IPEの果樹園2006
今週のReview
9/11-9/23
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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安全保障 :9・11テロ5周年,ブッシュの世界像,米韓同盟
貿易・投資 :世界市場統合
世界統治 :グローバリゼーションの改善,北欧モデル,移民と政策
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
NYT September 2, 2006
I.M.F. Board Supports Giving China and 3 Others Bigger Voices on Policy
By STEVEN R. WEISMAN
The Guardian Tuesday September 5, 2006
Don't be fooled by this reform: the IMF is still the rich world's viceroy
George Monbiot
Sept. 7 (Bloomberg)
U.S., China Must Back IMF, End Currency Impasse
Andy Mukherjee
NYT September 7, 2006
Opening Up the Club
FT September 8 2006
IMF and World Bank rebuke Singapore
By John Burton in Singapore and Shawn Donnan in Jakarta
(コメント) 中国,メキシコ,韓国,トルコ.IMFがクォータ(分担金)の増額を認めた国です.
IMFは基金を増やさなければ融資が足りなくなっています.融資しなければ運営費用にも不足します.しかし,アメリカ議会はIMFを批判する声が強く,IMFの基金割り増しに,最大の拠出国であるアメリカは反対です.しかし,もしアメリカが増加を受け入れないと,IMFにおける発言権を低下させるというので,そもそも他国が増額することにも反対します.これに,過分のクォータを持つヨーロッパ諸国(しかも,専務理事のポストを支配する)が加わり,改革を先延ばしにしてきた,と言われます.
増額を認められた国は,急速に経済力を増しただけでなく,通貨危機に遭い,あるいは次の危機が懸念されるIMFの政策監視と融資交渉の主要相手国です.彼らが発言力を増すことも,組織がアメリカやヨーロッパの政治から一定の独立した権威を得ることと並んで,加盟諸国がIMFの決定に従う条件なのです.たとえばアメリカは,IMFがより強く中国の為替制度や資本取引に関与する,と期待しています.
これで,アメリカは17%,EUは23%,中国は3.719%,です
George MonbiotはIMFを,世界でもっとも厳しい専制制度,あるいは大氷河にたとえています.この氷河が動き出したのか? IMFは,拷問も強制収用所も使わないが,その指導した政策によって,はるかに多くの者が餓死しただろう,と.これは緩慢なペレストロイカだ.「多くの独裁体制がそうであるように,改革は変化を加速するためではなく,阻止するために行われる.」
184カ国が加盟しますが,IMFを動かすのは8カ国(G8)です.その政治算術は,重要な政策決定に必要な85%を誰が支配するか,もしくは拒否できる15%を誰が支配するか,に示されます.アメリカが17%を持つ以上,完全な拒否権を得ています.アメリカの同意しない提案は通りません.イギリス,ドイツ,フランス,日本はあわせて22%を持ち,理事を出します.また,貧しい国の発言権を増やすという怪しい理由で,カナダとイタリアが8%を持ち,またヨーロッパの小国は異常に高い比率を支配します.たとえばベルギーは,インドやブラジルの2倍も大きいのです.ヨーロッパ,日本,カナダ,アメリカで,あわせて63%を支配し,最も貧しい80カ国は10%に過ぎません.
実際には,救済融資が関係諸国や国際機関からの借り入れによって行われるので,IMFは国際的なルールを合意する発言権を示すわけです.1978年に変動レートを受け入れる改正が行われてから,IMFの権限は曖昧になり,主要国の政策監視より,G7が他国の個別問題に介入する手段になった,という批判に至ります.
もしIMFが改革に失敗するなら,Robert Mundellが言うように金本位制に戻るほうが良い,とAndy Mukherjeeは考えます.中央銀行は金利を決める力を失わないでしょう.そして,為替レートを決める自由は,香港のような小国にとって無意味なのです.
シンガポールのIMF総会において,国際収支不均衡の調整が話し合われるでしょう.2000億ドルの黒字を持つ中国や,1000億ドルのサウジアラビアが,8000億ドル以上の赤字を出すアメリカと話し合います.特に,人民元とアメリカ・ドルとの為替レートが調整されるでしょう.不均衡の調整は,それらの諸国が互いに通貨価値を固定するよりも,変動させるほうが,容易に実現できるだろう,とBrad Setserは考えます.IMFは,その駆け引きを仲介し,判定するだけです.
アメリカと中国の行動が重要です.中国は人民元の弾力性を増して,市場圧力による増価を許すように,また,アメリカは財政赤字を減らすように,求められます.彼らは調整を受け入れることで,国際社会の尊敬を集めるでしょう.両国が非難し合うのは愚かであり,危険です.IMFは,通貨に関する将来の協調行動を考える,多国間協議を開催するでしょう.
