IPEの果樹園2006

今週のReview

4/17-4/22

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :倦怠の時代The Economist「告別の辞」

安全保障 :イラクイランへの核攻撃

貿易・投資 :WTO米中摩擦

通貨・金融 :IMF,人民元

世界統治 :移民政策

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, CSMChristian Science Monitor


YaleGlobal, 4 April 2006

Don't Give Up on WTO, Fix It

Richard G. Lipsey

FT April 6 2006

Doha in the doldrums

(コメント) WTOは,世界中の反グローバリゼーション社会運動が標的にして,その活動を激しく非難しています.しかしRichard G. Lipseyは,「WTOが裕福な諸国の政治的な道具でしかなく,WTOが無い方が貧しい諸国にとって良い」という主張に反対です.

確かに大きな市場を持つ発達した工業諸国は,自分たちにとって利益が大きい工業製品に関する貿易自由化を優先し,貧しい諸国に求めてきました.他方,貧しい諸国が輸出できる農産物市場については自由化しません.GATTからWTOに変わって,より主体的に世界の貿易自由化を担うようになったWTOは,農産物市場の自由化にも取り組んでいます.カンクンの閣僚会議では,発展途上諸国がG22を結成し,欧米の工業諸国が農産物補助金削減などを要求し,工業諸国がそれを拒んだことにより決裂しました.すなわち,WTOは政治交渉の場を貧しい諸国にも提供しており,単に裕福な国の政治的道具ではないわけです.もしWTOが無くなれば,貧しい諸国が発言する場は完全に失われます.

WTOは環境保護や人権を無視している,と批判されます.しかし,それは豊かな国の環境保護団体や人権擁護団体,政治家が主張しており,逆に,貧しい諸国は偽装された保護主義であるという疑念を持っています.WTOの意思決定や紛争処理メカニズムは上手く機能していません.それらは改善されるべきですが,放棄してはならない,と主張します.

世界は新しい生産ネットワークと緊密な貿易関係によって経済を動かす時代に入っています.消費者たちは,世界中をめぐる生産システムのもたらした成果については満悦するでしょう.だから,生産現場でラッダイト運動を起こしても自分たちを傷つけるだけだ,とLipsey警告します.

たとえば,誰がWTOを放棄せよ,と脅しているのでしょうか? FTの記事が示すように,たとえばBill Thomasです.下院の委員会や共和党議員団を率い,ホワイトハウスとも連携してきた有力政治家であるBill Thomasが,WTOによる多角的な自由貿易交渉など諦めて,二国間の協定を重視せよ,と主張しています.それは,対中貿易赤字や,アメリカ企業への外国資本による買収,港湾の安全保障問題,など,アメリカ政治にくすぶる不満も表現しています.

それはEUの保護主義とも共鳴し始め,弱小国は主要貿易相手国との取引を維持することに奔走し始めます.WTOの原則は見失われ,さまざまな政治目的が混じった弱肉強食の世界に変わり,「ジャングルの法則」が支配するでしょう.ブッシュ政権が軍事力で放逐すると宣言した独裁政治や戦争が,その結果,各地で生じます.世界の繁栄を守るために,政府やビジネス界が発言し,行動するようにFTは求めています.

NYT April 6, 2006

Stop: Don't Test Those Cows!

(コメント) 先月末,アメリカ,ケンタッキーの牛肉業者Creekstone Farmsがアメリカ農務省を裁判所に訴えました.自主的に全頭検査するのを不当に禁じられた,というわけです.法律が求める以上の安全性を示す個別企業の努力を禁止することは不当です.そして,統計的な意味で十分に安全だ,要するに,1%でも安全性を確保できる,とか,幼年期の牛では判定できない,という主張を,全頭検査の反対理由として挙げる農務省には同意できない,とNYTも断言します.

もし全頭検査で多くの牛が狂牛病であると分かったらアメリカの食肉市場が混乱する,というのが本当の理由でしょう.それこそ問題であり,不安を解消しない姿勢です.

・・・各国は,WTOによる自由化よりも,アメリカとの二国間貿易協定を望むでしょうか?


James Jay Carafano Sensible Proposals for Immigration Enforcement WP Thursday, April 6, 2006; 12:00 AM

Alexandra Starr U.S. border arguments wake the neighbors LAT April 7, 2006

June Kronholz Businesses Make a Push for High-Skilled Foreign Workers The Wall Street Journal, 7 April 2006

Tamar Jacoby A tough border bill, with a heart LAT April 8, 2006

NICHOLAS D. KRISTOF Compassion That Hurts NYT April 9, 2006

STEVEN CLEMONS and MICHAEL LIND How to Lose the Brain Race NYT April 10, 2006

MARIA NEWMAN Immigration Advocates Rally Around U.S. NYT April 10, 2006

LIA MILLER To Marshal Immigrant Forces, Start at Ethnic Radio Stations NYT April 10, 2006

Juan Williams A Hispanic Civil Rights Movement WP Monday, April 10, 2006; A17

Eugene Robinson Can You Say, 'Bienvenidos'? WP Tuesday, April 11, 2006; A21

John D. Gartner A Nation Built on Immigrant Genes WP Tuesday, April 11, 2006; A21

Derrick Z. Jackson Undocumented workers contribute plenty BG April 12, 2006

Max Boot Fighting for citizenship LAT April 12, 2006

Harold Meyerson Out Of the Shadows WP Wednesday, April 12, 2006; A17

(コメント) 移民政策をめぐる論争は続いています.イデオロギーの戦い,政治家・官僚たちの縄張り争い,特殊利益集団の争い,ハイテク・エンジニアなど,移民内部の差異・選別,移民社会の政治家,投票行動,移民集団間の争い,などが問題を複雑にします.たとえばJames Jay Carafanoは,移民労働者を見つけるために莫大な電子政府を構築する政府投資を批判します.

