ralph Atkins
The Guardian Monday December 4, 2006
The dollar melts as Iraq burns
James K Galbraith
(コメント) 世界金融市場統合という「すばらしい新世界」においては,当面,債務が消費を制約する恐れは無く,対外不均衡が危機を誘発する恐れも無いでしょう.ポール・ボルカーは世界を反インフレに転換したし,日本の過剰貯蓄は世界市場に放出されました.アジアの過剰貯蓄は,中国における積極的な投資(いわば,産業革命)とアメリカの過剰消費(とバブル)を支えたことで,「すばらしい新世界」を市場参加者に確信させたのです.これほどの不均衡があっても,主要通貨間の為替レートは安定しています.今までは.もし経済政策が問題を解決できないという不信を招いたときは,すべてが新しい条件を求めて殺到するでしょう.・・・
ドル安が進むとき,アジアと違って,ヨーロッパでは貿易よりも金融取引が重要です.世界の主要諸国は通貨・金融危機を避けるために,協調して,金融緩和と財政刺激策を取るでしょうか? しかし,ショックの影響は不均等で,協調の合意には時間がかかり,弱いものでしかなく,市場を動かせないかもしれません.実際には,十分に自国で不況が明らかとなったときしか,実行されないでしょう.
「アメリカがくしゃみすれば,ヨーロッパは風邪を引く」という昔の考えは間違いだ,とChris Giles and Ralph Atkinsは書きます.それはヨーロッパ域内の取引が重要であるだけでなく,アメリカ以外の国からも多様な需要を得ているからです.ハイデルベルグに来る観光客は,アメリカから日本へ,そして湾岸諸国,中国,インドへと多様化しながら,増加しています.ECBや労働市場の方が,ドル安より,EU市場の成長を持続する点で重要です.
James K Galbraithは,ドル安がアメリカへの不信である,と考えます.イラク戦争によって,アメリカの政治エリートによる国際支配は信用を大きく失いました.貿易赤字は減らず,財政赤字や保護主義に向かう懸念もあります.アメリカとドルの時代は終わり,世界の安全保障と金融とのリンクも終わるでしょう.ドル安は,その始まりです.
FT December 5 2006
Falling dollar saga still has a long way to go
By Martin Wolf
NYT December 6, 2006
When the Dollar Talks Back
IHT December 7, 2006
Dollar, yuan, and wary euro
Peter Navarro
WP Friday, December 8, 2006; A39
Dangers in a Dollar on the Edge
By Robert J. Samuelson
(コメント) Martin Wolfは,ドル安による調整がどこに向かうのか,その現状を考察します.まず,ドルは貿易でウェイトされた実効率で十分に下がることです.他方,その他の世界では需要が増えなければなりません.次に,ドルの下げ幅は対外不均衡を大きく改善し,融資を続けることを市場が納得するほど大きくなければなりません.最後に,それでもドル圏やドルとの調整を抑えている地域と,変動レートの地域との間で,調整の問題は残されたままです.
しかも,調整過程の進行は多くの段階を経なければなりません.最初は,ドル安でアメリカの経常赤字が増えるでしょう.それは次第に減少し,安定するはずです.その過程で何が起きるのか,分かりません.NYTも,最大の問題はドルの下落幅とスピードだ,と指摘します.
ブッシュ政権は財政赤字や貿易赤字を無視するために,ドルの安定性を重視してきました.中国はまだドル資産を保有し続けるし,アメリカ市場への輸出を望んでいる,といった具合です.それは余りにも自国の経済運営を外国の中央銀行に委ねてしまうことになった,と批判します.要するに,破局を避けるためには,アメリカが財政赤字を減らすと同時に,中国と金融政策を協調させることです.つまり,ポールソンとバーナンキが中国を訪れます.
Peter Navarroも,米中貿易摩擦や通貨問題を交渉する席にEUが加わるべきだ,と指摘します.また,Robert J. Samuelsonは,ドルの特殊な地位と調整問題の重要性を指摘します.
Japanese inflation FT December 1 2006
Japanese corporate profits FT December 4 2006
(コメント) インフレを懸念する日銀,配当や賃金に回さない経営者,日本の景気回復が低迷するうちに,世界の調整が始まろうとしています.
BG December 1, 2006
Death of the Mideast peace process
By Chuck Freilich
NYT December 1, 2006
The Energy Wall
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) イラクの政策変更と同時に,中東和平を再び進めるチャンスが来るかもしれません.ハマスを追放することも,アッバス大統領にてこ入れすることも,イスラエルやヒズボラが一方的な軍事力を行使することも,シリアが動くことも,うまく行きませんでした.つまり,中東和平に期待する時期が来たのです.
