IPEの果樹園2005

今週のReview

9/5-9/10

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1 嵐は二度やって来る :ニューオーリンズのハリケーンと洪水は,ブッシュ政権を直撃する.

2 竹中=ホリエモン革命 :サッチャーか? ゴルバチョフか? ようやく日本の占領体制が終焉?

3 疲れた巨人 :イギリス帝国のボーア戦争から見た,アメリカ帝国のイラク戦争とその後.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, JT:Japan Times, CSM:Christian Science Monitor


NYT August 25, 2005

Technology Levels the Business Playing Field

By HAL R. VARIAN

(コメント) 日本には決して見当たらないような中小企業が紹介されています.それは社員が6名の多国籍企業です.世界各地の情報産業集積地において,それぞれがインターネットを利用し,監督し,情報交換し,協力します.その企業主は外国生まれのアメリカ人です.大企業にとって,アウトソーシングは好まれないけれど有効な選択肢の一つに過ぎませんが,中小企業にとっては不可欠な部分です.それは雇用を海外に移転するものではなく,国境を越えた雇用増そのものです.Hal R. Varianは,IT革命で最初に大きな利益を上げたのは多国籍企業であったが,本当に大きな利益を上げるのは中小企業である,と考えます.

零細企業局によれば,全企業の99.7%が零細企業であり,非農業のGDPの半分以上を生産している.そして雇用の60から80%を創出する.

おそらく日本でも,市場経済には中小企業や独立自営業者が一杯です.公共サービス部門とともに,市場経済のバランスを担う重要な基盤なのです.彼らが活力に満ち,グローバル化するとき,日本もきっと変わるのでしょう.政府はそれを支援しているでしょうか?


The Guardian, Thursday August 25, 2005

Stagger on, weary Titan

Timothy Garton Ash in Stanford

WP Thursday, August 25, 2005

Rice's Mission to Foggy Bottom

By Jim Hoagland

(コメント) Timothy Garton Ashは,1905年のロンドンと2005年のワシントンとを比較します.「イラクはアメリカのボーア戦争である」と.

ロンドンであれ,ワシントンであれ,世界を担う気になっている巨人の目には,どこでも介入して解決しなければならない問題が目に付き,いつも議論しています.しかし,本当は,巨人も疲れているのです.

1900年の夏に,主要な戦闘は終わった,とイギリス政府は宣言したものの,その後2年間をイギリス軍は鎮圧に費やしました.イギリス兵45万人に植民地軍を加えて,ボーア人の4分の1を強制収容所に閉じ込め,多くがそこで死ぬという結果でした.

イラク戦争のコストは1兆ドルを超えるとも言われます.憲法ができても,誰もイラクで民主的な親米政権に向かうとは思いません.ワシントンのジョーク.「これで漸くイラン=イラク戦争も終わる.イランの勝利で.」

原油価格も1バレル60ドルを超え,アメリカ人はリッター当たり3ドルのガソリンに大いに憤慨します.ブッシュは何をしてくれたんだ! その石油を横から飲んでしまうのは中国などのアジア諸国です.アメリカ人は,中国企業による石油関連の企業買収を妨げました.

かつてイギリスがドイツやアメリカの台頭を恐れたように,アメリカは中国やインドを恐れます.その上,アメリカ人はまったく貯蓄せず,戦争も投資も外国からの資本流入に頼っています.

だからと言って,アメリカが帝国を解体する,とAshは考えません.イギリスはその後40年間も,帝国を維持したのです.最大の版図を得たのは1918年でした.その死が確実となったのは,アドルフ・ヒトラーの挑戦を退けるために,血と財源を使い果たしたからでした.

一部の賢明な人々だけが,アメリカが完全に衰退する前に国際秩序を強化して,中国やインドもこの秩序に加え,自由主義と民主主義を守ろうとしています.

ライス国務長官は,その気概と魅力で,ブッシュ氏の最大の批判者たちを懐柔して回ります.ブッシュ政権のスタッフたちは,世界を変えるためにはアメリカを,ワシントンを変えなければならないことを知っています.ライス女史は今や,政治理念と文化の中枢域を占領しつつあります.

国務省は今もパウエルとそれ以前の伝統を継承していますが,政権のイデオロギーを無視することはできないと悟りつつあります.ブッシュ氏は重要な政策をホワイト・ハウス内に取り込んでしまいました.

ライス長官は自分たちが「リアリスティック」だと言います.二つの戦争,国連安保理の無視,ロシアとの関係強化,など,現実を変えてしまったからです.平和も安定も,この現実の中を進む先にしかない,と.


Asia Times Online, Aug 26, 2005

Killing the dollar in Iran

By Toni Straka

IHT SATURDAY, AUGUST 27, 2005

America's disastrous 'military option'

Amin Saikal

(コメント) イランの核兵器開発を阻止できても,アメリカは石油市場で脆弱性を増しています.

