IPEの果樹園2005

今週のReview

2/14-2/19

IPEの種

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   民主主義と自由 :次はイラン? 北朝鮮? イスラエル? 全ての国が核兵器を欲す?

2.   「暗黒の水曜日」 :イギリス保守党政権を見舞った歴史的不幸と,イギリス病克服の劇薬?

3.   不均衡をどう見るか? :協調して為替レートの安定化と調整政策を取るか? 統計的な誤解?

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune, JT:Japan Times, CSM:Christian Science Monitor


FT February 3 2005

Success based on merit is just so unfair

By Michael Prowse

もし社会的な移動性に対する障壁がなかったら,すなわち,もし誰もが生来の才能により社会的に上昇するチャンスを同等に持つとしたら,それは理想社会をもたらすだろうか? イギリスとアメリカの政策担当者たちに尋ねれば,そうだ,と答えるだろう.トニー・ブレアが労働党の党首になったとき,結果の平等よりも機会の平等に重点を移した.政府は包括的な学校システムを改善し,職業訓練や大学をより多くの人が利用できるようにした.

アメリカでは,機会の平等は,常に,暗黙の社会契約に含まれてきた.今,多くのアメリカ人が心配しているのは,この原則が妥当でないというより,実行されていないということだ.中産階級の上位が優良大学を独占し,アメリカの指導的な政治家たちは,ジョージ・ブッシュやジョン・ケリー,アル・ゴアのように,その多くが特権的なエリートの自己永続化という強い疑念をアメリカ人に抱かせる.

Michael Youngは,その論争的な本The Rise of the Meritocracyで,社会的な地位が人々の能力を正確に反映する社会(メリトクラシー)は,決して好ましいものではないだろう,と主張した.(こうした能力社会の)頂点を占める人々は,貴族制度(アリストクラシー)の頂点を占める人々よりも,その優位について苦しむことが少ないだろう.家族の経歴が重要な社会では,才能ある人々が社会に分散しており,多くの頂点にはその地位に値しない人々がいる.彼らは服従する者の多くに自分の能力が劣っていることを知っており,それによって謙虚さを学ぶだろう.

他方,真に能力主義が行われれば,頂点を占める人々がその高い地位を完全に自分の能力で得たと思うだろう.また底辺の人々はもう夢を話すことができない.「もし人生でもっと良いスタートを切れていたら,自分も首相になれただろう」,と.社会的な上昇に何の障壁も無いことが,まさに,彼らの低い地位をその個人的な劣等性を反映しているだけだという諦めにつながる.

Youngは,1950年代の社会主義的なイギリスについて書いていた.彼が恐れた能力主義とは計画された社会であり,心理テストで測って,学問的な能力を富や権力,地位に反映させて配分する社会だった.すなわち,IQテストによって,ソビエト式に職場を配分するのだ.知性は受け継がれるのであり,知的な親は知的な子孫をもたらす傾向があるのだから,エリートは再選産される,と警告した.事実,豊かで文化的な家族に育つことは常に有利であるから,才能と養育は相互に強めあうだろう.こうした自己永続的なエリートたちが,以前に増して,完璧に社会を支配する.優れた者は生まれつき社会を支配し,愚かな者は彼らに仕えるしかない.

これは恐るべき見通しであるが,こうした悪夢は今では当てはまらない,という者もいるだろう.民主主義的な資本主義が勝利したことで,市場型の能力主義が計画型の能力主義の欠点を一掃するはずだ,と.それは,多分,優越者による独占支配への恐怖を少し和らげる.しかし,アメリカが既に示しているように,富みも権力も地位も非常に不平等に分配されるだろう.

市場の勝者がしばしばどうしようもなく独善的であっても,その富や地位を自分の能力だけで説明できるとは必ずしも信じていない.高いIQは,決して成功の十分条件では無い.しかし,ほとんど常に必要条件である.大金持ちは頭が切れる.ただし学問的な秀逸さではない.彼らは社会的なスキルを身につける点で専門バカと異なるし,もっと横柄な性格である.他者を戦いにおいて圧倒する自身と欲望無しには,市場を征服できないのだ.

自然が与える能力にこれほど差があれば,能力に応じて上昇できることは有能な者に劣った者たちを支配させる誘因となるだろう.それこそがYoungの不平である.このことは,計画型の社会でも市場社会でも,同じように真実だ.もし市場競争で成功するのに能力が必要であり,それを子孫が継承できるとしたら,市場型の能力主義においても,エリートたちは永久に支配を継承できる.

競争的な社会は,Youngが考えたように,それ自体で良い社会ではない.逆に,才能ある人々は才能の乏しい人々の生活水準や地位を,再分配などで,相対的に改善する責務を担う.団結や親切といった価値観は,個人の生産性と並んで,高く評価されるべきだ.そして機会とは,単に社会的賞与を目指すレースで同じスタート・ラインに並ぶ権利を意味するだけでなく,その人の潜在能力を開発し,人生の喜びを公平に享受する権利である,と理解されるべきだ.


WP Thursday, February 3, 2005

Open Trade

(コメント) 貿易摩擦や経済分野の国際紛争を,準法廷的な紛争処理手続きによって解決する,という制度を確立することは,WTOのもたらした重要な革新でした.それは最初の十年で300以上の訴状を受け付け,80以上の判決を発しています.

しかし,紛争処理手続きには重要な欠陥があります.すなわち,その審議が非公開である,ということです.

