IPEの果樹園2005

今週のReview

2/28-3/5

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   日本の右傾化 :日本政府の自己診断について,世界は十分な理解を示すでしょうか?

2.   ブッシュのヨーロッパ訪問 :アメリカとヨーロッパとの間に広がる,冷めた,大人の関係

3.   北朝鮮 :アメリカや中国に依存せず,日本が6カ国協議による解決を進めることです.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune, JT:Japan Times, CSM:Christian Science Monitor


NYT February 17, 2005

The Theory That Self-Interest Is the Sole Motivator Is Self-Fulfilling

By ROBERT H. FRANK

(コメント) 経済学者は合理的か? もし世界の大部分は合理的な決定によって説明できる,と信じているなら,彼は合理的ではない,というわけです.

最も良いワインをどうやって決めるのか? それは品質と価格だけでなく,何に使うかによります.あるいは,大統領選挙で誰に投票したか? あるいは,男性生物学者は・・・


FT February 18 2005

Koizumi visit to shrine enraged many in Asia

By Steven Wong

FT February 18 2005

US and Japan to renew joint security pact

By James Harding in Washington and David Ibison in Tokyo

FT February 18 2005

Lunch with the FT: Let sleeping gods lie

By David Pilling

FT February 23 2005

Fewer Japanese

International Herald Tribune Thursday, February 24, 2005

Pouring oil on the East China Sea

Mark J. Valencia

JT Thursday, February 24, 2005

Finding Japan's place in the world

(コメント) 日本の政治的な動向について,海外のメディアは不安を感じているようです.日本の保守派の政治家は,しばしば靖国神社に参拝しますし,韓国や中国に対して侵略したことや,南京虐殺に関する事実の捏造を強く否定します.それは以前から繰り返されてきましたが,再びアジアにおける政治的な争点になるのでしょうか?

東条英機の孫がFTの記者とパレス・ホテルで昼食を食べながら談笑?しています.最近の日本の政治家には,決まって,保守的な理解を反復する,という傾向か,作戦が見られます.英霊について,天皇について,中国の捏造について,・・・ 中国や英米からの批判に十分に答えているとは思えませんが,国内には浸透していきます.

私は歴史家ではないし,軍事史家でもないので,日本のアジア諸国に対する侵略行為を断定的に評価しませんが,虐殺と呼ばれるような非戦闘員への大量殺戮はあったと思います.そして,どのような戦争も,その時代の支配者の政治目的を掲げて戦われたでしょうが,今更,彼らを「日本」の名の下に私たちが(まるで仲間を庇うかのように)弁護するのは間違いではないでしょうか? 過去の戦争を繰り返さないためにも,諸外国だけでなく,むしろ自国の戦争に関して,多くの資料や証言を集め,批判的に検討しておくべきだと思います.異なった意見が諸外国から寄せられるのは当然であって,いいじゃないですか,一緒に研究すれば?

まして死者を神秘化して判断を避けたり,神社に祭って政治的に利用したりすることは,これも世界中の国で行われている習慣ですが,邪悪な意図を秘めた,間違った行為でしょう.むしろ,それぞれの死者がそれぞれの近親者や縁故者に記憶され,さまざまな宗教的祭事において追憶されるままにしておくことを認めると表明するなら,政府は他国の干渉を排除できたはずです.なぜ政治に囚われた死者を解放してやらないのでしょうか?

日本は高齢化し,エネルギー不足に備え,アジア諸国と資源や領土をめぐって軍事衝突が起きることに積極的に備えるために,安保条約を改訂しなければならないのでしょうか? 私は,どうせ改訂するなら,何かに憑かれたようなブッシュ政権にばかり固執し,その恐怖心や軍事的威信に振り回されず,彼らの意図を超えて,もっと長期の平和条約を目指して欲しいと思います.

すなわち,安全保障も多角化することです.


FT February 18 2005

Real new jobs, not 'McJobs'

フランスの政治化たちはアングロ・サクソン型の「ジャングル資本主義」を非難するのが好きです.そして,自分たちの社会的結束がもつ美徳を吹聴します.しかし,過去10年間のほとんどで失業率が10%を超えた経済について,結束など何もありません.フランスの失業水準とは,社会的な災難であり,政治的には憤慨であり,経済的な浪費なのです.

