IPEの果樹園2006

今週のReview

1/30-2/4

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :売春,反社会的行動

安全保障 :北朝鮮,イラン,ハマス

貿易・投資 :民主制と成長

通貨・金融 :グリーンスパン

世界統治 :ライブドアボリビア,中国

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, JTJapan Times, CSMChristian Science Monitor


FT January 17 2006

Lex: Livedoor

FT January 19 2006

Lex: Livedoor

FT January 22 2006

Lex: Japanese equities

FT January 23 2006

Lex: Livedoor

FT January 27 2006

Lex: Livedoor

(コメント) 株価を吊り上げて企業を買収するライブドアの仕組みに,検察の捜査が入りました.FTは日本の株式市場やルールの整備・執行がどのように行われるかに注目し,継続して監視しています.

起業を私物化してきた経営者たちを,株式の買収で追い出すことができます.老朽化し,腐敗した,日本の経営システムや業界の慣行を破壊する,野心的な企業家としてホリエモンが英雄視されていたわけです.

ライブドア・ショックが広がる中で,このホリエモン現象(竹中=ホリエモン革命)が,ライブドア幹部の自殺と,東京証券取引所の閉鎖,までもたらしました.次は,粉飾決算だ,とFTは指摘します.日本の企業会計は,不良債権問題以来,最近のマンションの構造計算書よりいいかげんだ,と思われています.カネボウも,山一證券も,政府が粉飾決算を指南し,りそな銀行の会計士は自殺した,と.

東京証券取引所(TSE)とは何なのか? 日本の景気回復は,金融緩和によってデフレを終わらせ,さらに7兆ドルの預金をリスク資本に転化することで加速するはずでした.しかし,TSEが機能しないために,わずかな配当しかもたらさず,せっかくの資本が少数の株式に集まって投機的な売買を繰り返しました.M&Aが増えたのも,市場の圧力を逃れるために企業グループが株式を買い集めただけだ,と批判されます.

デフレや企業の再編によって日本経済は再生したのでしょうか? 国際的に見て,株価はまだ高く,企業はもっと資本を有効に利用して,配当を増やすこともできるはずです.TSEがその役割を果たすべきだ,とFTは考えるでしょう.

堀江社長の逮捕で株価は暴落し,グループ内企業の提携関係やインターネットの契約に,急速な変化が起きつつあります.株式市場やインターネット・ビジネスの特性によって,急速に膨張し,急速に消滅することが当然である,と言えます.架空の富を失ったことより,現実の何を変えたかが問題です.日本の硬直的な株式売買を転換させた

FT January 18 2006

Old guard's revenge

堀江貴文は日本の旧ビジネス・エリートたちに憎まれていた.彼はがむしゃらな若い企業家としてフジTV買収をめざした.しかし今,堀江とライブドアは検察庁の捜査を受けている.旧エリートたちが報復を楽しんでいるわけだ.

堀江が法を侵したかどうかよりも,彼が示すものを考えることが重要だ.フジTV買収は失敗したが,彼は日本の伝統的なビジネスの秩序に挑戦する招かれざる新勢力を代表していた.もし彼が公然と非難されて葬られるなら,日本の経営幹部たちは安堵のため息を漏らすだろう.彼らは安んじて,旧来の快適なやり方に戻ることができる,と思うだろうから.

彼のもたらした衝撃をたたえるために,何も彼の戦術を認める必要は無い.派手に大衆の関心を惹きながら,彼はその流れに乗って上昇してきた.他方,日本には,彼のような簡単に大金持ちになる投機家を侮蔑する風潮がある.優れた経営によってではなく,金融取引を重ねて企業帝国を築いたからだ.しかしその欠陥が何であれ,彼が日本にもたらしたものは重要だ.

第一に,個人の指導力や新しい発想をあまりにもしばしば官僚や企業内のコンフォーミズムが窒息させてしまう国に,彼は新しい空気をもたらした.彼は海賊から,この国を過去から解き放つ英雄になった.

第二に,彼の取引は金融市場の不十分なルールを問い直すものとなった.仲間内だけで行われている日本の資本市場に,透明性と公平性をもたらす改革の力を呼び起こした.第三に,最も重要なのは,彼の攻撃的な手法が,経営者たちの惰眠を吹き飛ばし,彼らにもっと優れた経営を迫ったことだ.

