IPEの果樹園2006

今週のReview

10/16-10/21

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :神が見ておられるセカンド・ライフ

安全保障 :軍縮北朝鮮の核実験核ドミノ

貿易・投資 :円安

通貨・金融 :シンガポール

世界統治 :中間選挙,現実の革命

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


NYT October 4, 2006

If I Had One Wish

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) THOMAS L. FRIEDMANが願うのは,中間選挙で共和党が敗北すること,ただし,下院でも上院でも,民主党はわずか一議席だけ勝つ,という結果です.なぜか?

ブッシュ政権が,この終わりの見えないイラク戦争と占領政策の失敗で,その閣僚たちの無能さと内部の混乱を示していることは,書店に溢れるアンチ・ブッシュ本の棚が示しています.もし,これでもまだ,中間選挙で共和党が勝利するようなことがあれば,それはアメリカが余りにも分裂して,有権者の関心が細かい争点に縛られ,あるいは,共和党に有利な選挙区の分割が行われてしまったから,政権の能力や成果に関わらず選挙には勝てる,ということを示すでしょう.ブッシュ政権がイラクに秩序を回復し,その他の重要な国内問題に解決策を示すためには,この選挙で強いショックを与えなければなりません.

他方,民主党の勝利は最小のものであるべきだ,とFRIEDMANは考えます.なぜなら,民主党はイラク戦争でブッシュを攻撃するだけでなく,財政赤字やエネルギー政策,社会保障改革などに,両党の合意による解決策を見出すべきだから.ブッシュを非難するだけで極端な主張をすることが正しいと誤解させてはいけません.

それゆえ,民主主義が正しく機能することを示すためには,共和党にも,民主党にも,次の大統領選挙を意識させるような,厳しい,そして正しい結果を示して欲しい,と願うのです.


YaleGlobal, 5 October 2006

A Path to Global Disarmament

Hans Blixa former director general of the International Atomic Energy Agency, chairman of the Weapons of Mass Destruction Commission based in Stockholm

International Herald Tribune, Oct. 12, 2006

For global security, expand the alliance

Ivo Daalder and James Goldgeier

(コメント) Hans Blixは,世界的な安全保障への関心を高めるように求めます.イランも北朝鮮も,核兵器を保有する必要は無く,それに変わる優れた誘因が示されることで,核開発計画を国際的なルールに従わせるでしょう.そのためには,地域の安全保障体制に参加させ,アメリカもそれを守ることを約束してよいでしょう.EUがイランに対して示したように,貿易や投資,経済援助や核の平和的な利用技術について,十分に魅力的な提案を示すことです.

そして,世界の軍縮運動に対する関心を高め,核保有諸国も,その削減に向けて動くことで,核武装のドミノ現象を防ぐことができるのです.

他方,NATOがアフガニスタンで展開するように,その使命はますますグローバルになるだろう.そうであれば,NATOのメンバーもグローバルであるべきだ,とDaalder and Goldgeierは考えます.その首脳会合がラトビアのリガで開催されます.

安定した民主主義の政治体制を支持し,多くの利益を共有する諸国として,オーストラリア,ブラジル,日本,インド,ニュージーランド,南アフリカ,韓国,が挙げられています.これらが拡大NATOを構成するわけです.これに対して,意思決定や行動がむつかしくなる,という懸念もあります.しかし,この論説は,拡大しなければ21世紀にNATOの意味が無くなる,と心配します.これはNATOの東欧拡大に関して行われた論争です.


NYT October 6, 2006

Big Ideas and No Boundaries

By THOMAS L. FRIEDMAN

これはラビが私に言ったヨム・キッパー(ユダヤ教の重要な祝日)のジョークだ.教区の学校でランチタイムのリンゴを取る列に表示があった.「一つだけ取れ.神が見ておられる.」 メイン料理の後で,ランチの行列の最後に,クッキーを取るボウルがあった.そこには生徒がこんな表示を付けた.「好きなだけ取れ.神はリンゴを見張っている.」

このジョークで私はアメリカにおける自由貿易論争を思い出した.今は,共和党が支配している.だから自由貿易は安泰だ.しかし,誰もが行列の最初に注目していると,後ろから自由貿易は崩れ始めている.「ドーハ」の貿易交渉は破綻した.アメリカの農民が強く反対したからだ.ホワイト・ハウスの「ファスト・トラック」権限はもうすぐ失効する.保護主義に傾く民主党が下院か上院を抑えるだろう.そうなれば,新しい自由貿易の合意は行き詰まる.

私は民主党に異なる道をとってほしい.私は常に自由貿易を支持してきた.それにより良い年金制度や医療保険,セーフティー・ネットを付け加えて.しかし,今や私は自由貿易論ではなく,ラディカル自由貿易論者だ.その理由は,グローバリゼーションの新しい時代に,多くの人が通信や確信の手段を得て,どこからでも競争し,結びつき,協力できるから.誰かにやれることは,必ずどこかでやる.問題は,あなたがするか,あなたはしてもらうか,だ.社会が繁栄するには,教育に優れ,できる限り開放的で,弾力的でなければならない.たとえば,グーグルを発明したのはアメリカにおいてだ.

