IPEの果樹園2006

今週のReview

10/2-10/7

IPEの種

*****************************

世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

*****************************

安全保障 :安倍政権アジアの多極構造

貿易・投資 :グローバリゼーション新興経済の拡大

通貨・金融 :インフレ・ターゲット

世界統治 :タイのクーデタ移民政策国連改革

******************************

ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


Amy Kazmin Sonthi given little time to rest on his laurels FT September 21 2006

Amy Kazmin Shake-up of political scene expected FT September 21 2006

John Burton Thai-Singapore axis set to unravel FT September 21 2006

Time up for Thaksin as tanks roll in FT September 21 2006

Amy Kazmin Thailand’s moral guide FT September 22 2006

Amy Kazmin Thai coup leaders ‘progressing’ on handover FT September 22 2006

John Burton Shin Corp losses hit Temasek after coup FT September 22 2006

Jonathan Steele Democracy is harder than western flip-flops make out The Guardian Friday September 22, 2006

Roby Alampay A Thai pointer for the Philippines Asia Times Online, Sep 23, 2006

Joshua Kurlantzick Tanks Roll in Thailand WP Sunday, September 24, 2006; B03

Floyd Norris We Love Thailand After the Coup; Thais Are Not So Sure NYT September 25, 2006

Shawn W Crispin Thailand's junta shows its (heavy) hand Asia Times Online, Sep 26, 2006

ISMAIL WOLFF The Silk Revolution NYT September 26, 2006

Simon Tisdall Like Musharraf, the Thai general just can't let go The Guardian Wednesday September 27, 2006

(コメント) タイのクーデタについてFTに多くの記事があります.国民の84%がクーデタを支持し,75%がタイの政治は好転する,と期待しているという調査があります.軍事政権が流したデマでしょうか? それほど国民はプミポン国王を信頼している? では,タクシン政権を支持した選挙は何だったのか?

タクシンの支持基盤は何だったのか? 民主化を求める豊かな都市の住民はタクシンを嫌い,貧困からの脱出に政府の支援を求め,自分たちを苦しめる市場からの保護を求める農村は,従来の経済政策よりも,タクシンの魔法を期待したのではないか.タイ民主主義には,十分な政策の違いを示す対抗勢力がまだ組織されていないことを,クーデタは示しています.

タクシンの失脚でもっとも傷つくのはシンガポールである,という記事を興味深く読みました.タクシンとの親しい関係により,19億ドルに及ぶ通信利権(Shin Corpの株式の49)を購入したばかりです.シンガポール=タイ枢軸で,ASEAN統一市場を政治的に指導してきました.タクシンの政治スタイルや愛国党は,シンガポールをモデルにしたものだ,と言われます.

Lee Hsien Loong首相(リー・クァン・ユーの息子)は,その夫人の率いる投資グループTemasekによる株購入を支持しましたが,バンコクにおけるデモによってShin Corp株価は40%も下落しています.・・・なるほど,同じ体質を感じます.「もし政治家と議会が協力して政党を育てなければ,民衆は軍部に政治の刷新と安定化を求めるかもしれない」と,東南アジアの脆弱な民主主義についてインドネシアの国防大臣Juwono Sudarsonoは述べています.

タクシン首相への高い支持率と,プミポン国王への敬意は,タイ国民の矛盾した感情を示しています.タクシンが軍幹部を入れ替える準備をしていた,とも言われます.権力を持つ者が有利なシステムでは,民衆に支持されない.どれほど抑制されたクーデタでも,必ず,市民たちの自由と権利を踏みにじり,それが軍事政権の性格を変える危険もあります.

Jonathan Steeleは,西側政府が,パキスタンのムシャラフによるクーデタを支持したように,いい加減な方針を取ることを批判します.それは決して西側による「民主化のための十字軍」などではないわけです.グローバリゼーションは余りにも急激に伝統的な社会=政治秩序を破壊し,近代的な統治は間に合いません.

各国の苦悩は,軍事政権が残した体制を本当に民主化することは容易でない,という教訓を示します.人民の力で権力を得たはずのアロヨ大統領や,民主化の指導者であったノムヒョン大統領も,決して民主的な指導者になりきれないのです.その最悪の悲劇は,都市中産階級がクーデタによる政治刷新を歓迎したことだ,と.

