IPEの果樹園2006

今週のReview

5/22-5/26

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :ローマ法王のアウシュビッツ訪問グローバリゼーションとEU拡大

安全保障 :幼稚園で学ぶ外交政策パシフィズムの終焉国際安全保障体制

貿易・投資 :EU排出権取引市場

通貨・金融 :人民元,インフレターゲット論批判

世界統治 :移民と同化移民政策論争

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


NYT May 11, 2006

Assimilation Nation

By PETER D. SALINS

アメリカの移民政策をめぐる論争において,アメリカ人はしばしばその目標を見失っている.移民政策の改革が至急必要であるのは,労働力のギャップを埋めるためでも,移民の賛成派と反対派をなだめるためでもない.それは,すべての移民を,現在と将来にわたって,アメリカの市民生活・社会に統合するため,流行らない言葉であるが,同化させるために必要なのだ.

移民を吸収できないことは,フランスの最近の暴動が示したように,大規模な移民を受け入れる諸国にとって死を意味する.アメリカに同化する鍵は,大量移民に対するわれわれの開放性であり,エスニックな,また宗教的な差異への寛容さである.しかしまた,合法的な移民をあらゆる意味でアメリカ人にする法律や政策も非常に重要である.

明らかに,1100万人から1200万人にも及ぶ非合法移民を今すぐに同化させることは,彼らがそれを望もうが望むまいが,不可能である.彼らが非合法であるという資格ゆえに,隣人たちから排除され,彼らの善意や公共サービスを受けられないからだ.それゆえ,彼らの地位をごうごうかすることは絶対に必要だ.

より議論になる点は,将来の移民の地位である.これについて,いくつもゆがんだ提案がなされている.中でも非常に問題があるのは,移民支持派が強く主張する,「ゲストワーカー」として受け入れる,というものだ.ゲストワーカーは,もし始まったらすぐに数百万人に達するだろうが,その定義上,アメリカ人になることはない.ドイツのトルコ人や,他のヨーロッパ諸国のゲストワーカーと同じように,労働許可が切れたとき,彼らが母国に帰ることは無いだろう.つまり,非合法な異邦人の新世代となるしかない.しかし,強硬派の好む移民の解決策,国境の封鎖は,われわれが合法的な移民を増やすことなしには守られない.

だから,移民法改正が成功するためには,三つの要素が含まれていなけらばならない.第一に,上院で行き詰まった法案のように,すでに国内にいる非合法移民を合法的な居住から最終的には市民権に至る,確実な道に向けることだ.第二に,合法的な移民受け入れ枠を増やさなければならない.ただし,それは提案されたようなゲストワーカー計画のようなものであってはならない.そうではなく,同数の(つまり30万人から40万人の)永住権を持った移民を,異なるルールで,毎年受け入れる.

現在,移民には四つの資格基準だけが適用されている.すなわち,(アメリカ国内の)家族との関係,いくつかの熟練領域における雇用の保証,迫害の証明,ビザの抽選制度,である.しかし,アメリカに来ることを願う多くの人々にはアメリカに親族などいないし,熟練や迫害を証明することもできない.抽選に当ることはめったに無い.

もっと公平なアプローチ,将来の移民たちに国境を飛び越えることを自制させるほど十分に希望の持てるアプローチとは,順番に,すべての潜在的な移民たちを(明確な記録を持って)待機ラインに並ばせ,さたに西半球からの応募にウェイトを与え,あるいは,英語力のような好ましい特性にもウェイトをつけるような形で,入国を認めるものである.

合法的な移民へのより良い道を開くこと,完全な受け入れと市民権に向かう道を示すことは,移民法改正に第三の要素を強く求める.すなわち,非合法移民を止めること,である.長大な国境を管理する難しさは将来もはなはだしいだろうが,受入枠が拡大され,効果的に実行されるなら(強制送還や雇用者への罰則も含む),非合法に入国する動機も,彼らを雇うアメリカ側の動機も,大幅に弱まる.

この三つを含んだアプローチにより,アメリカは移民たちの理想であり,また統合社会でもあり続けられる.すべての居住者は自分たちの意識の中でアメリカ人となり,同時に,法的にもアメリカ人になる.非合法移民の合法化を主張する人々は,,もっぱら,われわれの最悪の,しかも最も貧しい職場に労働者を雇う手段として移民を正当化するが,それは間違っている.また労働組合やその他の規制を求める人々は,移民が賃金を引き下げ,社会保障のコストを増やすと言う理由で反対しているが,それも間違いだ.こうした主張は経験的に疑わしいだけでなく,重要な点を見逃している.

労働市場や国家・州予算に焦点を当てる移民政策は,せいぜい,過渡的な利益ばかりを一般化している.他方,数百万人の移民たちをわれわれの仲で同化しようとしないなら,それは確実に永続的な災厄となる.

The Japan Times: Friday, May 12, 2006

Fixing the freedom to move

By HUGH CORTAZZI

LAT May 14, 2006

The price of tolerance

LAT May 15, 2006

Hey, don't bad-mouth unskilled immigrants

By Tyler Cowen and Daniel M. Rothschild

NYT May 16, 2006

Throwing Hawks a Bone

By JOHN TIERNEY

NYT May 16, 2006

Border Illusions

(コメント) 駐日イギリス大使も勤めたHUGH CORTAZZIは,アメリカやヨーロッパで問題になっている移民政策が,日本では問題として見えていない.しかし,人口の減少や貿易投資の自由化により,労働者の移動も避けられないだろう,と考えます.

