IPEの果樹園2006
今週のReview
3/20-3/25
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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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安全保障 :イラク内戦の回避策
通貨・金融 :日銀の量的緩和策放棄
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, CSM:Christian Science Monitor
FT March 9 2006
America should look more often in its own backyard
By Juan Tokatlian(director of political science and international relations at Universidad de San Andres, Argentina)
アメリカとラテンアメリカの伝統的な関係から,アメリカは再びラテンアメリカに困惑している.陰謀とドグマが噴出する.底なしの不均等な権力バランスこそ,この関係の基本だ.それは外交的な無秩序をもたらしてきた.「欲求不満の超大国」シンドロームである.
それはよくこんな形で示される.ある国や地域の集まりを主要諸国が無視する.なぜなら「安全」であり,無害だから.または,文化的な偏見から,それらは重要でないとか,重要な資源がない,と.それゆえ,関心は間欠的でしかない.ラテンアメリカをアメリカは概念として否定しない.アメリカの敵ではなく,追随する仲間である.この低い評価は,官僚政治を,繰り返しかこのシナリオに引き戻す.つまり,たまたま新しい動きがあると,その地域は何か「変革される」という大きな期待を生む.しかし,失望が必ず続く.何度も繰り返された,同じ,大規模な,効果のない戦略が採用され,まったく同じ結果となる.何も達成されず,何も変わらない.そして欲求不満だ.結局,超大国はその地域との関係を本気で再考していないのだ.新しい循環が始まり,もっと大きな欲求不満が来るのも分かっている.
今,ラテンアメリカは根本的な変革を遂げつつある.それは革新をもたらすとともに,混乱も招く.わずか10年前に,ブラジルのLula da SilvaやチリのMichelle Bachelet,ボリビアのEvo Moralesといった左派や急進派の指導者が民主的な選挙で政権を握ることなど考えられなかった.その理由は,コロンビアからアルゼンチンまで,より強力で実行力のある,正当な政治制度が,富裕層に取り入った腐敗した国家に代わるべきだ,という意見が地域を制覇したことだ.9・11以後,アルカイダのような大規模テロは起きず,核開発をもくろむ国もない.しかし,ラテンアメリカのエリートたちは今も貧困解消に無責任なままであり,不平等は忌まわしいほどに拡大している.政治的な両極化は進み,ワシントンは不信を強めている.法の支配もない.
ラテンアメリカはその失敗に責任がある.しかし,アメリカがそれを増幅している.ワシントンはイデオロギーに囚われ,創造的な関係を築こうとしない.ブッシュ政権はここに,共産主義に代わって,ラディカル・ポピュリズムとの冷戦を見出す.コロンビアでは紛争が終わらず,各地の軍事クーデタを容認し,そそのかす.この地域の社会的な害悪を真剣に取り上げることもなく,アメリカは要するに一方的で,強圧的な外交を取り続けている.
ラテンアメリカとアメリカは「4D」の課題に集中するべきだ.すなわち,民主主義,債務,開発,麻薬,である.すべてが創造的に,そして効果的に取り組むことを必要とする.政治的にも物質的にも,OAS(米州機構)を再活性化するべきだろう.ワシントンは地域の危機を扱う上で中規模の指導的な国と外交的に協力することを学ぶべきだ.そしてEUも加えた大西洋三極や,「市民外交」も重要になる.
もし安定し,繁栄したラテンアメリカがアメリカにとって重要な利益になるなら,ワシントンは繰り返し超大国シンドロームをもたらしてきた偏見や政策を放棄するべきだ.
WP Friday, March 10, 2006
A Losing Latin Policy
By Jackson Diehl
(コメント) ブッシュ政権は無謀な一方主義と偏狭な国益論のために,重要な同盟諸国との関係を損なってきた,とJackson Diehlは考えます.特に,ラテンアメリカで.
たとえば,国際刑事裁判所でアメリカの兵士を戦争犯罪により裁くことを免除しなければ,軍事援助を取りやめ,さまざまな懲罰を行うと脅しています.
NYT March 9, 2006
Economists Are Watchful as Tokyo Ends Loose-Money Policy
By MARTIN FACKLER
FT March 10 2006
Bank of Japan starts the return to normal
March 10 (Bloomberg)
Bank of Japan Takes Big Risk With Policy Change
William Pesek
FT March 12 2006
The Bank of Japan must explain its inflation toolbox
By Anil Kashyap
FT March 13 2006
Land of the rising inequality coefficient
By David Pilling
FT March 14 2006
Lex: Yen/carry trades
(コメント) いよいよ日本国債は世界の債券投資家によって売られるのでしょうか? 量的緩和(QE)政策を廃止するのは簡単だが,その影響を予測し,破壊的な副作用がともなわないように債券市場を維持することが難しい,と言われます.