もっとも近代化されたはずのタイで,まるでモーリシャスやミャンマーのように,シャネルやルイ・ヴィトンのブティックが並ぶ商店街の向こうに軍事政権が成立しました.批判的なジャーナリストを解雇し,独立したメディアや監視機関を黙らせるため,タクシン一家が示した企業支配や政府権力の濫用は,まるで粗悪な時代劇でした.民衆デモが繰り返されたのは当然です.

その間,日本の企業や政治家は何を考えていたのでしょうか?

タクシンは国王の忠告を聞いて政府を離れるはずでしたが,地方の貧困はタクシンに権力を委ねようとしました.グローバリゼーションの勝者と敗者とが,直接に,ねじれた政治同盟を組んだようです.本当にクーデタは成功するのでしょうか? たとえ国王への敬意を誇示しても,民主的でない権力の本質は野蛮と恐怖です.


FT September 21 2006

China travels mapless on road to being great power

By Philip Stephens

FT September 24 2006

China is grappling with how to deploy its foreign exchange riches

By Richard McGregor

FT September 27 2006

China’s African embrace evokes memories of imperialism

By John Reed

LAT September 28, 2006

Chinese Corruption or Competition?

NYT September 28, 2006

China Allows Rise in Currency Value

By KEITH BRADSHER

(コメント) 中国に関する論評はいつも多岐にわたります.Philip Stephensは,上海で開かれた国際シンポジウムを紹介しています.そのテーマは「グローバル・プレーヤーとしての中国の役割」です.

世界の資源を獲得するために独裁国家とも手を組む姿は,かつてのヨーロッパ帝国主義諸国とそっくりです.しかし,外に向かっては「和平演変a “peaceful” rise」,内に向いては「平和的な開発」,「調和の取れた世界」を主張します.中国側の発言で最も多く繰り返されたのは,「中国は覇権国ではない.」

Richard McGregorは,中国の為替レートと外貨準備,金融政策に関する全般的な展望を示しています.1兆ドルを超える外貨準備は,どう考えても異常です.アメリカのポールソン財務長官は人民元レートの弾力化を求めています.

しかし,中国政府は人民元を切上げたくないのです.一つには,それが輸出産業を損なうかもしれないからです.もし雇用が減れば,内陸部からの出稼ぎが減って,所得格差が耐えられなくなるでしょう.また,中国政府の一部では,日本が15年に及ぶ不況を経験したのは行過ぎた円高による,という理解があります.

とはいえ,1兆ドルの資産を管理することは非常に神経を使うでしょう.もしドル安になれば巨額の評価損を出します.金利の低いドル建資産で運用していること,もっと有益な国内の使途があることは,既に論争となっています.ドルだけでなく,ユーロなどへの分散投資を唱える異見も出ますが,そもそも人民元レートの過小評価が問題であれば,どのような外貨資産であれ評価損を免れません.

巨額の外貨準備を蓄積することは,金融政策上の問題を起こしています.人民元切り上げを回避する理由になっている,国内金融機関の弱さを克服することと,外貨準備の累積と不胎化介入のための債券発行とは両立しません.中国の銀行システムが,ますます,政府の発行する債券保有に依存します.固有を増やすために高金利をつければ,むしろ外国からの資本流入を促します.

中国は,シンガポールの政府系資産運用をモデルとしています.ただし,シンガポールでも巨額の政府資産を運用するために外国人のマネージャーを多く登用しています.

他にも,中国がアフリカに進出する話や,国内の汚職・腐敗について,中国の開放型成長は今や「ハエが数匹紛れ込む」(ケ小平)という程度をはるかに超えています.それに応じた政治や制度の成熟が求められます.


FT September 21 2006

It’s not the labour market, stupid

By Samuel Brittan

(コメント) 金融政策をめぐる「インフレ・ターゲット」後への展望です.インフレが,労働組合の強硬な賃上げ要求によって起きる時代から,過度の金融緩和によって起きる時代へと変わりました.フィリップス曲線によって短期的な均衡を金融政策の目標にしたものの,長期的には失業率を変えることができないとわかりました.金融政策は,総需要と総供給のギャップに対応するべきだ,とされたのです.インフレ・ターゲットと金融政策の独立性は,そのもっとも明確な保証でした.

しかし,Samuel Brittanは,それで終わるとは考えません.次には,世界労働市場が基準となるでしょう.労働市場の需給こそが金融政策の従うべき基準なのです.ただし,その情報を得ることはかないません.さまざまな金融指標をにらんで,世界の労働市場がどうなっているか,中央銀行は監視しようとします.


