IPEの果樹園2006

今週のReview

7/3-7/8

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :日米同盟社会制度

安全保障 :ミサイル発射準備イランとの交渉オルブライト

貿易・投資 :ドーハ・ラウンド世界統合企業ロジスティックス

通貨・金融 :国際調整政策

世界統治 :メキシコ,ヨーロッパ連邦

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


NYT June 22, 2006

America in 2026

By BOB HERBERT

BG June 24, 2006

Survival of the richest

By Robert Kuttner

(コメント) 貿易摩擦であれ,移民問題であれ,論争が繰り返される中で,政治家は何を語るのか,注目する必要があります.

ジョン・エドワードは,われわれが余りにも自分本位で,冷笑的になってしまったことを教えてくれます.「私たちはどのようなアメリカを望むのか? 今だけでなく,二十年後に? そこに至るまで私たちに何ができるか?」 アメリカン・ドリームを取り戻そう,と.

3700万人も貧しい人々が暮らしていることは間違っている.所得,住宅,教育,雇用,福祉の面で,この国の機会から彼らが隔離されているのは間違っている.それはあたかも私たちが,人種によって合法的に隔離された国に住んでいたように.

第二次世界大戦後の世界の特徴とは,アメリカの「やればできる」という精神を広めたことだ,とエドワードは考えます.アメリカが道徳的な核心と正統性を回復して,海外での影響力の基礎に立って本来の指導力を発揮するべきです.それと同時に,アメリカが国内の難しい問題を解決することです.貧困問題,エネルギーの自立,「忘れられたミドル・クラス」を含む働くアメリカ人にもっと公平な分配をもたらすこと.

イラク駐留のアメリカ軍は削減できます.アメリカは人権や自由のために,海外の私たちが愛する国のために,戦います.

しかし,エドワードは同時に,アメリカが10年で貧困層を半減できる,と考えます.そしてアメリカは今後30年で貧困をなくす道に進むべきだ,と.労働者が貧しいのは報酬が不十分だから.企業の利潤は伸びているのに,労働者は貧しい.二人の子供を育てながら最低賃金で働く女性は貧困から抜け出せない.

最低賃金は引き上げるべきだし,労働組合を支援して,サービス経済にも拡張するべきだ,と彼は考えます.公共住宅の建設やコミュニティーの再生は,公的に支援できるはずです.富裕層への減税ではなく,労働者家族のために住宅購入クーポン券を配ります.人々が自分の足で,より学校とコミュニティーを選ぶでしょう.

アメリカ社会を再建するには,指導力だけでなく犠牲が求められている,と.

Robert Kuttnerも,アメリカに組み込まれた,貧富の温存システムを問題にします.


NYT June 22, 2006

Hiding Behind the Enemy

By HAIM WATZMAN

(コメント) イスラエル軍は,占領地における家屋内への探索と「テロリスト」の拘束に際して,パレスチナ人を「ポインター」(誰がテロリストとして拘束するべき人物かを指差す役割)として使います.さらに,自分たちの安全のために,パレスチナ人を防御用の壁に使います.

イスラエルの最高裁は,パレスチナ人を防御壁に利用することを軍に禁じました.その結果は,軍がブルドーザーを使って住居ごと潰す作戦に移りました.民間人にとってはさらに危険な作戦です.テロ攻撃がある限り,イスラエル軍の掃討作戦は続きます.和平交渉も行わない敵を相手に,民間人とテロリストを区別することはできないのです.

しかし,ブルドーザーに拠らず,民間人の犠牲を回避する方法はあります.情報を集め,計画を練り,民間人を安全に避難させます.パレスチナ人を楯に使うことは,戦いの道徳的な価値を損ないます.


FT June 23 2006

A Mexican stand-off

NYT June 28, 2006

Bringing Mexico Closer to God

By ENRIQUE KRAUZE

WP Wednesday, June 28, 2006; A25

Mexico's Missing Prosperity

By Robert J. Samuelson

FT June 29 2006

Moment of choice for Mexico

By Adam Thomson and Richard Lapper

(コメント) メキシコの大統領選挙です.かつての支配政党IRP(制度的革命党)は弱体化し,左派のオブラドールAndres Manuel Lopez Obradorと右派のカルデロンFelipe Calderonとが国民を二分しています.オブラドールは,メキシコシティーを基盤にしたポピュリスト運動を操る老獪な政治家,カルデロンは,フォックス大統領とその与党である国民行動党の候補者です.

FTは,オブラドールが実際は改革を好むにもかかわらずポピュリストの仮面をかぶって改革を無視し,カルデロンは議会の支持を得られず改革などできない,という選挙の行方を悲観します.石油価格上昇やアメリカからの資本流入,経済の安定化を実現して,一層の成長に向けた改革のチャンスを,メキシコは再び逃してしまう,と.

