IPEの果樹園2005

今週のReview

4/18-4/23

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1 日中関係の正常化は?: 反日デモ,キャッチ・アップ過程,人民元の弾力化.

2 アメリカの舵取り: 内外の不均衡に対して,アメリカ政府と中央銀行は迅速に対応できるか?

3 次は米中摩擦?: 日中関係とは逆に,貿易,通貨の対立から政治対立へ?

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, IHT:International Herald Tribune, JT:Japan Times, CSM:Christian Science Monitor


WP Wednesday, April 6, 2005

Peace in the Pipeline?

By David Ignatius

IHT Friday, April 8, 2005

Without reforms, the Mideast risks revolution

Augusto Lopez-Claros and Danielle Pletka

(コメント) 石油パイプ・ラインがイラクの難問を解決するでしょうか? 資源の供給は,しばしば,戦略的に重要な問題をつなぐキーになります.イラクは三つの難問を解決しなければなりません.@スンニー・トライアングルの反政府活動,A隣国ヨルダンとの関係,B石油生産と輸出を増やして経済再建のための財源を得る.

ここに,ヨルダンを通って地中海へ伸びるパイプ・ラインの建設計画が登場します.スンニー派の支配地域にパイプ・ラインを建設するのは狂気の沙汰だ,と見える計画が,実は複雑な関与を前提しています.イラクのスンニー派指導者で,ヨルダンに建設会社を持つTalal Gaaodが計画を推進しています.スンニー派の人々に雇用と利権をもたらし,シーアは中心の政府と安定した関係が築けるだろう,というわけです.ヨルダン政府はイラクの暫定政権に正式に打診しました.外国資本,特に日本企業や国際協力銀行が参加意欲を示しています.

世界でも高い水準の人口増加率を示すアラブ地域が,もっと雇用を増やし,そのためにも国際競争力を高める必要がある,とAugusto Lopez-Claros and Danielle Pletkaの論説は訴えます.それができなければ社会不安が高まり,伝統的な秩序は革命によって滅びるでしょう.保守的な指導者たちも漸進的な改革を進めるしかないのです.


WP Thursday, April 7, 2005

The Backlash Paradox

By Jim Hoagland

LAT April 13, 2005

Say You Want a Revolution

By Peter Ackerman and Michael Ledeen

WP Wednesday, April 13, 2005

Feeds Greetings From Mexistan

By Harold Meyerson

(コメント) 21世紀は逆流と逆説に満ちているだろう,とJim Hoaglandは考えます.それは特に,宗教と政治との関係が変わるからです.ローマ,バクダッド,エルサレム,ワシントンで,それが示されました.

グローバリゼーションを阻止する最大の要因は宗教もしくは民族主義の復活です.諸個人の意識を超えた社会・経済的統合が進めば,予測できない力に翻弄される不安感が増して,人々は伝統的な生活や宗教観,共同体意識に頼る傾向を強めるでしょう.バクダッドでは近代的なものをすべて拒否するイスラム原理主義者のテロを抑えることができず,ワシントンではキリスト教福音派に政治を分断されてしまいました.今まで信者が減少し続けていたカソリックが,ローマ法王の葬儀にはヨーロッパ中から多くの信者を集めました.イスラエルのガザ地区撤退に反対するユダヤ教過激派により中東和平は阻止されるでしょう.

もし政治がうまく機能するなら,人々は社会的な軋轢を政治的な仲介や補償によって緩和されたでしょう.宗教的な違いや,民族,国境は,次第に重要でなくなったかもしれません.しかし,いつからか,政治の限界がグローバリゼーションの流れを阻み,逆転していたようです.人々の間に差異を強調する政治家が大きな声を張り上げるほど支持を増やし,どこでも互いを罵倒することで勢力を拡大していないでしょうか?

アメリカの保守派を代表するシンク・タンクやNGOsが「輸出する」とまでは言わないにしても,「支援」してやまない,世界に波及し続ける民主化革命を賞賛し,その継続を呼びかける論説が,そのまま素直に読めないのは,各地の「革命」がそれほど単純に同一視できるものではないだろう,と思うからです.

同様に,ライス国務長官の民主化革命賛美に対して,Harold Meyersonはメキシコの親米政権に反対するメキシコシティー市長Lopez Obradorが次の大統領選挙に立候補するのを阻止したフォックス大統領には黙っているアメリカ政府を信用しません.ライス長官には不当に逮捕された市長を救うために集まった市民たちの声が聞こえないのか? 都合よく,アメリカのためにだけ民主革命を賞賛するのか?