FT September 21 2006

Japan after Koizumi

The Guardian Friday September 22, 2006

Japan's retreat into nationalism

Martin Jacques

The Japan Times: Sunday, Sept. 24, 2006

Japan needs a Willy Brandt

By BERNHARD MAYsecretary general of the German Group, Trilateral Commission

LAT September 25, 2006

Simmering Discontent in Japan

By Michael Zielenziger

(コメント) 日本について,小泉から安倍への政権移行が何を意味するのか,英語圏でも関心を集めました.彼らから見れば,安倍晋三が小泉から引き継ぐべきは経済改革の熱意と,自民党や官僚よりも,有権者に訴える政治姿勢です.他方,何より,修正するべきはアジア外交です.自己の政治的基盤強化を意識して安倍政権がナショナリズムを鼓舞すれば,アジア地域の政治的緊張は一気に高まるでしょう.

BERNHARD MAYは,ドイツが和解のためにウィリー・ブラントを必要としたように,日本にも歴史的和解を指導できる政治家が必要だ,と考えます.815日に靖国神社に参拝する,A級戦犯は関係ない,という小泉首相の選択によって,戦後60年を経て,日中韓の政治指導者たちは直接対話もできないほど表立って対立するようになりました.

小泉は,日本の侵略行為で東・東南アジアに2000万人以上の戦死者を出したことを反省しません.そんなことはする必要がないし,すべきでもない,と主張します.それはまるで,ブッシュ氏がイラク戦争と占領政策の失敗を正当化し続ける頑なな姿勢とそっくりだ,と感じます.

小泉は,ウィリー・ブラントのような心のこもった,本当の意味での謝罪を,戦禍をもたらした国民に対して行うつもりなどありませんでした.アジアの指導者たちが,ヨーロッパのように,互いの戦没者を弔い,非戦を誓うために,その国の記念式典に招待しあえるのはいつでしょうか? 少なくとも,それは靖国神社ではないでしょう.日本は和解に向けた外圧を正しく吸収するべきです.

ところが,日本では戦後の枠組みに対する不満が表面化しています.近代化されて,同調することを好むはずの日本人が,憤慨し,絶望し,疎外された人々によって代表されるかもしれません.安倍政権は,それを利用して内外の改革を断行し,ブッシュのアメリカと同盟するアジアの代理人となり,中国の野望をくじくべきだと考えます.

Michael Zielenzigerは考えます.隣国,中国は急速に成長して追い上げてくる.東アジア情勢は変化するほかない.ところが日本は,急速な高齢化と子供のいない社会,そして移民を嫌っている.終身雇用の労働者(サラリーマン)の消滅,不正規雇用の増加,ひきこもり,莫大な債務と年金・財政の破綻,・・・ こうした国内の不安を政府への不満に転化しないために,ナショナリズムを鼓舞する誘惑が政治家や官僚に強まっているのではないか?

首相が日本のアイデンティティーや国益を強調するとき,さまざまな保守派も蘇えります.岸信介,石原慎太郎,中曽根康弘,・・・ もっと強烈な個性が政治の舞台を動かすでしょう.もっと長期的な,アジアとの協力に基づいた繁栄を築くことが重要であるにもかかわらず.

FT September 27 2006

Japan’s chance to strike a deal with China

By Victor Mallet

NYT September 27, 2006

Shinzo Abe’s Asian Challenge

The Japan Times: Thursday, Sept. 28, 2006

Japan's political resurgence

By BRAHMA CHELLANEY

Sept. 29 (Bloomberg)

As Abe Takes Japan's Reins, Focus on the Women

William Pesek

(コメント) Victor Malletは,日本が中国との関係を重視し,ナショナリズムに傾倒しない保守派の支持を得て,日中関係の正常化と和解への道を進むべきだ,と考えます.その確実な一歩は,靖国参拝をやめることです.日本人の多くは,決して,靖国神社だけが戦没者や平和への願いを表している適当な場所だと考えていません.その歴史を展示する解釈は偏倚であり,国民を代表するものではありません.

他方,特に経済的な意味で,日中関係の重要性を疑うものなどいないでしょう.中国は日本の最大の貿易相手国であり,日本は中国への最大の投資国です.32000の日本企業が中国人の900万人以上の雇用に貢献している,とMalletは書きます.安全保障においても,エネルギー・資源においても,東アジアどころか,世界経済の安定にとって最も重要な二国間関係でしょう.