ENRIQUE KRAUZEの記事に拠れば,オブラドールは信仰と情熱の人です.貧しいメキシコ人たちは彼を救世主と見て,オブラドールの唱える<革命+福祉国家>に感激します.しかし,改革の財源は高級官僚たちの給与削減? もちろん,それだけでは計算が合いません.

NAFTAを改定して農民を保護し,安価な石油によって輸出を促進する.800万人にマイクロ・ファイナンスを提供する.あるいは,アメリカ国境まで超特急を走らせる.・・・

IRPを割って支持を得るため,ポピュリズムと個人的なカリスマに偏ったオブラドールが,本当に大統領に当選すれば,憲法やメキシコ民主主義が危機に瀕する,とKRAUZEは懸念します.しかし,他の候補者たちはメキシコの貧困層に対して,オブラドールに勝る有効なアピールを行えません.カルデロンの追い上げが成功し,もし僅差により敗北となれば,オブラドールとその支持者たちは選挙の不正を糾弾するでしょう.そして,暫定大統領の下,再び選挙が行われる? それが一時的に政治不安を増すとしても,オブラドールの王政を阻止するほうが正しい,と.

Robert J. Samuelsonは,メキシコがなぜ成長しつつもアメリカに大規模な移民流出を続けるのか,を考えます.経済成長は,優れた技術や経営方法を採用することによって,前進します.生産が増加し,効率性が改善され,所得が増えるか,価格が下落することで人々を豊かにするのです.

しかし,メキシコではそれが起きません.確かにインフレを抑え,関税率も引き下げて,4%の成長はアメリカを超えていますが,人口増加は1%を超えており,中国やインドの成長に大きく劣ります.メキシコの成長を制約しているのは,二重経済の構造です.一方ではPEMEXに代表される,保護された市場の,政府による近代部門が利益を上げています.ただし,その利益は同様の多国籍企業よりも小さく,メキシコの雇用や所得を増やしません.他方,労働者の4分の3が吸収されるのは,非合法な,中小・零細のインフォーマル部門です.彼らは金融手段や先進技術から排除されており,安定性や自由貿易がもたらすはずの成長を享受できません.

二人の候補者の,どちらがこの壁を打ち破れるのか? アメリカへの移民流出を止める政策を実行できる大統領は登場するのか? アメリカ国民の関心は選挙後に向けられています.

Adam Thomson and Richard Lapperは,オブラドールに関わる不安を示します.1.公約の中身.たとえば初年度に1000億ペソの支出削減を掲げます.その方法は公務員給与の削減.しかし,どう見積もっても,80億ペソ以上は削減できません.2.貿易協定.3.政府の透明性と責任.つまり,より国内指向の,反民主的な政府が誕生する.


William Pesek Jr. China May Be Africa's Savior or Its Curse June 23 (Bloomberg)

China's African affair FT June 26 2006

Shenzhen stock market FT June 26 2006

(コメント) William Pesek Jr.は,2000年に,アフリカが改革を進めて,新しいブームを起こすだろう,と考えました.主要な政府が債務の削減や腐敗の一掃を真剣に目指していたし,アメリカ市場への輸出が伸びつつあったからです.

しかし,今度こそチャンスをつかむでしょうか? それは貿易でも,債務削減でもなく,中国です.中国やインドは,貧困解消の新しい世界モデルになりつつあります.そして彼らの旺盛な資源需要はアフリカを目指しています.しかし,それは新しい帝国主義や「石油の呪い」に終わるのでしょうか?

中国の繁栄によって,アフリカにおいては政治腐敗がはびこり,世界市場の変動に脆弱な経済構造が再現しつつあります.それはチャンスであり,リスクなのです.

他方,西側(?)が心配するのは,中国の人権無視や,制裁国に対する内政不干渉という姿勢であり,株式市場など,中国に蓄積しているかもしれない崩壊の予兆です.


The Guardian Friday June 23, 2006

Dumping on Doha

IHT FRIDAY, JUNE 23, 2006

The Doha round: Success is assured - but what kind of success?

By Don McKinnon

FT June 25 2006

Tariff rebalancing helps both Europe and Doha

By Patrick Messerlin

The Guardian Monday June 26, 2006

Dealing against the poor

John Hilary

NYT June 26, 2006

Trading Up

By SUSAN SECHLER and ANN TUTWILER

FT June 27 2006

In spite of the gloom, Doha is not doomed to failure

By Mike Mooreformer director-general of the World Trade Organisation

(コメント) The Guardianは,貿易自由化交渉が貧しい発展途上国にとって「ただ同然のお得な交渉」ではなく,豊かな工業諸国に余っている農産物を押し付ける会議に変わってしまった,と批判します.Don McKinnonは,いかなる国にも比較優位によって生産効率を改善する道があり,交渉による譲歩は可能である.また,貿易の機会は貧困解消につながり,いかなる国も自由化交渉の失敗に責任を負いたくない,という二つの事情が,最終局面の妥協を可能にするだろう,と考えます.

