IPEの果樹園2005

今週のReview

10/10-10/15

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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IPE方法論 :ハリケーンと復興,子供のセックス,信仰

安全保障 :アメリカの対中政策ガザ地区

貿易・投資 :アジアFTA,EUによる補助金・EPA・産業政策

通貨・金融 :為替レートの調整とIMF世界経済の不均衡

世界統治 :グローバリゼーション,移民,中国の政治革命,EUとトルコ

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ただしFTFinancial Times, NYTNew York Times, WPWashington Post, LATLos Angeles Times, BGBoston Globe, IHTInternational Herald Tribune, JTJapan Times, CSMChristian Science Monitor


WP Wednesday, September 28, 2005

Corruption as Usual

By Anne Applebaum

NYT October 3, 2005

Miserable by Design

By PAUL KRUGMAN

(コメント) Anne Applebaumは,ハリケーン騒ぎに政治家たちの腐敗を見ます.

「二つのハリケーンがルイジアナを襲い,恐るべき被害を与えた.ニューオリンズではまだ洪水が続いている.何千人もの人がアメリカ中に散らばって,多くの人が避難所で暮らしている.・・・もちろん,こんなときに,政府がブランク・チェック(いくらでも書き込める小切手)を与え,議員たちが選挙区の不要な堤防を作らせる予算を奪い合ったり,連邦政府の機関が将来の洪水をさらに招くような計画を進めたりするなどということは,あるはずがない.こんなときだからこそ,支出は賢明に行われているに違いない.と,そう思うとしたら,間違いだ.

そうではない,と思うなら,それでもアメリカの立法府がどれほど深く腐りきっているかについて,なおあなたは学びつつある.たいてい,下院議員は何も書いていない封筒に詰まった現金をもらったりしない.概ね,上院議員が娘の披露宴を政府の金で支払うこともない.通常,アメリカの政治家たちは怪しい金をスイスの銀行口座に隠すわけでもなく,マフィアの資金を洗ってやることもない.しかし,腐敗は多くの形で起きている.この国では,退屈で,ありふれた,テレビに映ることもないインフラ予算によって行われる.」

必要ないもの,無駄なもの,どこにも行けないような橋を造り続ける.それが業者と政治家たちへの賄賂となるのです.政府の無駄遣いは,政府そのものと同じくらい古いのです.60年前,ハリー・トルーマンが,第二次世界大戦の政府の無駄遣いを正して,政府の評価を高めた.結局2000億ドルの公金が費やされると決まった.さらに,2500億ドルが要求され,結局,浪費されるのだ.

カトリーナの被災者が示した問題とは,特に,医療保険と住宅です.PAUL KRUGMANは,それらに政策の失敗だけでなく,政治的な理由を見ます.被災者が医療保険を受けられないのは,乗員がブッシュ政権の意向を受けて,貧しい者にメディケイドを適用しないように阻止しているからです.政府の管轄当局の長官は,「メディケイドの新しい給付金」になる,と警告します.

それでも各地の病院は被災者の治療を拒まず,彼らへの支援は地方への追加的な財政負担となりました.避難民を肝要に受け入れた地域ほど,財政的な懲罰を受けるこのような政治的決定(もしくは「非決定」)を,将来の災害においても,地方政府は忘れないでしょう.

住宅政策に関しても,ブッシュ政権の矛盾した行動は明白です.これまでの経験から,貧困層向けの公共住宅を建設するよりも,住宅バウチャーを発行するほうが良い,と多くの関係者は認めています.しかし,ブッシュ政権はこの合意を無視し,時間のかかるトレーラー・パークの建設に関心を集めました.しかし,それはより費用のかかる,長期的に避難民のゲットーを作る恐れのある計画です.

なぜブッシュ政権は間違いを犯し続けるのか? それは彼が社会保障システムを破壊するために政権に就いたからです.それにもかかわらず,彼は政治的な支持を失ってしまうことに何か手を打たねばならず,保守的な考え方で財政支出拡大を利用します.彼らが恐れているのは,住宅バウチャー制が失敗することではなく,それが成功することである,とKRUGMANは考えます.だから,避難民の惨めさはハリケーンのせいではない.ブッシュ政権が意図したものだ,と.


WP Wednesday, September 28, 2005

Outsourcing Our Safety

By Harold Meyerson

FT September 29 2005

The irresistible tide of globalisation

By Philip Stephens

(コメント) テレビ・ニュースで有名になった,ロサンジェルス国際空港に不時着した小型旅客機も,その生産の多くはカナダやエル・サルバドルで行われます.・・・エル・サルバドル! そこでなら,JetBlue社は,アメリカよりもはるかに安い賃金で,優秀なメカニック(機械工・職人)を雇うことができるからです.アメリカの航空機のおよそ半分が,そのメインテナンスをアウトソーシングし,その多くは海外で行われています.

