IPEの果樹園2006

今週のReview

1/2-1/7

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, JTJapan Times, CSMChristian Science Monitor


WP Wednesday, December 21, 2005

Presidential Prosperity Games

By Robert J. Samuelson

The American Prospect, 12.21.05

Bad for Business

By Robert B. Reich

(コメント) Robert J. Samuelsonは,ブッシュ政権が2003年の減税によってアメリカ経済を救い,現在の公共をもたらした,と主張することに反論します.いずれの政府も景気が良くなれば自分たちの手柄にしたがるが,実際には政府の力など重要ではない,と.

経済の状態を示す統計数字は確かに良好ですが,国民の感じる好況とつながりません.テロやイラクなど,大統領は国民の不安を高めるさまざまな要因に解決策を示そうとします.しかし,大して効果がありません.エネルギー価格は上昇し,暴風雨が襲い,不動産価格が下落し始めました.さらに,その主な理由として雇用の不確実さがある,とSamuelson推測します.20年前,経営者は解雇を最後の選択肢として避けるのが常識でした.しかし,今では,大量の解雇が当然と見なされています.解雇は社会的に受け入れられ,むしろ「規範」となったのです.

減税したから不況が回避され,株価が上昇した,という説明は正しくない,とSamuelsonは批判します.3億人に近い人々の希望や野心,恐怖,予想,期待,そして才能が複雑に交じり合った結果である経済を,大統領が支配することなどできません.大統領が誰であるかよりも,競争と技術革新,市場圧力が重要なのです.政府の政策は確かに重要だし,大統領はそれに影響を与えます.しかし,その効果は非常に遅く,しばしば,政府が交代して発揮されるのです.巨額の政府債務を残すブッシュ後遺症が賞賛されるとは思えません.

Robert B. Reichは,超法規的な行動さえも許されるというブッシュ大統領の要求に,アメリカの経済界は厳重な警告を見るべきだろう,と考えます.なぜなら,経済的繁栄のためには自由と予測可能性が必要であり,そのために17世紀から18世紀のビジネス界は「法の支配」を確立する戦いを続けていたからです.ブッシュ氏はそこにまで手をかけた,と.

ビジネスの自由は市民の自由と切り離せません.どのような理由であれ,市民を逮捕し,拷問するような王や皇帝は,私有財産を奪い,契約を無視し,民間の資源を徴発するでしょう.裁判所の許可なく,アメリカ市民を盗聴しても良い,と考える大統領が,今や,政府を握っています.外国の秘密基地に,無限に捕虜を拘束し,拷問できる,と考えるような大統領です.ジャーナリストは政府が好む話ばかり書くべきだ,と考えるような大統領です.

なぜなら,自分は最高指揮官だから,と.戦時における安全保障の確保は,他の何よりも優先され,あらゆる手段が許される.もしそうであれば,経済的な自由も犠牲となるでしょう.独占禁止法の適用も,安全や健康に関する規制も,メディア規制も,彼の好意に依存するのです.そして,このようなアメリカの姿勢は世界経済の指導力にも及び,世界の貿易自由化を指導する役割に矛盾します.国際協定も信用されないでしょう.

WP Thursday, December 22, 2005

A Flat-Out Winner for Tax Reform

By Daniel J. Mitchellthe Heritage Foundation

NYT December 23, 2005

The Tax-Cut Zombies

By PAUL KRUGMAN

NYT December 25, 2005

Whose Economy Is It, Anyway?

WP Wednesday, December 28, 2005

The Economy and Mr. Bush

(コメント) 日本と違って,アメリカでは既に減税による財政赤字を埋める論争が始まっています.政府の諮問委員会は中途半端な提案を行った,と保守派のシンクタンクは憤慨しています.もし抜本的な改革を目指すのであれば,東欧において成功した「フラット・タックス」をアメリカでも実行するべきだ,と.「皮肉なことに,これらの諸国は階級闘争の政治を投げ出した後,投資を引き寄せて経済成長を刺激し,すべての市民を公平に扱おうとしている.」 本当に? フラットに,というのが,公平という意味であれば.

ロシアは2001年に税率を下げてから脱税が減り,政府の税収が二倍に増えた,と説明しています.ラッファー・カーブとして聞いたような話です.1990年代半ばから,エストニア,ラトビア,リトアニアが導入し,最近では,スロヴァキア,ウクライナ,ルーマニアも導入しました.バルチック諸国の成功は新しい成長モデルとなって,ポーランドやハンガリーなど,さらに多くの国が検討を始めています.