何年にも渡り,政府はその問題に手を焼いてきました.労働者の早期退職や,週35時間労働制を導入して仕事を「分かち合う」不毛な試みもありました.実際には,こうした改革は経済の「インサイダー」が持つ特権を強め,「アウトサイダー」を貧しくするものでした.また年金システムに過大な負担を招き,課税ベースを失って,財政に甚大な被害をもたらしました.

しかしながら,遅れたとは言え,フランス政府は現実的な労働政策を採用するつもりです.より弾力的な労働市場が仕事の機会を増やすでしょう.そして経済を活気付けます.

過去において,フランス政治家は家政婦や介護のような仕事を「マック・ジョブ」として軽蔑していました.それらはしばしばパート・タイムで,賃金が安く,労働者の尊厳を損ないます.しかし,他のヨーロッパ諸国が示す教訓とは,失業者をこのレベルの仕事に就かせて,生活費や社会保障を所得補助や福祉給付によって確保する方が良い,ということである.政府支出は既に裕福な者にではなく,貧しい労働者階級に振り向けるべきだ.

政府の良い意図は,今や,効果的な実施と見合うようになった.雇用手続きを簡単にし,給与からの税金徴収を減らし,職業訓練を行う.家内サービスは市場に反応して増大してきた.過剰な規制や官僚の介入が市場の活力を削ぐのではないか,という不安がある.労働規制の緩和が必要であろう.

フランス政府は規制されない労働市場の創造的な潜在力を活かすことも学ばねばならない.しかしまた,支援を必要としている「アウトサイダー」を助けるために,巨大化した福祉国家を再編する積極的な介入を政府は行うべきだ.


The Guardian, Friday February 18, 2005

Spot the differences

Mark Tran

International Herald Tribune Saturday, February 19, 2005

U.S. hegemony has a strong foundation

David H. Levey and Stuart S. Brown

FT February 20 2005

Wolfgang Munchau: US must see Europe as an entity

By Wolfgang Munchau

LAT February 20, 2005

Dubya Does Europe

By Ivo H. Daalder and Charles A. Kupchan

(コメント) Mark Tranは欧米間の懸案として,イラン,地球温暖化,NATOとイラク,中国への武器輸出解除,国際刑事裁判,援助の増額,などを指摘します.

悲劇を予想するカサンドラたちにとって,アメリカのヘゲモニーは余りにも外国の資本,対外債務に依存していると見えるでしょう.もし投資家たちが,突如,その投資を引き上げたらどうなるのか? ・・・と.David H. Levey and Stuart S. Brownは,そのような心配を一掃します.

アメリカが依存しているのは,ますます拡大する経済であり,ますます前進する技術革新です.それゆえ,外国の投資家たちがアメリカを目指す勢いは妨げられない,と考えます.さまざまな統計的な処理が不適当な比較をもたらしています.例えば経常収支の継続的な赤字も,弱さではなく,強さの現れだ,と言います.ドル高や成長率格差は,他国に黒字をもたらし,アメリカの経常収支赤字に繋がります.アメリカ企業の強さや財務省証券への安心感は,投資を集めるのです.

Wolfgang Munchauは,同じマインツで行われた父ジョージ・ブッシュの演説を思い起こします.その中で,ブッシュ元大統領は冷戦終結を記念し,ドイツとの新しいパートナーシップを提唱して,「特別な関係」を失うかもしれないイギリス政府・官僚を心配させたのです.しかし今回のヨーロッパ訪問を,息子のブッシュ氏はブリュッセルで始めました.

ジョージ・W・ブッシュ現大統領は,9・11とイラク戦争によるとは言え,フランスだけでなく,ドイツとの関係も悪化させ,もしイタリアのベルルスコーニが次の選挙で負ければ,ヨーロッパに支持者を失うでしょう.それゆえ,ヨーロッパに新しいパートナーを探すべきではなく,むしろEUとの新しい関係を築くべきだ,とMunchauは考えます.どれほど個々の国が反米感情や国家主義的な対抗関係を煽っても,EUは大西洋関係の重要さを冷静に見ることができるからです.