なぜ小泉は人気が高かったのか? NYTは,それは彼が過去の間違った政策を果敢に正そうとしたからだ,と考えます.もし安部がそれを学ぶなら,小泉の間違った政策,靖国参拝をやめて,中国との関係を改善するべきだ,と.教科書問題,戦時における日本の間違った行為,その他を真摯に再考し,戦争放棄の規定を憲法から取り除くとしても,アジア諸国の感情を無視しては行えないことを理解するべきだ,と.

インドの戦略研究家Brahma Chellaneyは,日本がアメリカや中国との関係を安定させるためにも,インドとの関係をもっと重視せよ,と薦めます.

しかし,William Pesekに言わせれば,安倍政権が味方につけるべきは,アメリカでも,中国でも,インドでもなく,女性です.なぜなら,日本の国債,企業家精神,生産性改善,年金の破綻,労働者不足,を解決できるのは,もっと女性が活躍することだから.しかし,日本の保守派は女性の権利を尊重するでしょうか?


NYT September 22, 2006

Anyone, Anything, Anywhere

By THOMAS L. FRIEDMAN

かつてニューヨーカーがピーター・シュタイナーの漫画を載せた.二匹の犬が居て,一匹はコンピューターの前に座っている.そしてもう一匹に言う.「インターネット上では,まさか君が犬だってことを知る者は居ないよね.」

あなたがウルグアイ人だということも知らない.

ウルグアイは,ブラジルとアルゼンチンに挟まれた人口300万人の小さな国だ.しかし,ウルグアイはインド最大のハイテク企業,タタ・コンサルティング社のラテンアメリカで最大のアウトソーシング先である.

現代のグローバリゼーションが示す最も興味深い特徴は,どんな企業でも,優れた想像力とインターネットの設備,そしてわずかな資本を持てば,世界のどこからでも誰に対しても,労働者とその顧客を結びつけて,世界的な企業になる,ということだ.フラット・ワールドの最重要な教訓とは,「何でも可能なことは,必ず行われる.なぜなら,これほど多くの人が革新と連絡の手段を利用できるのだから.唯一の問題は,あなたがそれをするのか,それとも,してもらうのか,である.」

Gabriel Rozmanは,自分ですることに決めた.ウルグアイで育った彼は,退職後,タタとパートナーを組むことを考えた.そしてモンテビデオを世界のアウトソーシング・ハブにしたいと思ったのだ.彼がタタに接近したとき,一人の顧客も労働者も居なかった.彼が持っていたのは二つである.一つは,ウルグアイの教育システムの質は高く,多くの良質で安価なエンジニアを利用できるという直感.もう一つは,ヒトラーから逃れたハンガリー人の両親に避難所となってくれたウルグアイに何か良いことをしたいという願いである.

4年経って,その会社,TCS Iberoamericaはエンジニアを補充するのが間に合わなくなっている.ウルグアイだけでなく,ブラジルでもチリでも,Rozmanはエンジニアを雇っている.多くの多国籍企業は,アウトソーシングをインドにばかり行うことを心配し,リスクを分散したがっていた.特に,ハリケーンがフロリダを襲った同じ日に,ムンバイでは洪水でインドのデータ・センターが麻痺し,アメリカのある大手銀行は閉鎖寸前の危機に陥った.またウルグアイでは,パキスタンとの核戦争を心配する必要もない.

Rozmanが初めてアメリカの大手銀行に,インドではなくモンテビデオにアウトソーシングするよう勧めた時,「モンテネグロなんてどこにあるのかも知らない」と言われた.しかし,「だから良いのだ」とRozmanは応えました.

インドとの時差も,モンテビデオの有利な点である.アメリカのデータをインドで(アメリカの夜に)加工できるが,モンテビデオはそれを引き継ぐ時間帯(インドの夜)にある.

多くのエンジニアはウルグアイ人だが,タタが派遣してきたエンジニアも多い.それは一軒もインド料理店が無かったウルグアイにとって強烈なカルチャー・ショックであり,文化摩擦でもあった.ビジネスは完全にタタの規則に従い,インド人がアメリカの顧客に接する仕方を真似るよう求められた.しかし,インド人もまたラテン気質を理解し,上司に刃向かうウルグアイ人と議論するようになった.

