IPEの果樹園2005

今週のReview

3/21-3/26

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   アルゼンチン通貨危機の顛末 :2001年末から今までかかった一方的な債務処理元を正せば

2.   保守的世界の建設 :ブッシュ氏から世界へ福音を告げる.ウォルフォウィッツボルトン

3.   中国日本 :変身するのはどちらが早いか? そして,どちらが好ましいか?

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune, JT:Japan Times, CSM:Christian Science Monitor


LAT March 3, 2005

Neocons May Get the Last Laugh

Max Boot

The Guardian, Thursday March 3, 2005

Cedar revolution

Timothy Garton Ash

WP Friday, March 4, 2005

The Road to Damascus

By Charles Krauthammer

The Guardian, Thursday March 10, 2005

It is not democracy that's on the march in the Middle East

Seumas Milne

NYT March 10, 2005

The Beirut Tea Party

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) ネオコンが幻想を説く愚か者ではなかったと,皆,思い知ったか? とMax Bootは強調します.彼はアメリカ軍によるイラク侵攻が始まる1ヶ月以上前に,the Weekly Standardで「バクダッド陥落はバスチーユの解放やベルリンの壁崩壊に匹敵する歴史の転換をもたらす」と書き,ネオコンのデタラメだと非難されたようです.しかし,実際はどうであったか,今になって分かっただろう,と.

イラク,パレスチナ,サウジ・アラビア,エジプト,ベイルート,シリアにも,グルジアやウクライナと同じような民主革命を拡大できる,とネオコンたちは信じています.それを強く支持するブッシュ政権が続く限り.

Timothy Garton Ashは,むしろこれらを「意図せざる結果の法則」と呼びます.民主化が実現するとしても,それはブッシュ氏が正しかったことや,イラク戦争が正しい選択であったことを証明するわけではありません.むしろワシントンの楽天的な勝利宣言に反対し,それがむしろ逆効果になることを考えます.フランスも地域の独裁者たちを支援してきた,と.それゆえ,中東民主化を米欧の共通政策として合意するべきではないのです.

他方,Charles Krauthammerは,アフガニスタンとイラクの民主的選挙が中東全体に与えた影響を賞賛します.民主革命は必ず波及する,と.今やシリアによる軍事的なベイルート支配から,シリア自体のソビエト型社会,バース党的な政治システムが崩壊に向かっている,と.こうしてダマスカスに革命が及べば,中東全域が革命に巻き込まれるでしょう.

独裁者が新しい支配体制を固めて民主化運動を粉砕する前に,アメリカは愚かな支援策や,飛行禁止などの中途半端な介入で満足することなく,ダマスカス侵攻を考えるべきだ,と.

ベイルートの解放は,まだ,その評価が定まりません.それは無数に分裂したベイルートの政治システムを震撼させる,強烈な反米主義を掲げるヒズボラが指導した,民衆による革命だからです.どこに向かうのか?


CSM the March 04, 2005 edition

UN Paradox in Darfur and Congo

(コメント) ルワンダで失敗した安保理が,なぜコンゴへの介入には迅速に動き,ダルフールへは介入を抑えたのか? コンゴでは国連の平和維持軍が殺されたこと以外に,ダルフールではNATOやイギリス,フランスが介入のために軍隊を動かす必要があるから,決定を避けているのではないか?


FT March 4 2005

The improbable hero

By Adam Thomson

2年前,キルチネルNestor Kirchnerは約束した.「われわれはアルゼンチン人を飢えさせたり排除したりして債務を支払いことなどできない.」 このひょろ長い男は,彼を支持する強力なペロニスト政党に属する騒々しい有権者にこう語った.

そして今週,彼は見事に約束を果たした.木曜日に,アルゼンチンの民間債権者の圧倒的多数が,1000億ドルの不履行債務について,政府の提案した組替えを受け入れたのだ.こうして2001年12月に始まったアルゼンチンの歴史の暗黒部分は終わり,かつて発展途上国が行った債務削減の中でも最大の切捨てが行われたのだ.「キルチネルとその経済スタッフは英雄のように街頭を行軍することだろう.」と,債権者の一人は述べた.

キルチネルが大統領になった経緯は注目に値する.彼はブエノス・アイレスよりも南極の方に近いパタゴニア州の州都Santa Cruzの生まれで,当時の大統領であり,ペロン党のボスであったドゥハルデに候補としてリストに挙げられることもない,無名の人物であった.ドゥハルデが彼をリストのさらに下から捜し出して後継者に指名した.

キルチネルは銀髪の元債務徴収人であり,目の出た,舌のもつれる男で,第一回投票では元大統領のカルロス・メネムに負けていた.しかし,メネムが予想外に決選投票を辞退したことで権力を手にしたのだ.こうしてドゥハルデへの多大な恩義とわずか22%の得票によって,彼は大統領となった.「それはアルゼンチン史上最低の支持で当選した男だった.」

しかし大統領に就任して以来,彼は二つの性格によって高い支持と制度的な権力を得てきた.すなわち,まず,左派のイデオロギー,である.

キルチネルは先月55歳になったが,1970年代の申し子である.若き法学生として,彼はペロン党青年派に加わった.それは労働者の蜂起を夢想する革命運動であった.そこで上院議員となっている妻のCristina Fernandezに出会い,二人の子を持つ.この魅力的なキルチネル夫人が,今や,大統領に最も大きな影響力を持ち,その重要演説をしばしばチェックする.

ラディカルで左派的なイデオロギーは,彼が当選すると決まって,1976−83年の軍事独裁政権に関わった軍人を全て解雇してから,明確になった.

