IPEの果樹園2004

今週のReview

12/27-1/1

IPEのタネ

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   人としての痛みを分かち合う・共感 :戦争とクリスマス.民族も,国家も,宗教も超えて,人間は共感できる.

2.   人として助け合う・公正貿易 :世界の果てで苦しむ人にも,私たちは協力できる.

3.   子供たちが見た社会 :静かに,そして生まれることもなく,子供という種が消滅する

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune, JT:Japan Times, CSM:Christian Science Monitor


Dec. 17 (Bloomberg)

Investors Got Asia Right in 2004. And 2005?

William Pesek Jr.

(コメント) 2005年のアジア経済に関して,Pesek Jr.は楽観しています.その理由は,@消費の復活,A外国投資家のまじめな関心,B西側が失った成長力:人口増加・中産階級の消費・都市化,C国際投資のインデックスにおける過小評価,D中国経済の拡大,です.他方,不安材料は,@ドル安,A中国経済の過熱と破綻,です.

危機の引き金となったタイのバンコクは,再び行われた金利引上げにも冷静です.アジアは1996-97年に比べて大きく前進しています.透明性を高め,為替レートを変動させ,外貨建債務を減らし,中央銀行の独立性を定め,国営部門や資産を売却し,縮小したアジア諸国は,以前のように高金利や資本流出を恐れません.問題は,急速な公的債務の増加です.各国はこれを抑制して管理し,さらに日本経済がデフレを脱して,完全に自立した回復軌道に乗れば,アジアの成長は2005年も将来に向けて拡大する,とPesek Jr.は考えます.


IHT Friday, December 17, 2004

The excessive cost of WTO admission

Duncan Green(Oxfam’s head of research) and Le Kim Dung

(コメント) なぜヴェトナム政府はWTO加盟交渉を進めているのか? もちろん,世界市場に参加することがヴェトナムに大きな利益をもたらすからです.現在,ヴェトナムがアメリカと結んでいる通商協定はWTO以上に厳しい内容を含んでいます.それは,「WTOプラス」として,既加盟国が新規加盟国に追加の条件を求めるからです.WTO加盟を既加盟諸国が支持してもらうために,ヴェトナムはこうした条件を受け入れました.すなわち,サービス,製造業における投資の自由化や輸入障壁の削減です.

8000万人の国民の3分の1が1日1ドル以下の貧しい人々です.そのヴェトナムも,貿易によって急速に成長しつつあります.さまざまなものを輸出し,輸入自由化や直接投資に対しては慎重な対応を取ってきました.すなわち,IMFや世銀が推奨する「ショック・セラピー」とは異なるアプローチを取ってきたわけです.

Greenらは,ヴェトナムを含めた多くの貧しい諸国がWTOと加盟交渉する際に,こうした穏やかな移行過程を認めるべきだ,と主張しています.特に農業は,ヴェトナムの貧しい人々が生活を依存する重要な分野であり,オーストラリアやアメリカが求める急速な自由化により生産が減れば,貧困を拡大してしまう,と警告します.それでもヴェトナムがWTO加盟を望むのは,今もアメリカが一方的にエビやナマズを規制しているように,大国の恣意的な支配を免れるためです.

もしWTOが新ラウンドを開発重視という点で支持されると期待するなら,新規加盟諸国に対しても,国内改革と調和した穏健な自由化の道を示すべきだ,と.


WP Thursday, December 16, 2004

Presidential Medals of Failure

By Richard Cohen

(コメント) ケリックKerikはどこだ? ラミー(ラムズフェルド)やコンディはどうしたのか? Cohenは不思議な印象を持ちます.

アメリカ大統領が授ける自由勲章とは,ジョージ・テネットとポール・ブレマーです.すなわち,前CIA長官で,ビン・ラディンのテロ計画を見逃した後,サダム・フセイン討伐を「スラム・ダンク」と称して安易に推挙した人物と,イラク占領政府の前総督で,イラク軍やバース党の解散を命じ,今日に至る混沌へ導いた人物です.

