IPEの果樹園2005
今週のReview
5/16-5/21
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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.
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三つだけ推奨するとしたら?
1 第二次世界大戦戦勝記念日: 戦争と国際秩序に関する数十カ国の記憶と政治的評価.
2 保護主義と国際システム: 保護主義の政治性と通貨システムの「非」政治性
3 核拡散防止体制: 核廃絶と国際政治をめぐる「持つ国」と「持たざる国」の問題
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, JT:Japan Times, CSM:Christian Science Monitor
BG May 6, 2005
WP Friday, May 6, 2005
Pyongyang's Bomb
By David Ignatius
The Asian Age, 11May 2005
How to revise The NPT
- By S.P. Singh
NYT May 11, 2005
Brussels Sprouts
By THOMAS L. FRIEDMAN
IHT, THURSDAY, MAY 12, 2005
A stronger model for nonproliferation
Bennett Ramberg
FT May 12 2005
Philip Stephens: A breakdown in the nuclear family
By Philip Stephens
(コメント) 核拡散防止条約は,パキスタンのカーン博士による民間ネットワークとビン・ラディンによって,また北朝鮮やイランの核開発疑惑によって,何より,アメリカとロシア,そしてその他の核大国が示す核軍拡によって,基本的な理念やその条件を失いました.しかし,それに代わるものはありません.
「核実験をしなければ,サダム・フセインのようにアメリカに攻撃される.核実験によって核保有を証明すれば,アメリカは攻撃できない.」北朝鮮の支配体制と軍部は,このような二者択一に執着してしまったのでしょうか? そして核実験をすれば,アメリカや中国は北朝鮮の核施設や軍事拠点を爆撃するでしょうか? それは限定的なシグナルとされるのか,それとも地上戦を含む全面的な戦争へと拡大するのでしょうか? 中国は,それでも朝鮮半島の分断を維持しようとするでしょうか? あるいは,統一後の政権に影響力を残すことを目指すでしょうか? アメリカ軍はどこまで関与するのでしょうか? アメリカと中国は直接に戦火を交えるでしょうか? 日本は参戦するでしょうか? 既に行われている日米安保,後方支援,復興を理由にアメリカ軍と協力し,憲法は一時的に停止される?
S.P. Singhの論説を読みました.NPTは,1970年3月に成立しました.核戦争を回避し,核の平和利用を可能にするため,国際原子力機構(IAEA)が核開発や放射能物質を監視することになりました.NPTは核の廃絶も目標に掲げて,核兵器を廃棄する過程を国際的に管理するはずでした.
この35年間に,NPTが示した成果は不満足なものです.190カ国以上の加盟国には,核兵器を開発する技術を持つ30カ国以上が含まれます.IAEAは64カ国に及ぶ900の施設を監視して,南アフリカやイラク,リビアを含む18カ国で核兵器の開発を阻止したと言います.しかし,北朝鮮は突然,NPTを脱退し,核物質や核兵器を生産し始めました.IAEAの監視は失敗し,秘密裏に開発を試みた韓国やエジプト,ブラジルのケースでも,NPTが無効なことを示した,というわけです.1998年にインドが核実験すると,即座にパキスタンも核実験に成功しました.
9・11やイラク戦争で,無法国家と核物質の国際管理が注目されました.核保有国の廃棄計画は進まず,IAEAによる平和利用も限られていたので,第三世界は不満を強めました.核武装は,利用可能な小型核兵器の開発や,バンカー・バスター・ミサイル,超音速ミサイル,弾道弾ミサイルの開発と組み合わされて,その標的となる国を探しています.少なくとも,核武装していない国にはそう見えるでしょう.
そうであれば,NPTではなく,たとえ粗野なものでも核兵器を独自に開発し,ミサイル・システムを持つことが,安全保障の最低条件です.9・11とイラク戦争は,国連安保理やIAEAに自国の安全保障を頼る不安を強めました.NPTの改正はこうしたすべての問題に答えなければなりません.
@NPTを他の国際安全保障システムと組み合わせること.核実験の禁止,核分裂物質の管理,弾道ミサイルの禁止,戦略兵器削減交渉,その他です.
Aインド,パキスタン,イスラエルを含めて,核保有諸国は,核兵器の先制使用を行わないこと,核兵器を保有しない国に対して使用しないこと.軍事力を最後の手段とするような話し合いを保有国と非保有国が制度化すること.
BNPT体制は,三つの原則によって成立します.:1.世界を包括した核兵器の不拡散と開発禁止.2.期限を決めた核保有国の廃棄計画実施.3.核エネルギーの平和利用に関する合意.
THOMAS L. FRIEDMANは,北朝鮮には中国が,イランにはEUが,援助と政治(軍事)圧力をかけることで,問題は必ず解決できる,と言います.だから問題は,なぜ中国は,あるいはEUは,十分な行動を取らないか? です.彼らはアメリカの一極支配や一方的な行動を非難し,同時に,何かが起きれば,最後に行動しなければならないのはアメリカだ,と知っています.だから,今のままでよいのです.
しかし,アジアでも中東でも,核軍拡のドミノはすぐそこまで迫っている,と.
Bennett Rambergは,60年前にヘンリー・スティムソンとトルーマン大統領が会談し,バルーク委員会が国連で提案した包括的な核兵器の禁止,核開発の国際監視を,冷戦後の今,再生するべきだと訴えます.