Alexandra Starrは書きます.「アメリカ人だけが投票するわけではない.エクアドル,メキシコ,ニカラグア,ペルーの大統領も今年選出された.・・・アメリカの非合法移民の圧倒的多数がラテンアメリカ出身であり,彼らの送金は各国経済の浮沈を決めている.」 ところがアメリカとラテンアメリカとの関係は冷戦以来の最悪期に入っており,アメリカとの自由貿易協定を推進した大統領たちは,たとえ援助を受けても不人気です.さらに,国境に壁を築く,という論争が深刻なダメージを与えます.

June Kronholz は,論争の関心を,非合法移民の多くをなす未熟練労働者ではなく,科学社やエンジニア,看護・介護者,優秀な学生など,アメリカ産業の発展を支える移民たちに向けます.移民論争はこの二つを区別しなければならない,と.産業界は技術者への一時雇用ビザが余りに少ない,と不平を述べています.NICHOLAS D. KRISTOFも未熟練労働者の一時雇用制度拡大に反対します.それはアメリカの貧しい労働者をさらに苦しめるからです.

非合法移民の子供たちから教育費用を追加で徴収することは,アメリカの教育機関から優れた才能を奪うことになるでしょうか? また,低賃金労働者に依拠した農場や衣服工場を破壊するべきでしょうか? 誰がそれを望み,誰がそれに反対するのか? 移民の効果や利益,コストをどのように測るべきか?

大規模な移民法改正に反対するデモに参加した人たちは,「私たちは犯罪者ではない!」「われわれはアメリカの切り離せない一部である!」「私たちもニューヨーカーだ!」「アメリカン・ドリームを信じている!」・・・と訴えます.黒人たちの人権運動から引き継いだスローガンも並びます.あるいは,アメリカとラテンアメリカの経済的・文化的な統合をめざす者もいます.エスニック・コミュニティーが育ち,エスニック・コミュニケーションが発達します.スペイン語のラジオ番組によってデモ参加者は増えた,と言われます.いずれにせよ,中間選挙前の議員たちはまじめに受け取ったでしょう.

Eugene Robinsonは書きます.「白いアメリカ人も,黒いアメリカ人も,この国を茶色のアメリカ人と分かち合うこと,本当の意味で分かち合うことを知るだろう.情勢は変わったのだ.」 これまでの合意の基礎は崩れました.今までは非合法として影に生きていた者たちが,抗議の声を上げました.ラティーノが有力な社会集団として登場したのです.彼らの発言を許し,彼らの参加を求めるべきです.アメリカが分裂しないように.移民論争の核心は経済学ではなく,文化であり,不安・恐怖の問題です.

John D. Gartnerは,19世紀のスコットランド移民として数ペニーで働く工場労働者から始め,アメリカ鉄鋼王にまでなったAndrew Carnegieの言葉を引きます.「アメリカに来る移民たちこそ,黄金の奔流である.それは世界中の金鉱山よりも大きな富だ」と.移民たちの多くは有能で,エネルギーに満ち,野心的である.そうでなければならない.老人や見捨てられた者,怠け者,満ちたりた者が,荒れ狂う大西洋を越えて来るはずがない!

Max Bootは,イギリス帝国以来,イラク派兵にも従ったグルカ兵に言及します.ネパールの一部族,グルカ人がイギリスの軍隊に従ったのは1815年からです.翻って,アメリカ市民となる資格を問題にする移民政策論争において,非合法移民にはその資格がない,と言えるだろうか? アメリカ陸軍は,イラクにおける戦闘によって人員を失い続けており,同時に,国内の新兵募集が要員を満たせない.それゆえ,世界中に展開するアメリカ軍を補充するのに,グルカ兵のように,移民を採用することを主張します.

WP Friday, April 7, 2006; A19

First a Wall -- Then Amnesty

By Charles Krauthammer

(コメント) まともな移民政策は,@国境の秩序を回復し,A国内の非合法移民に対する法的な扱いを明確に示さねばなりません.非合法移民が苦しむのは誰も好まないが,単純に合法化することは,一層多くの非合法移民を招きかねない,と心配します.だから壁が必要だ,と.

まず壁を築くことで秩序を回復し,たとえ非合法移民に市民権を与えるとしても,今後は受け入れを厳しく管理する,という姿勢を示すことができる.国境に壁・・・! その醜悪さに民主的な国民であれば嫌悪感を示すでしょう.しかし,現実に対する解決策を正しく同時に行いたいのであれば,妥協しなければなりません.そしてアメリカは非合法移民を迎え入れた,一つの国,になれるのです.