Harold Meyersonは,さらにグローバリゼーションの過程で何が変わったかを考えます.それは単に,世界企業による21世紀型資本主義の賛美ではありません.Barry C. Lynnに従い,二つの重要な変化を指摘します.一つは,政策を実行する国家が弱められること.もう一つは,企業化,労働者,株主,地域社会に責任を負った企業の役割が失われること,です.21世紀に,それらの代わりを務める者は現れていません.

デル,シスコ,ウォル・マート,GEなどを見れば,彼らは生産,バック・オフィス,R&D,流通網さえアウトソーシングしてしまい,その利益は革新ではなくコスト削減から得ています.本社の利益で雇用されている者が減る一方で,遠隔の地で起きる供給連鎖の破綻に,企業は極度に弱くなっています.こうした変化の主要な原因は,株主の発言が急速に強まったことである,とLynnは考えます.企業は,投資家のための利殖の道具となりました.

アメリカで戦後初めて,景気が回復しても企業の利潤が増えるだけで賃金は上がらず,中産層は没落しています.Lynnは,アメリカの企業重役を給与制にして,株価やオプションから切り離し,労働者には組合を組織する障害を減らして,対抗する力を強めるべきだ,と考えます.

Philip Stephensは,労働党大会を見て,ブレアの強さを考えます.現代の政治は,グローバリゼーションを恐れ,拒む者と,それに乗って,機会をつかもうとする者との対立である,と.イギリスでは,サッチャーが果敢に自由化を進めたにもかかわらず,保守党ではなく,労働党がその後のグローバリゼーションに乗ったわけです.ブレアに言わせれば,「競争するか,さもなければ一掃されるか」です.


The Guardian, Thursday September 29, 2005

To keep its dream alive, America must end its military obsession

Timothy Garton Ash in Stanford

(コメント) スタンフォード大学で,アメリカの独立記念日に,世界中から集まった驚くほど多様な若者たちが踊るのを見て,Timothy Garton Ashは,ヨーロッパと異なる「自由と平等」への情熱的な支持に感嘆します.それは国家が保障するというより,個人が自由に選択し,莫大な富と社会的地位を勝ち取ることを意味します.

だからアメリカの貧しい人々は,今も,多くが富裕層への重税に反対です.「アメリカン・ドリーム」を広めているのは,アメリカ社会のダイナミックな,開放的・革新的性格です.しかし,カトリーナやリタがメキシコ湾岸を襲い,貧しい人々を悲惨な境遇に陥れるのを見れば,なぜ世界最強で最も裕福な国が,レーザー誘導ミサイルでアフガニスタンへの爆撃を行ったはずなのに,これほど多くの避難民を置き去りにしたのか? と疑問が湧きます.

これでは,まるでH.G.ウェルズの描いた火星人襲来のラジオ劇,「世界戦争」と同じではないか? とAshは驚きます.天気図には色とりどりの渦巻きが,次々と,まるで異星人の襲撃のように湾岸地帯へ向かっています.そしてルイジアナ州知事は人々に警告します.「もしここにとどまるつもりなら,あなたの社会保障番号を,消えないインクで腕に書くように.」 ・・・あなたの死体が容易に確認できるから.

Ashが驚いたことは三つです.1.やたらと「ヒーロー」がいる.勇敢さと,本物のパニックとが組み合わさったとき,ヒーローが現れます.日本人なら,「大和魂」!? もはやアメリカ以外では多用されない言葉です.2.ブッシュ政権がどれほど大きく軍隊に依存しているか.治安が失われたという非難を受けると,政府はすぐに軍隊を展開しました.ソマリアか,コソボ,あるいはイラクのように,彼らは銃を構えて治安回復に当たります.3.貧困や債務に打ち捨てられた人々の数が多いこと.ニューオリンズの避難民の多くは貧しく,銀行口座も持たない者が多かった.住宅に詰まった持ち物だけがすべて.だから非難もできない.消費することへの強迫観念? ・・・大きくねじれたアメリカン・ドリーム.

ガソリンの高騰にも,アメリカ社会は耐えられません.もちろん,アメリカは非常にダイナミックな社会で,革新的な人々が一杯いるから,石油依存の問題も解決するでしょう.しかし,この数年間は,アメリカ社会が軍事よりも経済の建て直しにその投資を向けるように,Ashは願います.不況が来るからといって,海兵隊を送っても役には立たないのだから,と.


NYT September 30, 2005

Way North of the Border

By EDUARDO PORTER and ELISABETH MALKIN

(コメント) 記事は,ミネソタ州のセント・ポールから,移民社会がアメリカ・メキシコ国境を越えて拡大し続ける様子を描いています.

今も,非合法移民の流れは増大しています.199194年に年間45万人であった流入者が,200104年に年間60万人に増えました.両国の人口動態とアメリカ経済の好調さ,そしてアメリカの高校でドロップ・アウト率が減少したこと(未熟練労働者の減少)が合わされば,もはや神が示した婚約のように,移民の列が連なります.

