IPEの果樹園2006

今週のReview

1/23-1/28

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :ポピュリズムか,社会主義か? キング牧師 パラノイア

安全保障 :イラン核開発NATO

貿易・投資 :石油とロシアへの投資,情報産業と中国への投資

通貨・金融 :世界の通貨は多すぎる?

世界統治 :中国インド日本の高齢化,ドイツ,

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, JTJapan Times, CSMChristian Science Monitor


Mark Fitzpatrick Time is running out to halt Iran’s nuclear ambitions FT January 10 2006

Daniel Dombey in Brussels, Gareth Smyth in Tehran and Frederick Studemann in London Iran defies UN to break seals at nuclear plant FT January 10 2006

Persian poker FT January 11 2006

Simon Tisdall Tough response may seem inevitable but could play into Tehran's hands The Guardian Wednesday January 11, 2006

George Perkovich The Security Council must curb Iran's nukes IHT WEDNESDAY, JANUARY 11, 2006

Getting tough with Tehran LAT January 11, 2006

(コメント) イラン政府が核兵器に使用できるようなウランの濃縮を行うことに対して,アメリカもEUも,絶対に阻止しなければならない,と考えています.イラン政府がイスラム原理主義・強硬派の大統領に変わったことで,もし彼が核兵器を手にすれば,世界核戦争の勃発に近づく,と考えられています.

フランスやロシアは,イラン政府に,政治的な面子を保てるような「共同開発」を提案してきました.そうすれば,イラン政府が国内にウラン濃縮を行える技術を持つことを,阻止できるからです.また,IAEAによる査察と平和的利用の可能性も認めています.アメリカ政府は,従来の主張と矛盾していますが,こうした交渉を支持しています.それは安保理決議の前に,すべての選択肢を試みる必要があるからです.

これまでEU3(イギリス・フランス・ドイツ)は,アメリカの強硬派と異なり,より包括的な政治・経済協力を進めるという支援策も含めて,イラン政府にウラン濃縮を行わないように「レッド・ライン」を示してきました.しかし,さまざまな事情によって,イラン政府はこれに縛られることを嫌い,監視されていたNatanzの濃縮施設を再開し,IAEAの査察団を追放しました.これまでの制限を明確に破棄したと思われます.2003年にアメリカが安保理に諮ろうとしてから2年が経ちました.EUも,イラン支援と核凍結という交渉姿勢から,アメリカと並んで,国際機関を介した制裁に傾く展開へ変わったわけです.

平和利用だと主張して核兵器を開発する.それをアメリカやEUは阻止するために制裁を発動するという警告を行う.このポーカー・ゲームにおいて,イランは5つの強い交渉カードを持っている,とFTは考えます.

@イラクの選挙で勝利したシーア派はイランに好意的であるから,アメリカ軍をイラン国境に移動するのは危険である.

Aイランは,アメリカとヨーロッパとの反目を利用できる.

Bイランの聖職者・保守派は国内の政治体制を改革派から切り離して選挙に勝ち,イスラム原理主義者のアハマディネジャドが大統領になった.

Cイランは,これらの作業を自衛権やNPTで許される範囲内の行動だ,と主張し続ける.

Dイランには豊富な石油と天然ガスがある.これを利用すれば,中国やインドが姿勢を変える余地がある.また,原油価格の高騰がアメリカ経済に深刻な打撃を与える,という脅しとなる.

それゆえ,アメリカ,EU,中国,ロシアの一致した要求だけが,イラン政府の姿勢を変える力になるでしょう.もしイランが姿勢を変えなければ,安保理決議に向かうことです.しかし,各国の姿勢には温度差があります.もしイランが国連を離脱したら? あるいは,アメリカとEUが,中国やロシアが,NPTや安保理に不満を持つインドが,ばらばらになってイランの核兵器開発を阻止できなかった場合は? NATOが軍事介入するでしょうか? あるいは,・・・イラクのシーア派政府がイランを説得する? 核兵器に頼らず,一緒に欧米支配を翻そう!

2003年に,国連安保理に諮ろうとした際,ロシアが拒否権を行使する恐れがありました.アメリカはEUが交渉で解決できるとは信じていませんでしたが,そのような試みを歓迎しました.他方,中国やロシアも,アメリカやEU,IAEAなどがイランの核開発を阻止し,イランと自分たちのビジネスを損なわないことを願った,と指摘されます.さまざまな中間の道が模索されてきました.

しかし,より強い査察権などがなければ,IAEAが紛争の解決を独自にもたらすことはありません.たとえば,疑いのあるすべての施設に,60日以内に査察を受け入れ,その後,10年間の査察を認めることです.安保理がそれを承認しなければなりませんが,常任理事国の拒否権が問題になります.

ロシアのプーチン大統領が,イランとの貿易を通じて経済制裁の効果を損ない,拒否権を行使する可能性を示して決議を妨げれば,ロシアとも敵対し,あるいは友好関係を深めてイランから切り離すべきでしょうか? また,北朝鮮やイスラエルなど,イランより先に核保有の疑惑を持たれている国に対して,同様に,明確な行動を取れるでしょうか?