判決は関係諸国の政府が認めれば公表されますが,その証言や審議は非公開であり,互いの政府だけで審議されるようです.すると,当然,疑念が湧きます.WTOは貿易を大企業の利益によって捻じ曲げてしまうのではないか? 審議は公表することが望ましいし,判決は過去の判例に従って決められるべきだ,と主張しています.

公開に反対する理由とは,メディアの注目を集めて,それがNGOなどの政治目的に利用される,というものです.しかし,審議を公開して,NGOの批判に答えることこそ,WTOがなすべきことです.また,貿易紛争にはそれぞれの言い分があって,一般的な過去の反例に縛られると,準法定的な機能が受け入れられなくなる,というものもありました.これは,暗に,貿易大国の反対するような判決は出せない,ということでしょう.

しかし,さまざまな二国間や大企業の弁護士が入り乱れた,複雑で費用のかかる訴訟が増えることこそ,世界貿易や小国の不利益です.WTOは自分たちが目指す目標について,世界の貿易関係者と小国から支持される必要があります.


The Guardian, Friday February 4, 2005

Flourishes of freedom

(コメント) 投票済みを示すイラク人女性とファルージャで殺されたアメリカ海兵隊員の母親とが,振付師の注文どおりに!?抱擁しました.ではそれを,ブッシュ氏は具体的な政策に反映させたでしょうか?

一般教書演説も,実体のないショーであった,と反対派は嫌悪します.「自由」と「民主主義」について聖職者を真似て人々に説諭するのは,国民が関心を示す社会保障改革を大雑把に称揚するほかは大きな時間を割いてその成果を誇示したイラクや中東で,そしてまったく触れもしなかったロシアや中国,ラテン・アメリカにおいて,自由と民主主義を拡大する具体的な政策を示す中で行うべきでした.そうでなければ,所詮,世界の似非政治家たちが喜ぶ「アップルパイ」や「母性愛」を,節分の豆のように振りまいたに過ぎません.


BG February 4, 2005

Onward to Iran?

By H.D.S. Greenway

(コメント) 世界最大のテロ支援国とブッシュ氏が挙げたイランや,核保有を誇示した北朝鮮.「イランはいつ攻撃するのか?」 それがライス国務長官に対する質問でした.

アメリカが鞭を持ち,ヨーロッパは飴を持つ,いわゆる「悪い警官,良い警官」という作戦は,外交として成果をもたらすために必要です.しかし,ヨーロッパが恐れるのは,アメリカ人が自由を情熱的に訴えることで,戦争を避けられなくなることです.IAEAのエル・バラダイ事務局長は,各国が同じ条件に従うように求めます.

イラクに対する軍事的選択肢の欠陥は,核施設がどこにいくつあるのか,確かな情報が無いことです.アメリカは既にイラク国内に諜報員を送り込んだ,と言われますが,イラクに続いて,もう一つの戦争を国民が受け入れることは無いでしょう.

アメリカが自由への革命的情熱に突き動かされるとしても,他方で,イラン国民は他国による侵略という歴史を共有し,アメリカの攻撃には聖職者たちと一緒に必ず報復し,その侵略を歓迎することなど無いでしょう.かつてソ連が,イギリスが,そしてアメリカがイランを支配しようとしたように,イラン国民はブッシュの「悪の枢軸」演説が自衛のために核武装する十分な理由であると信じているかもしれません.

Joseph Biden上院議員は,たとえイランがインドのように完全な民主主義国家であったとしても,インドのように核武装を欲しただろう,と言いました.世界が解決を求められているのはインドの情念ではない.それを核武装ではなく,非攻撃的な国際協定で満たすことだ,と.

もしイラン人の悪夢を和らげ,彼らの安全を有効に保障してやれなければ,アメリカもヨーロッパもイランが核兵器を持つことを止められません.しかし問題は,こうした平和的な解決の模索が,世界を善と悪に分割し,武力行使を有効だと信じる,現在のアメリカ政府が信奉する神学と矛盾することです.

The Guardian, Monday February 7, 2005

A nuclear Iran is not the problem

Peter Preston

WP Monday, February 7, 2005

Let's Not Make the Same Mistakes in Iran

By David Kay

(コメント) かつてウィンストン・チャーチルは,相互確証破壊(MAD:mutually assured destruction)により安全を保障するに至った自分たちのことを祝福しました.「安全は恐怖(テロ)によって頑丈な子供になった.それは殲滅を望む者たちの双子の兄弟である.われわれは漸く,その幸せに気づいたようだ.・・・」 敵が核兵器を持つなら,われわれも核武装しよう.もし核攻撃を受ければ,必ず直ちに反撃しよう.そうすることで,われわれはすべての紛争を死滅の恐怖によって凍結する,と.

しかし,アメリカが広島と長崎だけで使用した核兵器を,ソ連とともに,独占する時代は終わりました.核武装したパキスタンやイスラエル,ロシアに隣接するイランが,アメリカとMADを共有することは無いでしょう.自前の核兵器を持つことは多くの国民によって熱狂的に支持されます.しかし,外交的には,実質的な利益をもたらすわけではありません.

さらに,ブッシュの発想が問題です.彼の一般教書が示すように,アメリカだけが核装備を急速に改良し,アメリカだけのために安全保障を考えます.他方,ますます多くの貧しい諸国も核武装を望み,21世紀には核拡散の波が世界を覆うでしょう.核武装の廃棄は? イスラエルが憤慨して拒絶していることを,イギリス政府が真っ先に受け入れて範を示すだろうか? とPrestonは問います.日本やドイツ,オーストラリア,南アフリカ共和国.