堀江の批判者たちは,彼が自己的で,どのようなときにも,金儲けだけにこだわるのは社会的に好ましくない,などと言う.それは見当違いであろう.彼を嫌う大企業の経営陣は,同様に利己的であり,彼らが執着しているのは現在の静かな状態を維持して,その地位を永らえることだ.彼らは株主にもっと配当するため苦しむことなど考えない.

日本は自由で開かれた資本市場を受け入れる必要がある.そして活発な市場が企業を支配し,企業を効果的に統治することで,繁栄が損なわれるのではなく,むしろそれこそが富を創り出す,ということを受け入れることだ.その教訓を学ぶまで,日本にはより多くの堀江のような攻撃的な破壊者が必要である.

FT January 18 2006

Tokyo Stock Exchange unveils emergency plan

By David Ibison in Tokyo

Tokyo fears a crash of a different kind

By David Ibison

Lex: Tokyo Stock Exchange

NYT January 18, 2006

Rush to Sell Shuts Down Tokyo Stock Exchange

By JAMES BROOKE

(コメント) 東京証券取引所(TSE)は,コンピューター・システムに処理能力の限界があり,間違った契約を取り消す作業が正常に行えず,さまざまな取引ルールが未整備で,その結果,取引が急速に外国人により大規模に,また個人投資家によって頻繁かつ短期に行われることに対応できませんでした.これで世界の投資家が集まる市場にふさわしい,と言えなくなりました.

あるいは,そもそもTSEの管理能力,問題処理が間違っていた,と指摘されます.ライブドアの問題が市場全体に波及してしまう前に,なぜ対処できないのか? 一株から個人で売買できるライブドア株が一気に売られることは「想定外」であったようです.しかし,そんなことは以前から分かっていたことであり,言い訳になりません.TSEのブローカーたちは,投資家たちが数千億円の資産を失う中で,手数料を稼ぐわけです.

あるいは,こうしてインターネット・バブルがつぶれたことで,健全な市場の監視と投資行動が促され,息の長い景気回復が実現できるのでしょうか?

FT January 20 2006

Stock market fiascos

Jan. 20 (Bloomberg)

Livedoor Case Is a Pivotal One for Japan Inc.

William Pesek Jr.

CSM January 20, 2006 edition

The lessons of aping US business

JT Saturday, January 21, 2006

A new empire is shaken

FT January 21 2006

Japan at a crossroads

NYT January 23, 2006

Japanese Prosecutors Arrest Livedoor Chief

By JAMES BROOKE

(コメント) TSEは,投資家の信頼を維持する迅速な行動が必要です.しかし問題は,TSEが民営化されたとしてもまるで競争にさらされていないことだ,とFTは書きます.NYSEはナスダックと,ロンドンは他のヨーロッパ市場と,激しく競争しています.いっそTSEもアメリカかヨーロッパの取引所に買収してもらって,改革してはどうか?

William Pesek Jr.は,堀江のライブドアが,エンロンなどと違って,些細な罪で大掛かりな捜索を受けていることに疑念を抱きます.エンロン後の世界では,こんな話にニュースとしての価値は無い.ただ,日本の「ニュー・エコノミー」のシンボルであった.堀江は見る人によってビジネスの神様であったり,クズのお騒がせ男であったりする.だから,これは堀江の話ではない.日本がこの10年間に何をしてきたか,という話だ,と.

日本人は堀江の転落を喜んでいるときではない,とWilliam Pesek Jr.は書きます.堀江は,日本の新しい成長の源泉を示してくれたし,中国の台頭に日本が萎縮しない道も示してくれた.もし堀江のような企業家が100人いて,現状を打破し,リスクを取り,金融市場のルールを試し,株主に冷淡な経営陣を脅かして,経営者に変革を強いるなら,日本経済はダイナミックに変わるだろう,と.

堀江が旧(老人)経営者たちに憎まれて,このまま抹殺されるなら,日本の若い企業家精神や敵対的M&Aによる構造改革は死んでしまうのでしょうか? 日本の検察システムはそれに加担しようとしているのか? 同様に,CSMも主張します.グローバリゼーションにもかかわらず,日本やヨーロッパは政府の指導・保護する経済活動に集中して,成長の潜在力を損なっている.もっと独立した革新的な個人,そして企業が必要だ.もっと移民を受け入れ,国境を開放して,財やサービスを受け入れることだ.

しかし,それは日本もヨーロッパも「アメリカのような経済になれ」ということでしょうか? ある意味では,そうです.しかし,そうでないかもしれません.