「妨げられることのないアイデアの流れ,多様性,コンセプト,競争,こういったものにもっとも逆らわない社会が勝利する.」と,InfosysのCEO,Nandan Nilekaniは語った.「そして,アイデアを市場にもっとも速く届ける社会が勝つ.」

旧左翼は,自由貿易が多国籍企業の利益にしかならない,と思っている.実際は,零細企業や個人が,今や,多国籍に活動している.そして彼らが良い条件で雇用をもたらす.ネブラスカの新興企業Lite-Formは,韓国の機械に工夫を加えて,コンクリートの型を建設現場で作れるようにした.これによって輸送費を節約できる.この仕組みをクウェートに輸出している.クウェートにおける代理店と指導業務はインドの会社が行う.・・・ 「保護主義に私はおびえる.」と経営者は言う.

シリコン・バレーでは,Arijit Senguptaに会った.インド系アメリカ人で,スタンフォード大学に学び,ソフトウェアの会社BeyondCoreを始めた.バック・オフィスの仕事にエラーが無いかを探す.彼の名刺はルーマニアのグラフィック・アーティストによる.ウェブ・サーバーはフリーウェアを利用し,販売や特許はインドの会社に任せている.彼のオフィスには,インド,ボストン,パロ・アルトの電話番号から通じるようになっている.「会社を始めるとき,地理を考える必要など無かった.」と彼は言った.「考えたのは,最良の資源をどこで得られるか,・・・ 必要なのはビッグ・アイデアだ.」

この国に良い仕事を残したいなら,巨大な壁を築いてもだめだ.むしろビッグ・アイデアを持つ人々を引き寄せることだ.そして,彼らが誰とでも,どこでも,いつでも,何でもできる自由を与えることである.

FT October 9 2006

Promoting the next great globalisation

By Frederic Mishkin

(コメント) グローバリゼーションは貧困を減らしましたが,政治的な反動も強めています.グローバリゼーションの成果を広め,その逆転を許さないためには,発展途上諸国が金融制度の革新に取り組むことが鍵になる,と訴えています.「貿易よりも援助を」という初期開発論のスローガンを借りれば,「自由化よりも制度改革(正しいインセンティブ)を」.


LAT October 6, 2006

If Kim Jong Il Gets Nukes

Aaron L. Friedbergprofessor at Princeton University's Woodrow Wilson School of Public and International Affairs & former advisor to Vice President Dick Cheney

(コメント) 今となっては,Aaron L. Friedbergの予測はほとんど間違っていました.それは彼が関わったブッシュ政権の頑迷さや無能さを露呈しているようにも思います.しかし同時に,政治的なシナリオを描くことの難しさ,まったく異なったシナリオも熟慮しておくこと,また,決定力よりも豊富な選択肢を持つことの重要性,などを教えるものです.

・・・北朝鮮は核実験を行うと宣言したが,また交渉を長引かせて,なかなか実施しないだろう.しかし,核開発では宣言したことを実行してきた.将来,北朝鮮が核保有国となった場合,事態は人々の予想よりももっと悪くなるだろう.

まず,金正日は「偉大なる指導者」としての権威を確立する.そして対外的にはより攻撃的になるだろう.他方,韓国のノムヒョン大統領とその体制は政治的に破綻し混乱する.「太陽政策」の失敗は明らかであり,アメリカは韓国の態度に不満を強めてきた.在韓米軍をめぐるアメリカと韓国との対立が深まる.

日本は,安倍政権において平和憲法の修正を加速させ,軍備を拡大するだろう.核武装するかどうかは激しい論争となるが,少なくとも強硬な姿勢を弱めることは無い.戦争責任や近隣諸国への謝罪や関係改善も難しくなり,逆に,北朝鮮を支援する中国との対立が深まる.その中国では,北朝鮮に失望するとしても,強い非難には至らない.アメリカは中国が国際システムの「責任ある参加者」という態度を取れないことに不満を強め,対立に向かうだろう.

北朝鮮の核実験はブッシュ政権にとって手痛い失敗となる.これを理由に北を処罰する選択肢はほとんど無い.アメリカの発言は信用を失い,核不拡散体制も打撃を受ける.イランはアメリカの脅しを軽視するだろう.北は,その脅しのように,核兵器や核物質を輸出する恐れが強まる.

Friedbergは,このような悪夢を避けるために,北東アジアの諸国が協力して北朝鮮に圧力を強め,核実験を未然に抑え込むべきだ,と求めていました.