世界の石油供給に関する不安はこの先も容易に解消されないようです.石油価格の上昇は輸入国にドルへの需要を増やします.しかし,アメリカの輸出が伸びるわけではありません.産油諸国はその売り上げをどのように保有するでしょうか? アメリカ政府による資産の差し押さえを恐れて,それらの一部はロンドンなどで保有されます.非ドル資産に分散されることで,ドルへの影響が変わります.

こうした情勢を受けて,イランの石油供給が重要になっています.イランが自ら国際石油市場を立ち上げ,ドル以外の通貨で売買すれば,それは中国など,ドルの外貨準備を減らそうとする石油輸入国にとって,魅力的な話でしょう.

アメリカはイランの核施設を空爆するでしょうか? たとえば,ミシシッピー州やルイジアナ州でハリケーン後の混乱収拾に失敗し,治安悪化が続けば,国内政治から視点をそらすために外国で戦争を始める?

既にイランの新大統領は核開発の権利を主張しており,ブッシュ氏は軍事的攻撃の選択肢を示唆しています.しかし,そのコストは大きすぎるでしょう.イランはまず,ホルムズ海峡を封鎖するはずです.これを防ぐにはアメリカが地上軍を派遣しなければなりません.今,アメリカ政府が最もしたくないことです.

イランは石油供給を止め,あるいは,イラクやアフガニスタン内で展開され,今は積極的に関与していない反米活動を,強く支援するかもしれません.イラン自身が,反米闘争に身をささげる多くの過激派を抱えています.アメリカへの直接攻撃も試みるでしょう.

それらを回避するには,イランとEU3カ国が交渉をまとめる必要があります.すなわち,核開発と廃棄だけに対立を限定せず,アメリカがイスラム国家体制を承認し,イランに対する脅迫をやめ,イスラエルも含めて地域全体から大量破壊兵器を除去する話し合いに応じることです.


Andrew Balls, Greenspan warns on impact of asset prices, FT August 26 2005

Andrew Balls, 'Market trauma' warning when Greenspan goes, FT August 26 2005

Easy Credit in Mortgages May Backfire, NYT August 26, 2005

DANIEL ALTMAN, An Uneven Fight Against Inflation, NYT August 28, 2005

EDMUND L. ANDREWS, Greenspan Says Housing Boom Is Nearly Over, NYT August 28, 2005

What I learned from Alan Greenspan, The Guardian Monday August 29, 2005

PAUL KRUGMAN, Greenspan and the Bubble, NYT August 29, 2005

David Ignatius, Greenspan's Humility, WP Wednesday, August 31, 2005

(コメント) グリーンスパンという個人の属性に世界経済の推移が結び付けられることは,金融政策がそれほど個人の裁量や直感,価値観に左右されるということなのでしょうか?

グリーンスパンが警告したのは資産価格の動きです.株式,債券,住宅など,資産価格が変動すると世界経済に強い影響を与えます.いつの間にか資産が増えたと思った人々は,貯蓄を減らし(さらに債務を増やして),消費にふけりました.同時に,アメリカには財政的な規律が失われ,保護主義が強まっています.その結果,アメリカの資産価格が下落する影響は,世界経済にとってさらに破壊的になるでしょう.

グリーンスパンは,こうした不安に対して,(早期にバブルを挫くための金融引締めを行うより)経済の弾力性を高めることが重要だ,と説得してきたはずではないか? しかし,残念ながらアメリカ経済はグリーンスパンの説得を無視し,政府も消費者も非弾力的になって行った,と言うわけです.

アメリカの景気は悪くないのに,ロシア危機からLTCMが破綻し長けたとき,FRBは金利を急速に下げました.これはFRBに認められた権限だろうか? と問う声もあります.グリーンスパンは,アメリカの金融システムと世界とのつながりを重視しました.金融市場もそれを肯定的に見たのです.

しかし,危機救済やバブル破綻からの不況回避(あるいはブッシュ支援?)に金融緩和を大胆に行ったことは,その後の住宅バブルを許した,と批判されます.モーゲージ債の価格が暴落するのか,それとも地域的な価格下落にとどまるのか? 住宅市場は株式ほど統一されていない,と言います.

アメリカ連銀とECBとイングランド銀行を比較しても,その手法や成果について意見が分かれていることを指摘します.ただし,1970年代のような二桁のインフレが再発するとは考えていません.グリーンスパンはアメリカの対外赤字も無視しました.タイヤアルゼンチンがそうであったように,アメリカの好景気や投資は海外からの莫大な資本流入が支えています.

グリーンスパンは財政赤字,特に社会保障制度の長期的な見通しを悲観していました.もしかしたらアメリカ政府はインフレに頼るかもしれない,と.

イングランド銀行総裁のMervyn Kingは,グリーンスパンの成功の秘訣を三つ示します.1.客観性の重視,2.あらゆる統計の重視,3.時間整合性.・・・事実に基づいた一貫した政策を取れば,価格メカニズムは長期的に安定化できる,という信念でしょうか?

PAUL KRUGMANは,グリーンスパンの演説は立派なようだが,所詮,後講釈に過ぎない,と批判します.なぜなら,グリーンスパンはブッシュ政権の大幅減税を支持したし,住宅バブルも放置した.そして同時に,財政赤字は減らすべきだとか,バブルは維持できない,などと言い続けるのは勝手な言い分だ.