IMF自身は,最後の貸し手として,道徳的な権威を樹立しなければなりません.そして,協定を改正して,法的な権限を得るわけです.それは強い反対を招くかもしれません.しかし,IMFが何もしなければ,不均衡は拡大し,保護主義の台頭と金融危機の波及に終わります.
WP Monday, September 4, 2006; A19
Attacking Inequality
By Sebastian Mallaby
The American Prospect 09.05.06
Another Year, Another Wage Loss
By Robert Kuttner
FT September 6 2006
Cheap labour is Europe’s outsider class
By Desmond King and David Rueda
NYT September 7, 2006
The Populist Myths on Income Inequality
By DAVID BROOKS
NYT September 8, 2006
Whining Over Discontent
By PAUL KRUGMAN
(コメント) 経済成長が裕福な者を富ますだけで,貧しい多くの労働者たちを助けないとすれば,極端な不平等を解消するために税制改正が必要だ,とSebastian Mallabyは主張します.なぜなら,その他の方法は好ましくないから.
保護主義,労働者の組織化,最低賃金の引き上げ,(さらに,共和党案にぶら下がった,住宅減税や貯蓄奨励策)を取り上げ,反対します.アメリカの労働者が貧しい理由は,国内の分配が不平等であるからです.それは,富者に有利な社会構造を逆進的な税制が増幅している,と考えます.税制改正こそが,正しい答えです.
労働を祝う日に,Robert Kuttnergは,子供を育てるために働く,貧しい女性たちに言及します.彼女たちを助けるために,政府は何もしてくれません.しかし,さまざまな制度があったはずです.それらは富者と中産階級のためにあるようです.政治を無視することもできるが,それがもたらす結果から逃れることはできない,と民主主義を動かすように訴えます.
EUにも,新加盟諸国からの移民労働者が「新貧困層」を形成しつつあり,アメリカと同じように不平等を拡大し,1970年代の社会民主主義やリベラルの理想を一掃しつつあります.
DAVID BROOKSは,グローバリゼーションに反対する新ポピュリストたちを批判します.むしろ労働市場のメリトクラシーは富を確実に分配しており,欠けているのは技能・知識である.だから貧しい者でもその子供たちに十分な教育の機会が必要だ,と主張します.
FT September 5 2006
Share gains with globalisation’s losers
By Martin Wolf
The Guardian Thursday September 7, 2006
Making globalisation work
Joseph Stiglitz
FT September 7 2006
We have become rich countries of poor people
By Joseph Stiglitz
The International Herald Tribune, 7 September 2006
Managing Globalization: Reducing Inequality ? It's Not So Simple
Daniel Altman
SPIEGEL ONLINE - September 7, 2006
The New Wave of Globalization
By Fiona Ehlers
(コメント) Martin Wolfは考えます.グローバリゼーションは逆転しうる.経済の論理は支持しても,政治の論理が反対する.この問題について,バーナンキは豊かな諸国の国内政治と,財・サービス貿易の不均衡に関心を向けます.グローバリゼーションの成果をより広く,均等に分配しなければ,政治的・社会的な反発が強まるからです.
裕福な諸国に広まる不安は,ある意味で誇張されており,また,短絡的なものです.経済活動は非常に強く近接性に影響を受け,それゆえ,金融センターや工業地域は容易に移動しません.また,世界的な供給システムによる財・サービスの貿易は,技術革新と同じように,その影響は有利でも不利でもある複雑なものです.
交易条件が改善し,生産性上昇をもたらすグローバリゼーションに,裕福な諸国が政治的な反動を放置することは間違いです.グローバリゼーションを維持するにも,豊かな国では国内の政治的な再分配,補助金が活用できるでしょう.貧しい国が問題を抱えています.
Joseph Stiglitzのほぼ同じ内容の論説は,要するに “Well-managed globalisation can make everyone, or at least most, better off.”というわけです.グローバリゼーションには問題も多いし,変則的な事実もある.しかし,自分はアンチ・グローバリゼーションの立場ではない.それは放置されれば危機を深めるだろう.資本主義をケインズが改良したように,グローバリゼーションも改良できる,と.
Daniel Altmanは,インドを例に挙げて,グローバリゼーションが高度な技術者を世界市場につなぐけれど,多数の貧しい労働者は利益を得られず,不平等が拡大する,と指摘します.それはインドの将来の生産性上昇やマクロ政策にも影響します.
イタリアの衰退した織物の町Pratoに,中世の城壁で囲まれた香港,あるいは中国人の<租界>が誕生しつつあります.工場の多くを中国人が買収し,中国からの移民労働者が生産します.こうしてイタリア製の高級織物を中国の価格で生産します.・・・それを歓迎するべきか? と,イタリア人は困惑します.
