IPEの果樹園2006

今週のReview

4/24-4/29

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :胡錦涛の訪米

安全保障 :イラクイランエネルギー分野のNATO

貿易・投資 :

通貨・金融 :世界の通貨秩序IMF改革

世界統治 :イタリアのデマゴーグ,EMUの失敗

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


Alexander Stille Italy’s election duel leaves no winners FT April 11 2006

Tony Barber Italy may need to overhaul its polity FT April 12 2006

Jonathan Freedland Italy's knife-edge election results are a symptom of this age of stalemate The Guardian Wednesday April 12, 2006

Timothy Garton Ash Only the national genius for improvisation can save Italy now The Guardian Thursday April 13, 2006

GIANNI RIOTTA Italy's Natural Selection NYT April 13, 2006

William Pfaff No more bread and circuses IHT SATURDAY, APRIL 15, 2006

Wolfgang Munchau Italy’s bad news for the euro FT April 16 2006

(コメント) Silvio Berlusconiは僅差で選挙に敗北し,ヨーロッパ委員長も勤めたRomano Prodiが次期首相となります.良かった・・・と思いたいですが,そうではない,という論説が一杯です.二人の確執は今後も続き,イタリア政界と経済の混乱,衰退が続く,と言います.

ブッシュ=タクシン=ベルルスコーニ=プーチン,という保守革命(竹中・ホリエモンも加わるはずでした)は,かつてサッチャー=レーガン(=中曽根)の保守革命と似た国際秩序の転換をもたらすまでには至らなかったようです.しかし,政治・社会問題の軍事化,グローバル化した<自由>経営思想=スタイル,貧富の格差に関する積極的な肯定姿勢,インターネット=携帯電話=メディア=スポーツの独占(共謀)と政治利用,トップ・ダウンの法・制度改革,金融ビジネスの自由化と投資文化の促進,・・・ などを,共通の特徴としていたように思います.

Alexander Stilleは,この混乱をベルルスコーニが敗北した場合に備えて計画したものだ,と批判します.戦後の比例代表制は,小政党を林立させ,複雑な連立内閣により不安定なイタリア政治と経済混乱をもたらしたという理由で,1993年に国民投票で否定されたのです.ところが,ベルルスコーニはそれを復活させました.彼の仲間は,選挙法など紙くずでしかない,と公言します.自分たちの都合だけで変えるのです.

ベルルスコーニはムッソリーニを賞賛しました.ネオ・ファシズムが戦後もイタリアで生き残ったのは,日本に右翼の政治結社が生き残っている事情を連想させます.レジスタンスとマフィア,連合軍や,共産党の排除,NATO,ローマ・カトリック教会との関係.「自由な社会」という秩序の裏側はさまざまです.・・・日本でも,多くの政治家やタレントが皇室や戦争について戦前の思想を擁護し,靖国神社に列をなします.他方,経済政策ではイタリアの左右にほとんど差が無く,南北格差を深めながら,長期的な経済運営に失敗しました.南の失業率は高く,さらに若者の失業が多いのです.むしろ,年金制度の破綻や移民問題が社会的亀裂を示します.

社会的衰退や政治の混乱が繰り返される中でも,Jonathan Freedlandは,ドイツやフランスに続いて,イタリアでも右派の対案は拒否された,と考えます.ただし,僅差で.ベルルスコーニはラテンアメリカの独裁者そっくりに退場します.中国だけでなく,世界中でラテンアメリカ化が進んでいるのかもしれません.インドや中国の加わった世界市場では, 20世紀後半の左派の対案にそのまま同意する者もいないでしょう.

他方,Timothy Garton Ashは,舞台も観客が来なくなるほどの面白い政治オペラだった,と感嘆します.道化でやくざのベルルスコーニと,プロフェッサー・プロディの対決だ.終幕には,ドン・コルレオーネの小さな村のそばで,40年間逃亡していたマフィアのボスが逮捕されるという挿話もある.彼は一言もしゃべらない.しかし,このヨーロッパという豪華な舞台ですべてが演じられる.これを有料の見世物にしてチケットを売ったら,イタリア経済もブームに沸いただろうに,というのは悪意に満ちたジョークです.

ベルルスコーニの政党やサッカー・ファンにもかかわらず,若者の失業率は25%,国債発行額はGDP100%を超えています(日本より低いですが).EU内でも生産性の上昇が遅れ,ユーロによって切下げができない結果,競争力も失われます.プロディの支持基盤もバラバラで,明確な改革を実現できないようです.労働市場改革は,北欧諸国のように合意によって行うか,サッチャー(やブレア)のように選挙による独裁政治が行うか,いずれかしか成功していません.イタリアは,ドイツやフランスと並んで,動きの鈍いバスに乗ったままです.

GIANNI RIOTTAによれば,イタリア政治のジャングルでは,猫がワニの飲み込んだ.プロディは猫にたとえられ,ベルルスコーニはカイマン(中米・南米のワニ)です.