どうして2年前に,借金を増やして住宅バブルに手を染めるのは危険だ,とはっきり発言しなかったのか? 今ではアメリカ経済が住宅バブルと対外赤字に苦しめられている.もはや手遅れだ,と.この赤字を減らすために,最もうまく行って,アメリカ経済は成長を減速し,不況になるだろう.

ところがグリーンスパンはここでも言葉の魔術師だ.住宅バブルが緩やかに解消すれば人々は貯蓄を増やし,こうして対外赤字も解決されるだろう,とまるで調和した世界を夢見ている.残念ながら,そうではない.住宅価格は急落し,建設やサービス部門で雇用を失わせる.こうした分野にドル安はなかなか影響せず,彼らが雇用されるには,大幅に下落したドルが輸出を伸ばすようになってからだ,と.

アメリカを待ち受ける困難な調整こそ,グリーンスパンの失敗の産物です.

David Ignatiusは,まったく正反対に,グリーンスパンの謙虚さを称えています.確かに,ワシントンで政治家や評論家たちの能弁さ・多弁さに疲れた頭を癒す効果があったでしょう.


FT August 26 2005

Schroder v Merkel

WP Wednesday, August 31, 2005

Germany's Crucial Vote

FT September 1 2005

More reforms, please

JT Thursday, September 1, 2005

Where is the German vision?

By MICHAEL R. CZINKOTA

(コメント) 9・11は日本の選挙ですが,9・18にはドイツの選挙があります.シュレーダーの社会民主党とメルケルのキリスト教民主同盟とが,1969年以来の重要な政治的選択を国民に求めている,と言うわけです.

何の選択でしょうか? 社会保障制度の見直し,所得税の見直し,雇用の拡大と企業の投資促進について,改革の中身や実現プロセスが問われます.ところが,選挙の争点としてシュレーダーは再びアメリカの対イラン政策を批判し,国民の反戦・反米感情を利用しています.しかしWPは,シュレーダーの人気が10%以上もメルケルを下回っており,今度はそのデマゴギーも失敗に終わる,と批判します.

メルケルはドイツで初めての女性首相,しかも旧東ドイツ市民となるでしょう.元物理学の先生であったメルケルは,ドイツの社会福祉国家を見直し,失業者を減らさなければなりません.メルケルが新首相となって,ドイツの労使協調型経営や所得税制度を改革すれば,本当に雇用が増えるのか,国民にとって難しい選択となるでしょう.

他方,シュレーダーは敗北を認めても,より左派のポピュリスト勢力が強力な反対派として残るかもしれません.シュレーダーとの協調を求めて合意できる改革案を模索することもありそうです.他方,FTは労働市場の弾力化をメインとしたメルケルの100日改革計画を支持しています.「弾力化」の中身が問題なのは言うまでもありません.

賃金交渉や労働時間を弾力化し,フラット・タックスを採用するという基本的な理念は,もし雇用や成長に繋がれば,ドイツを大きく変えるかもしれません.しかしその前に,メルケル党首はドイツの小泉首相となって,改革のためにライン型資本主義をぶっ壊す勇気を求められるわけです.


The Guardian Friday August 26, 2005

Bra wars: Europe strikes back

Larry Elliott

FT August 27 2005

A tiresome tale of textile tantrums

(コメント) EUもアメリカも,中国からの繊維製品輸入急増を抑制し,管理しようとしています.

中国の生産者と競争するにはどうするべきか?

中国の安価な製造品を輸入し,アメリカやヨーロッパは高度な知識集約財に生産をシフトすればよいのでしょうか? あるいは厳格な保護主義に戻るべきでしょうか? 繊維製品の中でもすみわけが進み,中国の生産者と国際的な分業や相互の輸出を行えるかもしれません.


The Guardian Friday August 26, 2005

Don't shrug off low pay

Polly Toynbee

FT August 27 2005

A good smile for less

The Observer Sunday August 28, 2005

China's poorest will suffer

Will Hutton in Beijing

(コメント) グローバリゼーションの時代には,いよいよ,世界の賃金水準が一致する方向にあるのでしょうか?

Polly Toynbeeは,高度な技術や熟練を持った移民は歓迎するが,未熟練労働者の移民を受け入れてはならない,と主張します.なぜなら,後者の移民は所得格差を拡大し,中産階級を没落させて社会を分裂させるからです.

移民をめぐる論争から,一冊の本が紹介されています.The Impact of Inequality: How to Make Sick Societies Healthier. 著者のRichard Wilkinsonは,暴力の蔓延した貧しい社会ほど不平等である,と主張します.たとえ豊かな社会でも,不平等な社会は不健全で,不幸な,犯罪の多い社会なのです.それゆえ,不平等を減らす努力が重要です.

グローバリゼーションだから政府には何もできない,とToynbeeは考えません.不平等な賃金をなくし,最低賃金を引き上げること.社会的な正義を実現するために,政府には多くのことができるはずだ,と.