The Guardian Tuesday September 5, 2006
We must forge a new special relationship - with India
David Cameron
BBC, Tuesday, 5 September 2006
Five years on: Economic aftershocks
by Steve Schifferes
FT September 6 2006
US current account
FT September 7 2006
Containing the cracks in the world economy
The Japan Times: Thursday, Sept. 7, 2006
Can the IMF avert a global meltdown?
By KENNETH ROGOFF
The Guardian Friday September 8, 2006
Back to business
Rodrigo de Rato and Paul Wolfowitz
FT September 10 2006
Markets’ resilience to terror is no reason to relax
By Jeffrey Garten
(コメント) 9・11テロがもたらした金融,航空産業,そして心理的な影響を緩和するために,世界の金融緩和が進み,テロの影響より,その後のバブルと対外不均衡が残されました.他方,アフガニスタンとイラクにおいて戦争を行い,そのコストと国際機関の混乱は今に至っています.そして,テロ防止に限らず,貿易自由化や疫病対策でも,アメリカが呼びかける国際協調は亀裂を生じました.
アメリカの生産性改善は減速し,石油価格上昇とともに,インフレを再発するでしょう.バーナンキは早期の利上げで対抗します.他の地域が問題を免れているわけでもありません.
ハーヴァードの教授であり,IMFの主任エコノミストでもあったKENNETH ROGOFFは,IMFが仲介して,主要国がWin-Winになるような政策合意を実現できる,と主張します.中国は人民元の増価を許すことで,国内の過熱した投資を抑制し,90年代型の危機を回避できます.アメリカはガソリンなどの化石燃料に課税して財政赤字を減らし,地球温暖化防止にも対応できます.日本は時代錯誤の為替市場介入をやめて,欧米と同じような金利を目標に下政策を採用することで,経済をよりうまく操縦できます.ヨーロッパは好景気による税収の増加,サウジアラビアは国際金融の安定性に貢献することです.
IMF専務理事と世銀総裁は,ドーハ・ラウンドの決裂で世界経済が不安定化することを許さないように行動しよう,と呼び掛けます.
Jeffrey Gartenは,金融市場と金融当局が予想外に示したテロへの柔軟で迅速な対応力を歓迎しつつも,その底にある金融不安の膨張を軽視してはいけない,と注意します.
WP Wednesday, September 6, 2006; A15
Wrong Path on North Korea
By Donald Gregg and Don Oberdorfer
The Guardian Friday September 15, 2006
Paranoia in Pyongyang
Simon Tisdall
Asia Times Online, Sep 6, 2006
A strategic insurance policy
By Evelyn Goh
Asia Times Online, Sep 7, 2006
Stand up to Uncle Bully
By Shawn W Crispin
Sept. 11 (Bloomberg)
APEC Must Think Bigger to Be Relevant in 2000s
William Pesek
Jacob Weisberg Bush (and luck) have shielded US FT September 6 2006
Rosa Brooks Do You Feel Safer? LAT September 8, 2006
THOMAS L. FRIEDMAN The Central Truth NYT September 8, 2006
Edward Allen Five fraught and futile years: US must align aims and reality FT September 10 2006
Steven Biel Nostalgia of national unity BG September 10, 2006
Brendan Simms 9/11: Historic Turning Point, or Bump in the Road? LAT September 10, 2006
FRANK RICH Whatever Happened to the America of 9/12? NYT September 10, 2006
THOMAS H. KEAN and LEE H. HAMILTON Giving Muslims Hope NYT September 10, 2006
MELISSA BOYLE MAHLE We Can’t Kill an Ideology NYT September 10, 2006
Five years on, the US is far from winning FT September 11 2006
Cathy Young The search for clarity in a more complex world BG September 11, 2006
PAUL KRUGMAN Promises Not Kept NYT September 11, 2006
9/11/06 NYT September 11, 2006
Ahmed Rashid Losing the War on Terror WP Monday, September 11, 2006; A17
(コメント) 9・11の再発を防ぐことが最大の目標でした.それは,かろうじて,成功したわけです.スペイン,イギリス,インドネシア,などで起きました.カナダにおける未遂.・・・ アメリカも世界も,ブッシュ氏の指導によって安全になったでしょうか? テロに対する反発,民主主義や国際秩序を守ることへの連帯感は強まったでしょうか? 不幸にして,ブッシュ氏の弁解や主張は世界を分裂させました.