経済面では,2001年後半のこの国の不幸に責任があると言ってIMFを責め,また,国内で営業する外国企業を容赦なく攻撃した.債券保有者について,彼は「カジノ」に耽る強欲な資本家どもに喩えた.「キルチネルは債務をイデオロギーで考えた.」「アルゼンチンはその他の世界と敵対しており,邪悪な外国人に支払うことは道徳的な悪である,と信じている.」と,ある債券保有者は言う.

忠実なナショナリストのアプローチは,1990年代にネメムの自由経済政策に裏切られたと感じる国民に訴えるものだった.まさに多くの点で,キルチネルはメネムのアンチテーゼであった.メネムはイタリア製の手縫いのスーツを着こなし,外交儀礼や国際的な関与を好み,時速250キロでフェラーリを運転して捕まったことがある.他方,キルチネルはダブルのジャケットをボタンも止めずに着て,合わないネクタイを絞め,外交儀礼を嫌って,当時,ヒューレット=パッカードの社長であったCarly Fiorinaがアルゼンチンを訪問していたとき,彼女を怒らせた.キルチネルが乗るのは慎ましいルノーだ.メネムはカリスマであったが,キルチネルはそうではない.

しかし,一つだけ二人に共通しているものがある.それは,ともにインテリではない,ということだ.

背の高い,不器用な若者は決意が固かった.その攻撃的な頑固さが,この大統領の第二の特徴となった.彼に近い人々は,キルチネルが反対意見を突然さえぎり,自分と同じ見方を共有しない者をいじめるのを見てきた.彼は,「冷酷な政治的動物だ」と政治学者のBerenszteinは言う.

Santa Cruzでの彼の業績を見ても,キルチネルは効率的な組織化と堅実な財政で速やかに評価を高めたが,再選を可能にするために州の法律を捻じ曲げた.こうしたSanta Cruzでの経験を国全体に再現するつもりだ,と多くの者は見ている.よそ者を非常に嫌い,閣僚をパタゴニアの忠実な友人だけで埋めた.

今や,2007年の選挙でキルチネルに対抗する者は居ない.昨年,政府は半世紀ぶりの巨額の財政黒字を出した.債務交換が,政府の見積もりでは670億ドルの節約になったのだ.つまり,キルチネルは金を握っている.そして,「アルゼンチンでは,金を持つ者がボスになる.」


NYT March 4, 2005

Argentina Announces Deal on Its Debt Default

By LARRY ROHTER

(コメント) 2001年末の1000億ドルを超えるデフォルトの結末は,アルゼンチン政府による一方的な債務の交換条件に債権者が応じるかどうか,という形で,多くの債権者が諦めて新しい条件を受け入れた,というものでした.木曜日に,アルゼンチン政府は,1ドル当り30セントしか支払わない条件を債権者の76%が受け入れた,と報告しました.半分を取り返したロシアの債権者に比べて,キルチネル大統領はその「勝利」を自慢しました.

この余りに有利な条件は,国際金融システムに影響を及ぼす,と多くの者が指摘します.「アルゼンチンの債務組替えは,主権国家が以前よりもはるかに強力で,一方的に条件を提示できることを示した.ゲームのルールが変わったのだ.」と,債務交渉を担当した元財務次官Miguel Kiguelは言います.

Roberto Lavagna経済大臣は,多くの銀行や引受業者,ファンド・マネージャー,リスク評価機関,国際機関の専門家たちを,「交渉に何ら貢献しなかった」と批判しました.実際,アルゼンチンは初めから債務交渉の通常の手続きに従わず,IMFやG7の要請に応じないばかりか,条件を一方的に債権者に示し,債権管理会社との取引にも応じず,最終的には,分割され,バラバラにされた債権者たちにその条件を押し付けたのです.

債権者は疲れ切ってしまいました.アルゼンチンのこうした行動を,元IMFの西半球ディレクターであったClaudio Loserは,「TLCアプローチ」と呼びました.すなわち,「タフな交渉姿勢,良好な国際経済環境を利用できた幸運,そして保守的な金融・財政政策」です.

イタリア,スイス,アメリカ,ドイツ,日本の投資家は,この順で,アルゼンチン債券を保有しています.彼らの多くはこの条件を歓迎しておらず,特にイタリアの債権者は32万人のわずか30%しか交換に応じず,法的な対抗策を検討しています.他方,IMFやアメリカ政府は表に出ず,受け入れるしかないだろう,という態度です.最終的な投資家たちは,特に老人たちは,ドルあたり15セントや20セントを追加するために1年も2年も待てない,というわけです.

アルゼンチン政府がもっと支払う,とは期待できません.特に議会は,先月,残された債券に対して良い条件を与えることを違法とする法案を通過させました.また,他の多くの債権者が新しい条件を受け入れたことは,アルゼンチン政府が契約を意図的に偽った,という主張を法廷が受け入れにくくなるでしょう.

他方,アルゼンチン政府が国際市場で債券を発行することも難しいでしょう.経済活動は2002年に11%減少した後,2003年,2004年と8%で拡大しました.特に農産物の輸出が伸びて,輸出税が増え,民間の直接投資も復活しています.キルチネルが直面する今後の問題は,IMFと交渉し,民営化された公共料金を合意し,資本を引き寄せることです.それは難しい問題ですが,IMFも合意を望んでいるはずです.

FT March 7 2005

Argentina sets a dangerous precedent

(コメント) FTやWolfは,今回の債務切り捨てが国際金融システムに及ぼす危険な影響を強調し,アルゼンチン政府の勝利宣言を批判します.