FTは,未熟練労働者の象徴であった「ポーランド人の配管工」についての話題が,熟練労働者や技術者の問題,「ポーランド人の歯医者」に代わった,と指摘します.自国で歯の治療をするより,外国の歯医者に頼めばもっと安く治してもらえる,というわけです.特に医療保険制度の不備から虫歯に苦しむイギリス人にとって,これは重要な問題(解決策)です.

あるいは,国内では体裁を重んじる日本人男性が,安価なセックス・サービスを求めて東南アジアを旅行するように!

FTは,サービスの国際取引が拡大するのは止められないし,それは制度改革の好ましい市場圧力となる,と考えます.

Will Huttonは,中国の急速な成長と都市の繁栄にもかかわらず,農村部にあふれる貧困の激しさに注目します.しかし,だからEUやアメリカ,日本は繊維製品をもっと輸入するべきなのでしょうか? 中国の貧困を解消するのは,まず,中国自身の経済問題です.8億人の貧しい農民たちが安価な輸出や移民に向かうより,彼ら自身がもっと豊かになる方法があるのではないか?

土地制度や賃金決定も,インフラなどの投資配分も,金融システムも,為替レートも,中国は農村の貧困を解消する政策を重視しているでしょうか?


LAT August 26, 2005

Bush's way: discipline, dollars and deceit

Jonathan Chait

CSM August 29, 2005

More costly than 'the war to end all wars'

By David R. Francis

(コメント) イラクの情勢はこれほど悪化していると言うのに,なぜブッシュ政権は議会を支配していられるのか? ブッシュ政権に共通するのは,@共和党員を厳しく掌握すること,Aよく組織されたロビー団体にふんだんな報酬を与えること,そして,B要するに国民を欺き,だますことである,とJonathan Chaitは指摘します.

実際の戦費はいくらぐらいになるのか? イラクとアフガニスタンには,比較的少数のアメリカ兵(1万4000人)がいるだけだが,もし今後5年間この状態が続けば,その費用は1兆4000億ドル,国民一人当たり4745ドルに達する,とハーヴァード大学のLinda Bilmesは推計しました.この軍事費と利払いの推計だけでも,既に第一次世界大戦のアメリカの費用を超えています.

戦死者ははるかに少ないですが,インフレを調整した後でも,イラク戦争はアメリカ史上4番目(第二次大戦,ベトナム,朝鮮半島)のコストを支払うでしょう.しかし,経済規模に比べた負担ははるかに限られています.現在の軍事費はGDPの4%であり,冷戦期の1980年代は6.2%,ベトナム戦争の1960年には9.4%,朝鮮戦争の1953年には14.2%,そして第二次世界大戦の1944年には38%でした.・・・アメリカはまだ財政的に戦える?


Wesley K. Clark, Before It's Too Late in Iraq, WP Friday, August 26, 2005

The Fragments of Iraq, NYT August 27, 2005

The War's Momentum, WP Saturday, August 27, 2005

DAVID BROOKS, Winning in Iraq, NYT August 28, 2005

FRANK RICH, The Vietnamization of Bush's Vacation, NYT August 28, 2005

Jim Hoagland, Bush's Risky Intervention, WP Sunday, August 28, 2005

Stay flexible on Iraq's draft constitution, FT August 30 2005

George Monbiot, How to stop civil war, The Guardian Tuesday August 30, 2005

Keep the Sunnis involved, LAT August 30, 2005

Robert Scheer, Iraq's fig leaf constitution, LAT August 30, 2005

NOAH FELDMAN, Agreeing to Disagree in Iraq, NYT August 30, 2005

(コメント) 憲法制定でイラク情勢が好転するとは誰も楽観していません.

コソボ戦を指揮し,2004年の民主党大統領候補に出たWesley K. Clarkは,イラク戦は間違った選択であっただろうが,今すぐに撤退することも,撤退の期日を示すことも間違いだ,と言います.アメリカ軍の介入は,地域の協力を促進するものでなければならず,そのためには軍事的手段だけでなく,もっと外交的・政治的な手段を活用しなければならない,と.

経済の復興と民主的な政治活動の促進,政府組織への支援,そして治安回復をアメリカ軍は達成していません.それに向けた主要国の協力も得ていません.今,撤退するだけでは,事態を悪化させた責任を問われます.

DAVID BROOKSは,Foreign Affairsに掲載されたゲリラ討伐法を紹介します.著者のAndrew Krepinevichは退役軍人の学者であり,その分析はアメリカ政府にも浸透しています.しかし,どうすべきか? という問いに彼が示した答えは,単純な答えは無い,ということでした.

これまでの多くの戦争が示しているように,住民の間でゲリラを殺すことは,むしろゲリラの支援者を増やすかもしれません.ゲリラに勝利する上で重要なことは,市民を守ることです.限られた人員しかないのであれば,安全地帯を確保して,次第にそれを拡大し,連携させることです.