FT January 19 2006

France defends right to nuclear reply to terror

By John Thornhill in Paris and Peter Spiegel in London

BG January 21, 2006

A new Chirac doctrine

The Guardian Saturday January 21, 2006

Chirac's atomic bombshell

FT January 22 2006

Chirac’s strategic mess

By Wolfgang Munchau

FT January 25 2006

European Comment: Nuclear wake-up call

(コメント) 冷戦後の世界にも,核兵器や大量破壊兵器の使用を考えていることをシラク大統領は明言しました.・・・これは何か? 国内政治的な男性的シンボル・好戦的自己顕示欲でしょうか? イランによるテロリストの核攻撃を,それほど現実的な脅威と考えている? 核武装することで,悪漢国家やテロを抑止できるでしょうか? あるいは,石油や天然ガスを支配する核大国への牽制? ヨーロッパの統一とフランスの覇権,反米を誇示するメッセージ? 1964年のドゴールと同じように.それを愚かしいと思うのは,日本がアメリカの核の傘に頼り切っているせいか?

しかし,北朝鮮やイランに核武装を諦めるよう説得しているときに,核攻撃の必要性を説くのは,単なるフランス人の饒舌,すなわち,おしゃべりか? Wolfgang Munchauはその発言を,失敗作,と断言します.イランとの交渉をぶち壊し,テロの抑止にはならないからです.ヨーロッパ内の意見統一もできないでしょう.

そもそもシラクは,フランスの利益を考えて,自分たちが核を保有し,使用もできることを強調した,とFTは考えます.特に選挙が近づけば,核カルテルの価値が投機的に引き上げられます.彼個人の利益も含めて.


Asia Times Online, Jan 20, 2006

Taking care of business

By Bruce Klingner

LAT January 20, 2006

Glimmers of hope

JT Tuesday, January 24, 2006

Cross-eyed over abuses by North Korea

By RICHARD HALLORAN

NYT January 26, 2006

North Korea Takes a Peek Down China's Capitalist Road

By NORIMITSU ONISHI

(コメント) 北朝鮮が核武装する以外の選択肢を,日本は拉致問題の完全解決を前提とした和平協定,賠償・援助の合意として,示しています.韓国や中国は,食糧・エネルギー援助や経済特区制度の成功例を見せて,北朝鮮に市場改革の大きな利益を教えようとしています.これによって,北朝鮮も核武装を諦めるだろう,と考えたわけです.

アメリカは? と言えば,北朝鮮の強制収容所や武器輸出,偽札,偽商品,人権問題を強調し,日本の拉致問題も加えて,交渉のカードにするでしょう.他方,すでに食糧の備蓄や資本ストックを失った北朝鮮は,今後の食糧貿易阻止や投資の不足が深刻になり,日本との交渉を急ぐかもしれません.

6カ国協議は足並みがそろわず,繰り返し失敗してきましたが,むしろ広い意味での交渉条件は具体化し,北朝鮮を国際的な環境に従わせる過程に進むのかもしれません.最も楽観的なシナリオですが.


FT January 20 2006

The peasants’ president

By Hal Weitzman

The Guardian Friday January 20, 2006

Revolution in the Andes

Richard Gott

NYT January 20, 2006

El Presidente's New Clothes

By EDMUNDO PAZ SOLDAN

NYT January 22, 2006

Bolivia's Leader Solidifies Region's Leftward Tilt

By JUAN FORERO and LARRY ROHTER

(コメント) アンデスの古い神に祈る,はだしの農夫が大統領となりました.ボリビアの先住民の一人,Evo Moralesです.

Hal Weitzmanはモラレスの公約に驚きます.それは,ボリビア国家を再強化して,スペイン人の征服により滅ぼされた古代文明を復活することです.憲法を書き換え,周辺化された人々に大きな権限を与える,と言います.彼の政治的な主張よりも,貧しい者への共感が,ボリビア社会の多数者を動かし,選挙結果を変えました.

彼のポピュリズムと反米主義は,アメリカ政府や国際投資家にとって悪夢です.しかし選挙に勝って,政権としては何をするのでしょうか? 論説は,モラレスがベネズエラのヒューゴー・チャベスよりも,ブラジルのルーラ・ダ・シルバに似てくるかもしれない,と考えます.