NYTは,日銀が取ったQE政策は,国内でも世界でも貨幣をただ取りし,日本のデフレ対策に個人がフリー・ライドする行為をともなってきた,と指摘します.日本の年金生活者も,メガバンクも,高い収益を求めて海外投資を累積し,また外国投資家は日本からのキャリー・トレードに励んだのです.その逆転が,前例のないことであっただけに,何を意味するのか予測できない,と.
日本の投資家が売り始める,という恐怖で,ロンドンでもニューヨークでも株や債券が売られています.専門家たちはそれが誇張されていると批判しますが,自己実現的な予言となることを警戒します.なぜなら日本の海外投資の規模がそれほど大きいからです.2004年末に日本の個人や企業が海外に保有する債権は107兆7000億円,あるいは9150億ドルです.もし日本の海外投資が減ってアメリカの金利が上がれば,日銀はアメリカにデフレをもたらす,とまで言います.
もちろんNYTの記事は,竹中=ハバードの日銀批判,もしくは,ある種の警戒感によっても書かれているわけです.多くの警戒感が市場や論説に漂います.悲観的な反応が支配的なのか,それとも強気の反応が前面に出るのか? 日銀の示す説明と資料による裏づけが多くの支持を得られない理由は何でしょうか?
その中でも,大変強烈な日銀批判はAnil Kashyapの論説です.に地銀の新しい金融政策指針には,次のような叙述があるようです.「日本では,過去数十年間,平均インフレ率が他の主要経済に比べて低かった.日本はまた,1990年代から,インフレ率の低い時期が長引いている.その結果として,家計や企業が安定すると認識するインフレ率は低い水準となり,経済の意思決定はそのような低インフレの環境によって導かれている.金融政策はこうした可能性を考慮しなければならない.」
これに対してKashyapは憤慨します.「これはずるい説明だ.失われた10年の低インフレについて,日銀にはほとんど責任がない,と主張しているようなものだから.日銀は,むしろ,日本はそもそも低インフレなのだ,と言う.これは,たとえば,大恐慌が起きたアメリカは潜在的な成長率が低かったとか,人々は高インフレに慣れているのだからアルゼンチンは三桁のインフレを目標にするべきだ,と言うようなものだ.過去のデフレについて責任を認めないのであれば,日銀は今なお深刻な混乱に陥っている.」
量的緩和政策の効果を理論的に説明できないとしても,それが日銀の姿勢を市場に理解させるうえで重要な手段であった以上,日銀は次の「市場とのコミュニケーション手段」を探さねばなりません.しかし,インフレ目標を採用せよ,という主張に,Kashyapは慎重です.なぜなら,日銀自身が貨幣供給と物価や経済活動とを結ぶメカニズムを説得的に示していないからです.もし日銀がその関係を信用していないなら,日銀がインフレ目標を採用しても,市場は信じないでしょう.特に,インフレ期待を予見にして自分たちの政策失敗を免罪してしまうようでは.
日本については,国内における所得格差の論争と,海外ではキャリー・トレードへの関心が,日本の何ともいびつな状態を示しています.
WP Thursday, March 9, 2006
By Charlene Barshefsky
FT March 12 2006
West urged to ‘tell truth on globalisation’
By John Thornhill in Deauville
(コメント) 日本の外務省や経済産業省なども,FTAや経済パートナーシップ協定などを模索していますが,アメリカは同様に,そして明確に,市場と政治を介してFTAを実現しそうです.日本は,中国とアメリカに比べて,その市場規模でもダイナミックな調整の点でも,大幅に遅れを取るのではないか,と懸念します.
元アメリカ通商代表のCharlene Barshefskyは,アメリカ政府がマレーシアや韓国ともFTAを推進していることをWPで強く支持します.これは多分,アメリカ議会が中米とのFTA締結で保護主義を強め,今後のFTA戦略に支障を来たすのではないか,と「グローバル派(多国籍企業と銀行)」が危惧したからでしょう.
Barshefskyの関心は,中国を世界市場に統合してから,急速に産業構造を転換し,生産拠点を再配置し,国際競争力を改善し続けているアジアに,アメリカも参入しなければならない,ということです.それは開放型の世界貿易システムを維持するだけでなく,アメリカ(企業)自身が国際競争と市場獲得のために必要としている,と考えます.FTAは,シンガポールやタイ,ベトナムと言ったASEANを含み,日本やインドも取り込んで,さらに拡大します.APECが有効な経済フォーラムを形成し,相互利益と(安全保障上の)勢力均衡を確保しながら,もちろん,中国との貿易自由化もその一部となるでしょう.
かつて,中国のWTO加盟を交渉したLong Yongtuは西側の政府に,貿易を政治化することを止め,有権者たちにグローバリゼーションの真実を語るよう求めました.
FT March 14 2006
The answer to Asia’s rise is not to retreat
By Martin Wolf
(コメント) Martin Wolfも,中国やアジアの生産基地が世界に与えた「第一次大戦に先立つサプライ・ショック」に匹敵するショックを議論しています.ただし,過去のショックは鉄道や蒸気船によって世界の土地供給が増加したことでしたが,現在のショックは労働力供給の増加です.ある研究によれば,もし世界経済が完全に統合されているなら,豊かな諸国の実質賃金は,新しい均衡を得るまで,15%も削減しなければならない,と言います.