LATの論説は,スーダンにおける強制結婚(an arranged marriage)から逃れてオランダに帰化し,国会議員となった女性Aliの著書"The Caged Virgin"が訴えるメッセージを考えます.一方では,オランダの多文化主義,寛容さ,が否定されます.オランダ人になるとは,単に物理的,法律的に移るだけでなく,文化的にも移る必要がある,と求めるようになりました.他方,イスラム圏の容認しがたい人権無視,たとえば男性や家父長か支配する強制結婚の社会を放置したまま,民主主義を広め,テロと戦うことはできない,ということを,オランダ人も認め始めたわけです.

多文化主義の理想は,より現実主義的な姿に変わろうとしています.

(なお,アヤーン・ヒルシ・アリAyaan Hirsi Ali女史は,国籍を剥奪される見込み,と報道されています.オランダ国籍を取得する際に,自国での強制結婚から逃れるため,偽名や偽の生年月日を使ったことが原因です.

Tyler Cowen and Daniel M. Rothschildは,移民たちによる企業を賞賛します.グーグル,ヤフー,サン・マイクロシステムズは,すべてロシア,台湾,インドからの移民たちが起こした企業です.熟練や技能,企業の才覚がある移民を奪い合うのは合意されたことだ.しかし,未熟練労働者はどうか? 論説は,できる限り自由な移民をアメリカの利益のために支持しています.人口動態や同化の傾向は確実です.他方,政府が規制をする根拠として,10年後や20年後の労働需要を部門や地域について予測することは,まったく不可能だからです.

JOHN TIERNEYは,国境の管理を回復する,というブッシュ大統領の演説に不満です.それは見せ掛けに過ぎない.貿易や合法移民を自由にして,非合法移民を閉め出す.国境警備に数千人の州兵を動員するのは,単なる政治的シンボルです.ハイテクのICカードを導入するのも,所詮,TVニュース向けの話題づくりです.それらは共和党の支持者にアピールするための政治的演説でしかありません.移民問題を違う形で政治化しています.

移民阻止を叫ぶ保守強硬派の論拠は,テロリストの入国を許すな,と,法治国家の原則を守れ,です.しかし保守派のアメリカ人も,メキシコやグァテマラからの移民労働者に大きく依存しています.その一方で,政治的には「彼らを断固阻止する!」と言い張っています.しかし,本当に,アメリカから彼らがいなくなった日の食堂やオフィス,軍隊,・・・などを想像したことがあるのだろうか!?

FT May 17 2006

Why fortress Europe needs to lower the drawbridge

By Daniel Dombey and Chris Giles

BG May 17, 2006

A glimmer of hope on immigration

By Derrick Z. Jackson

WP Wednesday, May 17, 2006; A23

Still Dodging Immigration's Truths

By Robert J. Samuelson

The Guardian Thursday May 18, 2006

Perilous entry attempts reinforce popular fears

Peter Preston

(コメント) 世界の貧困は,移民となって,アメリカやヨーロッパを目指しています.こうした移動に各国はまだ対応できていません.

FTのDaniel Dombey and Chris Gilesによる論説は,アメリカと比べたヨーロッパの移民と移民政策,論争の現状を示しています.アメリカ人は同化を問題にするが,ヨーロッパ人はまだ「ポーランド人の配管工」(移民がそもそも居ること)を問題にしています.アメリカの政策は内部に分裂した目的を持つambivalentですが,ヨーロッパの政策はincoherent不統一で矛盾している,と.EU諸国は互いにエンジニアを奪い合い,移民(と規制)のコストを押し付けあっているのです.

先進諸国の多くが,人口の高齢化や減少によって,移民流入を認めざるを得ないだろうから,問題はそれをどのような管理・制御するのか,ということだ,とFTは考えます.EUに新規加盟した10カ国から労働者を受け入れることはその優れたモデルとなるべきなのに,各国の対応はバラバラです.ロシア,ウクライナ,トルコからの流入も続きます.

移民送出し国への援助が若干行われているだけで,具体的な効果はなく,移民を制御するルールや合意は何もありません.他方,アメリカ=メキシコ国境と同じく,アフリカ=ヨーロッパの間の貧富の格差は拡大し続けています.難民の受け入れに寛容であった国が抑制に向かい,非合法移民の取締りでも協力し始めています.

アメリカでは宗教がどうかを促したが,ヨーロッパではイスラム教徒が社会的に分離したまま,同化を妨げる傾向があります.ヨーロッパの手厚い社会保障システムは,移民の社会的コストを大きく見せ,また彼らの孤立や隔離を助長します.それはヨーロッパの民主主義に対する挑戦で.行き詰まったヨーロッパ憲章の承認問題よりも,大規模な移民受け入れという混乱した,しかし,創造的な過程こそが,将来のヨーロッパを全面的に創りかえるのです.