Richard Gottは,ラテンアメリカにおける先住民の政治化・組織化に注目します.それは30年に及ぶ経済停滞と,ネオ・リベラリズムがもたらした政治的結果です.それはフィデル・カストロのキューバ革命を再現します.しかも,かつてアメリカが支持したような介入や軍事的反政府グループの反撃はないでしょう.アメリカはイラクなどで疲弊し,介入の口実となった冷戦も終わりました.むしろ,今あるのは,19世紀のシモン・ボリバルが描いた理想です.

コーネル大学でスペイン語を教えるEDMUNDO PAZ SOLDANは,故郷の政治変動と都市中産階級の様子を伝えます.彼らのパニックが,急速に収まったのは,モラレスが「所有権を尊重する」とビジネスマンに訴え,さまざまな階層の声を聞いて妥協する,柔軟な政治姿勢を選ぶ見識と政治力を示したからでした.しかし,天然資源とその国際企業による開発には,さらに交渉が必要です.

モラレスの勝利は,アメリカには皮肉なことですが,もちろんラテンアメリカ民主化の勝利です.過去の政治・経済システムを破棄する,とモラレスは訴えて支持されました.それは,「植民地主義」「ネオ・リベラルリズム」とも呼ばれます.アメリカ,ベネズエラ,ブラジル,チリとの関係,麻薬取引,石油,資源開発,援助,などについて,モラレス新大統領は国内の政治的支持と両立可能な解決策を見出さねばなりません.

LAT January 21, 2006

Chile's wonder woman

(コメント) 他方,保守的なチリで選ばれた革新的な新大統領Michelle Bacheletには,社会党のラゴス大統領が民主化後に達成した市場経済の安定と成長を継承し,さらに社会主義的な価値を実現する,という課題があります.チリは,反米や社会主義であるために,自分たちの国民を苦しめるような政策を取る必要は無いことを示した,と論説は指摘します.


David Ignatius Containing Tehran WP Friday, January 20, 2006

Chris Cook What the Iran 'nuclear issue' is really about Asia Times Online, Jan 21, 2006

Norman Lamont Talking to Iran is a better idea than more sanctions FT January 22 2006

DAVID BROOKS Hating the Bomb NYT January 22, 2006

Ivo Daalder and Philip Gordon We Should Strike Iran, but Not With Bombs WP Sunday, January 22, 2006

Spengler Why the West will attack Iran Asia Times Online, Jan 24, 2006

George Monbiot Building bigger nuclear weapons will make us even less secure The Guardian Tuesday January 24, 2006

Ian Bremmer What will China do? IHT TUESDAY, JANUARY 24, 2006

John Hughes In dealing with Iran, no method is sure, but save combat for last CSM January 25, 2006 edition

Matthew Lynn European Union Can't Afford to Go Soft on Iran Jan. 25 (Bloomberg)

Jeff Jacoby Don't go wobbly on Iran BG January 25, 2006

Max Boot Iran's threat, Bush's dilemma LAT January 25, 2006

STEVEN LEE MYERS Iran Open to Nuclear Venture With Russia NYT January 25, 2006

Gary Samore Stopping the Iranian Bomb - Part I The Asian Age, 26 January 2006

S. Nihal Singh The Jittery empire The Asian Age, 26 January 2006

George Perkovich Stopping the Iranian Bomb - Part II The Asian Age, 28 January 2006

(コメント) イランの核を封じ込めることができるか? そのためには,核問題を孤立させず,イランの政治・社会システムや,中東情勢全体において,解決策を示すことです.イラン大統領の原理主義も,むしろ国内穏健派の団結と支持拡大を促す要因となる可能性があります.そうであれば「イラン革命の封じ込め理論」も重要になるでしょう.あるいは,石油市場とその収入をドル資産への依存から離脱させることで,イランは核兵器なしにアメリカの中東支配から解放されるかもしれません.あるいは,1953年にモサデク政権をクーデターで倒したように,核放棄を迫る英米に石油支配の陰謀を見る者もいます.・・・

安保理を開いて経済制裁に進むべきか? 空爆の選択肢を考慮するべきか? 9・11に対して,イランの指導者たちは直ちに,イスラム世界にとっても許されないニヒリズムである,と非難しました.イランはイラクの平和にとっても重要なパートナーです.イランに経済制裁を科すより,むしろ既に行われている制限を解除するほうが良い,とNorman Lamontは主張します.