アルゼンチンが債務を踏み倒せることを示した以上,投資家は新興市場にこれ以上の投資を行うことを再検討するはずです.「IMFは,厳格な条件の下でのみ融資を再開する,ということを明確にしなければならない.国際金融システムとの関係を前進させ,協調するには,アルゼンチンがそのギャンブルを止めるべきだ.もし対外的な金融関係を正常化せず,国内の構造改革を怠れば,その勝利は短命なものであったと分かるはずだ.」

24%の債券が交換できず,200億ドルの債務,250億ドルの利子が残されていることは重要です.アルゼンチン政府はこれを破棄しようとしていますが,IMFは融資を断つべきでしょう.むしろ,両者が時間を限って交渉を再開するべきだ,とFTは考えます.それはイタリアの債権者だけでなく,全ての債権者に回復の余地を与え,また,こうした高度に危険な債券を販売した金融機関の責任を問うでしょう.

IMFは,先にアメリカの圧力で緊縮財政の条件を取り下げたような失敗を繰り返さず,アルゼンチン政府に債務の利払いに必要な分を含めて財政黒字を要求するべきです.アルゼンチン政府もそれを歓迎するはずです.なぜなら,キルチネル大統領は理解しないとしても,ラヴァーニャ経済大臣は,景気回復が深刻な不況によって生じた生産能力の余剰を利用できるうちしか持続せず,今後の成長には構造改革と新投資が必要である,と理解するからです.

アルゼンチンが交渉を拒否した場合,IMFはその巨額の融資が不履行となって貸手としての信用を失うことを恐れ,またアメリカ政府は,キルチネルがヴェネズエラのチャベスのように左派の政治運動を強めることを嫌うでしょう.しかし,国際金融システムを混乱させないためには,アメリカ政府が財政赤字を抑制する方が重要だ,とFTは指摘します.

重要なことは,アルゼンチンが潜在的な「ヘアー・カット」(債務切り捨て)の余地は大きいことを示した点です.アルゼンチンが深い不況を経験したように,金融市場を無視しても免責されるわけではありません.しかし,債務の重圧に我慢できなくなった政府が不履行への誘惑に駆られる可能性を強めました.さらに,70%もの切り捨てという,デフォルトになった場合の新しい損失の上限が示されたのです.融資の条件は,不履行の可能性と損失の大きさによって測られます.それゆえ,新興市場全体に対して金利が上昇するに違いない,と言います.

にもかかわらず新興市場への融資は低い金利で増えています.FTは,かつてよりも新興市場の信用が改善している,新興市場債務の市場評価が間違っている,世界の流動性が高まっている,ことを指摘します.そして,ついにアメリカの長期金利が上がれば,新興市場が再び破綻する,と.


BG March 4, 2005

Greenspan's two cents

NYT March 4, 2005

Greenspan Talks Tax Increases

NYT March 4, 2005

Deficits and Deceit

By PAUL KRUGMAN

(コメント) グリーンスパンが財政赤字の削減を求めた,というニュースへの反応です.賢明な助言か,またいつものペテンか? なぜなら,財政赤字を削るために,グリーンスパンは減税の廃止ではなく,社会的給付の削減を示唆したからです.ブッシュも,グリーンスパンも,ペテン師だ,と.


JT Friday, March 4, 2005 

Waking up to China's threat

By ALEXANDER K. YOUNG

WP Thursday, March 10, 2005

Those Subtle Chinese

By Robert Kagan

FT March 15 2005

China and America's common energy interests

By Ian Bremmer

FT March 16 2005

Rice in Asia

FT March 17 2005

Washington’s sway in Asia is challenged by China

By Victor Mallet and Guy Dinmore

BG March 20, 2005

Clumsy China

(コメント) 中国は脅威か? それに対抗して,日米同盟をアジア全域から中東も含めた共同安全保障体制に転換するのか?

中国政府の外交は,以前に比べて,はるかに巧妙で,洗練されてきた,と中国の専門家は自画自賛したようです.なるほど台湾海峡について,中国は新しい法律を成立させました.台湾が分離独立を宣言したり,それを考えたり,中国が求めるあらゆる事項に逆らうようなそぶりを見せれば,軍事攻撃を認める,と.あるいは,日本やオーストラリア,アメリカの動きにも,中国は同様に警戒するのでしょうか?

中国が軍事的な威嚇を常習とした好戦的な国家である事実は変わっていないが,アメリカも含めて,世界は中国経済の近代化や目覚しい成長によって,その平和的な性格を強調し,軍事的な性格を無視するように努めてきた,とRobert Kaganは述べます.しかし,中国がアジアの共同安全保障の中核を担う状態など,民主的な諸国には安全を確信できません.アメリカが日本やオーストラリアと協力して,台湾海峡の軍事力行使を牽制するべきだ,と.

安全保障だけでなく,エネルギーの分野でも,アメリカと中国との間で,対抗もしくは協調が問われています.

ライス国務長官のアジア訪問も,中国に北朝鮮の非核化を促すことが重要な目的の一つです.しかし,アメリカが9・11以後,中東に関心を集中させる一方で,アジアの問題では中国が支配的な地位を奪いつつある,と懸念されています.中国を世界市場や既存の国際秩序に組み込むことで,そのルールに従わせる,という関与政策には限界があるのです.かつて日本がアメリカの国債を大量に保有した以上に,今の中国はアメリカの貿易・金融システムを人質にとっている,と感じさせるでしょう.

日本とアメリカ,中国との三角関係は複雑になり,将来も動揺するでしょう.