これでようやく「パンとサーカスの政治が終わった」という感想もあります.デマゴギー(煽動)によって社会を変えた点で,ベルルスコーニはムッソリーニの後継者でした.ファシズムは,ムッソリーニが創り出したナショナリズムと社会主義との混成でした.そして,もう一人の偉大なデマゴーグ,アメリカのヒューイ・ロングを指摘します.ロングはルイジアナ知事として大恐慌前夜の貧しい人々に学校や道路,病院を与え,さらに上院議員となって大統領を目指します.アメリカ人すべてを「王様」にする,と主張し,最低所得保障と持ち家政策を推進し,人気を高めました.

ベルルスコーニは貧しい農民のために尽くしませんでしたが,自分の資産を守り,自分の犯罪による告発から逃れるために政治家になった,とも言われます.その政治的手法はローマ共和制の指導者たちと同じ,パンとサーカス,でした.支持者たちはベルルスコーニの富や権力を自分たちも得たいと思ったのです.それはイタリアにとって長い現実逃避でした.ベルルスコーニもブッシュと同じようにデマゴギーを多用しましたが,それは戦争ではなく,娯楽でした.イタリアは,中身の無い政治のバケーションからようやく帰った,というわけです.

最後の問題はユーロです.ベルルスコーニは,ユーロ離脱さえ政治的に利用しかねませんでした.プロディにその可能性はありません.ところが弱体な支持基盤のために,投機は続きそうです.プロディの政権中でもユーロ離脱がないとは言えない,と投機形はまだ考えています.切下げ以外に経済を刺激する容易な選択肢がないからです.ユーロに参加する際のレートが高すぎた点も問題です.

Wolfgang Munchauは,プロディの改革案も間違っている,と考えます.その内容は,ヨーロッパ各地で失敗した供給側の改革案です.中道や左派の寄り合い所帯が長期に支持できる内容ではありません.もし景気が回復できないまま改革を主張すれば,ポピュリスト的な反動が強まって,(アルゼンチンのように!)政治家たちはユーロからの離脱を主張します.再建されたリラ市場は投資家に嫌われ,通貨価値の暴落と債務の不履行に至るでしょう.

それでも市場が直ちに投機を示さないのは,不履行というのはパニックによるものであり,ECBが救済するか,イタリア政府の債券がまだ当面は返済されると思っているからです.しかし,現在のイタリアは,1992年のポンド危機前と似ている,と.


NYT April 13, 2006

Fiddling While Darfur Burns

(コメント) ダルフールに関して世界が交渉している過程は,ソーセージの製造過程に似ている,とNYTは皮肉を述べます.強姦や殺戮が横行しているのに,なぜスーダン政府は国連の高官を追い払えるのか?

ダルフールにおける黒人住民を迫害するイスラム教徒の民兵たちに対して,デンマークの風刺漫画に対して行われたようなデモは無く,アパルトヘイトの南アフリカ製品に対して行ったようなボイコット運動もありません.ブッシュ政権は圧力を強めていますが,政治には時間がかかり,ダルフールの住民には待てません.国連安保理では,今なお,中国,カタール,ガーナ,タンザニアがスーダン政府の弁解を支持しています.ルワンダ虐殺は彼らに何かを告げるべきだ,と.


FT April 14 2006

City size matters ? but who cares?

By Haig Simonian

(コメント) チューリッヒが36万人,ジュネーブは185000人の都市人口ということです.都市の規模について,理想の状態を議論しています.銀行やコンサルティングという優れた業界の意向を反映してMercer Human Resources Consultingが付けたランキングでは,スイスのこれら二つの都市が1位と2位を占めました.ロンドンは39位.最下位は? もちろん,残念ながらバクダッドです.非ヨーロッパでトップ10に入ったのは,バンクーバー,オークランド,シドニーでした.アジアでは,東京よりもシンガポールが最高位で,34位です.

人と同じように,都市の健全さや活力を育てているでしょうか?


Geoff Dyer China relaxes controls on foreign investment FT April 14 2006

No yuan is an island CSM April 18, 2006 edition

Laurence Lau Time to go for Hong Kong dollar peg Asia Times Online, Apr 18, 2006

KEITH BRADSHER Rising Yuan Pushes China Upmarket NYT April 20, 2006

Bush presses China over currency BBC 2006/04/20 18:16:09 GMT

(コメント) 胡錦涛主席の訪米で,中国の為替レート制度改革は加速し,資本規制が緩和されて為替レートの変動が拡大すると予想されています.その水準を市場に委ねても良いのでしょうか? 私は,為替レートの変動に懐疑的です.

しかし,中国の世界市場に占める重要性を考えれば,人民元だけが孤島であるかのように調整を免れるわけには行かない,とブッシュ政権は考えます.その点には賛成です.「中国は世界貿易ショップに飛び込んだ猛牛だ.アメリカは,もっと顧客らしく振舞うように,中国を説得する.」

香港通貨庁のJoseph Yamは,人民元がドルに対して増加しても,香港ドルとUSドルとの固定レートは変えない,と述べました.1997-98年のアジア通貨危機のとき,香港はドルとの固定レート制によって,初期には危機を回避できた.しかし,その後,各国が大幅に減価したことで,香港ドルは増価してしまい,企業の倒産やアウトソーシングが増えました.