DAVID BROOKSは,アメリカの国内政治対立によって選択肢を集約します.@先制攻撃:ジョン・マッケインと共和党・保守派.A制裁:ヒラリー・クリントンと民主党.B改革支持:直接介入を避けたいブッシュ政権.要するに,イランは北朝鮮とは違う.民主的な改革の余地がある,と.C沈黙:民主党主流派のリベラル.イランの核保有もそれほど致命的ではない.要するに,サダムは排除したし,アメリカ兵はイラクにいる.

しかしBROOKSは,こうした議論をすべて信用していません.アメリカの政治は,結局,イランの核をめぐっても,自分たちの大統領選挙だけを争っているのであり,政府は何もしないだろう.そして,イランは核兵器を作る,と.


NYT January 20, 2006

The New 'Sputnik' Challenges: They All Run on Oil

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) 石油を浪費することによってイスラム原理主義とテロリズムを育て,対外不均衡を拡大しながら産業基盤を破壊してしまうアメリカの姿勢に対して,FRIEDMANは以前から批判してきました.そして,ここでもガソリンに課税し,厳しい環境規制に対応した新しい技術や代替エネルギーの開発に投資させるべきだ,と主張しています.

この論説は,アメリカ人に気づくべきショックを,1957年にソ連が人工衛星を打ち上げた「スプートニク・ショック」にたとえていることです.なぜなら,2006年のデトロイト自動車ショーに,中国製のセダン「スプートニク」が1万ドルで2008年に売り出される,と展示されていたからです.アメリカ人は,@石油を浪費しつつ原理主義者のテロと激しく戦い,A中国,インド,旧ソ連圏を市場に引き込んで「アメリカン・ドリーム」と大量消費熱を広め,Bアメリカではなく,日本やヨーロッパで21世紀の環境エネルギーが発達するのを助け,C世界の民主主義体制を石油に依拠した独裁者たちが,ベルリンの壁を逆向きに倒すように,崩壊させる準備に励んでいるわけです.


The Guardian Saturday January 21, 2006

It's not just on the streets that the tide of prostitution must be turned back

Katharine Viner

(コメント) イギリスの労働党政府は,自由で平等な社会,を唱えていますが,ますます多くの売春宿と街娼がイギリスを満たしている,とKatharine Vinerは嘆きます.売春行為はわれわれに公共文化まで侵し,音楽やファッションを染めている,と.性的なアピールを金銭で測ること,商業的に利用することが当然のことになってしまいました.売春婦たちが一般紙でコラムを書き,男性に「正しい買春」を教えています.

それは,いかに多くの女性たちが売春を生業としているか,を示します.たとえば,他に就ける仕事が少ない移民たちです.政府は,小規模の売春宿を公認する考えを否定し,街娼を厳しく取り締まるようです.売春観光と売春行為を強いる人身売買が急増している,と言います.そして,何よりも売春を奨励するメディアとMTVのような音楽文化を一掃するべきだ,と記事は主張します.

売春に関わる女性たちの多くが,殺され,強姦され,麻薬中毒になり,精神障害を患います.それは,おもちゃを買うために店に入るのとまったく違うことです.


Confronting the spectre of Hamas FT January 23 2006

Between zeal and pragmatism The Guardian Monday January 23, 2006

Palestinian choices BG January 24, 2006

Hussein Agha and Robert Malley Hamas steps into a complex landscape BG January 24, 2006

Hussein Agha and Robert Malley Hamas has arrived - but there are limits to its advance The Guardian Tuesday January 24, 2006

Aaron David Miller The Palestinians' Crisis of Leadership WP Tuesday, January 24, 2006

(コメント) 欧米社会がパレスチナ選挙におけるハマスの勝利によって受けた衝撃の大きさは,そのメディアにおける扱い方と論調に示されています.

イスラエルでもパレスチナでも,国民の多数は和平プロセスの継続を望んでいるのに,それを否定するような強硬派が選挙には勝つだろう,という矛盾が指摘されています.

Dilip Hiro Democracy fuels Islam's rise LAT January 25, 2006

Harvey Morris and Sharmila Devi Arafat image to fore as Hamas campaigns for change FT January 25 2006

Philip Stephens Judge Hamas by its deeds FT January 26 2006

Carl Bildt and Ana Palacio We must respect the choice of Palestinian voters FT January 26 2006

Hind Khoury A six per cent democracy The Guardian Thursday January 26, 2006

STEVEN R. WEISMAN Bush's Wait-and-See Stance on Hamas Reflects Complex Issues NYT January 26, 2006

(コメント) 民主化と選挙の結果,武力闘争を主張するイスラム過激派の政権が成立するのであれば,何のための和平,何のための投票なのか?