しかし,世界はまだ統合されていないのです.2002年の中国の平均労働コストは0.60ドルですが,ドイツのそれは22ドルです.それでもドイツは世界最大の輸出国です.移民は厳しく規制されています.・・・では,富裕国には何が起きるのか?
もし中国が安価な製品を輸出するのであれば,富裕国の消費が増えるでしょう.しかし,その稼いだユーロを彼らが貯め続けた末には,何が起きるのか? たとえば,彼らは石油や資源を買うでしょう.しかし,なぜサウジアラビアがユーロを受け取ると思うのか? つまり,サウジアラビアは何を中国よりもやすくヨーロッパから買えるのか?
Wolfは,「地域=自給論(localization)」を批判しているのです.もしすべての製品で中国が輸出を増やすなら,富裕国は自動的に自給経済になるだろう.つまり,彼らの主張は,その前提を受け入れるなら,政策介入を必要としません.他方,中国やインドで安く作れるものを,富裕国で生産するために資源を移動することは,むしろ自分たちの競争力がある分野から資源を奪うに過ぎません.
では,何が起きるのか? 要約すれば,労働集約的な財が安くなる,と考えます.それは,貿易パターンや分配を変化させるでしょう.中国の交易条件は,WTO加盟以来,悪化してきました.他方,富裕国は交易条件が改善しています.中国の比較優位と同じ型の貿易構造を持つ国は,この交易条件悪化により不利益をこうむり,まったく逆の貿易パターンを示す国はもっとも大きな利益を得ます.富裕国への影響は重なっています.財やサービスは安くなりましたが,資源やエネルギーは高価になったわけです.最近は後者の影響が前者を超えている,と言います.
もし損失が上回っているなら,輸入部門を保護するほうが良いのでしょうか? Wolfは強く否定します.世界市場で決まる価格の変化によって損失をこうむっている以上,保護によっても価格変化を阻止できないし,それは追加のコストを生むだけだ,と.富裕国がやるべきことは何か? もちろん,価格の下がる財をもっと輸入し,価格の上昇する財をもっと輸出することです.それは富裕国自身が新しい世界市場に合わせて自国の貿易パターンや生産構造を変化させる能力にかかっています.
結局,どうなるのか? Wolfは考えます.未熟練労働者はサービスなどの非貿易部門に雇用されるだろう.そして未熟練労働者の移民流入は規制し,低所得の労働者に対する税負担を減らし,所得を補助する.教育や訓練に公的な投資を増やす.・・・ だから,心配するな,と.
経済学という《論理装置》の透徹した力には,眼を見張ります.しかし多分,現実はもっと不合理な障壁と情念に満ち,さまざまな政治的介入によって異なる進路を取るはずです.
Asia Times Online, Mar 10, 2006
Why Iran's oil bourse can't break the buck
By F William Engdahl
(コメント) イラン政府がユーロ建のテヘラン石油取引所を設けたことが,アメリカによるイラン攻撃の原因となる,という説が広まっています.しかしF William Engdahlはこれを否定します.
石油価格をドル建で行うことは,1970年代の石油危機に際して,キッシンジャーなどがサウジに協力させた選択でした.対外債務の累積が問題になっていたとき,アメリカ政府はそれが「問題」ではなく,むしろ「答え」なのだ,と気づきます.既に金で価値を保証できなくなっていたドルに対して,価格を4倍に引き上げた石油取引が世界のドル需要を増やしてくれました.しかもドルが外貨準備として保有されることで,アメリカ財務省証券も世界資産となったのです.
イラク戦争やイランのユーロ建石油取引所は,Engdahlによれば,この構造を破壊するものではありません.むしろ戦争は主要国で軍事支出を急増させ,石油価格も上昇して,ドルとアメリカ国債への需要を増やしました.テヘラン取引所の構想はイギリスの国際石油取引所の元会長であるChris Cookがイラン政府に既に助言していたことです.最近も,ドルとユーロの為替レートに振り回されるのを嫌ったノルウェーが,ユーロ建の取引所,を提案しています.もちろん,だからと言って,アメリカ政府はノルウェーを攻撃しないと思います.
重要なことは,石油取引がどの通貨で行われるかよりも,それにともなって生じる外貨準備の資産を何で持つかだ,とEngdahlは考えます.つまり,・・・そういう意味でペンタゴンが爆撃を命令するとしたら,それはテヘランではなく,・・・フランクフルトのECBなのです.
The Guardian Wednesday March 15, 2006
Latin America and Asia are at last breaking free of Washington's grip
Noam Chomsky
(コメント) Noam Chomskyは,アメリカが中東で泥沼に沈みつつある間に,ヨーロッパやアジアはますます独自の統合化を進めるだろう,と考えます.特に,中国とインド,中国とイランやサウジアラビアが協力し,ユーロ建の石油市場や投資を組織するはずだ.それこそが国際金融システムと世界の勢力均衡を根本的に転換する,と.