5年を経て,Bush-Cheney-Rumsfeldは何を語るのか? 一握りの過激派を殲滅し,世界の民主主義を守る.21世紀の全体主義国家が誕生するのを待って,宥和できると主張する民主党の愚かな考えこそ最大の国内問題だ.・・・
THOMAS L. FRIEDMANは,それが「辺境」の問題ではなく,「中枢問題」である,と言います.それは,ブッシュ政権が掲げた道義的大目標と,限定された現実の関与との,深刻なギャップです.たとえば第二のノルマンディー上陸作戦を唱えながら,パナマ侵攻にも劣る.そして,イラクは民主主義と全体主義との戦場ではなく,シーア派の復興に対するスンニー派の抵抗戦である,ということです.ブッシュ政権は,今も,この二つを見ようとしません.
フランス革命の歴史的評価を留保した周恩来と同じく,私たちも9・11が何であったかを安易に解釈するべきではない,と歴史家は言います.歴史は,何か特別な政治的イベントだけで,その方向が決まるという単純な姿を示しません.そして,歴史を評価するには,反事実的な仮定によって,現実を評価しなければなりません.
9・11を再発しないために,アメリカ人は何をできるか? むしろイスラム圏の人々に希望を与える.宗教やイデオロギーの対立を克服する.外交を現実に近づける.・・・
9・11ですべてが変わったか? あるいは,何が変わったのか? 何を達成したのか?
FT September 6 2006
China’s industrial policy should think small
By Guy de Jonquieres
FT September 6 2006
Chinese FX reserves
WP Thursday, September 7, 2006; A27
In China, Living With the Unspeakable
By John Pomfret
Asia Times Online, Sep 8, 2006
Chairman Mao's long shadow
By Martin Adams
International Herald Tribune Friday, Sept. 8, 2006
The 'floating children,' adrift in China's cities
Yuen Yuen Ang
NYT September 9, 2006
China Is Not Just Rising, but Also Changing
By ROSS TERRILL
IHT WEDNESDAY, SEPTEMBER 6, 2006
Get out of Iraq. Now
Daniel Kurtzer International Herald Tribune
WP Friday, September 8, 2006; A17
Iraq: A Civil War We Can Still Win
By Charles Krauthammer
LAT September 6, 2006
Argentina's Annoying New Friend
By Nancy Soderberg
NYT September 6, 2006
A Way to Peace in Mexico
By JORGE G. CASTANEDA
CSM September 07, 2006 edition
Mexico's next president as bridge builder
FT September 7 2006
New start in Mexico
LAT September 10, 2006
Killing Mexico to Save It
By Denise Dresser
FT September 7 2006
The west must address the roots of Islamic struggle
By Harlan Ullman
International Herald Tribune, Sept. 7, 2006
Meanwhile: What it means to be Japanese
Ko Unoki
The Japan Times: Thursday, Sept. 7, 2006
Congratulations to the Imperial Family
WP Thursday, September 7, 2006; A27
Japan's Wrenching Choices
By George F. Will
FT September 8 2006
A narrow escape for Japan’s princesses
By Mariko Sanchanta
(コメント) 日本人とは何でしょうか? 一つの答えは,さまざまな文化的・歴史的・政治的な特徴を議論して,理想や不安を共有することです.もっと明確な答えは,DNAを調べること ・・・!
遺伝子的な世界地図を作るThe Genographic Project(the National Geographic Society と IBMが主催しています)は,民族主義者の理想郷を築くでしょうか? 両親とも日本人で,自分が日本人であると信じるKo Unokiさんも,遺伝子的な先祖を5万年前のアフリカと,4万5000年前のアラビア半島もしくはイランに見出したようです.先祖は中央アジアや中国にも現れます.
もちろん,皇室が40年以上も待ち望んだ男子誕生も,アフリカやアラビアの末裔,中国民族や朝鮮民族の兄弟姉妹です.
他方で,日本の福祉国家は,同胞愛や愛国心を教育しないからではなく,老衰と少子化によって死滅します.日本はこの二十年間で4000の学校を閉鎖した,という記述に,深い恐怖を味わいます.それでも日本は移民を歓迎せず,過酷な労働を押し付けます.また,男子誕生を祝う喧騒が示すように,女性は皇室においても二流の資格です.
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The Economist, August 26th 2006
America’s house-price bubble: What’s that hissing sound?
Rural Japan: Where have all the young men gone?
The European Union in the world: A broad be dangers
Migration from eastern Europe: Second thoughts
Hyperinflation in Zinbabwe: Bags of bricks
(コメント) 住宅バブル,地方からの人口流出,地域安全保障,移民自由化,ハイパーインフレーション,・・・ これらの問題がもし同じ国で短期間に起きたら,もう,大変な状態ですね.しかし少なくとも,この世界では同時に起きています.そして,歴史を遡れば(また未来を展望すれば),どこでも起こりうることでしょう.