イラクでは,少数派のスンニー派が権力を独占しました,その結果,モスクと信仰がシーア派の拠り所となったのです.エジプトでは,ナセルの掲げたナショナリズムによる統一が,1967年,イスラエルとの戦争によって粉砕され,その結果,人々は原理主義に向かった,と言われます.また,近年,貧富の格差拡大に対して,ムバラク大統領は適切な対応を取らず,反対派を弾圧しました.パレスチナにおいては,37年にも及ぶイスラエルの占領と生活の破壊が,人々をハマスの過激な主張に導きました.また,和平の主体となったファタハはイスラエルによって亡命生活を強いられ,難民たちの暮らしを守ることから離れざるを得ませんでした.他方,ハマスこそは彼らの守護者でした.ハマスは無料配給を行い,ファタハの権力闘争や財源の奪い合い,腐敗とも無縁でした.

Dilip Hiroは,民主主義の敗北を議論するより,それぞれが現実に対処せよ,と主張します.またFTは,選挙結果を尊重し,政権に就いたハマスが現実的な政策を採用することを期待します.

Hamas and the new Palestinian reality FT January 27 2006

The Hamas test BG January 27, 2006

Monica Duffy Toft When terrorists go mainstream BG January 27, 2006

After the Hamas earthquake The Guardian Friday January 27, 2006

Jonathan Steele The Palestinians' democratic choice must be respected The Guardian Friday January 27, 2006

In the Mideast, a step back IHT FRIDAY, JANUARY 27, 2006

Beshara Doumani Hamas in charge LAT January 27, 2006

FOTINI CHRISTIA and SREEMATI MITTER Hamas at the Helm NYT January 27, 2006

Jim Hoagland Living With Hamas's Victory WP Friday, January 27, 2006

Hamas's Choice WP Friday, January 27, 2006

Protecting free elections for Palestinians CSM January 27, 2006 edition

(コメント) イスラエルの占領政策や一方的な引き上げとともに,ファタハの政治活動にも大きな欠陥があったと思います.ハマスは自爆テロで有名であり,他方,イスラエルはその指導者たちをミサイルで暗殺しました.彼らが交渉できるのでしょうか? もちろん,それが政治です.

The Guardianによれば,まずパレスチナ議会の132 議席中,43議席はファタハ,76 議席がハマスです.選挙に参加したハマスはその勝利を固めるため,銃や爆弾を置いて,ファタハとも閣僚ポストを分け合うでしょう.イスラエルとの停戦継続と和平交渉には,ハマスだけで対処できません.また,パレスチナ国家の財政には国際的援助が必要です.ハマスが強硬姿勢をとれば,イスラエルにおける強硬派が選挙に勝って,占領の強化と解放した地域への介入を再開するでしょう.

WPも,ハマス・ショックは和平を進める前に双方が堪えねばならないショック・セラピーである,と指摘します.ブッシュ政権やイスラエル,ヨーロッパは,その結果を軽視し,既存の方針を維持する旨の発言を改めるべきです.何よりもヨルダン川西岸とガザ地区の治安を回復し,生活条件を改善しなければなりません.ファタハがそれに失敗したことで,人々の絶望と怒りをハマスが吸収したからです.アラブ世界で重視される正義の報復を求める心が,和平によって得られるわずかな物質的報酬よりも強いことを,人々は示しました.しかし,曲折を経ても,その二つは同じ新しい秩序において満たされねばなりません.

アッバスが権力にとどまることも許されません.WPは,ファタハが政権を退くべきだ,と考えます.欧米は,パレスチナ政府に,民主的な制度の改革を援助の条件としてきました.政権交代と批判勢力の制度化,支配勢力へのチェックは重要な民主的政治プロセスです.

「難民生活や占領の苦しみ,自分たちの政府に裏切られたという想いが,多くのパレスチナ人に失うものなど何も無いと信じさせた.そうではない,と彼らに示すチャンスを,ハマスは得たのだ.」


Jan. 23 (Bloomberg)

Spain's Economic Miracle Is Running Out of Steam

Matthew Lynn

FT January 24 2006

Democracy and the future

By Martin Wolf

(コメント) 成長率を決めるものは何か? スペインの奇跡,は終わったのか? EU内の投資を集め,移民を集め,EU全体のインフレに従うECBからの金融緩和を受けて,スペインは後進地域としての補償やインフラ整備によって急速な追い上げを実現しました.しかし,住宅バブルが破裂するでしょう.スペインはEUの新しい成長モデルではないようです.