「ラテン・アメリカでは,企業の自主権,大衆の窮乏化,労働者の無権利に,拒否が広まっている.・・・ウクライナの民主主義? レバノン? そして,キルギスタン? メキシコでは? 多分,メキシコも中央アジアに移動して,メキシコスタンと改名し,石油産業を民営化すると宣言すれば,ブッシュ政権は諸手を挙げてこの民主革命を賞賛しただろう!」


The American Prospect, 04.07.05

The Fed's Preemptive War

By Robert B. Reich

FT April 8 2005

Lex live: US housing

April 8 (Bloomberg)

Higher Oil Prices Can't Do the Work of the Fed

Caroline Baum

FT April 14 2005

How real interest rates cast a shadow over oil

By Jeffrey Frankel

(コメント) アメリカの金融政策は難しい局面を迎えています.一方では雇用が不足しており,他方では石油などエネルギー・資源価格の高騰や住宅バブル,ドル安でインフレ率の上昇が懸念されています.

Robert B. Reichは,連銀に貧しい労働者たちを犠牲にしたインフレへの先制攻撃を止めるよう要求します.価格は競争的な市場で決まっており,労働者たちの雇用や賃金は抑えられています.まだ現実になっていないインフレの幻影を振り払うために,高金利を維持することで,企業は投資を抑えてしまうのです.また,インフレを抑えるために政府の財政赤字を削るように求めます.ブッシュ政権はこれを貧しい労働者家族への給付を減らす形で行いました.

FTの記事は,アメリカの住宅価格が地域によっては厳しい調整を迎えるかもしれないが,全体として暴落する危険はない,と考えます.ただし,住宅価格の上昇が止まれば,それを期待した消費や景気回復は失われます.

石油価格と金融政策の関係が問題にされています.投資を抑える点では,それが石油コストでも金利コストでも同じはずです.連銀とOPECは何が違うのか? どちらもアメリカの(と,ある意味で,世界の)中央銀行として経済を操縦してくれる?

それは1970年代の石油ショックと,1980年代のマネタリスト・ショックとを比較して議論される際には,総供給を減らすか,総需要を減らすか,という違いでそれを示したと思います.生産コストが上昇して利潤が減った企業は生産を減らし,総供給が減ります.他方,金利が上昇して高金利を嫌う住宅投資や耐久消費財の購入,巨額の固定資本を伴う工場建設などが延期されると,総需要が減ります.

Caroline Baumは,石油の供給がストップして価格が高騰しても,連銀が金利を下げればインフレや景気は維持されるのか? と問います.むしろ刺激された需要は石油価格の高騰を加速させるだけでしょう.石油価格の高騰を抑えるには,アジアの成長を抑えるべきでしょうか? 実際,ブッシュ氏は要求を強めました.中国政府は人民元を変動制に移行させて,早く金利を引き上げろ,と.

これはマルサスの亡霊でしょうか? 浪費的な高度成長を享受する人口が増加して,資源は枯渇し,成長は終わる? もしそうであれば,金融政策にできることはありません.石油価格の上昇を受け入れ,石油以外のエネルギー開発を促し,石油に依存しない成長を見出すしかないわけです.

Jeffrey Frankelは,むしろ,石油に限らず一次産品の国際価格が上昇しているのは,世界の需要が拡大しているからであり,アメリカが率先して金融政策の引き締めを行い,ミスマッチを解消することを求めます.1970年代の石油ショックも,その背景には金融政策の過度な緩和状態が続いたことが指摘されます.

高い実質金利が保存できる商品の需要を増やし,供給を減らすことで,金融政策が一次産品価格と関係するメカニズムとして,Frankelは三つを挙げます.@明日よりも今日の採掘を増やす(将来採掘される資源の現在価値を下げる).A在庫を減らす(在庫の保有コストが増える),B投機的業者がスポット取引を止めて財務省証券の取引に移る.

実際,一次産品の国際価格は金利の変化に対して繰り返しオーバーシュートしたし,短期金利と国債商品価格指標との連動性は統計によって示される.したがって,一次産品価格の急騰に対して,連銀は短期金利を引き上げ,それから中立的な水準に戻すべきである,と.要するに,一次産品の国際市場についても,バブルを警戒するべきなのです.

一次産品の国際価格と金融政策を結びつける提案と言えば,私はかつて調べたW.A.ルイスやB.グレアム,J.M.ケインズ,そしてハート=カルドア=ティンバーゲンによる提案を思い出します.ただし,Frankelとは逆に,一次産品価格が暴落した際に世界不況を回避するため,その在庫を買い増して,金融緩和のための流動性を供給する,という提案でした.アメリカなど主要諸国で,金融政策にこうしたルールを組み込むことが再び注目されるかもしれません.


FT April 8 2005

Japan's burden

中国と日本で,今週,ナショナリズムが危険なほど高まったことで,それは政治だけでなくビジネスの領域にまで脅威となってしまい,両政府が緩慢にではあるが,これ以上の深刻な危機を回避するよう動き出した.中国政府は日本の財界人との会合で経済関係の重要性を強調し,日本は「未来志向の,友好関係」を求める,と述べた.

今まで,日中間の貿易と投資は,両国の政治的な障害に影響されなかった.しかし,先週,興奮した中国人が日系の商店を破壊し,大手の中国系列小売店が日本製品のボイコットを呼びかけた.抗議活動は,日本が国連安保理の常任理事国になろうとしていることや,日本政府が第二次世界対戦前や戦中のアジアにおける暴力行為について,数年にわたって,その教科書で次第に偽るようになった教科書を承認したことで爆発した.