ヨーロッパの政治家たちは,自由化交渉を「農民たちを守るための交渉だ」という間違った理解に導きました.EUやアメリカが交渉を指導できない限り,合意が形成される見込みはありません.ヨーロッパ経済が復興に向けて動き出すためには,農業保護を減らしてサービス分野も開放することが重要です.あるいは,フランスの政治家は共通農業政策だけあれば十分だ,と信じているのか?

自由化交渉は大国間の駆け引きに終始して,最も貧しい国の利益にならないのではないか? SUSAN SECHLER and ANN TUTWILERは,交渉の成果が貧しい国に対して増えるような修正を求めます.一つは,最も貧しい国から裕福な諸国への貿易に関しては,すべての関税や割り当てを免除することです.もう一つは,政治的な形で免除されている保護された豊か国の農業分野を減らすことです.

問題は余りにも複雑で,大臣たちに理解できない場合もあり,交渉の期限を過ぎて合意できないことがある,とMike Mooreは指摘します.しかし,時間通りにまとまった自由化交渉など無かったし,強硬な交渉姿勢を取る国や難しい分野も増えた.時間がかかるのは当然である.

市場を開放することが発展への道である,とMooreは主張します.地域の利益や既得権は抵抗をやめません.それは肥満や喫煙を止めるときと同じです.たとえば,貧しい諸国に特別な交渉テーブルや期限,融資を与えるのは正しい選択でしょうか? わずかな譲歩を勝利と宣言して,大臣たちは帰国します.そして,国内政治におけるさらに強い抵抗にあって,すべてを無駄にします.


IHT FRIDAY, JUNE 23, 2006

Toward a European Commonwealth

By John Palmer

FT June 25 2006

Eurozone pettiness is preventing policymaking

By Wolfgang Munchau

(コメント) カザフスタンをEUに加盟させる? EUは,一方で拡大の利益を旧加盟国に説明できず,他方でEUの政治・統治機能が麻痺して,拡大を停止しました.しかし,EUへの扉を閉ざすことが周辺地域に不安定化と民主化の逆転をもたらす危険はないのか?

そこでJohn Palmerは,EUではなく,ヨーロッパ連邦として周辺地域を緩やかに統合することを提唱します.それはEUとロシアの合意した範囲に限ります.しかし,ヨーロッパ連邦は基本的な利益と制度をEUと共有し,かつて独仏の融和を実現したように,ヨーロッパとロシアが融和する道を準備します.

Wolfgang Munchauは,ユーロ圏の経済政策は機能するのか?と懸念します.ユーロ圏の金融政策と財政政策を調整しなければ,予想される対外的な調整過程に応じることができません.すなわち,アメリカが経常収支赤字を減らすために高金利とドル安を進めるなら,ユーロ圏は大幅なユーロ高にもかかわらず,金利や財政政策を動かせないかもしれません.

EU諸国の小国意識は,現実の調整過程を妨げ,国際的な役割を回避しているのではないか?


LAT June 23, 2006

Tough talk on Korea, too late

By Gabriel Schoenfeld

WP Friday, June 23, 2006; A25

No, Don't Blow It Up

By Charles L. "Jack" Pritchard

NYT June 26, 2006

Really Bad Ideas on Korea

Asia Times Online, Jun 27, 2006

Pyongyang's antics catch out Beijing

By Francesco Sisci

YaleGlobal, 29 June 2006

North Korean Nuclear Conundrum

Chung Min Lee

(コメント) 核爆弾を保有し,アラスカを射程に修める弾道ミサイルの発射を準備する北朝鮮に対してアメリカは何をするべきか? ブッシュ政権はクリントンの弱腰外交を嫌ってきました.しかし実際には,強硬なレトリックを使って,同じ行動を取っています.

既に,クリントン政権の安全保障を統括していたWilliam Perry and Ashton Carterが強攻策を支持しました.発射準備に入ったミサイルを北朝鮮で爆撃せよ,と.それに対して,北朝鮮の指導者は半島南部の人口密集地や日本の都市を報復攻撃するでしょうか?

Perry and Carterは,それが北朝鮮を破滅させることは確実であるから,北朝鮮は自制する,と考えます.本当に?

それを確かめる方法はありません.Gabriel Schoenfeldは,1994年の北朝鮮危機を回想します.当時,北朝鮮の核開発を疑った国際査察団とクリントン政権は,たとえ弾道ミサイルが無くても,在韓米軍を含めて,今と同じ危機に直面しました.当時も,Perry and Carterは,たとえ戦争の危険を冒しても,北朝鮮の核武装を阻止するべきだ,と結論しました.その危機は,カーター元大統領による北朝鮮訪問という個人外交によって回避されたのです.

Schoenfeldは,それがPerry and Carterの小心さを隠す豪胆な見せ掛けではないか,と考えます.当時のPerryは,上院での質問に,軍事攻撃を「理論的な選択肢」と言及しただけです.それどころか,厳しい経済制裁に代えることさえも消極的でした.

