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IPEの種 10/24/2005
研究会で「砂漠化」の話を聞きました.土というものは,どこにでもありそうに思っていましたが,100年で1センチしか形成されない貴重なものである,と知って納得しました.古代文明の発祥地は,その多くが,今では砂漠に呑み込まれています.私たちは,せっかくの土をアスファルトで覆い,あるいは宅地造成のために森ごと削り取って投棄し,生き物を支える土を失っています.
中国人やインド人が豚や牛の肉をアメリカ人のように食べ,クジラやマグロを日本人のように食べ,自動車やジェット旅客機にアメリカ人のように乗り,さらにイギリス人やドイツ人,フランス人,イタリア人・・・のように,紅茶やビール,ワイン,チーズ・・・を食べるとしたら,地球の生態系はどうなるでしょうか?
しかし,心配しない人がほとんどです.なぜでしょうか? たぶん,世界や長期の影響について私たちが何も考えていないからです.しかし,もしかすると,こんな風に考えるかもしれません.A.もっと多くの肥料をやる? B.農産物の価格が上昇する? C.外国から輸入できる? D.科学の進歩により,空中や海上にも農地を開拓する? E.・・・ X.戦争が起きて人口が減る? Y.変化する生態系に合った遺伝子操作をする? ただし,人間に! たとえば,人間のサイズを10分の1に縮小する. Z.いっそ火星に移住する? ・・・
砂漠化や環境破壊を理解すれば,いつか,人間がそれを統御できるのではないか,と思いたいですが,そのような理想は妄想に近いようです.オゾン・ホールや温暖化は生じているようですが,その原因やメカニズムはまだ良く分かっていない,ということです.
経済学者が考えることと言えば,たとえば,貿易と砂漠化や環境破壊の関係です.貧しい国では資源や農産物を輸出し,土地の過剰な耕作や採掘が砂漠化をもたらしました.分配問題を考えても,既存の所得や技術格差,市場価格を前提した国際システムは,貧しい国を荒廃させて,裕福な人々に緑豊かな国をいくつか残すことを「合理的」とみなすでしょう.いつか農産物の価格が上昇し,高価な農産物を安価な工業製品と交換する時代には国際分業が逆転します.
私たちは,将来も,エネルギーの世界的な供給システムを維持し,消費を増やし続けるために,戦争を繰り返すのでしょうか? 本当に環境破壊が生死を分けるものとなれば,多くのイデオロギーが安楽死するでしょう.中国に続々と建設される原子力発電所やソ連の残した原子力潜水艦,宇宙開発競争,・・・エコロジー鎖国と人口減少.P.K.ディックの描くSF世界では,人種対立を無くす政策として,黒人を消すため,遺伝子操作で男子しか生まれなくしました.実際,アジアなど貧しい国で人口制限をすれば,女子を間引くために,男子の比率が高くなると聞きます.・・・人口に対するこうした介入の結果として,戦争の危険が高まってくる,と心配する論説を,私は既に読みました.
結局,私たちは環境の神を祭るのです.あるいは,環境のコストを市場システムに組み込む地球環境監視=協力体制が正当性を得るかもしれません.所有権,時間と利子率,機会費用と復元費用,・・・を環境の価値で修正し,魚や鳥,樹木,昆虫,・・・にも国籍と生存権を与えます.そして二酸化炭素の排出権を買うように,またEU内の各国投票数がウェイト付けられるように,市場システムにも政治システムにも,すべての生物種を参加させます.
石油が枯渇し,資源やエネルギーを求めて大国が戦争を始め,食料が不足し,水が不足し,飢餓の恐怖から,難民が豊かな都市を目指して国境を越え,オゾン・ホールや温暖化,海水面の上昇,異常気象が顕著となり,核廃棄物が投棄され,老朽化した原子力発電所は事故を繰り返して,多くの生物種が絶滅してしまう・・・ 人類の数が大幅に減ってから,ようやく,エコロジーの循環に合わせることのできる,次の1000年を生きるための自給的社会システムが誕生します.
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