バーナンキ議長は,住宅バブルが不況をもたらすなら,金融システムを守るために金融緩和(救済)に向かいます.しかし,インフレ圧力とドル暴落の不安はその決断を難しくします.不況は貯蓄を増やし,対外赤字を減らします.住宅バブルは生産性を改善するわけでもなく,長期的な成長をもたらしません.むしろ資源を生産的な用途から奪っている,とThe Economist指摘します.
人口流出が続く日本の地方自治体は,合併して消滅するしかないようです.石川県の輪島に近いOgamaについて記事は伝えています.自治体の生き残りを,一つの谷を売却して,都会からの産業廃棄物処理に利用する,という案を進めている,と.地方から若者は流出し,農耕を担えなくなった老人たちは谷間の田畑を諦め,そこに都市や工場からの廃棄物が戻ってきます.
日本が湾岸戦争と金正日のミサイル発射によって変わり始めたように,EUはバルカン半島の危機以後に変わりました.ただし,地域安全保障です.予想を超える東からの移民急増や,小山のように貨幣を運んで使うしかないジンバブエのハイパーインフレーションも,興味深いです.
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SPIEGEL ONLINE - August 31, 2006, 03:51 PM
Investing in Ethics: The Norwegian Model
By Manfred Ertel
FT September 10 2006
The devaluation saga of Sweden’s industrial rebirth
By Wolfgang Munchau
FT September 11 2006
If Italy thinks the unthinkable about the eurozone...
By John Kay
(コメント) ノルウェーの好調な理由は,もちろん,石油や天然ガスが豊富なことでしょう.その富は,もちろん,独裁者の浪費と虚栄に消えることなく,国民を豊かにするために使われます.ごく一部が財政赤字を埋める一方で,将来世代のために世界中で,道徳的基準を満たしながら,優良企業に分散投資されています.
スウェーデンの選挙を左右するのは,その経済運営について,素晴らしい好景気が通貨クローナの切下げによるのか,あるいは社会民主党のアレンジした労働市場の改革によるのか,という解釈と関係するようです.右派は,実際の失業率や生産性上昇率が悪化していることを考慮して,民営化,規制緩和,減税,の政策パッケージを提唱します.
成長率でも,インフレ率でも金利でも,スウェーデンはユーロ圏より優れています.しかし,注目すべきは,成長が急速な輸出増加によって可能になっていることです.1992年以来,輸出額のGDP比率は27%から52%へと急上昇しました.それまでは20〜30%で安定していた比率が増加したのは,1992年にERMの危機以後,ペッグを離脱して,当時に比べれば30.7%もクローナの価値が低下したのです.スウェーデンの電器,重機械,自動車・トラック,林産物,などが輸出によるブームを経験しました.
他方,ユーロ圏の問題児,イタリアは,離脱の規定を持たないユーロ圏の不安材料です.新リラを発行して,ユーロよりも割引価格を適用するというアイデアが流れます.それは許さない,という法律を作ることもできないようです.政治家や官僚は,やる気になれば何でもやる,と.ただし,ユーロ建債務を大量に市場へ販売している以上,このような手段に訴える魅力は無いだろう,というわけです.
FT September 11 2006
Hysteria, hypocrisy and immigrant hordes
By Gideon Rachman
(コメント) ロンドンで買い物するとき,カシミールの女性が本を読んでいた.そのタイトルは『ポーランド語の自習』.新しい移民労働者が増えている・・・と,Gideon Rachmanは書きます.カシミールをふくむ南アジアの移民が流入したのは1960年代,70年代です.2004年にEUが新規加盟10カ国を承認し,ポーランド人を中心に約60万人が既に入国して働いているようです.
ポーランド人は優秀な労働者であり,ぼろをまとった女性や子供はいませんでした.しかしEUではブルガリアやルーマニアの加盟も控えて,イギリスでさえ移民労働者への反感が強まっています.次期首相と期待されるゴードン・ブラウン蔵相は,「イギリス人にイギリスの雇用を」という原則に同意しています.
アメリカでもヨーロッパでも70%以上の人が大量移民を脅威と感じています.アメリカには1200万人の非合法移民が住んでいると推定されます.Pat Buchananの新著はまさに “State of Emergency: The Third World Invasion and Conquest of America.” ヨーロッパには500〜800万人の非合法移民が居住しているでしょう.スペイン領のカナリア諸島には週末になると2000人もの移民が不法に流入します.
ブレア首相も,それが一定のルールによって管理されるべきだ,と考えています.しかし,ロンドンであれ,リオ・グレンデであれ,カナリア諸島であれ,政治家が何を言ったとしても,移民の流れを遮断する力はない,と人々は知っています.イギリス政府がショックを受けたのは,新加盟国から1万3000人ほどが入国するだろう,と予想していたからです.EU加盟国であれば,たとえ労働を認めていなくても,観光客として自由に移動できます.地下経済が拡大するわけです.企業は非合法移民を雇用し,多くの家庭は家政婦やベビーシッター,介護者を求めています.