そんな人物を,ロイヤル・ブルーのビロードでできたりボンを付けた勲章で飾ることは,いかにも不似合いな組み合わせです.そして次はケリックBernard Kerikか? 結局,この大統領が賞賛するのは,成果ではなく,彼への忠誠なのだから.そして,それが本土防衛省の長官に彼が任命された理由であります.その勲章はブッシュ氏の気持ちを示すだけであり,事実や,彼らの失策は重要ではありません.

多くのアメリカ兵が死に,多くのイラク人が苦しみ,高まる内戦の危機,テロの温床と理由なき戦争・・・ を支える彼らは,来年の受勲かな?


FT December 17 2004

In knots over the unknowns of climate change

By Fiona Harvey

地球温暖化について言えることは何か? 確実にいえることは多くない.確かに人間の活動は,温暖化ガスを増やした.しかし,確実に減らす方法は原子力エネルギーであるけれど,それを主張することはタブーだ.アメリカは京都議定書を批准しない.結局,温暖化のメカニズムは複雑すぎて誰にも分からない.金融市場で,次の危機がいつ,どこで発生するか,誰にも予測できないように.


FT December 17 2004

Saying no

(コメント) グリーンスパンは共和党の長老議員から,あなたがジョン・スノーと交代して財務長官を務めるべきではないか,と訊かれたとき,賢明にも否定した.78歳の老練な議長は,大統領にこんな話をしたのだろう,とFTは想像します.

「私はブッシュ政権の政策に疑いを抱くわけではないが,連銀議長から財務長官として政府に参加することは,中央銀行の運営に党派性を持ち込むと市場が疑うだろう.もちろん,私は財務長官となって財政赤字を減らし,そのためには減税策を後退させたいと思うが,それが認められるとは思えない.社会保障制度の改革も,債券市場が安心するような,私が20年前に考えた案に戻したい.私以外の候補としては,マンキュー,バーナンキ,テイラーなど,共和党政権を支えた一流の経済学者もいる.私は民間部門に転身するため,準備するつもりだ.」


The Guardian, Friday December 17, 2004

The price of Yukos

NYT December 17, 2004

Kremlin Reasserts Hold on Russia's Oil and Gas

By ERIN E. ARVEDLUND and SIMON ROMERO

BG December 21, 2004

Putin's corruption

By Thomas Oliphant, Globe Columnist

(コメント) ロシアの民主化は,プルードンの格言「所有とは盗みである」を示すものであったが,その治療は病気よりも痛みをともなうらしい,とThe Guardianはプーチンを批判します.ユコスは,確かにエリツィン時代の収奪主義によって誕生した企業であるが,コドルコフスキーMikhail Khodorkovskyは西側の資本主義を支持していました.プーチンによる彼の逮捕とユコスの重要な一部を国営企業ガスプロムGazpromに売却する決定は,いつものいかさまオークションです.それをプーチンは,国民に国家資産を取り戻したように自慢します.また西側には,政府介入を「管理された民主主義managed democracy」と呼んで正当化しています.誰がまともに聞くのか?

こんなロシアが,1970年代,80年代の停滞を経て,その経済を堅調に見せて来られたのは,石油・天然ガスの価格が上昇したからです.プーチンは資源のパワーを周辺地域の安全保障にも利用します.ユコスの資源を再国有化することは,ロシアが再び超大国になるための手段なのです.中東に代わって,ロシアが国際石油価格を安定化する役割まで担おうとするでしょう.もちろん,一層のパワーを得るために.

そんなプーチンがコドルコフスキーと対立し,破滅させた経緯も詳しく知られています.ロシアにおける「政教分離」ならぬ,「政経分離」の原則を,コドルコフスキーたちは破った,とプーチンの側近たちは考えます.そもそも,石油という分野が,政治支配と財閥の富とを結び付けるからでしょう.そして,これによってプーチンは「再ソビエト化」の方針を明確にした,と考え,投資を控える(また資本逃避させる)資本家もいます.ロシアには「法の支配」などない,ということがはっきりしたから.