North Korea and the Dominoes NYT October 6, 2006

Catherine Lutz A US `invasion' of Korea BG October 8, 2006

Quentin Peel and Daniel Dombey Kim deals another blow to nuclear non-proliferation FT October 9 2006

Gideon Rachman Test for Asia as Kim blows hole in Bush doctrine FT October 9 2006

Stephen Fidler and Anna Fifield Dangerous twist in spiral of discord FT October 9 2006

Guy Dinmore Bush has few options in dealing with N Korea FT October 9 2006

Richard McGregor Failure of policy to restrain neighbour rankles with China FT October 9 2006

John Williams China must restrain Pyongyang The Guardian, Monday October 9, 2006

DAVID STOUT and JOHN O’NEIL Analysts Say Blast Was Small for a Nuclear Weapon NYTOctober 9, 2006

DAVID STOUT and JOHN O’NEIL North Korea’s Claim Met With Doubt and Anger NYT October 9, 2006

(コメント) 一つの謎は,アメリカと北朝鮮との間で,いつまでも交渉スタイルに関する姿勢が一致しないことです.アメリカは,中国が鍵を握っており,アメリカではない,と直接の交渉を拒みました.他方,北朝鮮は,韓国や日本を犠牲にして,アメリカの姿勢を問い続けています.NYTの,そしてアメリカの主要な関心は,アジアで核武装のドミノ現象が起こることでした.

では,アメリカは核実験を行えば軍事的な制裁を加えるでしょうか? むしろ韓国では,北朝鮮からの攻撃ではなく,「アメリカの侵略」が問題になっていました.ラムズフェルド国防長官の世界的な米軍再編計画に従い,米軍を再配置するため,韓国農民を立ち退かせる流血の衝突を繰り返したからです.

制裁のエスカレーションをどこまで進めるか,日本の対応が重要だ,とFTのPeel and Dombey論説で指摘します.そして,韓国の軍人や台湾の関係者とのつながりを示唆して,強硬策を指導する先月の中曽根発言を紹介します.さらに,外国の専門家には,日本政府がアメリカによる核の傘に満足せず,独自に核武装を目指す,という予測があります.

また,Jeffrey Lewisは,1964年に中国が核武装した例を学ぶべきだ,と考えます.リンドン・ジョンソン大統領はアジアへの関与(核による報復)を明確にして,通常兵器における圧倒的な優位を維持するように求めました.それは現在も守られています.

これで「ブッシュ・ドクトリン」は完全に息の根をたたれました.しかし,Fidler and Fifieldが指摘するように,タタ一つに利点があるとすれ,これによって主要国の核不拡散(と北朝鮮封じ込め)への足並みが揃うことです.

「ロナルド・レーガン,元大統領は,ミハイル・ゴルバチョフ,元ソビエト連邦の指導者にこう言ったそうだ.もし両国が火星からの侵略に協力して立ち向かわなければならないとすれば,互いの相違など無意味だ,と.世界政治において,金正日は火星人に近い.もし彼の核実験が東アジアにおける大国間の相違を埋めて,この地域を安全にするために協力するよう促すなら,北朝鮮の独裁者が世界にすばらしい恵みをもたらすことになる.」

他方,アメリカは,さらに中国との協力を求めて,貿易や通貨における摩擦を中国寄りの姿勢で緩和し,ダルフールへの制裁決議で中国を非難する論調を落とすでしょう.こうして,アメリカのその他の領域における選択肢も制約されるのです.

あるいは,中国こそ北朝鮮の核実験を阻止できなかったことで最大の政治的な損失を受けたはずです.朝鮮半島の非核化,という約束が破られただけではありません.北朝鮮は,中国の軍事的・経済的な援助から独立して,核武装による交渉を独自に周辺諸国やアメリカと行えるからです.

北朝鮮が核武装するのであれば,世界中が核武装への抑制を失うでしょう.これは1962年夏のキューバ・ミサイル危機を思い出させます.当時は,米ソ両大国の軍事衝突が懸念され,海上封鎖という中間的措置により,次第に,相互確証破壊(MAD)とホット・ラインの敷設,核不拡散体制という国際システムに双方が合意することで解決するに至りました.

問題は,金正日が米ソの対立ほど合理的な選択を取るかどうか,です.特に,二つの大国が対峙するケースと異なり,東アジアでは多くの参加者が異なる思惑で選択します.互いが間違った判断に基づいて戦争の口火を切る危険は高い,と考えられます.中国の指導力が試されるでしょう.

Andy Mukherjee A Nuclear North Korea Is a Gift to Investors Oct. 10 (Bloomberg)

Rebottling North Korea's nuclear genie CSM October 10, 2006

Donald Kirk How North Korea bungled its nuclear timing Asia Times Online, Oct 10, 2006

Bertil Lintner Pyongyang's 60-year obsession Asia Times Online, Oct 10, 2006

Michael O’Hanlon Pyongyang: reform or abyss FT October 10 2006

Pyongyang's act of irresponsibility FT October 10 2006

The North Korean test BG October 10, 2006

Provocation and proliferation The Guardian, Tuesday October 10, 2006

Dan Plesch North Korea's nuclear policy is not irrational at all The Guardian, Tuesday October 10, 2006

Simon Tisdall 'Happy bomb' kills ideas of regime change The Guardian, Tuesday October 10, 2006

Mark Seddon The land of eternal happiness The Guardian, Tuesday October 10, 2006

Philip Bowring Why haven't the markets panicked? International Herald Tribune, October 10, 2006