そして今や,相互確証的なテロ化(MAD:mutually assured terrorization)の時代です.

議会でアメリカのイラク政策が間違った情報に依拠していたことを証言したDavid Kayは,その欠陥が正されないまま,再びイランを問題にしている,と警告します.イランとイラクの類似性は深刻です.再びIAEAが査察し,国連安保理が分裂し,アメリカが有志連合軍を組織して,イランに最後通牒を示すでしょう.既に亡命者たちは多くの「証拠」をアメリカ政府にもたらしています.この過程がイラクと同じ経過をたどらないために,David Kayは5つのチェックを求めます.

@     過去の事実は消せない.イラクは核施設において既に協定を犯して情報を集めている.核武装はいつでも可能であり,その知識を軍事攻撃や一時的な占領で取り除くことは不可能だ.イラクに対して安全保障と核の平和利用に関する国際合意に参加するよう求めるしかない.

A     亡命者たちがさまざまな情報と独自の計画,体制転覆を目指すのは当然だ.彼らにだけ依拠してアメリカの政策を決めてはならない.

B     IAEAの査察は有効であり,これを軽々に侮蔑して損なうべきではない.早急に,その査察能力の改善を図るべきだ.

C     政策担当者や政府高官が,証拠に依拠しない,過剰に修辞的な論争を煽動することは,政府の手を縛るだけだ.

D     安全保障政策をめぐる情報収集や政策決定を行う会議に,政策を正当化する失敗があった.こうした原因の究明や政策決定について,外部の目や声を反映させるべきだ.

イランの核武装は間違いなく世界の安全保障に対する脅威です.しかし問題は,むしろアメリカ政府がイランの核能力を正しく評価し,アメリカやイスラエルの短期的な軍事行動によってではなく,さまざまな手段を組み合わせた安全保障制度の一部に,それを埋め込むことができるか,ということです.

FT February 8 2005

We need a common policy on Iran

By Francois Heisbourg

(コメント) Francois Heisbourgが心配するのは,イランをめぐって大西洋の両岸で米欧対立が再燃することです.

アメリカはイランの政治体制を非難し,それが核武装することを強く非難します.他方,ヨーロッパはイランの政治体制を問題にせず,何よりも核拡散を防ぎたいと考えています.これは一見,国際社会が「飴と鞭」を使い分けているように見えますが,そうではない,とHeisbourgは注意します.イラクに手を焼いているアメリカの鞭は,イラクにシーア派体制を樹立したり,大規模なアメリカ軍の駐留を認めたりすること恐れるイラン政府にとって,中身が無い脅しです.他方,ヨーロッパがイランに提供できる飴は,WTO加盟や国際金融界への復帰は,アメリカがイランに対する制裁を続けている限り,意味の無い約束です.

北朝鮮と同じように,アメリカ政府は安全保障の約束を拒み,二国間での交渉を拒否して,対応を示さないという無策を対イラン外交の方針としてきました.このままアメリカがEUの交渉姿勢を支援せず,イラン政府の自主的な核開発延期を更新できないよりは,ヨーロッパが独自にイランに対して,IAEA監視下での「濃縮実験」を認める合意を模索するでしょう.そして,米欧間の亀裂が一気に加熱するかもしれません.


NYT February 5, 2005

Greenspan Says Trade Gap May Narrow

By ALAN COWELL

FT February 9 2005

Lex: US dollar

Feb. 9 (Bloomberg)

Greenspan Not Really Optimistic on Account Gap

John M. Berry

(コメント) なぜG7の前に,グリーンスパン議長はアメリカの貿易赤字が縮小する,などと予想したのでしょうか? もちろんこのとき彼は,ドル安や財政赤字などを意識し,アメリカ政府,他国の中央銀行,金融市場の反応,G7における協調策の模索,などを検討していたはずです.

貿易赤字が減る理由は,外国のアメリカ向け輸出業者が,アメリカ市場における販売価格を引き上げ始めたことを指摘しました.つまり,漸くドル安が調整機能を果たし始めた,というわけです.また,財政赤字を意識して,内外の投資家がアメリカの金融市場に慎重な姿勢を取るだろう,と.それでもアメリカ経済はそのダイナミズムと弾力性を失っていないから,調整に耐えられるだろう,というわけです.

GDPの6%に達するアメリカの貿易赤字は,既に持続不可能です.イングランド銀行のMervyn King総裁は,国際通貨制度が中国とアジアの中央銀行の介入によって機能不全に陥っている,と警告しました.しかし,中国の人民元切上げやアジア諸国の介入抑制がアメリカへの救世主として現れる見込みは小さいようです.

実際,為替レートの変化が世界の貿易不均衡を調整する役割は,条件次第で,国際通貨制度に期待されているはずです.しかしアメリカ商務省の統計では11月の貿易赤字額が603億ドルに達しました.ドル安にもかかわらず,輸入が増えて,輸出は減ったのです.

市場は経常赤字の性質を思案中です.それは循環的なものか,構造的なものか? ブッシュ氏が財政赤字の半減を約束し,グリーンスパン議長が経常収支より成長見込みに関心を移したことで,今年に入ってドルは4%増価しています.