NYT March 6, 2005

Arms Sales Begin at Home

By THOMAS L. FRIEDMAN

ヨーロッパは中国に武器を売る.アメリカは台湾海峡で中国の軍隊と対峙する.ヨーロッパはますます自分たちを平和・不戦主義者であると宣伝する.しかし,ヨーロッパは中国に武器を売る・・・! 中国の考え方は以前と変わっていないが,ヨーロッパには正すべきではないか? 「君たちの外交政策とは何か?」


FT March 7 2005

How to tap Mexico's potential

By Jorge Castaneda and Nathan Gardels

(コメント) メキシコの大物政治家が,NAFTAの経済共同体への進化を目指して,メキシコの石油開発を提唱しています.

そこにはさまざまな要素が組み合わされています.メキシコからの移民,雇用・所得格差の解消,アメリカの中東石油への依存,メキシコ石油開発への投資,繰り返された金融危機,石油開発資金の不足,アメリカへの石油輸出によってアメリカ政府が債券を保証,膨大な石油需要を抱える中国の投資意欲,など,など.


WP Monday, March 7, 2005

Clueless On the World Bank

By Sebastian Mallaby

NYT March 8, 2005

Giving Wolfowitz His Due

By DAVID BROOKS

FT March 17 2005

The challenge ahead for the World Bank

By Peter Woicke

FT March 17 2005

Wolfowitz is not a mistake but a chance

By Adam Posen

FT March 18 2005

High priest of hawks

By Demetri Sevastopulo and Andrew Balls

FT March 18 2005

A poor choice for the World Bank

The Guardian, Saturday March 19, 2005

The poodle and the Wolf

Noreena Hertz

FT March 20 2005

Amity Shlaes: The vanguard of muscular diplomacy

By Amity Shlaes

(コメント) ブッシュ政権Uの国際制度改革は,その重要ポストにネオコンを配置しました.ペンタゴンから世界銀行総裁へとウォルフォウィッツを移動させ,国務省から国連代表へとボルトンを移しました.

どちらの場合も,やはりアメリカは国際機関を自分たちの目的に利用するだけではないか,という批判を招きます.しかし,それは国際機関を無効にするわけではありません.アメリカだけがその政治目的を国際機関に押し付けるわけではありません.また逆に,アメリカが世銀や国連を無視すれば,それは大きく力を殺がれるでしょう.少なくとも,一方的な軍事力の行使ではなく,世銀や国連の「改革」を通じて,国際秩序に積極的に関与する姿勢が明確になったわけです.

ウォルフォウィッツは,中東の経済的な統合と開発を通じて,これまで軍事的な介入で促してきたのと同じ目的を実現しようとします.すなわち,アメリカの安全のために,中東地域からテロリストと独裁国家を一掃することです.アメリカは既にその援助政策を変更し,アメリカの示す条件を満たさない諸国には援助を削減するという圧力を加えています.そして例えばハマスのような過激派が支配する地域には援助を停止します.ワクチンや蚊帳も,政治的な手段であることに変わりありません.しかし,「貧困との戦い」は,「テロとの戦い」よりも好ましいではないか?

とはいえ,ウォルフィー(彼の愛称)は,軍事力による体制転換を強力に主張してブッシュ氏の政策を動かしたイデオローグの中核です.彼とその信念が世界銀行に何をもたらすか,懸念を呼ぶのは当然です.

ウォルフォウィッツの世銀総裁指名は,かつてヴェトナム戦争を指導して世銀総裁となったマクナマラに比較されます.その知性と政治的影響力において秀でているにもかかわらず,ウォルフォウィッツが行う決定にはアメリカの介入という性格で見られるために,世界銀行の正当性を損なうでしょう.それにもかかわらず,IMFの総裁指名にヨーロッパの既得権を譲らなかったヨーロッパ諸国はウォルフォウィッツの指名に抵抗できないでしょう.

Amity Shlaesに拠れば,二人の人事はアメリカが国際機関に協調する姿勢を示すのではなく,国際機関に対しても「棍棒外交」を持ち込むことを意味します.彼らは他国の非難に屈するつもりなどなく,アメリカの参加を優先します.


March 7 (Bloomberg)

How Sexism in Japan Worsens Its Debt Outlook

William Pesek Jr.

FT March 10 2005

Lex: Japan

FT March 14 2005

Japan's two faces

FT March 18 2005

Lex: Livedoor/Fuji TV

FT March 20 2005

Lex: Japanese M&A

(コメント) 日本経済が衰退する理由は,革新を妨げる障壁が多いことです.例えば,雇用や昇進における男女差別.例えば証券市場における個人投資家や新興企業家への差別.

ライブドアによる日本放送買収とフジTV支配について,漸く,英米の論説が取り上げました.日産やソニーを観ても,外国投資家や外人経営者を排除するのは間違いです.市場の圧力によって経営に関する情報が開示され,透明性と効率性が求められるのは良いことです.経営者たちは互いに競争するべきでしょう.そしてわずかな資産の個人投資家にも安全に分散投資できるような,十分な投資機会を保証する方が良いのです.しかし,日本の企業も証券市場も,外人投資家や個人投資家を好みません.

ライブドアとフジTVの騒ぎも,彼らの資産や経営支配がメディアをどう変えるのか注目されるだけでなく,こうした視点からは,両者ともに,機関投資家によって操作されてきた市場における富と支配を,姑息な手段で奪い合っているのです.個人株主や日本経済に果たす株式市場の役割には悲観的な展開です.株式市場全体が「毒薬」に浸っているようなありさまでしょうか?