その選択は,北朝鮮やイランの指導者ではなく,核保有諸国,特にアメリカが握っています.イラク戦争以来,ブレアを始め,ヨーロッパの指導者たちが繰り返し求めてきたことを,Richard Haasは,アメリカの利益を守る効果的な多角主義を築くことができる,とアメリカ内でブッシュ政権に求めています.ブッシュ氏はアメリカが重要な決定をする際には,国連にも,他の誰にも,いちいち断る必要などない,と豪語しました.しかし,Haasは反論します.「アメリカが行動することに世界の許可は必要ない.しかし,成功するためには世界の支持が必要だ.」
The Asian Age, 6May 2005
Tangled Threads of Protectionism ・Part I
- By Pietra Rivoli
今週,アメリカとヨーロッパの繊維生産者たちは中国から輸入された衣類の洪水に歯止めをかける努力を続け,その成果に向けた一歩を進めたように見える.アメリカの裁判所や,EUの調査が,中国からの繊維やアパレルの輸入についてその被害を認めたからだ.しかし歴史に従えば,豊かな国が繊維製品の市場を安価な輸入品から保護することは,不測の事態,すなわち多くは自国産業をさらに衰退させることになるだろう.
豊かな国の生産者が政治圧力をかけて,1973年に多角繊維協定(MFA)が成立し,アメリカやヨーロッパへの繊維・アパレル製品の輸入を規制した.MFAは保護主義に対する自由主義者の標準的な不満を極端に強めた.MFAは自由化に向かう世界で時代錯誤の産物であり,アメリカの自由貿易を称える政策に偽善の汚名を帯びさせ,割当も差別的取り決めも禁じたWTOに違反していた.何よりもMFAは,貧しい諸国が貧困から輸出によって脱け出す道を制約し,同時に,カロライナの一握りの繊維貴族たちのために消費者を犠牲にする.最近の研究によれば,アメリカの繊維・アパレル産業の保護は年間70億ドルから120億ドルを要しており,実効関税率は48%に達する.
こうした結果は保護貿易に対する自由貿易論で通常示されるものである.しかし,より興味深いのは,保護貿易が結局はアメリカやヨーロッパの繊維産業の敵となる,という不可避的な結論だ.
第一に,MFAは繊維・アパレル生産の世界的なコスト切り下げ競争を遅らせるものではなかったし,むしろそれを促し,強めたと言える.割当は最初,第二次大戦後のアメリカで日本からの木綿製品を一時的に規制するために導入された.しかし,この制限は生産拠点を香港などに移動させた.木綿製品の割当が香港にも適用されると,生産拠点がさらにフィリピンやスリランカに移転された.割当制度は豊かな諸国に生産を維持することには失敗し,生産拠点の世界化を遅らせずに,むしろ加速させた.木綿製品への割当は,同様に,ポリエステルなどの人造繊維に関する生産拠点の世界化でも繰り返された.その効果はアメリカの雇用を維持するものではなく,他の諸国や製品のカテゴリーに輸入を拡大することであった.
第二に,割当は高度な生産過程についてもアメリカからの流出を遅らせず,むしろ加速した.中国が木綿のシャツをアメリカの輸出する割当を得たとき,その割当を安価なTシャツで無駄にすることなく,ラルフ・ローレンのポロ・シャツ生産にアップ・グレードした.低水準の生産者たちは,当時,割当によって高水準の生産を促された.それゆえ,豊かな国の付加価値の高い製造業が損失を減らすのではなく,むしろ増やした.
第三に,生産の各過程(紡績,織布,完成品)を保護することで,結局,割当は保護された生産者たちの競争力を維持するより,むしろ破壊した.なぜなら紡績に割当を課すと,アメリカやヨーロッパの織布業者は材料を購入する選択肢を制約され,生産コストが上昇したからだ.織布に割り当てを課すことで,アパレル生産者は最良の価格で最高の原料を手に入れることが難しくなった.政治家たちの個別の勝利は,最後には,集団的な経済的失敗につながった.これと関連して,割当はアメリカやヨーロッパの企業が国際的に多様化し,生産拠点を展開することを,事実上,制約した.生産拠点を貧しい国に移しても,そこから豊かな国に輸出することが割当で制限されていたから,そのような移転は重視されなくなった.
第四にもたらされた帰結は,割当によって得た報酬がアメリカやヨーロッパの生産者や労働者にもたらされるのではなく,むしろその競争相手にもたらされたことだ.中国からの輸入が厳しく規制されたために,割当が合法・非合法に活発に取引された.香港の貿易業者によれば,2004年の夏に,中国はペアで75セントの下着,ダースで650ドルのウール・コートに割当を得ていた.こうしたアパレル製品の割当で中国政府はアメリカから9億500万ドルを得たと私は推定した.もしこの報酬を2003年に失業したアメリカの繊維・アパレル産業の労働者9万8000人に配分すれば,一人当たり9000ドル以上を再訓練などとして得ただろう.