しかし,ブッシュ氏が赤字を減らせるでしょうか? グリーンスパンが言うように,ドル安が経常赤字を減らすでしょうか? ドル安で逆に増える恐れもあるわけです.むしろ多くの専門家が,投資家のドル離れが本格的な始まるまで,経常収支の悪化が続くことを懸念しています.たとえば,国際通貨・金融問題のニュースや研究を網羅したホーム・ページを管理しているthe Stern School of Business at New York UniversityのNouriel Roubiniです.

グリーンスパンの経常収支楽観論は問題だらけです.まず,輸入額は輸出額よりも既に65%も多いのです.経常赤字がGDP比率を上昇させないためには,輸出は輸入の少なくとも半分以上速く増えなければなりません.しかし,実際は輸入の方が早く伸びたのです.また,同じ成長率を実現しているときでも,アメリカはその貿易相手国よりも輸入依存度が高いのです.つまりアメリカは成長率を落とさなければ貿易収支を改善できません.しかし,実際はアメリカの方が高い成長を実現しました.さらに,グリーンスパンは石油価格の高騰が貿易赤字を増やしたことを無視しています.これはドル安によっても抑制できず,むしろ増えます.

ドル安が市場価格に与える影響も,財政赤字の行方も,人民元も,予測するのは困難です.


WP Friday, February 4, 2005

Feeding the 'Crisis'

By E. J. Dionne Jr.

NYT February 6, 2005

Social Security's Future? First, Consider the Present

By DANIEL ALTMAN

(コメント) 社会保障制度についてまじめに議論しておくことはアメリカ国民にとって有益だ.しかし,ブッシュ大統領の一般教書はそのような議論を促していない,とDionne Jr.は批判します.彼の問題定義と解決策は対応していない.もっと素直に解決できることを,極端な民営化思想で論争している,というわけです.だから彼は「危機」を演出し国民の不安を煽るのだ.そして結局は,その切捨てを狙っている,と.民営化案で必要になる巨額の財政負担にも言及しようとしません.財政赤字で国民に偽ったように.

DANIEL ALTMANは,その長期的な破綻の有無を論争するよりも,それが現在の経済行動を変化させることで起きる現実の効果を問題にします.すなわち,もし退職後の年金が減ると思えば,人々は貯蓄を増やし,すなわち支出を減らし,現在の経済活動が縮小します.また,労働市場にも影響がある,と言います.なぜなら,現行法では低賃金の階層に年金を補助するために,人々将来の増税が予想されるからです.それは労働意欲を削ぐかもしれません.

要するに,将来の破綻を議論することは,現在の経済効果を狙うことに繋がるわけです.

Feb. 7 (Bloomberg)

Scrap Social Security Reform and Super-Size 401(k)s

John Wasik

BG February 7, 2005

No half-way measures

By William G. Shipman

WP Wednesday, February 9, 2005

Cut My Benefits

By Robert J. Samuelson

(コメント) 民間のさまざまな年金保険契約が既にあるのに,多くの者は追加の契約などしていない.政府が社会保障を民営化すれば,なぜ老後の暮らしが守れると思うのか? 政府が規制し,補助金を与える口座の取引が,市場を賛美する人々の理想に近づくとは思えません.むしろ,現在の累進的な制度を解体したい,ということでしょうか? 結局,財政的な負担が増えて赤字を増やし,将来は削減を求める?

世界中で年金や社会保障制度が破綻し,改革を議論しています.もちろん,アメリカも例外では無いはずです.市場による解決に委ねる,増税する,給付額を減らす,などは,反発を恐れて政治家が議論したがりません.そこで,給付額の調整方式を介して減額しようとします.さらに,さまざまな投資の形態を取らせて,給付額の減少を補える,と宣伝します.

人々が年金を準備する貯蓄の一部で国債を保有すれば,税金を支払うよりも給付額を増やせるでしょうか? なぜ自分の住宅や畑に投資しないのか? 国債が償還されるとき,その資金はどこから来るのか? 結局,年金用の国債投資口座は何も生み出しません.それは若者の減少で確実に失われる社会保障の原資について,好まれない解決策を先送りするだけです.そして政治家たちは無駄な論争に時間を費やします.

1935年にフランクリン・D・ルーズベルトが社会保障法案に署名したとき,これをカジノやオートバイ保険と同じようなものになるとは夢にも思わなかっただろう,と.しかし,年金と失業保険を組み合わせることで,ますます増大する退職者の生活を支えるために若者が所得を奪われる制度は,労働意欲を削ぎ,経済活動を損ないます.ましてや,貧しい若者が裕福な老人に貢がされる,逆立ちしたロビン・フッドでは困るのです.

こうした分配問題が背景にあることをリベラル派も保守派も明確にせず,それを良いことに,ブッシュ政権は「所有」や「民営化」により混乱と政治的な煙幕を利用します.


FT February 6 2005

Amity Shlaes: A dissident’s manual for democracy

By Amity Shlaes

FT February 7 2005

America can still achieve peace with honour in Iraq

By Richard Haass

(コメント) 自由で,民主的な,独立パレスチナ国家の創設に向けて,アッバスとシャロンの協力関係を築くためにライス長官はイスラエルと西岸地区に赴きました.ソビエトからの亡命者で,今はイスラエルの政治家であるNatan Sharanskyが唱えた「中東の民主化」がブッシュ氏を感動させたからです.

Sharanskyは,ソ連で反体制派として過ごした経験を中東に当てはめています.すなわち,市民を恐怖によって支配する独裁者がいる限り,民主化はできない.独裁者を排除することが最初に必要だ,と.妥協や宥和は有害なだけであり,無益です.国内の反体制派を支援し,彼らがたとえどれほど少数であっても,その拡大を図るべきです.