Robert J. Samuelsonは,ブッシュ演説を,的外れだ,と批判します.なぜなら,移民問題とは合法・非合法や,ヒスパニックかどうか,の問題ではなく,余りにも多くの移民が未熟練労働者であることだから.ここでも問題は,同化と社会的コスト,です.Samuelsonは,大規模な未熟練労働者の流入による低賃金は問題を悪化させる,と考えます.また,この点で,移民流入とベビーブーマー世代の引退や高齢化とを比較します.ともに社会保障システムの維持コストを高めており,高齢化は避けられないが,移民の構成は選択できる,と考えます.

ヨーロッパの現状についてPeter Prestonも書いています.大きな災厄を予言する反対派や右翼政治家に比べて,経済学などはせいぜい長期的な利益を予測するだけです.マグレブ諸国への経済援助など,わずかな例外を除いて,移民に対する長期的な政策は何もありません.もし移民受入れがより合理的で,その社会に役立つことを示せたら,移民問題に対する警戒心は薄れるでしょう.


NYT May 11, 2006

U.S. Won't Press China Over Yuan

STEVEN R. WEISMAN

Asia Times Online, May 12, 2006

Backdown on yuan irks legislators

David M Lenard

FT May 12 2006

Hard choices ahead on China's currency

FT May 15 2006

Comrades, set the renminbi free

Guy de Jonquieres

(コメント) スノー財務長官は中国を為替レートの操作で非難しないことに決めました.中国政府は不均衡の解消に協力しているのか,必要な調整を回避しているのか,アメリカ議会と政府の論争は終わりません.IMFが精査して,判定させろ,という声が上がります.

為替レート問題については,労働組合と企業経営者は同盟します.David M Lenardは,こうした関係者の声を伝えています.政府,議会,労働組合,業界団体,学者.関税による制裁(報復)措置に加えて,かつて日本との交渉であったように,人民元の為替規制を撤廃し,資本取引も自由化する要求があります.人民元はじりじりと増価を続けます.

ブッシュ政権はなぜ中国に対して強硬な交渉姿勢を示さないのか? まだ北朝鮮やイランとの交渉に中国との友好関係を使いたいから? また,共和党の議員たちも,口では中国を非難するが,中国に投資し続けているアメリカ企業に嫌われるような敵対行動を取るはずがない? 人民元が強くなれば,アメリカ人の中国製品に対する購買力は損なわれるわけです.

アメリカ政府が中国を非難しても,中国政府がその通貨政策を変更するわけでは無いのです.財務長官の判断は経済学の問題ではなく,政治です.アメリカの政治家たちは経常収支赤字に不満を抱いており,中国は国内経済改革推進に支障を感じている.すると,その答えは? FTはスノー長官の判定に二つの点を見ます.1.中国政府はアメリカ側の意向に沿って協力している,と確認した.人民元は増価しているし,国内需要は活発で,金融改革にも取り組んでいる.IMFによるサーベイランスを提案したアメリカに同調さえした.2.二国間で威嚇し合うのは生産的ではない,と議会に冷静な対応を求めた.あるいは,むしろ議会が勝手に保護主義的な制裁措置を発動したほうが,ブッシュ政権の対中外交には対応が簡単である,と.

Guy de Jonquieresは,中国人民銀行総裁Zhou Xiaochuanに当てた書簡形式の提案を行っています.「同志よ,・・・やはり,アメリカ政府は張子の虎だった.議会も怖気づいたようだ.しかし,われわれ自身の利益はどこにあるのか? アメリカ人の威嚇は下手だが,その指摘には聞くべき点がある.人民元を増価させる,ということである.今やアメリカの圧力は消えた.そのチャンスではないか?」

「ドルを買い続ければ,その結果として中国の銀行は融資を膨らませ,いずれ破綻するだろう.中国であっても,永久に景気循環を免れることはない.さらに,今から外国の銀行を中国の銀行に資本参加させることもできる.彼らとて,商業銀行が破綻すると分かっているような状況では乗ってこない.」

「人民元が強くなっても,中国の輸出は落ち込まないだろう.Tシャツを作るのはバングラデシュに任せても良いのではないか.」人民元の変動を広げて金融政策を回復し,輸出超過に頼るよりも国内景気の制御に向かう方が,中国人民の利益である.外貨準備の累積は,重要な社会資本や地域格差解消,貧者のためのセーフティー・ネットに役立てることができる,と.

共産党の指導体制を何より重視するとしても,それは市場経済が繁栄することにかかっている.同志よ,好むと好まざるとに関わらず,われわれはすべて資本家である.

May 16 (Bloomberg)

So Yuan Is at 8? Wake Me Up When It Reaches 7.5

Andy Mukherjee

Asia Times Online, May 16, 2006

The people's forex liberation army

By Wu Zhong, China Editor

Asia Times Online, May 16, 2006

Back to the gold standard

By Peter Morici

The Guardian Tuesday May 16, 2006

Don't despair the declining dollar

Bill Emmott

May 17 (Bloomberg)

As Yuan Breaches 8, Focus Shifts to Japan

William Pesek Jr.