中国共産党の指導者たちは日本の蛮行について個人的な記憶を持たない若者たちに強烈なナショナリズムを植え付けるため,日本の戦争記録を巧妙に利用してきた.そして中国政府は十分に管理できないようなモンスターを作ってしまった.このことは,戦後60年を経て十分な謝罪を行ったと感じ,中国の非難に多くの日本人が憤慨する中で,日本側にもナショナリズムが高まっているという,不幸な一致となっている.

中国側が日本の教科書の記述を責めるのはこじつけの印象もある.しかし,韓国が日本の教科書に最近追加された記述を批判していることは正しい.

日本,中国,韓国は,互いに貿易によって緊密に結びついており,政治家たちは危険なナショナリズムを抑えるべきである.日本が本当に未来志向の友好関係を築くには,中国,韓国,ロシアとの領土交渉を含めて,まず過去の問題を解決しておく必要がある.


Asia Times Online, Apr 7, 2005

Thinking the unthinkable, a Confucian union

By Jan Krikke

IHT Tuesday, April 12, 2005

When elephants quarrel

Michael Vatikiotis

Asia Times Online, Apr 12, 2005

Korea, Japan try to boost influence within IMF

The Guardian, Tuesday April 12, 2005

Hopes and fears of an Asian Union

Simon Tisdall

(コメント) たとえ一時的にナショナリズムや経済対立が生じるとしても,アジア経済共同体やアジア連邦というものが実現する可能性はないのでしょうか?

東京在住のアメリカ人未来学者,Lawrence Taubは予想します.「・・・今後,10年から15年で,EUにならって政治経済同盟が東アジアで形成されるだろう.朝鮮半島の分断は2007年に解消される見込みが大きい.「儒教」同盟は,EUがドイツをヨーロッパに統合したように,日本を東アジアに統合する.2020年頃までに,東アジア同盟は世界最強のブロックとなり,EUや,アメリカが指導するNAFTAを凌ぐ.その中心は中国が占める.・・・」

日本と中国とが対立するから不可能だ,という意見を退けれ,敵国は短期間で友好国ともなる,と言います.たとえば,もし以下のような条件が成立すれば.@日本の軍国主義を制圧する最善の策は,日本を東アジア同盟に組み込むことだ,と確信する.A朝鮮半島の平和統一には相互の協力が不可欠だ,と理解する.B儒教文化は共産主義と資本主義をつなぐ東アジアの文化的な基盤を与える.Cアメリカの要求に対抗することが政治同盟を強化する.

国際機関における発言を強める方が良いのか,あるいはアジアにおける制度を強化することが望ましいのか? アジアの発展を促すにも,人種偏見と戦争責任を強めあう諸国が,また,民主主義や人権など基本的な価値観,重要政策に関する手法や姿勢がまったく異なる諸国が,市場や外貨準備,軍事力を相互に抑制し,共有する話し合いに進むことなどできるのか?

Asia Times Online, Apr 7, 2005

China's quandary over Japan's UN bid

By Antoaneta Bezlova

JT Monday, April 11, 2005

The danger of keeping Japan in its place

By TOM PLATE

IHT Tuesday, April 12, 2005

UN power play drives China protests

Philip Bowring

(コメント) 国連改革をめぐるアジアの混乱です.Antoaneta Bezlovaは,中国から見て日本の安保理常任理事国入りに反対する事情をバランスよくまとめています.南京大虐殺の記念館は,彼らにとってのアウシュビッツであり,小泉首相が靖国神社ではなく,ここを毎年訪問して平和を祈念するべきだ,と感じるのは十分理解できます.

国連や安保理が,第二次世界大戦の戦勝国による国際システムでしかなく,常任理事国を追加する提案がそれを正そうとするのは遅すぎたくらいです.常任理事国としての責任と特権を担う資格は誰にあるのでしょうか? @国連憲章に示された政治理念への支持(その国内政治や外交姿勢との整合性),Aそれを実現する上での具体的な貢献・財政負担,B安全保障を担える大国であること,C政治的な代表制度としての規模や地域性,などが議論されると思います.

TOM PLATEは,国連改革として日本がドイツとともに常任理事国となることは必要だ,と考えます.それはまた,もし中国が拒否権を行使して日本を国連システムから排除するような結果となれば,日本に彼らと対抗できる途を模索するよう促すでしょう.アジアが地域的な協調システムを欠き,日中間で対立する場合もあるからこそ,両者が国連安保理常任理事国として参加しておくべきなのです.

Philip Bowringは書いています.イギリスの教科書を見ても,アヘン戦争や中国の宮殿を破壊したことには大した説明もないし,アメリカの教科書にフィリピンを「文明化する」という理由で征服し,大規模な虐殺を行った記述などない.エリザベス女王がインドにおける殺戮the Amritsar massacreについて謝罪したこともなければ,イギリス帝国主義の支配者がロンドンの記念碑として飾られていることに反省など示さない.中国や韓国以外では,日本の帝国主義がヨーロッパの帝国主義からの解放として歓迎された場合もあることを,中国政府は無視している.韓国で人気の高まっている故朴正熙大統領も,満州国の日本軍に属していた.

