IPEの果樹園2005

今週のReview

10/24-10/29

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約・紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :貧困,靖国神社参拝

安全保障 :アジアの和解,米中対立,エンゲイジメント,軍事同盟の再編

貿易・投資 :日本の景気WTOと農業補助金

通貨・金融 :人民元,アジア通貨の調整

世界統治 :移民システム国際法廷,リベリア,イラク,トルコ加盟問題,コーカサス

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, JTJapan Times, CSMChristian Science Monitor


Oct. 12 (Bloomberg)

Inflation in Japan? Okay, Stop Laughing

William Pesek Jr.

FT October 16 2005

Oil prices challenge good news out of Japan

By Noboyuki Nakahara

FT October 20 2005

Tokyo needs a target

(コメント) 日本経済は回復するのか? デフレは終わったのか? 株価はこのまま上昇するのか? いよいよインフレの時代か? という疑問が内外から発せられました.The Economistの編集者であるBill Emmottも特集記事を書きました.

William Pesek Jr.は,強気の見方としてゴールドマン・サックスのSun-Bae Kimの意見を紹介し,慎重な見方では,いわば,先取りして上昇しすぎだ,というCarl Weinbergの意見も示します.強気の要因である「改革」が実際に効果を発揮するのは数年かかるでしょう.中国からの安価な輸入品の影響下で,日銀が本当にデフレを解消することも確かではありません.日本人が消費を回復したかどうか,中国の成長がいつ減速するのか,財政再建をいつ本格化するのか,重要な要因がまだ分からないのです.

しかし,中国(14170億ドル)の3倍ある日本(43010億ドル)の経済が拡大し,その通貨である円が増価することは,アジア経済をアメリカから自律した世界の成長の極にするでしょう.日本とアジアは,貿易,工業製品価格,資本移動において相互に強く影響し合います.

アジアと日本経済の行方について,FTの記事が,石油価格と日銀の金融政策に言及しています.Noboyuki Nakahara中原氏は,選挙のテーマであった郵政民営化や消費税引き上げよりも重要な意味で,日本が1970年代の石油ショックと同じ難問に直面しつつある,と考えます.しかも,今度は経済の基礎体力が落ちているから,肝炎のように治りにくい,と.つまり,特に予算赤字や累積赤字のことを心配します.同時に,ショックを緩和するはずの金融政策も今は使えません.しかし,論点が石油に限られているこの論説が,慎重論の中でも重視されるとは思えません.

むしろ,今後の金融政策と財政政策の変化(そして石油価格や中国の景気)に注目が集まります.そこで,この複雑さが市場の不安を増幅しないように,FTは将来に向けた数値目標を示すことが望ましい,と考えます.


NYT October 13, 2005

Bush's Pledge? The Joke's on the Poor

By BOB HERBERT

WP Friday, October 14, 2005

That Was a Short War on Poverty

By E. J. Dionne Jr.

WP Friday, October 14, 2005

Hurricane Homeless

(コメント) ブッシュ大統領が貧困や人種差別について本気で何かするなどと思う? そんな人はeBayでブルックリン・ブリッジに入札するようなタイプだ,とBOB HERBERTは苦笑します.ブッシュ氏は,共和党の多くのものがそうであるように,所得再分配など減らすことしか考えない.彼がお金を使うとしたら,それは富裕層のためだ.ニューオリンズの復興のため,という理由で法を解除し,労働者が今ではより安い賃金で働かされている.ブッシュ政権の下で,富裕層はますます豊かになった.

彼が「気遣っている」だって? もちろん,彼は気にしているさ.それは支持率だ.そして既にある貧困救済の乏しい予算を使っている.本気で貧困や差別を無くすために何かする? この政府が? まさか それは冗談にしてもいかれてるよ・・・

E. J. Dionne Jr.も驚きます.カトリーナによって喚起された,政府の貧困に対する大胆な,緊急の,将来を見通す戦い,というものが,わずか1ヶ月しか続かないなんて! 保守派は1920年代のカルビン・クーリッジに戻って低税率の経済学を信奉し,リベラルなど時代遅れの思想だ,と信じているわけです.もし貧困があるとしたら,1990年代の福祉改革がまだ不十分だったのだ,と.しかし,もっと医療保険制度や最低賃金引き上げに予算を振り向けることもできたはずですし,家族やコミュニティーの崩壊も重要です.リベラル派は,政府と論争を続ける使命があるのです.