アメリカ政府は,既にやっている,と答えるでしょう.しかし,それならなぜ空港に至る道路で今も攻撃されるのか? 実際には,ラムズフェルドの21世紀型戦争を曲げずに,どこでもゲリラを住民と区別できないのです.正しい教訓を受け入れよ,と.

FRANK RICHは,憲法の制定よりも,シーハンの抗議活動がイラク戦争へのアメリカ国民の意識を大きく転換させた,と述べます.それは彼女の政治的主張によってではなく,彼女の示す息子の死が,ブッシュ氏の隠し続けてきたものを国民に示すからです.しかし同時に,ブッシュの戦争を事後承認し続けてきた民主党にも反感を示します.自壊するブッシュ政権を叩いて,独自のイラク対策を求められるより,たとえばヒラリー・クリントンのように,イラク問題ではなく,ビデオ・ゲームが子供たちに与える悪影響に関して記者会見を開く,といった形でしか動かないからです.共和党は,さらに9・11を利用し,これまで以上のデマゴギー選挙を準備します.

憲法制定は,イラクの内戦にどのような影響を与えるのか? 期限なしには交渉できないでしょうが,支持が無くては合意できません.反政府武装勢力に対して主要な政治勢力を結集するはずが,むしろ内戦を促す政治対立に発展してしまいました.アメリカはいまだに,スンニー派とバース党を政治過程から排除した失敗の付けを支払っています.

合意の期限や式典を盛り上げているのは,アメリカの国内政治による見せ掛けに過ぎません.10月15日の国民投票は,単に憲法ではなく,統一か分割か,それを問うものになるのでしょう.


WP Saturday, August 27, 2005

Workers of the World Uniting

By Harold Meyerson

The American Prospect 08.30.05

Globalism for the Rest of Us

By Harold Meyerson

BG August 31, 2005

The new proletariat

By Robert Kuttner

(コメント) グローバリゼーションの時代において,唯一,グローバリゼーションから隔離されていたものが,漸く,時代に追いつく模索を始めました.労働組合です.アメリカのサービス産業における労働組合が,世界中の労働者や移民を含めて,1500人の指導者により世界労組を結成する準備会をシカゴで開きました.

かつてアメリカの南北戦争後にも,地域毎に分割されていた経済が統合される過程で,大企業が誕生に,それに遅れて労働組合も結成されました.

しかし,通貨同盟がそうであるように,労働組合の同盟が直ちに単一の労働組合を意味することは無いでしょう.各国の労働条件や生活水準,景気変動は異なり,企業との交渉は必ずしも一元化することが望ましいとは言えないからです.しかし,もちろん,工場の移転や移民の雇用などについて,彼らが共通の解決策を模索する理由はあるわけです.

Robert Kuttnerは,アメリカの労働者の中でも,若者がもっとも報酬や雇用の点で不利益を被っている,と指摘します.そして,政府は国民的な社会保障システムを解体しつつあるので,資産市場などで有利な両親を持つ若者だけが,家族内社会主義によって救済され,裕福な家族にふさわしい高い地位を得ます.


FT August 28 2005

Capital flow must change course

Martin Wolf

(コメント) Martin Wolfは,なぜ貧しい諸国から裕福な諸国に資本移動が起きるのか? という問題に答えようとします.それは同時に,アメリカへの資本流入がいつまで続き,どのように終わるのか? という問題です.

何が起きているのか? 新興市場経済が毎年5000億ドルも外貨準備を増やしている,ということです.それは経常黒字と直接投資の流入によるものです.Wolfは三つのパターンを指摘します.

@1996年から2004年にかけて,新興市場経済の経常収支は赤字から黒字へ4300億ドル,他方,アメリカの収支は赤字を5490億ドル増やした.

Aこの変化を促した力は二つある.一つは石油価格の上昇.もう一つはアジア通貨危機である.

Bアジアに巨額の経常収支黒字が発生しているから,民間資本のリサイクリングがアジアで機能しなければならない.

黒字累積の原因は何か? ひとつの説明は,政策の失敗や制度の不備である,とWolfは考えます.特にアフリカ,CIS,中東地域の産油諸国で発生する黒字には,それが国内で十分な投資に向かわない事情があるでしょう.しばしばもっとも豊かな国で貯蓄率が低く,最も貧しい国は貯蓄率が高いことは,投資率に見合った国際資本移動をもたらします.

他方,アジアには特別な事情がありました.中国は高い貯蓄率を越える高い投資率を実現していました.しかし,危機によってアジア諸国の投資は減少し,貯蓄が増えたのです.

Wolfが主張するのは,アジアで発生したこの経常黒字が通貨当局によって不胎化されなければ,アジアでは金融緩和と消費・投資ブームが起きて,もっとインフレと実質為替レートの増価が進んだのではないか,ということです.その結果,経常黒字は解消したはずです.

現実には,特に,中国,香港,マレーシアなど,ドルにペッグした通貨当局が為替レートを維持するために外貨を民間から吸い上げ,それは厳しい競争にさらされたアジア諸国の通貨も過小評価された価値に維持したのです.