多分,こうした結果はすべて,割当がアメリカの雇用を守っているなら,もう少し我慢できただろう.しかし,第二次大戦後の頂点で250万人いたこの産業の労働者は,今や,60万人しかいない.良くも悪くも,繊維とアパレルの乏しい雇用は貿易とほとんど関係なく,機械化によるものである.過去10年間に,この産業の労働生産性は急速に技術進歩で2倍になったが,生産は比較的安定していた.たとえわれわれが国境を閉ざしたとしても,職場は消滅し,アメリカ企業は互いに競争し,その競争圧力により機械化と雇用削減がさらに進んだだろう.割当は技術進歩による失業を減らせなかったし,今もそうである.たとえ中国のような国で,繊維の生産量が急速に伸びていても,雇用は減っているのだ.
割当を復権する中国へのセーフガードを濫用すれば,期待したものと逆の効果が発揮され,また,雇用を維持することには失敗するだろう.中国への割当はインドのような他の国から輸入を増やし,豊かな国が最良の織布を利用できなくなり,中国の生産者がアップ・グレードするのを促し,豊かな国の企業が中国へ生産拠点を移転しにくくなる.
割当は豊かな国の産業を救うことなく,むしろその衰退を早める.意図せざる結果に苦しんだ一世代を経て,われわれはどのように保護貿易がかつては健全な産業を自ら破滅に追いやったか知るべきだ.
The Asian Age, 7 May 2005
Tangled threads of protectionism ・Part II
- By Edward Gresser
(コメント) 17世紀後半にイギリスとインドとの直接貿易が始まったとき,繊維製品が大量に輸入されるのを見て,作家であり,羊毛業界のロビイストでもあったダニエル・デフォーは「アジアとの競争がイギリスの製造業を破滅させる」と書きました.現在も,同じ主張が繰り返されています.
しかし,発展途上諸国の不満が漸く聞き入れられて実現したMFAの廃棄にもかかわらず,早速,議論されているアメリカやEUのセーフガードによる規制に対しては反対する声が聞かれません.その理由は,割当制度によって各国で拡大した繊維産業の雇用を失うかもしれない,という途上国の不安です.そして,たとえ保護主義が豊かな国の雇用を守るものではないとしても,この三百年に及ぶ論争は,まだ将来も続くでしょう.なぜなら,貧しい諸国の工業化と雇用,反グローバリゼーションの運動,若い女性たちの自立,貿易の人間化,といった論争の焦点だからです.
The Asian Age, 13 May 2005
Tangled threads of protectionism ・Part III
- By Linda Lim
最近,アメリカが職を失う者は中国の繊維輸出を非難する.それは30年にわたる割当制度が終わったことで急増した.しかし,問い直すべきだ.どうすれば人は競争的な世界市場で職を保護できるものか?
失業はグローバリゼーションに特別なことではない.ダイナミックな市場経済では,それが常態である.需要と供給が変化し,技術が変化し,消費者の嗜好が変化し,企業が再編され,労働力人口が変動し,絶えず新しい雇用が生まれ,古い職場は破壊され,またある仕事は国内や国外のもっと競争力がある地域に移転される.グローバリゼーションはこの過程を強めるだけだ.
職場を守るために中国に制裁を課すことは,間違いであり,多分,無駄である.政府や企業,そして労働者個人は,教育や革新,世界市場の新しい現実に適応するため,将来に向けた調整に投資する必要がある.
職を移ることは常に起き,市場経済において自然なことだ.ほとんどの工業諸国が,不十分ではあるが,調整の人的・社会的インパクトを緩和する公共政策をずっと以前から発展させてきた.失業手当,再教育,再雇用補助金.健全な成長によって完全雇用を実現した経済こそ,失業への最善の保険である.
外国との競争により職を失うことは,国内の競争や技術革新,市場変化で職を失ったはるかに多くの労働者と何も変わらない.しかし,彼らは自国優先の考え方に好まれ,また,貿易自由化を脅かす点で,アメリカなどでは追加的な「貿易調整補助」という特権を得ている.
しばしば主張されているが,貿易保護は問題を解決できない.それはせいぜい問題を先送りにし,最悪の場合,労働者や企業に競争力を失っている現実を調整させないまま放置する.消費者は高い価格という形で税金を支払い,その結果,他の商品への支出は減り,そこで創出されたはずの雇用が減る.
MFAはこうした問題を示していた.繊維や衣服の市場を割当によって保護したが,競争力を高める投資は行われず,労働者もこの労働集約産業から脱け出すのが遅れた.それでも雇用の減少は緩やかに進み,決して止まったり逆転したりしなかった.保護はまた競争力のある発展途上国で労働者たちを苦しめた.効率の点でも,公正の点でも,貧しい諸国で雇用が増えることは望ましい.自由貿易は豊かな国の消費者により大きな購買力を与える.豊かな国の失業者たちは,所得を一時的に保証してもらい,公共政策を通じて補助金を与えられる.
しかし,貧しい諸国で仕事を失った労働者たちは,公共政策も所得を補償する財源もない.自由貿易によって豊かな国の消費者が購買力を増やすのであるから,豊かな諸国が貧しい諸国の失業者に対して補償することも主張できるはずだ.結局,豊かな国の消費者がMFA廃止の主要な受益者であり,その政府と納税者が得をしている.しかし国家を超えた補償は珍しく,戦後賠償のようには実現しないだろう.