Asia Times Online, Sep 23, 2006

The new global populism

By Kaveh L Afrasiabi

NYT September 27, 2006

Fill ’Er Up With Dictators

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) グローバリゼーションは,他方で,社会不安や政治的混乱,独裁者やポピュリズムの誕生を刺激するのでしょうか?

Kaveh L Afrasiabiは,国連総会に示されたイラン,ベネズエラ,キューバ,ボリビアなどの反米主義を「グローバル・ポピュリズム」と呼びます.その本質は,世界的な所得再分配を政治的に主張することです.アメリカに集中するさまざまな権力を抑えることも意味します.それは,かつて非同盟諸国の運動や新国際経済秩序として示されたものです.チャベスがチョムスキーを引用したように,先進諸国の反体制知識人とも連携します.また,そこに産油国が含まれていることも重要です.

しかしTHOMAS L. FRIEDMANに言わせれば,それは石油価格の上昇がもたらした専制国家であり,ブッシュ政権は戦争するよりも,自国の石油依存を抑えるべきなのです.


The Guardian Saturday September 23, 2006

Thatcher's children

Simon Jenkins

The Observer Sunday September 24, 2006

Blair will be remembered for betraying Labour's values

Colin MacCabe

(コメント) ブレアへの労働党大会における反発は非常に激しいようです.イギリス人は戦争に倦み,テロの標的になることに怯え,ブッシュやアメリカという国の愚かさに振り回される自分たちの指導者を憎んでいるように見えます.


LAT September 23, 2006

Speaking With the Enemy

By Richard N. Haass

LAT September 24, 2006

Renouncing Bush's Failures Is a Start

By Todd Gitlin

NYT September 24, 2006

Facing Facts on Iraq

The American Prospect 09.25.06

Engagement Plans

By Robert Kuttner

The Guardian Monday September 25, 2006

Fighting the wrong war

Jeffrey Sachs

(コメント) ブッシュ政権の外交政策,特に,イラク占領,テロとの戦い,を修正するように求める声は強まっています.


FT September 24 2006

Rest assured, the eurozone will prove its durability

By Wolfgang Munchau

FT September 26 2006

Europe should fill the global leadership gap

By William Wallace

CSM September 27, 2006 edition

Bucking up Eastern Europe

The Monitor's View

BBC 2006/09/27

Romania and Bulgaria hunt EU growth plan

By Ben Richardson

(コメント) EUが,外交であれ,ユーロであれ,貧しい新規加盟国への支援と安定化であれ,重要な世界的役割を担うべきです.


FT September 24 2006

America is pursuing a grand design in Asia

By Daniel Twining

(コメント) 中国の台頭により,アメリカは日本から中国に乗り換えることがあるでしょうか? アジアの秩序が,その選択によって大きく変わります.特に,タイのクーデタが示したように,問題はアジアにおける民主主義の弱さにあります.

ブッシュ政権の選択は,日本が再びアジアの軍事大国として「正常化」するように鼓舞することでした.それと同時に,インドを大国として上昇するように支援することです.アメリカはこうして,台頭する中国に対するバランスを回復するようにもくろむのです.

アメリカはまた,インドネシアとベトナムにも協力を申し出ています.両国はともに中国の台頭に懸念を共有する歴史的背景を持つのです.独裁国家の影響力拡大を阻むために,アメリカはアジアの民主主義国の間の緊密な連携を制度化し,アメリカ,日本,さらにオーストラリア,韓国が互いに連携し,NATOとも協力できる仕組みを整備したいと考えています.

アメリカは,露骨に中国を封じ込めるのではなく,アジアの民主主義国家を育てることで,彼らが自分で問題を解決する能力を高め,将来の多極型秩序をアジアに促すわけです.ネオコンのように,単に,中国の支配を遅らせることは好ましくない,と考えます.

しかし,アメリカの戦略にはコストがともないました.「日本で高まるナショナリズムについて,韓国のように,近隣諸国は日本政府が覇権を求めていると警戒している.オーストラリア政府は,アメリカとの軍事同盟を重視するか,中国との貿易関係を重視するか,分裂している.アメリカとインドの核協力関係は,それに対抗して,中国によるパキスタンへの核支援を招く.アメリカとベトナムが接近すれば,ベトナムの自由化よりも独裁体制を強化することになる.しかし中国の安全を損なうなら,中国の潜在的な脅威に対するアメリカや友好諸国の取る対策が,むしろこの地域をさらに不安定化する.」

アメリカはどうするべきか? 「アメリカは日本が靖国問題を,日本が近隣諸国にとってより魅力的な国になる形で,解決するように励ますべきだ.アメリカは韓国との間に自由貿易協定を結んで,両国間の猜疑心を払拭するべきだ.そして,ASEANによって指導されたアジア地域の組織化を擁護し,その組織を通じてアジアの多角主義,日本とインドの指導力,責任ある隣国としての中国の振る舞い,を促進できるだろう.」 その結果として,アメリカの覇権は失われるのではなく,むしろ,地域の問題を解決するために歓迎されるようになる,と.