Jon B. Wolfsthal No More Negotiating With North Korea LAT October 10, 2006

Kim Jong Il's Challenge to China LAT October 10, 2006

NICHOLAS D. KRISTOF Talking With the Monsters NYT October 10, 2006

North Korea and the Bomb NYT October 10, 2006

DAVID FRUM Mutually Assured Disruption NYT October 10, 2006

Selig S. Harrison In a Test, a Reason to Talk WP Tuesday, October 10, 2006; A21

(コメント) Andy Mukherjeeは,韓国の投資家にとって金正日を延命することが利益だ,と指摘します.なぜなら,韓国の所得水準の10分の1ほどでしかない北朝鮮を60%にまで達する経済的コストは,2000年に,17000億ドルと予想されました.それなら北の体制を援助で延命して,改革を受け入れる指導者に代わるのを待つしかありません.また中国は,朝鮮半島統一によって,在韓米軍が直接に人民解放軍と対峙することより,北朝鮮が延命されることを望みます.

中国は,何よリ,台湾や日本が核武装することを嫌います.市場改革を進めれば,北朝鮮はベトナムになるでしょうか? あるいは,ロシアでしょうか?

では,核武装してしまった北朝鮮に,私たちが何かすることはあるでしょうか? 彼らはパキスタンが核実験して,その後容認されたことをまねるはずです.そこで,まず,北朝鮮が武器や核物質を持ち出すのを阻止することです.たとえ中国やロシアが北朝鮮の体制を支持し,援助を行うとしてもそれが北朝鮮による違法行為を促すものであってはなりません.また,軍事的制裁や圧力も決して選択肢からはずせないでしょう.北朝鮮がさらに巨大な核施設を建設し,核輸出国になることを阻止することは必要です.

BGは,ブッシュ政権の姿勢を批判します.交渉を拒否したことは無責任であった,と.ブッシュ政権はいたずらに北朝鮮を非難し,罵倒するばかりで,直接交渉を避けてきたが,ミサイル発射や核実験を阻止して,安全保障や経済援助と取引できなかった.それは指導者としての思慮を欠き,国民や同盟諸国に対しても責任ある態度ではない.BGは,日本のナショナリスト政府が核武装を唱え,アジアが最悪のシナリオに向かう可能性を懸念しています.それゆえ,アメリカがまず敵視政策を止めて,外交交渉を開始するべきだ,と.

The Guardianは,同様に,核保有国である中国やロシアを批判しています.核軍縮の国際体制を,核の独占体制に変えてしまった責任は,アメリカだけでなく,すべての核保有諸国にあります.このままでは,世界各地で先制攻撃による戦争と核の拡散が起きるでしょう.

ドミノ現象は決して曖昧な推論ではありません.アメリカの核(や水爆実験)はソ連を核武装させましたし,イギリスの核保有がフランスの核実験を刺激したのです.インドが核を保有するのにパキスタンはそれを無視することなど無かったし,パキスタンの核実験はイラン人にとって,核爆弾を保有していないイギリス人がベルギーで核実験が行われたというニュースを聞いたみたいな衝撃だ,と言います.ブッシュ政権の最大の失敗は,イラク占領よりも,核拡散防止体制の崩壊となるかもしれません.

中国の軍備近代化や国際的影響力が強まる中で,アメリカの核の傘に対する信用が低下し,北朝鮮の核実験に刺激された台湾や韓国,日本が核武装も含めて軍拡競争する近未来を,世界中が予想しています.時間がたてばたつほど,その危険は高まるでしょう.もはやアメリカによる「体制転換」を期待して,自国の対応を待っている国などありえません.

Jon B. Wolfsthalは,交渉の時期は終わった,と考えます.北朝鮮は単に弱小なトラブル・メーカーではなく,現実の深刻な脅威になったからです.これを実際に封じ込め,緊張緩和する必要があります.アメリカは,北朝鮮が核実験によって得たものは,世界政治における敬意や交渉力ではなく,明確な国際査察を求められることと,核攻撃の目標でトップ・リストに上がった,ということを自覚させねばなりません.一言で言えば,北朝鮮からアジアの同盟諸国への攻撃はアメリカ軍が全力で反撃する,もはや交渉の余地は無い,ということを明確にすることです.

あるいはさらに,米中連合軍で反撃し,北朝鮮の指導部を交代させる,と言うべきでしょう.

NICHOLAS D. KRISTOFは考えます.たとえ最悪の敵とでも話し合うべきだ.敵と話し合うことが「宥和政策」ではない.他方,DAVID FRUMは直接交渉は核実験への報酬になってしまう,と拒みます.彼の求めるニュー・アプローチは,@北の脅威に直面する韓国と日本の軍備を増強する.A他国が北朝鮮をまねて核実験を行わないように,十分な代償を支払わせる.B北朝鮮の曖昧な核武装を有利と考えた中国を処罰すること,です.

しかし,どうすればできるか? ・・・その答えは,東アジアにおけるNATOの拡大,と,日本の核武装です.