FT March 8 2005

An offer that Iran cannot refuse

By Brent Scowcroft and Daniel Poneman

(コメント) イランの核開発阻止をめぐる提案です.外交問題は,有力な関係諸国が相互に利益を約束する形でしか動きません.

イランの聖職者たちが核兵器を開発する主要な目的は体制の自己防衛です.それゆえ,もしその手段が有効でなく,他に良い手段があれば,彼らも再考するでしょう.すなわち,EU,アメリカ,ロシアがイランの現体制を含む地域の安全保障を支持することです.他方で,国連安保理が核開発の転換を確認し,違反した場合の制裁を明確にします.イラン政府は,誰に強制されることもなく,自分たちの意志で方針を転換する,と宣言するでしょう.彼らは国際機関に参加し,市場の利益やエネルギー・技術の提供を有利に行えるでしょう.これによってイラン国民は豊かになり,アメリカはイランのリスクを抑制し,ヨーロッパは貿易や石油供給を得て,ロシアもアメリカとの核協力や核廃棄物の処理において利益を得ます.


FT March 8 2005

Martin Wolf: Argentina holds a weak hand

By Martin Wolf

WP Wednesday, March 9, 2005

Lessons From Argentina

FT March 14 2005

Kirchner's folly

(コメント) アルゼンチンの教訓をどう考えるべきでしょうか? いくつかの教訓を指摘してから,Martin Wolfは,アルゼンチンが債務交換によって得た機会を逸するに違いない,と言います.

教訓@ もし主権国家が債務不履行を決意すれば,それを阻止できるのはより強力な国家だけである.民間債権者は破産者の資産を差し押さえることができない.国家は破産しない.破産するのは債権者だ.

教訓A 国家に融資することは危険である.特に財政の慎重さを欠いた国に対しては.利回りとリスクは同じコインの二面である.

教訓B 救済融資によるモラル・ハザード論は著しい誇張であった.公的な融資は誰をも救えなかった.債権者は巨額の損失を負った.アルゼンチンは自分を絞首刑にするためのロープをIMFから借りたに過ぎない.アルゼンチンの政治家は懲りず,一層深刻な失敗を犯した.

教訓C デフォルトは高いコストを意味するが,デフォルトしないことはさらに高いコストであった.デフォルトのコストは,深刻な危機,評価の失墜,高金利,金融混乱である.しかし,債権者が債務国から見てデフォルトしないコストの方が大きいと理解すると,悪循環が確実になる.金利が急騰し,融資は枯渇し,経済状況は悪化,信用がさらに低下して金利の急騰を加速する.2001年にアルゼンチンはこうした状況に陥り,デフォルトしないとは信じられなくなった.

教訓D 一旦,デフォルトがよりましな選択になれば,その規模は非常に大きくなる.信用を供与するかどうかは,その国が債務に支払う意志と能力を持っているかどうかに依存する.デフォルトを生じた政府は将来の債務に対する返済が強く疑われる.それゆえ,デフォルトの規模は,その能力によって厳しく限定される水準まで,債務を大きく減らすほど大きくなければならない.

教訓E 国際社会や特にIMFは,デフォルト後の債務国に対するアプローチを再考しなければならない.IMFがその後の交渉を指導することには大きな疑問がある.しかし,債権者と債務者が将来の債務返済が維持可能な水準に向けて交渉を進めることを指導する役割がIMFにある.それは経済成長と財政余剰を生み出すことだ.

教訓F IMFが2002年に提唱した「国家債務組替メカニズム」は必要ないし,むしろ有害である.国家債務が自ら組替えられることは示された.デフォルトは正常な過程では無いから,このようなメカニズムを認めることは好ましくない.主権国家を破産できるようにするより,IMFは債務組替えのマクロ経済条件を指導するべきだ.

最後の,そして最も重要でない教訓.アルゼンチンの現在の姿勢は間違っており,デフォルトによる再生の機会を生かせないだろう.その財政・金融政策は懸念されたよりずっと良かったが,その他の政策は失敗だった.すなわち,銀行の資産と債務を異なったレートでペソ化し,公共料金の改定を禁じて投資を妨げ,近視眼的なポピュリズムを信奉した.アルゼンチンは,再び,その常習的なデフォルト国で,長期的な経済破綻国であることを示しただけだ.

しかし私の印象は,むしろWPの論説に近いです.WPによれば,今回の債務組替えは,たとえ債権者個人にとっては苦しくとも,国際金融システムにとって健全なことであり,有益な教訓を与えた,というわけです.すなわち,投資家は新興市場のリスクについて投資する前に十分考慮しなければならなかった.もし1990年代に投資家がもっと慎重であったら,アルゼンチンの債務はもっと小さく,その破綻が罪の無い人々を傷つけることも少なかったはずです.25%の失業率や国民の4割が貧困に苦しむことを避けえたのです.

投資家が正しく教訓を学ぶことは,また,債務国政府にも,ひたすら狂ったように債務を増やして,デフォルトすれば良い,という間違った教訓を与えないことにつながります.アルゼンチンは確かに債務の3分の2を免除され,8%を超える成長を遂げました.現政権はそれが賢明な政策であったことを自慢します.しかし,そのコストは深刻です.雇用と所得を失った労働者たちが大量に貧困層へと転落しました.通貨を3分の2も切下げて競争力を得た結果,激しい不況から目覚しい回復を遂げたとしても,それを前進と称するべきか?

つまり,WPの示す教訓とは,1.投資家がもっと賢明になること.そして,2.デフォルトを国内の破産処理と同じように,秩序正しく行うこと,です.