(コメント) 為替レートの変化は余りにも遅く,たとえ金利を引き上げたように見せかけても,その実態は変わらない,とAndy Mukherjeeは中国の対応を批判します.しかし,為替レートが増価すれば,石油は安くなり,輸出は利益を減らす.つまり中国の成長パターンが内需に転換するだろう.それが分かっているのに,中国政府は人民元の増価を許さない,と.融資も投資も過剰に行われており,増価がデフレをもたらすという心配も無視するべきだ,と主張します.

金利ではなく,為替レートの管理に中国政府は関心を向けているようです.金価格の上昇が続く中で,中国はドルから金に準備をシフトさせ,金本位制に戻るのではないか,という憶測が流れた,ということです.あるいは,外貨準備を政府ではなく民間部門に行わせる,という考えがあるようです.しかし,生命保険や民間貯蓄を海外資産に向ける案は日本でも実施され,苦い経験であったと思います.なぜなら,あきらかに自国通貨が増価する前に,外貨建て資産に投資する(事実上,誘導する)ことは,将来,政府や国内投資家たちとの間に軋轢を生じるからです.要するに,完全な交換性を保証し,為替レートを変動させるしかないわけです.

Bill Emmottは,ドル暴落や世界金融恐慌を恐れる連中を,愚か者だ,と切り捨てます.ドル安は好ましいことであり,調整を促す良いことなのです.アメリカの景気は抑制され,対外赤字の減るでしょう.それゆえ,危機への不安を和らげるのです.ドルを大量に保有する公的機関もドル暴落を回避するために行動します.行過ぎたドル安は彼らの利益になりません.ドル安が進めば,アメリカはより多く貯蓄し,輸入よりも多く輸出し,石油消費も減って石油価格は下がるのです.

William Pesek Jr. は,中国よりも日本が鍵だ,と考えます.人民元への圧力が効かないとすれば,アジア通貨全体を引き上げる方法は無いものか? もちろん,円を増価させることだ.それは結局,アジア通貨が相互に増価する予想をもたらし,それ自体を促す・・・? これまで円安操作という非難を免れてきたのは,日本はデフレの解決を優先するだけでなく,ブッシュと小泉の盟友関係もあったからでしょう.しかし,今後はどうか?


LAT May 12, 2006

A preschool lesson on Iran

Rosa Brooks

WP Sunday, May 14, 2006; B07

Thinking Outside the Iran Box

By Jim Hoagland

FT May 15 2006

A grand bargain still only solution on Iran

(コメント) 幼稚園で,国際関係やアメリカ外交について必要な知識はすべて学ぶことができる,とRosa Brooksは指摘します.つまり,もしイランとアメリカが小学生だったら・・・

「それは僕のショベルだ.」「お前はもうショベルを持っているじゃないか? これは僕のショベルだ!」「それでも全部のショベルが欲しい! お前を殺すぞ!」「僕こそお前をもっと殺すぞ!」

・・・しかし,必ず泣くまで喧嘩する必要は無いのです.まともな大人たちであれば,事態を沈静化する知恵があるし,たとえそれほど理性的でなくても,明確な期待や関係者の尊敬を失わないように行動するだろう,と.・・・「二つとも欲しいの? どうしてなのか,理由を説明してくれる? 大声を出さずに,僕たちはこの問題を解決できないかな?」

小学校でも,外交政策でも,争っている人々は幻想の城を築き合っているものです.つまり解決の原則は同じです.脅しを強めあうことは避けて,互いに面子を失わないように,共通の土俵へ戻る道筋を考える,ということです.

アフマディネジャド大統領からの書簡が,どれほど意味不明なアメリカ非難を繰り返しているとしても,重要なことは,それが直接の意見交換を(戦争ではなく)求めている,ということです.1980年以来,アメリカとイランは正式に話し合ったことが無いのです.・・・聞いてますか? 小学生のコンディちゃん? ジョージ君? ディック君? ラミー君も? もういいから,喧嘩はやめて・・・!

イランとアメリカは,軍事力以外の手段で,戦っています.すなわち,ロシアや中国をめぐって,アラブ諸国やイスラエルをめぐって.弱者が強者と戦う方法,とドゴールは言ったそうです.弱い国はテロリストを使う.自爆テロを行う.核兵器を持とうとする.あるいは,北朝鮮は偽札も作る.弱い国はすべてを失う危機にあるが,強い国は多くを失いたくない.だから,たとえば,アメリカはガザ難民キャンプに経済支援を送るのです.

フランス,ロシア,中国などがアメリカの制裁に賛成しなければ,イランは制裁の脅しに動じません.FTは,無益な軍事的オプションは含めないように,と断言します.


IHT FRIDAY, MAY 12, 2006

A German pope's duty at Auschwitz

Timothy W. Ryback

(コメント) ドイツ出身の法王ベネディクト16世がアウシュビッツに赴いて祈ることは正しいか? アウシュヴィッツで,ノルマンディー上陸作戦の記念日(D-Day)で,法王は祈り,何百万人もの犠牲者や戦死者に,また,戦いの双方の国民に,共通の歴史的経験を元に平和を築くよう訴えます.アウシュビッツで祈るのは,個人的哀悼ではない.ドイツの罪にも言及しない.これはただカトリック信者としての経験である,と.また21000人のドイツ兵を埋葬したフランスLa Cambe墓地において,「私はドイツ人として,兵士たちの理想主義や国家への義務感を,不正義な政府が悪用したことに,動揺せざるを得ない」と語りました.