カトリーナとリタの後,残されたホームレスの人々は50万人から90万人にも達します.住宅の債務や失われた職場がどうなるか,FEMAは多大の努力と莫大な予算を費やしましたが,その見通しは立ちません.たとえば,トレーラー・ハウスを並べた場所はすでに行き場のない「FEMA村」"FEMAvilles"という惨状を示しています.明確な,実際に機能する方針もありません.


WP Thursday, October 13, 2005

Liberia's Recovery

(コメント) それは素晴らしいことです.リベリアは2年前まで内戦にあって,少年兵やレイプで有名な,世界最悪の独裁者チャールズ・テイラーと犯罪者集団が支配する国でした.そのリベリアで,武装集団の元兵士や,元世銀スタッフ,サッカー・チームの元代表選手などが立候補して,国民が参加する選挙を行いました.15000人の国連平和維持軍が治安を維持して,二院制の法律も通過させました.

しかし,主権を確立し,経済を回復するまでには,まだ多くの仕事が残されています.ここには電気も水道も,学校もありません.主要な収入源である木材やゴム農場は武装勢力を占拠しています.何万人もの武装解除された兵士たちには仕事がありません.

リベリア政府は,国営企業や主要官庁,裁判所を支援諸国政府からのスタッフから任命するべきです.彼らがリベリア政府を「支援し,助言」します.しかし何よりも重要なことは,独裁者を支えた基盤を完全に一掃することです.テイラーはまだナイジェリアに政治亡命し,計略を練っています.国連は,戦争犯罪に対する特別法廷でテイラーを裁こうとしています.

IHT FRIDAY, OCTOBER 14, 2005

When peace and justice clash ...

By Katherine Southwick

IHT FRIDAY, OCTOBER 14, 2005

... which should prevail?

By Eric Stover and Marieke Wierda

NYT October 16, 2005

Schoolyard Bully Diplomacy

By NICHOLAS D. KRISTOF

NIAMEY, Niger

WP Sunday, October 16, 2005

The Rwandan Reconciliation

By Sarel Kandell Kromer

(コメント) 国際法廷(国際刑事裁判所:ICC)が,ウガンダやルワンダなどでも,戦争指導者に対する裁きを下せるか? あるいは,ICCが余りにも欠陥の多い仕組みであることを示すだけなのか?

2万人以上の子供たちをレイプし,奴隷にして,殺戮に利用した指導者を裁くことにも,進行中の和平交渉を妨げるから,とICCはためらいます.関係国からの要請や承認によって活動するICCには,独自の権限が無く,その活動において人員を危険にさらすこともできません.地域社会に正義をもたらす力はないのです.

しかし,いかなる国にも増して,アメリカが行うICCへの嫌がらせは,結局,アメリカの利益にならないように思います.


Asia Times Online, Oct 14, 2005

Breaking up (with China) hard to do

By Ting-I Tsai

(コメント) 中国への投資が開放されて,台湾企業はこぞって投資し始めた結果,台湾は新しい問題を抱えます.電力不足や労働争議,賃金上昇,などにより,今度は工場の撤退と移転が必要になるのです.しかし,地方政府はそれを承認しません.

ここでも,ハーシュマンの原理(不均等な相互依存は支配をもたらす),が有効です.


Ballots against the bombs The Guardian, Saturday October 15, 2005

Popular will in Iraq BG October 15, 2005

Iraq's Referendum WP Saturday, October 15, 2005

The Sovereign People of Iraq NYT October 17, 2005

David Hirst The carve-up of Iraq will spawn a redivision of the Middle East The Guardian, Tuesday October 18, 2005

Mona Eltahawy Accountability comes to the Arab world IHT TUESDAY, OCTOBER 18, 2005

Reza Aslan Iraq's miracle constitution LAT October 18, 2005

HATEM MUKHLIS Voting 'Yes' to Chaos NYT October 18, 2005

Saddam and Iraq on Trial NYT October 19, 2005

Philip Stephens The least worst option in Iraq FT October 20 2005

(コメント) イラク国民が内乱を抑えて,新しい憲法を承認し,かつての独裁者を法で裁くことができれば,それは後に,9・11やブッシュの戦争を評価するため歴史を学ぶ人々が,個々の戦闘や占領の不手際よりも注目する,重要な過程となるのでしょう.