THOMAS L. FRIEDMANも,イラクで行き詰ったアメリカの政策は,イスラエル・パレスチナ紛争の歴史的大問題に照らして再考するべきだ,と主張します.それはアラブ世界と欧米との文明の衝突です.航空機のハイジャックも,自爆テロも,この歴史を継承しています.オスロの和平合意は,イスラエルが交渉相手となるアラブ代表を認め,彼らを支援する合意でした.しかし,オスロ合意も,イラクもアフガニスタンも,欧米は交渉相手を失いました.その全体を見るには,イスラエルとパレスチナの関係に戻ることです.
イスラエルは,今,壁を建設しています.それはどういう意味を持つでしょうか? EU政治家の中には,トルコとの間に壁を築こうとする者もいます.しかし,改革をすべて諦めても,イラクやアフガニスタンを壁で守ることはできません.FRIEDMANが繰り返し主張してきたのは,中東の政治的不安定さを欧米社会に持ち込む,石油への依存を断つことです.そうすることで,初めて,欧米社会はアラブ世界の最良の部分を支援し,協力できるのです.
The Guardian Friday December 1, 2006
Education reforms
(コメント) 教育改革は,確かに,ブレアが国家に求めた最大の積極的な役割です.システムを変えても,学校を絞って投資を増やしても,目標や基準を変え,新しいカリキュラムを考えても,教育の成果を思い通りに導くことはかないません.
Rosa Brooks Abandon Iraq to save it LAT December 1, 2006
Charles Krauthammer This Is Realism? WP Friday, December 1, 2006; A29
David Ignatius Groping for the Exit WP Friday, December 1, 2006; A29
Jeff Jacoby Fighting to win in Iraq BG December 3, 2006
Walter Isaacson Is Baker a 'Wise Man' or a wannabe? LAT December 3, 2006
FRANK RICH Has He Started Talking to the Walls? NYT December 3, 2006
Douglas Brinkley Move Over, Hoover WP Sunday, December 3, 2006; B01
Zbigniew Brzezinski There is much more at stake for America than Iraq FT December 4 2006
Middle East mayhem FT December 4 2006
Niall Ferguson The surrealism of Iraq LAT December 4, 2006
Robert D. Novak Bush's Shrinking Options WP Monday, December 4, 2006; A19
Robert Kuttner Another Quagmire The American Prospect 12.04.06
Richard Cohen How's Your War? WP Tuesday, December 5, 2006; A29
Carlos Pascual and Kenneth Pollack Rights and wrongs of fixing Iraq FT December 6 2006
Jeff Jacoby The danger of engaging with the enemy BG December 6, 2006
Jonathan Steele Mission accomplished? The Guardian Wednesday December 6, 2006
David Ignatius The Price of Iran's Help WP Wednesday, December 6, 2006; A25
David S. Broder A Study In Comity WP Wednesday, December 6, 2006; A25
(コメント) 今週の英語メディアが最も多くの論説を載せたのはSIG(イラク研究グループ)による報告書でした.ブッシュ政権のイラク政策に議会の長老たちが転換を求めた内容です.
ブッシュの支持者は,アメリカ軍が撤退することは,われわれがイラクを見捨てることを意味する,と主張します.しかし,Rosa Brooksは,イラクを救出するためには,撤退するしかない,と考えます.イラクは既に内戦を始めている.アメリカ軍が居ても.アメリカにはイラク国民を助ける責任がある.しかし,何が可能で,何は不可能か,判断しなければならない.ベトナムにおいて,アメリカ軍はベトナムを助けるために村を破壊し続けた,と非難されました.
Charles Krauthammerは,リアリズムとは何か,と問います.もしアメリカが本当のアイデアリズムに従えば,チャド,ビルマ,ダルフールに軍事介入するだろう.アメリカがイラクやアフガニスタンに介入したのはアメリカの利益によるものだ.安全保障や石油を確保するという,リアリズムが外交の中心にあった.他方,イラクの成功も失敗も,イラク自身の政治によって決まる.イランやシリアを加えることでリアリズムは平和をもたらせるのか? 内戦に彼らは多く参加している,と.長期的には,イランとシリアの同盟関係がこの地域を再編するでしょう.