Laurence Lauは考えます.2040%も切下げたシンガポールやタイ,マレーシアと,香港はどうやって競争すればよいのか? 香港が外貨を得る方法は三つです.@観光,Aショッピング,B不動産.最初の二つが成功しなければ,不動産は購入されません.不動産価値がUSドルで30%も下落したときの人々の反応を予想するのが怖くて,切下げを考えることもできません.その意味で,切下げるためには変動レートしかないわけです.香港にとっては変動も最悪です.

他方,いったん,切下げてしまえば,プラスの効果が現れます.景気が良くなり,株価は上昇し,外国投資家も投資し始めるでしょう.他の選択肢として,完全な人民元の採用や,ドル化が考えられます.Lauはドル化の可能性を無視します.他方,USドルではなく,人民元との固定レートが検討されています.しかし,中国経済と香港経済の格差はまだ当分埋まらず,その可能性も無いだろう,ということです.人民元が増価しても,香港ドルはUSドルに固定されたままです.

FT April 16 2006

Why US-China links are in flux

By Edward Alden in Washington and Richard McGregor in Beijing

WP Monday, April 17, 2006; A13

Our Opportunity With China

By Elizabeth Economy and Adam Segal

FT April 18 2006

US and China need strong institutions

By Martin Wolf

Harold McGraw US and China must build business bridges FT April 16 2006

Zhiqun Zhu China and the US: Moving beyond talking Asia Times Online, Apr 18, 2006

China and the US need to work together FT April 18 2006

Tom Mitchell Shenzhen to raise minimum wage FT April 18 2006

John Frisbie Sino-American trade needs a bilateral framework FT April 19 2006

(コメント) 米中間の貿易不均衡は,アメリカ議会の保護主義を強め,さまざまな制裁法案や為替レート操作への非難,敵対的な措置の発動について議論が起きています.貿易不均衡は雇用問題と結び付きやすく,議員たちの選挙と切り離せません.

胡錦涛主席の訪米は,ブッシュ政権との関係を維持して,こうした保護主義的な議会の姿勢に一定の歯止めを求めるものです.しかし,ブッシュ政権としても中国の政策に多くの注文を付けています.それは人権問題よりも,WTOに決められた自由化を守っているか,人民元の一層の増価を許しているか,知的所有権の保護を厳格に行っているか,といったことです.

米中間の貿易が増えたことで,この経済的な交換が不安定化し,あるいは途絶するようなショックを与えたくない,という共通の動機が生まれます.しかし,他方で,互いの国内政治過程に深く影響する結果,大きな失望や政治介入を招く危険もあるわけです.ゼーリック国務副長官が唱えた「ステークホルダー」論が重視されるのは望ましい展開です.

問題は中国国内でも深刻です.改革の進展とともに,社会不安や抗議行動が頻発し,市場改革の進め方をめぐる論争が公然と行われるようになりました.「社会的調和」や「地域格差の是正」「環境保護」を取り入れても,胡錦涛・温家宝体制が共産党やマルクス・レーニン主義の政治的正統性を維持し続けるのは難しいかもしれません.なぜなら,市場に依拠し,世界貿易に開放されて暮らしが豊かになるほど,強権的な介入やイデオロギー統制はその効果を失うからです(そして社会的な較差も顕著になる).

Elizabeth Economy and Adam Segalは,アメリカ政府がこうした中国の国内論争に積極的に関与する方法がある,と主張します.中国の政府や企業にも透明性を求め,法の支配を確立させ,さまざまな援助を通じて民主化運動や提案を助けることができる,というわけです.中国に「ステークホルダー」となるよう求めるだけでなく,それを導くことができる,と.

Martin Wolfは,米中貿易摩擦を多角的な枠組みで相互に調整できる,と考えます.それは,@貿易不均衡が多角的な問題であり,A二国間だけで政治交渉すれば「勝者と敗者」の問題になってしまい,深刻な対立にエスカレートする危険があり,B為替レートを議論する公正な仲介者として,IMFが情報や基準を用意してくれるからです.すなわち,Raghuram Rajanが提案しているように,米中双方がIMFのサーベイランスを利用することです.人民元の増価は,覇権国アメリカの要請に屈服するのではなく,中国自身の利益になり,しかも多角的な調整の場で指導的な役割を果たすチャンスなのです.

WP Sunday, April 16, 2006; B07

The Lukewarm War With China

By Jim Hoagland

WP Monday, April 17, 2006; A13

No Need to Feel Threatened

By Sebastian Mallaby

The Guardian Wednesday April 19, 2006

Time to tackle China

Simon Tisdall

BG April 19, 2006

Assessing China's power

By Joseph S. Nye Jr.