非合法移民を根絶することを考えるより,さまざまなタイプの移民労働を合法化することです.イスラエルがテロを防ぐためにフェンスを築いたように,アメリカやヨーロッパもフェンスを築くのか? 女性や子供たちを含めて,非合法移民たちを強制退去させるのか?
The Guardian Tuesday September 12, 2006
Stop blaming migrants - exploitation is the problem
Brendan Barber(the general secretary of the Trades Union Congress)
The Guardian Wednesday September 13, 2006
Attacks on multicultural Britain pave the way for enforced assimilation
A Sivanandan
WP Friday, September 15, 2006; 12:00 AM
Enacting Immigration Reform, Again
By Romano L. Mazzoli and Alan K. Simpson
(コメント) 民営化され,グローバリゼーションが進んだ経済で,多くの移民労働者が利用されるのはなぜか? 移民たちは失業者に対するスケープゴートにされている,とBrendan Barberは指摘します.労働組合は移民労働者を歓迎し,むしろ労働条件を問題にしようとしています.
同化か多文化主義による統合か? さまざまな民族間の通婚と移動性を高めるか? 移民社会の将来について論争が続きます.
アメリカの移民論争で,主要な関心は,1.国境警備と安全保障,2.一時雇用計画,3.合法化もしくはアムネスティー,です.
FT September 12 2006
Bad news for the IMF is good for its clients
By Martin Wolf
Sept. 13 (Bloomberg)
G-7, Aging Hero, Must Make Room for 20 Nations
William Pesek
FT September 13 2006
Do not spend the global dividend
By Raghuram Rajan
FT September 14 2006
Blame hypocritical members for IMF malaise
By Alan Beattie
Sept. 15 (Bloomberg)
Hedge Funds Take Backseat to Asian Central Banks
William Pesek
The Guardian Friday September 15, 2006
Leader: Fiddling with the fund
(コメント) IMF自身の財政難を,Martin Wolfは歓迎します.最近,通貨危機が減ったからです.三つの問題が融合します.1.貧しい諸国に資本が向かわない.2.石油価格が高くなれば産油諸国の黒字が増え,アメリカの赤字が増える.3.新興市場は通貨危機を恐れて,外貨準備を増やす.もし貧しい国が発達した金融市場を持ち,石油価格が低く,新興市場が外貨準備を減らすなら,もっと多くの投資が裕福な諸国から貧しい諸国に向かうでしょう.
移民と同じように,資本移動や為替レートも政府・中央銀行が思うようになりません.しかし,もし国際的なルールを調整するとしたら,それは,アメリカ,ドイツ,日本などのG7ではなく,中国,インド,ブラジル,ロシアなどを含むG20で決める,とWilliam Pesekは考えます.それは世界人口の3分の2,世界総生産の80%を占めます.
すでにG7は,国際収支の調整やドル暴落に対処できないでしょう.もしこの市場の無秩序に一定のルールをもたらしたいなら,G7の指導者たちはG20を求めるべきです.
競争,持続性,弾力性,というスローガンが,世界経済の成長維持に役立ってきたことをIMFのRaghuram Rajanは強調します.さまざまな技術革新が生産性上昇とインフレ抑制,富の波及をもたらしたのは,こうした条件を維持して市場統合が進んだからだ,というわけです.政府は,その利益を消費してしまうのではなく,未来に向けて再投資せよ,と.
アジア諸国の外貨準備は,将来への不安,もしくは可能性です.
FT September 12 2006
A better way to tax
By Samuel Brittan
H.D.S. Greenway The reality in Iraq BG September 12, 2006
NICHOLAS D. KRISTOF Starting Another War NYT September 12, 2006
President Bush’s Reality NYT September 12, 2006
Richard Cohen Bin Laden's Victory WP Tuesday, September 12, 2006; A23
GWYNNE DYER If 9/11 hadn't happened, where would the world be? The Japan Times: Wednesday, Sept. 13, 2006
Jim Lobe Neo-con favorite declares World War III Asia Times Online, Sep 14, 2006
(コメント) ブッシュ=チェイニー=ラムズフェルドの思想は9・11以後に固まりました.イラク戦争は1938年のようなヒトラーの宥和策という過ちを避けた正当な結果であり,アメリカは敵対する国がたとえ1%でも核武装する可能性があれば軍事力で先制する意志を示しました.イラク占領は,人類の民主主義と文明を守り,中東から第三次世界大戦を勃発させないために必要なのです.これは21世紀のイデオロギー闘争,新しい冷戦だ,と.