国境警備が強化されたり,移民を嫌う国境地帯では民間の自警団が組織されたりしましたが,非合法移民は決して諦めません.何度も失敗して,彼らは目的を達するでしょう.メキシコ農村は貧しく,十分な雇用がありません.アメリカに行けば,失業率は低く,その報酬は彼らにとって夢のような額です.

非合法移民を抑制すればするほど,アメリカ国内の非合法移民は帰国しなくなります.移民コミュニティーが拡大し,メキシコの親族に送金し,メキシコ風の町やビジネスが始まりました.国境を越えたネットワークは恒久的に物資や人を運び,国境の両側で社会を変えて行きます.アメリカ側の町も移民を歓迎し,メキシコは領事館の開設地を増やしています.


Asia Times Online, Oct 1, 2005

Hedging China with FTAs

By Sherman Katz and Devin Stewart

(コメント) Katz and Stewartの提言はアジアの将来と国際秩序の明快な展望を与えています.アメリカ政府は,中国に矛盾した態度を取っています.国防総省は,中国がたとえアジア地域においてもその影響を拡大しないように牽制します.他方,国務省や通商代表部は中国が世界経済のその経済的な地位にふさわしい積極的な役割を果たすように求めます.

アメリカや国際システムの破壊を唱えたソ連と違い,今の中国はアメリカの作った国際ルールに従って成長しています.しかし,民主化されない限り,中国の権力者たちは,異なったルールで体制維持や優位を求めるかもしれません.アメリカが恐れるのは,中国が成長することではなく,成長するにもかかわらず民主化されないのではないか,ということです.

Katz and Stewartは,アメリカが参加するFTAを拡大することで,アメリカを排除した中国主導の「東アジア・サミット」に対抗することを提案します.アメリカと社会・政治的な価値を共有する,日本,韓国,オーストリアによるFTAを創設することには,いくつかのメリットがあります.

1.経済統合が進めば,互いに,国内改革の圧力にもなる.2.安価な労働力が豊富は中国などと,資本や技術が豊富なアメリカ,日本などは,互いに,市場を提供し合える.それは成長を加速し,自由化と社会的安定化にもプラスである.3.アメリカ企業はアジア経済の統合化によって市場から締め出される危険がなくなる.4.日米間の貿易摩擦は大部分解消されており,アメリカ,日本ともに,アジアにおけるFTAを増やす姿勢に転換しており.それをさらに進めることができる.5.東アジアの経済と安全保障を互いに深く結びつけて,しかもブッシュ氏の目指す世界秩序に近づけることができる.日本もまた,バブル崩壊後の苦しい調整過程を終えて,アジアの経済改革を牽引する役割を引き受ける好機にある,と.

価値を共有するアメリカ,日本,韓国,オーストラリアが協力するなら,率先して,関税を引き下げ,国境を開放し,農産物保護や補助金を減らし,コンテナやビジネス渡航の面で協力して地域の安全保障を高めることができます.安全保障について,北朝鮮の核問題を越えて,この地域を5カ国(アメリカ・日本・韓国・中国・ロシア)が共同管理する秩序も展望されます.

こうした制度を構築すれば,中国は突然の方針転換を試みる誘惑に駆られることなく,着実な発展と民主化を促すようになる,と.

Asia Times Online, Oct 1, 2005

America's nightmare: Becoming Britain

By Jim Lobe

The Asian Age, 1 October 2005

Undue Fears of China Inc?

- By Paul Mooney

(コメント) アメリカが抱く懸念とは,世界の覇権は中国に移行し,アメリカもかつてのイギリスと同じ道をたどる? ということです.外交評議会の新しい報告書"Getting Serious About the Twin Deficits"も,アメリカの国際的な影響力が低下することを警告しています.他方,Paul Mooneyは中国企業の海外展開を経済的な理由から説明し,その多くが失敗するだろうが,次第にいくつかの中国系世界企業が誕生し,そのこと自体,中国に,覇権よりも国際システムとの協調を重視させ,主要国の懸念を払拭するようになる,と予想します.

LAT October 3, 2005

The man-eater of Asia's tigers

Niall Ferguson

(コメント) Niall Fergusonは中国の成長と政治革命を展望します.

20個のイギリスを考えてみよ.3個のEUを考えてみよ.それが中国を考えるときの出発点だ.この全人類の5分の1以上が住む国について.」 アメリカの4倍の速さで成長しており,それは歴史上すべての記録を超えています.中国のGDPは,今年イギリスを抜き,2007年にドイツを抜き,2041年にはアメリカも抜く,という予測があります.