EU官僚たちは,この動き「タックス・レボリューション」を嫌っている,とDaniel J. Mitchellは認めます.パリやブリュッセル,ストックホルムは,それが有害な「減税競争」であり,「財政的なダンピング」である,と強く非難しています.しかし,そのような非難は,高失業率や貧血経済に長く居座ってきた官僚や政治家が主張してもナンセンスだ,と.すでに西欧諸国や,噂によれば,中国も議論し始めた,と言います.

他方,PAUL KRUGMANは,ディック・チェイニーをクリスマス前のスクルージ(ディッケンズ『クリスマス・キャロル』に出てくる金貸し.亡霊によって悔い改め,クリスマスの慈善に励む)にたとえます.「フラット・タックス」が保守派によるサプライサイダー型の新しい減税論であれば,「スクルージを気取る」のは「獣を飢えさせる」式の保守派による予防的財政赤字膨張論です.保守派が先行的に財政赤字を拡大しておけば,リベラルが権力を握った場合も,一層の財政赤字拡大を制約する,というわけです.一方で税収を切り捨て,他方で戦費を増やす.なるほど保守派は「減税を求めてさまようゾンビ集団」なのです.

NYTとWPの二つの論説も,ブッシュ政権と経済実績を関連付けて批判しています.


IHT THURSDAY, DECEMBER 22, 2005

Breaking the cycle

Dennis McNamara

IHT THURSDAY, DECEMBER 22, 2005

What remains to be done in the Balkans

Walter Kalin

(コメント) 世界には紛争地域が多くあります.スーダンやバルカンはその代表です.戦争が難民をもたらし,難民が戦争をもたらす.もしこの循環を断ちたかったら,難民の帰還を永続的な平和のために支援する必要があるでしょう.たとえ戦闘が終わっても,彼らが食糧を得て,職場を得て,学校を得るように,外部からの支援を絶やすべきではないのです.

JT Thursday, December 22, 2005

Poverty collides with U.S. children's rights

By CESAR CHELALA

(コメント) アメリカにも,国連の人権および絶対的貧困に関する専門官Arjun Senguptaが視察に訪れました.人権と貧困は世界的な問題であり,その国のGDPとは関係ないのです.たとえばホームレスや,著しい貧困状態に置かれた子供たちは,カトリーナが来なくても,アメリカ諸都市に見られます.彼らには人間として最低限の必要も満たされていません.今も,マルコムXが糾弾したままの状態で?


NYT December 22, 2005

When Big Brother Is You

By DAVID BROOKS

NYT December 23, 2005

Mr. Cheney's Imperial Presidency

(コメント) もしあなたがアメリカ大統領になって,オーヴァル・オフィス(大統領執務室)から世界を観なければならないとすれば・・・ 

情報通信技術が発達したことで,テロリストたちの連絡を傍受したり,不動産会社の違法建築を摘発したりするために,その技術を使用することもできます.大統領として,目的のためには情報の監視を強めるべきだ,と考えるかもしれません.しかしこの論説は,こうした方法が権力によって濫用されることを防ぐ仕組みが無い,と指摘します.大統領の座に就いた者には,厳しい対応を迫られ,無策という批判を受ける中で,それが理解できなくなるのです.

チェイニー副大統領は,長年の理想であった,帝王的な大統領について,副大統領として指名されて以来,たゆまず努力してきた,とNYTは考えます.9・11はそれを加速する絶好のチャンスでした.もしかすると,政治にとって最高の形態は大統領的独裁である,と彼らは真面目に信じているのかもしれません.それゆえ,最高裁がこれをチェックしなければなりません.


NYT December 22, 2005

Hamas on the Ballot

NYT December 23, 2005

A Shah With a Turban

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) ハマスは選挙に参加し,もし政権を得たら,政策運営のために現実的な路線を選択するのでしょうか? それは,民主主義,にとっても死活問題です.

実際,イランでは選挙によって強硬派のMahmoud Ahmadinejad大統領に当選し,ナチスによるユダヤ人虐殺など無かった,「神話」である,という過激な演説を行って,さまざまな政策転換を内外で実行するかもしれません.