バース党とその関係者,バグダッドと地方との関係,スンニー派への説得,武装集団の鎮圧,・・・しかし,たとえ平和裏に投票が行われても,イラクの情勢が大きく好転するという期待もありません.連邦主義についての理解によっては,ユーゴスラビアで起きたように,イラク分割と内戦に近づくだけかもしれません.エスニック集団に強く依拠した政治が,民主主義をうまく機能できる,とは言えないからです.あるいは,ソ連やオスマン帝国のように,さまざまな分裂を国外にも波及させる火薬庫になるのです.クルド人が事実上の独立の代わりに分割と民族的統合を諦め,石油の富を取ったように,各派が政治的な対話と妥協を維持する必要があります.

それは,ある意味で,イギリス国教会も,小泉=靖国政権も? そうであるような,イスラム教と多元的民主主義との「国民」統合システムを創出する試みとなるのか?  あるいは,アメリカ各州に独立を認めるような,より徹底したカオスが口を開けているのか? スンニー派を選挙に参加させるため加えられた将来の憲法修正は,各派にとって何を意味するのか?


NYT October 14, 2005

A Dead Heat for Last Place

NYT October 17, 2005

An Optimistic Voice for Deal on Farm Aid

By KEITH BRADSHER

Oct. 18 (Bloomberg)

Farm Subsidy Cuts Need Less Skill, More Honesty

Andy Mukherjee

WP Wednesday, October 19, 2005

The Charm of the Farm

(コメント) WTOの貿易自由化交渉は,米欧日が農業補助金を削ることについて,最後の政治的妥協を探っています.補助金は過剰生産をもたらし,輸出圧力と国際価格の下落を促し,貧しい諸国の農民を圧迫し手いる,と言われます.アメリカのポートマン通商代表は,アメリカが補助金を60%削減し,欧日は83%(なぜなら現在の補助金がそれだけ大きいから)削減することを提案しました.しかし,その提案でも長期的な問題は残されたままです.

しかし,経済学的に見て,保護は無意味でしょう.アメリカの各家庭は,年間146ドルを支払わされています.その補助金の多くが,零細な農家ではなく,巨額の利益を上げている大企業に与えられます.Cato Instituteの分析に拠れば,たとえば,アーカンソー州のRiceland Foods Inc.は,2003年に6890万ドルを受け取りました.その額は,Rhode Island, Hawaii, Alaska, New Hampshire, Connecticut, Massachusetts, Maine, Nevada and New Jerseyのすべての農民が受け取った額より多いのです.

他方,アジア,ラテン・アメリカの発展途上諸国は,その雇用や食糧安全保障,外貨収入の多くを農産物の輸出に頼っています.12月に香港で合意が成立することを,彼らは願っています.ここでも,いわゆる小泉流の「改革を止めるな」局面に至るのでしょうか? 裕福な諸国の農民は豊富な政治的コネクションを利用して補助金削減を拒み,貧しい諸国の農業を圧迫し続けています.

フランスの農民はハイウェーにトラクターを並べて,交通を遮断し,韓国の農民は暴動に及び,アメリカの農民はふんだんなロビー活動資金を動かします.農村の魅力を訴え,政治家や都市住民を脅迫し,あるいは買収します.


EDMUND L. ANDREWS Snow Urges Consumerism on China Trip NYT October 14, 2005

DAVID BARBOZA For Foreign Companies in China, a Rising Yuan Is Hard to Swallow NYT October 15, 2005

Philip Bowring East Asian imbalances go beyond China IHT MONDAY, OCTOBER 17, 2005

EDMUND L. ANDREWS Snow Shifts His Demands on China NYT October 18, 2005

A light touch of Snow on China's economy FT October 19 2005

(コメント) アメリカのスノー財務長官は,中国人に消費の美徳を説き,さらに中国の人民元改革を,貿易摩擦解消のためにではなく,中国人自身の家庭を豊かにし,政府が独自に政策を動かすための制度改革として必要だ,と訴えます.

人民元の増価は,もちろん,中国で生産している外国企業の利潤を圧迫します.中国政府が恐れるのは,投資が止まって雇用を減らし始めるのではないか,ということです.