あるいは,Charles L. "Jack" Pritchardは考えます.もしアメリカ軍が朝鮮半島に向けて結集する中で,ミサイルの発射基地だけを限定的に攻撃した,と言われても,金正日はそれがアメリカによる体制転換の始まりではないと信じるだろうか? イラクを攻撃する際にも,フセインが人間の楯を使うのではないか,と恐れたが,金日成ならミサイル基地に小学生の遠足と見物を企てるかもしれない.あるいは,アルカイダに核兵器レベルの濃縮ウランを提供して,ニューヨークに持ち込むだろう.

では何をするのか? Pritchardは,1998年に北朝鮮が日本上空を越えてミサイル発射実験を行ったときに経過を指摘し,ミサイル開発のモラトリアム協定に復帰することを求めて限定的な制裁を行うことを主張します.同時に,直接交渉は北朝鮮を利する,といったレトリックを捨てて,6カ国協議と並行して米朝二国間交渉も行うべきである,と考えます.激しいレトリックにより交渉を拒否することで,ブッシュ政権はこの間,北朝鮮の脅威を放置し,そのミサイル開発,人権侵害,違法行為,通常兵器の拡充,大量破壊兵器,テロ支援,を放置してしまったのです.

NYTは考えます.北朝鮮はNPTから離脱して核兵器を保有し,ミサイル開発停止の合意を停止してから発射実験を行いました.北朝鮮の意図が平和的なものであれば,核実験も,ミサイル開発も,国際的な違法行為ではありません.しかし,もし発射するなら,著しく不適当な行動です.他方,アメリカ政府は北朝鮮を空爆する合法的な根拠が無く,中国の支持も得られません.

政治を決めるのは,その目標です.アメリカの目標は,1.北朝鮮の核兵器と長距離ミサイルを放棄させること.2.北東アジアの核軍拡競争を回避し,安全保障を維持すること.アメリカは正しく対応しなければ,日中間の反目さえ利用されるでしょう.

金正日から見れば,アメリカ政府はもっと良い条件を示せるはずであり,アメリカから見れば,小国の独裁者にこれ以上関わるのは無駄だ,という強硬論が強まっていた,とFrancesco Sisciは背景を考えます.中国政府の姿勢は,北朝鮮の崩壊も,韓国との再統合も望まない,というものです.なぜなら,中国は半島の戦争に関わったから,統一後の友好関係を信用できないのです.他方,もしアメリカが直接交渉で和平を進め,半島統一を促せば,中国は地域の発言権を失います.

三つのアプローチがある,とSisciは考えます.1.懐柔策.金正日一族の王国を承認し,安全保障と金を与える.戦争回避の費用としてなら,安いものだ.ただし,他の独裁者を喜ばせる.2.強硬策.ミサイル機知を空爆し,そのまま無視する.北朝鮮の取引を締め付け,自壊させる.ただし,数百万人の難民や餓死者,経済混乱が起きる.3.何もせず,放置しておく.冷戦の勝利には44年かかった.

中国は第二の選択肢を望みません.しかし,金王国を懐柔し続けるなら,その費用と不名誉をも負うことになります.

周辺諸国と国際政治の間隙を突けば,何も交渉条件を持たなかった小国が核武装して,大国から利益を得られる,というテキスト・ケースを,北朝鮮は世界に示しつつあります.


WP Friday, June 23, 2006; A25

Talk Boldly With Iran

By David Ignatius

FT June 25 2006

Response to nuclear Iran should be free of ambiguity

By Anthony Cordesman

FT June 29 2006

West should play Iran at its game

By Philip Stephens

(コメント) David Ignatiusは,イランで交渉に参加するライスのために,周恩来と交渉したキッシンジャーから教訓を学びます.キッシンジャーは率直であり,何よりも共通の利益を外交の基礎にしました.ライスがイランで交渉する際に必要なことは,イランが地域の安定と繁栄を求める国であるなら,それはアメリカの利益となんら対立するものではない,ということで,アメリカはイランと共通の地域安全保障に関する利益を有するでしょう.イランは,たとえば,東アジアの韓国のように発展するでしょう.しかし,イランが地域の不安定化を企て,核兵器を保有しようとするなら,それは地域とアメリカ,イスラエルの利益と安全保障を脅かします.

Anthony Cordesmanも考えます.多角交渉によってイランが核武装を諦めることもあるでしょう.しかし,交渉や査察を欺き続けることも可能です.アメリカ政府は交渉を通じて核を放棄させるべきです.もしイランが核武装するなら,軍事的オプションではなく,核の抑止や封じ込めを行い,最後の手段として軍事的な攻撃を行うことを同盟諸国に説明しなければなりません.核武装したイランに対しては,たとえばアラビア半島にミサイル基地を設けて,かつて東欧諸国を守ったように,イランの核の脅威と経済取引を押さえ込むべきです.