アメリカの20年代に見られた疾風怒濤もこれには及ばない,とFergusonは考えます.昼も夜も工事はやまず,一晩ごとに高層ビルが空の形を変えていく.フロンティアを越えた「新しい新世界」です.1989年に,「歴史の終わり」や「西側の勝利」を祝って浮かれていたわれわれはバカだった.この世界最大の変化をもたらしているのは,共産党員たちだ.胡錦涛は権力を手放す気などまったくない.彼はむしろメディアの支配を強化している.この第二の「大躍進」政策は,国民に民主化も要求させるだろうか?

ここでFergusonは予想します.中国の将来の政治革命は,二つの制度に依存している,と.一つは金融システム.もう一つはインターネットです.

中国における信用供与は,その経済的奇跡の影の部分です.「金融制度はジョークである」と,Fergusonは断言します.なぜなら,銀行は計画経済の名残として,毛沢東時代の無意味な国営企業への融資を多く抱えているからです.今なお共産党のエリートたちが支配する銀行を動かし,経済的な効率性を無視した無尽蔵な融資を受けているのは,エリートたちの人的なネットワークにもぐりこめる人々だけです.新しい株式市場は,製造業部門の規模に比べて,小さな意味しかありません.

このまま中国が金融危機にあわずに成長し続ける,という見方をFergusonは採りません.たとえ1997-98年にタイや韓国が経験したような危機ではなくても,銀行からの預金流出や連鎖的な銀行閉鎖が起きるでしょう.1929年に,アメリカは豊富な金準備を持っていましたが,それでも大恐慌を避ける助けにはなりませんでした.中国の輸出がさらにアメリカ製造業を破壊し続けるなら,深刻な保護主義の台頭もありうるのです.

中国が不況に陥るとき,政治に何が起きるか? それは誰にも予測できません.しかしFergusonは,天安門で1989年に行ったような民衆抗議に対する軍の弾圧が,もはや,中国政府に優位を与えないだろう,と考えます.なぜなら今や1億人がインターネットにアクセスしているからです.いくつかのサイトを妨害することはできても,世界中の主要なメディアやサイトが,中国政府と軍の動きを伝え,エリートたちの腐敗・汚職を公表しています.景気後退が起きれば,民衆はこの「計画された市場経済」に住み着く腐敗の主たちを許さないでしょう.その不満は天安門広場にとどまることもないのです.

FT October 4 2005

China’s private sector is in the shadow of the state

By Joe Zhang

FT October 4 2005

China’s real secret weapon

By Simon London

The Asian Age, 4 October 2005

Great divide of China

- By George Osborne

FT October 5 2005

Asia’s alliance with the Middle East threatens US

By Anthony Bubalo

FT October 6 2005

Lenovo’s new laptops top of class

By Paul Taylor

(コメント) Joe Zhangは,中国経済が改革を重ねながら,なお,主要な経済部門が国営企業に支配され,民間企業でさえも,あたかも国営企業のように,過剰な設備や人員を削ったりしない,と伝えています.他方,Simon London は,IBMの中国におけるPC生産部門(ThinkPad)を買収したLenovoについて,安価な労働コストではなく,むしろその「学習意欲」こそが彼らの優位性を築くだろう,と絶賛しています.

イギリスの影の内閣で首相を務めるGeorge Osborneは,中国の市場に魅了されるイギリスに,中国国内の貧富の格差や人権問題を忘れてはならない,という警告を繰り返します.そしてシドニーの研究所からAnthony Bubaloは,世界の地域同盟が連携を再編する意味を考えています.アメリカの政治・経済・軍事・文化的な覇権に反対する,中東地域とアジア(特に中国)との同盟強化も重要です.石油や通貨は,国際システムの基本的条件だからです.そして中東諸国ほど,アメリカのイデオロギーを嫌っている地域はありません.

IHT WEDNESDAY, OCTOBER 5, 2005

The panda hedgers

By Ian Bremmer

(コメント) アメリカの外交政策は,ライスが国務長官になってから漸くまとまりました.ただし,中国に関しては分裂したままです.「パンダ・ハガー」派と「ドラゴン・スレイヤー」派とが政権内部で激しく対立しているからです.パンダ・ハガー(抱擁)派は中国を重要な世界市場の参加者として認め,育てようとします.他方,ドラゴン・スレイヤー(圧殺)派は中国の台頭を脅威とみなし,封じ込めようとします.

ブッシュ大統領とライス国務長官らは,どちらでもない「パンダ・ヘッジ」派を唱えます.それに拠れば,中国政府をこれ以上,抱擁することも,封じ込めることも,必要ないのです.なぜなら中国は既に世界市場によって離陸し,その成長ゆえに政治システムまで変革することが避けがたいからです.アメリカ政府としては,中国が自国の企業を国際化し,あるいは資源の獲得を目指して,ますます国際システムに関与し,その経済的な価値を吸収するように促すだけで良いのです.それが戦略の決定を先送りしているだけでないのであれば.

しかし,中国がアメリカの死活的な利害に関わったときにはどうするのか? 特に,台湾問題で対立が生じたとき,アメリカはどうするのか?