ロシアに全体主義が復活した,と嘆く者もいます.かつてはイデオロギーがそれを正当化しましたが,プーチンはナショナリズムで富と権力の集中を正当化します.


LAT December 17, 2004

Still Crazy After All These Years

JONATHAN CHAIT

NYT December 17, 2004

Buying Into Failure

By PAUL KRUGMAN

(コメント) CHAITは,政府の催した経済会議にあふれるブッシュ政権のたわごとを厳しく批判し,それを正当化した経済学者としてフェルドシュタインMartin Feldsteinを特に取り上げます.

フェルドシュタインは,いつもの決まり文句として,「現行税制は(諸個人に)良くない誘因を与えている.すなわち,経済成長率を下げ,生活水準を低下させている」と言いました.彼の理論によれば,税率は人々(特に,裕福な人々)の労働意欲を妨げ,リスクを取りにくくします.数え切れないほど多くの企業家や発明家たちが,この高率の税負担のせいで,豊かになれないのです.それゆえ減税は経済成長を大きく刺激し,伝統的な経済学者たちが予想するほどには税収を減らさない,というわけです.

しかし,この理論は全く事実に反しました.ブッシュが行った2001年の減税は,フェルドシュタインの評価に反して,むしろ推定額よりも大きな赤字をもたらしたのです.その当時もフェルドシュタインの妄想を聞いたことは愚かでした.なぜなら彼は,1993年にビル・クリントンが高所得者の税率を引き上げた際に,高所得の労働者は税率に敏感だから,その行動を劇的に変化させるぞ,と警告していました.そして,「クリントンの増税が財政赤字を減らす見込みは全くない」と,断言しました.

No possibility! とは,よく言い切ったものです.結果として,赤字は予測よりも大きく減りました.

もちろん,フェルドシュタインを支持する者は,彼が二度も大きな間違いを犯したことに同情的です.クリントンは好景気,ブッシュは不況によって,影響を受けたはずです.それでも,税収の変化は景気変動で説明できる程度を超えています.

成長には多くの他の要因が関係しているのに,減税によって成長と税収の増加を期待するのは,どうしようもなく愚かな,あるいは党派的な判断でした.それにもかかわらず,またブッシュ政権の経済会議にはフェルドシュタインです.タイタニック(豪華客船)とヒンデンブルグ(飛行船)を設計した技術者に,次のアメリカの宇宙船を依頼するようなものではないか? とCHAITはあきれます.

他方,KRUGMANはブッシュ政権の社会保障改革を批判します.それは,保守派のシンク・タンクは絶賛していますが,再び巨大な401(k)をでっち上げる計画に過ぎません.国民は,チリが社会保障制度を民営化するのに成功した話を何度も聞かされています.しかし,二つのことが隠されています.@民営化によって,多額の手数料が労働者から投資会社に流れた.A多くの退職者を貧困に投げ込んだ.

保守派の政治家やブッシュ政権は,社会保障を政府ではなく民間が行う方がコストは安い,と訴え続けました.確かに,インデックス・ファンドで運用するだけならそうかもしれません.しかし,実際は,労働者たちに株式や債券の運用を勧めます.民営化がウォール街の利益になることは,そのイデオロギーよりも重要な動機です.

その結果として,自分の年金を失ってしまった老人たちは貧しくなり,チリでは,彼らに対する最低生活を保障する財政的な支援が増えています.イギリス政府の委員会も,サッチャーによる民営化計画が年金問題を解消すると考えたのは「愚者の楽園」だった,とその失敗を批判します.

経済学者と政党・政府との関わり方は,このように正しいことを主張するためにも,激しく党派的になるのです.