Timothy Garton Ash Let's make sure we do better with Iran than we did with Iraq The Guardian Thursday January 12, 2006

RICHARD BERNSTEIN Europeans Want U.N. to Act on Iran's Nuclear Activities NYT January 12, 2006

THOMAS L. FRIEDMAN The Axis of Order? NYT January 13, 2006

Avoiding critical mass with Iran CSM January 13, 2006 edition

(コメント) Timothy Garton Ashによれば,何よりも,北朝鮮の金正日を超える「半狂人」のMahmoud Ahmadinejadがイラン大統領となったことに,ヨーロッパはショックを受けているようです.繊細な駆け引きや外交上の損得計算など,もはや意味が無いのでしょうか? その背後では,国内政治を支配する聖職者たちが,莫大な石油収入によって国民生活を快適に維持できる,と理性的に計算しているでしょう.彼らはまた,ロシアや中国が欧米とまったく異なった利害を重視しており,また,ドイツやイタリアはイランとの貿易を失うことに気が進まないことも計算している,というわけです.

安保理による制裁決議,という次のステップを踏み出せるでしょうか? それでもイランは濃縮作業を継続し,制裁がイラン国内の政治体制を(その支配力も正当性も)むしろ強化する可能性があります.自分たちは平和利用のために,権利を主張しているだけだ.アメリカはインドの核保有をNPTに反して事後的に承認した.他方,イランには制裁を課している,と非難するでしょう.

では,アメリカやイスラエルは,各施設を軍事的に破壊する,という選択肢を検討しているのでしょうか? 各施設の情報やピンポイント爆撃の正確さは誇張されています.むしろ,イランに存在する多数の欧米を支持する改革勢力こそが,真っ先に軍事的オプションの最大の犠牲者になるでしょう.イランとともに西側の強硬派が対立をエスカレートさせ,テロなど,軍事的選択肢が乱発されるかもしれません.

では,どうすればよいのか? Ashは意外なことを考えます.イランの支配体制は複雑で,予測しがたい.Ahmadinejadは独裁者ではなく,むしろ革命評議会など,イスラム革命体制を守る原理主義者が重要である.他方,イラン社会は,その政治体制と異なり,アラブ世界の中でもっとも西洋的である.イスラエルを除けば,われわれの重要な仲間になりうる,と.イランに革命を,と唱えたアメリカのネオコンを強く批判しますが,国内の改革派を支持する政策が必要です.

他方,THOMAS L. FRIEDMANは,北朝鮮のケースと同様に中国が,ロシア,インドとともに,国際システムにおける責任を果たすように求めます.「冷戦期に,共産圏であったロシアと中国はアメリカと敵対し,社会主義的なインドは中立であった.しかし冷戦が終わって,これら3カ国は資本主義を受け入れ,世界経済の参加者,そして最大の受益者になっている.ロシアは石油・天然ガスを売り,中国は工業製品,インドはソフトウェアを売って,大きな利益を上げているのだ.それゆえ,彼らが国際システムの安定性に主要な責任を負うのは当然だ.」

ところが,実際,彼らは「フリー・ライダー」です.国際システムの安定性はアメリカが,EUやNATO,日本の支援を受けて維持しています.むしろ中国やロシアはシステムを破壊する諸国に協力し,利益を得ています.もし,そのような姿勢を変えず,イランの核武装を許してしまえば,中東を中心に,アジアからヨーロッパまで,深刻な不安定化が生じるでしょう.ポスト冷戦の国際システムが試されているのです.

いずれの国も,安全保障だけでなく,社会の安定性や失業緩和に対して政府が責任を負っています.そのような国内経済・政治の変化を反映して,ロシア,パキスタン,イスラエルなど,イランと同じような核兵器・技術の流出や開発について疑惑を受ける諸国は,国際ルールの遵守を求める欧米に対して,協力的にもなれば,強硬にもなります.それゆえ,常に,軍事的オプションだけでなく,アメとムチの政策を比較することが重要なのです.

Selig Harrison It is time to table security issues with Iran FT January 17 2006

Simon Jenkins The west has picked a fight with Iran that it cannot win The Guardian Wednesday January 18, 2006

Charles Krauthammer The Iran Charade, Part II WP Wednesday, January 18, 2006

Philip Bowring Who's afraid of big, bad Iran? IHT WEDNESDAY, JANUARY 18, 2006

Shirin Ebadi and Muhammad Sahimi Defusing Iran with democracy LAT January 19, 2006

(コメント) Selig Harrisonは,イランを説得できるとしたら,それは経済制裁によってではなく,イランが参加する安全保障の枠組みを拡大し,強化することだ,と主張します.EUと合意した際にも,アメリカはそれに加わりませんでした.イラン政府が懸念するのは,アメリカがいつか少数民族などを扇動して,イランに政治体制を軍事的に転換するのではないか,ということです.アメリカがイランを取り囲むように軍事拠点を設けていることを,イラン政府が強く警戒し,核開発を対抗手段として持つのであれば,保守強硬派との交渉は経済制裁やIAEAの問題ではなく,アメリカと地域安全保障の問題です.

Simon Jenkinsは,イランの核武装さえも安全保障体制の一部としてなら受け入れるべきだ,と考えます.イランが核武装するのを誰かが止められる,と考えるほうが非現実的であり,勝ち目のない戦い,男性誇示や好戦的な政治宣伝に過ぎません.その歴史,文化,人口,首都,石油,どれをとっても,欧米が軍事的に制圧することを許しません.