David Ignatiusは,ブッシュ大統領が求めるような,イラク政府への権限委譲による名誉ある撤退などありえない,と考えます.アメリカ軍の撤退が進めば,混乱はさらに増すからです.まったく新しい戦略的な打開策を求めるほど,自体は絶望的だ,というわけです.
Walter Isaacsonは,John J. McCloy,Dean Acheson,W. Averell Harriman,Robert Lovettなどを,冷戦期のアメリカ外交政策を形成した「賢人たち」として,かつて描きました.重要な方針転換は,独立したものでなければ要求できません.同時に,親しい者でなければ助言できません.彼らは常に,実際的で現実的,イデオロギーに縛られず,党派を超えて,アメリカの利益を追求しました.ベイカーは彼らの伝統に従うべきです.
Douglas Brinkleyは,ブッシュがフーバーと同じように,正直であった,と書きます.彼らはルーズベルトやクリントンのように,変化する現実に合わせて「カメレオンのように」自分の政治手法を変えなかった.むしろイデオロギーに忠実であったから,フーバーは株価暴落の影響を深刻に考えていたけれど行動を抑制した.同様に,ブッシュは9・11後,イラクとの戦争を自分の選択であると理解した上で,それでも開戦に踏み切った.イラク戦争とベトナム戦争を並べて,ブッシュとリンドン・ジョンソンを並べるのは間違いだ,と考えます.ブッシュはフーバーと並ぶ失敗の研究に連なるでしょうが,ニクソンのような悪人ではない,と.
Jeff Jacobyは,たとえヒトラーでも和平に引き入れることを望むのか? と問います.ミュンヘン会談を終えたチェンバレンは「平和を得た」と絶賛されました.ヒトラーが戦争を始めるまでの僅かな間です.全体主義体制のシリア,聖戦を唱えるイランと,交渉をまとめる代価とは何か?
Carola Hoyos and Roula Khalaf Oil groups dream of day they can enter Iraq FT December 7 2006
Philip Stephens At last, Bush faced with obvious truth on Iraq FT December 7 2006
Baker report's whiff of realism on Iraq FT December 7 2006
Margaret Carlson Forget Iraq, What We Need Is a Panel on Bush Dec. 7 (Bloomberg)
A path back to reality BG December 7, 2006
Joan Vennochi Common ground remains key BG December 7, 2006
Peter W. Galbraith 'Pie in the sky' report won't fix Iraq BG December 7, 2006
Iraq Study Group The Guardian Thursday December 7, 2006
If not now, when? The Guardian Thursday December 7, 2006
Jonathan Steele Baker's predictable plan is what Bush is already doing The Guardian Thursday December 7, 2006
Simon Jenkins Humiliating the nation The Guardian Thursday December 7, 2006
Julian Borger Selling Iraq The Guardian Thursday December 7, 2006
What they said ... LAT December 7, 2006
... and who will listen? LAT December 7, 2006
It's a war, not a buffet LAT December 7, 2006
Welcome Political Cover NYT December 7, 2006
David Ignatius Baker-Hamilton Does Its Job WP Thursday, December 7, 2006; A31
George F. Will A Report Overtaken by Reality WP Thursday, December 7, 2006; A31
E. J. Dionne Jr.An Ideal In Need Of Rescue WP Friday, December 8, 2006; A39
(コメント) 「絵に描いた餅」というのは英語にもあるのですね.・・・'Pie in the sky' なるほど.
リアリズムや「リアリティー」をめぐる論争が噴出しています.誰と交渉するのか? 誰が聞くのか? 軍事的に征圧し,敵を圧倒するしか,戦争は終わらない,と反論します.
The Guardian Saturday December 2, 2006
Centres of barbarism
Melanie McFadyean
(コメント) Harmondsworthの移民退去センターで暴動が起きたようです.民間が運営する拘置所の様子を知れば,それは当然の結果である,と記事は紹介します.IRRによる報告内容も指摘されています.亡命や難民申請者の収容所.われわれの税金で,こうした野蛮な施設が運営されている,と記事は批判します.
BG December 3, 2006
Cool-headed, warm-hearted economics
By Peter Orszag
FT December 5 2006
Richest 2% hold half the world’s assets
By Chris Giles, Economics Editor in London
(コメント) アルフレッド・マーシャルが経済政策を考える際に求めた"cool heads but warm hearts"を,民主党が多数を占める議会も追求するでしょう.成長にもかかわらず,労働者たちの雇用は不安定で,賃金は上昇せず,社会福祉を削られてしまいました.政府は401Kで,労働者への社会保障制度を株式投資に変えてしまいました.