Ivo H. Daalder and Charles A. Kupchanも,アメリカ政府はヨーロッパ内部の軋轢を利用しようとせず,むしろEUを強化して,その外交政策の統一や軍事展開力の増強を指示するべきだ,と主張します.こうして,文字通り,EUをヨーロッパ合衆国に向かわせるのです.

しかし,米欧関係を回復するには,イラク,イラン,イスラエル・パレスチナ関係など,多くの懸案で打開策を示すとともに,ヨーロッパの指導者たちがEUの強化を,アメリカに対抗してではなく,アメリカとともに世界を平和で繁栄する道へ導く姿勢により,その市民たちを魅了しなければなりません.

WP Sunday, February 20, 2005

The Limits of Reconciliation

By Jim Hoagland

FT February 21 2005

Europe must focus on more than US's weaknesses

By Lawrence Freedman

The Guardian, Monday February 21, 2005

Three reasons why the US and Europe won't make up

Niall Ferguson

(コメント) ブッシュ氏のヨーロッパ訪問を解釈する論説は,複雑さへの理解と,慎重な肯定,そして,屈折した歓迎もしくは諦めを示します.

例えば頑固な保守主義を維持したまま,1972年に,ニクソン大統領は毛沢東が文化大革命を進める中国に行くことができました.同様に,ブッシュ氏が反米主義のヨーロッパに行っても,成果を挙げることもできるはずです.世界は3極に向かうでしょう.アメリカとEUと(日本ではなく)中国が,その対立や協調を通じて国際秩序を改変します.つまり,今後はヨーロッパが中国訪問を計画しているわけです.

WP Monday, February 21, 2005

Say Yes To Europe

By Sebastian Mallaby

The Guardian, Tuesday February 22, 2005

Bush must decide whether he is ready to be a Bismarck

Martin Kettle in Brussels

The Guardian, Tuesday February 22, 2005

Take your partners for the European waltz

Simon Tisdall

International Herald Tribune Wednesday, February 23, 2005

American needs meet German ambitions

Gunther Hellmann

BG February 23, 2005

Neocons fret over tilt to Europe

(コメント) 冷戦などの歴史を描いた重要な歴史家John Lewis Gaddisは,ブッシュ氏をビスマルクと比較します.ブッシュ氏が,危機を経て,ヨーロッパの秩序を維持したビスマルクと同様の思慮と能力を示すでしょうか? もちろんブッシュ氏が,世界の警察官になりたいのではなく,アメリカの危機管理に徹するだけであれば,それをヨーロッパがとやかく言う筋合いはないのです.

あるいは,ブッシュ氏も華麗にヨーロッパのワルツを踊れるのか? まず手始めに,中東和平や石油,イラク復興の経済プロジェクトに,ドイツの野心を取り込む? あるいは,ネオコンが言うように,ヨーロッパ政治に関わるのはアメリカの災厄に過ぎないか? ヨーロッパはNATOを解体し,アメリカの影響力を排除することが目標だ.ヨーロッパ憲章やヨーロッパ軍など許してはならない.アフリカ全域を支配し,中東を狙っている.・・・?

しかし,Robert Kuttnerにとって,ヨーロッパの挑戦はアメリカと異なるモデルを世界に示したことです.アメリカの保守派がそれをバカにしてきたにもかかわらず,そこにアメリカ自身が学ぶこともあるのです.イスラム教の大国トルコを平和的に民主的な制度へ統合し,貧富の差を抑制し,財政的な規律を守り,アメリカよりもはるかに多くの貧しい人々を社会的に統合し,衰退地域や産業の再生を促しています.


NYT February 17, 2005

What Does Alan Greenspan Want?