THOMAS L. FRIEDMANは,イランの民主主義を問います.改革派の新聞は閉鎖され,対立候補が立候補を阻止され,聖職者たちが選挙の演出を任されたような選挙で「民主的に選ばれた」ことに,何ほどの正当性を見出せるか? 彼らは肉食を好んだり,ビキニを喜んだりするかもしれないが,だから選挙から排除するというのは「民主主義」ではない.国営ラジオや国営テレビがベートーベンやビートルズ,ロックンロールも禁止しなければならないとしたら,Ahmadinejadが国民に支持されている,ということこそ「神話」でしかない,と.

エネルギー問題の専門家Gal Luftは,ヨーロッパは余りにもイランの石油に依存しており,核兵器開発を断念させる力が無かった,と考えます.また,アメリカがアフガニスタンとイラクに軍事侵攻したことで,イラン政府は二つの保険をかけた,と指摘します.すなわち,核兵器を開発することと,世界で最もエネルギーを必要としている中国経済とインド経済に接近した子と,です.イランに対する強硬な安保理決議は,中国政府の拒否権によって阻止できる,というわけです.

アメリカと世界は,エネルギーを節約し,石油に代わるエネルギーを開発しなければなりません.


Responses to the Boxing day tsunamis FT December 23 2005

William J. Clinton Clinton: Where we stand one year later IHT FRIDAY , DECEMBER 23, 2005

Living and giving after the tsunami The Guardian, Saturday December 24, 2005

SOMINI SENGUPTA and SETH MYDANS Tsunami's Legacy: Extraordinary Giving and Unending Strife NYT December 25, 2005

Karl F. Inderfurth, David Fabrycky, and Stephen P. Cohen A wave that reshaped global response CSM December 27, 2005 edition

Quentin Peel Lesson from catastrophe FT December 28 2005

One Year After the Tsunami NYT December 28, 2005

(コメント) 昨年のクリスマス直前に,インドネシア,スマトラ島からインド洋に広がった地震と津波が,その地域の住民に深刻な被害をもたらしました.死者と行方不明者は231000人を超えた,と言います.約200万人が家を失い,移住を強いられましたが,同時に,国際社会による支援が,空前の規模で,推定136億ドルも約束されました.産業界や金融界も復興に協力している,とFTは指摘します.そして,その他の災害に対しても,こうした支援が,しかも一層効果的な支援が,組織されるべきだ,と主張します.

当時注目された,アチェやスリナムにおける反政府活動と内戦は解決されたでしょうか? 支援の約束は実行されたでしょうか? それは本当に,軍や地元の有力者ではなく,最も激しい打撃を受けた,貧しい人々に届いたのでしょうか? あるいは,むしろ地域社会の亀裂と差別,紛争を悪化させたのでしょうか?

Quentin Peelが指摘するように,2005年には他にも多くの災害や紛争がありました.スーダン,ダルフールの虐殺と難民,ナイジェリアの旱魃,疫病,イナゴ,カリブ海意気とメキシコ湾岸を襲った多くのハリケーン,ニューオリンズもそうです.そして10月には,パキスタン,カシミール地方で地震が発生し,8万人が死亡,300万人は住む家を失った,と.しかし援助資金の流れは不規則で,災害や地域によって大きく偏り,メディアの関心は短く,気まぐれでした.


FT December 24 2005

Helping the homeless: not just for Christmas

BG December 24, 2005

Cold facts for homeless shelters

By Robert E. Smyth

(コメント) 欧米のクリスマスは,慈善活動に社会的な関心を集める機会を提供しています.日本でも,歳末助け合いとして募金を呼びかけていますが,最近,関心が薄れているような気がします.貧困地域で冬の間,ホームレスの人に簡易宿泊施設を提供し,スープや簡単な食事を配る活動,あるいは,お正月にお汁粉や雑煮を配る活動は,どのような変遷をたどり,現状なのでしょうか?

FTによれば,ロンドンで野宿していた人は,1990年代初めに約2000人,それが1998年には400人に減少し,今では200人と言われています.またBGによれば,マサチューセッツのホームレス・シェルターに収容されているのは1500家族,子供が約2万人含まれます.彼らの多くが肉体や精神を病み,あるいは,麻薬に手を出します.