他方,1968年に成立して移行,核拡散防止条約(NPT)は核保有大国が非保有国を支配するための軍事的なカルテルでした.それはアメリカと親しい,利用できる国だけが新規に核保有を許される体制です.一方,イランの周辺は核保有国で囲まれています.ロシア,インド,パキスタン.その上,核保有のアメリカ軍がイラク,アフガニスタン,中央アジアに駐留し始めたのです.イランが自衛のために核武装する,と決めたのであれば,これを阻止することはできません.

イランは地域的な覇権国であり,ブッシュとブレアは,その意図に関わらず,イラクの政治体制と軍事力を粉砕することで,イランの影響力を強めたのです.

Charles Krauthammerは,結局,EUがアメリカと協力してイランと戦う決意を得るには,これほどの時間がかかったということだ,と考えます.他方,Shirin Ebadi and Muhammad Sahimiは,核武装する国が民主化されれば,新しいNPT体制を築くことができる,と考えます.アメリカ政府は改革派のイラン政府が核開発を支持していたときに,イランの核武装を懸念するあまり,その政治的な親欧米路線を損なう態度を取り,強硬派を台頭させてしまいました.それゆえ,核兵器で対立するよりも,政治体制の改革余地に注目します.


IHT WEDNESDAY, JANUARY 11, 2006

NATO's future on the line

William Pfaff

FT January 18 2006

Nato’s future credibility is now in Dutch hands

By Mark Joyce

(コメント) 冷戦期の安全保障を担ったNATO(the North Atlantic Treaty Organization)も,アメリカとヨーロッパ諸国との間で,将来に向けての展望が食い違っています.

オランダ人は実利的で,現実的・合理的な考え方をする国民であると言われます.NATOがソ連の軍事的脅威からヨーロッパを守るために必要であったとしても,イラクにアメリカ軍を移動させるためにオランダ軍がアフガニスタンで危険な任務に就くのを受け入れるべきだろうか? オランダ議会はそのことを議論し始めました.冷戦後のNATOについて,イラク侵攻の際に安保理決議が否決された結果,アメリカ政府はヨーロッパだけでなく,中東,アフリカ,アジアなど,世界全体でNATOは高度な軍事的任務に就く必要がある,と考えています.それゆえ,オランダがアフガニスタンから撤退するのは,NATO内の重大な違反行為である,と批判します.

NATO軍はアメリカの軍事的な指揮下にあります.それゆえヨーロッパ諸国は,アメリカの始めた世界中の戦争に巻き込まれることを恐れます.他方,ヨーロッパ諸国は,それぞれの軍隊をそれぞれの権限や形式においてばらばらに動かしており,アメリカに比べ,軍事力としては大幅に劣っています.


The Guardian Thursday January 12, 2006

India tilts to the west as the world's new poles emerge

Charles Grant

Asia Times Online, Jan 13, 2006

No 'Great Game' between India, China

By Pallavi Aiyar

(コメント) Charles Grantは,中国とインドがこのまま成長を続けて,世界が多極的なシステムに変わるとき,アメリカはEU以外に誰と同盟を組めるか? と問います.中国の政治家や知識人は,当面,経済規模が小さく,アメリカ市場を必要とする限り,協力するだけで,長期的にはアメリカと敵対するだろう,と考えています.他方,インドはアメリカに近づく理由があります.まず,核兵器の保有が受け入れられ,国際的な孤立から抜け出す上で,アメリカの支持が欠かせません.また,中国の台頭に対して脅威を感じています.さらに,中国の新興資本家たちはアメリカとの協力に明らかに大きな利益を見ているでしょう.

しかし,Pallavi Aiyarの記事やLexは,中国とインドのエネルギー分野の協力について考察しています.安全保障やエネルギーの確保をめぐって,中国とインドが「グレート・ゲーム」を再現することは無い,と北京を訪問したインドのエネルギー相は発言しました.しかし,インドからのさまざまな協力の提案にもかかわらず,資金力のある中国企業は既に次々と拡張や国際買収を遂げています.両国あわせれば世界需要の35%に達することから,パイプラインの建設など,シナジー効果が存在するでしょう.

NYT January 17, 2006

They're Rounding the First Turn! And the Favorite Is . . .

NICHOLAS D. KRISTOF

21世紀の大競争が中国とインドの間で始まっています.そのどちらが2100年に世界を指導しているのか?

インドの(そして中国の)最大の強みは,その教育熱である.アメリカのほとんどの雑誌は漫画で読者を集め,イギリスのタブロイド紙はトップレス女性の写真で読者を奪い合っている.しかし,カルカッタの日刊紙は数式についてのコラムを設けている.三角関数の記事で読者が集まることなど,想像できるだろうか!

カルカッタの貧困地区にある,がたがたの幼稚園・小学校,Hasi Khusi Kindergarten and Primary Schoolを訪れた.多くの生徒たちの両親は,文字を読めないクズ拾いであったり,輪タクのドライバーであったり,貧しい労働者であった.平均的な家族の収入はつきに23ドルしかなく,子供たちを入学させるのに13ドル支払い,その後は2ドル30セントの月謝を納める.