イラクを攻めたアメリカ政府を見て,北朝鮮が核兵器を最後の保障として失いたくない気持ちは理解できます.アメリカはこれで「体制転換」の疑念を払拭し,外交的な解決に専念できる,とSelig S. Harrisonは考えます.そして,時間はかかってもアメリカと北朝鮮の関係が正常化する結果として,最終的に非核化を実現できるのです.

Kaveh L Afrasiabi North Korea eases the heat on Iran - for now Asia Times Online, Oct 11, 2006

Chan Akya Not a major planet Asia Times Online, Oct 11, 2006

Ian Williams Talk to Pyongyang, not at it Asia Times Online, Oct 11, 2006

UN debates action over N Korea BBC 2006/10/10

Shim Jae Hoon North Korea’s Nuclear Gamble YaleGlobal, 10 October 2006

David Pilling N Korean bomb brings Abe instant allies FT October 11 2006

Jacob Weisberg Bush made evil-doers into an axis FT October 11 2006

Anthony H. Cordesman Crashing the nuclear club BG October 11, 2006

Simon Jenkins Accept North Korea into the nuclear club or bomb it now The Guardian Wednesday October 11, 2006

Ewen MacAskill The ultimate act of machismo The Guardian, Wednesday October 11, 2006

Anatol Lieven and John Hulsman North Korea Isn't Our Problem LAT October 11, 2006

DAVID STOUT Bush Sees No Need to Change N. Korea Policy NYT October 11, 2006

THOMAS L. FRIEDMAN The Bus Is Waiting NYT October 11, 2006

Choe Sang-Hun N. Korea Links Next Move to U.S. Policy The International Herald Tribune, 11 October 2006

Fear of another arms race The Japan Times: Wednesday, Oct. 11, 2006

(コメント) 核保有国が増えて,いよいよ核戦争の危険は高まっています.聖書が記した黙示録の4騎士(戦争・飢饉・疫病・死)が現れた,とChan Akyaはたとえます.すなわち,核攻撃の口火を切りかねない核保有国を4騎士(人類の災厄)と呼びます.明らかに,北朝鮮は「飢饉」,アメリカは「戦争」です.パキスタンとイランは,「疫病」と「死」の地位を分け合うでしょう.

世界中が北朝鮮の核実験に困惑する中で,たった一人,日本の新しい首相,安倍晋三だけは,最高のタイミングだった,と喜んだに違いない.そんな風にFTのDavid Pillingは見ています.なぜなら,Peter Beckも言うように,この問題では北京もソウルも安倍との協力を明言したからです.安倍も,過去のことに触れるより,「未来志向の関係」を強調しました.中国も,韓国も,これまでの日本との関係悪化が嘘のように,関係改善を外交の勝利として称え合いました.

Jacob Weisbergは「悪の枢軸」を考えます.言葉を余りにも安易にもてあそんだブッシュ大統領は,その演説を後悔することになりました.彼が言葉で煽った危機は本物になり,彼が勝手に結びつけた敵国は本当に連携して効果を上げる条件が揃いました.ブッシュ氏のおかげです.なぜなら,彼がイラクに兵力を取られた結果,他の地域では行動を制約されたからです.“Thank you, Mr President, for giving us the axis of evil.”

確かに,いくつかの論説が指摘するように,北朝鮮の弾道ミサイル技術や核爆弾の小型化には,まだ時間がかかります.しかしその前に,核保有国の独占クラブに北朝鮮を受け入れるのか? あるいは,今後の実験を認めないように先制攻撃するのか? それは,明確な基準の無い,難しい選択です.中国は,決して北朝鮮の混乱に至る選択肢を受け入れません.しかし一つ確かなことは,経済制裁だけで屈した国など無い,ということです.それは交渉条件に過ぎません.交渉するにも,トマホーク巡航ミサイルが必要です.

Ewen MacAskill は,国際政治における「軍事力の誇示(権力主義)」 “international machismo”としてSimon Jenkinsの強硬策を批判します.先制攻撃の方が安定した未来をもたらすと信じる理由など無いのです.

むしろ,Lieven and Hulsmanが主張するように,アメリカはこの危機を地域内の問題として片付け,中国に具体的な解決策を委ねるでしょう.アメリカにとっては楽でしょうが,その場合,韓国や日本,台湾はどうなるのか?

冷戦が終わったことを,これまで良いばかりだと信じてきた.しかし,今ほど嘆くにふさわしいときは無いだろう.THOMAS L. FRIEDMANは私たちの誤解を指摘します.すなわち,ポスト冷戦の祝祭は1989年の119,ベルリンの壁崩壊に始まり,2006年の109,北朝鮮の核実験で終わったのです.そして新しい時代では,1.アジア諸国が核武装し,貿易や投資は頓挫する.2.中東諸国が核武装し,各地で宗派争いが激化する.3.イラクは分裂し,石油価格高騰とテロの国際化が加速する.

それゆえ,この時代を平和に保つには,アメリカと中国とロシアが互いに協力し,国内の軋轢を越えて,北朝鮮やイランを抑制できるかどうかにかかっています.