YaleGlobal, 11 April 2006

Europe’s Next Immigration Crisis

Alkman Granitsas

(コメント) 古いヨーロッパから新しいヨーロッパへ,移民排斥の熱病が広まりつつあります.失業した若者たちがネオナチなどの人種差別グループに集まり,移民の住宅や施設を襲撃・放火する事件が1990年代に,ドイツの再統合と失業,移民と重なって多く起きました.それは次第に古いヨーロッパ各地に広まり,今やギリシャ,ポーランド,ロシアで,同様の事件が起きています.

移民は世界的に増加しており,特に,成長率の高いヨーロッパ周辺部の都市に集まります.たとえばギリシャには移民流入が続き,人口の10%,アテネ中心部では5人に一人が,外国生まれです.その多くは隣国アルバニアからの移民ですが,最近は,ますます西アフリカ,中国,パキスタン,アラブ圏からの移民も増えています.イタリアやスペインでも同様です.

天気予報ではありませんが,移民排斥・外国人嫌悪の政治キャンペーンはヨーロッパ全体に広がる模様です.


FT April 7 2006

China trade frictions

(コメント) これもワシントンがいつもやっている脅しと泣き落とし(good cop/bad cop routine)のパターンです.もうすぐワシントンを訪問する胡Hu Jintao主席の関心が対米関係の良好さを示すことにあるため,アメリカの政治家には貿易摩擦や通貨摩擦について政治的圧力をかける機会と見えるわけです.アメリカ議会の中間選挙も迫っています.とはいえ,両者とも破壊的な貿易戦争は望んでいません.

FTは,アメリカが検討するべき三つの方策を指摘します.1.中国が摩擦解消に動かなければ,(27.5%の関税よりはましな)報復的措置を取る.たとえば,中国に対する国際機関の融資や支援に反対する.中国がIMF分担金を増やすことに反対する.2.中国を訪問したブッシュ氏が,人民元切上げは中国自身の利益である,と説得する.なぜなら,中国の国内消費を促し,都市人口の社会保障制度を整備するために役立つから.3.中国産業の輸出競争力を損なうものではない,と主張する.そして,アメリカの貿易赤字を減らすためには,中国が日本や韓国と協力しなければならないだろう,と.

IHT FRIDAY, APRIL 7, 2006

Labor need haunts China

Philip Bowring

NYT April 8, 2006

Trading Up in China

FT April 12 2006

Book review: Washington should try to woo Hu

By Edward Luce

FT April 13 2006

Greenspan's advice

The Guardian Thursday April 13, 2006

(コメント) 他方,中国の一部では「労働力不足」が議論されているようです.問題となっているのは,地方から出てきて寮に住み,低賃金で何十時間も働く労働者のことです.こうした労働者が足りなくなるのは,賃金上昇や教育費用,ブランド使用料などの高騰と同じことです.それゆえ,賃金の不払いに対する不満や争議も頻発している,と言います.他方,一人っ子政策の結果,若年労働者の供給が減少し,工場はより遠方からの出稼ぎを集めなければなりません.

興味深いことに,ここでもヨーロッパやアメリカと同じように,出稼ぎ労働者の定着を促す社会的コストに対して,住民たちからの反発が強まっています.すなわち,「労働力不足」に直面した工場は,賃金を上げるか,労働者が豊富な(しかし輸送が不便で社会サービスの劣る)内陸部に移るか,あるいは外国に移ることを検討します.

賃金の引上げは中国の経済発展に必要です.それは人民元切上げと同様に,より長期的な競争力の維持に関心を向けるでしょう.政府は都市への移住を認めるべきですし,社会資本を整備しなければなりません.巨額の投資と低賃金に依拠した輸出部門の拡大よりも,国内市場に依拠するほうが良いでしょう.また,輸入が増えれば対外不均衡も解消します.ただし,地方との較差はさらに広がります.

いよいよ中国も,繊維・衣服部門を内陸部や,もっと貧しい外国(カンボジア,バングラデシュ,マダガスカル,・・・)に移転する順番がきた,とNYTも考えます.そして書きます.「こうしたことすべては,アメリカ議会が中国からの商品輸入を阻止しようと対応を重ねることが如何に間違っているかを示している.中国が豊かになれば,その他の世界も豊かになる.貧しい国は中国を去る仕事を得るし,豊かな国の製品を買えるほど豊かになった中国人が増えるから.

Edward Luceは,IIEとthe Center for Strategic and International Studies(ともにワシントンの有力シンクタンク)が共同で出した新しい研究書 “CHINA ? THE BALANCE SHEET” を紹介しています.もしアメリカ人がグローバリゼーションについて不安を持つとしたら,それは「中国」です.ウォルマートをはじめ,アメリカ中のお店には「中国製」の商品が並びます.他方,完全雇用に近いのに,アメリカ人の多くは失業を心配しています.

2000億ドルを超える中国の対米貿易黒字とは何を意味するのか? 1兆ドルを超える外貨準備で為替レートに介入することが何を意味するのか? アメリカ人は不安なのです.しかし,たとえ27.5%まで関税を引き上げても,議会は貿易赤字を減らせ無いだろう,と研究は指摘します.中国は最終組立工場に過ぎず,日本,韓国,台湾などが中国と協調して20%の対ドル切り上げをしなければアメリカの貿易赤字を10%減らすに至らない,と考えます.