Philip Stephensによれば,イスラム過激派への資金提供者,核保有国,イスラエルの敵対国として,イランは中東および世界の安全保障にとって深刻な脅威です.しかし,同時に,民主化したイランは最も西側に近い,地域の安全保障を担える国です.イランは総人口の半分が20歳以下という若い国であり,若者の多くは西側の文化を好み,親米的です.

すなわち,西側諸国は現在の危機を,イランの将来(若者たち)に対する悪影響にならない形で,回避することが重要です.すなわち,イランの強硬派を,国内民主化の弾圧に及ぶことなく,西側の譲歩により開放的な利益に向かわせるべきです.アメリカの交渉参加やWTO加盟交渉は,そのための重要なステップです.

経済制裁を強いることは,安保理を分裂させ,イラン政府を開放政策から離反させるだけです.


The Guardian, 23 June 2006

Coming to Terms With the Forces of Anti-Globalization

Nick Mathiason

石油企業が発展途上国で起こした略奪戦争や,環境破壊を無視した採掘,たとえ民主的に選ばれた政府でさえも転覆する.世界の最貧層を犠牲にして利益を上げる製薬会社,スーパーチェーンは砂糖と塩の詰まった不健康な品物を売り,他方で倫理的な価値を売る製品が儲かれば自分たちのチェーンに奪ってしまう.豊かな国のアグリビジネスは補助金を吸い尽くし,他方で貧しい諸国の市場に解放を迫る.・・・

こうした多国籍企業・銀行への非難は尽きることがない.しかし,資本は次第に邪悪なものと描かれて,保守党でさえ批判するようになった.しかし,ビジネス界にも世界の方向を考える新しい指導者が現れている.

IBMの幹部であるSamuel Palmisanoは最近のForeign Affairsに,多国籍企業は死んだ,と書いた.新しい企業の姿はGIE(世界統合企業'globally integrated enterprise')である.それは国民や労働者を搾取するのではなく,ビジネス機会と社会進歩の新しい可能性を開く,と書いた.

そのためにGIEは,生産を低賃金の地域に,高付加価値の研究開発やデザイン部門を裕福な母国に,配置しなくなる.むしろスマートな新企業は,アジア,アフリカ,ラテンアメリカの人材を起業で最大限に活用する.知的な資本には国境など無いことを知っている.

それは近代的なコミュニケーションによって可能になった.Palmisanoは,GIEが21世紀型企業モデルであると考え,それを受け入れられないことは金融的・社会的な破滅である,と主張する.「人々は貿易や労働に厳しい規制を課すような,保護主義的な政府を選ぶかもしれない.」「さらに彼らは,極端なナショナリズムや外国人移籍,反近代主義に引き寄せられるかもしれない.」

Palmisanoの考えには欠陥がある.「知識の共有」という考え方は先端的な産業だけで機能する.資源採取や一次産品生産で,そのような主張はなじまない.しかし,シェルはウガンダ,ケニア,南アで中小企業の設立を助けている.企業家がいなければ貧困解消はできないし,安定した経済は企業の利益になる.

エリクソンが太陽電池で使用できる携帯電話をアフリカで販売するよりレンタルする方法を普及させた.発展途上諸国の消費者にも金融GIEsが接近する.世界ビジネスがGIEsによってピラミッドの最底辺にまで波及し始めた.

企業なしには,一日2ドル以下で生活する20億人が貧困から抜け出す方法は無い.貧しい国にいくら援助を流し込んでも,腐敗した国際機関の官僚やNGOsはそれらを浪費する.しかし,今や,企業は彼らに接近する方法を得た.

それは羊の皮をかぶった狼なのか? 皮だけ羊であれば,それで十分ではないか?

FT June 25 2006

A theory of evolution for outsourcers

By Andrew Hill

The International Herald Tribune, 26 June 2006

Managing Globalization: Economies Have a Stake in Where Companies Find Employees

Daniel Altman

YaleGlobal, 27 June 2006

Globalization: When Cure Is Worse Than Malady

Richard Hornik

(コメント) Andrew Hillは,アウトソーシングやオフショアリングは過渡的なものであり,企業は進化する,と考えます.Daniel Altmanは,工場のアウトソーシングよりも,人間や技術を残してくれる移入民の方が地域社会は生き延びるだろう,と考えます.

世界中で,政治家たちはグローバリゼーションによる受益者と被害者との分裂にさらされています.しかし,それを阻止しようが,規制しようが,グローバリゼーションのシュンペーター的な「創造的破壊」は止まらない,とRichard Hornikは考えます.


FT June 23 2006

Breakfast with the FT: Blast from the past

By Daniel Dombey

(コメント) ロンドンのthe Dorchester Hotel における元国務長官オルブライトMadeleine Albright女史へのインタビューです.

クリントン政権で国連代表と国務長官を務めた,世界最強の女性が表す希望に満ちた時代を思い出すとき,それは痛切な感覚をともないます.中東和平,北朝鮮,イラン,それらが解決する方向にあり,イラク占領は考えられなかった.・・・ 今では,モニカ・ルインスキーしか思い出してもらえない.