Talking Turkey FT October 1 2005

Mark Mazower Europe can learn from Turkey’s past FT October 2 2005

DAN BILEFSKY Turkey's Quest to Join Europe Collides With Its Textile Dreams NYT October 2, 2005

Simon Tisdall Troubled path to enlargement The Guardian, Tuesday October 4, 2005

Quentin Peel EU cannot shrink from enlargement FT October 5 2005

Timothy Garton Ash How the dreaded superstate became a commonwealth The Guardian, Thursday October 6, 2005

Austria's games over Turkey IHT THURSDAY, OCTOBER 6, 2005

(コメント) トルコのEU加盟問題は,文化や歴史,宗教,9・11,アメリカ,貿易,農業,人権,安全保障など,さまざまな視点から論争になっています.私は,もしEUが国民国家型の閉鎖的な政治・経済ブロックとして,優位の独占を目指すなら,加盟国を拡大することは内外において望ましくない,と思います.

「ヨーロッパ」とは,その違いを無視して,東欧諸国やウクライナ,バルカン諸国まで含むべきでしょうか? そして政治的な安定性を求めて,トルコや中東,ロシア,アフリカ諸国まで包括する? EUは政治統合を目指すのではなく,共通の経済空間や,基本的な政治原則に基づく安全保障を与え合う,社会的価値や理想の共同体として,加盟各国や市民の自由を拡大するものになるべきです.そうなれば,もしかすると日本も,そして中国やアメリカも,EUに参加するかもしれません.

EUは,その意味で,第二次世界大戦終結に拠らない,国際協調への新しい参加システムなのでしょう.


BG October 1, 2005

How to prevent youth sex

By Lily Rayman-Read

(コメント) Lily Rayman-Readは,8歳の少女がブリトニー・スピアーズのように化粧し,露出した衣装でセクシーな表現をすることに驚き,親たちはなぜそれを許しているのか? といぶかります.既にアメリカの子供たちは,12歳でセックスを経験したという者がいても驚くことではない,と言います.しかし,親たちの多くはそれに気付きません.子供たちは無知なままセックスに関わり,さまざまな危険な感染症にも罹ります.

Lily Rayman-Readは,子供たちが携帯電話やコンピューター・ゲームなど,仮想空間から「性革命」を吸収していることに注目します.セックスの低年齢化はとどまるところがありません.親たちが子供に電子的な媒体を与え続ける限り,それを意識せずに入られません.

子供たちが自分お部屋にコンピューターを置き,携帯電話を持ち歩く必要などあるだろうか? 彼らが必要としているのは,親子の親しい会話であり,一緒に食事したり,遊んだりすることである.テレビやコンピューターに子育てを委ねることはできない,と.


LAT October 1, 2005

The dark side of faith

By ROSA BROOKS

(コメント) 子供たちのセックスよりも深刻?なのは,大人たちの過度の信仰でしょうか?

Gregory S. Paulの研究は,信仰の篤い州ほど,殺人,性的感染症,未成年の妊娠,堕胎,子供の死亡率,などが高い,と示しました.これは,キリスト教右派たちの主張を翻すに十分な証拠ではないか? と.信仰心がないとしても,常識と異なり,それは社会的な悪を意味しない.それゆえ政府は,信仰の問題をまったく個人の自由に委ね,関与するべきではないのです.

むしろ余りにも強い信仰心は,社会を帝国や絶対主義に導きました.人類が直面している最も大きな危険は,極端な心情,差異や異論を認めないような,非合理的で絶対的な信念の体系です.そして,真に非合理的な信仰を掲げる者は,いかなる証拠も受け入れず,自分たちの過ちを認めることもないのです.それこそが彼らを非常に危険な存在にします.


FT October 2 2005

The Fund appears to be sleeping at the wheel

By Morris Goldstein and Michael Mussa

(コメント) IIEの二人の専門家が,IMFに為替レートのサーベイランスとその制度的強化を求めています.

IMF協定には,「国際通貨システムが有効に機能するように監視する」という条文があります.ところが,ラトー専務理事は為替レートの正しい水準や制度,政策に関して,IMFは個別に,たとえば中国の人民元について,発言するべきではない,と考えています.Goldstein and Mussaはそれを,間違っている,と批判します.

また協定は,IMFに固有の役割を求めています.「(IMFは)加盟諸国の為替レート政策について断固とした監視を行い,それらを指導するための明確な原則を採用すること.」 それゆえ,世界経済の不均衡が拡大し,それに対して市場による為替レートの決定を尊重する諸国がドルに対して増加し続けているというのに,中国などアジア諸国がほとんど増加しない現状について,IMFが何も発言しないのは重要な責任放棄である,と.