NYT December 17, 2004

A New World Order

(コメント) 年が明ければ,繊維製品に関する割当の失われた,素晴らしい新世界,が誕生します.何よりもそれは,アメリカの消費者に対して,自由貿易の利益を増やすはずです.しかし,アメリカの繊維産業は政治的に影響力があり,その労働者たちを保護するために働きたいと思うアメリカの政治家も多くいます.また,自由貿易の利益は多くの小国を市場から締め出すでしょう.なぜなら,中国で何でも大量に調達できるバイヤーたちは,もはや太平洋や大西洋を越えて最適の生産地を探してまわらなくなるからです.

他方,アメリカ国内には貿易調整支援法があります.これは自由貿易の結果,職場が海外に失われた分野で,労働者の再教育・訓練を支援するものです.そして企業も,議会に陳情するより,グローバリゼーションの利益を取り込むように工夫し始めるでしょう.アメリカの生産者が優れている分野も多くあり,彼らは中国の安い製品と共存し,それらを利用し始めます.

こうして新しい世界秩序では,激しい競争がコストを下げ,不必要な規制を取り除くように働くでしょう.錨を上げよ.すべての船が港をめざすときだ,と.


BG December 18, 2004

The world's broken promise to our children

By Carol Bellamy(executive director of UNICEF)

今年の初め,ウガンダ北部の埃にまみれた道端に立って,私は子供たちの絶望的な行進を見ていた.彼らの一部は北部ウガンダの「ナイト・コミューター」であった.何千人もの少年と少女が,反乱軍the Lord's Resistance Armyによる誘拐を免れるため,毎日,たそがれになると家を離れるのだ.

父母や兄弟から離れて,朝まで町でキャンプするために彼らが歩み去る,身も凍るような姿を思い出しながら,私はロシアのベスランを訪れた際に経験したのと同じ,激しい怒りに震えた.そこでは民兵たちが,彼らの勝手の理由で子供たちを利用し,邪悪にも惨殺した.

明らかに,これら二つの出来事,すなわち,子供を兵士にし,性的奴隷にするウガンダと,その寄る辺ない子供たちへの愛情を脅迫の道具としたロシアは,子供に対する史上最悪の攻撃である.

しかし,そのような恐るべき逸脱も,現実の世界がもたらしたものである.そこでは子供が日常的に搾取され,無視されている.政府は子供がSEX産業で利用されることを許し,極端に惨めな児童労働が広まるのを許し,清潔な水も,教育も,栄養のある食べ物もなく,基本的な健康の維持さえできない状態で彼らが育つのを許している.彼らは,子供の権利など無視しても良い,という暗黙のメッセージを送っているのだ.

現在,10億人を超える子供たちが貧困,戦争,エイズによる窮乏に苦しんでいる.たとえば,6億4000万人の子供が十分な家を持たず,4億人には安全な水がなく,2億7000万人には医療サービスがない.エイズに罹った1500万人の子供たち.そして1990年代だけでも,2000万人の子供が戦争で家を追われた.

1989年に子供の権利条約が採択されて,世界の国々は子供の命を守るために文化的,宗教的な違いを超えるはずだった.しかし,世界の子供たちの半分が今日も経験している恐るべき状況を見れば,その約束が果たされなかったことが分かる.余りにも多くの政府が子供たちを無視するどころか,巧妙に,それと知りながら,子供たちを痛めつけるような選択をしている.

どうしてこんなことが起きたのか? どうすれば防げただろうか? このようなことが繰り返されないようにするには,どうすれば良いのか?

その答は簡単ではない.まず,たった一つの努力で,他の子供たちの苦しみを忘れてはいけない.子供たちを人質にとったことを非難するのであれば,私たちは同時に何百万もの子供たちが貧困による下痢で衰弱しつつあることも許してはならない.子供たちが武装集団に誘拐されることに憤慨するのであれば,何千もの幼児や幼い子供たちがエイズに苦しみ,その家族は貧しくて薬も買えないことを糾弾しなければならない.