より根本的な問題は,アメリカの貯蓄率がGDPの1%しかなく,中国は40%である,ということです.アメリカは生産する以上に消費し,中国は生産したものの一部しか消費しない.中国がもっと消費してくれなければ,アメリカだけで赤字を解消するためには厳しい不況を必要とします.双方が為替レートやマクロ政策を強調して調整した方が良い,と研究は主張します.皮肉なことに,アメリカ国内とは逆に,共和党が中国の社会保障制度充実や労働者の賃金上昇を強く要求することこそ対策として有効なわけです.

中国がその外貨準備を大幅に減らしても,アメリカの金利はわずかしか上昇しない,と予測します.また,1980年代に日本の貿易黒字に対して「恐慌」に陥ったアメリカ議会の経験も振り返って,保護主義的な介入が無駄なことを示しています.中国と敵対するより,協調することがアメリカの利益なのです.そして,雇用不安を高めているのは,アメリカで高校中退者が多すぎることが主な原因です.

アメリカが対外不均衡を調整する手段として,1980年代のプラザ合意のように,アジア諸国との為替レートを調整できると考えることは,実現の見込みがなく,しかも間違っている,とグリーンスパンは警告しました.そして,政策協調よりも,市場が機能することを受け入れるほうが良い,と.

たとえば中国の赤字だけが問題ではないのです.為替レートの変動を許容し,介入をやめて外貨準備を減らせば,アジア諸通貨はもっと増価します.それは生産を国内市場向けに再編し,他方,アメリカでは逆に国内消費より輸出を促すのです.それこそが,世界の必要としている調整策です.

The Guardian Thursday April 13, 2006

Development in defiance of the Washington consensus

Joseph Stiglitz

(コメント) Joseph Stiglitzは中国の成長を絶賛します.史上空前の成長実績により,貧困を減らした,と.それには市場を機能させるために,さまざまな問題をプラグマチックに解決する政府の姿勢が重要でした.ワシントン・コンセンサスを採用して,市場が成長をもたらす,という説教を受け容れた多くの発展途上国が失敗したことに比べて,まったく異なる姿勢であった,と.


NYT April 7, 2006

Condi and Rummy

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) イラク戦争をめぐってライスとラムズフェルドの意見が対立するのは,皮肉で,おかしく,醜いことです.ライスは,イラクでのアメリカは戦略的に正しかったが,戦術として多くの("thousands")間違いを犯した,と述べました.これに対してラムズフェルドは反発し,逆襲したわけです.戦争では状況が変化していくのだから,戦略的に正しければ,兵士が自分の頭で考えて,戦術を練り直すのが当然だ.そんなことも分からないのか! ・・・という具合に.

しかし,THOMAS L. FRIEDMANはライスを批判し,アメリカ政府は明らかに戦略を間違っていた,と述べます.フセイン政権崩壊後,アメリカは十分な兵士をイラクに送らず,権力の真空を生じてしまいました.そしてそれはラムズフェルドが決めたことです.イラクを統治することよりも,アメリカ軍の再編を安上がりに行うことがラムズフェルドの関心でした.ブッシュもライスもそれに従ったのです.そして,イラク人とアメリカ兵はその妄想の犠牲となりました.

アメリカが石油のために戦争した,という浅薄な非難をFRIEDMANは受け入れません.アメリカの目的は,それよりもはるかに狂気に近く,また,高貴なものでした.王族,植民地政府,独裁者が軍事力によって支配した土地で,水平的な対話を基に,社会契約を結ぼうとしたのです.アメリカ軍とアラブ社会との対話として始まり,それはシーア派,クルド人,スンニー派の対話になりました.彼らが社会契約を結べないなら,再び軍事的な独裁者が現れるしかない,と.

LAT April 7, 2006

Those ungrateful Iraqis!

Rosa Brooks

(コメント) ストロー英外相は不平を述べています.「アメリカは2000人以上,イギリスも100人以上がイラクで命を失った.・・・何十億ドルもアメリカは費やし,イギリスは何億ポンドもこの国に費やした.・・・私は,A氏か,B氏か,C氏か,誰かと話し合う権利があると思う.しかし,(この国を代表する者は)誰もいない!」 またライス国務長官は,アメリカがこれほど多額の投資をイラクの民主化に対して支払ったのに,まだ何の報酬も得ていない,と不満を示しています.

誰もアメリカやイギリスに攻めてくれと頼んだ覚えはない,と言われるだけです.たとえフセインの失脚を喜んだ人でも,イラク人が何万人も犠牲となったことは許せないはずです.連合軍は,戦後の平和や社会秩序を再建する計画も持たずに,イラクを叩き潰しただけです.今となっては,前国務長官のパウエルが忠告したという,「陶磁器ショップの法則」が良く分かるでしょう.お店で暴れたら,壊れた陶磁器はすべて自分が支払うこと.

しかも,ライスの言う「投資」を受け取ったのは,もっぱらラムズフェルドのペンタゴンでした.民主化に必要な行政,政党,さまざまな市民サービスは,そのごく一部を受け取っただけです.それでもストローやライスは,「払い戻し “refund” 」をイラク国民に請求するのか?