この傾向は,アメリカの対外赤字を維持できない水準にまで増やすでしょう.その前に,アメリカで保護主義が強まります.それでも十分に成長するまでアジア諸国にとって意味があるから,アメリカの赤字を安定的に支持するだろう,という意見に対して,アジアの不胎化政策は続けられず,国際資本移動も不安定だ,という反対意見があります.

Wolfは,特に中国とアメリカ,双方が調整に取り組む意志を示さなければ,結局,調整は進まない,と言うにとどまります.


FT August 28 2005

US split over rising illegal immigration

By Edward Alden in Washington

FT August 29 2005

A new mix in the melting pot

By Sara Silver

(コメント) 国境管理を強化すれば,不法滞在者が増え,国境で死亡する移民が増えるだけ.移民政策が機能しないのは,一つには,ブッシュ政権が依拠する政治基盤が移民に関して対立する意見を持っているからです.一方で,多国籍企業やテキサスの牧場主は開放的な移民管理を望んでおり,他方,保守派のキリスト教徒や安全保障を重視する団体はさらに厳しい国境管理と非合法移民の排除を求めています.たとえ経済を破壊してでも?

Sara Silverは,アメリカ社会におけるヒスパニックの重要性を確認しています.


FT August 29 2005

Pressure grows on Indonesia to aid currency

By Shawn Donnan and Victor Mallet in Jakarta

Sept. 1 (Bloomberg)

Why Indonesia Must Consider Abolishing Rupiah

Andy Mukherjee

(コメント) アジア通貨危機の際に,インドネシア政府はカレンシー・ボードの採用を真剣に検討していました.今また,インドネシアは自国通貨を破棄してドル化することを試みるのでしょうか?

インドネシアは重要な産油国です.しかし,国内の石油価格に補助金を出すため財政赤字が増え,インドネシア通貨への投機的な売りが起きています.アメリカの金利上昇に対して,中央銀行は金利引き上げを同調しませんでした.政府は石油の増産を示唆しましたが,まるで市場圧力がアメリカの石油逼迫に応じてインドネシアにそれら(補助金廃止と財政赤字削減,世界への石油供給増加)を強要したかのように見えます.

さらに,通貨価値を守れない中央銀行など不要ではないか? とAndy Mukherjeeは考えます.資本流入,為替レートの安定化,国際競争力,インフレ抑制,そして不況・金融危機回避,など,インドネシアの中央銀行は多くの目的を,矛盾した仕方で追求してきたようです.もし国民のプライドを傷つけなければ,ユドヨノ大統領はドル化することで,投資家は言うまでもなく,国民すべてに大きな利益をもたらすだろう,とMukherjeeは主張します.

かつて,ドーンブッシュもメキシコのドル化を支持しましたが,一時的には支持できても,長期的にはどうでしょうか? アメリカの金融政策が2億3900万のインドネシア国民にふさわしい? ・・・信じられません.


FT August 29 2005

Japan's small world

The Guardian, Monday August 29, 2005

Voting for reform

IHT TUESDAY, AUGUST 30, 2005

Elections in Japan: Koizumi's $3 trillion gamble

By Jeff Kingston

JT Monday, August 29, 2005

Southeast Asia watches Koizumi's gamble

By ERIC TEO CHU CHEOW

Aug. 31 (Bloomberg)

Is Koizumi Japan's Thatcher or Gorbachev?

William Pesek Jr.

JT Wednesday, August 31, 2005

The meaning behind Koizumi's moves

By RONALD MORSE

(コメント) FTは,民主党の岡田氏が求めた小泉氏との党首討論が行われるべきだった,と考えます.また,アジア外交に関して小泉氏の靖国参拝を取り上げることも重視します.小泉氏が郵政改革だけに争点を絞った「刺客」戦略も,小泉氏への高い支持率を自民党候補への投票に必ずしもつなぐことはできないでしょう.

The Guardianは,日本もドイツも経済実績の悪化によって改革が求められている,と指摘します.社会保障制度を市場型に改革して,よりアングロ・サクソン的な方法でダイナミックな市場経済を目指すべきか,政治指導者は有権者に問うしかなかった,と考えます.

自民党と民主党の論戦で,改革が加速し,後戻りできなくなったことを,何よりも歓迎する意見があります.小泉自民党がたとえ政権に復帰できても,かつての自民党が支配した政治システムは解体されていくでしょう.官僚型統制・保護主義,政治的資金配分,農民・建設業者・中小企業への優遇政治,などが放棄されたのです.竹中=ホリエモン革命,と呼べるでしょう.

William Pesek Jr. が指摘するように,郵便貯金とは「金融型社会主義」だった,と理解できます.すると,「小泉氏はサッチャーなのか? あるいは,ゴルバチョフなのか?」と,欧米の日本ウォッチャーは考えるでしょう.その両方である,と主張するのは,正しいでしょうか? 小泉氏の「分割」や「民営化」という言葉には中身が無く,反対派との妥協の産物です.

むしろ,これは小泉流の政治改革なのです.サッチャーではなく,むしろゴルバチョフだ,とPesek Jr.は考えます.金融市場はこの改革を買いそうにないので,その結末もソ連に近いものかもしれません.