FTは,The Big Issueの創設者やChristmas sheltersの提供者の意見として,その約10倍の実数を提示して,ホームレス問題の深刻さ,その規模と財政負担を,政治家たちが直視するべきだ,と訴えています.問題はクリスマスに限らず,また目に見える路上生活者に限られません.こうした隠れたホームレスまで含めて,彼らに一時的な宿泊施設を用意するのではなく,その生活を変える機会を与え,正しい支援と間違った財政援助の選択を求めています.さまざまな職業のために訓練や融資を与え,低賃金でも働く者だけに支援を行うのです.それはあたかも,停戦後に反政府軍が盗賊になるのを防ぐため,武器を有償で買い取り,職業を支援する計画のように見えます.

家族がおらず,十分な蓄えもない人が,不慮の事故や病気になって働けないとき,ついには家賃も払えなくなって,ホームレスの列に加わります.この冬は寒く,燃料の価格が上昇しているために,ますます多くのホームレスが生まれるでしょう.そして,彼らのためにシェルターを運営する事業も破綻する,とRobert E. Smythは懸念します.

日本でも,学生や正規雇用から,パート労働者やフリーター,ニートへの大規模な移動が,次第に,ホームレスへと変わって行くなら,社会の劣化と脆弱性がますます強められ,政治秩序や思想状況も蝕まれてしまうのではないか,と不安を感じます.こうした施設の設置を嫌う住民の反対運動が予想されますが,解決する方法はあると思います.


LAT December 24, 2005

The future of America -- in Iraq

By Robert D. Kaplan

(コメント) 「もし未来のアメリカの指導者に会いたかったら,イラクに行くべきだ」と,Robert D. Kaplanは書きます.なぜか? この戦場と治安回復,選挙の実施による秩序形成を,苦しみながら経験した20代,30代の若い兵士たちが,数十年後にアメリカの軍事・政治的な意思決定を支配するからです.彼らは,テロや犯罪の防止だけでなく,公共サービスの悪化や部族対立まで,すべて対応しなければなりません.

この過酷な任務は彼らのイデオロギーを粉砕しますが,アメリカの価値観は失わない,とKaplanは考えます.彼らは知らない土地に「民主主義を移植する」ことの難しさを学びました.しかし,彼らはイラクでの勝利を確立するまで犠牲を払うでしょう.彼らは単なる宗教的保守派ではないし,帝国主義者でもない.アメリカの市民社会が,かつて国内のフロンティアで鍛えられたように,新しいプラグマティズムと理想主義の合成物が国際的なフロンティアでも発生する,と.

BG December 27, 2005

How will the Iraq war end?

By H.D.S. Greenway

LAT December 27, 2005

Iraq and the fortunes of war

By Richard N. Haass

NYT December 27, 2005

After Withdrawal, Engagement

By ANDREW ERDMANN

WP Thursday, December 29, 2005

Three Lessons From Vietnam

By Dale Andrade

(コメント) H.D.S. Greenwayは,イラク戦争をベトナム戦争と比較します.そして,ここでもまたアメリカのパワーは無限でなく,イラクの将来を決めるのはイラク国民であり,アメリカ政府ではない,と主張します.

Richard N. Haassは,アメリカの選択肢を模索します.基本的に,完全な秩序が確立されるまで撤退しないか,適当な期日を定めて撤退を開始するか,です.そして,現状のまま撤退することはアメリカの介入(と犠牲)を無価値にする,と主張し,拒否します.それはイラクの内戦や分割をも促し,この地域に深刻な無秩序と国際テロの温床を残すだけでしょう.世界の石油と天然ガスの供給は深刻なリスクを抱えます.アメリカに友好的な民主主義国家の建設は,世界中で,より大きな困難に直面するでしょう.

Haassは,アメリカは撤退しないが,しかし政策を変化させていくだろう,と考えます.政府は,イラクの治安維持軍が整備されるだけでなく,イラクにおける政治的な変化を望んでいます.すなわち,スンニー派が政権に参加し,反政府武装勢力が孤立することです.こうしてアメリカ軍の駐留は規模を縮小できるのです.しかし実際には,地域分割と中央政府の権力低下といった,複雑な結果がもたらされるかもしれません.しかし,破局を回避することが何より重視されます.

ANDREW ERDMANNは,駐留軍の縮小は,撤退というより,むしろ占領政策の転換だ,と主張します.軍事行動や憲法の制定に代わって,高等教育の再生や職場への復帰,民主主義や経済活動を支えるさまざまなインフラが復興されるべきです.イラクの市民社会を強化する,エンゲイジメント政策を提唱します.またDale Andradeも,反政府軍の掃討に必要な政策転換について,類似した視点を指摘しています.