また民主化の過程についても,早期の選挙を否定します.選挙の前に「法の支配」が確立されていなければならず,報道の自由と市民社会の意識が広まっている必要があります.そのとき初めて恐怖政治は終わり,選挙が自由を制度化するだろう,と.その後に,われわれは他国においても自由を支援し,ベルリンの壁が崩壊したように,世界に自由が拡大するはずだ.アラブ世界も例外では無い,と.

オスロ和平合意も,結局,Sharanskyの主張を支持している,とAmity Shlaesは指摘します.アラファトは協定に署名したが,パレスチナ人は自由にならず,その後も独裁を続けた,と.2002年にSharanskyの講演を聴いたブッシュ氏は,その後のアラファトとの交渉を拒否しました.現状について,一般教書はエジプトとサウジ・アラビアに自由化を求めています.また,どれほど核兵器を蓄えてもソ連は崩壊したのであり,イランの政治体制は核兵器よりも先に倒すべきだ,と.

パキスタン政府を支持し,アフガニスタンやイラクの選挙を賞賛することはSharanskyのルールに矛盾します.もし今が1993年(ソ連崩壊)よりも1989年(ベルリンの壁崩壊)に似ているとすれば,それが今から大きく変わる.Sharansky思想は,不断に政治的な変化の可能性を鼓舞します.

他方,Richard Haassの論説は,同様に民主主義や自由との関係を重視しながら,アメリカと占領政策,暫定政府への批判を含んでいます.特に,もしアメリカ軍の駐留が長引けば,イラク国民のナショナリズムが強まり,反政府活動を支持するようになる矛盾があります.比較されるのは,ジョンソン大統領の長期駐留であり,ニクソン大統領とキッシンジャーの「ヴェトナム化」政策です.ニクソンはその後,この政策を失敗として破棄し,1975年の和平交渉を進めます.そしてアメリカ外交を戦争から解放する余地を得たのです.ソ連,中国,中東において,平和外交の成果を挙げます.

ブッシュ氏は,ジョンソンに学ぶのか? ニクソンの政策転換に学ぶのか?


FT February 6 2005

A 'G10' could help rebalance the global economy

By Kihwan Kim

ST Feb 9, 2005

Avoiding the looming currency crisis

By Jeffrey Garten

(コメント) 国際収支の不均衡が蓄積される世界は,将来に向けて不安定化と金融崩壊のリスクを蓄積しています.Kihwan Kimは,主要な三つの解決策を検討して,その欠陥を指摘します.

まず,アジア諸国が為替市場への介入を止めて,その通貨を増加させるべきだ,というヨーロッパやアメリカの主張です.しかし,アジアには協調して通貨を管理する制度や伝統がかけています.第二に,アメリカがその財政赤字や貯蓄不足を解消するべきだ,というアジアの主張です.しかし,アメリカの国内政治は財政赤字の抑制や為替レートの調整に向けた国際合意などに全く関心を示しません.第三に,ヨーロッパが独自に市場に介入し,ユーロ高を抑えてドル安やアジア通貨安を是正する,というヨーロッパの主張です.しかし,ヨーロッパが単独で世界の通貨秩序を決定できるというのは幻想です.

それではどうすれば良いのか? Kihwan Kimは,G7に中国と韓国を参加させて,G10を組織するべきだ,と考えます.なぜなら,アジア通貨を不均衡の調整に加えるためには,この二国が欠かせないからです.そして,G10において,三つの解決策のバランスを取り,将来に向けて成長の維持と対外均衡の回復を目指す,というわけです.

Gartenも,G7に中国を加えるよう求めています.なぜなら,もし中国を始めとするアジア通貨がこのまま調整に参加しなければ,ヨーロッパは不況になり,保護主義に向かうでしょう.中国は,為替レートの調整を拒むいくつかの理由を,国内政策で解消するべきだし,実際,このまま減価するドルに固定し続ければ,インフレを加速し,通貨投機と危機を準備するだけです.

中国は,主要通貨のバスケットに対して,ドルに対して切り上げられた為レートで再びペッグすればよい,と.


BG February 6, 2005

Darfur denial

The American Prospect Web Exclusive: 02.09.05

Stubborn on Sudan

By Mark Leon Goldberg

NYT February 10, 2005

Court of First Resort

By SAMANTHA POWER

(コメント) 住居が焼かれ,家督が奪われ,子供たちが惨殺されているスーダンについても,虐殺の認定,国際的な制裁,国連やアメリカ,関係諸国による介入が始まっています.人権保護や治安回復には,国際刑事法廷(ICC:the International Criminal Court)や国連組織が十分に機能しません.ブッシュ政権はアメリカ軍の地位を脅かすような国際法廷の利用に消極的です.イラクのように,北朝鮮のように,パレスチナ難民のように,アメリカが関与しても解決できるケースはわずかなのです.

確かに,ICCが有効に機能したケースも少ないでしょう.しかし,実際に裁くことによって,独裁者たちは虐殺という政治手段を行使しにくくなるはずです.


NYT February 6, 2005

Marking Down Bin Laden

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) ビン・ラディンの首に付けられた賞金が,2500万ドルから5000万ドル(約50億円)に引き上げられたそうです.FRIEDMANは,この額はまるで間違っている,と言います.むしろ,賞金を1ペニーに下げるべきだ,と.またザルカウィも,ピスタチオの実,一つでよい.