奴らは自身で戦場に行くこともなく,こんな大言壮語を撒き散らす,と反対派は嫌います.本当にテロをなくすには,もっと地道な社会状態の改善策と国際的支援が必要だ,と.
ブッシュ政権が望むことはいろいろあるでしょうが,手っ取り早く効果的に,もう一つ戦争を起こしたい? イランでも,北朝鮮でも,スーダンでも,もっと手頃な,悪辣で弱小な独裁国家が,世界には多くあります. ・・・NICHOLAS D. KRISTOFは,イランがそれを望んでいる,と書きます.イスラム聖職者の支配を続けるためには,こうした帝国主義的なアメリカの攻撃により自分たちの主張が証明されることを待っているだろう,と.イラン政府は,まったく国民に支持されていないから. ・・・しかも攻撃は失敗に終わり,数年でイランは核武装する.
ブッシュの9・11記念演説は,そのレトリックと政策としての現実性について,厳しい批判を浴びています.ブッシュ政権は,誰よりもアルカイダと幻想世界を共有し,国民に戦い続けることを求めています.NYTの論説はチェイニーの「イラク侵攻が正しかっただけでなく,自分たちは同じことをもう一度やる」という断定に憤慨します.あれから多くのことが明らかになったにもかかわらず,これほど愚かな断定を繰り返すとは!?
もし9・11が無かったら,世界はどうなっていただろうか? 私もそれを思いました.アメリカはアフガニスタンに侵攻しなかったし,多分,ブッシュは二期目の政権を失っただろう,とGWYNNE DYERは考えます.9・11が無くてもブッシュ政権はイラク戦争を企てていたでしょうが,国民を説得できたとは思えません.イスラエルがレバノンに侵攻することもなかったでしょう.グァンタナモのような収容所はできなかったし,アメリカ政府や各国政府がテロに関して拷問や警察権力の拡大(市民権の抑圧)を許すことも無かったでしょう.外交政策も,他の独裁政府との関係も大きく変わりました.
International Herald Tribune, Tuesday, Sept. 12, 2006
Lining up to enrich uranium
Charles D. Ferguson and William C. Potter
WP Tuesday, September 12, 2006; A23
The U.S.-Korea Tie: Myth and Reality
By Daniel Sneider
LAT September 13, 2006
Don't Lose Seoul, America
By G. John Ikenberry and Mitchell B. Reiss
Asia Times Online, Sep 14, 2006
Heart and Seoul in Washington
By Donald Kirk
The Japan Times: Thursday, Sept. 14, 2006
Let's avoid a U.N. row with South Korea
By TOM PLATE
YaleGlobal, 14 September 2006
Can a White House Visit Shore Up a Sagging US-South Korea Alliance?
Morton Abramowitz and Stephen Bosworth
(コメント) 朝鮮半島と大国の介入は,今に始まったことではありません.日本,中国,ロシア,アメリカ.南北に分断されてからも,双方の独裁者が大国によって支持され,その支持を失うことを恐れて互いに共謀もした,とDaniel Sneiderは指摘します.米韓関係が最も危険な状態に至ったのは,1971年にニクソン政権が米中関係を見直したときです.アメリカや中国に見捨てられる共通の不安に応じて,南北双方が連携し,韓国の朴政権は核開発を始めた,というのです.CIAの得た証拠を示して,アメリカ政府は韓国に警告しました.1979年に朴が暗殺されたとき,彼の側近はアメリカ謀略説を唱えました.
G. John Ikenberry and Mitchell B. Reissは,たとえ北朝鮮に関する政策で米韓が対立しても,同盟関係はさらに重要であり,維持するべきだ,と主張します.共通の脅威,共通の価値,共通の利益,によって同盟関係は築かれます.たとえ北朝鮮が主要な脅威ではない,と韓国民が考えても,中国や日本との関係を考えれば,米韓同盟は非常に有益です.
FT September 13 2006
Black underclass gets its Dickens
By Jacob Weisberg
(コメント) カトリーナ,貧しい黒人,ディッケンズ.
NYT September 13, 2006
Land for NATO
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) イスラエルはまるで敗北したかのように振舞っているが,オルメルト首相は成果を上げたし,レバノン南部をヒズボラではなく国連そしてEU/NATO軍の支配地域に変えることができた,とTHOMAS L. FRIEDMANは評価します.
WP Thursday, September 14, 2006; A21
Democrats Vs. Wal-Mart
By George F. Will
(コメント) ウォルマートを批判し,マクドナルドを批判し,北朝鮮を,FoxNewsを,ブッシュ政権を,コカコーラを批判する.アメリカ政治におけるリベラルとは何か?