ユニセフで10年を経て,子供たちへの最も醜い虐待を,世界が突発的に憤慨しては忘れてしまうのを私は知った.それは幅広く現状維持が黙認されているからである.恐ろしいことではあるが,日常的に子供を苦しめることも人間の本性に属する,と.

私はそれを信じない.人間の営為も経済発展も,日々,途方もない資金を動かす.こうした資金は子供たちの生活と福祉を守り,育てるために投資できるはずだ.われわれが投資の最優先課題を子供たちに置くのは,われわれにできることである.われわれは好況においても民間においても,政策を採用する際に,常に,それが子供たちにどのような影響を与えるのか,考えるべきだ.

このことを実行することによってのみ,処罰されない虐待はなく,子供たちの生存の権利を守り,彼らを搾取から守り,健康で尊厳のある後名となることを保障してやれる.22億人の若い人類にとって,まさに子供であることを楽しめるように.


LAT December 18, 2004

The Next Great Library

BG December 21, 2004

The need to know

NYT December 21, 2004

The Electronic Library

(コメント) かつてアレキサンドリアに帝国を支える図書館があり,またロンドンにも帝国を支える図書館があったように,インターネット世界にもそれにふさわしい帝国図書館ができるかもしれません.Googleが1億5000万ドルを投資して,世界の主要大学図書館から文献情報を検索して読み取るシステムを開発する,というわけです.

すでに音楽や映像が,インターネット世界における富の集積とコピーの叛乱によって,訴訟や紛争の熱病にうなされているように,文字情報もハード・コピーの著作権に代わる,インターネット世界の新しい秩序を模索するでしょう.巨万の富を得る音楽家や映画監督,ゲーム・ソフト会社が,より貧しい空想家や小さな町工場に戻っても,私は良いと思います.問題は,情報のデジタル化です.そのための装置や要員,システムとその収益・採算性を設計するわけです.

それは,世界の富と権力を偏在させるのか,それとも遍在させるのか? 次世代のアレキサンダー大王に尋ねてみるべきです.


NYT December 18, 2004

Facing Down the Killers

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) 新しい映画「ルワンド・ホテル」"Hotel Rwanda"を観たいです.それは,1994年のルワンダで起きた虐殺に際して,1268人をかくまったルワンダ・ホテルのマネージャーPaul Rusesabaginaについての物語です.

映画に登場する国連軍の指揮官は,「西側は大量虐殺を黙認している.やり方が汚いとは思うが,アフリカ人を助けるために,彼らは何もしないよ」とマネージャーに言います.KRISTOFは,ルワンダ・ホテルに居合わせたら自分に何ができたか,と自問するより,再現しているダルフールに目を向けます.数ヶ月前には改善するかと思えた情勢が,急速に悪化しています.援助団体の職員が殺害されて,さまざまなNGOも撤退しつつあります.

武器が集積されており,既にダルフールは大量虐殺への時限爆弾を抱えたわけです.クリントンの外交政策を,麻痺している,と非難したブッシュも,同じように悪化する事態を静観しています.ダルフールにおける人権蹂躙に対して激しい抗議を続けてきたキリスト教右派が政権に入っているにも関わらず.

ブッシュ氏に何ができるか? トニー・ブレアがしたように,スーダンを訪問せよ.その残虐さや叛徒たちの振る舞いを強く非難せよ.ダルフールへの国際的な圧力を組織するために,首脳会議を主催せよ.たとえ中国政府が拒否権を行使するにしても,国連に議決を求めよ.スーダン政府に対する,目標を絞った経済制裁を発動せよ.さらに,スーダン政府が航空機を住民への威嚇に使用しないようにするには,飛行禁止区域を設けて,監視のためにアメリカ軍が飛ぶべきだ.違反があれば,スーダンの飛行機を地上で破壊せよ,と.