賞金額を上げても成果は期待できないだろうから.まず,こんな誇大妄想の殺人狂に大金を賭けて,その宣伝に協力してやるのは間違いです.彼らは反米主義のアラブ人に英雄視され,ますます容易に殺戮し,逃亡します.彼らを捕縛し,アラブ世界の文明から追放することは,アラブ人自身にとっての課題であり,名誉の問題であり,賞金で促すべきではないのです.

さらに,この賞金をもっと有効に使えるでしょう.例えば,サウジ・アラビア,パキスタン,シリア,エジプトで,中学生や高校生に作文コンクールを開くのです.作文の課題は,「アラブ・イスラム教徒の世界に,民主的で,国民を代表する政府はできるか? またどうすれば,アメリカや外国の介入に頼ることなく,国内の平和的な改革として実現できるか?」

ビン・ラディンを捕まえた一人の人物に5000万ドルを与えるより,アラブ世界の若者たち数千人に学ばせる方が好ましい変化をもたらすでしょう.ビン・ラディンを殺すより,その思想を駆逐することに使うべきだ,とFRIEDMANは考えます.


Linda Bilmes, “A budget in Bush's own image,” FT February 7 2005

EDMUND L. ANDREWS, “Trim Deficit? Only if Bush Uses Magic,” NYT February 7, 2005

“Starving the beast,” FT February 8 2005

“Avoiding the Real Challenge,” NYT February 8, 2005

PAUL KRUGMAN, “Spearing the Beast,” NYT February 8, 2005

DAVID BROOKS, “Mr. President, Let's Share the Wealth,” NYT February 8, 2005

“A Breathtaking Budget,” WP Tuesday, February 8, 2005

Eric Garcetti, “Bush's Budget Transforms the War on Poverty Into a War on the Poor,” LAT February 9, 2005

(コメント) ブッシュの内政問題,2006年度予算編成について,一斉に論争が開始されました.

クリントン政権で商務次官を務めたLinda Bilmesthe Kennedy School of Government at Harvard)は,4つのテーマを指摘します.@イラク戦争の経費.A社会保障など,政府サービスの民営化.B高齢者や中産階級など,所有するものを重視する政策.C財政赤字なんて重要ではない,というチェイニー副大統領のイデオロギー.

ブッシュUの財政拡張主義については,保守派の巧妙な弁護論があります.民主主義や社会保障を口実に,支持者たちの票を集める民主党の財政赤字と増税方針を,先に絞め殺しておく,ということです.どんどん減税して逆転不可能なほどの財政赤字を共和党自身が「所有者階級」のために作ってしまえ,と.だから財政赤字は無視して,社会保障制度の将来の「破綻」を吹聴します. ・・・これが,まともな政府のやることか!?


FT February 7 2005

Philip Stephens: The legacy of Black Wednesday

By Philip Stephens

FT February 10 2005

Martin Wolf: How Britain defeated defeatism

By Martin Wolf

FT February 10 2005

The real story of Black Wednesday

The Guardian, Thursday February 10, 2005

Opening time

Leader

(コメント) 1992年9月16日の水曜日は,Black Wednesday 「暗黒の水曜日」,として有名です.この日,ヨーロッパの為替レート制度ERMは崩壊(寸前)に追い込まれ,イギリスは変動幅を抑制することを諦めたのです.ジョン・メージャーの保守党政権はヨーロッパとの内戦に突入し,信頼を失った保守党は政権から見放されます.イングランド銀行は,結果的に,政治からの独立を得て,国民は今もヨーロッパを嫌っています.

この時期の大蔵省の記録が一部公開された,ということです.政治家たちはEMSや資本移動のもたらす制約,ドイツ再統一の影響を正しく理解できなかった.官僚たちも政策を間違い,ヨーロッパの市場統合とその影響を分析できていなかった.彼らはさまざまな個別の利益を追求するために危機の可能性を無視した,と多くの者は考えます.

Martin Wolfは,当時の官僚たちが,この苦い経験も含めて,EMSに参加したことは成功だった,と弁解することに反対します.Black Wednesdayがあったから,イギリスは中央銀行の独立性を明示し,インフレ率を抑えて,柔軟性の高い安定した経済を得たのだろうか? EMSが無ければできなかったのか? そうではない,とWolfは考えるからです.それは正しい政策を実行するために外部の助けやショックを必要とする,と信じる「敗北主義」でしかない,と.

ユーロ加盟やヨーロッパ憲章の国民投票を次の課題とするイギリス政府が,この時期にBlack Wednesdayの情報を公開し,振り返ることの意味は,さまざまな党派にとって重要です.


FT February 8 2005

A rational sceptic who is always his own man

By Robert Skidelsky

(コメント) イギリスが産み出す高度な政治経済学的知性は,どのように継承されているのか? 私はイギリスの土地に潜む「知の鉱脈」に関心を持ちました.市場の重視,再分配の根拠,個人主義,マクロ経済学,政府への懐疑的姿勢,コブデン型の国際秩序,・・・ Samuel Brittanと,その書評を書くRobert Skidelsky.二人の代表者です.


FT February 8 2005

A flexible points system for overseas workers

By John Philpott

(コメント) 「移民労働者が居なければ,イギリスはもっと貧しい土地になる.」と,Philpottは明言します.しかし,今や全ての政治党派が,EU以外からの移民流入を規制しようと考えています.移民には利益だけでなくコストも伴う.だから移民を監視し,そのコストを抑制するべきだ,と.