Asia Times Online, Apr 20, 2006

Containing China: The US's real objective

By Michael T Klare

Dealing with China BG April 18, 2006

Mr. Hu and Mr. Zhao NYT April 18, 2006

David Shambaugh For Hu and Bush, a long list of fires to fight IHT TUESDAY, APRIL 18, 2006

(コメント) Jim Hoaglandは書きます.「胡錦涛のホワイトハウス訪問は,誰が誰を支配するのか,をはっきりさせるためだ.」 貿易不均衡,金融取引,石油市場,外貨準備,それらが中国へのパワー・シフトを顕著に示しています.「ちょうど冷戦期に,核兵器による相互確証破壊(MAD)がソ連とアメリカに自制を促したように,アメリカと中国との相互の金融的な破壊が双方の疑念と敵意を抑制するのです.たとえまだ銃砲を数えているとしても.」

Sebastian Mallabyは,中国への不安をアメリカ人が抱くのは間違いだ,と考えます.たとえばウォルマート(小売)やグーグル(インターネット検索),ドリーム・ワークス(映画製作)が素晴らしいのは,単に低賃金の中国人労働者やエンジニアを利用するからではない.革新のためにさまざまな分野のメリットを組み合わせる力があるから,こうしたアメリカ企業は成功している,と.外国人排斥など,パラノイアに頼るべきではない.中国が底辺への競争(低賃金)や頂上への競争(科学技術)を加速しても,アメリカ企業は繁栄できる,と.

Simon Tisdallは,胡錦涛の戦略は明確であるが,ブッシュの立場は曖昧だ,と述べます.安全保障で協力姿勢を見せ,経済的にも共通の利益を強調する.少なくとも今のところは.他方,アメリカは「テロとの戦争」で協力しなければならないから,中国を敵視しないけれど,その台頭には懐疑的な姿勢を崩しません.だから,このゲームは胡錦涛の舞台でしかない,とTisdallは考えます.アメリカにできるのは,せめて,国賓扱いを認めず,国内の期待を冷却しておくことだけでした.共産党中国と経済的奇跡の衝突は目前に迫っている・・・?

Joseph S. Nye Jr.は,アメリカ政府が中国のパワーを正しく捉えていない,と批判します.その一人当たり所得水準は公式レートで1700ドルしかなく,アメリカの25分の1,R&D投資額は10分の1でしかない,と.中国の軍事力は,ソフト・パワーを考慮するとアメリカに大きく劣っている.それでも中国は,たとえば台湾海峡で軍事行動に出るかもしれないが,タカ派と違って,中国に軍事的に対抗する以外にも,アメリカ政府にはリベラルな選択肢がある.すなわちWTO加盟を支持し,日本との同盟関係を強化した.さまざまな制裁措置は望む結果をもたらさないだろう.レーガンが「信用するが,証明せよ」という姿勢を好んだように,「抱擁するが,リスク回避は怠らない」という姿勢を続けるのが良い,と.

Michael T Klareは考えます.アメリカは,潜在的にアメリカの覇権を崩す力と野心を持ちうる国は,ロシアやドイツ,中国ではなく,中国しかない,と考えています.石油についても,安全保障についても,アメリカは中国を「封じ込める」ことを意識して動くでしょう.すでに,アジア太平洋地域における軍事力の再編はそれを示している,と.

メディアや思想,情報の統制に関する中国政府の姿勢は変わりません.

FT April 18 2006

Hu starts US trip with Microsoft visit

By Richard McGregor in Seattle

April 19 (Bloomberg)

Why Gates May Matter More to China Than Bush

William Pesek Jr.

Asia Times Online, Apr 19, 2006

Why the Chinese love Seattle

By Todd Crowell

NYT April 19, 2006

Visiting Boeing, China's President Praises Planes and Trade

By LESLIE WAYNE

Windows of opportunity LAT April 18, 2006

(コメント) 胡錦涛が望んだアメリカにおける歓迎を示したのは,ホワイトハウスよりも,マイクロソフトとボーイングでした.ブッシュの国賓扱いを無視して,ビル・ゲイツが招いた100人の招待客とディナーを共にする方が素晴らしいと思うわけです.ホストはワシントン州のChristine Gregoire知事でした.中国市場がアメリカ企業にとって大変に魅力的である,と両国の人々に示す効果もたっぷりあったでしょう.シアトルに胡錦涛を招いたのは,中国系アメリカ人でただ一人,州知事にまでなったこの州のGary Locke元知事であったそうです.

ワシントン州のシアトルは自由貿易や中国系移民にもっとも好意的で,胡錦涛はシアトルにいる間,アメリカに蔓延する中国批判を聞かずに済むのです.ゲイツは,中国で,ブッシュよりも広く知られたアメリカ人です.中国は,今後20年間で2600機,2130億ドルを購入してくれる,とボーイング社は期待しています.

William Pesek Jr.は,胡錦涛がブッシュよりもゲイツを優先したことを,「中国は,アメリカ政府ではなく,アメリカ産業に関心がある」という意味に取りました.胡錦涛にとって,ホワイトハウスは,所詮,世界最大のコンピューター・ソフト企業,マイクロソフトと,世界最大の産油国,サウジアラビアの途中で立ち寄る,世界外交の通過点です.