JIMMY CARTER Solving the Korean Stalemate, One Step at a Time NYT October 11, 2006

William J. Perry In Search of a North Korea Policy WP Wednesday, October 11, 2006; A19

David Ignatius We Need a New Deterrent WP Wednesday, October 11, 2006; A19

Philip Stephens China cannot escape threat of a nuclear North Korea FT October 12 2006

(コメント) カーター元大統領は1994年の危機を振り返ります.答辞も,戦争は避けられないという意識が高まり,アメリカと韓国の軍事力は北朝鮮を圧倒できると合意されていました.その一方で,北朝鮮が開戦と同時にソウルに向けて2万発の砲弾やミサイルを発射し,その犠牲者は朝鮮戦争を越えるだろう,という予想があったと言います.

ピョンヤンで合意したことは,核施設の封鎖と国際査察の受け入れ,それに代わるエネルギー供給や原発建設などでした.しかし,ブッシュ政権の誕生と911後の強硬姿勢,特に2002年の「悪の枢軸」や「体制転換」という主張で,北朝鮮の態度も転換します.

カーター氏は,現在,アメリカ政府の可能な選択肢を検討します.一方では,制裁や経済封鎖は金正日の軍部を方針転換できないでしょう.中国や韓国も嫌います.何より,北朝鮮の核兵器を増産させるだけです.他方,一歩一歩,北の核放棄を交渉で進める選択肢もあります.これは一層困難ですが,アメリカが北を軍事攻撃する意図を否定すれば,実行可能です.

1994-97年の国防長官であったWilliam J. Perryも,北朝鮮とのthe Agreed Frameworkにおいて,原発建設と核兵器開発の放棄とをリンクした成果を強調します.そして,国連決議とミサイル防衛システムを主張しても,北朝鮮がテロリストに核を供給するリスクを排除できません.そして,論説の主要な目的は,アジアにおける核軍拡の回避に向けられています.

David Ignatiusは,核拡散を防止する国際システムの構築を求めています.キューバ危機と同じように,たとえテロリストによってマンハッタンで核爆発が起きても,それは北朝鮮が核攻撃をしたものと確認して,北朝鮮に米軍が報復することを明確にできれば,核抑止は可能である,と考えます.それが核兵器を持つ国の「責任」なのです.

Philip Stephensは,アメリカの核の傘が効き目を失い,日本,韓国,台湾が核武装するのは時間の問題,と考えます.他方,北朝鮮の体制崩壊も時間の問題です.北京が中朝国境を開放するだけで,ハンガリーが東ドイツに国境を開放したように,北朝鮮は自壊するでしょう.北朝鮮の核実験は中国に,日本の核武装か,統一朝鮮か,どちらかを選択する時期に至った,と気づかせたのではないか?

アメリカと中国が描く「すばらしい新世界」に,私たちは満足できるでしょうか?

John Feffer When the stick waves, the hornet stings Asia Times Online, Oct 12, 2006

Striking the balance on nuclear power FT October 12 2006

Anna Fifield Seoul says nuclear test risky for the economy FT October 12 2006

Ian Davis Sleepwalking towards nuclear proliferation The Guardian, Thursday October 12, 2006

TOM PLATE North Korea: Asia's pouting paper tiger The Japan Times: Thursday, Oct. 12, 2006

Jonah Goldberg When Multilateralism Falls Short LAT October 12, 2006

B. R. MYERS Kim Jong-il’s Suicide Watch NYT October 12, 2006

Jim Hoagland The Squeeze on North Korea WP Thursday, October 12, 2006; A27

Ronan Thomas Arms races past haunt Asia's present Asia Times Online, Oct 12, 2006

Donald Kirk Time plays into Pyongyang's hands Asia Times Online, Oct 13, 2006

(コメント) John Fefferは考えます.核実験は,北朝鮮という自滅する体制が世界に発した緊急救済信号です.しかし,その予告に対して,アメリカは答えませんでした.金正日も,ブッシュ政権も,国内の観衆に応えなければなりません.金正日は世界とアメリカに尊敬を求め,ブッシュは金正日に軽蔑と死滅を求めています.

国連決議でうまく行くとは誰も信じていないでしょう.もし中国とアメリカ(そして,韓国,北朝鮮内の支持勢力)が合意すれば,アメリカが空爆しないとは限りません.誰も予想しない「安定」した時期に,国境で異変が起き,金正日は逮捕されているかもしれません.あるいは軍事クーデタに対して,政治亡命を求めるでしょう.中国政府は,新しい開発独裁政権と,即座に親密な経済開発協力を開始するはずです.

そのような転換点に達しないまま,世界の核バランスが変わり,国連安保理は無視され,米中関係も次第に悪化するとき,その中で,日本政府は積極的な外交を展開する力を鍛えておかねばなりません.