ブエノス・アイレスでは,東京三菱銀行の宮支店長と話す機会を得ました.その際,投資家個人がどれほど債務国政府の行動を監視できるだろうか? もっと投資を仲介する機関や債権国政府,国際機関などが,債務諸国の政策を監視し,助言する制度やメカニズムを設けて,投資家に注意を促すべきではないか,と話し合いました.

他方,最も憂慮されるのは,FTも指摘するキルチネルの「愚行」です.すなわち,「キルチネル大統領は債務の組替えを,アルゼンチンの経済問題に対する攻撃的・ポピュリスト的なアプローチに向けたトランポリンとして利用しようとしている」 と.それを顕著に示したのが,4%の値上げを示したシェルのガソリン・スタンドに対して不買を呼びかけたことです.

たとえそれが彼の政治的な人気を高めたとしても,長期的な成長に必要な投資を妨げるものです.好況は新投資を必要としています.国際金融には復帰できず,債務比率が75%もあるので,政府は公共投資ではなく民間投資を促す必要があるのです.キルチネルの行動はそれに反します.1970年代のラテン・アメリカで行われた価格統制は,インフレを抑えるよりも,投資を損なうものでした.

政府は,失業者たちによる道路封鎖,いわゆるピケテロを許容して,シェルのスタンドに圧力をかけました.こうした街頭政治は投資家たちの印象をさらに悪化させるだけです.しかもフランチャイズのスタンド所有者たちが大きな苦痛を強いられているのです.彼らはキルチネルが救済すると称する弱小な企業家たちです.

社会的な目標と自由な市場経済とを組み合わせるには,両者が受入可能な共通のルールを交渉して,それを政治的に利用しないことです.もっとチリの経験に学ぶべきではないか,と.


LAT March 8, 2005

Made-in-America Wahhabism

By William Thatcher Dowell

(コメント) サウジ・アラビアのワッハビズムやイランのホメイニに似た,アメリカ自身の宗教的過激派,キリスト教右派,によって当選できたブッシュ政権Uは,彼らを抑制できなくなるかもしれません.信仰は,強力な政治的信念に翻訳できますが,政治的な妥協には向きません.勝利に利用できても,現実に合わせて妥協することを許しません.


NYT March 8, 2005

The Debt-Peonage Society

By PAUL KRUGMAN

NYT March 10, 2005

Five Years Later and Still Floating

By JAMES GRANT

FT March 13 2005

End of the party?

By Dan Roberts and David Wighton in New York and Peter Thal Larsen in London

FT March 20 2005

US, Germany, France and UK face junk debt status

By Paivi Munter in London

(コメント) 他方,アメリカ経済が依存しているのは債務です.たとえばPAUL KRUGMANは,クレジット会社が立案して政治家に立法化を求めた破産法の改正を批判します.なぜなら,個人が返せなくなった債務を破棄して自己破産する機会を制限し,生涯を債務奴隷として暮らすように強いるものだからです.もちろん,クレジット会社は,無思慮に浪費するため借金を重ねて,自己破産すればよい,と考える者が出ないようにするためだ,と主張しています.

現実はそうではありません.自己破産の圧倒的多数は深刻な不幸,例えば病気や失業,離婚によるものです.他方,自己破産を悪用するのは裕福な者たちです.

破産する者が増えたのは,この30年間でアメリカ人の生活が不安定になって,中産階級から貧困に没落する者が増えてきたからです.職場は不安定で,一旦,失業すれば長期に及び,しかも医療保険や年金もますます多くの者から奪われています.経済全体の変化とともに,政治的なイデオロギーの変化が重要だ,とKRUGMANは指摘します.

ウォーレン・バフェットはアメリカ社会がan "ownership society"ではなく,"sharecroppers' society"に向かっている,と述べましたが,KRUGMAN はa "debt peonage" societyと呼ぶ方がふさわしいと考えます.それは南北戦争後の南部で債務者が債権者のために労働を強制された制度です.

他方で,なぜアメリカのバブルは完全に破裂せず,再び膨張するままに放置されているのか? という論説が並びます.アメリカのナスダックが早くもバブルのピークを回復したからです.すなわち,その不合理で,維持不可能な水準に戻ったわけです.その理由は,連銀がふんだんに流動性を供給する中で,債務のデリバティブや売買市場が発達し,銀行は企業のM&Aにますます融資するようになったからではないか,と言います.

こうした中で,S&Pのレポートは,先進諸国のGDPに対する債務比率が200%を超えて,財政破綻と債務不履行に向かっていることを示します.もちろん,予測の前提が正しければ,日本は2050年に700%を超えるでしょう.


BG March 9, 2005

No friend of the UN

BG March 9, 2005

Why Bolton will be good for the UN

By Nile Gardiner

LAT March 9, 2005

U.N. May Need Bolton's Bitter Medicine

By Jacob Heilbrunn

NYT March 9, 2005

The World According to Bolton

WP Wednesday, March 9, 2005

Defending Bolton

By Anne Applebaum

CSM the March 10, 2005 edition

Tough-talking Bolton: just what the UN needs

By Cathryn J. Prince

The Guardian, Thursday March 10, 2005

The enemy within

Sidney Blumenthal

The Guardian, Thursday March 10, 2005

Bolton from the blue

(コメント) ブッシュ大統領のヨーロッパ訪問が期待させた和解のムードをすっかり諦めさせる人事だ,と欧米の論説が首を振ります.あるいは,ボルトンの強硬姿勢やアメリカの指導力が国連改革に求められている,と弁護されていますが,それは何のための改革か? スタイルも重要ですが,その目標とロジックがさらに重要なはずです.