ブッシュ政権は,もちろん,中国の軍備増強と,アメリカが孤立させたがっている諸国との外交関係強化,そして貿易摩擦を緩和する人民元切上げに関心を持っています.しかし,双方の指導者がともに譲歩するつもりがない以上,この会談は言いっ放しの(そして都合よく編集してしまう)記念撮影会なのです.中国が譲歩するとしたら,ブッシュにではなく,ゲイツに対してです.もはや中国は多くの工場を建てて,これ以上の工場は要りません.次にほしいのは,技術やエンジニア,ハイテク企業です.これは,知的所有権の保護で譲歩を示し,敵対してきたマイクロソフトを懐柔するための表敬訪問でした.

主席も,会長も,大統領も,英語では “president” ですね.

FT April 20 2006

China's false alarms

IHT THURSDAY, APRIL 20, 2006

Debunking America's China syndrome

By Erik Berglof

(コメント) 中国の賃金が上昇し始めて,アメリカのように,工場が流出するはずだ,と期待するのは愚かなことです.香港周辺の工業地域で生産性上昇に遅れてようやく賃金が上昇するとしたら,それは自然で,望ましいことです.繊維や衣服の工場が他の地域や国外に流出することも,中国の競争力が衰えたことを示すわけではありません.

アメリカで高まる「中国脅威論」を「チャイナ・シンドローム」と呼ぶのは,1979年の映画の題名として有名になった言葉だからです.それは原子力発電所の事故が,核反応の熱で地球を貫通する,というアイデアを示しています.中国の影響は,これと同様に,世界中の経済構造や社会システムを貫通しています.EBRDのErik Berglofは,アメリカに限らず,世界での影響と,国際分業の階段を上る科学技術への投資を訴えています.


WP Friday, April 14, 2006; A17

My Immigration Solution

Eugene Robinson

2006

WP Thursday, April 20, 2006; A25

Conspiracy Against Assimilation

Robert J. Samuelson

Charles Krauthammer Immigrants Must Choose WP Friday, April 14, 2006; A17

EDUARDO PORTER Cost of Illegal Immigration May Be Less Than Meets the Eye NYT April 16,(コメント) アメリカの移民政策論争について.Eugene Robinsonは,国境にフェンスを建設して一つの「解決」を模索します.

すなわち,既に国内にいる非合法移民に市民権を与える手順を示し,国境にはフェンスだけでなく,彼らの動機を変化させる手段を用いる.すなわち,移民の需要を予測して十分な移民受入枠を示し,非合法移民の雇用を処罰します.移民たちはコヨーテに頼って砂漠を越えるより,エアコンの効いたバスで働きに来るでしょう.各地の移民センターでは,彼らの就業を斡旋し,失業者には帰国用のバスがあります.政府が提案するような「ゲスト・ワーカー」というオーウェル的似非言語を使用しません.

Robert J. Samuelsonは,これが移民の<同化>に関する論争である,と考えます.国境警備や犯罪扱い,強制送還について強硬な主張を行う the "cop" school は,現実を無視した妄想派です.他方,the "guest worker" ゲストワーカー推進派は,労働力不足解消を合法化するすべての満足をめざす福音派です.問題は賃金格差であり,非合法移民は解決できません.Samuelsonは,非合法移民のもたらす社会的コストが甚大であると考え,選別派を支持します.

なぜこれが<同化>問題なのか? Samuelsonは,移民たちが時間をかけて同化することを期待します.社会的コストも賃金格差も,時間とともになくなるでしょう.しかし,毎年新しい移民がメキシコから流入するのを放置して,それでも<同化>を期待するほど「愚かな楽観論者」ではない,と言います.アウトサイダーをインサイダーに変えるには,新移民を抑制するべきだ,と.

保守派のCharles Krauthammerは選別政策を支持し,EDUARDO PORTERは移民と賃金との関係についての論争を紹介します.


LAT April 14, 2006

Down a dangerous road

By David Hirst

NYT April 16, 2006

In Iraqi Divide, Echoes of Bosnia for U.S. Troops

By JEFFREY GETTLEMAN

LAT April 17, 2006

Haunted by Hussein, humbled by events

By Robert D. Kaplan

FT April 18 2006

It is time to plan for an American withdrawal from Iraq

By Zbigniew Brzezinski

BG April 18, 2006

Robbery, not reconstruction, in Iraq

By Derrick Z. Jackson

(コメント) イラクの状態は,ベイルートやボスニアに比較されるようになりました.内戦は,誰が戦闘員か,何が目的か,前線がどこか,・・・明確な宣戦布告もない戦争状態です.ラムズフェルドは「内戦ではない」と言います.前イラク首相のアラウィは言います.「毎日,60人が殺害されても内戦ではないと言うなら,一体,何が内戦なのか?」

ボスニアで平和維持に当ったColonel Donahoeは,イラクでもその頃と同じような声を聞くようになった,と言います.スンニー派の支配的な村に配属されたシーア派の警察隊長は,「ここの人々はみんな邪悪だ.子供も含めてだ.」と言います.宗派間の殺戮が増えて,アメリカ軍の役割は変化しました.しかも,反政府軍は活動を続けています.