LAT December 24, 2005

Don't buy those Latin American labels

By Michael Shifter

NYT December 25, 2005

Trade, Oppression, Revenge

By DAVID BROOKS

(コメント) Michael Shifterは,ラテンアメリカにおける「左派」政権の増大に関して,むしろ政治基盤の転換が起きている,と広く解釈します.この地域における貧困や失業,不平等に対して,政府が有効な対策を示せなければ,軍事クーデターや武力弾圧の危険が減った結果,民衆は街頭に出て直接行動に訴えるようになりました.この現象を「左派」と表現するのは正しくない,というわけです.チリ,ブラジル,アルゼンチン,ベネズエラ,そしてボリビアの「左派」政権は,その支持基盤も政策もバラバラです.

だから,アメリカ政府はボリビアの新大統領を非難するのに慎重であるべきです.むしろ彼をチャベスやカストロの仲間と非難して,悪夢(資源の国有化など)を実現してしまうよりも,その政策をある程度は容認して,彼らの国内問題とアメリカが望む麻薬の撲滅について協力を模索するべきだ,と.

他方,DAVID BROOKSは,異なる視点からボリビアの選挙結果を考察します.すなわち,経済の近代化はエスニック集団の怨嗟を燃え上がらせ,「民主化」が資本主義やグローバリゼーションの破壊者に権力をもたらすかもしれない,と.ボリビアでは,国民のわずか3%が経済を支配し,その多くは白人だった.他方,65%を占めるインディオは何一つ支配できなかった,と.だから,国際機関の薦めるマクロ経済の安定化や民営化は,東南アジアと違って,分配の格差をさらに拡大し,激しい政治的結果をもたらしました.

現実の世界は,グローバリゼーションによってスイスのような民主主義の連邦になるわけではなく,むしろチャベスのような選挙による独裁者を増やすだろう,と.世界的な経済開発を,各地域の文化や政治と切り離して行うことはできないのです.


NYT December 25, 2005

Take It From Japan: Bubbles Hurt

By MARTIN FACKLER

FT December 28 2005

Japan’s debtors prepare to flee

By David Pilling

FT December 29 2005

Here comes the rising sun again

(コメント) MARTIN FACKLERは,アメリカの住宅価格下落について,日本の土地・住宅・株式バブルとその教訓を整理しています.すべて何度も言われてきた話ですが,いまだに納得できません.なぜ1991年には,カリフォルニアほどの大きさしかない日本の土地の値段が,アメリカ全土よりも高価になったのか? なぜ日本の多くの人々は生涯における最大の買い物によって大きな損失をこうむったのか? なぜ日銀はバブルを放置し,また破綻を緩和できなかったのか? なぜ政府は破たん処理を怠り,国債累積によって延命措置を繰り返したのか? アメリカは,そしてバーナンキは何を学んだのでしょうか? あるいは,アメリカも繰り返す・・・?

David Pillingの短い記事は,まるでバブルの処理を,年越しの「夜逃げ」によって個々の家族が行うしかない,とでも言わんばかりです.もちろん,東証の株価上昇や自民党の大勝にも,海外のメディアは言い訳程度の関心を寄せていますが.


NYT December 25, 2005

What Makes a Nation More Productive? It's Not Just Technology

By DANIEL GROSS

(コメント) 製造業に比べてサービス産業は生産性が上昇しにくい,という経済学者の常識や,ITバブルが崩壊してハイテク投資や生産性上昇が止まる,という心配が,実際には間違いであった,とこの論説でDANIEL GROSSは指摘します.なぜか? 激しい競争の結果,ウォルマートのように,情報投資をサービス部門の生産性上昇に生かす可能性が高まっているからです.


IHT MONDAY, DECEMBER 26, 2005

China's rise, revised

Philip Bowring

FT December 26 2005

Lex: China and India

Dec. 29 (Bloomberg)

China's Booming Economy Will Never Surpass U.S.

John Berry

NYT December 29, 2005

Billionaire Builder of China

By DAVID BARBOZA

(コメント) 中国経済の規模が17%も推定より大きかった,という大ニュースの衝撃が一巡して,さて,それは何を意味するのか? とPhilip BowringJohn Berry考えます.年9%で成長する,ドイツの規模を持つ中国経済がアジアの成長を牽引します.情報産業の輸出額はアメリカを超え,自動車の輸出も輸入を上回った,というのです! すでに日本や韓国の経済的奇跡を超えたのでしょうか?