Francis Fukuyama Why shouldn't I change my mind? LAT April 9, 2006

Caleb Carr Let Them Have Their Civil War WP Sunday, April 9, 2006; B01

Robert Killebrew A Different Model for Iraq WP Sunday, April 9, 2006; B03

Zalmay Khalilzad and George W. Casey Jr. A path to success in Iraq LAT April 11, 2006

Richard Cohen Vietnam's Forgotten Lessons WP Tuesday, April 11, 2006; A21

(コメント) アメリカや国際社会は,イラクをどうするべきでしょうか?

ネオコンの一人としてイラク攻撃を支持したFrancis Fukuyamaは,その立場を転換してブッシュ政権を批判しましたが,そのことについて左右から非難されました.Caleb Carrは,アメリカ軍が内戦を止めることなどできない,と言います.内戦はその国が決めることだ,と.

Robert Killebrewは,イラクをベトナム戦争ではなく,朝鮮戦争によって考えるべきだ,と主張します.フセインの支配体制は,日本の植民地支配と同じく,軍事的に一掃され,権力の真空と外国の干渉,そして激しい内戦に向かいました.「バクダッドの若いイラク人が,いつか,ソウルの若い韓国人が私に言ったようなことを,言うだろう.」と夢想します.「国に帰ったら,退役された軍人お方に伝えてほしい.ここで行われた戦争であなた達がしてくれたことを,私たちは覚えている.決して忘れない.」 もちろん,復興後の韓国人は感謝の気持ちを込めて言ったわけですが.

イラクのアメリカ大使Zalmay Khalilzadと指揮官George W. Casey Jr.は,アメリカの関与と現時点の政治的目標を述べています.

ベトナム戦争の拡大を止めることができなかった経験を書いた退役軍人の著書"Dereliction of Duty"を取り上げて,Richard Cohenは,退役軍人たちによるラムズフェルド批判・辞任要求を紹介しています.


NYT April 7, 2006

The Indian Nuclear Deal

IHT THURSDAY, APRIL 13, 2006

American strategy and pre-emptive war

Henry A. Kissinger Tribune Media Services

(コメント) アメリカの安全保障政策については,先制攻撃原則,核不拡散条約の無視,が重要です.Henry A. Kissingerは,先制攻撃原則が軍事技術の発達により避けられないことを世界は認めつつある,と指摘します.しかし,それは最初の一歩に過ぎず,先制攻撃の定義や対象,条件を国際合意しなければなりません.

核不拡散も重要な原則でしたが,インドはこの体制に不満を持っていました.他方,アメリカはインドとの関係を強化したいと願いました.インドの政治的,経済的な重要性に鑑みて,これを支持する者ならニクソン訪中にたとえるでしょう.しかし,これによってアメリカは他国が核開発するのを阻止しにくくなりました.

アメリカが動けば国際秩序は変わります.しかし,新しい条件を反映する姿が定まりません.それをアメリカだけで決めることはできません.外交委員会でライス国務長官に向けられた質問とは,「インドは(アメリカにとって)どれほど重要か?」でした.これは間違いです.正しい質問をするべきでした.「地球的な核軍拡を防ぐことはどれほど重要か?」 と.


WP Friday, April 7, 2006; A19

A Vital Task for The IMF

By David Ignatius

FT April 11 2006

Refurbishing the Fund

(コメント) 正しい質問をすることは,常に,難しいわけです.アメリカの貿易赤字の何が問題か? もし資本流入が増えたからドル高が維持され,経常収支は赤字になる(そしてアメリカは証券を輸出する),というのであれば,何も問題ない? しかし,本当に知りたいのは,この不均衡は安定したものなのか? また,その長期的な帰結とは何か? です.

かつてIMFはこうした問題に明確な答えを持っていました.しかし,今,それが失われたままです.グローバリゼーションは,政府や中央銀行よりも,もっと自立した世界金融市場を生み出しました.もはやIMFが不均衡に融資し,赤字国や黒字国に政策変更を求める力はないわけです.引退するイングランド銀行総裁Mervyn Kingは講演で指摘しました.

第二次世界大戦後の英米間不均衡を解消したIMFの現代における無力さは,米中間不均衡に現れています.これは人民元がドルにペッグした,一種の「再建ブレトン・ウッズ体制」でしょうか? しかし為替レートの調整についても,マクロ政策の変更についても,IMFは無視されています.調整が遅れれば,結局,この体制も崩壊します.

こうして,KingSummers(前財務長官,ハーヴァード大学学長)は,IMFの再建・再強化を訴えます.アメリカは今も世界の指導的な大国であり,金融市場にハリケーンが襲う前に,IMFを再建しておくべきだ,とDavid Ignatiusは主張します

IMF改革について,Rodrigo Rato専務理事も提案しています.すなわち,IMFは急増する資本移動に対する有効な政策手段を必要としますし,経常収支不均衡と,特にアジアの新興市場が蓄積する外貨準備をの再分配を促す仕組みが必要です.

これに対するRatoの回答とは,1.多角的サーベイランスを強化する,2.健全な経済政策を取る国に対して「高度に保証された」融資枠を用意する,3.アジアの新興市場にIMF分担金を増枠して外貨準備を吸収し,彼らの発言力を拡大する.・・・政策変更や資本移動,新興市場の外貨準備を,再びIMFに結集できるのか? IMFは各国政府に訴え続けます.


