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IPEの種 5/22/2006

ブックオフの社長に,パートから入社した女性が就任した,という話を,お昼のワイドショーで知りました.誰でも,自分の能力や才覚によって社会参加し,重要な役割を引き受けることができる,というのは,正しい,素晴らしいことだと思います.

そして,ビジネスは何よりアイデアだ,と思いました.たしかに大規模な投資を必要とする,基礎資材における巨大プラントや,技術革新の応用など,大企業が銀行や政府と協力して立ち上げるしかないビジネスもあるでしょう.しかし私のイメージでは,多くの小さな企業が,常に,それぞれ固有の単純なアイデアから誕生します.

ブックオフは基本的に,古本屋(中古販売)と貸し本業を融合させたものだと思います.本というものは値段がかなり高く,中身の判定は難しく,かさばって場所をとり,整理や保存も案外難しいものです.図書館にあれば良い,と割り切れるなら別ですが,やはり個人の愛着が生まれ,書き込みや,ふと手にとって読み返すために,自分の本を持ちたいと思うわけです.

その結果は? 高価な本を買って失望したり,手付かずの本が勉強部屋や寝室を占領し,引越しのたびに中身の分からない段ボール箱が増えてしまう,・・・ といった惨状です.まさに,読書家や愛書家は<文献プロレタリアート>になってしまいました.つつましい読書家の願いと,住宅に埋もれた文献とを,この金銭的な負担から解放したのが,ブックオフの進めた<革命>です.私は数百円で買える小説や専門書の一杯並んだ棚の並ぶ空間を歩くのが楽しみです.

ここには新しいアイデアがあり,ビジネスが育つ理由があるのです.国内1000店舗と言わず,世界10万店舗でも目指してください.地球は国境で切られていても,言語的にはつながっています.日本語文化も世界に散在していると思います.また,英語圏,スペイン語圏,中国語圏を結び,書物を仲介し,裁定する業者が現れるでしょう.それほど儲かる商売なら,類似したサービスを提供する業者が叢生するはずです.

多分,22世紀には,書籍をデジタル化して世界データバンクに永久保存する一方で,その分類や格付け,利用に関するノウハウが発達し,パソコン内部に情報図書館を個人保有するのでしょう.そして,本を愛する人たちのために蔵書屋さんが,ブックオフの末裔として,各地にユニークなチェーン展開と,個人業を繁栄させていないかな,と思います.

新しいアイデアを持って世界を変える.それが新興企業家たちです.彼らの自由を阻むのは,規制や既得権,貴族化した旧ビジネスや地方政治家たちの支配欲だと思います.アイデアのある者なら,誰でも起業し,すなわち,誰でもスタッフや資金を集め,社会変化に参加できることは,資本主義や社会主義,ナショナリスト,エコロジスト,性・人種差別,などを超えた理想です.移民政策改正に苦しむブッシュ大統領が,少なくとも,メキシコからの出稼ぎ農夫でも夢を持つことができる<アメリカ>をたたえて,国民の合意を求めたように.

同じ番組で紹介していた地球儀の会社も素晴らしい.特に火星儀なんて,ぜひ自分の机の上にも飾って楽しみたいです.土星儀とか,発光する彗星もないのかな? それらを並べて季節ごとに配置を移せる,プラネット・ルーム変換装置も開発して,安く売って欲しいです.

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こんなに面白い・恐るべき小説があるのか! と,ラリー・ボンドのテロ・戦争テクノ・スリラーを読むと感動します.火星の入植地へ行くときにも,ぜひ持って行きたいです.冒頭から,ゴールデンゲート・ブリッジがテロ攻撃され,アメリカは巡航ミサイルで報復し,ボスニアの戦闘員たちをイラン軍がひそかに募集し始めます.『テロリストの半月刀』(原作は1996年.文春文庫,上下)をまだ読んだことがない人は,数日,通勤電車や昼休みのオフィスで瞑想世界に旅立ってはどうでしょうか?

問題は,こうしてテロや戦争に駆られる軍人たちの思考や姿勢が理想化されることです.それは異様なほどの説得力を持つから,スリラーなのです.1ダースものテロがアメリカ国内で続き,極右団体や人種対立が利用されます.目的とテクノロジーを与えられた戦士たちが世界分割を競い合う,新しいディストピア小説,と紹介しなおすべきですね.

いや,もっとか.小国の軍事クーデタではない,大国のカタストロフ小説.ボンドは軍事的・政治的な観点から,アメリカ社会の弱点を細かく拾い上げ,戦争とテロを結びつけたわけです.そして,優れた恋愛小説です.

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