一人当たりGDPは,1230ドルではなく,5700ドルに修正されました.それはインドの約2倍です.しかし,中国がソ連の工業化やインドの国営企業,ブラジルの成長を超えて,本当に日本や韓国のような,先進工業諸国に並ぶ水準にまで高められるのか? というのは,まだわからない,と判断を留保します.むしろ,より多くの資源を求め,より激しい景気変動を世界に及ぼし,より厳しい安全保障上の摩擦をもたらします.たとえば,日本がアメリカとのミサイル共同開発に合意したように.(そして,首相の靖国参拝はそれを無駄にしている,と.)

世界の投資家は中国市場に殺到し,資産価格をまだまだ押し上げる,という予想がなされています.しかしJohn Berryは,中国の高度成長が35年でアメリカを抜くまで続く,といった可能性を否定します.まず,13億の人口が誤解をもたらしています.アメリカの労働人口は増大し,中国では地方から都市への労働供給を続けますが,急速に高齢化します.他方,高成長を維持してきた投資や保護措置は,次第に,過剰生産設備と国際競争に変わるでしょう.人民元も増価し続け,失業や低賃金,土地問題について,社会紛争が起きます.

そして,何よりラテンアメリカに似てきた所得格差は,今後の増税と再分配政策,政治的な紛糾を予想させます.

JT Monday, December 26, 2005

Sino-Japanese strains bode ill for EAS

By FRANK CHING

IHT THURSDAY, DECEMBER 29, 2005

Northeast Asia: Defusing a dangerous region

Ian Bremmer, Choi Sung-Hong and Yoriko Kawaguchi

(コメント) マレーシアの首相がホストとして挨拶し,中国や韓国の発言もありましたが、日本の首相だけは東アジア・サミットに違和感を残しました.それはいつものフレーズです。「今日の平和が、戦争において亡くなった多くの尊い犠牲の上に成り立っていることを、われわれは忘れてはならない。」 しかし、日本の犠牲に感謝することは、この会議に参加した多くの国にとって、侵略者への同情を意味するのです。

Ian Bremmer, Choi Sung-Hong and Yoriko Kawaguchiは、貿易や投資による相互依存の深まり、戦争経験、そしてエネルギー供給と安全保障の要求が東アジアでも強まっている、と指摘します。それゆえ、安定的な合意や制度化を目指して、ヨーロッパ統合に匹敵する地域協力体制をアジアも模索するべきだ、と。それには、北朝鮮の核開発問題を扱っている中国、日本、韓国、アメリカ、ロシアが、北東アジア地域フォーラムを形成することが望ましい、と提案します。


FT December 27 2005

Time to prepare for economic storm

By Adam Posen

天気のことについては始終こぼしていても、世界の不均衡が調整されることにより引き起こされる嵐について、人々はあまり注意しない。私たちは繰り返し、アメリカの経常収支赤字、住宅バブル、財政赤字が破綻に至る危険について聞かされ、ドーハ・ラウンドを破局に導く保護主義の圧力について聞いてきた。調整に必要な政策がなぜ取れないか、についても、アメリカの国内需要や農産物をめぐる政治的な利害対立、ドル暴落への懸念、金利の急騰を思えば、十分、理解できる。

しかし、私たちは嵐に備えるほうが賢明であることを知っている。もし堤防が補強され、避難が完璧に行われていたなら、カトリーナそれ自体を避けることはできなくても、その被害は抑制できたはずだ。

同様に、保護主義の再燃とドル暴落に備えておくことが、その被害を抑制する。しかし、政策担当者に事前の計画を作成する動機がないために、準備はほとんどなされていない。ドーハ・ラウンドも直前まで政治的な駆け引きだけが行われたし、経済対立を緩和することに関心のない人々が人民元とドルの為替レート調整を進めなかった。

もしカトリーナの教訓を大経済圏が学ぶとしたら、現在の世界的な不均衡がもたらす被害を抑制するために行動するはずだ。すなわち、

1.経済的なリンクを強化する。たとえ貿易を制限するとしても、直接投資や資本移動は経済を結びつける。アメリカ、EU、日本が互いにM&Aを制限することは、@「国防」という例外規定を制限して使用するよう合意する。A会計基準を共通させる。そして「はげたか」という買収への非難をやめさせる。