ラテンアメリカが同様のことを始めて何が悪いか? 先住民族がその社会や文化を破壊されながら,ニューヨークではエリートたちが交通渋滞でも高級スポーツカーの中でくつろいでいられる?
反米主義を掲げるベネズエラはメルコスールに加盟し,ラテンアメリカの左派政権や中国との協力を推進しています.対外債務を破棄し,IMF融資を拒んだアルゼンチンがこれに応えました.アメリカはパキスタンに軍隊を送って,テロを鎮圧するより刺激し続けています.一方,キューバが地震被災地域に多くの医者と看護婦を派遣したことに対して,パキスタンのムシャラフ大統領は深く感謝しました.
アメリカの覇権は終わりつつあるのです.
FT March 10 2006
The casual-trousered philanthropists
By Andrew Jack
FT March 10 2006
Lunch with the FT: Perfectly pitched
By Emiko Terazono
(コメント) おそらく,世界への影響力の点では双璧をなす? 二人のビルについて.
ビル・ゲイツとメリンダの夫妻がthe Bill & Melinda Gates Foundationの寄付のために行ったバングラデシュ・ツアーと,FTの寺園恵美子?さんがThe Economistの編集長Bill Emmottにロンドンのセント・ジェームズにあるお寿司屋さん,Matsuri,でインタビューした話が載っています.
それは世界最大の慈善運動です.世界一の大富豪が「世界の貧困を減らすため」に寄付した基金は300億ドル(3兆円)を超えています.これまで引退してから慈善に尽くした富豪たちに比べて,二人は非常に若い,ということが特別なのです.なぜこのような活動を始めたのか?
メリンダと1994年に結婚し,3人の子供の父親となったこと.弁護士の父や慈善活動を重視した母の影響.コミュニティーに奉仕するシアトルの風土.アフリカへの旅行で,二人が初めて目にした生の貧困.世界銀行の報告で病気の深刻さを知ったこと.病気の蔓延は自分の引退まで待ってくれないこと.CNNのテッド・ターナー会長が,他の富豪たちを批判し,国連に私財を寄付したこと.ウォーレン・バフェットと語ったこと.独禁法の裁判でマイクロソフトが憎まれたこと.・・・ などが指摘されています.
世界のエイズ研究など,医療研究・医薬品開発には,どこでもBill & Melinda Gates Foundationを見る,と言います.もちろん,こうしたことをどう評価するかは,意見が分かれるでしょうが.
もう一人のビルは,The Economistの編集長です.この恐るべき雑誌をどんな人物が編集するのか,誰が書き手なのか,私は興味を持って読みました.エモットはOxfordを卒業して,最初,The Economistには採用されず,投資雑誌の採用試験を受けます.そのとき,後にThe Observer 編集長となるWill Huttonと一緒で,結局,二人とも採用されなかった!ようです.
1980年,恩師の推薦でThe Economistに採用され,1993年,36歳で編集長となります.今,本を書きたいから,と引退を表明しました.前任者二人もやはり30代で編集長となり,40代後半で引退している,と言います.エモットは販売部数を50万部から100万部に増やし,その8割はイギリスの外で読まれています.
彼が残念に思うのは,1997年の選挙で,サッチャー路線を継承することが明確でなかったため,トニー・ブレアの労働党を支持せず,すでに信用を失っていたメージャーを支持したこと.また,イラク開戦を支持したことが最も紛糾した.その後,すぐに立場を修正したが,それでも,ブッシュ政権による事態悪化の可能性を過小評価していた.最大の失敗は,1999年3月,原油価格が10ドルのとき,5ドルに下がると予想したが,年末までに2倍以上になったこと.また,バルカン半島への軍事介入はもっと早く主張するべきだった,とエモットは語っています.
The Economistをインターネットの時代に移行させるのは次の編集者の仕事だ,と言います.しかし《分析》こそ命だ,と.それは,どこかスパイ小説や推理小説にも似ています.
NYT March 10, 2006
Mr. Nasty, Brutish and Short-Tempered
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) 今や,副大統領のディック・チェイニーは完璧な悪役です.イラクの内紛は完全な泥沼です.アメリカ軍は撤退したがっています.そこで,THOMAS L. FRIEDMANの政治的想像力が冴えを見せ,この窮状を切り開きます.
この窮状に軍事的な解決はありえない.その解決は必ず政治的なものである.主要な勢力を一部屋に集めて,完全に合意するまで,誰一人逃がさないことだ.この部屋にチェイニーを入れろ.彼には威圧する言葉と腕力がある.彼が居ることで,その部屋での発言は後で簡単に撤回できない.では,何に合意するのか? 政治的解決とは何か?