Robert D. Kaplanは,今も,イラク侵攻の正当性を信じています.何度もイラクを訪れた,実際二件検した事実に基づいた支持であったから,と.

カーター政権の安全保障アドヴァイザーであったZbigniew Brzezinskiは,アメリカ軍の撤退を支持します.それは単にアメリカ軍が引き上げるだけではないのです.必要な手順とは,1.イラクからの撤退要請,2.イラクとアメリカによる撤退時期の決定,3.周辺関係国との安全保障会議,4.経済復興支援諸国の会議,です.

イラクの破滅から,チェイニー副大統領の関わるHalliburton社は莫大な利益を得てきました.アメリカ政府は,最初に爆撃し,次は復興のために融資して,その利益はすべて軍事サービス・公共工事の複合企業に入る,とDerrick Z. Jacksonは批判します.しかもWolfowitzは,当時のEric Shinsekiが求めた軍の補充を無視して,混乱を深めました.


David Ignatius Replace Rumsfeld WP Friday, April 14, 2006; A17

Andrew J. Bacevich Generals versus Rumsfeld LAT April 15, 2006

DAVID BROOKS The Good Fight, Done Badly NYT April 16, 2006

Richard Holbrooke Behind the Military Revolt WP Sunday, April 16, 2006; B07

Bruce Kuklick Who controls how America wages war? FT April 17 2006

Growing calls for Rumsfeld's dismissal FT April 17 2006

Melvin R. Laird and Robert E. Pursley Why Are They Speaking Up Now? WP Wednesday, April 19, 2006; A17

(コメント) ラムズフェルド国防長官に対する軍人たちからの批判が続いています.ラムズフェルドが辞任して,民主党のリーバーマンや共和党のマッケインがペンタゴンを指揮すれば,イラクの事態収拾だけでなく,安全保障政策の全体が見直せるでしょう.

DAVID BROOKSは,ラムズフェルドを「組織型の人間」として描いています.Richard Holbrookeは,トルーマンがマッカーサーを更迭した例と比較しています.むしろ将軍たちの反対は遅すぎた,と.また,Bruce Kuklickは,ディーン・アチソンとジョージ・ケナンの役割と比較します.


The Guardian Saturday April 15, 2006

Don't wait for a crisis

Linda Bellos

The Guardian Tuesday April 18, 2006

Confronting empty hatred

(コメント) ブリックストンの人種暴動25周年を記念した論説です.Linda Bellosは,暴力は結果をもたらさない,と暴動に反対し,法律による黒人の社会進出を支持してきました.しかし,他方で,政府は暴動が起きたときした対策を打ち出さず,しかも危機が過ぎれば,それも放棄される,と憤慨します.暴徒たちのほうが正しかったのか?

イギリスの地方政治からロンドンや国政選挙にまで,BNP(British National party)の影響が広がっていることを心配する記事もあります.かつては不満を表現するためにBNPに投票した人の多くが,その行為を恥じていたけれど,今は違います.BNPは人種差別を表面に出さず,ポピュリスト的なデマを,貧しい労働者たちに向けて効果的に宣伝しています.もちろん,既存の政党が魅力的な選択肢をもっと掲げて,有権者の投票意欲を勝ち取るべきです.


Dianne Feinstein Confronting Iran LAT April 15, 2006

Recipe for a Perfect Crisis NYT April 15, 2006

RICHARD CLARKE and STEVEN SIMON Bombs That Would Backfire NYT April 16, 2006

MICHAEL LEVI Iran's Sitting Duck NYT April 18, 2006

THOMAS L. FRIEDMAN Iraq II or a Nuclear Iran? NYT April 19, 2006

Matthew Yglesias Don’t Do It The American Prospect 04.19.06

Timothy Garton Ash The tragedy that followed Hillary Clinton's bombing of Iran in 2009 The Guardian Thursday April 20, 2006

(コメント) イランをどうするのか? ゼミ生たちに「北朝鮮問題をどうするべきか?」と議論させたところ,金正日を暗殺すればよい,という主張がもっぱら話し合われて閉口しました.暗殺や戦争,暴力は最後の選択肢にすべきことを,彼らは知らないのです.

カリフォルニアの上院議員Dianne Feinsteinは,ブッシュ政権が示した先制攻撃原則について,@根拠となる情報が正しいか? A攻撃の結果はより安定した,安全な世界になるのか? B攻撃は,その他の問題でも,多角的な外交努力を損なうものではないか? と問います.イランへの核攻撃計画は,それに答えません.