Philip Bowringは,国連改革としてインド,ドイツ,ブラジルと並んで,日本が参加することは重要だと考えます.インドにパキスタンが,ドイツにイタリアが,ブラジルにアルゼンチンが,そして日本に韓国が反対するのは偏狭な対抗意識です.ルパート・マードックの下品なタブロイド紙が排外主義や外国人差別を称揚するのと違って,中国政府が同じような態度を取ることは,アメリカが退場しつつあるアジアにおいて協調を模索することに深刻な障害となるでしょう.

中国の長期的な利益として,日本のアジアにおける地位を押さえ込むことが重要であるとしても,安保理の場で拒否権を行使したくない,という計算が,アメリカに国連改革を諦めさせるよう,アジアの政治対立がいかに深刻で,まだまだ時間を要するものであるか,大衆デモとして示す計算があったかもしれない,と推測しています.しかし,それが暴動やビジネス街での乱闘になれば,国際的なイメージを大きく損なうことに苛立っていることでしょう.

LAT April 11, 2005

Japan's Revisionist History

By Philip J. Cunningham

CSM April 12, 2005 edition

China-Japan Logrolling

FT April 12 2005

Asian blame game

Asia Times Online, Apr 14, 2005

China's fury doesn't wash, but why the froth?

By Marc Erikson

Asia Times Online, Apr 14, 2005

The price of Japanese nationalism

By Erich Marquardt

(コメント) Philip J. Cunninghamは,南京大虐殺に関する日本のリビジョニストたちによる否定が繰り返しなされてきたことについて,日本政府の姿勢を強く批判しています.小泉首相の内外における政治姿勢は,経済改革と政治的保守派,対外的にはブッシュの戦争を支持する,という法外な政治同盟です.右翼による教科書編纂を承認し,南京大虐殺に関する出版・放送への圧力を黙認する姿勢は,アジアにおける軍事拡大競争や政治摩擦の過熱に至るものだ,とアメリカ政府に警告します.

反日デモの呼びかけは,海外のホームページから始まり,常任理事国入りへの反発が次第に賛同者を増やして,政府の容認の下,ついには抑制のない破壊行為に走る者を吸収して膨張し続けたようです.

ある意味では,日本も中国も,国際的な地位に矛盾を感じているわけです.それを日本政府は「普通の国」と表現し,中国民衆は「反日デモ」で表現します.両国の国内政治的な事情が,国際的な地位の正常化や歴史観に屈折した反発を刺激する形となっています.ともに,経済的な成功を十分な政治的成熟に転換できない,排外主義や愛国主義をはけ口として,国内改革の継続に成長を頼っています.

FTの論説が,中国の反日デモに示される政府の欺瞞を批判します.中国政府こそ国内の民主主義に関する不満を抑圧し,利用しているだけではないか? 日本に対する反感を育て,利用してきたではないか? 日本の戦後の平和主義や戦後補償,経済援助について,国民に正しい情報を与えていないではないか? 自国の指導者が犯した過ちにより飢餓や虐殺が起きたことを知らせておらず,日本の脅威や軍国主義だけを誇張しているではないか? 中国が基本的に資本主義によって繁栄していることを認めず,単純化した図式のナショナリズムで共産党支配の正当性を確保しているではないか? もしアジアにおいて両国が平和と繁栄を分かち合うことを目指すなら,双方の姿勢に改善すべき点がある,と.

Marc Eriksonは,香港に隣接するShenzhenのデモを取材し,デモ隊がその情報や日本国旗を誰かから組織的に与えられたことを伝えています.明らかに,これは準備され,政府当局に助成されたデモなのです.「混乱の責任は日本政府にある」という中国当局の説明は愚かである,と明言します.Shenzhenのデモは仕事のない出稼ぎ労働者を当局が集めたものであり,学生たちではなかった.そのスローガンは政府のものだ,と.こうした行動の理由として,@国内問題から目を逸らせる,A共産党内の対立,Bナショナリズムを国際的に利用する,と考えます.

Erich Marquardtによれば,中国の成長の軍備拡張に対して,東アジアのバランス・オブ・パワーを維持するため,日本政府や外務省は自衛隊の増強,米軍との連携を強めることを唱えています.しかし,それを国内政治で支持させるため,広く議論するより,右翼団体や教科書の書き換えなど,ナショナリズムの高揚を利用していると指摘し,その危険性を訴えます.

The Asian Age, 10 April, 2005

YaleGlobal Online

Internet fans flames of Chinese nationalism

- By Paul Mooney

FT April 13 2005

China's persistent Japan syndrome

By Ian Buruma

(コメント) インターネットが流言飛語を拡大しやすく,国家管理の道具になる以上に,そうした管理の破綻や暴走につながる不安は以前から指摘されていました.中国とその反日ナショナリズムは,政府を欺き,抑圧する正当性を失わせる形で進行している反政府集会ではないか,とさえ思います.