神のみが彼らの良心を理解する,と.・・・そう,かもしれません.

ウィリー・ブラント首相が1970年に,ワルシャワ・ゲットー蜂起記念モニュメントの前で,跪いて祈り,追悼演説を行ったように.また1985年にワイツゼッカー大統領は述べました.「われわれはすべて,罪のあるなしを問わず,老いも若きも,過去を受け入れねばならない.」「われわれはその結果によって影響されており,そのことに責任がある.」


NYT May 12, 2006

Mr. Putin's State of the Union

The Guardian Saturday May 13, 2006

Prodding the bear

LAT May 15, 2006

The Cold Wars are coming

Niall Ferguson

(コメント) 日本の少子化対策にも役立つように思います.つまり,ロシアで赤ん坊が減った理由は,一人っ子政策でも,ロシア人優遇の少数民族弾圧でもありません.ソ連崩壊と自由は,その希望を瞬く間に失い,経済破綻と不確実さに支配されました.その結果として,毎年,70万人の割合で人口を失っている,というのです.

出産を資金援助するのとは別に,こうしてはどうか? エリートたちの腐敗や強欲を是正し,経済の繁栄に人口のより大きな部分を参加させることだ.そして,統治や論争に参加し,将来の希望を分かち合えるなら,人々は飲酒や貧困から抜け出し,もっと多くの子供を育てて大家族を持ちたい,と願うのではないか? 指導者の名前なんて,どうでも良い.プーチンであれ,小泉であれ.

チェイニー副大統領がリトアニアでロシアの石油外交を批判したことにたいして,プーチン大統領は直截的な表現で反撃しました.要するに,他国の政策には黙ってろ,と.ロシアは核大国であり,エネルギー大国であり,安保理の拒否権を持っているわけです.チェイニーも,ワシントンでの関心を引きたいだけであり,他方,テロと戦い,中央アジアの資源を確保するためには,独裁国家と手を組むわけです.

これは新しい冷戦か?  Niall Fergusonは,2016年に,余りにも多くの冷戦が世界中で発生していることを懸念します.イランとアメリカ,イスラエルが,インドとパキスタンが,ロシアとEUが核戦争で威嚇し,中国と日本と韓国が核軍拡で威嚇し合っています.ノーベル賞を受賞した核理論家Thomas Schellingは,60年間,核兵器が使用されなかった理由は三つである,と言います.核不拡散体制,核使用のタブー,報復の懸念.しかし,世界にミニ冷戦が広がれば,こうした抑制は失われます.そして,アフメドネジャド大統領が言うように,強者が正義と平和をもたらす.それはテルアビブとテヘランにそびえるきのこ雲で始まる?


The International Herald Tribune, 12 May 2006

Globalization’s Grave Challenges for the West

Robert A. Levine

YaleGlobal, 16 May 2006

Europe Faces Globalization ? Part I

Patrick Sabatier

(コメント) グローバリゼーションという怪物をしとめる議論は,まだ,どこにも現れていません.

保護主義ではいけない.アメリカやイギリスの政府は,教育や再訓練だ,と言います.フランスやEUは,もっと労働者や社会的弱者へのセーフティー・ネットや所得保障だ,と考えます.それは増税になり,貴重な投資が逃げてしまうかもしれない? 他方,アジアはグローバリゼーションを恐れません.その対策とは? 一層の成長だ,と.むしろ恐れるのは,中国がすべての成長機会を吸い込んでしまうことです.

中国であれ,フランスであれ,経済ナショナリズム,あるいは国民企業育成策や投資優遇策は切り札となっています.アラカルト式に,企業を選別し,育成し,切り捨てる.そしてグローバリゼーションに生き延びる最善の国民経済を整備する?

FT May 18 2006

Wall against globalisation is futile

By Philip Stephens

私はこの表面的でバラバラな歴史を,現在の政治意識で再考する.というのも,ヨーロッパはわずか10年前に学んだことを急速に忘れつつあるから.ユーゴ内戦の結果として,ヨーロッパはEUの東方拡大を加速させた.ところが今や,EUは拡大「疲れ」に苦しんでいる,と言われる.ルーマニアやブルガリアの加盟は嫌々ながら認めるだろう.しかし27カ国はもう十分だ.ともかく休みたい,と.

東方拡大はフランスとオランダで憲章が否決された責めを負わされている.「ヨーロッパ・プロジェクト」への不満が広まっている.パリのブルジョアジーのトイレに「ポーランド人の配管工」がいることで,第五共和制は滅ぶだろう,と.「脱ローカル」という言葉を,経済的比較優位の変化と,仕事を東に奪われる意味で使う.

こうした議論には多くの欠陥がある.しかし,これだけ言えば十分だ.経済成長はゼロサム・ゲームではない.EU拡大は,かつても今も,啓蒙であるとともに,自分たち自身にとって利益であった.それは一時的な混乱を生むだろうが,繁栄は広がり,われわれに利益をもたらす.