世界の所得分配も,恥知らずなほどに不平等化してしまいました.大人の最も裕福な2%が,世界の資産の半分を所有しています.他方,貧しいほうの半分の人口が所有するのは,世界の資産の僅か1%です.
WP Sunday, December 3, 2006; B07
A Blame Game China Needs to Stop
By Elizabeth Economy
FT December 4 2006
Chinese dig for raw materials to sustain fast growth
By Richard McGregor in Maashan
FT December 6 2006
China can make Paulson’s mission worthwhile
By Guy de Jonquieres
(コメント) 中国の環境問題は,早くも,国内政治を動かしつつあります.地球温暖化が関心を集める中で,中国は2008年の北京オリンピックのテーマを環境保護にするはずでした.しかし,その成果は乏しく,2009年にはアメリカを抜いて,中国が温暖化ガスの世界最大排出国になる予定です.今では「環境コロニアリズム」として多国籍企業による環境破壊を告発するキャンペーンに走っています.もっと多くの中国企業が環境規制を守っていないのに,多国籍企業を集中的に非難します.中国国内の環境破壊に対して,各地で抗議行動が過熱しつつあります.これらは中国政府をイライラさせるわけです.
Elizabeth Economyは,中国が環境規制を促す法整備や企業への誘因を与え,国際社会との協力から最も多くを得られることを認めて,積極的に協力する姿勢を示すべきだ,と主張します.
あるいは,資源やエネルギーをめぐる争奪戦,外貨準備とドル安をめぐる不安,など,世界は中国の渇望と熱狂によって作り変えられつつあります.混乱を回避し,新しい秩序を築くためには,中国とアメリカが,あるいはWTOやBISが,多面的に協力するべきです.
FT December 4 2006
High price of nuclear prestige
By Philip Stephens
将来の安全保障に関して慎重な態度を取るなら,われわれは最新鋭の核兵器,トライデントを保有するべきだ.それがブレア政権の説明である.われわれは危険な世界に生きているから.2050年まで,そして,それ以後も,イギリスは核兵器を保有し,世界の大国として振舞いたい.それは,明言されてはいないけれど,イギリス政府の希望である.
ブレアがトライデント搭載潜水艦の更新を提唱したわけではないし,その後継者であるゴードン・ブラウンが同意したわけでもない.そうしないとしたら,イギリスの世界的な役割が縮小することを受け入れることだ.ブレアとブラウンは多くの点で反目するが,世界におけるイギリスの地位について謙虚であるとは思えない.だから論争は従来の政府と同じ(是認論)だ.
しかし政府は,イギリスの将来の安全にとって核装備が不可欠だと主張することはできない.既に核を保有していないとしたら,今から政府が核武装を真剣に考える,というのは論外だろう.150億から200億ポンドと推定されるトライデントの更新費用についても同様(に論外)だ.
フランスが核装備を段階的に廃棄するなら,ブレアが(核装備の廃棄を)決断する,という判断もできる.フランスがヨーロッパで唯一の核保有国になることを(許しても良いなどと)想像できる老練な政治家はいない.
しかし,こうした説明は防衛白書に何も書かれていない.最初に出てくる議論は,誰も共感し無いだろうが,同盟国としてのフランス,という考え方だ.ブレアはむしろ,不確実性,を強調した.50年前にイギリスが核武装したとき,今日のような世界を考えた者はいなかっただろう.同じことは2050年についても言える.
防衛白書は三つの潜在的脅威を指摘する.1.主要な核保有国からの脅威.つまり,ロシアや中国だ.2.地域的な核保有国.インド,イスラエル.そして,北朝鮮やイランも入るかもしれない.3.テロリストによる核の利用.
イギリスが世界的な役割を担うということには同意する.しかし同じ費用によって,核武装以外の形で世界的な役割を果たすこともできるのだ.これは判断の問題である.
The Guardian Monday December 4, 2006
A complete fantasy
Roy Hattersley
The Guardian Monday December 4, 2006
From deterrent to dividend
Lee Willett
FT December 5 2006
Unanswered questions surrounding Trident
The Guardian Tuesday December 5, 2006
Nuclear weapons: Why? And why now?