日本の常任理事国入りに反対するインターネット上のキャンペーンはアメリカから始まった,とPaul Mooneyは伝えています.最初は200万人を目標に始まって,既に2200万人以上の支持が集まった,と主催者は述べています.ナショナリストたちはインターネット上の書き込みを反日の意見交換に使って影響力を強めています.

中日関係の専門家は,既に政府も攻した反日運動の拡大を警戒しており,抑えようとしているけれど,自分たちが日本に対して「弱腰」と攻撃されることを恐れて行動を控えている,と言います.中国政府はインターネット上の情報も細かく監視しており,限度を超えたとみなされるウェブは閉鎖されます.しかし,完全に沈静化はできません.反体制派を激しく弾圧してきた警察も,反日運動を同じようには扱えません.

また,中国側が中日関係に新思考を唱えた際,日本政府はその機会を真剣に捉えることができず,結局,小泉首相は靖国参拝を強行しました.その間,政府によって育成され,インターネットで成長し,ついに街頭へ姿を現した悪性のナショナリズムが,商店を襲い,日本製品を破壊し始めています.・・・もはや政府の手に負えない.

Ian Burumaも,この反日デモの特殊な性格に注目します.すなわち,たとえ日本政府が全面的な謝罪を表し,戦時におけるあらゆる間違った振る舞い(南京大虐殺,従軍慰安婦,その他)を認めて教科書に記述し,日本の侵略を記念する建物を中国や韓国,東南アジアにも建設して,領土問題についても譲歩した場合,それで日本大使館への襲撃や日本料理店の破壊,常任理事国入りへの強い反発はなくなるだろうか? 多分,無くならない,とBurumaは言います.これは政府が許した暴動だから.

ナショナリズムを称揚し,特に日本軍の戦争時における野蛮な振る舞いを教育することが,中国の,そして少ないとはいえ韓国の,政治的な正当性を強化するのに利用されてきました.日本政府の対応とは別に,彼らはこの主張をにわかに取り下げることができないのです.それは20世紀の初めに清が外国人の侵略を利用して反政府活動を弾圧したことの繰り返しです.1989年の天安門事件でさえ,最初は学生たちの日本軍国主義復活に対する抗議として登場し,最後は政府へと向かったのでした.

貧しい,経済的な苦境に沈んだ地域へ反日デモが広がることは,中国政府にとってもっとも望ましくない展開です.つまり,中国当局は反日デモを封じ込めようとするでしょう.しかし,日本に対する非難も止めようとはしないわけです.


JT Saturday, April 9, 2005

Can John Bolton save the United Nations?

By DOUG BANDOW

WP Monday, April 11, 2005

The Bolton Nomination

BG April 13, 2005

Bolton's blunders

(コメント) ジョン・ボルトンの国連代表指名についても,依然,強い支持と反対があります.彼は国連を破壊するのか? 改革するのか?

BGは,ボルトンの示す外国政府への蔑視ではなく,彼の立場がアメリカの利益を損なうから,その指名は間違っている,と主張します.すなわち,ボストンは繰り返し北朝鮮と交渉することを拒み,包括的核実験禁止条約の批准も拒んで,次のアメリカに対するテロを深刻なものにした,と.上院外交委員会はボルトンを承認するべきではない.


NYT April 8, 2005

Why Hasn't a Weak Dollar Slowed Imports?

By LOUIS UCHITELLE

Asia Times Online, Apr 9, 2005

Oil for dollars, and dollars for US deficit

By Richard Benson

(コメント) アメリカが生産拠点を海外に移転してしまった以上,ドル安が進んでも経常収支が円滑に改善されることを期待できません.むしろ,輸出を増やすために高価な輸入が必要になって,赤字が増えるはずです.

他方,アメリカ政府はOPECと共謀して,アジア諸国のドル準備を石油価格の高騰で解消させている,とRichard Bensonは指摘します.そしてOPECに蓄積されたドルは,イスラム過激派と民主化革命を恐れるアラブ諸国の政府から,アメリカの武器と交換に回収されます.


WP Friday, April 8, 2005

Innovation, Not Quotas

By Gary Heiman

NYT April 9, 2005

Trade Quotas? Ah, the Good Old Days

By JAMES BROOKE

NYT April 9, 2005

Made in China. Bought Everywhere.

By KEITH BRADSHER and DAVID BARBOZA

(コメント) 多角繊維協定の失われた世界は,すばらしい自由貿易を実現しつつあるでしょうか? アメリカの繊維産業は,技術革新に取り組むか,中国から労働者を輸入するか,あるいは中国に工場を移転するか,しかないようです.そして,中国政府に対する人民元切上げの要求はさらに強まります.