15カ国からなるEUの旧政治バランスを破壊した,とは言える.独仏のエンジンは,もっと長い列車を引くには力不足だ.フランスは,より多くのヨーロッパ人が必然的にフランス的になると思えなくなった.15各国でも軋轢を生じていた制度は,25カ国かそれ以上の加盟国に秩序をもたらすには大きな改革を必要とする.

しかし,こうしたことは明らかであるが,世界もヨーロッパも,共産主義崩壊ですっかり変わった.15カ国のEUを懐かしむ人々は,ヨーロッパがあのままベルリンの壁で分割されていたほうが良かった,と思うわけか?

拡大をめぐる混乱は,政治指導者たちが不可避の変化を理解し,説明することに失敗したことより,深刻だ.新しい経済的・社会的な不確実さにより東方拡大を責めているが,それはグローバリゼーションの産物だ.

新しい経済的挑戦は,スロヴェニアやスロヴァキアから来るのではなく,中国やインドから起きる.また,中東の安全や,イスラム政治勢力の台頭,アフリカの根深い混沌から,ヨーロッパの安全や社会秩序は脅かされている.EUが拡大を止めても,アジアの経済的興隆は止まらないし,経済的ロジックが示す多重危機や,アフリカの疫病と政治破綻,イスラム世界の急進化も変わらない.

今週,ヨーロッパ委員会は,1月に予定されているブルガリアとルーマニアの加盟に,多くの条件を課した.特にブルガリアは,汚職追放,法システムの浄化,組織犯罪の撲滅,に果敢な行動を求められた.

旧ヨーロッパの各首都では,西バルカンの諸国を加盟させるのは永久に延期するべきだ,とささやかれている.トルコについては,オランダにおける移民問題の後退が,開放から閉鎖へ,と暗示している.

数日前にソフィアを訪れたとき,委員会がブルガリアの加盟を躊躇することが容易に分かった.私が会った政府職員たちは非常に率直であった.彼らは,自国がギャングや腐敗に苦しんでいることを認めた.その多くの根源がボスニア戦争に対する西側の対応であったことも.

しかし,ソフィアに法や民主主義のEU基準に合った断固とした行動を求めるのも正しいが,ブルガリアがどうすればその目標を達成できるか,それを支援する最善の方法を真剣に考えるべきだ.ヨーロッパの指導者たちは,単に国内の有権者を喜ばせたり,ブリュッセルからのEU指令を言い訳にすることで,人々を欺いてはならない.

不完全ではあるが,それらはヨーロッパの国家である.彼らを締め出すことが,ヨーロッパをさまざまな問題から救い出すことはないし,ヨーロッパ南部の辺境地には新しい不安定さを生み出すだろう.既にエネルギーで地域に介入し始めているロシアが,その有利な地歩を固めるだろう.

ヨーロッパの指導者たちは,自分たちの大陸に新しい壁を築くことで,グローバリゼーションに対する防壁を築けると誤解している.ヨーロッパの隣人たちを締め出すことは,アフリカ難民が船でカナリア諸島に押し寄せることも,コンテナ船で届くアジアからの消費財を抑えることもないのだ.

私は世界の変化を示す統計を見た.ベルリンの壁が崩れる前に,世界市場につながる企業で働く人口は約10億人だった.その数字が,今では,40億から50億人に増えている.ルーマニアとブルガリアを合わせても,人口は約3000万人でしかない.その他の西バルカン諸国は2500万人だ.この数字を考えて欲しい.


James Harkin The new utopians The Guardian Saturday May 13, 2006

John Pilger Chavez is a threat because he offers the alternative of a decent society The Guardian Saturday May 13, 2006

David Lehmann Why we should bother about Chavez and his politics FT May 14 2006

Ken Livingstone Not a difficult choice at all The Guardian Monday May 15, 2006

Denis MacShane Chavez is a populist, not a socialist The Guardian Monday May 15, 2006

Nathalie Malinarich Fighting US imperialism at City Hall BBC 2006/05/15 17:53:41 GMT

(コメント) ベネズエラのチャベス大統領がロンドンを訪問し,左派のリビングストン市長に歓待を受けました.もし眼の肥えたロンドン市民たちを,たとえ左派の同調者と言えども,大いに説得できるほどの知性と情熱を示せたのであれば,アメリカが「ポピュリスト」と簡単に断罪するのは正しくないように思いますが,どうでしょうか? 前メキシコ外相も,現在のラテン・アメリカにおける左派の伸張を「ニュー・ユートピアニズム」と呼んだそうです.James Harkin は,最近のユートピア理論復活に言及します.

ナショナリズムも民主主義も,ポピュリズムとそれほど明確に区別できるわけではありません.政治家たち信念や理想としては.ヨーロッパがラテン・アメリカに共感を覚えるとしたら,それは共有する部分があるからでしょう.


WP Monday, May 15, 2006; A17

The Return Of Voodoo Economics

By Sebastian Mallaby

(コメント) 増税や減税をめぐっては,さまざまな論争と政治的寓話,評論家や経済学者が舞台に現れます.日本もそうですが.

Voodoo Economicsとは,魔教,呪術,もとはハイチなど西インド諸島の民間信仰であったようです.しかし,経済学,と付けば,これは「減税することで歳入は増える」という共和党の教えになります.減税は人々の福祉にとって正しく,増税は野獣(政府)を育てるに過ぎない.など.