Martin Wolfの分析は,独裁制と民主制の成長を比較しています.独裁制が倒れても,民主制や成長が容易に導かれることは無く,むしろアナーキーが支配する場合も多いのです.そこでWolfは,最近,独裁制を倒した諸国,イラク,ロシア,レバノン,ウクライナ,チリ,タンザニア,を比較し,安定をもたらす要因を探します.

Daron Acemoglu and James Robinson, Economic Origins of Dictatorship and Democracy (Cambridge University Press, 2006) に拠りながら,独裁とアナーキー,民主制の違いを指摘します.「資源をめぐる争いは政治につきものである.政治体制の違いはその争いをどのように扱うかで示すことができる.すなわち,独裁制は(反対派を)弾圧し,アナーキーは内戦に至るが,民主制は合意されたルールに従う.民主制は文明化された政治的闘争である.それこそが,民主制の魅力であり,その脆さでもある.」

では,なぜ「持てる者」が「持たざる者」に譲歩するのか? その研究によれば,単に「持たざる者」を弾圧したり,「持てる者」を追放したりするのは,双方ともコストが大きすぎると考えるからです.多数派は,政策の変更よりも,政治システムそれ自体の変更を望むかもしれません.その意味で,民主制(による政治システムの変更)にエリートが頼ることは,もっとも安上がりな支配(そのルールへの双方の譲歩)なのです.

市民社会が発達して人々が容易に組織化できる中で,不平等が急速に拡大するなら,社会不安が高まります.一方では社会不安が増大し,他方では弾圧のコストが減少し,また,エリートたちが失うことを恐れる資源や特権が大きければ,民主制は独裁制に取って代わられるでしょう.不平等はエリートたちを民主制から離反させ,大衆の民主化要求を強めます.安定した中産階級が多ければ民主制に向かうとしても,中産階級の乏しい社会はポピュリズムをもたらす危険があります.

グローバリゼーションはポピュリズムの課税権を奪いますから,エリートたちに歓迎されます.また,労働集約的な財を輸出できる国はグローバリゼーションにより民主化されますが,不平等な資源の所有制に依拠する国は独裁(もしくはアナーキー)に向かいます.それにもかかわらず,経済発展とグローバリゼーションは民主化を促し,その逆も正しい,とWolfは楽観します.


FT January 26 2006

China to ease foreign exchange accumulation

By Chris Giles in Davos

FT January 26 2006

Environmental disaster strains China’s social fabric

By Richard McGregor and Fiona Harvey

BG January 26, 2006

Google's China web

By Frida Ghitis

Jan. 27 (Bloomberg)

If It Isn't Red, You Can't Read It on Google

William Pesek Jr.

(コメント) 中国の高成長には,さまざまなコストがともなう,と指摘されてきました.外貨準備を累積して国内投資が過剰になり,不良債権の累積した銀行システムに危機を内包していますし,所得格差の拡大や失業増,社会不安と並んで,環境破壊がはなはだしいと言われます.そして,政府による情報管理や政治的抑圧体制が,各地に不満を蓄積しているでしょう.

ダヴォスの世界経済フォーラムで,中国人民銀行の周総裁は,人民元レートの増価ではなく,特に地方において内需を刺激し,対外不均衡と外貨準備の蓄積を回避できる,と説明しました.経済改革が進み,教育,福祉,年金制度が整備されれば,人々は安心して消費できる,と.

他方,国境を越え始めた中国の環境破壊問題は,今後,世界規模の問題となるでしょう.近隣諸国の対応は非常に難しいものとなります.環境破壊は地方の生活基盤を破壊し,共産党の正統性を脅かすでしょう.その抗議は組織化されて北京にまで及んでいます.水の汚染,大気汚染,などは顕著に激化し,5カ年計画でも環境の保護を取り入れました.しかし,現場の発想は今も高成長一辺倒です.環境保護の最大の障害は,既存の政治・経済システムを変えようとしない北京と地方政府だ,と外交評議会の専門家Elizabeth Economyは述べます.エネルギーも水も安い.環境規制は甘い.・・・ そして,自動車の販売台数が伸びています.