アメリカ議会は,中国が「不公正な」競争を行っている,と非難する.第一に,中国はその通貨を「操作して」いるから競争力がある.第二に,中国の労働者が大幅に搾取されているから競争力がある,と.特に中国は,多くの他の発展途上国と同様に,独立の労働組合を認めていない.
こうした主張にもかかわらず,その保護政策は無駄であり,労働者にとって有害でさえある.
たとえば中国がその通貨をドルとペッグしなくなれば,10%か15%はドルに対して増価するだろう.しかし,日本など他の諸国がそうであったように,通貨が増価しても対米黒字は減らないだろう.なぜなら,増価は直ちにアメリカにおける中国製品のドル建価格を引き上げない.中国の繊維製品に中国が輸入する原料や設備が含まれているから,その部分は増価によって安くなる.中国の輸出業者は利潤を切り詰めるかもしれない.あるいは,労働コストで節約するだろう.それでも駄目なら,工場をたたんで労働者を解雇する.
いずれにせよ,中国の労働者は損をするし,アメリカの労働者は得にならない.むしろ,労働集約的な織物の輸入が,中国からではなく,他の労働が豊富な発展途上国から行われるだろう.そして,もし中国の労働者が大きく搾取されているとしたら,彼らへの市場需要が減ることは,その状況をさらに悪化させ,独立した労働組合も誕生しにくくなるのだ.
中国製品と競争できないアメリカ企業にとって,その教訓とは,機械化,新技術へ一層の投資を行うことであり,高付加価値を目指し,あるいは海外(中国でなくても良い)へ移転することだ.保護によってアメリカはそれを妨げられ,中国はそれを促された.
アメリカでも中国でも,繊維産業の労働者たちには,市場経済で生きるすべての労働者と同じく,永久に保証された職場などない.労働者たちは所得から再教育や熟練の習得に励み,自分に投資しなければならない.そして転職の時が来たら,より移動し易くしておく.もちろん自営業を始めても良い.公的もしくは民間のマイクロ・クレジット,特に先進諸国から支援された機関が資本を供給するだろう.
競争力を失った労働者に所得や教育機会を与えて,公共政策はこうした調整を国境内でも国境外でも助けることができる.労働組合は他国におけるその参加労働者たちに,より潤沢な公共政策を要求し,所得その他の補償を拡大させることだ.しかし,保護貿易によって消費者の購買力を損ない,それゆえ雇用と所得を減らして,中国の貧しい労働者に対する競争力を自ら損なうようなことは,止めたほうが良い.
FT May 6 2005
US carmakers extend currency campaign
By Edward Alden in Washington
NYT May 8, 2005
China Braces for a More Valuable Yuan
By KEITH BRADSHER
FT May 9 2005
China's financial-sector challenge
By Raghuram Rajan and Eswar Prasad
FT May 9 2005
Rich nations shouldn’t fear China trade surplus
By Arthur Kroeber, managing editor of the China Economic Quarterly
(コメント) アメリカ議会は,国民に広がる輸入への不満,安すぎる中国人民元への憤慨を,さらに日本や韓国への増価圧力にもしています.The Sound Dollar Coalitionは,議会に結成された57名の議員たちによる同盟です.日本の外為市場介入は我慢ならない,と.アメリカ自動車業界のビッグ・スリーが倒産する危機に瀕しているというのに!
NYTの記事は,5%の人民元の増価が業界によってどのような影響をもたらすか,というドイチェ・バンクの推定を示します.多分,最大の損失を受けるのは国内の石油化学業界であり,最大の利益を受けるのは巨額のドル建融資を許されていた航空業界です.なぜなら,そのコストや売り上げが石油としてドル建の国際市場価格であり,また国内の人民元,もしくは海外のドル(や円)だから.しかし,どの輸出部門にもコストに輸入財が含まれており,中小の輸出業者が増価でどのような影響を受けるかは曖昧です.
IMFの専門家たちRaghuram Rajan and Eswar Prasadは,人民元の切上げよりも,中国の金融システム改革を重視します.なぜなら,確かに中国の余剰労働者に生産的な雇用を提供することは重要ですが,それは輸出を増やすことではなく,国内に生産的な投資を促し,安定した経済運営と健全な金融システムが貯蓄率を減らして,国内市場を拡大することによっても実現できるからです.むしろ,後者の意味で健全な発展を実現するために,金融改革を含めた為替レートの弾力化も必要だ,と主張しています.
問題は明白だ,とArthur Kroeberは書きます.中国の貿易黒字は昨年三倍に増加し,1000億ドル.対米黒字だけで2000億ドルです.EUでさえ保護主義の危険があります.中国政府は,何をなすべきか?
しかしこの論説は,アメリカやEUの政治家がパニックを止めて,中国の貿易黒字によって豊かな諸国は不安定化するのではなく,むしろ安定化している,と考えるべきだ,と主張しています.なぜか? 中国の輸出はその半分以上(ハイテク製品では80%)が外国企業によるものであり,しかも輸出額はその投入財に多くの輸入された価値を含むから,実際に中国が得ているのは,そのごく一部,たとえば5%でしかない,と言うわけです.
それでも雇用が奪われている? そんなこともない,と言います.アメリカで雇用が増えるとしたらそれは大部分がサービス部門です.アメリカ企業が中国を生産拠点とした世界規模のサプライ・チェーンを管理し,利益を多く上げるほど,アメリカにおけるサービス雇用も増えるはずだ,と.