それは,レーガンでも,ブッシュでも,減税すれば景気が刺激されて(あるいは労働意欲や生産性,資源配分の改善,・・・),好景気で歳入が増える,と説明されました.政治家も有権者も,結局,聞きたいことしか聞かないわけです.

ブッシュ政権に加わったN. Gregory Mankiwハーヴァード大学教授はどうか? この自己充電式電気自動車はどれくらい走るのか? もちろん,彼は正直な学者です.長期的に見れば,なんと,減税額の半分が回収される,と.つまり,半分は赤字になるわけです.債務は増え続けるでしょう.大統領,どうですか? 彼が余りに正直であったため,他のスタッフも,政権を去ったわけです.

共和党は2003年の減税が好景気をもたらした,と主張しますが,むしろ低金利が,そしてアジアの貯蓄がアメリカに流れ込んで,景気を支えてきたのではないか? と.

FT May 16 2006

Blessed borrower helps with oil shock

By Martin Wolf

(コメント) なぜ石油危機は起きないのか?  Martin Wolfは答えます.それは融資を受けられるからだ,と.インフレは抑制されており,金融市場は世界を緊密に統合しています.石油ではなく,国際金融システムを守るほうが重要です.

では,現在の国際不均衡はどれくらい持続可能か? それは4つの要因に依存する,と考えます.1.いつまで石油価格は高いままか? 2.赤字国は輸出できるのか(産油諸国は消費するのか)? 3.どれくらい融資できるか? 4.いつまで融資していられるか?


FT May 15 2006

The real cost of a failure in Doha

NYT May 15, 2006

About That Free Trade . . .

(コメント) 貿易自由化をめぐる主要国の選挙循環や政治システムにおける正統性を,どうすれば築くことができるのか? 貧困を減らす,9・11後の世界に平和な秩序をもたらす,という理想はその通りです.しかし,何も答えは読み取れません.


The Guardian Tuesday May 16, 2006

Global economy: Their currency but our problem

世界の金融市場が動揺したのは,何か不吉なことが始まったのだろうか? 世界景気は好調で,安価な融資をふんだんに吸収して,この数年,インフレや危機も起きなかった.しかし,膨張した経済がインフレの前兆を示せば,世界中で中央銀行は金利を上げ始める.すでに,石油や一次産品の国際価格は上昇しているではないか? そして,ウォール街は暴落した.

すぐに戻したのは幸いだった.誰もパニックを予想していない.しかし,アジア諸国の対応が問題だ.彼らはドルを売るだろうか? 日本政府はドル安を止めるために買い増すそぶりを見せた.通貨市場のポーカーゲームが始まった? いつまで買うか? いつ売るか? イギリスやユーロ圏はどうするのか?


FT May 17 2006

Japan’s growing confidence should be welcomed

By Christopher Preble

The Japan Times: Wednesday, May 17, 2006

Taro Aso has a history problem with Australia

By ROBYN LIM

(コメント) ケイトー研究所のChristopher Prebleは,民主党党首に小沢一郎がなったことを,これでポスト小泉の日本が国際的な役割を拡大するようになる,と解釈しました.Prebleの意見では,こうしてすべての政治指導者たちが憲法改正に傾いたことは好ましい変化なのです.日本の不戦主義も終わる,と.日米同盟は東アジアの有効な軍事同盟として機能するだろう.

ROBYN LIMは,麻生外務大臣がオーストラリアを訪問した際の不首尾を論じています.まず,麻生氏はオーストラリア外相Alexander Downerの父が日本軍の捕虜になっていたことを知りませんでした.しかも,捕虜として九州の炭鉱で奴隷のように使役された,それは麻生一族の炭鉱であった,ということです.

日本政府はオーストラリアと対中防衛協力を考えているわけですが,オーストラリアは日本との関係をむしろ問題とみなしているようです.日本政府は中国や韓国だけに反日感情や摩擦があると思っているが,そうではない,とLIMは主張します.オーストラリアも,シンガポールも,日本と戦い,死者や捕虜を出した.麻生鉱業はその炭鉱を所有し,197人のオーストラリア兵,101人のイギリス兵,2人のオランダ兵を戦争捕虜として使役した,と書いています.

さらに,靖国神社への参拝や遊就館の展示内容など,日本の政治指導者がどのような歴史観を受け入れ,それとまったく矛盾する安全保障や軍事同盟を他国と話し合っているか,その無節操と支離滅裂さが述べられています.


WP Tuesday, May 16, 2006; A17

A Nuclear Test for Diplomacy

By Henry A. Kissinger

The Japan Times: Wednesday, May 17, 2006

An 'OPEC' with nuclear weapons?

By DAVID WALL

(コメント) キッシンジャーは,これまで,テロ攻撃に核兵器が含まれていなかったことに感謝します.そして,イランをめぐる4カ国協議より,北朝鮮をめぐる6カ国協議のほうが進展している.アメリカが二国間交渉を拒むのは正しい.つまり,戦争をアメリカのみの単独決定にしたくないようです.国際社会は核保有国を増やさない点で合意している,と考えます.それは地域の核軍拡競争を恐れているからです.