Philip Bowring は,世界の不均衡が,中国ではなく東アジア全体の輸出超過と為替への過剰介入によって起きている,と強調します.中国に消費を薦めたり,通貨の増価を求めたりしても,東アジアが全体として動かなければ均衡を回復できません.G7に中国を加えるだけでなく,G20のような拡大された国際調整の場と,東アジア自身の政策協議が必要となります.


JT Saturday, October 15, 2005

Asia's tough but not impossible journey

By TOM PLATE

(コメント) アジアにもヨーロッパのような統合化が可能でしょうか? それは中国が始めるだろう,とTOM PLATEは考えます.彼は,北朝鮮をめぐる六カ国協議を「北京ラウンド」と呼び,その起点と見なすわけです.さらに,中国は日本を排除しないことだ,と.それは歴史的に見て危険すぎる,という理由で.

日米韓が提唱していた,ASEAN+V,も指摘してはいますが,TOM PLATEはあくまで中国がアジア統合の中心であると考えているのでしょう.

FT October 18 2005

Is Asia repeating Europe’s mistakes?

By Karl Kaiser visiting professor at Harvard University and director of the German Council on Foreign Relations

19世紀後半のヨーロッパと同じように,現在のアジアにも急速な工業化や経済成長,そして軍備拡大が見られる.些細な領土をめぐって軍艦を送り,好戦的な愛国主義と各国のステレオタイプ化が交渉を妨げて,主要国は互いに,過去から学び,歴史を正しく扱うことに失敗してきた.ヨーロッパではそれが悲惨な結末をもたらした.アジアもその失敗を繰り返すのか?

ヨーロッパがその戦争を繰り返した過去を克服したのは,コミュニティーを築くことによってであり,今では,二つの目標が相互に強め合って平和を確立している.一つは,経済統合である.これはアジアも模倣して,驚くべき成果を上げている.かつてないほど域内貿易と国境を越える投資が伸びて,年間2120億ドルに達する日中間のアウトソーシングと分業による貿易が多国籍の生産ネットワークを築いている.しかし,こうして新たに形成された経済的相互依存は,紛争を破局に導くことへの歯止めにならない.この地域の経済的相互依存は,もしアジアで戦争が起こす場合,20世紀にヨーロッパで起きた以上に,破壊的で,費用がかかり,時代錯誤なものにする.しかし,そのことが政府に軍事的衝突を控えさせるだろうか? 第一次世界大戦が勃発したのは,最も発達した国際貿易をヨーロッパが実現していたとき,ヨーロッパ人なら良く知っているように,好戦的な愛国主義がすべての理性を押し流してしまったからだった.

ヨーロッパは,共同体を構築する政治的手段をともなった,経済的共同体を完成することにより,平和の地域になった.そうした政治手段において,アジアはますます失敗しつつある.ヨーロッパは三つの前提に基づいて,アジアとは根本的に異なった地点で相互の関係を築いている.すなわち,1.いずれの国も,過去における間違いや失敗に,正直かつ信用できる形で,向き合わねばならない.2.実際に罪を犯した集団と,その集団が生まれた国とを,明確に区別しなければならない.3.今ではその多くが死んでしまった,侵略者たちの罪と,過ちを繰り返すことが無いように責任ある行動を取る生き残った世代とを,明確に区別しなければならない.歴史に向き合うことが苦しい者もいるだろう.それは理解できる.しかし,ずっと前に死んだ者の名誉や記憶の方が,今生きている世代の未来や,彼らが平和でしかも繁栄した人生を送るチャンスよりも,重要であるというのは理解しがたい.

フランスとドイツの和解は,また最近ではドイツとポーランドの和解は,他国が見習うべき道を示した.多くのことが協同でなされた.たとえば,教科書を見直す共同委員会が設立された.若者の交流が組織された.都市間の姉妹提携が促された.許しを請うために感情を表現する振る舞い,信頼できる行動が決定的に重要であった.この点で,中国,日本,韓国は,フランス,ドイツ,ポーランドと同様の役割を果たすべきだ.