国際通貨システムが変調をきたす前に,特に,国際金融危機や世界不況に至る前に,IMFは各国の為替レート政策を指導する積極的な行動をとらねばなりません.今まで,それを無視(妨害?)してきたアメリカ財務省や議会がIMFの怠慢を批判するのは,皮肉な面もありますが,IMFを制度的に強化するチャンスです.個別の加盟国に対する政策支援,政策評価,ガイドラインの公表,そしてG7諸国による監視協力,などです.

IMFがこの重要な役割を放棄するなら,他の機関がそれを主張するでしょう.たとえばアメリカ議会で広く支持されるthe Schumer-Graham billは,中国が人民元を人為的に過小評価していると推定される割合に応じて,それを相殺する輸入関税を要求しています.もしこうしたことが個別に,敵対的に行われれば,貿易戦争と国際的なカオスがもたらされるはずです.


WP Sunday, October 2, 2005

Unoccupied

By Abdallah Al Salmi

(コメント) イスラエルが去った後のガザ地区に関する報告です.解放や自由を祝い,列を成してエジプト側に入ったガザの人々も,数日で難民キャンプへ戻り,彼らの生活が何も変わっていないことに気付きました.

8階の窓から見た通りは,静かで,抑鬱され,虚無感が広がっている.・・・爆発があり,人々は(報復の)空爆を恐れている.もはや誰もエジプトや解放について語らない.」

130万人のパレスチナ人が難民キャンプに押し込まれている.空爆があり,民兵のロケットが発射される.その将来は経済の復興にかかっているが,何も無い土地から経済は生まれない.」「パレスチナ政府のもたらす雇用は,人々を黙らせるために与える最低限の施しに過ぎない.」

友人のAlaはハマスの支持者です.大学を卒業しても,エンジニアの仕事にほとんど就けなかった.彼の絶望は,その濁った目や汚れたひげに示されています.「イスラムの慈善活動は,多くの難民たちに食事や教育,医療サービスを提供してくれる.」「パレスチナ人は,生き延びる助けとなってくれた者に忠誠を示す.だからハマスは政党としても伸びる.」

戦乱によって仕事を失った多くのパレスチナ人は,イスラエルもパレスチナ政府(PA)も批判します.「PAから月に200ドルを得ても,子供を育てられない.」 イスラエル軍が撤退し,平和になれば,彼はまたイスラエルで働けると信じていました.しかし,「何一つ変わらない.」

「『占領された』という言葉が取れたという意味で,ガザは前より良くなった.しかし・・・ガザは今も牢獄だ.」 解放されて,彼らは何もない土地に残されました.


Jayati Ghosh Developing countries and the dollar The Asian Age, 3 October 2005

David Dodge Global problems require global efforts FT October 3 2005

Latin exuberance FT October 3 2005

Matthew Lynn Eastern Europe's Wave of Hot Money Won't Last Oct. 4 (Bloomberg)

William Pesek Jr. IMF Rebuffs U.S. Treasury on China -- Bravo! Oct. 5 (Bloomberg)

Andy Mukherjee U.S. Gains Little by Urging IMF to Hound China Oct. 6 (Bloomberg)

(コメント) 発展途上諸国がドル準備に依存するのをやめ,そのためにも輸出に依存した成長から国内経済の拡大に向けて投資を転換する必要があるでしょう.またG7諸国も,人口動態が長期的な貯蓄の国際移動を続けるのであれば,国内投資を促すために経済の弾力化や投資刺激策を必要とします.他方,資本流入に依存したラテン・アメリカや東欧諸国の経済政策は是正されるべきでしょうし,アメリカと中国が互いに非難の応酬を繰り返さず,政策を調整する前向きな交渉を続けるには,IMFが公正な仲介者の役割を担う必要もあるのです.


The Guardian, Monday October 3, 2005

For real trade justice, barriers must come down gradually

Peter Mandelson

FT October 5 2005

A new dawn for EU industrial policy

FT October 5 2005

Dispute on Boeing and Airbus subsidies deepens

By Kevin Done in London and Raphael Minder in Brussels

FT October 6 2005

European Comment: Transatlantic turbulence

(コメント) EUの通商代表,ブレア政権でも貿易と産業政策を監督していたPeter Mandelsonは,ドーハ・ラウンド推進とEUの進める経済パートナーシップ協定(EPA)の組合せを提唱します.

貿易をめぐる問題を解決する上で政治家たちが直面するのは,異なる「正義」の要求です.カリブ海諸国を訪問すれば,Mandelsonは,EUが関税を引き下げないように,と求められます.これにとって彼らは特恵的な市場を得ているからです.それゆえEUが共通農業政策(CAP)を見直す話に,彼らは憂慮を示すのです.

他方で,イギリス政府はEUに農産物の輸出補助金を減らすよう求めています.輸出補助金は市場を歪めており,これを撤廃する多角的な交渉が必要です.しかし明らかに,補助金を減らすことは,短期的に見て,貧しい諸国で増大する都市の人口に高価な食料を強いることになります.こうした問題の複雑さを考慮して,EUはアフリカやカリブ海,太平洋の諸国に対するEPAを提唱するわけです.