B. R. MYERSは,金正日は狂人ではない,と考えます.そして今の北朝鮮を1930年代の日本の軍国主義政府にたとえています.「第二次世界大戦中に天皇裕仁が取った行動は,宗教的でもなければ自殺的でもなかった.しかし,合理的な指導者なら勝利する見込みがないと考えたはずの戦争に,自国を導いた.」 「1930年代の日本人と同様に,北朝鮮の民衆は民族の起源を数千年も遡り,この民独の血統が他に比べることができない価値である,と主張している.」

さらに,こう続けています.北朝鮮は,世界が信じているようなスターリニスト国家ではない.北朝鮮は多くの人々を殺すかもしれないが,日本帝国がそうであったほど世界の安全保障にとって脅威ではないし,アメリカがそうであるような帝国建設にはまったく関心を持たない.金正日は,裕仁と同じように,自民族の優秀さを称えているだけだ,と.


NYT October 6, 2006

The War Against Wages

By PAUL KRUGMAN

(コメント) ダウが上昇することを「経営者たちが,労働組合を弱め,医療保険を支払わず,労働者の賃金を削ることに成功しただけだ」と批判するPAUL KRUGMANの論説を読めば,大恐慌に関する諸研究を思い出します.

あなたが信頼するのは,ウォルマートか,労働関係調整法か?


Asia Times Online, Oct 7, 2006

Death of city-states

By Chan Akya

FT October 11 2006

East Asian renaissance talk is premature

By Guy de Jonquieres

(コメント) モルガン・スタンレーの著名なエコノミスト,Andy Xieが先週辞職した,というニュースに驚きました.

その理由は,シンガポールについて批判的な言動を繰り返したから,と疑われています.Xie,シンガポールの成功をもっぱらインドネシアのビジネスマンや政治家にマネー・ロンダリングによるものだ,と同僚へのe-mailに書き,シンガポールの景気が悪いのはインドネシアに金がないからだ,と書きました.IMF/世銀総会がシンガポールであったときも,代表たちがシンガポールをグローバリゼーションの成功談として競って称賛する姿を批判しています.他方,モルガン・スタンレーはシンガポールのM&A顧問であり,15億ドルの取引がある,とBloombergは伝えます.

Chan Akyaは,アジアの経済的繁栄をエリートや都市住民が搾取するばかりであり,民主主義は育たないだろう,と予想します.シンガポールも香港も,上海,マカオ,ドバイ,バンコク,北京,・・・ 彼らは環境破壊も,貧困層も,省みない.こうした都市の繁栄は,寄生的な支配に依拠しており,寄生者のための政治システムなのです.

他方,Guy de Jonquieresは,アジア諸国への失望を,1997年の危機から間違った教訓を学んで,財政均衡や輸出型成長に逆戻りしてしまった,と批判しています.アメリカ経済が減速する兆しを示す今,アジアの域内貿易や投資はそれに代わる成長エンジンになれなかった,と.


Putin's meltdown BG October 7, 2006

Anne Applebaum A Moscow Murder Story WP Monday, October 9, 2006; A17

Another Killing in Moscow NYT October 10, 2006

Murder in Moscow BG October 12, 2006

Thomas de Waal The Chechen silence The Guardian, Thursday October 12, 2006

(コメント) グルジアの挑戦的な指導者Mikhail Saakashvili逮捕させたロシア軍の4人の諜報員に関して,プーチン大統領はその扱いに激怒し,グルジアへの干渉と圧力を強めました.また,チェチェンにおける人権抑圧,拷問,虐殺について告発してきたロシアの女性ジャーナリストAnna Politkovskayaが暗殺されたことについて,ロシアでも抗議活動が広がり,プーチン政権の関与が国際的に非難されています.プーチンが権力を握ってから,抹殺された多くのジャーナリスト,ビジネスマンがいます.


International Herald Tribune, Sunday, Oct. 8, 2006

Sweet and sour fruits of the Velvet Revolution

Jiri Dienstbier

(コメント) ベルベット革命で独裁者を追放したはずが,チェコの国民は今も苦しんでいます.1989年に革命を指導した「市民フォーラム」の会合を終えて,Timothy Garton Ashと語り合ったJiri Dienstbierは,東欧の将来を「反革命か,消費社会か?」と考えました.これがその答えです.

ソ連共産党書記長,ゴルバチョフが軍事力の行使を否定してから,わずか1年で,チェコスロバキアの民主化が実現し,ハヴェル大統領はゴルバチョフとソ連軍の撤退を合意しました.人々は嬉々として自由や選挙を楽しみ,しかし,余りにも多くの約束や期待をばら撒く政治家に未来を委ねたのです.「市民フォーラム」の運動は革命後に解体し,さまざまな政党や運動に分裂しながら,デマゴギーの衝突へと至りました.二つの国家へ平和的に分裂したことも,市場化によって国家の資産を私物化した支配者たちの裏取引であったようです.

それでもDienstbierは,革命の成果を忘れません.以前の体制は余りにもひどかったし,自由化後に生活水準が改善されたことは事実です.チェコに限らず,人々は政治家に失望し,市場だけでなく人の移動や新しいヨーロッパ政治文化を約束したEU全体で現実への悲観が強まり,将来への展望を欠いています.しかし,世界中で活躍する若いチェコ人たちが,きっと,革命の正しさを証明してくれるだろう,とDienstbierは期待します.