NYT February 17, 2005

Three-Card Maestro

By PAUL KRUGMAN

Feb. 22 (Bloomberg)

A Layman's Guide to a Q&A With Alan Greenspan

Caroline Baum

(コメント) グリーンスパンに関する記事です.上院銀行特別委員会で彼が証言したからです.彼は社会保障制度を民間勘定に移すことを,慎重な言い回しで,支持しました.

KRUGMANは,またやったな,とグリーンスパンを攻撃します.ブッシュの減税案についてもそうでした.彼は明確に支持したわけではなく,さまざまな条件を示したに過ぎませんが,議会を説得する際に,グリーンスパンが認めた,という有効な口実を与えたのです.正し,今回は,一切の正当化を行っていない,と.

これは彼らの作戦です.スリー・カードを集めるために,極端に暗い予想ばかり振りまきます.しかも,「民営化では社会保障の財源不足を解決することにはならない.」と言いながら,「一般的なモデルとしては,それが解決をもたらす種子になるかもしれない.」と,有意義な発想であるという根拠の無い印象を残すのです.


NYT February 17, 2005

Spare a House, Save the Peace

By WALTER ISAACSON

LAT February 22, 2005

Brave Use of Land-for-Peace

(コメント) ISAACSONは,the Aspen Instituteの幹部です.ガザ地区からイスラエルが占領を撤退する際,入植者の建てた住宅や温室施設,道路などがすべて破壊されて行きます.もしそれを破壊するのではなく,復帰するパレスチナ人のために残しておくことができたら,その後の復興を助けるでしょう.停戦や撤退ではなく,本当に必要なのは再建と共存だからです.


LAT February 18, 2005

FDR's 'Forgotten Man' at Risk

By Jonathan Alter

ブッシュ大統領の社会保障制度改革は今のところ上手く行っていないが,彼が一日や一週間のニュース・サイクルではなく,歴史のサイクルに自らの名を刻むような,長い戦いに参加したことを忘れないことだ.問題は,ニュー・ディールが示す全ての考え方を破棄することにある.

ホワイト・ハウスの鍵を握る戦略家,Peter Wehnerの最近のメモは雄弁に語る.「この60年間で始めて,社会保障制度の戦いにわれわれは勝利するチャンスを得た.われわれはこの国の政治・思想的な全領域を転換するのに手を貸すのだ.」

ホワイト・ハウスはこのメモの流出を嫌うだろう.というのも,ホワイト・ハウスは,オーウェル的な論法で,ブッシュ氏はニュー・ディールの更新を求めているだけだ,と主張しているから.しかし,その論争の歴史を見れば事実は全く逆だ.

ニュー・ディールは,フランクリン・D・ルーズベルト(FDR)がニューヨーク知事のとき,1932年の民主党大統領候補指名を受諾する演説で使い始めた言葉だ.それはもともと何でも取り込んだスローガンでしかなく,曖昧なリベラルの公約であったが,すぐに明確なイデオロギーとなった.

その当時は多くの民主党員でさえ,彼が「忘れられた人」と呼ぶ者を擁護するFDRの考えを,唾棄すべきものと嫌っていた.

たとえば革新的なAl Smithは,その後の共和党によるFDR批判である,階級戦争を煽る,という非難を投げた.フーバー大統領は,共和党員であったが,多くの点で,今日の基準からは革新的な人物であった.すなわち,第一次世界大戦中に人々の困窮を救う組織的な試みを進めたことで有名であるし,財政を均衡させるために増税することを好んだ.しかし彼は,連邦政府が誰に対しても,たとえ老人に対しても,まともな暮らしを保障するという考えを嫌った.それはビジネスや慈善団体の仕事であった.彼の感覚では,アメリカ人は自身の運命に責任を持つ船長であるべきだった.

ニュー・ディールの鼓舞した考え方は全く異なっていた.それは,われわれ全員が互いに何かを他者に負っている,という新しい社会契約であった.

ニュー・ディールの大部分は,慎重な増税により,その資金を農家や住宅が閉鎖されるのを防ぎ,低金利の融資で人々が中産階級に戻れるように助けた.その中心にある社会保障制度は,高齢者が人生の終盤にアメリカン・ドリームの一部を所有できたと確実に感じられるようにした.ある意味で,「所有社会」を発明したのはルーズベルトだった.税収は「あなたのお金」ではない,「われわれのお金」である.たとえば80代の老人になって,食べるためにドブさらいをしなくても済むように,道徳的な欠陥を正す手段として,その金を使う,と.