The Standard Newspaper, May 10, 2005
US 'playing with fire' on yuan drive
Simon Kennedy, BLOOMBERG
FT May 10 2005
China sets quotas on capital inflows
By Richard McGregor in Beijing
Asia Times Online, May 11, 2005
Editor's note
May 11 (Bloomberg)
Yuan Watching Like Waiting for Godot
William Pesek
CSM May 12, 2005 edition
Why China needs more expensive money
By David R. Francis
FT May 12 2005
China to tax property sales
By Geoff Dyer in Beijing
Asia Times Online, May 13, 2005
US begging for dollar devaluation
By Jephraim P Gundzik
(コメント) 人民元切上げをめぐるアメリカ側から見た損得勘定はどうなるでしょうか? Ronald McKinnonは「政治家たちの火遊び」を批判し,Nouriel Roubiniは「飼い主に噛み付く犬」だと非難します.人民元を上げれば,アメリカ製の輸出が増えるかもしれませんが,同時に,金利は上昇し,株価は下落し,消費は抑制され,雇用も減り,GM,ウォル・マート,デル,コカコーラなどの利益が減るでしょう.Stephen Roachも,アメリカ経済を支える中国の低賃金の質の高い製品に感謝します.おかげでインフレのない低金利状態が続いています.
もし人民元が切上げられたら,とGary Hufbauerは指摘します,中国で生産しているアメリカ企業の利益が削られる,と.貿易の不均衡を調整するためには人民元を切上げたほうが良いとしても,その時期と方法が重要です.もしアメリカの財政赤字が抑制されないまま中国が切上げれば,アメリカの金利急騰とドル暴落を招くでしょう.他方,アメリカの貿易額の10%しか占めない中国が為替レートを変えても,調整の程度は限られます.Robert Mundellは,「人民元を動かしてもアメリカの貿易赤字は解決できない」と言います.
他方,中国政府はむしろ,資本流入を抑制し,投機的な土地取引を規制しようとしています.中国の論説にも,なぜ人民元が安いことは中国の不利益か,という内容を示し始めています.
誰もが人民元の切上げを信じている中で,人民元は切上げられない,というのを,William Pesekはサミュエル・ベケットの前衛劇「ゴドーを待ちわびて」にたとえます.なぜ切上げは起きないのか? @中国政府は外部の強い圧力にも耐えられる.国内の銀行システムにある不良債権を処理するのが先だ.A中国経済の安定は望ましく,それを不安定化することなど誰も望んでいない.B中国政府が重視するのは安定性の維持だ.中国が通貨不安に陥ったとき,ドル・ペッグを導入した.13億の人口を持つ政府と問題を起こしたい国はない.C中国は切上げるよりも,切上げ期待を維持することに利益を持つ.不良債権を処理するために海外で銀行株を発行したり,国内の住宅バブルが破綻するのを抑制したり.D中国政府は,投機的な圧力に決して屈しない,という教訓を市場に与えようと考えている.
人民元のドル・ペッグは,中国にとって第二の万里の長城です.外部から押し寄せる不安定な圧力に対して,国内の安定性を犠牲にするような形で制度を改めることは政治的に許されない,というわけです.
Jephraim P Gundzikは,これが中国・人民元の切上げ騒動ではなく,アメリカ・ドルの切下げ要求である,と考えます.すなわち,アメリカは中国にプラザ合意Uを求めているのです.しかし調整過程はもちろん,今度こそ,中国を含むアジア諸国の外貨準備を再編し,アメリカの金利を高めて成長を抑制する,という形になるでしょう.日本のようなバブルではなく.
“History shows this drive to the east could bring disaster,” The Guardian, May 6, 2005
“Balance in the Baltic,” The Guardian, May 6, 2005
“The long shadow of the second world war,” FT May 7 2005
(コメント) アウシュビッツよりもナチスを評価することは難しく,そして,スターリンと第二次世界大戦の勝利を評価することはもっと難しいでしょう.ナチズムと共産主義とをどのように比較するべきか? ヒトラーとスターリンとをどのように比較するべきか? 英仏の宥和策と独ソ不可侵条約とをどのように比較するべきか? ヒトラーの支配とソ連のバルト3国支配とをどのように比較するべきか?
ブッシュ大統領はモスクワへ行く前に,ラトビアの首都リガに立ち寄り,モスクワからの帰路,グルジアを訪問しました.ロシアの批評家が皮肉に述べたように,これはプーチンがワシントンを訪ねる前にはキューバでカストロに会い,帰路に北朝鮮のピョンヤンを訪れるようなバランス感覚です.もちろん,たとえイラクの自由を称える姿勢が批判を呼ぶとしても,ブッシュ氏がウクライナの民主革命を称え,ベラルーシの独裁を批判するのは正しいことです.
他方,ロシアと距離的に近いEUの判断はさらにプラグマティックです.バルト3国のEU加盟を祝福し,しかし,ソ連支配の遺産である域内ロシア人の処遇や,ソ連支配の抑圧体制に関わった問題では,柔軟な解決策を求めます.もちろん,プーチン大統領が呼びかけた第二次世界大戦戦勝記念,ナチズム打倒記念の意味は,アジアや日本における問題と重なります.