ヨーロッパにとって特に重要であったこと,そして今のアジアにおいて特に欠けていることは,ヨーロッパにも存在したナショナリズムを克服しようという,諸政府や社会的なエリートたちの間の,国家を超えた合意である.逆に,ナショナリズムの風潮が政府によって助長されている.そのような政策が国内では短期的な利益をもたらすという間違った信念があるから,彼らはそれが誘発する恐れのある衝突の長期的コストを無視しているのだ.ヨーロッパ人たちは,ある意味で,政府が相手国における過激な集団の主張を無視することを選択したおかげで,そうした声が双方の協調や和解を損なったり,壊したりすることがないようにした.今日のアジアでは,そのような声がしばしば他国を代表するものとなり,それゆえ,相互にナショナリズムを強める悪循環が生まれている.

さらにヨーロッパの経験が示すように,和解や政治的協力は一方通行では成り立たない.積極的な振る舞いが認められ,反対側からの賞賛がなければならない.第二次世界大戦の終結を記念する60回目の記念日に,日本の小泉純一郎首相は,戦没者を祀る靖国神社に参拝しなかった.その代わりに,天皇が出席した宗教的でない行事に参加して,日本による戦時の犠牲に謝罪するとともに,近隣諸国と平和のために協力する必要を訴えた.彼は,多くのアジア人が希望してきたことを行い,願ってきたことを願ったのだ.しかしこの振る舞いが好ましい効果を発揮するには,その差し伸べた手を握り,中国や韓国のような隣人たちが積極的に応答することが条件であった.

小泉氏は,今こそ,先の選挙で得た多数派としての余裕を生かして,この方向に大胆かつ決定的な一歩を踏み出すべきだ.しかし今週の靖国参拝は,その程度を落とし,準公式のやり方ではあったが,残念ながら逆の方向を向いていた.予想される非難と怨嗟の循環を解き放つだろう.

アジアが経済的な統合と相互依存とを成し遂げる道は,今,その地域に広まった政治的緊張とナショナリズムが脅かされている.政府やエリートたちが和解と協力を示すことは,それゆえ,コミュニティーの建設を守り,強めるために,今すぐ必要である.アジアが世界の平和と国際経済において重要になるほど,世界はそのような展開を真剣に望むのである.


Asia Times Online, Oct 15, 2005

Revving up the China threat

By Michael T Klare

(コメント) Michael T Klareは,最近の動向から,米中が軍備拡大と軍事同盟を駆使して互いに包囲網を築きつつある,と分析します.アメリカの中国に対する関心は次第にビジネスから軍事に移行しつつある,というのです.特に,石油の供給をめぐって中国が攻撃的な戦略をとり,アメリカ企業の買収や,アメリカと敵対する産油諸国からも石油を得るために援助と武器をばら撒くことに,アメリカは地域のバランス・オブ・パワーが乱されると不満を強めています.EU,ロシア,インドまで含めて,世界の軍事同盟が急速に二極化するとしたら,その軍拡競争の将来は恐るべきものです.

LAT October 16, 2005

Painting a bull's-eye on China hurts U.S.

By Geoffrey Garrettpresident of the Pacific Council on International Policy at USC

スノー財務長官やグリーンスパンFRB議長が国際会議のために北京に赴いても米中関係のあいまいさは解消しないだろう.

アメリカは,クリントン政権がそうであったように,貿易や投資,米中間の人の移動を通じて,中国が世界的な大国になるのを積極的に助けるべきなのか? あるいは,中国との増大する経済競争,さらにアメリカにとって予想しうる将来に地政学的なライヴァルとなりうる唯一の国として,あえて敵とは言わないが,より冷静で慎重なアプローチを,アメリカの国内政治は次第に主張するようになるのか?

1980年代に見られた「日本叩き」と,今のワシントンはよく似てきた.保護主義者と軍事的タカ派との,アメリカにおける神聖ならざる政治的同盟は,中国に対する厳しい見方を強めている.それは中国の国営企業CNOOCによるユノカル買収提案から胡錦涛国家主席の訪米提案まで不穏な情勢が続いたが,買収は断念され,カトリーナの騒動を口実に訪問も断った.

日米関係が緊張を脱したのは,日本が1990年に失墜し,回復できなかったからだ.中国経済にも課題は多いが,同じような失速に向かう見込みは小さい.さらに重要なことは,アメリカと日本は純粋に経済的な意味で対抗したのであったが,地政学と安全保障が米中関係には深い影を落としている.