今日,こうした言い方をするのはどうしようもなく時代遅れの芝居だ.しかし社会保障制度は1935年に成立してから非常に高く国民から支持されたため,共和党員たちも支持者に加わった.その後の5人の共和党大統領候補たち,Alf Landon, Wendell Willkie, Thomas Dewey, Dwight Eisenhower, Richard Nixonは皆,反対意見を和らげ,ビジネス界に有利な政府を主張したがニュー・ディールの前提は受け入れた.

共和党でさえ社会保障を選挙公約に掲げるようになったが,ロバート・タフツ,バリー・ゴールドウォーター,ロナルド・レーガンのような戦闘的保守派は,ニュー・ディールの大部分を自由な企業システムに対する脅威と見なした.新聞王のハーストWilliam Randolph Hearstが「ロー・ディール “Raw Deal”」(不当な取引)と呼んで攻撃したように,その有毒さはFDRの遺産が権力に座り続けているという共和党の強い不満となっていた.こうした不満はマーカーシー時代の苛烈さともなった.また反共が共和党に有利に働いた.なぜなら,ある意味で,共和党のニュー・ディール批判は,それを社会主義や共産主義のコアである,と主張したから.

しかしFDRの死後,彼の人気は非常に高く,まともに非難することはできなかった.保守派の都市伝説が誕生し,最近ではFox NewsのBrit Humeが広めたように,ルーズベルトなら,今,30年を経て,社会保障制度を民間勘定に転換したいと思うだろう,というものだ.(それは全くの嘘だ.彼は標準的な社会保障制度の上や下に自発的な退職保険で保管することを好んだだろう.)

有権者たちは社会保障制度を愛しているが,保守派の政治家は嫌う.彼らの仲間内では,不満が渦巻く.レーガンの伝記作家Lou Cannonは,レーガンが「社会保障制度はポンツィ・ファイナンス(ねずみ講)だ,と軽蔑していた」と書いた.

1964年にゴールドウォーターが敗北し,レーガンは1976年にジェラルド・フォードに敗退した.この問題に触れれば死に至る.大統領となったレーガンは,給付を削ろうと強硬策を取ったが,その後は諦めて,むしろ制度を強化した.今はじめて,われわれは進んでニュー・ディールの国民合意をすすんで掘り崩す大統領を得たわけだ.

ブッシュ氏はそれを直接になしえない.FDRの仕事は今も余りに尊敬されているから,ブッシュ氏は自分の提案を社会保障制度の立て直しだと偽った.しかし,彼の考えはルーズベルトと180度向きが違う.

ニュー・ディールはリスクに対して,政府が厳しい運命の変転から不利益を被る人々を守ると知らせることで,安心感を与えた.ブッシュ・ディールはリスクを拡大し,1920年代以来いかなるときよりも,予測困難な市場の力に翻弄される人々に,ますます不安を与えることで自ら防衛作を取るように仕向ける.


ST Feb 19, 2005

Why Kyoto pact won't do

By Janadas Devan

(コメント) 近い将来について,多くの被害や経済コストが計算されています.地球温暖化の重要性とそれを解決手段として,京都議定書はたとえ出発点ではあっても,全く不十分なものであることを指摘しています.それは特に,アメリカと中国,ロシア,インドが排出量規制に参加していないからです.それが改善されなければ,地球はフライパンの上で焼かれます.


WP Friday, February 18, 2005

The Price of Low Prices

By Eugene Robinson

NYT February 20, 2005

Manufacturers Try to Thrive on the Wal-Mart Workout

By DAN MITCHELL

(コメント) グローバリゼーションの代表と言えば,トヨタより,ウォル・マートです.その経営には賛否両論があります.価格を破壊し,雇用を破壊し,中小店舗やコミュニティーを破壊する? あるいは,ウォル・マートが新しい製造業をもたらすでしょうか?