Asia Times Online, Sep 15, 2006
Why a rising China can't dominate Asia
By Robert Sutter
Asia Times Online, Sep 15, 2006
China's danger of vested interests
By Benjamin A Shobert
WP Friday, September 15, 2006; 12:00 AM
U.S. Trade Dilemma: Free or Fair?
By Daniel W. Drezner
FT September 15 2006
Japan’s key policymaker to resign
By David Pilling in Tokyo
(コメント) FTは竹中を称え,「政策にもっとも影響力のある」竹中を失った自民党政府への不信感を記しています.竹中の政権離脱を「市場型改革の時代が終わった」とアナリストは解釈します.危機の圧力も失われました.「アメリカ型の改革」を嫌う自民党内で,小泉の改革を支持(解説?)する学者として起用されたわけです.
フェルドマンは,「侍は二君に仕えず」と竹中を賞賛しました.良くも悪くも,竹中は「小泉マン(小泉の従者)」でした.ただし小泉=竹中・ホリエモンにより,国民からの信任や,選挙制度に対する疑念は強まりました.
小泉政権の改革について,その政策を作ったのは本当に誰だったのでしょうか? 竹中大臣(あるいは猪瀬直樹,あるいはその他のアカデミックな政策委員)たちでしょうか? 小泉氏の政治手法から考えて,また,危機に発生する市場圧力や対米・国際関係の重要性という点から,そのようなことがあったかもしれません.
International Herald Tribune, September 15, 2006
Swedish elections: Little to vote for
Jonathan Power
BBC News, 2006/09/15
Sweden sticks to multiculturalism
By Laurence Peter
(コメント) スウェーデンの選挙は,社会民主主義の一部修正を唱える細かい争点である,とIHTは考えます.高税率を拒むというより,より有効な政策を求めています.失業者の教育と再雇用に補助金を使うより,零細企業の設立を支援するほうが良い,といった問題です.またBBCは,人口の12%が外国で生まれたスウェーデンが示す多文化主義の現実を伝えています.より同質的なスウェーデンを主張するナショナリストの主張が,最近,支持を拡大しています.しかし,移民を支持する声が強いようです.
社会主義の理想とは? ヴォルテールからジョージ・バーナード・ショーまで,多くの思想家が想像しました.「勤勉さと思いやりをうまく結びつけた社会.階級の無い教育システムを誰にでも開放し,人は自由に金儲けできるが,その成果を共有しなければならない.今日,うまく儲かっている者でも,将来のいつか,病気になり,不安,孤独,失業を味わうかもしれないから.」
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The Economist, September 2nd 2006
Five years on
September 11th 2001: America’s longest war
The Middle East: A big and then a bigger mess
North Korea: Will he, won’t he?
Economics focus: On the hiking trail
(コメント) オサマ・ビン・ラディンによるテロ攻撃は世界を変えなかった.アメリカによる反撃(その失策)が世界を変えたのです.アルカイダの世界観は,テロによって,誰も共鳴させなかった.しかし,ブッシュ政権は金融センターを破壊して3000人近くを殺戮したテロに衝撃を受けました.そして逆に,イラク戦争とその占領政策において反米主義を強めたわけです.今や,ブッシュ政権を含む多くの人が,アルカイダ的な世界観の共有者です.
これは十字軍であり,宗教戦争であり,文明を守る戦いです.そのためには盗聴も,拷問も,強制収用所も,独裁者との協力も,・・・正当化されます.そして,中東ではますます和平が遠ざかりました.
アメリカ政治は分断され,ブッシュ氏は予想もしなかった大統領になりました.9・11を政治的に利用して,ブッシュし個人も政府の関係者も権力のバブルに酔いしれたわけです.安全保障が他の争点を吹き飛ばしました.そして,この政治的バブルの崩壊過程を,誰がどのように管理できるのか? 深刻に分裂したまま,過激なレトリックを繰り返す政府に,アメリカ人は囚われたままです.最悪で,最高の大統領.
いよいよ核実験? しかし,日本の核武装やアジアにおける貿易・投資の破綻を,アメリカも中国も避けたいのです.北朝鮮に残された道は,中国と韓国に支持されたクーデタと経済改革,でしょうか?
ワイオミング,ジャクソン・ホールで行われるカンザスシティ連銀のシンポジウムに,世界の主要な中央銀行家やエコノミストも集まりました.テーマは,「中国やインドなどが台頭することで,世界経済はどう変わったか」です.この記事は二つ,賃金と国際収支不均衡(資本移動)を取り上げています.未熟練労働者の賃金水準はアメリカ,ヨーロッパ,日本で低下したのではないか? 貧しい諸国からの投資でアメリカが国内貯蓄の不足(消費の過剰)を補うのは間違いではないか? このシンポジウムでは,むしろプラスの効果や長期的に緩和する傾向を指摘したようですが,記事は批判的です.