市民として何ができるか? ホワイト・ハウスに電話し,あるいは,議員たちに行動を促すことだ.一人のニュー・ヨーカーJack Weisbergは,これまで行動したこともなかったけれど,ダルフールについて何かしなければならない,と考えました.KRISTOFに,向こうで活躍している良い団体を教えて欲しい,と頼み,「国境なき医師団」に50万ドルを寄付します.良心が痛むから,と.

たとえ20ドルでも,彼らの命を救うだろう,とKRISTOFは言います.しかし,誰よりもブッシュ氏がその「道徳的な価値」に従って指導力を示すべきです.クリントンのSEXスキャンダルを不道徳だと非難していた人物が,このような虐殺が起きていることを知りながらホワイト・ハウスで寛いでいるのであれば,その方が不道徳ではないか? と.


NYT December 18, 2004

Hamas May Give Peace a Chance

By SCOTT ATRAN

ハマスも加わった停戦合意と,欧米の参加した国際会議開催が,オスロ合意をさらに進める道である.


FT December 19 2004

Why the dollar's fall is not welcomed

By Barry Eichengreen

ドル安を世界経済の均衡回復に必要な過程だと見なす者は,どうしようもない楽天家である.為替レートが変化しなければ,アメリカの経常収支赤字は爆発する.GDPの5なし6%から,2008年には8%へ,そして2010年には12%へ.

実際,これほどの赤字額は外国投資家たちが喜んで融資するものではありえない.特に,それが民間投資ではなく慢性的な財政赤字を補うのであれば.いつの時点か,外国投資家たちはアメリカから資本を引き上げ,ドルとアメリカ経済は地表に叩きつけられる.だから円滑に,少しずつドルを下げて,経常収支を均衡させるることが,突然の潜在的な破局よりも好まれる.

問題は,すでに円滑な調整では手遅れではないか,ということだ.経常収支とは貯蓄と投資との差額である.アメリカが赤字を減らすには,貯蓄を増やすか,投資を減らすことになる.ドルの下落は金利を引き上げる傾向があるから,これを促す.アジアの中央銀行がアメリカ財務省証券の購入を減らし,その保有する証券を売れば,利回りに上昇圧力が生じる.

さらに,ドルの価値が下落すると,アメリカの輸入品価格が上昇し,より一般的なインフレ圧力も生じる.それに対して連銀が現在予測されている以上に金利を引き上げるだろう.高金利は借入れコストを増やし,投資を遅らせる.それらは,住宅を含む資産の評価にもマイナスとなる.アメリカの家計部門は,もはやキャピタル・ゲインによって暮らすことができず,貯蓄を再開する.投資は減り,貯蓄は増えるから,経常赤字は減少する.

不幸にして,この幸せな考察によって物語は終わらない.消費と投資が大きく減少するとは,アメリカの不況を意味する.この結論は全く明白であるから,なぜ市場がそれをすでに予測しないのか,それだけが問題である.

その答は,多分,ドル安がインフレ率を十分に上昇させると投資家が信じていないからだ.歴史的なデータに拠れば,ドルが10%下落すると,インフレ率は3%上昇し,それは割引率で450ベーシス・ポイントの上昇を意味する.明らかに,われわれはそのようなことが起きたとは知らない.財務省証券で見ても,インフレ期待はわずかしか上昇していない.「ニュー・エコノミー」がアメリカ経済を弾力的にして,回復力を高めたから,ドル安とインフレの従来の関係がもはや適応できないのだろう.そうであれば,大幅な金利上昇を恐れることは誇張されている.

しかし,この考察が正しくとも,それが意味することは,連銀に金利を引き上げさせるにはさらにドルが下落してインフレ圧力を生じる必要がある,ということだ.ドル安の根源は,アメリカの経常赤字が持続不可能である,という見方である.それゆえ外国人は,赤字が減るまでドルを売り続ける.するとドル安が,今度は,金利が上がるまでインフレを高めるわけだ.その意味するところは,アメリカ経済は減速し,おそらくは不況が避けられない,ということである.