チェコのプラハから第二次大戦中に2歳のオルブライトは初めてロンドンに来ました.彼女はあの戦争でアメリカの重要さ,その力の善であること,を学んだと言います.ユダヤ人である彼女は,国務長官になってから,ワシントン・ポストの調査によって,祖父母の4人のうち3人がナチスの強制収用所で亡くなったことを知りました.両親はそのことを彼女に教えませんでした.彼女はそのことで両親が責められたことを悔やみます.

ライス国務長官は,オルブライトの父がデンバー大学で国際関係論を教えた際,ひいきにしていた学生でした.オルブライトはライスがイラクの事態に驚いているはずだ,と言います.78日間のコソボ空爆でさえも,オルブライトは毎晩,自分の決断が正しかったか悩み続けた,と言います.ブッシュ大統領はイラク戦争で,ベトナム戦争以上に,アメリカの外交政策を傷つけた,と批判します.彼女の新刊本は,ソ連やアメリカが(アフガニスタンやイラクで)宗教を国際政治の重要なパワーとして計算しそこなった,と主張しています.

68歳でも,もう一度,国務長官をやりたい,と明言し,チョコレート・マフィン(そしてルインスキー事件)が嫌いで,クリントンがいかに大統領としての天賦の才を持っていたか,に感心します.最後の年にクリントンが提案したエルサレムの共有提案も,決して欺瞞ではなく,たとえば,かつて1192年に提案されたものでした.今思えば,クリントンは中東和平ではなく,最後に北朝鮮へ飛ぶべきだった,と考えます.

記者は,オルブライトを喜ばせるために,中東欧が冷戦で分断されていたときに比べて良くなりましたね,と話を向けます.しかし,オルブライトはポーランドの右派政権や,ヨーロッパの移民拒否を指摘して,安易な楽観を一蹴します.

日本にも,こうした有能な外務大臣がいて欲しい,と強く願いました.


NYT June 25, 2006

Income Inequality, and Its Cost

By ANNA BERNASEK

LAT June 25, 2006

Homeless in life, nameless in death

Daniel Costello

The Wall Street Journal, 26 June 2006

US Wages Face Glut of Pressures

David Wessel

(コメント) アメリカにおける貧富の格差は拡大しています.ANNA BERNASEKは,総所得の40%以上が上位10%に,16%が上位1%に,そして,6.9%が上位0.1%に分配されている,と指摘します.これほど較差が大きかったのは,少なくとも65年以上前のアメリカです.不思議なほど,不平等そのものは問題視されていません.しかし,ストレスや汚職につながり,バブルや資源配分の歪みをもたらします.

Daniel Costelloは,ロサンゼルスのエバーグリーン墓地を紹介します.ホームレスたちは,死後も引き取り手が無く,焼却され,この墓地に埋葬されます.最初は小さい箱に分けて,その後,一緒に.彼らは誰にも知られず,まるで存在しないかのように死んで,ここで終わるのです.

世界的な競争によって,中国やインドの労働者に負けるかもしれないアメリカの労働者は苦しんでいます.


FT June 26 2006

Why saying ‘sayonara’ is the hardest thing to do

By Michael Green and Matthew Goodman

(コメント) ブッシュ・小泉の「さよならサミット」をMichael Green and Matthew Goodmanは単なる送別会以上に重視します.

両国の財界は,日米FTAを支持していますが,既に関税率が低く,日本が農業分野を開放しない以上,FTAが重要な意味を持つとは言えません.むしろWTO交渉に積極的に関わるべきです.他方,日米両国を合わせた世界貿易や国際金融に占める割合は,世界のスタンダードを決めるにふさわしいでしょう.

日本はアメリカとの間で「成長のための経済パートナーシップ」を合意しています.いわば日本版NAFTAです.まずはデフレを終わらせ,不良債権を処理せよ.そして,国内の構造改革を進めよ,という約束であったと記されています.

アメリカが日本を取り込んで覇権を回復する意図は良く分かります.しかし,日本は,小泉氏は,何を意図したのでしょうか? 彼の演説は要点を伝える点で効果的ですが,同時に,空疎だと思います.

IHT MONDAY, JUNE 26, 2006

Broaden the U.S.-Japan alliance

Kent E. Calder International Herald Tribune

June 26 (Bloomberg)

Good Japanese News in the Rarest of Places

William Pesek Jr.

June 28 (Bloomberg)

Elvis's Ghost to Serve as Guide to Koizumi, Bush

William Pesek Jr.