FTは言います.ルワンダが示すように,人類が戦争や虐殺を繰り返さないという保証はない,と.ナチスの敗北は共産主義の独裁に変わっただけであった東欧諸国で,ロシアとも西欧とも異なる歴史認識があるのは当然です.むしろベルリンの壁崩壊が現代ヨーロッパの起点となった,とヨーロッパ委員会は声明を出しました.ソ連の指導者たちと同じく,プーチン氏もロシアがヒトラーを倒すために2700万人の犠牲を払ったことを強調します.しかし,ソ連はヒトラーと協力して,互いに支配領域を拡大していたのです.
歴史は各国にも,人間と同様,理解と和解を求めます.各国が互いを許せるまでには,まだ多くの時間が必要です.しかし未来を共有するなら,政治的な和解が必要です.
Richard Overy, “We must not forget how war was won,” The Guardian, May 7, 2005
GUNTER GRASS, “The Gravest Generation,” NYT May 7, 2005
“Mr. Putin's History,” WP May 7, 2005
Vaira Vike-Freiberga, “Rights and Remembrance,” WP May 7, 2005
(コメント) ロシア人が2500万人も死んだ戦争に比べて,英米は合わせてもわずか(!)70万人しか死ななかった.イギリスの戦死者は国民の0.6%,アメリカはもっと少なく0.3%,しかしソ連は,戦争とその後の飢饉,政治弾圧により,戦前人口の14%を失った,と言います.
ドイツと日本の軍事的な侵略,その帝国建設を阻止できたのは,最も激しく戦ったソ連と中国がいたからであり,両国が5000万人もの命を犠牲にしたからだ.それを忘れてはならない,とRichard Overyは考えます.もちろん,ソ連がなおも攻勢をかけることができたのは,アメリカによる武器貸与法があったからです.1914年から45年の混乱を収め,第二次世界大戦の勝利と戦後秩序を築いた過程は,どちらの側から描かれても不完全です.
5月8日を戦勝記念日として「解放」を祝うのは,特にドイツ人にとって,歴史の後から付け足した解釈に過ぎない,とGUNTER GRASSは振り返ります.彼にとってその日が意味するのは,飢えと寒さに染まった難民の惨めさ,家を失くし,爆撃で焼け出された人々の暮らしでした.連合国(英仏米ソ)が支配する4地域は,かつての拡大した支配地域から限られた居住空間に帰還することを強いられた120万人以上のドイツ人が,そこで圧搾するのを管理していただけでした.それゆえ現在のドイツ人に誇れるものがあるとすれば,あの混乱から立ち直った,ということです.しかし,東西に分断された戦後は,戦争や秩序を異なった解釈で染めました.
ドイツ人は,東西再統合(そしてEU統合)の解釈をめぐって,再び動揺しています.西ドイツが築いたはずの経済的繁栄や安定した社会秩序は,東ドイツの失業者・移民,「二流の市民」,移民への差別,長期停滞と失業増加,ネオナチ,などで汚されました.GRASSは民主主義や自由,社会的な平等が失われた,と感じています.新しい全体主義にも,株式市場の富に示される資本の権力にも,私たちは抵抗する自由を持っているはずだ,と主張します.
なぜ,この記念式典が重要なのか? それはプーチンの示すロシアの新帝国主義を表現しているからだ,とWPは明言します.プーチンはロシアが世界の大国として認められることを欲し,ロシアの敵と味方とは誰かを示し,ロシアが影響圏とみなす領域を復活しようとしています.あの戦争に勝利したのは誰か,それを確認することだ.自分が再建した新しい帝国を主要国にも公認させることが,プーチンにとって第二次世界大戦終結を祝う意義なのです.バルト3国への支配も,チェチェン人への弾圧と殺戮も,その一部です.
ラトビアの大統領Vaira Vike-Freiberga自身が,その歴史を描いています.彼らがロシアに求めるものも,歴史を直視し,その犯罪についての責任を担え,ということです.
Zaindi Choltaev and Michaela Pohl, “A monument to tyranny,” BG May 9, 2005
“Immortal memory,” The Guardian, May 9, 2005
Sabine Freizer, “It's dangerous to tease a bear,” IHT MAY 10, 2005
“WWII lessons for Bush,” BG May 10, 2005
Jacob Heilbrunn, “Once Again, the Big Yalta Lie,” LAT May 10, 2005
Robert Scheer, “Nationalism's Psychotic Side,” LAT May 10, 2005
VICTOR EROFEYEV, “How Russia Lost World War II,” NYT May 10, 2005
Mikheil Saakashvili, “Time for a Return to Yalta,” WP May 10, 2005
(コメント) チェチェンとカフカズの歴史,そして現状から,Zaindi Choltaev and Michaela Pohlはプーチンが国民に説く愛国心の中身を問います.ロシア人たちが,プーチンの権力の下で,ますます戦争指導者としてスターリンを英雄のようにみなし,彼の行った弾圧や他国民への支配を無視するようになっています.ロシアの権力を示す典型はチェクニアの首都,グロズヌイです.プーチンはチェチェンで勝利することを掲げて大統領に当選し,権力の側に多くの「シロビキ(軍・KGB・治安関係者)」を取り込みました.地方から権力を取り上げて集中し,あらゆる自治・分離主義者を敵視し,激しく弾圧します.