中国の台頭はこの60年におよぶ世界のバランス・オブ・パワーに関して最も重要な出来事である.いかなる状況でも,世界の地殻変動をもたらすこれほどの摩擦を処理することは,たとえアメリカにとっても至難であろう.中国が共産主義国であり,核兵器を持ち,安全保障上の緊張が中国と近隣諸国,すなわちアメリカの同盟諸国である日本,韓国,台湾に及ぶことから,問題を一層難しくしている.

もちろん,経済が医者たちは直ちに,中国の経済的奇跡が続いてアメリカにも好景気をもたらすのであり,何物もそれを犠牲にするほど重要なことはない,と主張するだろう.アメリカの多国籍企業は中国を世界的規模の低コスト生産基地にしており,また,中国の中産階級が示す市場の可能性によだれをたらしている.アメリカの消費者は,安くて高品質な「中国製」の多くの商品を楽しんでいる.アメリカの貿易赤字も,予算赤字も,中国がアメリカ国際を莫大な額で購入してくれるから維持できるのだ.低金利が続くことは,アメリカの住宅購入者にとって偉大なチャンスである.

しかし,政府の内外でエコノミストたちが説くウィン・ウィン型の貿易・投資条件は,アメリカのポピュリスト政治が持つ硬い殻を破ることなどないだろう.それでも,中国に対する経済的関与はアメリカにとって正しい戦略であり続ける.その経済的利益がコストを超えているから,というだけではない.ワシントンからメイン・ストリートまで,アメリカ人は中国との経済的関与が世界政治の不安定性に対する最良の保険であることを理解しなければならない.

歴史が示しているように,大国間の経済的な結びつきは互いに衝突が避けられない場合にもクッションとなってくれる.最近の数年,米中間においても,このことは正しかった.財や資本,アイデアが自由に流れることは,中国も含めて,国と国の間に前進的な政治的変化をもたらす強力な動因となる.その上,中国の増大する繁栄がアジア全体を引き上げている.

第二次世界大戦後にアメリカがソ連に対して行ったように,また1930年代にドイツや日本に対して行ったように,アメリカが中国との経済関係を絶つことは,こうしたすべての前向きの変化を脅かす.

中国をパートナーではなくライヴァルとして扱うなら,それは自己実現的な予言となり,由々しい結果を招くだろう.

IHT MONDAY, OCTOBER 17, 2005

Rumsfeld ventures into the Middle Kingdom

David Shambaugh

LAT October 17, 2005

Wake up and smell the green tea

Niall Ferguson

Asia Times Online, Oct 21, 2005

Rumsfeld sets new China tone

By Jing-dong Yuan

(コメント) しかし,ラムズフェルドは北京を訪問し,二日間滞在して,中国側と,直接,意見交換しました.

まるで,世界を分割する会議に参加できなくなることを恐れる老政治家のように,Niall FergusonはEUと中国を比較します.アメリカ,中国,ロシアに比べて,EUが国際政治で無視されるとしたら,その理由は何か? 成長しない,戦える軍事力がない,エネルギーがない.そして何より,多くの労働者の質が余りにも低いことだ,と. ・・・このまま,日本がそうなるのは言うまでもなく?


The Asian Age, 16 October 2005

Turkey and the European Tent Part II

- By Mohammed Ayoob Michigan State University

(コメント) トルコのEU加盟申請は議長国のイギリスによって受理されました.しかし,反対する意見も根強くあります.ドイツのシュミット元首相は「トルコが加盟すれば,・・・アフリカや中東のイスラム諸国が加盟することにも反対できなくなる」という不安を公に発言しています.それはトルコ国民にとって,キリスト教徒の聖地を不浄の民が汚す,という不穏なイメージとなるでしょう.

40年に及ぶEU加盟交渉については,それによってトルコ国内の改革が促されたこと,EUがキリスト教を統合の精神に掲げてイスラム教国の加盟を拒んでいること,NATOにおける重要な役割と中東民主化というアメリカの外交方針,が議論されています.

私は,一方で,国家が国家を超えた共同体意識を求めることを必要だと思います.それが「キリスト教」や「ヨーロッパ的な価値」としてどこまで示せるのか,交渉や対立の過程で明らかになるでしょう.他方,イギリスのように,EUを普遍的な国際ルールへの模索と考えて,その多様性と開放性を強調することも重要でしょう.