The Guardian Tuesday December 5, 2006
Forking out for Trident
Robert Fox
The Guardian Tuesday December 5, 2006
Democracy is alive and well
Neal Lawson
(コメント) Roy Hattersleyは,核兵器に反対する議員たちがブレアの提案に賛成していることを批判します.核抑止が正しいときだけ,使用しないけれど核武装する,という論理には根拠がある.しかし,ソビエト連邦と違って,破綻国家やテロリスト集団には,そのような抑止力を期待できない,と批判します.
Lee Willettは,NPTが本来前提したように,核軍縮の道を考えます.また,FTはこの決定の意味を考えます.なぜこの時期か? なぜタカ派の防衛論か? 誰に対する核抑止か? 核が安全をもたらすのか? その費用に比べて,他にも緊急に解決するべき防衛問題があります.
Neal Lawsonは,この国の民主主義が試されている,と考えます.
The Guardian Monday December 4, 2006
Integration and terrorism have nothing to do with each other
Madeleine Bunting
(コメント) ワーキング・プアが増え,社会給付を削りながら自民党政治家のために道路建設財源を復活し,それでも拉致家族問題の解決や教育基本法改正で「美しい国」の実現を唱える安倍首相(あるいは石原・東京都知事)に,その政治感覚を問い直すため,この論説を読んでほしいです.
イギリスは多文化主義(multiculturalism)の成功例であり,ヨーロッパ諸国に比べて,移民のマイナス面よりもプラス面が強調され,多数によって支持されてきた国です.ブレアの重要演説に関して,Madeleine Buntingは論争の正しい方向付けを求めます.
まず,テロや治安の問題と,社会的統合や多様性の問題を,切り離す必要があります.統合化されていない,英語を話せない家族は,爆弾など作れません.しかし,社会統合が進んでからといって,テロがなくなるわけでもないのです.社会統合の目的は,基本に戻って,世代を超えて貧困が続いたり,社会関係が調和を欠いたりしないように,平等な機会,参加を保障することです.
多文化主義は,破棄するのではなく,改良するべきです.それは,「平等な機会」と「多様性への寛容」を共通の文化として育てることです.もちろん,コミュニティーの問題や要求は非常に多様です.しかし政府には,彼らの要求を熟知して,多文化主義の原則に照らして実現する,という方針を示す重要な仕事があります.
アイデンティティーを強制することは間違いです.まず,社会の多様性と統合とをトレード・オフで示すような似非ロジックを拒否すべきです.エスニシティーが多様な地域において社会的な信頼がかけている,という二つの統計を示す議論は,彼らが非常に貧しいことを無視しています.豊かで多様な社会も実現可能です.
国民意識を高めるべきだと主張し,「イギリスらしさ」や国旗を愛する人々は,むしろ社会を分裂や対立に導くでしょう.若者たちに国家の成り立ちやアイデンティティーを押し付ける誇大な歴史観は,彼らがはぐくんできた多様なアイデンティティーを破壊し,侮辱するだけです.
イギリス人のアイデンティティーは高度な複合型・ハイブリッドとなっています.アジア系イギリス人,イスラム教徒やヒンズー教徒のイギリス人,アジア系のスコットランド人,・・・ 移動性に富んだ現代では,子供を育てるのに好ましい土地に,彼らは帰属したいと思い,アイデンティティーを感じるでしょう.そのような多元的アイデンティティーを社会が許容することは,アメリカにおけるアイルランド系アメリカ人やイラン系アメリカ人の繁栄が示しています.
アイデンティティーは,国家ではなく,地域に根ざします.そして,階級やエスニシティーを超えて結びつきを深める地域に,コミュニティーは育つのです.地域のアイデンティティーを共有することで,社会的な結束は高まります.
The Guardian Monday December 4, 2006
Latin America: Continent of the left
The Guardian Monday December 4, 2006
Turning a blind eye
Kenneth Rogoff
FT December 5 2006
Now is the time to engage with Hugo
LAT December 5, 2006
In Latin America, the challenge is pragmatism
By William Ratliff
(コメント) 右派のピノチェト,左派のカストロ.ラテンアメリカを象徴する二人の独裁者が終幕を迎えました.ラテンアメリカ諸国の政府は,あるときは右に流れ,あるときは左に向かいました.今はまた,チャベスを筆頭に,左派のときです.The Guardianの論説は,中道左派の政権がラテンアメリカにおける無視された多数の貧しい人々の声を政治に反映させるべきだ,と訴えます.
他方,Kenneth Rogoffは,経済状態がますます悪化し,アメリカ政府が地域への関心を失う中で,危機が再発することを憂慮します.各国の政治が左右の対立で麻痺しています.中国の台頭,エネルギー価格の上昇で,産業構造や政治的パワーが変化しました.市場による成長よりも,政治による再分配が強まっています.厳しい世界競争の時代に,中道的な選択肢はない,と.