「親たちが得られなかったものを,この子供たちは手に入れるに違いないのです」と,校長は説明した.幼稚園児でさえ,英語,ベンガル語,算数,芸術,音楽を学ぶ.そして30分の宿題が出る.こうした私立学校がインド中でブームとなっている.

インドの限りなく大きくなる英語人口を考えると,アウトソーシングの波は続くだろう.あなたの次の就職先はインドの法律事務所かもしれない.あなたは個人資産をインド人のアナリストに相談し,電子外科手術が必要なら,豪華なインドの病院に入院できる.アグラやゴアで,健康回復の休暇もかねて治療を受けるのが良いだろう.

インドには堅実な金融システムがある.他方,中国の銀行は破綻している.インドの人口変化は長期的に健全だ.中国は既に人口計画の利益を受けてしまい,今後は急速に高齢化する.インドの労働人口は何十年も豊富にある.

インドの民主主義,自由な新聞.市民社会は政治的安定性の基盤である.もちろん,インドにも対立はあるが,社会・政治的な爆発は起きそうにない.他方,中国の不安は高まっている.台湾や韓国がそうであったように,中国が何とか民主化を成し遂げるとしても,クーデタや大衆暴動,内戦さえも起こりかねない.

しかし民主主義は,インドの長所であるが,欠陥でもある.シン首相はやるべきことを正確に理解しており,まれに見る有能な指導者であるが,カリスマ性に欠ける.その改革はインド政治の迷路に妨げられて行き詰まり,遅れている.インドの経済政策は,中国ほど迅速かつ成長志向ではないのだ.

それは残念なことだ.インドが民主主義の優位を示してくれることを願っている.しかし,インドの立法府はそうではない.

外国人はいまだに,小売など,いくつかの分野に投資することができない.民営化も遅い.食糧補助金は莫大な無駄遣いだ.労働規制の法律は企業が新規雇用することを妨げ,企業家精神を窒息させている.その挙句,インドは好景気にもかかわらず雇用が増えない.ハイテクや製造業でわずかに100万人が雇用されただけであるが,規制がなければ,それは数千万人の貧しい地方の労働者を雇用し,バングラデシュにも及ぶものであっただろう.

中国では驚くべき速さでインフラが整備されつつあるが,インドは哀れなものだ.インド経済の未来は,粗悪な道路と港によって損なわれるだろう.また,インドはエイズ危機にも対応できなかった.既に世界最大のエイズ感染者がいるかもしれない.

要するに,私は,インドがその何世紀にも渡る休眠状態から覚醒しつつあるし,中国ほど政治的な麻痺のリスクも無いと思う.インドは再び世界大国になる用意がある.

しかし全体として,私は中国がまだ高成長を続け,今世紀の競争で勝つだろう,と思う.だから子供たちには,中国語を学ぶように,と言う.ヒンドゥー語に変えるのはまだ早い.


Jan. 13 (Bloomberg)

China's Conundrum Tops Greenspan's Riddle

William Pesek Jr.

(コメント) 中国の抱える「難問」があります.それは,世界市場と国内融資拡大,という双発エンジンが停止する危険が強まってきたことです.世界市場が減速する前に,中国は不良債権を処理し,もう一つのエンジンを動かすため,銀行システムを再建しなければなりません.しかも現在の国内景気は,地方政府が競争的に行う巨大な開発プロジェクトによって加熱しています.さらに人民元の調整も,まだ行われていません.

Don't blame China LAT January 13, 2006

FLOYD NORRIS Best of Worlds, Unless China Alters Course NYT January 13, 2006

Erik Mobrand Virtual vagabonds Asia Times Online, Jan 14, 2006

Trading bad ideas on China's surplus FT January 16 2006

Robert B. Reich The Chinese Express The American Prospect 01.17.06

(コメント) 2005年の対米貿易黒字が1140億ドルに達する中国を,その共産主義体制や人民元操作,製造業の過剰投資と輸出の洪水,などで責めるのは簡単です.香港経由の輸出も含めれば2000億ドルとも推定されます.しかし,LATは,アメリカの政治家がこの二国間不均衡を利用するべきではない,と主張します.米中関係は一方的な寄生ではなく,共棲関係である,と.

コストコやウォルマートが中国製品を並べても,それでアメリカ経済が倒れる心配など無い.むしろ中国の中央銀行は,アメリカ人が消費できるように資金を還流するのに忙しい.人民元や銀行システムの改革に取り組み始めているが,それには時間がかかる.成長する中国経済が世界にもたらしている利益は,決して責められるべきではない,と.

FTも,ヨーロッパの視点から,同様に,中国の経常黒字を,各国が赤字部門の保護によって減らすのではなく,中国自身の自由化と改革に向けるべきだ,と支持しています.

FLOYD NORRISは想像します.実現可能な最善の世界とは,思いのままに借り入れて支出でき,また他の者が貯蓄してその消費を融資してやれる.経済は安定した率で成長し続け,インフレは決して高まることなく,金利水準も常に親しめる程度である.」 実際,2006年の経済予測はそれに近いのです.

アメリカから見れば,世界経済はこの上なく満足できる状態である,と言えそうです.しかし,唯一の暗雲は住宅市場でしょう.長期金利の上昇が起きれば,一気に予測が暗転します.そうでもない,と皆が思うのは,連銀が金利上昇をすでに行った,と考えたからです.しかし,長期金利を決めるのは債券市場であり,ドル建て債券を購入するアジアの中央銀行ではないか,とNORRISは懸念します.アジアが国内市場の加熱を心配するとき,アメリカの長期金利が上昇する,と.