RONALD MORSEは,この政治改革が占領軍によって導入された,日本の経済に対する官僚支配を終わらせる画期となる側面と,小泉氏による権力集中・強権体制,対アジア摩擦を加熱する側面を持っている,と考えます.


FT August 30 2005

Teamwork can put the eurozone on a steady course

By Jean Pisani-Ferry

FT August 31 2005

Five years is too short to judge the euro a failure

By Vincent Cable

(コメント) ユーロ圏を形成している限り,改革を先行する国は不利益を被る,と懸念されます.なぜなら改革によって失業者が増え,インフレを抑えても,ユーロ圏のインフレ率は十分に下がらず,財政赤字も増えて,景気刺激策は取れません.改革を促進する仕組みが必要になるわけです.すなわち,各国は改革を協調し,それを監視すること.また,改革のためにマクロ政策による刺激策を認めること,です.ECBは,改革が行き詰まって通貨同盟に対する疑念が強まるのを放置してはならない,と.

イギリス自由民主党の影の内閣で首相となったVincent Cableは,最近のドイツとイタリアに関する新しいユーロ悲観論を反駁します.一つの金融政策がすべての国に当てはまるか? という問題や,ECBのインフレ目標には,当然,議論があります.しかし,ドイツが停滞した理由や,イタリアが離脱する危険を,ユーロに結び付けて不安を煽るのは間違いです.結局,いずれの国もユーロによって促された競争圧力を受けて,自ら改革を実現するしかないのであり,ドイツは苦しみながらもその成果を示しつつあります.また,イタリアの失敗は彼らのコストに跳ね返り,それでもユーロに守られながら改革を要請されるでしょう.アルゼンチンへの坂道はまだずっと先です.


Coping with Katrina, BG August 30, 2005

Ross Gelbspan, Katrina's real name, BG August 30, 2005

Nature's Revenge, NYT August 30, 2005

DAVID BROOKS, The Storm After the Storm, NYT September 1, 2005

Sidney Blumenthal, Katrina comes home to roost, The Guardian Friday September 2, 2005

(コメント) バクダッドのような無秩序と発砲,略奪,兵士たちの展開がアメリカ国内で見られました.自然災害が社会秩序の破綻をもたらすだけでなく,ある社会秩序の本質を示す一種の破壊実験となるのは当然です.犠牲は常に弱者に偏って発生し,予報の正確さや防災技術は問題を解決できません.「危機管理」や「地球温暖化」の一言で片付けるべきではないと思います.

ブッシュ氏のさまざまな国内政策,予算配分に批判が集まるでしょう.たとえ,災害前よりもっとすばらしいニューオーリンズを再建したい,という呼びかけは素晴らしいとしても.

NYT September 1, 2005

The Storm After the Storm

By DAVID BROOKS

ハリケーンは,二度,来る.最初は暴風雨として.その後,歴史家のJohn Barryが名づけた「人間の嵐」がやって来る.すなわち,非難の声,政治対立,補償をめぐる争い.洪水は社会の表面にあるすべてを押し流し,物事を解決する道も失われる.その挙句,人々は隠されていた権力構造にさらされ,不正義,政治腐敗,知られざる不平等に直面する.もしこの国の歴史において,気象の激変を振り返るなら,それがどれほどしばしば政治の激変を伴ったかに驚くだろう.

1889年,ペンシルバニアで,大洪水がジョーンズタウンの大部分を押し流した.洪水で多くの家が破壊される音は,まるで多くの馬がカラスムギを粉に挽いているみたいだった.燃え上がった橋の上で逃げようとした人々は,焼け死ぬか,濁流に飛び込むしかなかった.

その洪水は余りにも異常な事態であったために,何が起きたのか人々には理解できなかった.メディアには野蛮な誇張と作り話があふれた.死体の山で川がせき止められたとか,バラの花輪で遊んでいた子供たちの死体について.

偏見が解き放たれた.ハンガリー人は今の非合法メキシコ移民に似ていた.彼らは誰もやりたがらないような厳しい労働に従事していた.ある新聞は,ハンガリー人の強盗が指輪を盗むために女性の死体の指を切り取る,と伝えた.「酔ったハンガリー人が,廃墟の中で躍り,歌い,悪態をつき,喧嘩している」,とニュー・ヨーク・ヘラルドの見出しは書きたてた.

当時,「ジョーンズタウンの洪水」でDavid McCulloughが注意したように,人々の怒りがピッツバーグの百万長者に向かった.シカゴ・ヘラルドは彼をローマ帝国の貴族と呼び,貧しい者が獣のように競技場で死ぬのを喜んでいる,と書いた.

洪水の前から,大衆の怨嗟は新興成金の産業家たちに対して高まっていた.トラストに対する抗議活動が増大し,工業化や新しい富の集中に反感が強まっていた.ジョーンズタウンの洪水はこうした人々の怒りを集約したのだ.フィッシング・クラブには部分的な責任があった.災害に対する人々の反応が進歩的な運動の舞台を用意し,トラスト批判が始まった.