FT September 24 2006

Ditch obstinate posturing to clinch a Doha deal

By Robert Zoellick

(コメント) 自由化交渉の再生につけて,妥協と提案をラミー事務局長はどのように示せるか?


WP Monday, September 25, 2006; 12:00 AM

Border Enforcement Is Not Enough

By David B. Muhlhausen

FT September 28 2006

Immigration can no longer be ignored

By Martin Wolf

(コメント) 国境にフェンスや警備員を増やすだけで移民を防ぐことはできない,とDavid B. Muhlhausenは考えます.なぜなら,もし非合法移民の入国を妨げれば,既にアメリカにいる非合法移民が帰国しなくなるから,と.非合法移民たちは定住化し,ますます低賃金や劣悪な労働条件を強いられ,しかも,家族を呼び寄せるでしょう.

むしろ,非業移民を雇ったものに罰金を課し,短期の出稼ぎ移民たちが帰国するように合法的な雇用形態を設け,移民の出身地が経済改革を進めるように,アメリカが支援することでしょう.

Martin Wolfは,移民問題が高所得国のもっとも物議をかもす問題であることを認めます.イギリスでは誰も人種差別だと非難されたくないけれど,同時に,近隣で人種をめぐる衝突が起きて欲しくもないのです.非イギリス人の純流入は,1995年から2004年にかけて200万人,2004年だけでも34万人でした.

答えるべき問題とは,「誰のために? 移民は管理できるか? 経済的帰結は? 文化的な影響は? 政府が取るべき政策は? 」

Wolfは,まずイギリス人の利益を考えるべきであり,移民は不完全でも管理できる,と答えます.他方,経済的帰結は国の規模によって異なり,最も利益を受けるのは技能を生かせる移民たちである,と.他方,移民が受入国の文化や法律を常に尊重するようになると考えるのはナイーブであった,と反省しています.


FT September 26 2006

A slowing US could brake the world

By Martin Wolf

Asia Times Online, Sep 27, 2006

What a US recession means for China

By Jephraim P Gundzik

(コメント) アメリカと中国は,いわば,世界経済の二つのエンジンです.それがペースを乱したり,軌道を外れた場合には,その他の世界に及ぼす影響も深刻です.


FT

Martin Wolf's economists' forum

世界経済のリスクとは何か? ヨーロッパの停滞は宿命か? 先進諸国は財政再建に本気で取り組むのか? 年金制度をどうするべきか? 中国の成長は続くか? その他,多くの問題がある.ここでインフォーマルに議論しよう!

(コメント) Charles Wyplosz:IMFのクォータを変更するより,理事会のヨーロッパ理事の数を削減するべきだ.

Juergen von Hagen:いっそIMFが,資本市場で直接に債券発行するべきだ.

Jean Pisani-Ferry:IMFにおけるEU諸国の代表は減らすべきだ.しかし,問題はEU内部の意思決定が難しいことである.たとえEUがIMF内で重要な役割を負うとしても,EU内部の投票権や意思決定メカニズムは,IMF以上に小国に偏っており,しかも過半数では決められない.EUは結果的に,その発言力を失ってしまうだろう.

Robert Hunter Wade:IMFが通貨危機によって収入を得ているのは間違いだ.IMFは権威主義的な解決策を押し付けるのではなく,解決のためのネットワークを提供するべきだ.

Lawrence Summers:専務理事会を廃止することは難しいし,望ましくも無い.そんなことをすれば政策決定が,一層,政治化される.また将来の貸し手がIMFの融資条件を決めるのが当然だ.そうでなければIMFは信頼を失う.


International Herald Tribune, September 26, 2006

A bigger Security Council, with power to act

G. John Ikenberry and Anne-Marie Slaughter

WP Wednesday, September 27, 2006; 12:00 AM

The Next Phase of IMF Reform

By Johannes F. Linn and Colin I. Bradford

WP Thursday, September 28, 2006; A23

Risky Wishes at the U.N.