FT June 28 2006

Koizumi has won US trust for a revitalised Japan

By David Pilling and Demetri Sevastopulo

FT June 28 2006

Bigger may not be better for Japan’s banks

By Guy de Jonquieres

BG June 28, 2006

Japan's jujitsu leader

By Richard J. Samuels

(コメント) Kent E. Calderは,日米関係の現状と未来を考えます.軍事・安全保障と貿易・経済問題に終始する日米関係は,急速に中国や朝鮮半島の関心によって,アメリカの政界における注目を失いました.日中間でアメリカの立場が移動する予感を伝えています.また,アメリカ政府内部の日本専門家が急速に減り,日本語を学ぶ学生も減少していることを憂慮しています.

David Pilling and Demetri Sevastopuloは,小泉首相があらゆる点で王様のような扱いを受けた,と述べています.日本はアメリカとの関係を深めた,と小泉氏は自慢しますが,それは小泉王朝とブッシュ帝王の幻想に過ぎません.ブッシュ氏がプレスリーの記念博物館を丁寧に案内したとしても,それが日本国民やアジアの安全保障に役立つことなど無いのです.シンボルに終始した小泉政治は,その反動に苦しむときです.

9・11,北朝鮮,中国,沖縄米軍基地,など,小泉氏が政治的意志を貫いたことで,日米関係は強化され,共通の利益を確立した,と彼らが評価すること正しいと思います.アメリカは日本のイラン油田投資を停止させ,牛肉輸出を再開し,他方,日本が巨額の介入で円安を促す姿勢を放置し,トヨタはGMとフォードを倒産寸前に追い込みました.

脱冷戦の日米関係に明確な見通しをつけた二人の後に,何が来るのか? 小泉バブルの崩壊が日米関係でも起きる,とPilling and Sevastopuloは示唆しています.アメリカ政府の関係者は,小泉がその政治的魔法によって,日本をアメリカとともに戦う民主主義の同盟国に変えた,と信じているからです.こうして日米関係を強化すれば,韓国や中国とも強硬姿勢を貫ける,という姿勢は,靖国参拝を国民の代表として強行した判断とともに,彼が退陣するとき清算しておくべきことになります.

小泉氏の残した金融部門の再編と,超巨大バンクが行うサービスの時代遅れについては,Guy de Jonquieresが厳しく批判しています.また,William Pesek Jr.の指摘も参考になるでしょう.

DAVID WALL Japan needs better PR, less whale meat The Japan Times: Wednesday, June 28, 2006

Manjit Bhatia Japanese whaling logic full of baloney Asia Times Online, Jun 29, 2006

William Pesek Jr. Fukui, Would-Be Greenspan of Asia, Replaceable June 30 (Bloomberg)

(コメント) 日本といえば,エルビスに扮した小泉潤一郎よりも,むしろ捕鯨運動と福井日銀総裁が注目されているわけです.


Warren Buffett FT June 26 2006

Simon Jenkins The welfare state is waning. Bring on the philanthropists The Guardian Wednesday June 28, 2006

David Leonhardt How To Give Money as Buffett Does NYT June 28, 2006

(コメント) バフェットWarren Buffett は,Berkshire Hathaway85%を徐々に寄付する,と発表しました.現在の評価額で約370億ドル(約4兆円)です.特に310億ドルをビル・ゲイツ夫妻の福祉基金the Bill and Melinda Gates Foundationに寄せます.

しかしFTは,それが高貴な決断であるが,はたして賢明な判断か? と批判します.巨大基金に任せるより,慈善事業についても自分で判断するべきだ,あるいは,規模による弊害に苦しみ,市場の規律を持たない世界はどうなるのか,というわけです.

アメリカの寄付は年間2500億ドルに達する,と言います.慈善活動・寄付行為を世界的な運動にすることも,アメリカのソフト・パワーとなるのでしょうか? 夜警国家に至る運動の一つ?


The Guardian Monday June 26, 2006

The death of marriage?

Winston Fletcher

The Guardian Tuesday June 27, 2006

The campaign for real sex

Libby Brooks

(コメント) 結婚という社会制度は消滅に向かうのでしょうか? 他方,セックスはマクドナルド化する?

愛とセックスと結婚(家族や子供)という三位一体が失われてから,グローバリゼーションは飛翔したのかもしれません.新しい生活を包む社会制度が現れるまで,さまざまなシステムの混在と模索が続くようです.

WP Monday, June 26, 2006; A21

Why So Lonesome?

By Sebastian Mallaby

The Guardian Wednesday June 28, 2006

Death in the supermarket

Mark Ames

(コメント) アメリカ人の孤独に関する考察です.それは誇張された面もあり,繁栄の代償です.孤独を癒す手段や手軽な楽しみが多いから,人々は家族や友人との時間をかけて育てる関係を軽視するようになったのです.仕事は忙しいし,友人関係に投資するには,時間も賃金も削られてしまいました.

しかし,新しい工夫もあるようです.自動車を駐車場で乗り換えて,共通の自動車で話しながら過ごすなら,退屈な通勤時間が楽しくなる,と.

Mark Amesは,アメリカの職場や学校で,仲間たちを撃ち殺すような凶行が増加した背景を考えています.それは銃の叛乱や,精神異常者の増加とともに,レーガノミクスによって1980年代後半から増加した,と.