中国政府は,通りに増える乞食を追い払うのに苦心しています.しかし,乞食は表通りから追い払われても,意外なところに現れます.ついには"online begging"となって,ウェブ上にも現れました.これに対して,政府は貧困対策より,乞食を装った詐欺について国民に警告し,また,インターネットの管理強化をめざしています.

中国の変化は,アメリカがまさに歴史的に経験してきたことだ,とRobert B. Reichは指摘します.ただし,数世代ではなく,中国はこれをすべて15年でやってしまった.その社会変化は急激であるから,さまざまな抵抗や対立が生じている.民主主義なしに,こうした問題をどうやって解決できると言うのか?


NYT January 12, 2006

The Lawbreaker in the Oval Office

By BOB HERBERT

WP Friday, January 13, 2006

Spying Within the Law

By David Ignatius

NYT January 15, 2006

The Imperial Presidency at Work

LAT January 15, 2006

The myth that shapes Bush's world

By Mark Helprin

(コメント) 憲法も知らない愚か者! 確かに,テロリストの仲間がいるなら,アルカイダとの通信を傍受したいのでしょう.しかし,アメリカには市民を守る憲法も裁判所もある.ここはソ連でも中国でもありません.ブッシュ氏は,72時間以内に,裁判所で傍受の理由を説明し,認められる必要があるのです.それでもブッシュ氏は,アフガニスタンやイラクで戦争が続いているように,戦時において大統領は市民の自由を制限できる,と主張します.

最初は,誰がニュー・ヨーク・タイムズに盗聴の話をばらしたのか捜査する,と憤慨していた姿勢を転換し,国家安全保障局のために大統領の権限強化を議会が認めることは,「民主主義のためになる」と,ブッシュ氏は主張しました.ただし,そのモデルとなった1978年の法律は,ソ連と敵対した時期のものでした.その後の通信技術の進歩も重要です.つまり今や,誰が,どの通信が疑わしいか,区別することはできないのです.

ブッシュ氏は,憲法や法律の問題を解決できると考えました.すなわち,秘密の監獄も,拷問も,盗聴も,大統領が必要だと言えば,認める,という法律を作ればよい! 9・11に反撃するために,アメリカが200年にわたって尊重してきた憲法を変えても良い,などという国民的な合意は存在しない,とNYTは批判します.

ブッシュ氏は,民主主義国は平和的な国家である,というのが永遠の真理であるかのように主張します.歴史を振り返れば分かるように,それは間違いです.そのような基準は,優れた外交方針になりません.


FT January 13 2006

Unshackling Japan

FT January 14 2006

Empire of the son

Jan. 16 (Bloomberg)

Durex Offers Japan a Population Wake-Up Call

William Pesek Jr.

(コメント) FTは,日本経済がその旧体質と産業構造をいつまでも温存している,と不満を表しています.それゆえ,竹中大臣が進める通信・放送の自由化を支持します.それどころか,スローガンばかりで,実際には旧勢力との妥協を重ね,大した改革もしていない小泉首相ではなく,竹中平蔵に日本経済革新の突破口を開いてほしいようです.しかし竹中? ・・・誰であれ,与党でも野党でも,本気で日本の経済改革を考えている政治家が他にいないのでしょうか?

皇室典範の改正問題が,政治的な関心を集めました.それは日本の社会構造や天皇制を問う,良い機会でもあったはずです.しかし,その後,姉歯建築士・耐震強度偽造問題,幼児誘拐・殺人事件,さらにライブドア・ホリエモン強制捜査,東京証券取引所閉鎖,など,不気味な社会的劇症肝炎が広がってしまい,個々の問題が追及されなくなっています.まるで病気の展覧会です.小泉チルドレンが100件以上の法案を通過させる,という「止めるな!国会」と並行して,ますます怪異な社会・政治的変容を予感しませんか?

こんなに子供を産まないなんて,きっと日本人はセックスしないのだろう,とWilliam Pesek Jr.は欧米人の正直な反応から論説を始めています.世界の137カ国を調査したDeruxコンドーム社の統計!によれば,実際,日本人は最下位に位置し,年間平均45回しかセックスしない.他方,もっとも多忙な?ギリシャ人は137回(平均で? ・・・!!!),アジアは順位が低く,最高位のタイでも97回,ということです.

では,なぜアジア人は性愛を拒むのか? ストレス,住環境,そして,たとえ匿名でもアジア人は頻繁なセックスを認めたくない? ・・・もちろん,この統計が真実である保証はないのです.ここでの問題は,アジア最大の経済,日本で起きている人口減少です.既に重要なヘッジファンドの間でも,それが日本への投資を嫌う理由になっています.日本は人口減少で国債を支払えなくなる,というのです.

日本人には三つの選択肢がある,とWilliam Pesek Jr.は考えます.女性たちを説得して子供をもっと産んでもらう.移民を大規模に歓迎する.あるいは,このまま衰退する.日本人は同質的な社会を好むあまり,移民流入を促す法改正を避けています.そして,女性が多くの子供を産める社会を作る,というスローガンは,いつものように小泉氏の人気取りに過ぎないようです.