JT Saturday, February 19, 2005

Diaspora bridges China and ASEAN

By ERIC TEO CHU CHEOW

FT February 21 2005

Wages key in narrowing China’s income inequality

By Arthur Kroeber

(コメント) 中国経済成長の影響は所得格差を拡大しています.それは,人口移動や賃金格差によって,国内の地域間に発展を波及させます.さらに中国は,東南アジアにも,華僑を通じて直接に影響を及ぼします.


NYT February 19, 2005

Picking a World Bank President

FT February 21 2005

World Bank choice

(コメント) IMFはヨーロッパ,世銀はアメリカ,という戦後国際秩序の合意は,いかにも時代遅れです.

名前のあがった候補者です.Ernesto Zedilloメキシコ元大統領,Fernando Henrique Cardosoブラジル元大統領, Gordon Brownイギリス蔵相, Trevor Manuel(南アフリカ), Leszek Balcerowicz(ポーランド),Kemal Dervis(トルコ),さらにJeffrey Garten (Yale大学), Bill Clinton元アメリカ大統領,Bill Gatesマイクロソフト会長,もどうか? 共和党からはJohn Taylor元財務副長官が噂されます.・・・日本からは名前はあがりません.


NYT February 19, 2005

The Boss in the Machine

By ELLEN ULLMAN

ST Feb 20, 2005

The book as we know it is near extinct

By Janadas Devan

(コメント) 攻殻機動隊では「電脳化」が進んだ社会を前提しています.それはインターネットと頭脳が直接にリンクし,フル・ヘルメットのゲーム機を体内に埋め込むとしたら,できそうな気がします.しかし,既にパソコンを開けると,ときに誰かがその中身を検索して,新しい内容を差し替え,あるいは,新しいプログラムに書き換えますか? などと尋ねて来ることに遭遇します.私たちの頭脳を書き換えることも,きっとそのうち推奨されるのでしょう.

ULLMAN は部屋のドアに"Do Not Disturb"のサインを掛けておく,と言います.

そして本は消え,読書する習慣もなくなるのでしょうか? Janadas Devanは叫びます.「読んでおくべき全ての古典が,全ての推理小説や恋愛小説が,サイエンス・フィクションや歴史読物,演劇,辞書,世界地図,新聞,ニュース雑誌,ジャーナル,それら全てが,たった5センチの厚さのA4サイズ・モニターを付けた,持ち運べるキットに入ってしまうなんて・・・!」


NYT February 20, 2005

Rogue Dollar

By ROBERT SKIDELSKY

ブッシュ大統領は,もしドルの将来について進んで議論することを示したら,ヨーロッパ人たちを大いに喜ばせるだろう.アメリカは世界で唯一その通貨価値に無関心であることを公言している国である.経常赤字を続ける国は,通常,その政府が,事実上は強制的に,国内消費を削らされる.しかし今のところ,アメリカはその浪費癖に対して他国が経済を調整してくれると高をくくっている.すなわち,ヨーロッパ陣はその輸出を犠牲にして通貨を切上げ,中国人は無制限に価値の失われて行く公的債務を購入し続けている.

しかし,こんあことは続けることができないし,続けるべきでもない.真実は,一国の為替レートを市場の力に任せてしまうには重要すぎる,ということだ.通貨の調整についてルールや合意に従わないなら,1930年代に起きたように,通貨戦争が勃発するだろう.

外交政策以上に,通貨問題で一方主義は受け入れ難い.アメリカは,無法の大国ではなく,同盟の指導者として行動し始める必要がある.そして大西洋同盟の健全さは,選択的な追加の贅沢ではなく,安全の核心なのだ.


NYT February 20, 2005

Four Strong Emerging Markets. But How to Play Them?

By GERALDINE FABRIKANT

FT February 22 2005

Gold rush may be a mirage

By Gordon Orr

Feb. 23 (Bloomberg)

Tom Wolfe's Crumbs Hard to Find in Asia

William Pesek Jr.