LAT October 16, 2005

Skip the shrine

FT October 17 2005

Koizumi’s shrine visit irks China and S Korea

By David Ibison in Tokyo, Anna Fifield in Seoul and Mure Dickie in Beijing

(コメント) トルコのEU加盟にドイツなどのキリスト教諸国が反対し,アメリカのキリスト教右派が進化論を学校で教えることに反対し,あるいは過激派が妊娠中絶手術を行う医師を襲撃し,イギリスでは200年前のトラファルガー海戦を祝ったり,イスラム寺院の説教に介入したりする,モスクワではプーチンがレーニンの保存された遺体を埋葬する議論を始める・・・・

政治とは,そもそも,宗教やイデオロギーのお祭りだ.こうした世界であれば,小泉首相も,毎年,靖国神社に参拝して英霊のために平和を祈念するというのは,何も騒ぐほどのことではないか,と思う人もいるでしょう.

しかし,私は反対です.それは戦没者の「英霊」や愛国主義を利用して自らの政治的支持を高めるために,日本の平和と繁栄を,深く,将来にわたって,損なう行為だからです.むしろ,日本の政治指導者や天皇は,軍国主義を批判し,愛国主義や人種差別的なナショナリズムが政治を乱す危険を,繰り返し,真摯に警告するべきでしょう.

LATやFTが伝えるように,小泉氏の靖国参拝は,日本の政治指導者がアジアや世界の平和を促す行為にはなりません.中国や韓国は,靖国神社を彼らの国を侵略した日本の戦争行為を正当化し,美化する,宗教施設であると考えています.靖国参拝を繰り返す日本の政治家たちは,直接,それに反論しません.彼らは日本の慣習や神道の考え方などを示し,国のために命をささげた死者を敬い,愛国的な心情を称えるだけです.それが侵略行為であったかどうか,その死者が戦犯として裁かれたことについて,直接に答えようとしません.日本の(そして,アジアの)主要メディアは,世論調査で尋ねてください.

日本とアジアの将来に,小泉首相の信じる靖国神社は,どのような姿を描けるのでしょうか? アジア諸国を包括するような,尊敬されるような,靖国崇拝を目指す,というのですか? それが日本の独立と安全を守る道だ,と? むしろ,「英霊」の中身を判断し,「国家宗教」を廃し,アジア諸国の指導者と一緒に記念行事を行ってください.つまり,同じことを,もっと違う形で,実現できるはずです.

NYT October 18, 2005

Pointless Provocation in Tokyo

Oct. 19 (Bloomberg)

Asia's Past Still Clouding Economic Future

William Pesek Jr.

(コメント) NYTは,小泉氏が改革のために「抵抗勢力」を屈服させたように,自民党内の「右翼ナショナリスト」を,宥和するのではなく,屈服させるべきだ,と要請します.

あるいは,William Pesek Jr. のコラムを読んでみては?

「日本もまた,アジアの投資家たちに国債などの証券をもっと買ってもらおうと説得に努めてきた.アジア中の企業がもっと低い借り入れコストで,投資家から資金を調達しようと,投資家を求め続けている.」

「問題は,アジアで最大の諸国が反目し合っているときに,こうしたことがまったく不可能になることだ.アジアで国際関係がこのまま冷え切っていくなら,それが債券市場や株式市場に影響することも考えられないことではない.2004年や2005年の前半に,アジア市場で起きた予想外の変化は経済ではなく,地政学から起きた,ということを忘れてはならない.」

もっと重要な課題,たとえば北朝鮮の核兵器開発阻止や拉致問題解決,エネルギー供給や石油価格上昇,アジアの通貨・金融システム構築,などについても協力するための相互信頼を,靖国参拝によって反故にすることが,小泉氏の政治的信念にとって重要なのでしょうか?

The Asian Age, 20 October 2005

Koizumi rises in the east

- By S. Nihal Singh

IHT THURSDAY, OCTOBER 20, 2005

China-Japan rift hurts America, too

Michael Vatikiotis

(コメント) クリントン政権がその人道的介入の混乱で非難され,ブッシュ政権がネオコンを用いて「テロとの戦争」に断固たる姿勢を示したように,小泉政権も過去の自民党と決別する姿勢を,内政と外交において,示したかったのではないでしょうか? しかし,国内の「構造改革」に比べて,外交分野では大きな失敗に終わるようです.