なるほど,これが「革命」かもしれません.


LAT October 8, 2006

America at 300 Million

By Gregg Easterbrook

LAT October 8, 2006

A Country of Newcomers

By William H. Frey

(コメント) 日本は人口減少に怯えていますが,アメリカの人口は急速に2億人から3億人を超えて膨張し続けています.アメリカが人口1億人に達したのは1915年でした.そして,日本にはヨーロッパのような革命も無い・・・! これで大丈夫か?

それに加えて,「人口爆発」や「資源枯渇」,「環境破壊」が問題になり,移民政策が激しく議論されます.


Edward C. Luck The Toughest Job on Earth WP Sunday, October 8, 2006; B02

Banking on Mr Ban The Guardian, Monday October 9, 2006

Paul Reynolds No honeymoon for new UN Secretary General BBC 2006/10/09

Mark Turner Annan’s difficult decade nears end FT October 10 2006

An Impossible Job NYT October 11, 2006

(コメント) おめでとう! ・・・そして,お大事に? 潘基文,国連事務総長の誕生です.世界でもっとも困難な,不可能な,職位へ.通常は多くの政治家が利用できる,ハネムーン期間も,国連にはありません.


Oct. 9 (Bloomberg)

Like Japanese Snow and Intestines, Yen Is Unique

William Pesek

FT October 10 2006

How China managed to pin down the renminbi

By Martin Wolf

(コメント) なぜデフレを終わらせて景気回復を遂げた日本経済に対して,円高ではなく円安が起きるのか? ・・・ William Pesek は,かつて1980年代に貿易摩擦と自由化が求められた際に,日本の雪は違うからスキーは輸入できない,日本人の腸は違うから牛肉は輸入できない,という言い訳を思い出します.投資が増え,株価は上昇し,巨額の貿易黒字もあって,日銀が金融引き締めを考えているというのに,円高が起きない?

日本経済は凡庸であり,財政赤字も膨らんでいる,という意味では,円に投資することを好まない理由もあります.要するに,金利が低すぎる.他方,アジア全体を考えれば,人民元だけが責められているのは不思議だ,と.

中国が,国内政治と国際的な責任を果たすこととの間で,難しい立場にあるのは北朝鮮の扱い方に限りません.人民元レートや貿易不均衡については,同じように重大な責任を求められています.北朝鮮であれ,人民元であれ,言うまでもなく,中国は自国の利益に照らして選択します.しかし,中国が自国の利益をどのように考えているのか,は難しい問題です.

Martin Wolfは,中国政府が「実質的な為替レートを十分な競争力を維持する水準にできるだけ長く維持しておきたい」と考えているように見えるが,それは正しい政策なのか? と問います.「バラッサ=サミュエルソン効果」,中国のインフレ率とアメリカのインフレ率,不胎化介入,などが議論されます.


The Guardian, Monday October 9, 2006

Jack Straw has unleashed a storm of prejudice and intensified division

Madeleine Bunting

FT October 10 2006

No veil on debate

(コメント) 移民,イスラム教,多文化教育 ・・・イギリス社会が「結束」を高めるには何が障害で,何が有益か?

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The Economist, September 30th 2006

Assertive Abe

The European Union: In praise of enlargement

Lexington: Mitt Romney’s problem

Venezuela and the United States: The world according to Chavez

Currency markets: Yen and yang

(コメント) 「もの言う外交」を唱える安倍首相についての,好意的な,しかし用心深い鑑賞.移民を受け入れ,民主主義の制度を広める点で,EU拡大は成功している.ただし,有権者は不安を強めている.2008年の大統領選に共和党候補としてすばらしい人物が居る.ただし,彼はモルモン教徒だ.ベネズエラのチャベス大統領は,なぜブッシュ氏を「悪魔」と呼んで,反米主義の喝采を浴びたのか? それにもかかわらずアメリカに石油を輸出している.

人民元よりも,なぜ円はこれほど安いのか? デフレを終えて,ゼロ金利も脱出するというのに,ユーロに対して円は下がり続けています.その理由は,円が外貨準備として利用されないからです.ドル,ユーロ,ポンドは好まれるのに,円は保有してもらえない.


The Economist, September 30th 2006

Virtual online worlds: Living a Second Life

Economics focus: Curve ball

(コメント) セカンド・ライフ,というのは,ヴァーチャル空間に誕生した世界(あるいは国家)です.そこには<土地>があり,<所有権>や<通貨>があります.さまざまなプログラムが,たとえばし精神分裂病からスカイダイビングまで,何でも体験できるし,トヨタの新車も運転できる,という風に売られている・・・ ということですこの世界のヴァーチャル通貨は現実の通貨にも交換できる,というから驚きです.

私は講義で,都市を<社会的革新の容器>と呼んできました.まさにセカンド・ライフは,インターネット上に現れた<都市>として,それを実現するのかな,と思いました.

フィリップス曲線.経済学のアイデアに関する面白い考察も,この仲間,にしておきます.