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IPEの種 9/11/2006
軽井沢には,雲場池という,湧水?の溜まる美しい池があります.以前は非常に美しかったのですが,この夏は,汚水の匂いに驚きました.生活排水でしょうか? どぶ川の悪臭が漂います.雨のせいもあったと思います.しかし,かつての池の透明感は無く,場所によってはすぐ横の住宅が池の周りの緑地を削って迫っていました.
書くことがないのに書いた文章を削りました.そして,反則でしょうが,未来の新聞(9月19日の朝日新聞)から,吉本隆明氏が考える「老い」を紹介します.「年を取ると何が一番つらいか.」 (映画『ストレイト・ストーリー』に,同じ台詞があったことを,以前,書きました.なお,引用句の形でも表現を少し変えています.)
彼は,意思と運動能力との乖離だ,と考えます.人は,思い,考え,感じるのに,実際に体を使うことができない,という距離感に苦しみます.
医者は考えます.「この人は返事だけだ.自分でやろうとしない.・・・少しぼけてきたか?」 しかし,この絶望感はアルツハイマーではない,と.「相手の細かい言葉にいちいち打撃を受けているのに,そのことを表すからだの動きは鈍くなっている.」「それを理解されないジレンマ.その点に老人は絶望する.」
老人福祉はルールを押し付けます.治療,介護,リハビリテーション.老人とは「年齢」ではない.「その画一性が一人ひとりの患者に及ぼす,心身への絶望感ははかりしれない.」 老人は「患者」ではない.「何十年もそれぞれの職業ごとに体を使って千差万別の人生を生きてきたのだから.」
吉本氏の空想は飛躍します.歴史や社会という問題を詰め込んだ「人類の歴史」と同じように,「老人」にも人類史の問題が全部詰まっている.「老人」ではなく,「超人間」だ,と.
NHK・BSでは,イラク戦争に関する映像を編集して流していました.不発弾に触れて片足を失った妹が,それでも家族の役に立ちたいと,杖を付いて歩く姿に苦痛と憤懣を覚えました.彼女の姉は同じ爆発で死にました.本当に悔しい,と母は訴えます.
毎日は戦争です.子供は大人たちに監視・強制されます.若者は強い身体を持つけれど資産を持ちません.老人は身体が衰えます.壮年であっても,一人ひとりは社会的地位に縛られ,階層的な秩序に従います.信仰・思想や市場による支配を免れることもできません.
身体と精神,その延長としての社会や,無自覚な市場の拡大を意識しなければ,人の生活は野蛮で,「絶望的」です.
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IPEの種 9/18/2006
住宅バブル,地方からの人口流出,地域安全保障,移民自由化,ハイパーインフレーション,・・・ これらの問題がもし同じ国で短期間に起きたら,国が滅ぶような状況です.The Economistの記事を要約しながら,それらはすべて日本で起きたか,起きそうな事だな,と思いました.
日本の勤労者は,自分たちの貯蓄が土地や株式のバブルで膨張し,半減したことを知りました.銀行を責め,大蔵省を責め,円高を責め,自民党を責め,郵政省を責め,自由化を責め,外人投資家を責め,無能な野党を責めました.そして? ・・・今もデフレを責め,中国を責め,アメリカを責め,ホリエモンを責め,オウムの麻原を責め,外国人犯罪を責め,北朝鮮を責め,憲法9条を責め,靖国参拝を責め,皇室継承や皇太子妃を責めます.・・・ Blame-gameと呼ぶようです.
土地を担保に融資を増やす安易なビジネスが持てはやされました.誰もが地価や株価が上がり続けることを疑いませんでした.日本は,国際政策協調の名目で,円高回避のために金融緩和を続けました.財政的な内需拡大策に頼り,限界に達しました.グローバリゼーションは輸入物価の下落や競争激化でインフレを抑えていました.資産市場の水準はさまざまな神話によって正当化されました.企業や銀行が儲かっていること(そして日銀の姿勢)を非難する声は少なかったのです.世界的な株価暴落(そしてウォール街のLTCM)に対しても,危機管理のために金融緩和の継続を受け入れました.
最近は,飲酒運転を責めています.大阪からの帰りに,パトカーが自動車を停めて,飲酒運転のチェックを行っていました.
日本人が本気で飲酒運転を禁止するつもりなら,自動車で来る客にお酒を飲ませる店にも罰金と営業停止の処置が必要ではないでしょうか? それでは,焼き鳥屋やおでん屋,その他の飲食店は,お客さんにお酒を出せず,潰れてしまう,という苦情が出るでしょう.・・・それは,非合法移民の禁止や,バブル破綻と似ています.
なぜ非合法移民が増えるのか? たとえ非合法でも,賃金格差や労働市場の需給ギャップを移民が国際的に調整するからです.もし非合法移民が抑制されるべきなら,単に禁止して非合法化し,彼らの労働条件を悪化させるのではなく,むしろ合法化して,雇い主や移民から税金を取るべきです.そして自国にふさわしい労働条件で競争させるほうが良いでしょう.
なぜバブルが破裂したのか? それはバブルを発生させた事情を問うことになります.過度の金融緩和や,投資家たちのユーフォリアを繰り返さないために,どのような制度が必要か? 日ごろから何ができるか? バブルが大きくなれば,その破裂がそれだけ実物経済を傷めます.むしろもっと早く破裂させるべきでした.
もしそれほど飲み屋で情報交換し,親交を深めることが重要であるなら,サラリーマンは自動車よりも電車で通勤するべきでしょう.飲酒運転の事故があれば,常に本人だけでなく,飲食店と企業・組織も処罰します.その結果,飲食店街は必ず駅前に発達するでしょう.通勤自動車による都市の渋滞も減ります.
自動車の利用や販売台数が減るかもしれません.宅地や住宅の市場も変わるでしょう.郊外住宅をつなぐ幹線道路や高速道路よりも,鉄道網の整備に政府は力を入れます.鉄道や郊外住宅の整備に関する長期構想が示され,バスがもっと利用されます.企業の規模や地理的配置が変わり,人口をもっと地方に分散します.町によっては,より多くの移民労働者や学生を受け入れるかも知れません.
私たちは,理念もしくは原則と,具体的な実行計画を示して,選挙を戦うべきです.そして,その結果を社会に反映させるため,具体的政策の責任を政府は負うべきです.
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