Philpottは,厳格な「ゲスト・ワーカー」の制度や,地域や業種による「労働需給ギャップの予測」によって,移民流入を管理するべきだ,という意見を否定します.むしろ,調整を促す誘因政策を重視します.雇用主は移民の雇用を届けるべきだし,移民を雇用しては行けない分野も示すべきです.しかし,細かい受入数の指定や地域配分などは無駄です.非合法移民の雇用は処罰し,移民の雇用によって失業するものには政府が職業訓練を行うべきです.こうした移民政策を示すためにも,弾力的なポイント制が望ましい,と考えます.

移民を排除して雇用を増やせ,と主張する多くの政治集団に,Philpottは反論します.移民が帰国したら,企業はイギリスの若者たちを雇用するだろうか? 彼らは同じように熱心に,効率的に,仕事をこなすだろうか? 技術革新によって生産性を挙げろ,若者に職業訓練を施せ,というのは簡単だが,それは難しいし,コストが伴うことを正しく理解しているのか? と.

FT February 8 2005

Ill-timed debate on migration controls

The Guardian, Tuesday February 8, 2005

We hate our politicians, but we've never had it so good

Martin Kettle

The Guardian, Tuesday February 8, 2005

It's the Brits who need the points system

David Aaronovitch

(コメント) 選挙前に移民規制が政策論争を加熱させることをFTは危惧します.移民政策は必要です.しかし,選挙を前にして,移民には政治的発言権が無く,無責任なメディアが移民排斥熱を煽って人々の不満を助長しています.

ポイント制によって,彼らは何を目指しているのでしょうか?

「われわれとは誰のことか?」 「21世紀にこの土地に住むのは誰か?」 移民,難民,犯罪に対する不満が高まっていることと,選挙前の論争が,政治家たちを互いに刺激します.しかし,「模範的な市民」や「イギリスらしさ」とは何か? 自分だけはその条件を完全に満たしており,移民たちのすべてが非難されるべきだ,と何を証拠に主張するのか?

移民の急増がイギリス文化を歪めた証拠はあるでしょうか? 移民たちが民主主義や都市の共同生活を乱す主要な原因となっているでしょうか? たとえば犯罪? 移民に関する論争を続ければ,文化的な同質性や,近代的な生活の合理性,それを法律で維持,強制することの是非に及ぶようです.

Martin Kettleは,1845年にBenjamin Disraeliが書いた小説を引用します.一方は裕福で,他方は貧しい,二つのまったく交流も無いし共感も無い国があり,互いに習慣や思想,その感情を無視している.全く別々の星に住む民のように.しかし,それはイギリスなのです.一方はすべての権力を持ち,他方は何一つ持たない.確かに,当時に比べれば,すべての住民が投票する権利を得て,多くのことが換わりました.しかし,互いの間に残された隔たりはまだ大きく,政治家たちはそれを利用することもできれば,橋を架けることもできるはずです.

l         移民流入の総数を規制しますか?

l         移民をポイント制によって選別(技能・出身国,その他)しますか?

l         移民の同化を求めますか?

l         移民に言語テストを求めますか?

l         移民の帰化を促進しますか?

l         「ゲスト・アルバイター」,一時雇用制度を利用しますか?

l         国内労働市場の不足を予測して移民労働者を導入しますか?

l         非合法移民の雇主に罰則を科しますか?

l         非合法移民を国外退去させますか?

l         移民への公共サービス(医療・教育・年金)を誰が負担しますか?

l         移民の2世,3世を社会統合する用意はありますか?

l         移民への差別を禁止する法律を整備しますか?


IHT Wednesday, February 9, 2005

A trans-Atlantic storm over arms for China

Hans Binnendijk

FT February 9 2005

Why Europe is ready to lift its weapon ban on China

By Daniel Dombey and Peter Spiegel

(コメント) アメリカが台湾海峡で対峙し,日本は常に共存を模索するしかない中国に,EUは武器を輸出します.NATOにおける軍事協力を妨げる恐れがあり,中国の人権問題や民主化を挙げて,アメリカはこれを批判します.日本はどのように反応するのか?

もちろん,武器によって平和を保障することはできません.また,武器の輸出が直ちに同盟関係を再編するわけでもありません.Dombeyらは,アメリカとの安全保障の分担,民主化への支援,紛争時の対処,などを指摘します.


NYT February 8, 2005

2 Koreas Forge Economic Ties to Ease Tensions

By NORIMITSU ONISHI

NYT February 9, 2005

Bush Bites His Tongue

By NICHOLAS D. KRISTOF

FT February 10 2005

N Korea declares it has nuclear weapons

By Anna Fifield in Seoul, Daniel Dombey in Brussels and Peter Spiegel in Nice

FT February 10 2005

Timeline: North Korea’s nuclear programme

FT February 11 2005

North Korea's Fearmongering

The Monitor's View

(コメント) 南北統一を目指して北朝鮮に開設されたKaesong経済特区で,韓国企業が作った電気ポットは,ソウルの商店に並ぶや二日で売り切れました.

他方,ブッシュ氏の柔軟姿勢に,北朝鮮は核保有宣言で応じ,危機によって生存を誇示する方針を続けています.核兵器は蓄積され,輸出もできます.

どうすれば良いのか? プランA:中国が協力して北朝鮮の体制転換を進める.あるいは,プランB:ブッシュ氏が,ニクソンのように,ピョンヤンに飛んで金正日と握手し,核廃棄と国際システムの合意に従うことを条件に平和条約を結ぶ.それとも,プランC:中国と韓国が,ベルリンの壁のように,北からの亡命者に国境を開放する? さらに,プランD:周辺諸国が一致して,経済制裁から軍事的オプションまで含めて介入し,体制転換を強いる?