まず,チェイニーは説明するでしょう.「スンニー派の者たちよ.一切,妥協したくない? 結構だ.それではシーア派に委ねよう.」 「シーア派の者たちよ.スンニー派を無視してイラクを支配し,油田も支配したい? しかし妥協しなければ,燃え盛る国土と油田しか支配できない.」 「クルドは責任を果たした.われわれは,クルドがその領地に民主的な支配を樹立したことを,忘れはしない.」 その後で,彼らに要求します.
1.シーア派連合は,すべての党派が受け入れることのできる新しい内閣を組織せよ.
2.クルドとシーア派に自分たちの取り分や資源を奪われた,とスンニー派が思わないように,憲法を書き換えよ.
3.スンニー派は,武装勢力鎮圧のための信用できるプランを示せ.
4.すべてのコミュニティーから大臣を出す新しい内閣が,新しい首相と協力して,すべての重要決定を下すことに,全党派が同意せよ.
「アメリカは,イラクに民主主義が生まれるのを助ける決意はあるが,内戦の面倒を見るつもりはない.」 つまり,すべての党派が約束を守れないなら,アメリカ軍は撤退するぞ,と極悪チェイニーが各派代表を恫喝するのです.
これは,ボスニア内戦におけるデイトン合意と言うより,ある種の,ポピュリズムの薦め,です.
NYT March 11, 2006
A South African Model for Reconciling in Iraq?
By ROGER COHEN
The Guardian Monday March 13, 2006
When the cheerleaders admit they were wrong, we'll move on
Madeleine Bunting
WP Thursday, March 16, 2006
Steps Toward Unity in Iraq
By David Ignatius
(コメント) イラク開戦3周年を前にして.シーア派の指導者は南アフリカを訪れ,「真実と和解のための委員会」から学ぶ姿勢を示しました.ブッシュとブレアの意図が何であったにせよ,イラクは殺戮の支配する土地に変わりました.それでも彼らは政治的な弁解と自己賛美を止めません.その成果は? フセインとネオコンの退場だけ?
いつでも,深い危機によって,政治的な統合の意志は試されるのです.
KEITH BRADSHER As Trade Deficit Grows, So Do Tensions With China NYT March 10, 2006
KEITH BRADSHER Thanks to Detroit, China Is Poised to Lead NYT March 11, 2006
Jim Hoagland Business Can Change China WP Sunday, March 12, 2006
Guy de Jonquieres Time for China New Deal FT March 13 2006
Caroline Daniel US urged to work with China on energy FT March 13 2006
William Pesek Jr. How China Can Help Asia's Poor With Yuan March 13 (Bloomberg)
Caroline Baum Is It Stimulative to Buy From China? March 13 (Bloomberg)
Who should own the good earth of China CSM March 15, 2006 edition
China needs more reform not less FT March 16 2006
(コメント) 米中貿易摩擦とその政治化が,予定されている胡錦涛主席のアメリカ訪問を遅らせている,とKEITH BRADSHERは伝えます.中間選挙が近づけば,アメリカ製造業の拠点では中国からの輸入品や,中国による不当な為替操作,が選挙の焦点となります.潜在的な大市場として,中国の輸出増加を支持してきたアメリカの農家も,今では対中輸出規制法案を準備しています.WTOのルールや,中国が市場経済なのか,が問題となっています.他方,経済学者の多くは,二国間の貿易不均衡を問題にするべきではない,と言います.
またKEITH BRADSHERは,中国の自動車産業についても書いています.世界企業の市場獲得競争が,中国における自動車生産と技術移転を加速しています.
Jim Hoaglandは,天安門後の中国を南アフリカやソ連と比較します.外国企業が投資する際に気にするには,治安と予測可能性だけです.その国の政治体制や社会制度には無関心だ,と言われます.南アフリカでも,アパルトヘイトに反対する運動が強まったとき,企業は投資を減らしましたが,政府が弾圧を強めて秩序を回復すると,投資を再開しました.他方,自由化や民主化を進めて,政治的混乱と社会秩序を崩壊させたソ連からは資本が逃げ出し,ゴルバチョフを失脚させました.
南アフリカの事態を変えたのは,Leon Sullivan牧師の呼びかけでした.牧師はアメリカ企業に,南アでビジネスを行う際の原則を求めたのです.それはアメリカ企業とその子会社に,黒人にも平等な機会を保障するように求めたものです.企業は投資する社会に無関心であるという姿勢から,職場の原則を問われるようになりました.南ア内の黒人運動は勢いを回復し,国外のアパルトヘイト反対派は支持を得て,政府にも経済圧力が加わったのです.中国も,政治や社会の改革を避けたまま,真の経済パートナーにはなれない,と.
中国のニュー・ディールとは,製造業や都市における計画経済の放棄と,農村部における国家管理・介入の強化,を同時に認めるものでしょうか? 市場や外資を導入したのは,国営部門を廃止するためではなく,それを改善し,再生するためでしかなかったのです.中国政府にとって,自由主義や私的所有権を認めることができない理由とは,1.官僚の抵抗,2.外国資本への反発,3.社会的不平等の顕在化,です.