イランにはウラン鉱山があり,その製造技術も入手可能であるから,イラン政府が核兵器を製造しないとしたら,彼らがそう説得されて合意した場合しかありえない,とNYTは考えます.この上,イランと戦争を起こすことを,RICHARD CLARKE and STEVEN SIMONもアメリカの国益を大きく損なう,と考えます.イランに対してアメリカの国家安全保障会議で1990年代半ばにも同様の議論がありました.アメリカとイランが互いに敵対工作をエスカレートさせ,クリントン政権は軍事行動も検討しましたが,結局,諦めます.その結果がアメリカに有利なものと確信できなかったからです.

たとえば,イランはどのように敵対行為をエスカレートさせるでしょうか? 1.ペルシャ湾の石油関連施設やタンカーを攻撃して,石油価格を90ドル以上に高騰させる.2.テロ組織を使ってアメリカの海外施設や国内にも攻撃を仕掛ける.3.イラクの事態を悪化させて利用する.・・・ブッシュ政権はこうした脅威に対して,政権転覆を図る決定的な軍事行動を計画するかもしれません.

しかし,どうやってその後のイラン政府を,アメリカの利益と一致するような行動に導くのか? 誰も答えられないのは,この問題です.

Natanzの地下核施設を破壊するには核攻撃しかない.・・・その結論は間違いです.アメリカの軍事専門家は,核の使用に三つの条件を考えています.@位置が不明確でピン・ポイントに爆撃できない.A深度が通常兵器の攻撃を無効にしている.B速やかな脅威の除去を必要とする.これらはいずれもイランに当てはまらない,とMICHAEL LEVIは考えます.しかも核の使用はタブーを除去し,世界への核の拡散を助長します.

イランとも戦争するより,私はむしろ核を保有したイランと生きたい,とTHOMAS L. FRIEDMANは主張します.その理由は,ブッシュ政権がイラクを軍事侵攻した後,どれほどひどい酔っ払い運転を示したか(しかも誰も処罰しない),を見たからです.

2009年の3月,アメリカはヒラリー・クリントン大統領の下でイランの核施設を爆撃します.激しい批判にもかかわらず核施設への空爆を決意したヒラリー・クリントンを,世界改善委員会のパトリック・スミス博士は支持します.「他に選択肢はないのだ.」 ・・・イラン共和国はその報復を決意し,200957日,テルアビブ,ロンドン,ニューヨークで大規模な自爆テロを決行,同時に,アフガニスタンとイラクに残っていた西側の軍隊も撃滅します.

これがTimothy Garton Ashの描く,一つのシナリオです.


FT April 18 2006

Do not rush to write off national currencies

By Benjamin Cohen

(コメント) UCSBで私がお世話になったベンジャミン・コーエン博士の論説です.

コーエンの論述はいつも明快です.世界の市場が拡大するにつれて,規模の経済が作用するから,次第に,小さな国はどくじの貨幣を持つ意味がなくなるだろう.通貨危機の繰り返される世界で,そんな予想を経済学者や金融関係者たちはしました.世界にはいくつ貨幣が残ればよいか? P.クルーグマンは2030,R.マンデルは二つか三つ,と考えます.

しかし,とコーエンは反論します.それでは貨幣の需要面だけで,供給面を考えていない,と.貨幣を供給する国家には,独自通貨を維持する他の理由があるのです.マクロ経済管理の手段,財政資源の調達,他国による経済介入の阻止,そして国民統合の象徴でもあります.これほど重要な手段を,国家は容易に手放しません.

政府には,独自通貨を放棄する以外にも,規模の経済を利用する他の方法がある,と言います.たとえば,ドル化しなくても,ドルに為替レートを固定してカレンシー・ボードを導入することです.アメリカの金融政策と金融市場を借りたまま,独自通貨を維持できます.あるいはユーロに加盟しなくても,より限定した通貨間協力に合意することです.

こうした決定は,主権国家が行うものですから,その「政治的意志」が問題です.多くの国で通貨的な主権を放棄する意志はないから,将来の世界でも,この混乱した通貨秩序が維持されるだろう,というのがコーエンの予想です.


FT April 19 2006

The world should prepare for a Nato-style oil alliance

By James Pinkerton

(コメント) エネルギー供給に関して,IAEAよりも,一層,集権的な消費国のカルテルを組織するべきだ,とレーガン政権とブッシュ(父)政権で政策スタッフを務めたJames Pinkertonは提言します.実際,自由市場派の理想に反して,エネルギー供給は余りにも外部性や安全保障を理由とした政治的介入が多く,しかも,生産国と消費国の双方で政治的な独占が強まっています.むしろアメリカが中心となってNATO型の消費国同盟を結成することを歓迎する国は多い,と考えます.