(コメント) BRICsに関する投資問題の考察です.ブラジル,ロシア,インド,中国は,将来の成長と市場が大いに期待されています.もしそれが本当に実現するとしたら,高利回りと通貨の増価が期待できるため,世界の投資家はこうした国の投資機会に殺到するのでしょうか?

しかし,それらの国の資本市場は,まだ十分外資を吸収できる条件にないようです.他方,日本を始めとするアジアの中央銀行は,通貨危機を経てから,急速に資本市場との関係を成熟させつつある,とWilliam Pesek Jr.は評価します.


FT February 21 2005

The Six Parties must act together

By Stephen Bosworth and Morton Abramowitz

JT Monday, February 21, 2005

Seoul's survival hangs on U.S. restraint

By TOM PLATE

International Herald Tribune Friday, February 25, 2005

Get China and South Korea on board

Ian Bremmer

International Herald Tribune Friday, February 25, 2005

The real threat to Kim

Young Howard

JT Thursday, February 24, 2005

China can't use its leverage

By JOHN PARK

(コメント) アメリカは本当に北朝鮮を攻撃しないでしょうか? 私はそう思いません.アメリカ政府は,自国民の安全保障にのみ強い責任を感じています.そして,たとえ東アジアで紛争を起こすような北朝鮮施設や政府への攻撃を企てても,アメリカ本土に報復する国はないでしょう.北朝鮮が保有するミサイルの射程距離内に首都がある,韓国,中国,日本が,朝鮮半島から核兵器を廃棄する問題に,アメリカが攻撃を検討する事態の先に進む必要があるわけです.

時間が経てば,核兵器の実験を行うでしょう.各国バラバラではなく,6カ国協議の枠組みがその時間と競争して打開策を見出すべきです.そして北朝鮮は,アジアの民主主義と経済成長を人質にとっているわけです.

他方,北朝鮮の政権崩壊も時間が勝負です.その政治指導部がいつまで飢餓や人権蹂躙を正当化できるのでしょうか? おそらく,たとえ強固な独裁体制であっても,内部の反対派や路線対立,逃亡のリスクは高まるでしょう.軍事的な強硬策で援助を強要する事態も繰り返されると思います.

もし本当に中国が北朝鮮を罰するべきだと考えたなら,台湾と違って,即座に行動するかもしれません.そして,北朝鮮指導部が中国を核兵器するとは思えず,核による地域紛争も恐れないのではないでしょうか? むしろ,アメリカ軍の影響力が東アジアから一掃されることを歓迎するかもしれません.

だから,一方的な制裁やアメリカへの依存を過信するのではなく,日本政府は6カ国協議を少しでも前進させるべきでしょう.


FT February 22 2005

Markets fall as Asian banks move away from dollar

By Song Jung-a in Seoul and Chris Giles and Steve Johnson in London

NYT February 22, 2005

Dollar Drops as Bank of Korea Looks to Buy Other Currencies

By CARTER DOUGHERTY, International Herald Tribune

FT February 23 2005

Lex: Central banks

NYT February 23, 2005

Dollar Plunges on Proposal by Korea Bank to Diversify

By CARTER DOUGHERTY

FT February 24 2005

Dollar scare reveals fragile support

(コメント) ブッシュ氏のヨーロッパ訪問に際して,ROBERT SKIDELSKYが最も憂慮したことの一つはドルでした.そして,韓国の中央銀行が準備資産を多様化するために,ドルの外貨準備を売るのではないか,という噂が世界の外国為替市場を動かしました.あるいはロシアやOPECも,ドル安が続けば,ドル以外での運用を増やすのではないか? あるいはアメリカではなく,中国の資本市場に投資が向かうのではないか?

韓国はすぐにドル売却のうわさを否定しましたが,市場の動揺は続きました.アジアの中央銀行はドルの外貨準備を倍増させ,1999年から2003年に倍増させ,その後も累積しているのです.誰かがこれを売り始めたら,という疑心暗鬼が既に生じています.