中国政府は改革に成功しましたが,その成果は余りにも不平等です.それゆえ,地域開発を促し均衡成長を唱え,教育システムを改善して機会を増やし,社会保障制度を導入することが目指されている,とGuy de Jonquieresは解説します.
さまざまな改革が必要でしょうが,私は人民元に関心をもっています.William Pesek Jr.の論説では,アジア開発銀行の黒田総裁に対するインタビューを基に,人民元の弾力化(そして実質的な切り上げ)がアジアの貧困を減らす,と主張します.購買力を増す中国がアジアの「成長のエンジン」になる,日本と中国が並ぶ「機関車論」です.貧しい諸国が,投資や貿易を奪い合って,補助金や通貨切り下げを競うことは避けなければならない,と.アメリカが自分たちの赤字を中国のせいにするからではなく,アジアの隣人たちを豊かにするためであれば,中国政府は人民元を増価させるかもしれません.
BG March 11, 2006
Globalism, democracy, and the ports deal
By Robert Kuttner
FT March 14 2006
World trading system is defying the doom-mongers
By Alan Beattie
(コメント) Robert Kuttnerは,グローバリゼーションの社会・政治的ジレンマを強調します.貿易,投資,移民,それらが結びつける社会には,異なった規制や制度,条件があります.民主主義,最低賃金,社会保険,衛生基準,安全保障,労働組合,消費者保護,・・・
もちろん,J.バグワッティやM.ウルフなら,だからこそ自由貿易には利益があるし,一層のグローバリゼーションが世界を改善する,と反論するかもしれませんが.
「もしそうした社会的な保護がない国と貿易するなら,われわれは生産物と一緒に,その社会契約の欠けた状態も輸入する.」 「財やサービスの自由な移動は,人の自由移動ももたらす.しかし,アメリカは市民の共同体であり,単なる市場ではない.一度に受け入れることのできる移民の数にも上限がある.」 「安全保障に関しては,少なくとも,自由貿易を制限することを認めている.ところが社会問題や経済政策を議論するときには,グローバリズムの複雑さを取り上げる者を経済の分からぬ低能者呼ばわりする.」
Alan Beattieの論説は,グローバリゼーションが停止し,あるいは逆転するのではないか,という懐疑論を否定しています.9・11による安全保障のコストも,さまざまな疫病や感染症も,グローバリゼーションを逆転させることはありませんでした.むしろ,グローバリゼーションに影響した最大の要因は中国のWTO加盟と,それによって東アジアを中心に世界の生産・貿易パターンが変化し始めたことです.ただし,こうしたすべての影響が,既存の経済統合を遂げている繁栄した地域には有利に働き,新規参入する貧しい地域には不利に働いた,と指摘しています.
NYT March 11, 2006
Open Doors Don't Invite Criminals
By ROBERT J. SAMPSON
CSM March 13, 2006 edition
Divide is too deep for immigration reform
By David R. Francis
FT March 14 2006
High-fliers welcomed
(コメント) 殺人事件の増加を移民の流入と結びつける議論は,日本だけでなく,アメリカにもあると思います.しかしROBERT J. SAMPSONは,1990年代の犯罪現象を外国人の増加によって説明します.社会学者が"Latino paradox"と呼ぶものです.ヒスパニックのさまざまな社会指標は,彼らがアメリカで経験している社会・経済的に不利な状態から予想されるよりも,良好である,というのです.
もちろん,これは一般にもたれているイメージと逆です.政治家や官僚,あるいは研究者も含めて,移民の増加を貧困や社会秩序の悪化,犯罪の増加と結びつけます.かつて,19世紀に移民が集まって住み,社会を分断した時代にはそうでした.しかし,特に他の移民たちと一緒に住む場合,移民たちはトラブルを避けて,むしろ慎重に振舞うものです.
David R. Francisは,アメリカの移民政策が論争を収束させる明確な論理を見出せず,「ビナイン・ネグレクト政策」に終始するだろう,と指摘します.産業界は移民労働者を必要としており,非合法移民を合法化することを支持します.ただし,「ゲスト・ワーカー(一時雇用)」という形で.他方,世論調査によれば,非合法移民に市民権を与えることには強い反対が示されています.共和党の意見は分裂しており,他方民主党も意見がまとまらず,むしろ政府の混乱を見物しています.安全保障を重視して,これほど大量の非合法移民が国境を越えられることを批判する声は強まっています.
他方,「ゲスト・ワーカー」が雇用期間を終えて帰国すると信じるものはいないし,それを強制することもできません.そもそも彼らの子供はアメリカ国内で生まれると,自動的に,アメリカ国籍を得ます.それでもGeorge Borjasは,移民がかつてのようにアメリカ社会に統合されなくなっている,として,規制を主張します.移民たちに同化を促した大規模な製造業の雇用は失われ,多文化主義の政策は「メルティング・ポット」を破壊した,と.