Asia Times Online, Apr 8, 2006

What the US could learn from Thailand

By Shawn W Crispin

FT April 10 2006

The power that lies with the urban middle class

By Ian Buruma

(コメント) タイから見れば,タクシンとブッシュ政権は緊密な同盟,似たもの同士でした.アメリカはもはやタクシンを支持しません.利用できないと思えば,同盟者を切るのです.次のタイの指導者は,リベラルとは言えない,反民主的な,アメリカの関与に頼ることを拒むべきかもしれません.他方,FTはタクシンとイタリア首相Silvio Berlusconiとの類似性を主張します.企業グループを率いて,自由なメディアを弾圧し,法や王様の反対にも応じません.彼らは政治家というより,専制的な企業支配者であり,それゆえポピュリストでした.あるいは,シラクのフランス,韓国の民主化,中国の天安門とも比較します.


FT April 8 2006

Icy Sino-Japanese ties

The Guardian Saturday April 8, 2006

The truth about a special relationship: warmth can be riskier than distance

Mark Lawson

(コメント) 日本は中国との敵対姿勢に偏るべきではないし,アメリカとの二国間関係だけに頼るべきでもありません.アジアの,そして世界の秩序を左右する重要な二国間関係(あるいは三角関係)が不安定で,悪化し続けることをFTは心配します.

かつての最重要な二国間関係,英米関係(その政治指導者の文化やアクセント)における最近の衝突をMark Lawsonは考察します.同じ英語圏でも,この英米間の「特別な関係」を意味あるものにしたのは双方の指導者の個人的信頼関係であったようです.たとえば,アイゼンハワーはマクミランを信用していたからイギリスは早期に核兵器を保有したが,ジョンソンとウィルソンは互いを信用していなかったからイギリス兵は一人もベトナムで死ななかった.

何が教訓か? 二人の個人的な信頼関係に頼ることは,むしろ健全な距離を保つlことより,国民にとって苦しい負担を背負い込むかもしれない,と.


FT April 9 2006

World is witnessing the dawning of the age of ennui

By Adam Posen

私たちは4年にわたって世界の成長を実現し,経済的なショックを最小限に抑え,インフレ率は低く,安易な融資を行わなかった.また米中間を除いて,いずれの国も貿易や通貨の問題で紛糾していない.マクロ経済が好調であれば,こうしたことも問題にならない.

ところが,それにもかかわらず,この1年か2年における市民たちの反応は現職の政治指導者を追放することばかりである.カナダ,フィリピン,インド,そして,タイ,イタリアも続くだろう.失敗続きのポピュリスト政策を振り回す政権が,ボリビア,ヴェネズエラ,ベラルーシ,そして幾分かはポーランドでも支持されている.

なぜ好調な時代に,政府への広範な侮蔑が広がるのか? 財政政策や金融政策は好ましい効果を発揮してきたが,それは彼らの満足とは程遠い.経済学よりも政治学の問題だろうか? しかし,有権者は精神的な満足を訴える政党を支持していない.宗教政党は議席を失っている.ナショナリズム? 主権や自律の訴え? ・・・そうではないだろう.そんなもののために,経済的な価値を諦める有権者はいない.

個人的な不安が一般的な繁栄よりも重視されるからか? グローバリゼーションの反対派は,特に先進世界で,そう言ってきた.しかし発展途上の世界に住む労働者には,世界的な統合生産システム(つまり,アウトソーシング)に参加し,金融危機がなく,中国やインドの成長で一次産品価格が上昇し,金利が低いのは,不安ではなく安心である.

開発世界では,低熟練もしくは失業中の労働者がグローバリゼーションによる所得の不安をもっとも感じるはずだ.しかし,彼らが抗議活動や反対票を投じているのではない.グローバリゼーションの恩恵を受ける大学生たちがバリケードに集まっている.

そうではない.繁栄に対する政治的な侮蔑が意味するのは,この時代が「不安の時代」ではなく,「アンニュイ(倦怠)の時代」である,ということだ.テレビやインターネットのおかげで,貧困線を越えた民主主義の社会では,既に,仮想的に真実の富を味わってしまった.経済パフォーマンスに決して満足しない者や,政府の欠点を看過できない者は多いが,彼らはまた,大衆行動を信用することもない.

それゆえ,経済的繁栄の最大の脅威とは,受益者たちがその利益を十分に認めようとしないことなのだ.要するに,彼らは無味乾燥なテクノクラートの政策に飽きてしまった.1968年(パリ革命)世代の不満や「消耗」について,既にダニエル・ベルは民主的な大衆にとって「イデオロギーの時代は終焉した」と書いた.

残念なことに,低金利やマクロ経済の安定化はテレビ映り(!)が悪い.多分,IMFやその他の国際機関は「セイブ・ザ・チルドレン」キャンペーンからもっと学び,ブルジョアジーのためのボノを見つける必要がある.しかし結局,良いマクロ経済的成果をもたらす政策と,意識は高いが歓楽に飽きた有権者を動かす政治学との間には,ギャップがある.あのビル・クリントンでさえ,低金利と成長をもたらした経済政策と,アメリカ人の多数に2000年以後もその政策を維持する方へ投票することとを,結びつけることはできなかった.