Viktor Erofeyevは,プーチン政権下で行われたソビエト・ロシア史の新しい二分法を紹介します.ソ連は,一方で破産したユートピアの実験室でしたが,他方で偉大なロシア帝国の継承者でした.そして歴史をこのように分ける者は,現代の社会を分割し,それを正当化します.スターリンのロシアが残した負の遺産と,ペレストロイカのロシアが残した富と自由.これらをプーチンが帝国の権力にまとめるのです.プーチンはソビエト・ロシアと帝国の真の継承者として,イデオロギー論争を始めています.
ブッシュ氏は,と言えば,東欧やバルト3国のソビエト支配を容認したヤルタ会談におけるルーズベルトを非難し,中国を共産主義の手に渡したとトルーマンやディーン・アチソンを非難します.民主党出身の大統領は,まったく腰抜けばかりだった!? しかし,そのような非難は間違いだ,とJacob Heilbrunnは反駁します.
ルーズベルトやチャーチル,スターリンだけでなく,ドイツやロシア,その周辺地域から逃れてきた多くのアメリカ人がいます.彼らにとっても,歴史はそれぞれ特別な意味をもつでしょう.カチンの森で発見された遺体の多くにとっても.
新しいヤルタ会談をわれわれが開こう,と呼びかけるMikheil Saakashviliはグルジア共和国の大統領です.黒海は,ロシア帝国,オスマン帝国,ペルシャ帝国のフロンティアでした.今やそれは自由と新しい民主主義の,ヨーロッパが守るべきフロンティアであることを示すときだ,と.
“A WWII lesson for Bush,” BG MAY 11, 2005
Anne Applebaum, “Saying Sorry,” WP May 11, 2005
Simon Kuper, “Europe is changing as war memories evaporate,” FT May 12 2005
Jeff Jacoby, “Bush's Moscow misstep,” BG May 12, 2005
Timothy Garton Ash, “Forward to VE Day,” The Guardian, May 12, 2005
Catherine Bennett, “Sometime in July? That's not VE day,” The Guardian, May 12, 2005
“The meaning of triumph over evil,” JT May 12, 2005
Max Boot, “Celebrating Soviet Heroes, Remembering Soviet Monsters,” LAT May 12, 2005
(コメント) Anne Applebaumは書いています.ビル・クリントンが,1998年,ウガンダでアフリカの聴衆に向けて,ヨーロッパ系のアメリカ人が奴隷貿易で利益を得ていたことは間違いだった,と謝罪したときでさえ,当時のテキサス選出共和党議員Tom DeLayは批判しました.自国を非難するとはけしからん!・・・と.ヤルタ会談と冷戦をめぐって,当然,今も歴史の評価は定まりません.Applebaumは,プーチンやブッシュが,毎日,謝罪し続ける必要はないが,それにふさわしい時,ふさわしい場所においては,その国を指導する政治家として,たとえ苦く,意見の分かれる歴史についても,真実を語らなければならない,と主張します.
政治家たちは,歴史から「神話」を作り,強固な「愛国心」を育てるのが大好きです.それは事実ではなく,彼らの幻想や要求でしかない場合が多いと思います.
NYT May 6, 2005
A Rising China
(コメント) NYTは,アメリカ政府が明確なアジア外交の方針を再検討するべきだ,と考えます.そして,日本をアジアの同盟国として,その軍事的な役割も拡大するよう求め続けてきたことに反省を求めます.なぜなら,小泉首相は保守的な歴史の解釈を靖国神社参拝などで明確にする政治家であり,その下で日本が自衛隊を積極的に海外派遣し,旧植民地である台湾の防衛にもアメリカ軍とともに関与する姿勢を示すことは,中国政府の反発を強く刺激しているからです.
中国が台湾と,またインドと,軍事衝突を回避できるようにアメリカは発言し,行動しなければなりません.中国の台頭に適切に対応することが,アジアの将来を決めます.アメリカが目指すべきは,日本の軍備強化や国際展開ではない,と示唆しています.
Asia Times Online, May 7, 2005
Where did all the angels go?
By Andrew Field
FT May 9 2005
German lessons for Japan in dealing with history
By Clemens Wergin
(コメント) ドイツの戦後と比べて,ドイツ人はヒトラーやナチスを容易に非難できたが,日本人は天皇や靖国神社を非難できない,という日本の政治家たちをどう考えればよいか? 確かにアメリカの占領軍も天皇を利用したし,原子爆弾による広島・長崎の犠牲者は日本人が罪の意識を感じることを弱めたかもしれない,とClemens Werginは書きます.しかし,ドイツ人が一握りのナチスに責任を押し付けた,というのは間違いだ,と.そのような試みは短期に破綻し,学生たちはドイツ人すべてにナチスへの加担と責任を厳しく追及したし,ドイツ政府はその罪を永遠に認め,犠牲者たちに繰り返し謝罪し,問題点を追求し続けています.その限りにおいて,ヨーロッパの諸国民も,ナチスの犯罪によってドイツ人を非難する材料にすることを抑制したのです.