WTOのルールに従うなら,もはや,こうした補助金や優遇策は維持できません.EPAは,長期的に彼らの経済を輸出商品作物への過度の依存から離脱させ,多様な経済成長を実現できるように支援するものです.それはあくまで段階的な,漸進的な自由化を求めるものであり,彼らの地域的な市場統合や産業多様化を支援するものです.こうして初めて,彼らも市場開放の利益を享受できるようになるでしょう.Mandelsonは,貧しい諸国にも一定の政策の余地が必要である,と認めています.

こうして,EUの経済援助は前向きな,市場統合を促進する形で,しかも(アメリカと違って)イデオロギーから切り離して,その成果を基準とした経済改革を支援できる,と主張します.

他方,政治的な領域内部で投資や雇用を奨励する政府の「産業政策」は,アメリカでもEUでも盛んです.「新しい産業政策」は,1970年代のそれと違って,市場に依拠し,構造調整を妨げるのではなく助けるものである,と主張されます.確かにビジネスに好ましい環境や法律を整備し,政府とビジネスとの情報交換を緊密に行うことは重要です.

しかし,エアバスとボーイングとの対立や交渉が意味するのは,まったく異なった政治と大企業の依存関係です.多くの政府,特にアメリカとEUの対立,二つの大企業,資本参加した長距離大型旅客機に対する政府補助金と,和解もしくはWTO提訴が,今も錯綜したままのようです.


JT Monday, October 3, 2005

U.N.'s 'Einstein' moment

By RAMESH THAKUR

「メンバーたちが重要な価値を共有し,正当な行為について合意するなら,『コミュニティー』は存在する.国連改革をめぐる論争は,単にそのプロセスや管理に関するものではなく,政策に関するものである.それは世界的な規模の問題に対する集団的行動の解決策を目指す,選択肢のフォーラムなのか,それとも最後の手段(軍事的な強制力)なのか? より多くの環境規制が必要なのか,それとも規制を減らすべきか? 核の不拡散か核軍縮か? テロとの戦いか,人権の擁護か? 社会的な保護と規制を行える強い国家を望むか,あるいは,資本や市場に任せて,それほど押し付けがましくない国家が良いか? それは国際ケインズ主義と新自由主義との戦いである.」


FT October 4 2005

There is no ‘New Deal’ in today’s America

By Anatol Lieven

WP Wednesday, October 5, 2005

Cynical Conservatism

By Robert J. Samuelson

(コメント) Anatol Lievenは,アメリカがその政治経済システムを根本的に見直すべきなのに,政党やシンク・タンク,ジャーナリズムは,巨大な利益集団や政権に関わるインサイダーと癒着しすぎているために正しい批判ができない,と主張します.しかし少なくとも,大統領がこれほど専門の行政職についてまで広範な指名を行える先進国はないし,予算を取り合って無駄な工事を行った上院にも批判が集まっています.かつて,大恐慌がアメリカのシステムを転換したときには,フランクリン・D・ルーズベルトがいました.もし1932年にフーバーとクーリッジしか大統領候補がいなかったとしたら,アメリカ国民には悲劇でした.今は誰がいるのか?

「思いやりのある保守主義compassionate conservatism」を唱えて勝利したブッシュ氏ですが,その実態は「冷笑的な保守主義cynical conservatism」でした.9・11とその後のイラク戦争,大幅減税,社会保障制度改革,ハリケーン対策と救済・復興計画.ブッシュ氏とその政権は,イデオロギーとしての保守主義と,「偉大な社会」の幻影を用いて,共和党多数支配確立を図った狡猾な権力政治家集団です.


FT October 5 2005

A deeply flawed report on internal migration

By Jagdish Bhagwati

Asia Times Online, Oct 6, 2005

Working for Malaysia's workers

By Baradan Kuppusamy

BG October 6, 2005

What immigrants bring us

By Ian Bowles

(コメント)Jagdish Bhagwati は,国連が作成した移民に関する報告書を激しく批判し,特に彼が15年前に提唱した,世界移民機構World Migration Organisationが,政治家や官僚,移民保護活動家の縄張りになってしまうことに強く抗議します.WMOは,もっと経済の専門知識を活用した,世界移民政策・基準を作成・指導する機関であるべきだ,と考えているようです.

マレーシア政府の移民労働者管理と人権を重視したNGOとの戦いは続いています.Bhagwati はどちらに味方するでしょうか? 他方,移民に対する扱いを改善することで,世界的な移民獲得競争に勝利する目的を,どのように評価するべきでしょうか?