NYT April 9, 2005

Nukes Are Green

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) かつて環境保護論者にとって原子力発電所は絶対に許されないものでした.しかし,彼らも必要に迫られれば考えを変えるかもしれません.今,われわれが直面する最大の環境問題は温暖化です.それゆえ,温暖化ガスを減らす原子力発電所は「グリーン」なのです.はるかに安全な原子炉が開発されている,とKRISTOFは主張します.実際,ガイア仮説の提唱者,James Lovelockも支持しています.


FT April 10 2005

Wolfgang Munchau: French could end EU integration

By Wolfgang Munchau

JT Monday, April 11, 2005

EU Constitution in trouble

By DAVID HOWELL

(コメント) フランスがEU憲章を否決すれば,ユーロ圏の解体が始まるのでしょうか? 経済改革は進まず,政治対立が激しくなるのであれば,ユーロ圏に安定と成長を期待した参加諸国は離脱を考えるでしょう.政治的な統合化を諦めたのであれば,単一通貨の将来も不安になるからです.

21世紀の国民国家は,グローバリゼーションにおいて効率性とアイデンティティーを追求しなければなりません.それは,日本のような例外を除けば,EUにもフランスにもできないことだろう,とDAVID HOWELLは考えます.EU憲章はこのバランスを取る巧妙な仕組みを目指したものでしたが,フランスによって否決されるでしょう.

しかし,ヨーロッパが繰り返し克服してきたさまざまな危機を考えると,EUの政治統合やユーロを破棄するとは思えません.可能な統合のあり方を模索する時期が続くのでしょう.


FT April 10 2005

Commodities on the climb

By Kevin Morrison and Christopher Brown-Humes

(コメント) 一次産品価格の長期的な上昇,もしくは交易条件改善(逆に工業諸国の交易条件悪化)と言えば,長期波動論や開発投資の循環を想起させます.


NYT April 10, 2005

India and China Are Poised to Share Defining Moment

By SOMINI SENGUPTA and HOWARD W. FRENCH

Asia Times Online, Apr 12, 2005

The energy ties that bind India, China

By Ramtanu Maitra

Asia Times Online, Apr 13, 2005

India sits pretty with US and China

By B Raman

The Asian Age, April 13, 2005

India in a China-Japan spat

- By Seema Mustafa

April 13 (Bloomberg)

A China, India Combine? Seismic Economics!

William Pesek Jr.

(コメント) 日中関係に比べて,中印関係は改善しています.なぜか? アメリカや日本と対抗して,中国はその両側で紛争を抱えることができないから,インドとの協調を優先するのでしょうか? 中国政府の目指す世界秩序再編イメージにふさわしい3000年来の文明を持つ国はインドだけだから? 資源や交易路における共通の利益? 米日インドの連携と,露中インドの連携とがぶつかり合っている?

William Pesek Jr.は,中国とインドが連携する場合の他国の利害を推測しています.潜在的には市場と資源を奪い合うこの両国が協力すれば,その他の世界から市場と資源を奪うことになるわけです.誰が何を奪われるのか? @アメリカ,Aパキスタン,B台湾,C日本,について.


WP Sunday, April 10, 2005

No Longer Your Iraq

By Jim Hoagland

The Guardian, Tuesday April 12, 2005

Let them eat bombs

Terry Jones

(コメント) Jim Hoaglandは,「拝啓 サダム・フセインさま」という書簡で,イラクの政権構想について書いています.それは何より,クルド人が権力に参加したことであり,アラブ世界におけるクルドの復権,汎アラブ主義ではない,多民族からなるアラブ世界を統治する,クルド=シーア派同盟が形成されたことです.こうしてイラクからアラブ世界は変わるだろう,と.

しかし,Terry Jonesの報告は,こうした楽観を翻します.アメリカとイギリスによる爆撃,その後の政治的混乱によって,イラクの子供たちはさらに貧しく,栄養不良になってしまいました.病院,学校,発電所は破壊されたままです.

経済制裁によって,広島の原爆以上に多くの犠牲が子供たちに出ていることを知っているか? と聞かれて,クリントン政権のオルブライト国務長官は,それに見合った成果はある,と答えました.その後,ブッシュ政権は経済制裁を見合わないと考え,軍事攻撃によって逆に犠牲を拡大しました.子供たちの父親を捕らえ,拷問し,子供たちから食べ物さえも奪ったのです.

爆弾は食べられない.同じお金を費やすのであれば,爆弾を落とすより,子供たちを救うべきである,と.


WP Sunday, April 10, 2005

An Economy On Thin Ice

By Paul A. Volcker

(コメント) アメリカと世界の不均衡とリスクに関する警告です.それは繰り返されてきた警告ですが,Paul A. Volckerの言葉は一層の真実を伝えます.

アメリカ人の個人貯蓄は減り続け,社会保障においても資本流入がなければ誰が支払うのか,国民は気にしていない.高価な住宅を買い続けているが,国内で生産された額より6%も多くの消費と投資を誰が供給しているのか,国民は気にしていない.アメリカ経済は一日20億ドル以上の資本流入によって循環しており,ますます多くの資本流入を国民は当然のように前提している.ドル暴落や高金利など,誰も気にしていない.