保守派の大物だけがアメリカを動かし,国際秩序をその政治的意志によって転換できる,というのは真実かもしれません.ただし,ボルトンがどういう人物か,Sidney Blumenthalの論説を読めば大いに憂鬱な気分が味わえます.国連改革のために? それは解体を含むのか?


BG March 9, 2005

What rise in freedom?

By Robert Kuttner

The Guardian, Wednesday March 9, 2005

The last of the utopian projects

Eric Hobsbawm

FT March 10 2005

The folly of forcing regime change

By Kenneth Lieberthal

(コメント) ブッシュ氏の描く理想の世界化は,どれほどの悪夢をともなうか? アメリカとヨーロッパという統治モデルが,今後,21世紀の世界でどのように普及して行くのか? 民主主義革命を唱える演出された選挙で.あるいは理想の力で.


NYT March 9, 2005

Free Trade Proposal Splits Bolivian City

By JUAN FORERO

BG March 14, 2005

Counting on CAFTA

(コメント) アメリカを受け入れ,自由な市場を受け入れることが,成長や富をもたらすのか? それとも経済破綻と貧困,不平等をもたらすのか? ラテン・アメリカの世論は激しく分裂し,社会的な混乱を生じています.貿易によって雇用は増えても,失業と貧困は悪化した,と激しく抗議する労働者がいます.他方,アメリカの豊かな市場に輸出し,優れた教育システムを利用することで,発展する機会を得る小国もあるわけです.


March 10 (Bloomberg)

`BAD' Tax, the Brazilian Malaise, Reaches India

Andy Mukherjee

(コメント) 銀行の預金引き出しに課税することを,ラテン・アメリカからインド政府が真似ました.Andy Mukherjeeはこれに警告します.それは金融空洞化やドル化,資産の海外流出を促す危険があるのです.日本のように,金利に対する課税は?


FT March 14 2005

An action plan to stop the market manipulators now

By Fred Bergsten

(コメント) Williamsonが来た際に,私は尋ねました.あなたはバーグステンの意見に100%同意するのか? と.為替レートに関して同意している,という(多分)答えでした.

Fred Bergstenの論説は,世界経済が直面する危機について考えます.7000億ドルに及ぶアメリカの経常赤字は大幅なドル安を必要とし,それは金利の上昇とアメリカの不況,それがヨーロッパや日本に波及することを意味します.また石油価格の高騰も同様の危機を強めます.

バーグステンはこの危機に対して,アメリカが財政赤字を削り,石油消費を抑制することを求めますが,同時にアジア諸国やOPECが介入によって為替レートや石油価格の秩序正しい調整を拒んでいる,と批判します.もし中国の切り下げができなければ他のアジア諸国も介入を止めないのであれば,アジア版の「プラザ合意」を行うべきだ.また,もしそれが行えないなら,IMF加盟諸国はアジアに圧力をかけ,対抗介入や(期待される通貨の増価に等しいだけ)輸入関税を引き上げるべきだ.それはIMFやWTOが定める国際ルールに合致している,と主張します.

他方,石油価格に関する合意されたルールはありませんが,アメリカ政府は反トラスト法や消費諸国の備蓄から一致した対抗介入を行えます.バーグステンは,安定した石油価格に対して備蓄と介入水準の国際合意を消費国と生産国に求めます.

通過やエネルギー市場に介入することに反対する意見もありますが,バーグステンは市場による不均衡の解消を促すためにも,介入が必要だ,と考えます.バーグステンの主張は,アメリカ政府の利益を代表して,他国がそれに従うべきだ,と相互利益を強調します.この辺が他国の政治家や官僚に嫌われるのでしょう.しかし,もし日本が覇権国であったら,やはり同じように主張するのではないでしょうか? あるいは,ヨーロッパも日本も,その地域内部で政策合意が形成されていれば,より確固とした交渉姿勢で望めたでしょう.


March 15 (Bloomberg)

An `Unexpected' Change in Yuan Isn't Imminent

Andy Mukherjee

FT March 15 2005

Wen warns of impact of revaluation on China

By Richard McGregor in Beijing

(コメント) 人民元の固定化をめぐるコストとベネフィットの比較です.中国政府は周辺諸国への影響を示唆して牽制しますが,介入のコストも膨張しており,必ずいつか,投機的な資本移動やインフレは抑えられなくなるでしょう.


BG March 15, 2005

The unfixable UN

By Jed Babbin(former undersecretary of defense for President George H.W. Bush)

FT March 20 2005

An aspiration to a larger freedom

By Kofi Annan

(コメント) Jed Babbinは,アナン事務総長の提案を批判して,唯一の有効な改革は独裁者の並ぶ国連の委員会などに参加せず,アメリカが国連を離脱して新しい組織を作ることだ,と主張します.


FT March 16 2005

Transparency can alleviate poverty

By George Soros

(コメント) 資源が豊富に存在することで,逆に,政治が不安定化して住民が貧しくなること(「石油の呪い」など)を克服するには,まず透明性を高め,政府に説明責任を求めることだ,とGeorge Sorosは考えます.アフリカであれ,中東であれ,ラテン・アメリカであれ,ロシアなどの旧ソ連圏であれ.そのような統治の改善を促すには,国際的な監視と支援が必要です.特に,そのためにイギリス政府が立ち上げたthe Extractive Industries Transparency Initiative (EITI)という組織を紹介しています.