FTは,オーストラリアやカナダと同様に,イギリスにおいてもポイント制による移民の選別政策が強化されることを伝えています.しかし,こうした移民の選別政策,移民過程への政治的介入主義を正当化する明確な理論は(国民の損得勘定のようなものしか)無いのです.
David J. Rothkopf Look Who's Running the World Now WP Sunday, March 12, 2006
John Chipman An effective way to deal with Iran’s nuclear threat FT March 14 2006
Richard Holbrooke and Ronald D. Asmus Next Step for NATO WP Tuesday, March 14, 2006
(コメント) アメリカ外交におけるディック・チェイニーの時代は終わった.イランの核開発を,ボルトン国連代表が言うような,安保理の制裁で押さえ込めるのか? 他方,ライスの画策する中東和平やインドへの関与だけでなく,ホルブルックの提唱するNATO拡大など,アメリカは外交政策の転換を開始しているかもしれません.日本はここでも,周回遅れのネオコン外交,を演じるだけではないでしょうか?
Richard Holbrooke Rough justice is a fitting end for Milosevic FT March 13 2006
The Milosevic legacy FT March 13 2006
Death of a tyrant and a loser The Guardian Monday March 13, 2006
Marcel Berlins How Milosevic made the courts look foolish The Guardian Monday March 13, 2006
David Kaye Don't bury The Hague with Milosevic IHT MONDAY, MARCH 13, 2006
Milosevic unjudged BG March 14, 2006
Cara Robertson No judgment at The Hague BG March 14, 2006
Death of a demagogue LAT March 14, 2006
Lawrence Douglas Justice denied at The Hague? LAT March 14, 2006
The Death of Milosevic NYT March 14, 2006
One Man's Crimes NYT Tuesday, March 14, 2006; A18
ADAM LeBOR The Dictator Who Got Away NYT March 15, 2006
Mark Leon Goldberg So Long, Slobo The American Prospect, 03.15.06
Timothy Garton Ash Every tyrant should hear Banquo's ghost hissing: 'Remember the Hague' The Guardian Thursday March 16, 2006
(コメント) ハーグの国際裁判所で公判中に,ミロシェビッチ元大統領は死亡しました.フセイン裁判の迷走とともに,国際社会における「法の支配」という理想を失墜させる出来事です.
デイトン合意をまとめたRichard Holbrookeは,ミロシェビッチの死にも,多くの積極的な意義を強調します.何よりも,史上初めて,政治指導者自身を戦争犯罪で裁いたのです.4つの戦争を引き起こし,30万人を死亡させ,200万人の難民を残した政治指導者を収監し,二度と政治活動や市民生活への自由な関与を認めなかったのです.ミロシェビッチは終身刑(死刑はない)になるしかなかったでしょう.彼の悪行に関する証言や証拠資料,記録は,公判によって世界に伝えられました.
FTは,ミロシェビッチが死んだ後にも残された課題として,ボスニアは他の戦争犯罪者を逮捕し,各国は民主的な秩序を確立し,コソボの将来をめぐる対立を解消し負ければならない,と指摘しています.
他方,何より失望するのは,ミロシェビッチが死んだことで,こうした「正常化」を打ち消し,彼を英雄として,民族のシンボルにする動きが強まっていることです.不当な,国際介入による死,民族の誇りを守った死であった,とデマゴーグたちは利用するわけです.ミロシェビッチが自分自身を弁護してハーグの法廷を利用したように.
戦争に責任ある者が免責される,というこれまでの秩序を,ミロシェビッチの裁判は覆した.あれは戦争だったから仕方なかった,という言い訳は許されない.あるいは,David Kayeの書き方では,すべての政治指導者はその「体制」に責任を負うわけです.
国際法廷は茶番であり,時間と金の無駄だ,と決め付ける声もあります.セルビア政府は協力するどころか,証人が出廷することを妨げ,EUやアメリカ政府は十分な圧力を掛けることができず,ミロシェビッチは弁護人を拒み,公判を政治的に利用して長引かせました.彼は病気を訴え,治療不足を法廷の責任にしていたため,彼の死を政治的に利用する道まで用意しました.
問題は,《戦争》は《犯罪》なのか? ということです.たとえ戦争においても,守るべき法がある,と考えるのか? 戦争の後に,勝者が敗者を裁くことを誰が合意できるのか? 国家による犯罪を,国際法廷が問えるのか? ・・・その意義は認めるとしても,まだ多くの工夫や合意が欠けているようです.
March 15 (Bloomberg)
Asia's Future? It's All About Demographics
William Pesek Jr.
(コメント) アジアと世界の将来を決めるのは,人口変化,都市化,農村開発,・・・? バランス・オブ・パワーも,食糧問題も,交易条件や貿易パターンも,その長期的な影響は甚大です.
FT March 15 2006
France's youth on trial
(コメント) パリが再び暴動と放火で混乱しそうです.しかも,移民たちではなく,ソルボンヌなどのエリート層まで含む若者がその主体です.政府の転覆に至る,1968年5月の学生革命が再来するか?