いままではアメリカ市場に外国から民間投資が流入していた.しかし,今ではアジア諸国の中央銀行がドルの外貨準備を増やしている.特に,中国や日本などの東アジアだ.それはアメリカ国民にとって快適であり,アジア諸国にとっても都合がいい.それが国内市場の拡大を支え,限りなく国際通貨に近いドルの保有を増やすことであるのだから.

しかし問題は,この状態が永遠には続かない,と分かっていることだ.アメリカへの流入額は世界全体で行われたネットの国際資本移動の80%を占めている.いつの時点か,中央銀行も民間機関もドルを持て余すようになる.それは,懸命な政策転換によってではなく,激しい危機によって生じるだろう.

成長を維持しつつ「ソフト・ランディング」するシナリオが経済学の教科書には載っている.中国などのアジア諸国はドルに対する自国通貨の増価を受け入れる.日本とヨーロッパは迅速果敢に国内経済を刺激し,同時に,効果的な早期の成長阻害要因除去を実行する.アメリカはさまざまな手法を組み合わせて,国内貯蓄を増やし,輸入需要を抑える.

こうしたことが,一斉に,かなりの程度で採用されると信じる者など居るだろうか? 無理だ.つまり,われわれは薄氷の上に立っている.

ある時点で,アメリカと世界の拡大を円滑に指示している資本市場が色あせる.何かの事件をきっかけに,市場は混乱し,為替レートと金利が不安定になる.われわれは1970年代に経験した.ドルの不安定化と下落,インフレ,金利上昇,不況の連続.

その教訓は,整然とした調整を行う時間を稼ぐこと,リスクを減らすことを,われわれは最優先しなければならない,ということだ.金融・財政の規律に関して,今すぐ行動しなければならない.しかし,政治家たちは事態が急変するまで行動を延期し,イデオロギー論争にふける.


CSM April 11, 2005 edition

Freedom for China's Currency

April 12 (Bloomberg)

Bush Administration Is No `Wet Noodle' on China

Andy Mukherjee

FT April 13 2005

China's dollar dilemma

By Andrew Balls and Richard McGregor

(コメント) アメリカに流入する中国製品に対して,人民元を切上げなければ,関税を課すようにアメリカの政治家たちが騒ぎ始めています.

人民元切上げ問題では,Andrew Balls and Richard McGregorの論説がさまざまな議論を総括しています.中国の新聞でさえ,「切上げの秒読み開始!」と見出しを掲げているようです.

しかし,中央銀行に比べて政府は,輸出によって成長を加速してきた経済運営を変えることに慎重な姿勢を変えていません.この問題は,同時に,アメリカと世界の不均衡を是正する問題と重なっています.

Nouriel Roubiniは,もし中国とアジアが切上げて資本移動を減らし,アメリカ,ヨーロッパ,日本が財政赤字を減らして成長を持続できるなら,世界の成長にとって好ましい.しかし,中国とアジアは変わるが,アメリカは変わらないとしたら,危機が起きる,と言います.

このまま不均衡は維持できる,という主張もあります.連銀のBen Bernanke理事はアジアの引き起こした「世界的貯蓄過剰」を不均衡の理由に挙げています.先にCooper も指摘したように,この状態は短期に修正されない,というわけです.

どこまで不均衡は拡大できるのか? 中国側にも為替リスクを指摘する意見や,金融政策の行政指導より市場による効率性を求める意見,不胎化介入の限界や,これまでの輸出促進モデルにおける資本の浪費,投機的な流入に関する懸念が示されています.中国当局は,アメリカが二国間で不均衡を問題にする姿勢を強く批判しています.

しかしアメリカ議会では,強硬な保護主義がすでに台頭しています.中国を生産拠点とするアメリカの多国籍企業は保護主義を抑えようとしますが,議会で中国の通貨や貿易を「公正」とみなす者は少数です.中国が人民元を切上げなければ,それに見合った報復関税を課す,という法案が提出され,圧倒的な支持を得ています.アメリカが強制すれば,むしろ中国の行動を歪めてしまう,と牽制する声がある程度です.


FT April 12 2005

Migration can aid development

By Dhananjayan Sriskandarajah

BG April 12, 2005

Fixing immigration fairly

By Ali Noorani

(コメント) 移民政策をめぐって,Dhananjayan Sriskandarajahは「頭脳流出」を扱っています.「部脳流出」は,それにかかわる個人や家族,企業,受入国,送出国のすべてに利益をもたらしうる,と主張します.移民排斥を唱えるのではなく,移民がもたらすプラスの効果に注目して,それを改善することを目指せばよい,と.移民は阻止したり,退去させたりする対象ではなく,永久に一緒に暮らす仲間であり,移民と貧困,開発の関係を深く理解した上で,「頭脳流出」が双方の利益になる政策を選択するべきだ,と.