市場を不安定化しないためには,三つの条件が必要でしょう.@アジア諸国は介入を止めて通貨の増価を受け入れるか? A中国政府はドル・ペッグを修正するか? Bアメリカ政府はドル安に対する警戒と協調介入の意志を示すか? しかし,その場合,アメリカは国内政策の変更を議論しなければならず,見せ掛けの協調は投機を呼ぶでしょう.


NYT February 22, 2005

The Next 9/11 Could Happen at Sea

By JOHN S. BURNETT

BG February 23, 2005

The lure of bio-weapons

By Bernard Lown and Prasannan Parthasarathi

(コメント) 9・11以後,テロの想像力を軽視することは犯罪です.

たとえば海賊の出没する東南アジアの海上で,特に,石油を満載したタンカーが行き交うマラッカ海峡で,テロが起きれば,アジア経済から世界へ衝撃が走るでしょう.また,さまざまな生物・科学兵器がアメリカ本土の主要な都市でテロに用いられれば,その被害は9・11を容易に超えるでしょう.

その教訓をどうやって生かせば良いのか? JOHN S. BURNETT は,アメリカ軍が加わって,東南アジアの海上輸送路を守る地域的な協調体制が必要だ,と考えます.他方,ブッシュ政権は,技術的な優位と情報の支配,先制攻撃だけが安全を確保できる,と主張します.Bernard Lown and Prasannan Parthasarathiは,それこそが9・11の教訓を無視している,と言います.アメリカが生物兵器の分野で先端的な開発を行うことは,軍事的利用を競争的に拡大するでしょう.そして,どれほど先端技術や軍備に金をかけても,一握りのテロリストたちは旧式な生物兵器でも甚大な被害を出せるのです.


ST Feb 23, 2005

China sets pattern in quota-free market

By Linda Lim

WP Tuesday, February 22, 2005

We Must Lead the Way on Free Trade

By Naotaka Matsukata

(コメント) 繊維製品の自由貿易は,世界の経済システムを効率化することで,より大きな富をもたらします.しかし同時に,中国との競争によって衰退する多くの企業や地域が現れるのではないか,という不安は現実のものとなるでしょう.

なぜ中国の繊維製品は世界市場を席巻するのか? その主要な理由は,割安な人民元や政府の不公正な介入ではなく,中国経済自身のダイナミックな変化にあります.そして,中国と競争するにせよ,そのダイナミズムを取り込むにせよ,アジアでも自由貿易は支持されるでしょう.Linda Limは,その原則を正しく理解することで,将来を展望します.

アメリカにとっても,自由貿易の拡大は外交政策の一部として非常に重要です.そのことをロバート・ゼーリックの国務省への移動が示しています.まるでジェームズ・ベーカーVがレーガン政権でポストを移動し,プラザ合意を纏め上げたときのようだ,と思いませんか? アメリカが,ヨーロッパやアジアとの自由貿易圏を構想する可能性もあるでしょう.


ST Feb 23, 2005

Immigrants will prop up the US, not burden it

By Sunanda K. Datta-Ray

(コメント) アメリカへの移民は27%も減少し,他方で国外退去処分は45%も増えました.もちろん9・11の影響ですが,アメリカ経済にとって深刻な打撃になるでしょう.アメリカの科学者やエンジニアの5人に一人は外国生まれであり,熟練労働者や技術者の多くを移民が供給しているからです.

アジアにおいても,時間はかかるでしょうが,確実に移民が経済変化の一部として増大しています.それを阻止することや,国家が管理することは,他の地域と同様に,時代遅れとなるでしょう.


FT February 24 2005

Philippine fiddling

FT February 24 2005

Lex: Argentine bonds

(コメント) フィリピン政府は,アルゼンチンと同じ政府の財政破綻と債務不履行への道を進んでいます.そして,アルゼンチン政府は,返済を停止した1000億ドルの対外債務を,大幅な削減によって返済再開に向けて合意しつつあります.資本市場がこうした諸国をどのように扱うのか,誰にも予想できないでしょう.そして,それこそが国際資本市場の混乱の減点なのです.債務不履行と返済条件の見直しに関するルールや手続きについて,主要国と金融市場が認める国際合意が必要です.