FT May 11 2005
Time to end the scaremongering about China
By Kumar Bhattacharyya
FT May 11 2005
Quentin Peel: America needs a coherent Asia policy
By Quentin Peel
NYT May 12, 2005
The Pirate Kingdom
By PAT CHOATE
May 9 (Bloomberg)
Is the IMF an Endangered Species in Asia?
William Pesek Jr.
(コメント) IMFか,アジア通貨基金AMFか? アジア通貨危機の際に束の間,論争となったテーマが,アジア開発銀行(ADB)の会議で再生されました.日本からの発言として,河合正弘,黒田東彦らの名が挙げられています.アジアに限定した,IMFの融資条件とは異なる(緩和された?)条件で融資を行う緊急救済基金を設けたい,というわけです.
1997年9月の香港におけるIMF総会について,William Pesek Jr.は回想しています.帰りの飛行機において,ルービンとサマーズはパニックに陥っていた,と.アジア諸国がドル準備を動かすかもしれないからです.
AMFは,アジアの地域経済統合を進め,アジアの自律を進める鍵となるでしょう.しかし,IMFのように明確な運営組織や原則を持たず,市場における信認も得なければなりません.まだ当分は,IMFの優位とその改革にアジア諸国も協力することが望ましいでしょう.そしてアジア版のIMFやOECDを整備することです.
IHT FRIDAY, MAY 13, 2005
Michael Vatikiotis: One Asian currency?
Michael Vatikiotis
(コメント) ヨーロッパは解決したが,アジアは解決できていない問題として,覇権,を挙げます.日本か,中国か,インドか? 貿易や投資を促進し,通貨危機を回避し,IMFやアメリカの干渉を排除する.しかし,アジアには政策を調和させるための時間がもっと必要です.
FT May 10 2005
Attacks on hedge funds are misguided
By Ian Morley
FT May 11 2005
The Short View: The Achilles heel of hedge funds
By Philip Coggan, Investment Editor
FT May 12 2005
Case for a closer look at hedge funds
(コメント) ヘッジ・ファンド規制に関して.
NYT May 10, 2005
Free Trade Pact Faces Trouble in Congress
By ELIZABETH BECKER
CSM May 11, 2005 edition
Free Trade's Destiny in CAFTA
The Monitor's View
FT May 11 2005
Export zone alone
By Alan Beattie
NYT May 12, 2005
The Young and the Jobless
By BOB HERBERT
(コメント) 自由貿易と保護主義,さらにアメリカの求める地域主義が,CAFTAの議会通過にかかっています.
輸出加工区という開発戦略の限界や,国内の若者が失業する現実への姿勢が,自由貿易を実現する条件を決めます.新しい「近隣窮乏化政策」や貧富の格差拡大への批判,新しい「管理貿易」,「貿易ブロック」の主張も強まります.
IHT THURSDAY, MAY 12, 2005
Henry A. Kissinger: Realists vs. idealists
Henry A. Kissinger
(コメント) キッシンジャーからブッシュ政権Uの外交方針「自由の拡大」に対する助言です.
「アフガニスタン,イラク,ウクライナ,パレスチナ,サウジ・アラビア,シリア,レバノン,エジプト,キルギスタン.アメリカの外交政策がその目標を明確にし,世界を民主主義と自由に導いていることは重要だ.しかし,このことを外交における「理想主義」が「現実主義」に勝利した,と理解するなら,それは愚かなことだろう.パワーがすべてを正当化できると考えるリアリストはいないし,理想の実現にパワーは関係ないと考えるアイデアリストもいない.
問題は現実の政策における二つの要素の比率でしかない.」
両者の考え方を批判し,キッシンジャーが政府に求めるのは,ジハードの広まる世界でアメリカの国益やアイデンティティーを守ることです.民主化のプロセスには時間がかかり,選挙は通過点でしかありません.権力の空白は埋めねばならず,アメリカにはそれに対応できる軍事力があります.しかし,社会や体制を変えるときには地域の声に従い,国際社会の合意にも柔軟でなければならない.西側の政治システムになじまないロシアや中国のような国への対応は今後も難しいでしょう.
国内政治にだけ依拠した外交方針に固執してはならない,とキッシンジャーは考えます.自由を実現する過程は,国内,国際,両面の合意形成過程にほかなりません.
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The Economist, April 30th 2005
The real trouble with oil
Oil in troubled waters: A survey of oil
Vietnam: America lost, capitalism won
Argentina’s economy: Overdosed
Charlemagne: The euro is no cure-all
Economics focus: A licence to lose money
(コメント) ドルと並んで国際秩序(そしてアメリカ経済)を定義し,その安定性を保証するメカニズムが覇権国や国際システムの課題であった石油について,1バレルが10ドルから50ドル,さらには100ドルを超える恐れもある,という事態についての考察です.ベトナムであれ,アルゼンチンであれ,アメリカや世界資本循環が担うシステムから排除され,あるいは復帰する過程で,国民の生活を改善するはずの政治家たちは難しい選択を重ねます.通貨の安定性もその一つです.ユーロの誕生で成功は約束されたという楽観は過ぎ去り,イタリアの離脱を真剣に準備しなければなりません.そして,アジアの中央銀行が通貨価値を抑えておくために蓄積した外貨準備も,最終的に,切上げによって大きな損失につながれば,中央銀行の赤字は増税かインフレをもたらすことになる,と警告します.