キッシンジャーは,核拡散の防止を国際交渉の唯一の目標に掲げるべきだ,と主張します.ブッシュ政権は一方主義や先制攻撃,体制転換,民主化を,この目標と十分に分けることなく主張してきました.それでは安定した国際秩序を築けない,と懸念するわけです.そして,核拡散防止を合意する限り,中国は最終的に必要な北朝鮮への制裁を発動するし,ロシアはイランへの核処理サービス提供を偽ることなく,新しい国際体制として合意するだろう,と.

・・・外交・多国間交渉と国際システムを駆使して,軍事行動以外の選択肢を増やすべきであり,最後の手段として,戦争は残されるものでしかない.そのことを1938年の失敗から学んで,第二次世界大戦後は,戦争に至ることなくその能力を高めて成功した.・・・

DAVID WALLは,上海協力機構(SCO)に注意します.その起源はソ連崩壊でした.中国はソ連から引き継いだ国境紛争を新しい諸国,カザフスタン,キルギスタン,タジキスタンとの間に引き継いだわけです.ロシアとの間には4300キロの国境を有し,モンゴルの問題を抱えていました.中国は兵力を国境から遠ざけ,交渉を進め,対テロ戦争や資源開発で協力する交渉を進めました.ウズベキスタンは国境を接していませんが,最初から加盟しました.それが2001年の上海で開催された協力機構なのです.

ロシアはSCOをまじめに考えていなかった,と思われます.それは中国の中央アジアにおける影響力を監視するためのものでした.しかし,その後,アメリカが中央アジアに進出し,中国がカザフスタンの油田開発に参加したことで,その性格が変わった,とWALLは考えます.2003年からロシアの活動が本格化し,イランやインドを加盟させるように働き,また中国はパキスタンを誘いました.アメリカの参加要請は2005年に拒否され,アメリカやNATOに対抗し,世界の勢力バランスを回復する正当な力を,SCOは主張し始めます.それはイランとロシアを加えて,「核武装したOPEC」と噂されています.

その主導権が中国にあるのは明白ですが,プーチンの国際地位向上に寄せる執念が加わりました.ロシアは中国と強調して世界戦略を立てることに同意しつつある,とWALLは見ます.それでもなお,SCOは国際関係で重要な意味を持たない,とNATO諸国は思うのか?

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The Economist, May 6th 2006

Unstoppable?

Petrol and Politics: Oil and hauteur

Immigration to the United States: Brains and borders

Immigration policy: More marches, a growing backlash

(コメント) 何がThe Economistらしい主張か? イランとの交渉は行き詰まり,軍事的オプションも利用できない,と考えます.では,イランの核武装を阻止する,不可能な道を切り開くことはできないのか?  The Economistは,それが外交であり,政治のアートだ,と主張します.イラクとの交渉失敗は,アメリカとヨーロッパ,強硬派と交渉継続論が分裂したことにあります.今度こそ,主要国は統一して交渉に当り,軍事的なオプションにも十分な合意を示すべきです.そして,アメリカはイランの政治体制を非難することより,その安全を保証して,交渉に臨むことでしょう.

ベネズエラ,ボリビアなど,資源を国有化して政治支配を強める国には,エネルギー市場がその滅亡を約束します.エネルギー大国はこうした誘惑を避け,アメリカも長期のエネルギー政策を立てるべきです.他方,アメリカが必要としているエンジニアや優秀な学生を移民政策は軽視しており,また移民たちのデモは次第に反移民グループの政治的反発も強める,という,アメリカ国内政治の複雑さを伝えています.


Carbon trading: Cleaning up

Economics focus: The weeds of destruction

(コメント) 経済学として興味を引くのは,EUの排出権市場と,インフレ・ターゲット論批判です.

The European Union Emission Trading Scheme (ETS)は,温室効果ガスを抑制する効率的なメカニズムを提供するために導入されました.しかし,20051月の取引開始以来,その価格は余りにも乱高下を繰り返し,市場としての十分な役割を果たせません.政府の予測や排出権か価格の上昇を資産価値として経営を左右する状態は,むしろ石油から石炭への移行など,間違ったシグナルと反応を積み重ねています.市場は必ず機能するが,ただしその設計に問題がある,とThe Economistは考えます.

他方,インフレ・ターゲット論への反対は,BISのBill Whiteによる研究を紹介する形で行われています.「金融政策の目的とは何か?」 最近では,物価の安定,を答えとするでしょう.確かにインフレは相対価格を歪め,資源配分を誤らせて,投資決定や成長を損ないます.しかし,物価が安定していれば経済はすべてうまく行くのか? もちろん,そんな簡単にはいきません.石油危機や,中国・インドの世界市場参加,技術革新など,供給側の変動にも,金利によって変動する世界需要は対応しなければなりません.それを知らずに,もし物価(たとえば消費者物価)だけを重視すれば,金融緩和や引き締めが行き過ぎて,結局,景気変動を増幅するのです.

インフレ・ターゲットは明快で,中央銀行が政策変更を市場関係者に説明しやすいのでしょう.しかし,透明性や説明責任から逃れることが,金融政策の目的ではない,と私も思いました.