このアンニュイの時代には,ささいな政策転換とは関係なく,選挙で政権が交代し続けるだろう.経済パフォーマンスでは選挙結果を予測できない.イデオロギーや精神的訴えがそれに代わるわけでもない.むしろ,汚職の暴露や,政治家の個人的人気の浮き沈みが,有権者の投票行動を左右する.そしてグローバリゼーションの時代には,その受益者たちが曖昧な不安に付け込まれて(政府を裏切り),グローバリゼーションがその犠牲となるのだ.


FT April 10 2006

Why America must be pragmatic with Putin

By Joseph Nye

(コメント) ロシアのプーチン政権に対する政策をめぐって,ここではチェイニー副大統領の強硬姿勢とライス国務長官の柔軟路線が対立しています.

ナイの答えは.ロシアは民主的ではないが,市民やジャーナリズムに自由な発言の余地がある.民主化を重視する余り,国際的なバランス・オブ・パワーが必要なことも忘れてはいけない.解決すべき問題にロシアと協力することも多い以上,強硬姿勢を取って孤立させるより,ソフト・パワーでプーチン支配下でも民主化を育てていくべきだ,と.


Wesley Clark and John Prendergast A US plan for Darfur BG April 10, 2006

Robert I. Rotberg Getting tough could save innocent lives BG April 10, 2006

Fiddling While Darfur Burns NYT April 13, 2006

(コメント) アフリカではスーダン西部のダルフールにおける住民弾圧・虐殺を止められません.国際介入のさまざまな方法が検討されています.ブッシュ政権は,イラクやイラン,北朝鮮とも違って,ダルフールへの軍事介入をどう見ているのか?


Stick to diplomacy FT April 10 2006

Stuart Jeffries Why dropping nukes may not be the best way for President Bush to 'save' Iran - or secure his place in history The Guardian Monday April 10, 2006

PAUL KRUGMAN Yes He Would NYT April 10, 2006

Seth G. Jones Striking Iran is an option, not inevitable CSM April 11, 2006 edition

Going nuclear The Guardian Tuesday April 11, 2006

A credible threat LAT April 11, 2006

Military Fantasies on Iran NYT April 11, 2006

David Ignatius An Iranian Missile Crisis? WP Wednesday, April 12, 2006; A17

Anatol Lieven How to Get Out of the Iran Trap WP Wednesday, April 12, 2006; 12:00 AM

Helena Cobban Work through the NPT to address concerns about Iranian nukes CSM April 13, 2006 edition

Pepe Escobar The war on Iran Asia Times Online, Apr 13, 2006

Iran's nuclear milestone FT April 13 2006

Mark Helprin After Diplomacy Fails WP Thursday, April 13, 2006; A21

Iran's challenge BG April 13, 2006

(コメント) イランの核兵器開発を阻止するためには,ブッシュ政権は核攻撃を検討している,というSeymour Hersh記事をthe New Yorker誌が載せました.FTはイラクの安定化とイランとの関係を結び付けて,外交的な改善を求めます.他方,イギリスが核攻撃計画に参加することはまずない,とStuart Jeffriesは喜びます.しかし,核施設への軍事攻撃はそれほど悪い案ではない,とも主張します.核攻撃が支持されない理由として,三つ挙げています.@国際的な支持,特にイスラム諸国からの支持を得られない.A民主化を促す体制転換という政治目標と一致しない,B核の使用による甚大なコストを無視している.またThe Guardianは,アメリカ政府がイスラエルの核武装を問題にせず,イランにだけ攻撃するとしたら,アラブ各国の核武装化を加速させる,と警告します.

NYTは,イラクでの失敗に学ぶことなく,今度はイランに対してまで,複雑な問題に単純な軍事的解決策があるかのように議論するブッシュ政権の愚かさを強く批判しています.またDavid Ignatiusは,「スローモーションのキューバ危機」と述べたGraham Allisonを引用し,その対立の本質を,どちらの側も戦争を望まないのに,戦争が起きる可能性を高めてしまう,と述べています.そして,ケネディーは攻撃を主張する強硬派に従わず,軍事顧問たちが示していない選択肢を見つけました.そして,米ソ核戦争を回避したのです.

キッシンジャーなら,先制攻撃だけでなく,核攻撃も,国際的に合意された許容範囲の中に取り込む努力を惜しまないように,と忠告するのかもしれません・・・!?

FT April 11 2006

Too soon to talk of attacks against Iran

By Richard Haass

(コメント) 多数の巡航ミサイルによってイランの核施設を攻撃しても,テロによる報復,石油市場や金融市場の混乱,イラン政府による開発の再開,核攻撃を行うことで世界中に(秘密の)核拡散を招く危険,などを考えれば,外交的な解決策の方が優れています.核処理の向上や技術を一定程度まで移転し,監視する方法や,安保理による制裁も考えられます.それが絶対に有効でないとしても,時間をかけてイラン国民を説得できます.もし核攻撃計画が意味を持つとしたら,この脅威を避けるために,他の主要国やイラン政府の姿勢を変える外交的な可能性と組み合わせる場合だ,とRichard Haassは考えます.