By Jim Hoagland

(コメント) Ikenberry and Slaughterは,安保理改革を求めます.世界には国連に解決策を求める問題が増えています.イランの核開発,ダルフールの虐殺,イスラエルとヒズボラとの戦闘.それらに国連が応えるには,安保理の常任理事国を増やすことです.すなわち,ドイツ,日本,インド,ブラジル,南アフリカ,ナイジェリア,そして,エジプトかインドネシアのようなイスラム圏の国と,小国も輪番制で参加するべきです.しかも,危機に際して決議を行う場合,常任理事国の拒否権を廃止する.

すでに,ドイツ,日本,インド,ブラジルの4カ国が常任理事国入りを求めていましたが,アメリカは日本しか支持せず,中国は日本の参加を強く拒んだ結果,実現しませんでした.また,ダルフールの虐殺を止めるためにも,アフリカから2カ国の参加を求めることが必要だ,と二人は考えます.これらの6カ国が安定した民主主義国であれば,ブッシュ政権の外交理念に沿うものではないか? と支持を求めます.IMF/世銀の改革とともに,アメリカは「民主主義国の連携」を組織するべきです.

Jim Hoaglandは,国連事務総長となる人物に警告します.アメリカが早々と韓国の候補者を支持しました.国際機関のトップをめぐる外交は熱を帯びます.

******************************

The Economist, September 16th 2006

Surprise!

Japan: The Koizumi restoration

Japan: The man who remade Japan

Thailand: Inching towards a new election

Silvio Berlusconi’s bequest: The soft underbelly

Italy: Stormier weather ahead

Foreign policy: In the world of good and evil

Charlemagne: Migration on migraine

(コメント) 世界は常に変化しています.驚いたことに,世界GDP(購買力平価による)の過半を占めるのはG7ではなく新興経済圏だ,と言うことです.日本のポスト・バブル業病も,ようやく小泉によってか,中国によってか,治癒しつつあります.タイではクーデタがすでに噂されていましたし,イタリアではユーロ圏の瓦解が噂されています.

アメリカは宗教により,ヨーロッパは移民によって,内部の分裂やグローバリゼーションへの対応を誤る恐れが増していると思います.


The Economist, September 16th 2006

A survey of the world economy: The new titans

(コメント) 世界経済の謎の多くは,その基本的な構造を正しく見るなら,当然の変化を反映しているようです.すなわち,この記事が示す新興市場とは,1994年以前のOECD加盟諸国を「開発諸国」として,それ以外を包括するものです.中国,インド,ブラジル,ロシア,メキシコ,その他.

記事は,1.成長・インフレ・金融政策・雇用・所得分配を説明するには,中国とインドの参加した意味を理解するべきだ.2.成長の限界は資源や環境ではなく政治である.この2点に集約できるでしょう.

技術ギャップがあり,豊富な労働力がある以上,輸送や情報伝達,教育,世界市場を形成するソフトとハードのインフラ整備が進めば,成長が加速するのは当然です.ただし,その過程では各国や各部門,各地域で資源が再配分され,産業構造や雇用が影響を受けます.人々は転職や移住を強いられ,賃金が削られることもあるのです.たとえ世界の貧困が急速に減少しているとしても,開発諸国で起きた不平等の拡大がグローバリゼーションへの政治的反発をもたらすのは時間の問題です.

政府は,もはや意味を失った政策効果に頼るべきではありません.保護主義であれ,インフレ・ターゲットであれ,中国やインドのことを正しく理解しているでしょうか? 石油価格が上昇しているのは,新興経済における石油需要が急速に伸びているからです(2000年以降,エネルギー消費の増加分の85%は新興経済が占めています).

なぜインフレは低いのか? 石油価格は上昇するべきなのか? 金融政策はインフレよりもバブルに備えるべきか? 成長率は高いのに企業利潤ばかり増えて労働者は貧しいのか? 金利や為替レートを中国などの新興経済が参加して国際的に調整するべきなのか?

The Economistは自由主義を信じています.だから,グローバリゼーションに対する答えは自由市場の拡大,もしくは《Ricardo!》です.それと同時に,グローバリゼーションの政治的な支持を失ってはなりません.貿易であれ,投資や移民であれ,それがより多くの人々に利益をもたらすような,政府による介入や制度についての合意が必要です.市場を無視し,各国政府が対抗して利益を増やそうとすれば,失敗します.