WP Monday, June 26, 2006; A21

What's a Treasury Secretary to Do?

By C. Fred Bergsten

(コメント) C. Fred Bergstenは,アメリカが不均衡を調整することで,「ソフト・ランディング」を成功させるように,ポールソン新財務長官に求めます.それはかつて,ジョン・コナリーやジェームズ・ベイカーが行ったことです.ドルをさらに2030%減価させ,他の主要国は調整に合意して,成長を持続することです.

FT June 27 2006

Energy revolution will continue to power ahead

By Martin Wolf

(コメント) 興味深いことに,アメリカの調整政策はインフレや石油価格と関係があります.アメリカの政策が自律性を回復し,成長を維持するには,エネルギー政策の転換が求められます.石油を中心としたエネルギー消費は,今後,新興市場の成長で急速に増加するでしょう.

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The Economist, June 17th 2006

Inequality and the American Dream

The rich, the poor and the growing gap between them

Immigration and “the Jungle”: Of meat, Mexicans and social mobility

(コメント) アメリカン・ドリームと不平等とは結びついています.社会的な移動性が高いから,急速に富が増え,分配の不平等も生じますが,それを心配しない,というわけです.しかし,最近では裕福な階層が親から得た資産によって決まるのではなく,ますますグローバリゼーションの過程で大きな所得を得る投資家や企業家になっています.他方,中国やインドなどが世界市場での競争に参加することで,労働者や中産階層は没落しつつあります.

記事は,グローバリゼーションが阻止されることはないと考えて,優れた大学に入学する若者がますます富裕層に偏っていること,また,最貧困層への社会福祉が整備されていないこと,をアメリカ・システムの欠陥と指摘し,その改善を求めています.

また,移民流入についても,かつてのようなテキサスの移動農民に限らず,現在では都市のレストランやオフィスビルの清掃,など,広範な低賃金や未熟練部門で働いていることを強調します.反対派は移民たちがアメリカに同化し,多くの利益や雇用をもたらすことを理解するべきだ,と訴えます.


The Economist, June 17th 2006

The logistics revolution: Chain reaction

A survey of logistics: The physical internet

(コメント) この特集記事には驚嘆します.時間があれば精読したいです.トヨタの看板方式どころじゃない! もはや,物理的空間をインターネット化し,路上それ自体が在庫管理である,という輸送=生産システムの思想革命です.

FedEx,UPS,DHL.90秒おきに巨大な貨物機が着陸する空港.空飛ぶコンテナ船.1万7000本のベルトコンベア.30分間でNYSEの1日の取引を越える情報量を処理する.GPSとRFID(個々の物品に貼って管理するタブ)を組み合わせれば,世界中で個別品目の移動を確認できるシステム.サプライ・チェーンの管理改善による節約から利潤獲得.

戦争の勝敗は,戦いが始まる前に,その兵站能力で決まりました.輸送や在庫,オフショア生産拠点など,コスト管理を超えて,兵站そのものが革命をもたらすのです.・・・ヤマトと郵便局が争っている場合ではないでしょう.


The Economist, June 17th 2006

Whaling: Too much blubber

Israel and Palestine: The Hamas conundrum

Argentina: Taking on the penguins

Economics focus: Intricate workings

(コメント) 記事は,日本政府の捕鯨再開に理解を示しています.クジラは,他の生物と同じように,人間の経済活動と環境保護のバランスによって合理的に判断されるべきであり,環境絶対主義者の信仰対象ではありません.しかし,日本政府が画策した国際捕鯨委員会への新規加盟諸国とその援助政策は反発を招いており,そもそも日本の捕鯨活動に巨額の補助金を支払うことをやめれば,これほど強引に捕鯨活動再開を政治目標にしなければならない国内的理由もなくなるはずだ,と主張します.

ハマスはイスラエルの存在を認めず,テロ活動を取り締まることにも失敗し,それに対して,イスラエルはパレスチナ政府を認めず,軍事的な報復をますます拡大して,犠牲を増やし続けています.記事は,1.ハマスの力で暴力を停止させよ,2.イスラエルや西側の外部勢力は,パレスチナ住民が民主的に選挙で決めた政府を認めよ,と主張します.テロや援助停止で互いの譲歩や屈服を期待することは間違いです.ハマスが相手でも,政治的な妥協は可能である,と.

アルゼンチンのキルチネル大統領は再選確実といわれてきましたが,ラバーニャ経済大臣を解任したことで,いよいよ本当の反対候補を得たかもしれない,という面白い記事です.また,OECDが勧める雇用創出策として,複数の可能性を示します.福祉国家軽減+労働市場派(英語圏と日本,韓国,スイスなど)と社会保障+就労指導派(スカンジナビア諸国とオランダ,オーストリア,アイルランド)とは成功する見込みがあります.他方,福祉国家固執派(南欧と独仏)は失敗している,と.