アジアやヨーロッパは,日本とアジアの政治要因として,靖国参拝に何を見るのでしょうか? 中国政府が成果を期待する12月の東アジア・サミットに向けて,結局,ラムズフェルドは招かれて北京で話し合い,町村外相は訪問する機会を失いました.


WP Sunday, October 16, 2005

Caucasian Violence

WP Monday, October 17, 2005

Putin's Spreading War

By Masha Lipman

WP Monday, October 17, 2005

Kosovo Is Back

(コメント) コーカサス地方の,私たちが聞いたこともない町,Kabardino-Balkariyaの首都Nalchikで,テロによって100名以上の市民が殺されました.ロシア政府が繰り返す,コーカサスの安定化,は幻想です.ロシア軍はテロ鎮圧を名目に反体制派を弾圧し,穏健な独立派の指導者もすべて弾圧してきました.今や,さらに強固に組織された武装集団の目標は,政治的独立にとどまらず,地域全体の不安定化を拡大することに向かっている,と言います.


IHT WEDNESDAY, OCTOBER 19, 2005

Meanwhile: When Britannia ruled the waves

By Alex Beam The Boston Globe

JT Wednesday, October 19, 2005

Building a 21st-century Commonwealth

By DAVID HOWELL

(コメント) 日本は,戦後ドイツにも,スイスにも,アメリカに支配されたバナナ共和国にも似ていましたが,最近,ますますイギリスに似てきたと思います.そうであれば,200年前のトラファルガー海戦を祝うイギリス国民やメディアも,英連邦から将来に向けてヨーロッパと世界秩序を語る政治姿勢も,日本の指導者たちが学ぶべき点を何か示していないでしょうか?

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The Economist, October 8th 2005

The Everglades: Water, bird and man

(コメント) フロリダ半島に巨大なハリケーンが近づいていますが,その美しい自然を失わせるのは人間です.生態系と人間の政治・経済システムとが共存するには,何が必要か,さまざまな開発と保存と再生の巨大プロジェクトが計画された後にも,まだ模索が続くようです.


Illegal immigration: Decapitating the snakeheads

Economics focus: Be my guest

(コメント) グローバリゼーションの時代にも,麻薬やテロに並んで,貧しい国の労働者ほど国際移動を厳しく規制されている存在はありません.そのため彼らは密輸業者に法外な報酬をもたらし,移動や就労,送金などに著しい悪条件を強いられ,富裕諸国の政府は移民を阻止するために貴重な税収を浪費し続けています.

非合法移民を規制するよりも,経済学者なら,はるかに良い方法を直ちに思いつくわけです.テキストの保護貿易に関する章を読むことです.・・・財・サービスであれ,人であれ,移動を制限して大幅な価格差が生じている以上,もし完全に自由化しないのであれば,非合法化や輸入割り当てに頼らず,輸入許可書を競売するべきだ,と.すなわち,一時的な労働許可証を付けて入国ビザを競売にかけます.

それはアメリカとメキシコの国境地帯で死亡する東欧の越境者たちや,海を越えてヨーロッパにやってくる途中で,ボロ船が沈没し,溺れて水死する中国人たちを,ある程度減らし,特に,非合法な移民斡旋業者,犯罪組織からビジネスをかなり奪うでしょう.たとえ,なくならないとしても.

他方で,市場というのは変化に適応します.もし貧しい一時雇用労働者たちが低賃金で働くなら,いままで労働不足を訴えていなかった分野でも安価な労働者に頼って合理化や機械化を怠り,さらに多くの移民労働者を求めるでしょう.そして,その大きな価格差を考えれば,一時雇用で入国した移民労働者たちが帰国するはずがないのです.

移民たちから入国時に預託金を取り,出国時に変換する制度など,シンガポール,韓国,オーストラリア,イギリス,・・・さまざまな移民労働者の利用システムが比較,言及されています.制度的な革新が求められています.私は,日本でも「一時雇用ビザの入札システム」を試してみるべきだと思います.

他の分野でもそうであるように,政治的合意と市場システムとが矛盾するとき,新しい現実を反映した社会制度を構築して,秩序を回復しなければなりません.国境を越えるために砂漠や山岳地帯,海峡の波間に消える移民たちの叫びがある限り,国際移民システムに向けた模索が続くわけです.


The sun also rises

A survey of Japan: The sun also rises

(コメント) 興味深い内容ですが,時間とスペースが尽きたため,来週,要約します.