BG March 16, 2005

Cleaning up coal

BG March 18, 2005

Fading hope on the Arctic

BG March 19, 2005

Save our greenspaces

By Patrice Todisco

(コメント) ブッシュ氏が環境戦略に積極的・・・? 京都議定書に変わる枠組みを示す,というブッシュ政権には,純粋な環境保護の目的よりも,国際秩序の改変を担う指導権争いが重要なのでしょうが.


March 18 (Bloomberg)

First Botswana, Now Japan Lags Burkina Faso

William Pesek Jr.

(コメント) 日本には回復しかかった経済を再び抑え込むという特異な才能があるらしい,とWilliam Pesek Jr.は驚嘆します.

かつてアフリカのボツワナよりも低い債券格付けをムーディーズが日本の国債に与えたことにショックを受けて,小泉首相は改革を断行してきました.しかしライブドアの騒ぎなどは,日本がどれほど変わったのか,という疑問を海外の投資家に生みます.UNCTADの直接投資に関する推計によれば,直接投資の順位で日本は世界の132番目であり,それはアフリカの内陸国Burkina Fasoとバングラデシュとの間です.

日本に直接投資が増えることは,1億2000万人の将来にとって重要ですが,現状を変えたくない官僚や企業家には好ましくないことです.そして,それを決める政治家たちにも.

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The Economist, February 26th 2005

Argentina’s debt restructuring: Screeching to the precipice

The Economist, March 5th 2005

Argentina’s debt restructuring: Tough deal

Brazil: The dangers of tax and spend

Argentina’s debt restructuring: A victory by default?

(コメント) アルゼンチンの2001年の通貨・経済危機に関する分析と,最近の債務組替えに関するThe Economist考察です.

危機に至る過程は明確です.1991年にカバロ経済大臣が導入した「兌換法」によるインフレ抑制は大成功し,国際資本市場で高利回りのアルゼンチン債券は好まれ,大量の投資が殺到したのです.好景気とインフレは産業の競争力を奪いましたが,経常赤字を資本流入で賄い,ドル建の債券を発行し続けました.

しかし,1998年8月にロシアがデフォルトに至り,ブラジルも通貨を切下げました.アルゼンチンの景気は悪化し,資本流入は止まって,財政赤字と経常赤字を増税や金利の引上げで借り替えるしかなかったのです.兌換法によって政府は通貨を切下げることも,金融を緩和することもできず,不況によって物価や実質賃金を低下させるしかなかったわけです.ところが,それが税収を減らし,さらに財政赤字を拡大して,しかもドル建の債務負担を重くしました.それは持続可能でない,アルゼンチンは決して債務を支払えない,と分かってからも,政府はデフォルトの時期を引き伸ばし続けたのです.結局,さらに大きな債務を負ってデフォルトに至りました.

投資家は逃げ出し,組合や失業者の抗議活動が街頭を占拠し,地方政府は勝手に赤字を続けていました.預金者はドル預金を引き出そうと銀行に押し寄せ,・・・預金封鎖の挙句,大統領と内閣が辞職したのです.

アルゼンチンは国内でも国外でも,IMFや外国の投資家,銀行,国内の預金者,債券保有者,要するに,すべてに対してデフォルトしました.ドル建で保有されていた債権や債務をペソ化する際も,不合理な方法で異なった換算レートを押し付け,銀行システムがほとんど停止します.

The Economistは,今後とも,デフォルトが国際金融システムの一部であり続ける,と確認します.しかし,それは正常な過程ではなく,債務の組替えが秩序正しく行える方が,債権者にも債務者にも良いでしょう.IMFはそれを促す役割を積極的に果たすべきです.債務の切り捨ては,その国の成長と財政黒字によって新しい債務を返済する能力に依存します.IMFはこれを指導し,監視するのです.

IMFが債務組替え交渉に関与しなかったのは,彼ら自身が破綻の過程に手を貸し,今も最大の債権者であるからです.民間債務が切り捨てられるほど,IMFに返済する交渉は容易になるでしょう.ところが,なおもキルチネル大統領はIMFへの返済を拒み,デフォルトによって脅しています.The Economistは最大の株主であるアメリカ政府が明確な方針を示すべきだ,と考えます.

投資家の記憶は短いことで有名です.確かに資本が豊富な国から資本が不足している国に,国際的な投資が行われることには理由があります.ファンド・マネージャーたちはインデックスから外れた運用によって利回りの低下させ,解雇されたくはないでしょう.新興市場では再び金融緩和と潤沢な流動性が満ちています.政治家たちは,突然の資本移動の逆転に準備することもなく,公共投資や選挙対策に熱心です.ブラジルに関する記事は,その危険を伝えています.

さて,ドル化ではなく,切下げと債務不履行に至ってから,アルゼンチン経済はどのように回復し,債務を組替えたのでしょうか? 大幅な切下げは特に農産物の輸出を伸ばしました.極端な不況こそが,生産力の余剰を生み出し,その後の回復を支えたのです.デフォルトや債務切捨てを誇るキルチネルの勝利宣言は,自分のことしか考えない,間違った評価です.


The Economist, March 5th 2005

Democracy stirs in the Middle East

India and China: The tiger in front

Rebuilding failed states: From chaos, order

Economics focus: Old before their time

(コメント) 中東の民主化と,インドと中国の比較,破綻国家の再建,そして欧米の経済パフォーマンスと改革に関して,The Economistは論理的,具体的に考察しています.面白そうですが,通読する時間がありません.

ブエノス・アイレスでは,FIELという研究所を訪問したとき,The Economistが受付にありました.私はこの研究所のBour所長とCristini主任研究員が語ることに最も感銘を受けました.