他方,William Ratliffは,ラテンアメリカの左派と右派は,その主張や政策をすっかり変化させた,と指摘します.旧左派のように危険ではないが,新しい左派の伸張が見られるのは,貧困,政治的不満,反米主義,が高まっているからだ,と.アメリカは,政府の左右に関わらず,こうした問題に対処するように各国を指導しなければなりません.
John Bolton: Few tears for the great intimidator The Guardian Tuesday December 5, 2006
Mr. Bolton Resigns NYT December 5, 2006
Bolton goes, at last FT December 6 2006
Robert D. Novak Bringing Down Bolton WP Thursday, December 7, 2006; A31
Michael Schwartz The myth of more in Iraq Asia Times Online, Dec 8, 2006
(コメント) ボルトンの辞任は遅過ぎました.任命自体が無理であったと思います.では,ウォルフォヴィッツの世銀はどうでしょうか?
BBC 2006/12/05
In pictures: Living on the Moon
(コメント) 月で暮らす? 昔から,そんな空想がありました.人類は月に暮らすでしょうか? 多分,間違いなく.別荘なのか,実験室なのか,流刑地なのか,避難所,植民地,ゴミ捨て場,反乱軍,軍事拠点,資源採掘,・・・
Asia Times Online, Dec 6, 2006
The man who wrote the rules
By Walden Bello
(コメント) ミルトン・フリードマンの死は,世界を変えたエコノミストとして盛んに惜しまれ,多くの記事が彼の学問や主張を称えました.しかし,本当にそれで良いのでしょうか? 彼の経済学は,しばしば劇薬でしかなく,治療する以上に多くの人々を殺してしまい,死者の言葉は単に聞こえないだけではないか?
彼の名は,チリにおける自由市場改革や「構造調整」の一部として,ラテンアメリカの人々には記憶されています.社会主義者のアジェンデをクーデタによって殺して,権力を握ったピノチェト将軍が「自由市場」を称賛し,フリードマンのシカゴ大学における教え子たちを重用しました.市場改革は成功しましたが,その後,貧困が増加します.
フリードマンなら,自由市場は結局,独裁も終わらせた,というでしょう.しかし,市場のもたらした貧富の格差が独裁を終わらせた,とも言えます.鬼籍に入った二人は三途の川で再開を喜び,互いを称え合っているのでしょうか・・・?
FT December 6 2006
An ageing couple
FT December 7 2006
Stop crying doom at EU’s expansion
By Alexander Stubb
(コメント) 独仏による二国間交渉でEUの経済や政治を支配できた時代はとっくに終わりました.将来は,ユーロを採用すればイギリスが,加盟すればトルコが,もっと重要になるでしょう.そしてEU統合のダイナミズムは続きます.“Integration capacity” が論争になっています.しかし,たとえ大国の政治家たちは嫌っても,多極化し,統合化し,民主化し,制度化する27カ国(そして,それ以上)のEUを,多くの小国が望むでしょう.
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The Economist, November 25th 2006
What’s wrong with Wall Street
America’s capital markets: Down on the street
The Future of NATO: The test in Afghanistan
NATO’s future: Predictions of its death were premature
Milton Friedman’s legacy: Unfinished business
Europe and Islam: No burqa bans
The Middle East: The next little war, and how to avoid it
Congo: A wilderness that may become a state
France: Royal coronation
Nuclear fuel: The more there is, the bigger the risk
Car-making in China: The fast and the furious
India’s economy: Too hot to handle
Economics focus: Rocks below the surface
(コメント) 関心を引く多くの記事がありました.アメリカの資本市場が圧倒的に世界一だ,という思い込みを訂正しました.国連安保理やNATO,地域安全保障,などの関係を再考する中で,日本も方針を決めるべきです.フリードマンを誉めすぎではないか? イスラム教徒の一部が示す衣装の文化・政治摩擦.中東,コンゴ,フランスの政治的転換を予想させます.ただし,その方向や形態はまったく異なりますが.核燃料の世界バンクと監視ネットワークが必要です.中国の自動車産業も,インドのバブルも,これから世界が経験する多くの嵐をもたらしそうです.そして,発展途上国の民主化は世界の自由貿易を支持する結果につながる,という指摘です.ただし,民主政治は見えない保護を好みます.