2.金融的な安定性を高める。金融的な脆弱性が、限定的なショックをマクロ経済全体の危機に拡大してしまう。金利は歴史的な低水準にあり、アメリカの経常収支赤字を調整する際にはアメリカの外でも資産価格の大幅な変動が生じる。銀行への監督は厳しく行い、投資家たちにも過去の安定的な実績によってリスクを軽視しないように警告が発せられるべきだ。金融危機への対応に十分なインフラを欠いているEUでは、今こそ制度の合理化が必要だ。

3.大経済圏はマクロ経済的な安定化を守らねばならない。中央銀行や財政当局は、国民に対して、成長を安定的に維持することを約束するべきだ。そうすれば為替市場や投資における民間部門の期待も安定する。それは中央銀行がインフレ目標を導入し、財政当局が需要の安定化(EU)や失業者への十分な所得補償(アメリカ、日本)を行うことを意味するだろう。為替レートや貿易自由化を扱う政治的な交渉プロセスと独立に、彼らはこうした建設的な手段で調整過程に備えるべきだ。嵐が来る前に。

アメリカが消費ブームを賄うために資産を売る姿に、その将来の所得がどうなるか嫌な予感を抱くかもしれない。しかし、ただちに維持できなくなるわけではないだろう。赤字を補うドル資産への需要はふんだんにある。成長格差と流動性があれば、アメリカ市場の優位は継続するはずだ。ハリケーンが来ない理由など探すより、その準備に励むべきだ。


WP Tuesday, December 27, 2005

Policy Adrift on Darfur

By Barack Obama and Sam Brownback

WP Wednesday, December 28, 2005

Peace on Earth? Increasingly, Yes.

By Andrew Mack

BG December 29, 2005

Inclusive security: Hope for Congo

By Swanee Hunt

(コメント) スーダン、ダルフールにおける虐殺を終わらせるために行動できるのは、国連でもNATOでもアフリカ連合(AU)でもなく、アメリカだけです。だから、Barack Obama and Sam Brownbackは4つの政策転換を求めます。@AUを地域の安定化に必要な軍事力として強化する。A反政府軍とKhartoum政府が権力と資源を分配できるように圧力を強める。Bアメリカなどが、周辺の関係国に和平への協力を求める。C大量虐殺を罰する国際協定を政府に守らせる。

冷戦後の世界にも残された虐殺や内戦、人間の安全保障に関して、アメリカも国連安保理も、まだその原則を確立できていません。

The Guardian Wednesday December 28, 2005

Shock, awe and Hobbes have backfired on America's neocons

Richard Drayton

(コメント) 1990年代のハイテク・バブルが崩壊した後、技術への熱狂がペンタゴンのネオコンたちの間で発生した、とRichard Draytonは危惧します。彼らが愛するのはトマス・ホッブスの『リヴァイアサン』とハイテク兵器です。

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The Economist, December 17th 2005

American military tactics: How to do better

Japan’s economy: Land of the rising price

The future of Japanese business: Competing through innovation

China: A demo turns bloody

Australia: On the beach

Bolivia: A champion of indigenous rights and of state control of the economy

France and immigration: After the riots

Balkan history: A better view of the bad guys

American Multinationals: Stars and stripes for ever

(コメント) アメリカの軍隊はイラクにおいて、戦争や占領に関する新しい学習過程に投資しています。日本経済の当面する政策課題と論争が注目されるだけでなく、日本が復活するとしたら、その将来の姿はどうなっているのか? と問います。びっくりするほどではないですが、それは太陽光発電やロボットなど、技術革新によるアメリカと中国の中間にある道です。

中国でデモを弾圧しても誰も驚きませんが、それが流血に及び、その事実を直ちに公表し、担当者を処罰した、と言えば、世界は大いに驚くわけです。他方、シドニー郊外の美しい砂浜で、人種差別やエスニック・クレンジングを叫ぶ白人がアラブ人を追いかけ、今度は、アラブ人が報復に出た、というニュースもあります。ボリビアの資源、フランスの移民政策や奴隷の歴史、バルカン諸国では共通教科書の試みが模索されています。世界中に、日本と同じような歴史認識の問題はあります。その違いは政治化の姿勢でしょう。

反米主義がアメリカ系多国籍企業やグローバリゼーションを破滅させる? そんなことはない、とKatzenstein & Keohaneの研究は示します。少なくとも人々は市場において、ブッシュ政権とビッグ・マックを区別するのです。