フランスの失業を解消するために,どうして若者を解雇しやすくすることが重要なのか? つまり・・・ 現行制度では,たとえ劣悪な労働者でも解雇できない.だから企業はなかなか正規に雇用できない.だから26歳以下の若者は新規雇用してから2年以内なら,どんな理由であれ,解雇できるようにする.・・・!? 最低賃金や解雇が難しいことを,正規雇用の需要不足に挙げるのであれば,それを直接に改革すれば良いはずです.若者だけをターゲットに解雇を奨励する法律など必要ないと思います.
失業中の若者や移民コミュニティーはこの法改正を支持している.だから,保守政権の3人の指導者が,ザイルで互いの体をつないで,最後まで登りきらねばならない,と主張するFTの論説にも納得できません.
FT March 16 2006
Italy follows Argentina down road to ruin
By Desmond Lachman
(コメント) 結局,イタリアは破産し,ユーロは解体する.・・・ずっと以前から予想されてきた末路です.イタリア国債を保有する投資家たちはアルゼンチンの映像を思い出しているはずです.両者の類似点は,政治的な紛糾,選挙と経済論争,財政赤字,銀行のスキャンダル,金融システムの脆弱さ,そして何より,生産性改善の遅れと,硬直的な対外通貨制度です.
インフレを抑え,財政規律と構造改革を求めて,イタリア政府はユーロに加盟したはずでした.それは,不況を回避するための金融緩和や,国際競争力を改善するための切下げを封じました.石油価格の高騰を心配するECBは,イタリアの不況を無視するでしょう.IMFもECBも,赤字国の債務をいつまでも救済することなど無いのです.
しかもベルルスコーニ首相は,ますますその腐敗と独裁的な手法により,ヨーロッパで嫌われています.
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The Economist, February 25th 2005
Japan’s economy: Out, damned D word
South East Asia: All serene
(コメント) 日本も東南アジアも,80年代から90年代のジェットコースター(日本はウォータースライダー?)の後,その後片付けに苦心したわけです.それは概ね,高い授業料を払いながら,グローバリゼーションの「改革」プログラムを何とか履修した(しかし,実行するのか?),というのがThe Economistの評価です.
日銀のデフレ克服宣言は時期尚早の危険もあります.それは要するに,何を基準とするのか? という論争です.The Economistは,名目GDPを重視します.なぜなら,国債残高が心配な政府も,不良債権処理が心配な銀行の,実質金利が心配な企業や日銀も,名目GDPが減少するのではなく,増加することを願っているからです.まだ金利引き上げの時期が難しいと言います.
東南アジアについては,最近まで,IMFや外資を批判することが政治家や知識人の人気取りとして盛んでしたが,今では変わりました.かつて拒まれた「改革」の多くは実施されており,それを非難する声も聞かれません.タイやフィリピンのように,民主化が危機後の政権を動揺させているにしても,その抗議は以前よりも新しい政治過程を前提しています.
1997−98年の危機を教科書で読むしか知らない若い世代には,それが何であったのか,説明を求められます.要点を正しく答えることは簡単になっても,その破壊力と社会・政治過程を理解することは,予想外に難問となるでしょう.
Lexington: Puritans or pornographers?
The business of giving: A survey of wealth and philanthropy
Companies’ and countries’ prosperity
(コメント) アメリカの苦悩は,グローバリゼーションに取り組む世界各地の苦悩を先取りしたものとして,ますます共有されています.それゆえ,アメリカは憧れや憎しみ,尊敬や羨望,侮蔑の対象になるわけです.アメリカの比較優位は,メガ・チャーチなどの宗教運動,ポルノ映画やMTVのようなポップカルチャー,大富豪,慈善活動による社会改革,あるいは,国家を滅ぼしながら反映する世界企業,・・・
The Economist, March 4th 2005
Iraq at war with itself
Sunnis and Shias: Does it have to be war?
(コメント) 戦争前から警告されていたように,イラクの宗派やエスニック集団間の対立が激化すると,内戦や国家の分裂に至るということが現実に生じつつあります.The Economistは,それを阻止するために,三つの条件を示しています.1.主要勢力を包括した統一政府の樹立.2.憲法の改正(スンニー派の取り分を増やし,シーア派の安全圏を制限する).3.民兵集団を解散し,シーア派以外も含めた国民軍の整備.
シーア派の重要なAskariyaモスクが爆破されてから,スンニー派とシーア派の対立はイラクの内戦と世界的な規模の両派の対立に向かいつつある,と指摘されています.両派の歴史的な関係やイランとサウジアラビアの関与,アメリカ軍の展開,イラン革命,グローバリゼーションの役割など,さまざまな意味があるでしょう.しかし,いずれも政治に宗教の関与を制限するべきことを求める事情となりそうです.つまり,信じることは,・・・平和や繁栄を約束しない.