LAT January 14, 2006

The facts on Moscow's side

By Dimitri K. Simes

NYT January 15, 2006

Energy Impasse

FT January 17 2006

Europe must face threat to energy supplies

By Paolo Scaronichief executive of Eni, the Italian energy group

(コメント) ソ連時代の補助金をやめて市場価格にする,というロシアの主張はもっともな理由があり,アメリカ政府はヨーロッパの不満に同調しないほうが良い,とLATNYTは考えます.特に,イランの核開発問題を扱う際には,同盟国としてのロシアが重要です.

天然ガスに大きく依存するイタリアのエネルギー企業を代表して,Paolo Scaroniはエネルギー安全保障に政府の関与を求めます.これまで規制緩和と民営化,競争促進ばかり唱えてきたEUも,石油価格の高騰とパイプラインに依存することの危険性に気づいたはずだ,というわけです.もっと供給国を増やし,新しいパイプラインを敷設し,液化天然ガスの輸入港も増やすべきだ(しかも政府の投資により)と主張しているようです.


FT January 15 2006

Populist delusions block Latin America’s progress

By Marifeli Perez-Stablevice-president for democratic governance at the Inter-American Dialogue

WP Wednesday, January 18, 2006

A Leader for the 21st Century

(コメント) Marifeli Perez-Stableは,最近相次いだラテンアメリカの左派指導者誕生について,民主主義と市場改革がまだ十分に支持されていない,と嘆いています.たとえポピュリズムに政治的なシンボルとしての強い力があるとしても,本当に貧困を救うことができるのは安定したマクロ経済を維持し,教育やインフラに投資し,腐敗を無くし,責任ある政治指導者が市場改革と民主化を維持することである,と.

ボリビアでは先月,先住民の初めての大統領としてEvo Moralesが当選しましたが,他方,チリでは女性の新しい指導者Michelle Bacheletが当選しました.WPは,二人がともに左派の指導者でありながら,まったく対照的な考え方を示している点に注目します.

Moralesがめざすのは,半世紀も前にラテンアメリカに現れた,国家主義的な社会主義運動,ポピュリズムの復活です.Moralesは石油と天然ガスの資源を国有化すると宣言し,既に外資に売却していた国有企業について,その契約を反故にし,国際金融界の反感を買っています.ベネズエラのHugo Chavezが行っているように,国営企業を使って貿易や投資から利益を吸い上げることができる,と思ったわけです.しかし,とWPは主張します.このような政策は世界中で失敗したのであり,ラテンアメリカでだけ,その怨嗟に染まった階級政治と,反アメリカ主義と,権威主義的勢力が復活させるのだ,と.

他方,チリはますますラテンアメリカよりもヨーロッパの小国に似てきた,と考えます.Bacheletは,寛容で,シングル・マザーで,都会的で,外国を旅行した経験が豊富な女性です.彼女は,ヨーロッパの社会民主主義と同様に,現在の成長の基盤を損なうことなく,平等を実現したい,と考えています.すなわち,チリは自由な貿易と投資,自由な市場によって,ラテンアメリカの人々が嫌う「ネオ・リベラリズム」により,成長を実現しています.前大統領のRicardo Lagosは,アメリカと自由貿易協定を結ぶだけでなく,EU,中国,インドとも貿易協定を結びました.

ラテンアメリカの指導者たちは,チャベスではなく,チリの経験から学ぶことです.それこそが,21世紀にも生きる社会主義であろう,と.


LAT January 15, 2006

Mexico's burden

By Sergio Munoz

NYT January 16, 2006

Immigration Vacuum

(コメント) アメリカとメキシコの両国籍を持つSergio Munozは,国境に壁を築こうとする政治家たちを強く批判します.壁は移民を阻止できないし,メキシコは改革を進めて国内の雇用を増やすべきだ.たとえ人々を壁によって分断できても,それがもたらす絶望は双方を荒廃させる,と.

メキシコ系移民を締め出す間違った行動がますます各地で取られている,とNYTは心配します.たとえば,バージニア州のある市議会は,多くのヒスパニックが一部屋に集まって住むことを禁止しようとしました.また,アメリカの領土を横切る移民をすべて告訴しようとしたニュー・ハンプシャーの警官が,そのような行為は違法であるにもかかわらず,反移民感情に沸く住民たちから熱狂的に支持されました.コネティカットのある郡では,南米の労働者が好むという理由で,バレーボールを禁止しようとしました.

最近議会で提案された法案は,700マイルもの壁を含む,さまざまな愚かな移民排除策を並べていますが,中でも移民たちを助けるすべての者に重罪を科すよう求めています.避難所を提供する協会や,隣人を車で送った市民まで,犯罪者にしたいのか?


NYT January 15, 2006

Scorched Earth

By ROBERT L. PARK

WP Wednesday, January 18, 2006

Is It Warm in Here?

By David Ignatius

(コメント) 本当にガスによって地球温暖化が起きるのかどうか,NASAは宇宙空間に観測所を設ける計画を廃棄しました.1998年に始まったTriana計画です.ブッシュ政権に変わって,温暖化への関心が失われたからです.