Niall Ferguson Globalization's second death? LAT April 10, 2006

RICHARD W. FISHER AND W. MICHAEL COX Globalizing Good Government NYT April 10, 2006

Madhuri Santanam Sondhi Challenges to democracy The Asian Age, 13 April 2006

Thomas Palley Could Globalization Fail? YaleGlobal, 13 April 2006

(コメント) Niall Fergusonは,グローバリゼーションにおけるアメリカの逆転が起これば,大恐慌や戦争も再現する,と考えます.アメリカ政府は高価で,しかも効果がない,壁やダムを築くより,アメリカの子供たちの勉学を支援し,真実を伝えることです.高校を中退せずに,十分な学業を経て職を得なさい,と.それこそがグローバリゼーションの政治的基盤となるわけです.

Foreign Policy magazine と 経営コンサルタント事務所AT Kearneyに協力して,ダラス連銀はグローバリゼーションと各国の政策や経済実績を比較しました.彼らの得た結果とは? 「グローバリゼーションを実現している国ほど,経済実績は良く,政府は成長と多くの雇用機会を提供できる.その反対ではない.」

グローバリゼーションの成否を左右するのは軍事的な脅威ではなく,それにふさわしい民主主義の仕組みと,世界化した金融市場の危機を回避する仕組みを見出せるかどうか,ではないか? そのシステムは繁栄をもたらしたが,余りにも不平等であったために,危機を解決する政治的な支持を得られませんでした.Madhuri Santanam Sondhiの論説とThomas Palleyの論説は,これらに関連しています.第一期グローバリゼーションの最後は,株価暴落,銀行閉鎖,大恐慌,第一次大戦,保護主義,ナチズム,でした.

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The Economist, April 1st 2005

The United States and Mexico: Sense, not Sensenbrenner

Immigration: Don’t fence us out

China’s exchange rate: Yuan step from the edge

China’s exchange rate: Gently towards the heavens

Japan and its past: Slave wages

Turkey’s wobble: A crescent that could also wane

(コメント) アメリカはメキシコからの移民と中国からの輸入品に政治的パニックを引き起こしたようです.しかし,かといって資本の流入を急激に止めたいわけではないのです.共和党は保守派の移民排斥イデオロギーと,産業界や農場の低賃金労働力需要とに分裂しています.非合法移民(とその協力者)への処罰を強調したSensenbrenner法案は,人民元の為替レート操作に対する中国への27.5%制裁関税を求めるSchumer=Graham法案と並んで,アメリカ議会のグローバリゼーション・パニックを示しています.

The Economistは,メキシコ移民を阻止する壁を築くより,その金を使ってアメリカとメキシコを結ぶフリーウェイを建設せよ,と主張します.メキシコ移民が多すぎるのではなく,経済統合によるメキシコ経済の改革と成長が遅すぎるのです.また,中国の人民元はドルに固定することをやめましたし,実際に変動しつつあるようです.むしろ,アメリカがドル安によって国内貯蓄を増やすなら,中国の為替レートも一層柔軟に増価するでしょう.他方,人民元に切上げを強要しても,アメリカが得ることなど無いのです.

ところで,めったに国際ニュースに登場しない日本とトルコが,なぜ載ったか,と言えば,日本は戦争中の強制労働に対する賠償を逃げているからであり,トルコはIMFを憤慨させた中央銀行総裁の更迭を行ったからでした.


Valedictory: A long goodbye

(コメント) The Economistを,並ぶもののない高級政治経済誌として,世界のパワー・エリートに普及させた編集者Bill Emmottが「告別の辞」を載せました.

エモットは,編集を手がけた13年間の世界を総括し,成長率やインフレ率,貧困の減少を挙げています.雑誌創設者James Wilsonと,それを引き継いだ娘婿であるWalter Bagehotの「自由貿易とあらゆる自由を支持する」基本的な姿勢を再確認し,賞賛します.

確かに不平等は強められ,各地の保護主義も目立ちますが,エモットは解決できると楽観します.むしろ困難な課題は,経済の自由化よりも,その政治的な基礎です.エモットはユーゴスラビア内戦に介入する時期について,自分たちの判断は間違いだった,と考えます.もっと早く介入するべきだった,と.その反省もあって,イラク戦争を決断したブッシュ氏を強く支持しました.エモットの立場は変わっていません.自由な貿易や経済取引を可能にする安全や民主的政治体制を支持し,軍事介入も辞さない姿勢をアメリカが持ち続けることは,グローバリゼーションの根底にある政治条件なのです.同時に,その後のイラク再建に失敗したブッシュ政権を強く批判し,アブグレイブ収容所やグァンタナモ基地における虐待・国際法違反を厳しく批判してきました.

「もし政治家たちが,孤立するコストよりも,経済開放を維持するコストのほうが大きい,と判断すれば,いくら世界の貧困を減らしても,グローバリゼーションは止まる.」とエモットは述べます.アメリカがイラクで失敗し,たとえば,中国と台湾が軍事衝突に及ぶなら,こうした転換が起きるかもしれません.アメリカは弱さを露呈し,大西洋の同盟関係が破綻するでしょう.

そんな終末論を信用できるか? という者に,彼は歴史を知るべきだ,と応えます.