ブッシュ大統領,ケネディー,マッケイン上院議員が提案するアメリカの新しい移民政策は,移民を排除するための国境警備ではなく,地域社会の治安や密輸,テロの取り締まりに集中します.国境を越えて働きに来る労働者たちはアメリカ経済の繁栄を支えてくれます.彼らは合法的に就労し,市民権を申請できます.


WP Monday, April 11, 2005

Doing Better by Darfur

IHT Tuesday, April 12, 2005

Lessons from Rwanda

Romeo Dallaire

NYT April 13, 2005

Billions of Promises to Keep

By KOFI A. ANNAN

(コメント) ダルフールにおける虐殺が今も続いていることについて,WPはスーダン政府ではなく,フランス,中国,ロシア,AU,ナイジェリア,南アフリカの姿勢を批判します.ルワンダの虐殺に関しても,多くの政府が,特に豊かな諸国の政府が何もしなかったことを,失敗の教訓として記します.資金や物資の援助とともに,治安を維持する軍隊を送ってほしい,とアナン事務総長は要請します.


FT April 12 2005

Martin Wolf: China has further to grow

By Martin Wolf

FT April 13 2005

China seeks to limit damage from surging exports

By Richard McGregor

FT April 14 2005

China needs its domestic capital market

By Fang Xinghai

FT April 14 2005

China's weak link

(コメント) 中国はどこまで成長するのか? Martin Wolfは,東アジアが実現した過去の例から,中国のキャッチ・アップ過程がまだ中盤でしかない,と考えます.それは前例のないものではないでしょうが,その規模から言って,まだ続くのです.ただし,投資が非効率になり,さまざまな社会・政治的軋轢を克服しなければ持続できません.

貿易摩擦や通貨政策・為替レートの調整,資本市場の整備や銀行システムの改革,国際資本移動,など,中国の成長に伴う課題はこれからも続きます.


IHT Wednesday, April 13, 2005

While dirty money flows, the poor stay poor

Raymond Baker and Jennifer Nordin

(コメント) ミレニアム開発目標や国連改革もあって,豊かな国が貧しい国に競い合って援助を増やすとしたら,それは発展途上諸国の生産的に吸収できる能力にもよりますが,好ましいことです.しかし,この論説は,援助が増えるよりも,闇のルートで資金が流出するほうが大きいだろう,と悲観します.それは,@貧しい諸国の政府や職員による横領.A犯罪組織などによる資金移転,そして,B商取引における利益の隠匿,です.

特に,@は注目されている割に相対的な重要性は低く,むしろBが重要だ,と主張します.豊かな諸国の企業は,課税を免れるために,貧しい諸国との取引で得られた莫大な利益を隠匿します.世界中にあるタックス・ヘイブン,金融機関の秘密保持,ダニー会社,欧米の穴だらけになった資金洗浄に関する規制,などを利用してコンサルタント企業や弁護士が企業を誘導する結果,8兆ドルが流出している,というのです.

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The Economist, April 2nd 2005

Power at last

(コメント) インターネットによって実現した商品に関する情報の利用可能性は,ついに消費者を市場の王様にした,という記事です.特集記事の中でDellのマーケティング主任は述べています.デルがパソコンの販売で首位に立てたのは,小売業者を削って,消費者に直接販売したからだ.もしウェブサイト上で価格を変更すれば,顧客の行動パターンは文字通り瞬時に変化する,と.

宣伝や広告によって選別され,歪められた情報を,消費者は信用しなくなりました.小売業者やデパート,ブランドの魅力は残りますが,消費者があらかじめ多くの情報をインターネットで検索して,吟味しています.生産者はますます直接に消費者の動向を狙って商品を開発するようになりました.


Chile: Writing the next chapter in a Latin American success story

(コメント) 破綻したアルゼンチンに対して,民主化後もインフレや通貨危機を回避したチリの政策は賞賛されています.ピノチェトの軍事独裁体制の崩壊後,民主化を指導してきたRicardo Lagosの連立政府と裁判所は,軍人の過去の責任をさかのぼって追及し,その復活を完全に排除しました.同時に,堅実なマクロ経済政策を維持し,もっぱら銅の輸出に依存した対外依存度の高い,脆弱な経済を安定化するため,銅の国際価格に連動した財政の健全化目標を制度化して,政府は忠実に従っています.その結果,チリはラテン・アメリカで最高の信用を得ています.

チリの改革が迎える試練は,銅の価格が下落することと,次の大統領選挙です.Lagosの後継者になる次期大統領候補は,保守的な男性支配の国にもかかわらず,3人の子を育てながら,自ら社会主義者と認める,小児科医の未婚女性です.そして銅の価格変動に対しては,チリ経済が民間企業の革新によって多様化し,銅輸出に頼らず成長できる基礎を築くことです.


China’s yuan: Softly, softly

(コメント) IMFの研究では,「為替レートの弾力化」と「資本自由化」とを混同してはならない,と指摘されました.中国政府は為替市場における経験と知識を得るため,主要通貨間の取引を指定した業者間で実験的に行い,中国の金融関係者に習得を促しています.