BG October 5, 2005

Fairness in new New Orleans

By Xavier de Souza Briggsand Margery Austin Turner

NYT October 6, 2005

When Disasters Act as Accelerators of Change

By VIRGINIA POSTREL

(コメント) 都市や地域の復興には,国家や国際システムと同じように,合意の形成や大規模なインフラ投資,住民の多様性と政治対立,などが示されます.

復興されるべきなのは,都市の経済活動なのか? 居住区の生活なのか? 避難民の個人としての希望なのか?

実際,都市の活力は物質的な環境にあるのではなく,人々の知識やネットワークによって蓄積されているのです.それゆえ,巨大な地震に襲われても,非常に短期間で経済活動は復興します.ただし,災害からの復興というショックは,潜在的に進行していた経済過程の革新を加速するでしょう.それゆえ,災害前の都市が復元されるのではなく,革新的なグループが都市を改造し,衰退するグループを排除するわけです.

一方では,メキシコ湾に復興されるディズニーランドやラスベガスで良いのか? という批判があります.その意見によれば,都市の多様な所得階層の住民が全体として機能するために必要な公共投資が重要です.

他方,住宅保健さえあれば,公共投資を行うよりも,被災者に保健を支払うだけでよかっただろう,と考える者もいます.政府が特別なことをしなくても,被災者に小切手を送るほうが,彼ら自身の望みを実現する自由を最大にしてやれる,と.

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The Economist, September 24th 2005

Restoring the balance

Race: One man’s ghetto

Palestinians in Gaza: Will they sink or swim?

The Caribbean: Living and dying on history and artificial economic sweeteners

(コメント) 石油価格の上昇や人民元の切上げは,世界経済の拡大する不均衡を調整する過程に追加された香辛料に過ぎません.そもそもアメリカの過剰消費に依拠した世界の成長はいつまで続けることができるのか? とThe Economistは問います.

移民たちが集まって住むことは何も悪いことではありません.もしかれらを支援することで,彼らに良い学校ができ,犯罪者が減り,十分な企業と雇用が育つなら,移民コミュニティーは尊重されるでしょう.むしろ土地投機や貧富の格差は,不可抗力により貧者を追放し,都市の再開発とゲットー化をもたらします.

植民地の過去によって生きるよりも,開かれた市場の機会をつかむべきだ,とThe Economistは考えます.また,カリブ海諸国が迫られる経済改革の中身が個々の国によって異なることから,私たちの国や都市も学べるでしょう.


The great thrift shift

(コメント) 不均衡に基づく成長の持続,という世界経済の現状を,さまざまなパラドックスが結ぶ関係の中から描きだした興味深い特集です.その要点は,世界的な貯蓄・投資バランスの長期的変化と適切な政策対応です.

グリーンスパンの後継者と目されるバーナンキFRB理事が,アメリカの経常赤字は世界の「過剰貯蓄」を相殺するために生じている,と正当化した演説はワシントンを喜ばせました.たとえアメリカ国民が貯蓄しないで消費を増やしたとしても,長期金利が低すぎたとしても,アメリカは悪くない,というわけです.

しかし,歴史的な比較によれば,世界の貯蓄水準は上昇していません.記事は,1970年代の石油危機に対して主要諸国の政策対応が異なったことを指摘して,現在の不均衡拡大も,各地域のバブル破綻や通貨危機に対する政策対応の違いによってもたらされた,と考えます.不均衡に対する政策についても,1.このまま放置する,2.長期の構造変化を受け入れる,3.できるだけ早く政策的な相互調整を図る,と意見が分かれています.

世界の貯蓄が大きく変化した点について,記事は各地域の変化を説明します.アメリカと日本はバブル破綻後の政策,特にデフレ回避において,大きく異なっていました.中国は,その急速に成長と所得格差,人口転換や社会保障システムの不備が消費を抑え,貯蓄を増やしています.また,その他のアジア諸国では,通貨危機によって,企業が過剰な債務を返済し,政府はドルの外貨準備を増やすため大幅な経常黒字を出し続けてきました.

アメリカは,株価暴落後の不況を回避するために,金融緩和で住宅バブルを刺激し,その後も,他地域からの資本流入が低金利と消費拡大を支えてきました.The Economistは,こうして形成された不均衡が世界経済の成長を維持する上で有益であったと認め,今後,緩やかに解消される可能性も指摘します.なぜなら日本も中国も,他の諸国と基本的に同じような形で,貯蓄と投資のバランスを変化させているからです.

しかし同時に,この異常な低金利がアメリカの消費や投資のパターンを歪め,債務に依存した消費者たちや輸出部門の衰退が,次のショックをアメリカや世界にとって耐えられないものにする危険がある,と警告します.それゆえ,G7諸国は石油価格の引き下げや人民元高を求めるだけでなく,中国や日本が国内投資に基づく調整を主導し,アメリカ政府は財政赤字削減や緩やかな金利上昇による消費の抑制を受け入れることを求めます.そして,中国や新興諸国も含めた政策調整の制度化が役立つと考えます.