インターネットが中国を倒すのか,それとも,中国がインターネットを倒すのか? Googleは,その信条を曲げて,中国政府の人権抑圧に協力しました.ブッシュ政権も,中国政府も,インターネット世界の検閲,監視,盗聴システムを構築し始めています.・・・もしかすると,あの膨大な迷惑メールやセックス・フレンド勧誘メールも,誰かが私を監視するために送ってきた・・・?

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The Economist, January 14th 2005

Danger time for America

Alan Greenspan: Monetary myopia

(コメント) アラン・グリーンスパンが賞賛と崇拝に包まれて引退するとしても,その危険な遺産をアメリカ経済が引き継ぐことを忘れてはいけない,とThe Economistは警告します.彼の評価を下すのは,その結果を見てからだ,と.

The Economistは,グリーンスパンの資産バブル奨励哲学を批判してきました.資産価格の変動は,ますます貯蓄や消費に影響を与えて,景気変動やインフレ,デフレにとって重要となっています.それにもかかわらずグリーンスパンは,資産価格については連銀が金融政策の対象に含めるべきではない,と主張しました.

なぜなら,1.金融政策はインフレ抑制と成長を維持するために使う.株価や住宅価格のために使うことはできない.2.資産価格のバブルを正確に判定することはできない.資産価格のバブルを金融政策で挫くことは危険である.3.資産価格のバブルが破綻してから,適切な金融緩和を行うことで,そのデフレ圧力を緩和できる,と考えたからです.しかし,三つの理由とも,The Economistから批判を受けています.

1.中央銀行の使命はインフレ阻止だけでなく,金融システムの安定性を維持することである.過去1世紀において起きた最大の株式バブルは,1920年代と90年代のアメリカ,そして1980年代の日本であったが,いずれもインフレ率は低かった.資産市場のバブルは,インフレと同じように,金融システムを大きく損ない,深刻な不況をもたらし,資源配分を歪め,貯蓄や投資を減らし,成長率や生産性を低下させる危険がある.

2.価格がファンダメンタルズを無視して上昇するときは,多くの指標がそれを示す.たとえば融資の伸びが異常に大きい.また中央銀行は,事前に,バブルを判定する必要など無い.金融政策は常に不確実性を扱うものであり,十分慎重であることを求められるとしても,何もしないことが正しいのではない.

3.金融政策は資産価格をターゲットにせよ,などと誰も主張していない.金融政策は常に株価の上昇に従うべきなのか,それとも,株価のバブルに対抗するべきなのか,ということが問題だ.

そして,The Economistは,イングランド銀行など,株価や住宅価格の上昇を重視する中央銀行が増えているし,ECBのようにインフレだけでなく融資の伸び率に注意する姿勢も見られる,と指摘します.グリーンスパン自身が,ようやく住宅価格のバブルについて警鐘を鳴らしました.

私の関心から思い出すのは,アイケングリーンが,株価に介入するのと同様に,為替市場に介入することは正しくない,と書いていたことです.株価に介入する必要があるように,為替市場にも介入すべきである,と認めるでしょうか?


Nuclear proliferation: Misreading Iran

Iran’s nuclear programme: When the soft talk has to stop

Economic growth: The jobless boom

China: Are you being served?

Anti-social behaviour: Soothing the savage breast

(コメント) イランをめぐる「グランド・バーゲン」とは,イランの安全保障をアメリカが約束することです.しかし,イランは現状維持を望みません.そうであれば,中東地域の非核化を目標とする諸国が協力することです.核施設をミサイルなどで一斉に破壊する選択肢は,イラン国内の政権交代できる穏健派勢力がいなければ,良い結果をもたらさない,と考えます.外交だけで十分とはいえないが,軍事的オプションはそれに劣る,と.

中国など,アジア諸侯の成長は,資本集約的な技術を用いた工業製品の輸出によって実現されています.それゆえ,失業者が増える危険を高めているわけです.もっと労働集約的な農業や都市のサービス産業を育てるべきです.

そして,現代の救貧法とも言える「反社会的行動取締法(ASBO)」について,イギリスの興味深い対応が紹介されています.日本でも,若者の嗜好や行動様式に法的な介入を求める声が強まってくると思います.重い刑罰や迅速な逮捕を可能にしても,それはコストがかかり,社会から取り除けるわけでもありません.むしろ,警察より家庭と学校です.