FT April 19 2006

IMF calls for dollar depreciation

By Krishna Guha and Scheherazade Daneshkhu

FT April 19 2006

How the fund can regain global legitimacy

By Jeffrey Sachs

The Japan Times: Wednesday, April 19, 2006

Time to consider pumping money into infrastructure

By KENNETH ROGOFF

IHT WEDNESDAY, APRIL 19, 2006

What the IMF can do

By Rodrigo de Rato International Herald Tribune

FT April 20 2006

Exchange rates, fair play and the ‘grand bargain’

By Morris Goldstein

(コメント) IMFは,為替レートの調整を円滑に行い,不均衡の調整にふさわしい政策を監視することで,世界経済の運営に重要な役割を果たせます.その中心にあるのは,年2回発行されるWorld Economic Outlookです.日本の景気回復を確信し,中国の成長も続くが,ユーロ圏の動向には慎重です.ドルの為替レートが調整されるべきだ,と明確に言及しました.石油価格に注目しています.

Jeffrey Sachsは,IMF改革案を検討します.すでに提案されているアジア諸国の分担金増額(それはヨーロッパの分担額を相対的に減らすものとする)に加えて,IMFは新しい時代の要請に応えなければなりません.すなわち,1.アメリカ中心の戦後の世界金融モデルから,中国やインドなど,地域の大国を重視したモデルに移行する.2.アジアの台頭が,アメリカやヨーロッパなど,旧工業地帯の保護主義を強め,通過・金融の安定性を損なう.3.金融危機はより世界的で複雑なものになるが,それを防ぎ,危機を処理する制度や合意されたルールはない.4.世界の通貨が減少し,ドルやユーロに固定した通貨が増える.5.エコロジカルなショックがマクロの安定性を脅かす.

こうした問題に対処するには,ドル中心の為替レートを管理するIMFではなく,アメリカが自国の短期金利や通商政策の観点から世界の金融事情に介入する余地を残してはいけない,とSachsは考えます.アジアの発言権はもっと増大し,貧しい諸国の必要も代表しなければなりません.

KENNETH ROGOFFは,通貨危機やインフレを恐れて,緊縮財政とドルの外貨準備を積み増してきた,新興国の政策を転換するよう求めています.

IMFのRodrigo de Rato専務理事もIHTに書いています.(世界の金融事情に詳しい彼らが,相談して,効果を高めるため同時に掲載した,というのは当然ありそうです.)

今もIMFの中心課題である為替レートに関しては,Morris Goldsteinが意見を書いています.アジア諸通貨の増価とアメリカ・ドルの減価が望ましい,というのは,単に国際収支の不均衡を調整するというだけでなく,米中摩擦に示されるような,グローバリゼーションと保護主義(経済的統合と政治的独立,とも言えるでしょう)との妥協を促すためにも重要である,と.新興諸国が世界の貿易・金融システムに統合化していく過程で,豊かな国はその市場を開放し,成長する国はその貯蓄を開放することを,Goldsteinthe win-win “grand bargain” と呼びます.そのためには,双方が新しい「ゲームのルール」に合意することです.

しかし,IMF・世銀総会の「見せ掛けだけ」の改革宣言にGoldsteinは不満です.IMFが世界の判定人(アンパイアー)として,不適切な為替レート政策を批判し,金融システムにとって重要な経済圏が逸脱したマクロ経済政策を取っていることについて「容赦なく真実を告げる」という,新しいスタートを切るところまで進んでほしい,と願っています.

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The Economist, April 8th 2005

Current-account deficits: Still waiting for the big one

China: The meter is ticking

Emerging-market debt: Stylish haircut

(コメント) The Economistはタイの政変を支持せず,ベルルスコーニの退陣を喜んでいます.しかし,その記事はここに取り上げません.

アイスランドやニュージーランドが経常収支の赤字で通貨価値の下落を招くとしても問題ないけれど,次第に,もっと大きな赤字に関心が向かうはずです.次に,アメリカのドルが下落するというリスクです.他方,中国経済の過熱は収まったのでしょうか? タクシー運転手たちのストライキが怖くて,ガソリン価格を引き上げられない,というようでは,経済運営にも独特な介入と補助が必要なのでしょう.

アルゼンチンが,昨年,800億ドルの対外債務を3分の2も切り捨てたばかりなのに,もう投資家たちは不安よりも期待を語り始めている,という記事があります.アルゼンチンが切り替えた新しい債券は,旧債務を切り捨てただけでなく,将来の高成長に対して投資家に一定の追加利回りを保証しています.アルゼンチン経済がその基準を超えて,しかもペソの増価が加わり,投資家たちは追加に12億ドルを得た,というわけです.


Charlemagne: Stability v flexibility

(コメント) EMUの経済モデルに関する疑問です.通貨を統一する際に,政治家たちは財政赤字の規律ばかりを重視しました.しかし,改革を進めるには,経済に弾力性を取り戻すことが必要です.それは労働市場の改革や市場競争の促進,企業の買収や株式市場の活性化,などとして議論されています.

財政赤字と硬直化した経済の両方に苦しんでいたヨーロッパは,財政赤字の削減,もしくは安定性ばかりを重視して,成長率を落とし,それゆえ弾力化に失敗してしまった,とこの論説は批判しています.それは,労働市場が非常に弾力的でありながら,財政赤字を無視して減税ばかりに走るアメリカ・モデルと対照的です.安定性と弾力性.二つの目標は関連しており,EMUの設計は間違っていた,と.