1900年に,もう一つの大嵐がアメリカを襲い,テキサス州のガルベストンで6000人が死亡した.嵐は人種的な憎悪をむき出しにし,結婚指輪を奪うために死体の指を切り取っていると黒人たちを非難する記事が新聞にあふれたのだ.この騒動はガルベストンがヒューストンを抜いてテキサス最大の港になるという機会を失わせた.

その後,1927年には,ミシシッピー大洪水がニューオーリンズを襲った.災害は白人と黒人との間にあった上品な,封建的関係を剥ぎ取り,ただれた不平等をむき出しにした.黒人たちは労働キャンプに集められ,武装した警備員に取り囲まれた.彼らは水が来るまで逃げることもできなかった.蒸気船,the Capitolが離れてから,レイシストたちの暴力が黒人を襲った.こうして黒人たちは北部に移動し始めたのだ.

市民のリーダーたちは,意図的に,市が洪水を回避するため貧困・中産層の地区に洪水をもたらした.しかし,その後,破壊された住宅を補償する約束を取り消したのだ.これによりポピュリストの怒りが燃え上がって,ヒューイ・ロングの人気が高まった.国中から連邦政府が救済に関与するべきだと言う声が上がり,ニュー・ディールへの舞台ができた.地方都市のエリートは孤立して,反動的であり,ニューオーリンズは洪水前の活気を二度と取り戻せなかった.

ハリケーンや洪水の話を聞くと,人々が協力して助け合い,慰め合った話をわれわれは聞きたいと思う.実際,アメリカの大災害には多くの惜しみない,勇気の出る話がある.しかしまた,洪水は市民たちを試すことになる.すべての災害に,突然の死別,奇跡的な生還,移住,そして病気の話がある.

市民の取り決めが機能するか,失敗するか.指導者たちはそれに値するのか,不足しているか.ニューオーリンズとミシシッピーで起きていることは人間の悲劇である.しかしよく見れば,ニューオーリンズで破壊され,さ迷っている人々から分かるだろう.彼らは圧倒的に黒人で,貧しい人々である,と.政治的な混乱が,まだ,起きるはずだ.


WP Wednesday, August 31, 2005

Solidarity Remembered

By Anne Applebaum

(コメント) 25年前のポーランド,グダニスクで,「連帯」は生まれました.そして彼らの成功が,ベルリンの壁も,ソビエト連邦も倒し,最近の東欧や中央アジアでも,民主化の非暴力革命を実現したのです.

しかし,ポーランド国民は「連帯」を複雑な思いで記憶しています.彼らが経験したその後の改革は,人々を戸惑わせ,苦しめたからです.暮らしはますます不平等になり,異なる意見の政治家たちが罵り合っています.「改革」によって最初に利益を得たのは,「連帯」を支えた労働者たちではなく,その政治的影響力を金に換えた共産党の幹部たちでした.人々は以前よりも長く,厳しい労働に従事し,豊かになった者もいますが,多くの労働者は貧しくなったと感じ,不安定な職場に不満を持っています.

今,ようやくその歴史を誇りにする若い世代が,「改革」を問い直し始めたようです.

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The Economist, August 20th 2005

Germany’s surprising economy

The anarchists: For jihardist, read anarchist

World economy: Traffic lights on the blinks?

(コメント) ドイツ経済の復活と選挙の話題があります.シュレーダーの改革は漸く成果を上げたのか? 福祉国家を守るためにも改革を続けねばならない,と言うシュレーダーに対して,左右から批判が起きています.

この週の特集記事は,イスラム原理主義のテロ擁護を取り締まろうとするブレア政府に,19世紀のアナーキストたちがどうであったか,という比較を試みています.The Economistの主張は,言論を取り締まることは無駄であり,間違っている.このような過激な言論に対して惹きつけられる人々は必ずいるものだ.市民的自由を守る方が政府の仕事である,といった線でしょう.しかし私は,アメリカをテロの帝国と呼ぶのに似た,デマゴギーに近い論説である,と思います.思想と,それによって正当化された暴力事件とを,区別せよ,と言えば十分です.

世界経済に関する矛盾を指摘した論説は優れています.なぜ世界の不均衡は拡大し続けているのか? 市場のシグナルが調整を促すのではなかったか? と市場型の世界経済システムについて,その核心を質します.

The Economistが見る狂った市場シグナルの帰結とは,@アメリカの経常収支(赤自国の金利が上昇し,為替レートが減価することで,調整が進むはずであった),A住宅バブル(債務に依存した消費や投資を,金利上昇が抑制するはずであった),B主要国間の成長格差(低成長国は,高成長国より,低インフレ・低金利で,成長を加速するはずであった),Cユーロ圏内の各国債券利回り(放漫財政のイタリアはデフォルト・リスクで高金利による市場の規律に苦しむはずであった),です.

結局,資本市場による市場の規律は狂ってしまったのではないか? たとえば,余りにも低い金利に満足できない投資家は,世界の金利水準が安いうちに利回りだけを求めた危険な投資にふけり始めた,と.