日本において,単独でも経済制裁を求める主張がなぜ強まるのか?


Shlomo Avineri, “Peace in the Middle East will come from within,” FT February 9 2005

“A moment of hope,” The Guardian, Wednesday February 9, 2005

“A Chance to Live Without Fear,” LAT February 9, 2005

“Reason for Cheer in the Mideast,” NYT February 9, 2005

“Missing Mideast Puzzle Piece,” CSM the February 10, 2005 edition

Timothy Garton Ash, “Seize this moment,” The Guardian, Thursday February 10, 2005

(コメント) 中東紛争の解決に向けた動きがどの程度まで重要な変化をもたらすのか,人々の心には期待と不信が蓄積されています.


FT February 9 2005

The US trade deficit does not spell doom

By Diana Farrell(McKinsey & Company's economics think-tank)

(コメント) 貿易赤字額の増大は驚くことでは無いし,保護主義の波を生み出すものでもない,とDiana Farrellは言います.なぜなら,アメリカの貿易は強力なアメリカ企業の国際展開によって生じているからです.フォードはメキシコから自動車を輸入し,アメリカの銀行はインドのコール・センターを利用しています.それはアメリカの消費者,アメリカ企業,アメリカの株主に利益をもたらしますが,巨額の貿易赤字にもなります.そして,その赤字額はドル安によって容易に減らないでしょう.

しかし,Farrellは貿易収支を深刻に受け取りすぎてはいけない,と注意します.アメリカ企業が世界中の子会社と行う取引は基本的に多くの利益をもたらしており,貿易収支を計測したのは,その原理を定めた1940年代の世界に,外国に子会社を持つ企業がほとんど無かったから重要であったのです.貿易統計はその後の変化を十分に反映していません.

貿易赤字が増えたからと言って,アメリカ経済が衰退しているとか,破滅を予測するのは間違いです.Farrellは,アメリカの多国籍企業が拡大する結果として経常収支の赤字も増加する,と予想します.世界の直接投資額は2004年に6000億ドルであり,ドル安になっても影響を受けないだろう,と言います.そこで,貿易赤字に対して保護主義を主張するより,統計手法を改善してはどうか? と.

すなわち,国境ではなく,「所有」を基準に計測するのです.アメリカ企業やその子会社の販売額は,それがアメリカ外の世界のどこから行われても「輸出」,購入額が「輸入」です.ある試算では,これによって経常赤字の4分の1が減ります.アメリカ政府が貿易赤字に対処するには,保護措置ではなく,@公正貿易の要求,A貿易および直接投資に対する市場開放の要求,B為替レートの人為的な割安政策への反対,などが重要だ,と言います.

また,アメリカ内部の反発に対しては,グローバリゼーションの利益を社会に分配するために,再教育・職業訓練を充実し,アメリカ企業の株式を所有させて,彼らも配当を得ることでしょう.財政赤字を徐々に減らし,ドルの魅力を維持して資本市場の利用を促すことも,最後に指摘されています.

貿易収支が何であれ,その国の経済に対する評価に基づき企業は投資します.だから,アメリカ経済の将来を蝕む無責任な政府の赤字依存こそ,最も注意しなければならない問題だ,と.

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The Economist, January 29th 2005

The Gates foundation: Missionary zeal

Global health: Foundation

Obituary: Walter Wriston

(コメント) 個人が世界を変えることは,かつて王様や宗教家,軍事指導者の役割でした.今では企業家と銀行家がその中心です.彼らは軍事力ではなく,革新的なアイデアと資金力で,市場を通じて世界を変え続けています.もちろん,新しいバイアスも含めて.

GMやトヨタがそうだからではなく,ベルルスコーニやタクシンがそうだというわけでもなく,たとえば,ビル・ゲイツが巨額の寄付を行ってNGOを通じた世界の病気と貧困を解消すると宣言したり,ウォルター・リストンが銀行のイメージを変え,金融市場の力を通じて政府を無視して商売できるようになったと自覚したりしたとき,何か根本的な変化が起きたのです.

人類史上,ビル・ゲイツ以外に,自分と妻の名前を冠した280億ドル(2兆8000億円)もの基金を設立できる者はいません.そして二つの危惧が生じます.ゲイツ氏は世界の病気に関する研究を自分の好みに合わせて変えてしまうのではないか? また,ゲイツの基金があるのだから,もう政府は財政負担を止めても良い,と思うでしょう.結局,その富が依拠したマイクロソフトと同じように,この慈善の分野でも独占状態になってしまう? あるいは慈善活動や貧困国の医療,汚職追放,穀物改良,などの分野でも,与えられた資金で最も多くの命を救うため,効率的に成果を挙げられる組織と誘因を編み出すでしょうか?


Car Industry: The quick and the dead

Toyota: The car company in front

Japan’s slowing economy: A-a-atchoo!

(コメント) トヨタの成功の秘訣は? 企業文化? そして日本の衰退の秘訣は? 高齢化と,トヨタのグローバリゼーション? 中国とアジアに吸収される?


Brazil: Taming an urban monster

(コメント) ラテン・アメリカでは,政府と首都の市長が対抗できます.財源,公共サービス,居住制限,広域開発,所得階層間の対立,・・・サン・パウロをめぐる政治経済変化.