蝶の移動経路が変わった,というのは大きなニュースでしょうか? それこそ地球温暖化の証拠だ,と考える科学者もいます.アマゾンの熱帯雨林や,南極の氷河よりも,身近に観察できます.しかし,それらは関連しているのです.Thomas E. LovejoyElizabeth Kolbertの示す,この惑星の循環システムに対する真剣な警告は,他の多くのニュースよりも重要だけれど,伝えられません.たとえ人類にとって歴史的に重要なニュースでも.


FT January 15 2006

No quick fix for German malaise

By Wolfgang Munchau

NYT January 17, 2006

Rumblings of a German Revival

By MARK LANDLER

(コメント) 日本人は,今も,ドイツから学ぶことが多いようです.

ドイツ経済は「空洞化」もしくは「バザール経済化」して,輸出による幻の好況を演出している,とWolfgang Munchauは考えます.投資も雇用も増えないのに,周辺諸国に移転された工場が「ドイツ製品」を「輸出」しているからです.もっと解雇と新規雇用を容易にし,社会保障を削り,賃金を引き下げるべきでしょうか? Munchauは,経済の弾力性を回復し,マクロ経済管理を効果的に行い,ユーロ安も必要だ,と考えます.

メルケルの大連立内閣は,ドイツの4年に及ぶ不況から抜け出せるでしょうか? ドイツには意欲的な首相が誕生し,企業が再生する肥沃な生産条件を周辺地域が提供しています.工場の海外移転と労働組合の譲歩が並行して進みました.輸出が伸び,雇用が回復し,さらに消費が上向いてくれば,ドイツは立ち直った,と言えるわけです.


Flat Earth, tangled Web BG January 15, 2006

Jonathan Mirsky China's tyranny has the best hi-tech help IHT SUNDAY, JANUARY 15, 2006

William Pesek Jr. Chinese Should Boycott Microsoft and Yahoo Jan. 18 (Bloomberg)

Beijing's New Enforcer: Microsoft NYT January 17, 2006

(コメント) 中国政府からの圧力で,マイクロソフト社は反体制派のジャーナリストZhao Jing.が政府批判を行っていたウェブ・サイトMichael An Tiブログを閉鎖しました.

世界最大の市場を支配できる中国政府の要求に,逆らえる企業はありません.マイクロソフト,シスコ・システムズ,ヤフー,グーグル,サン・マイクロ・システムズ,・・・ 人権にうるさいアメリカ政府でさえも.

環境を汚染しない,労働条件に優れた,社会的責任を重視する,ハイテク企業のイメージは,市場獲得のために政府の抑圧体制に協力する権力の手先へと変化しました.週末にインターネットへのリンクを回復したAn Tiは唱えます.「中国人民を開放するのは非常に困難だ.・・・ (情報空間の)万里の長城を倒せ! マイクロソフトを倒せ!」


BG January 15, 2006

What King really dreamed

By Rich Benjamin and Jamie Carmichael

NYT January 16, 2006

Globalizing King's Legacy

By TAYLOR BRANCH

(コメント) 115日のマーチン・ルーサー・キングJr記念日に,彼が本当に求めていたものを考えます.「物に執着した社会から,人間中心の社会に,われわれは移行しなければならない.機械やコンピューター,利潤動機,所有権が,人民よりも重視されるなら,人種差別主義,行過ぎた物質主義,軍国主義という三つ巴の悪を克服することはできない.」と,キング牧師は1967年,暗殺される1年前に演説しました.

キング牧師は,急速に,アメリカの,そして世界の経済的不平等をなくすことへ関心を向けました.しかし,1960年,アメリカの所得上位20%が,最下位20%の30倍豊かであったところから,40年を経て,75倍の格差へと,むしろ不平等は拡大しています.アメリカの労働者は20年前よりも長時間働き,しかも賃金は少ない.5400万人の労働者は健康保険を持っていない.3700万人が貧困生活を送っている.・・・

キング牧師は始めたのは,こうした資本と機会に対する不平等をなくす戦いであった,とRich Benjaminらは考えます

また,キング牧師の「非暴力」の理想も,グローバリゼーションの時代によみがえるでしょう.それは,世界の人種差別,人権抑圧,戦争やテロに対して,人民の自由と,投票による解決を呼びかけるものでした.


FT January 16 2006

Developing world should abandon local currencies

By Benn Steilthe Council on Foreign Relations

FT January 19 2006

A new way to deal with the renminbi

By Morris Goldstein and Nicholas Lardy(IIE)

(コメント) 世界には通貨が多すぎる! 関税同盟が市場の統合から政治統合をもたらしたように,今や通貨同盟を世界中で模索するときでしょうか?

Benn Steilは,国際金本位制を復活させるべきだ,と主張します.金本位制は不安定ではなく,むしろ各国が対外赤字を円滑に融資でき,世界経済の成長を維持するのに役立ってきた,というわけです.他方,世界が200もの異なる通貨からなる世界では,為替レートを固定することは難しく,かといって変動レート制が,経済学のテキストが説明するような,為替レートの調整や金利の変動を隔離する効果は見られませんでした.むしろ発展途上国はドルに固定して資本流入を促し,過熱した経済と金融破たんを繰り返したのです.

Steilによれば,独立した通貨主権など幻想であり,21世紀に守るべき効用など無いのです.各国の中央銀行は,たとえば世界のコーヒー価格が下落しても,生産を転換するより,他の分野を犠牲にして通貨政策でコーヒー生産を維持しました.そうした政策が貧困を拡大するのです.自由な資本移動はグローバリゼーションのアキレス腱ではない.むしろ,すべての国が世界市場で受け取られる通貨,すなわちドルかユーロを採用するべきだ,と.

Morris Goldstein and Nicholas Lardyは,中国について考えます.ここでは,もちろん,自由な資本移動を拒んで,実質的な対ドル固定レート制の下,国家管理が行われています.人民元が過大評価された水準で固定されていることの弊害が指摘されます.そして,二段階改革プラン(切上げ + 弾力化)が示されます.@この数ヶ月以内に,人民元を1015%増価させる.A人民元の変動幅を拡大する(通貨政策の自由を得る).B増価に夜引き締め効果を相殺するため,財政支出を増やす.C銀行が強化されるまで,資本規制を続ける.

もし,中国が改革を怠れば,通貨危機やインフレが爆発するでしょうし,アメリカの保護主義やドル暴落,世界中が金融パニックと不況の瀬戸際に立つでしょう.不均衡の調整政策を,主要国が協力して行うこと,が重要です.

これら二つの論説は,非常に異なる,むしろ対照的な主張です.しかし,現実の世界においては,ともに正しい(そして間違いでもある),と主張できる余地があります.すなわち,1.ドル化(もしくはユーロ化),2.調整政策の国際協調,3.国内金融制度の改革.


Tariq Ali Iraq's destiny still rests between God, blood and oil The Guardian Monday January 16, 2006

Niall Ferguson Tomorrow's world war today LAT January 16, 2006

Brent Scowcroft Focusing on 'Success' In Iraq WP Monday, January 16, 2006

(コメント) フセイン政権崩壊後も続く,イラク占領の現実とは何でしょうか? そこに暮らすイラク国民の生活とは? それを「ホッブズ的な風景」とTariq Aliは指摘します.イラクの平和と市民生活を支配するものは,シーア派とイラン,クルド族とアメリカ諜報部,そして石油.

最近の中東情勢を,未来の歴史家はこう書くでしょう.戦争の第一の理由は石油.第二の理由は人口変化.しかし,最大の理由は宗教心の復活である,と.1979年以後,イランのイスラム革命は輸出されなかったが,各地の王朝や独裁者は激しいし宗教的な圧力にさらされています.ブッシュは軍事介入によって行き詰まり,シャロンは舞台を去りました.アフマディネジャドとネタニヤフは,互いに核兵器で狙いを定めます.

アメリカから見た希望的なシナリオとしては,選挙によって分裂・内戦と多数派の専制が成立する危機を回避し,イラクの治安はNATOの協力によって維持しながら,イラク軍を着実に整備することです.

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The Economist, January 7th 2005

Declining populations: Incredible shrinking countries

Greying Japan: The downturn

Currencies: A sinking feeling

Energy security: Power games

Energy security: Nervous energy

China: Dragonhead dreams

(コメント) ドル暴落やエネルギー危機,中国経済の過熱,通貨危機といったリスクを抱え,パラノイド型の政治宣伝や人種政治に冒されたシステム中枢の将来を思うとき,急速に高齢化しながら子供も女性重役も移民も抑圧し続ける.そんな《日本》というシステムについても,「耐震強度計算書」が偽造され,「株式分割」が繰り返されたのではないか,と疑う投資家がいるのでは?

高齢化は必ずしも衰退を意味しません.かつて人口爆発や資源の枯渇,環境破壊が心配されていたとき,人口減少と高齢化は一つの理想でした.女性や老人も,満足のいく職場や年金制度を作り出すことさえできれば,たとえ政治家が自国の影響力を強めたいと願っても,そんなことは無視しておけばよいのです.逆に,エネルギー危機や中国の都市計画(なぜか黒川紀章)のリスクは,成長へのパラノイアを冷却せよ,という警報なのです.


Lexington: The paranoid style of American politics

Race relations: Multiculturalism and its discontents

(コメント) パラノイア(偏執狂)はアメリカ政治の一つの本質でもあるようです.その特徴は,@過熱する誇張,A邪推,B陰謀説,です.ただし今は,国際銀行家やフリーメーソンではなく,今ではホワイトハウスが攻撃されているのです.ブッシュ大統領の「専制」について,多くの批判が噴出しました.

The Economistは,政府や中央集権を批判するのはアメリカの政治的伝統であるが,それはしばしば権力を失う側のパラノイアであった,と指摘します.左派やリベラル派は,ビジネス界や郊外居住者,保守派に負けたくないのです.しかし,ブッシュ批判がこうしたパラノイアに傾くなら,多くの支持を得られないだろう,と注意します.

イギリスで起きる最近の都市暴動は、多文化主義の新しい弊害かもしれない,と記事は指摘します.移民によるコミュニティーが増え,白人は郊外に逃げ出しました.警察改革やコミュニティーの指導者を職業配分や支援基金の運営にも当たらせました.その結果として,少数派のコミュニティーが過度に政治化されたのかもしれません.白人の人種差別的な嫌がらせと警察官の暴行に代わって,少数派グループが対立しています.

これも,都市政治の深化だ,と言えるのか? まだ,時間がかかりそうです.