誰がこの空隙を埋めるのか? 世界経済が深刻な不況を回避するには,アメリカにおける消費と投資の減少を,それ以外のどこかで消費と投資が増えることにより相殺しなければならない.でも,どこで? ヨーロッパは停滞している.ECBは貨幣的な刺激策を考えたことがない.中国はむしろ景気の過熱を冷している.もし通貨が増価するなら,それはさらに進む.日本が緩やかに回復しているが,累積する国債を減らすために増税するから,期待はずれであろう.G5以外の国では小さすぎる.

アメリカの経常赤字を是正することは,アメリカと世界が不況に入ることである.ドル安を歓迎している楽天家たちは,もう一度考え直すべきだろう.


FT December 20 2004

Japan must break with its past to prosper again

By Guy de Jonquieres

FT December 23 2004

Japan sets about dumping its old economic model

By Jeremiah Sullivan

(コメント) 日本経済の回復と旧モデルの破壊はどこまで進んだか? 外国の観察者は,常に,その評価に揺れてきました.

de Jonquieresは,小泉首相の改革も,日本の企業や銀行が経験してきた激動も,日本を大きく変えた,と認めます.しかし同時に,それは「創造的破壊」の半分だけ,破壊だけで,革新をもたらす新興企業や起業家が余りにも不足している,と考えます.かつて日本で繁栄した「終身雇用のサラリーマン」は,もはや絶滅危惧種である,と.

確かに厳しいコスト削減や債務圧縮で企業は活力を取り戻したが,その多くは20年前に繁栄した電機や機械産業です.ソフト・バンクやコンピューター・ゲーム,アニメ業界の利益を騒ぐのも10年前と変わりません.日本は今も,明治維新後に築いた二重経済を温存し,零細な規模の農民や商店街を保護し,その結果,過重負担によろめく政府が企業や銀行の尻を鞭打って,どうにか改革を進めているのに過ぎません.つまり,ドル安や中国経済の減速,小泉政権後の不安が,結局,元の停滞に引き戻すという予想です.

もし根本的に日本が変わるとしたら,それは社会の高齢化によって社会的合意が崩壊し,労働意欲が減退するだけでなく,若者たちはレジャーを重視し,老人介護や福祉予算の重圧から政府も外国人労働者に門戸を開くからであろう,とde Jonquieresは予想します.

この論説に対するSullivanの手紙は,日本モデルが複雑に編み上げられた全体であるために,改革が非常に難しいことを指摘します.すなわち日本経済では,「土地価格の操作,貨幣供給の操作,浪費的で無益な補助金,非競争的な慣行の蔓延,貿易と投資に関する障壁,過度の規制,職場を維持できないほどの労働組合への弾圧により,労働者は固定費用となり,企業は無謀な拡大を続けた」というわけです.

日本モデルはすでに維持不可能であり,改革は試みられるべきだが,容易ではない,というSullivanの意見が,最後の「移民による調整」よりも,最初の「土地の高価格」から議論している点で,私は好感を持てました.日本の地価がさらに半分になれば良いのに! でも,銀行が潰れる? それならもっと新しい銀行を設立し,企業も資金の調達方法を変えてはどうでしょうか?


BG December 19, 2004

A better world with 'fair trade'

By Chuck Coffman & John Parks(co-owners of Armeno Coffee Roasters Ltd.)

世界の貧困を無くすために,レコードの売上から利益を寄付するアーティストがいるのも良いことだが,休日を前に,より多くのアメリカ国民に「公正貿易証」のついた商品を買って欲しい.この証明書はアメリカの非営利団体NPO,TransFair USAが,その製品に関わった農民や労働者が公正な代金や賃金を受け取った,ということを示すために発行されている.もしあなたが飢餓,貧困,麻薬の密輸,児童の強制労働,森林破壊,汚染に関心を持っているなら,公正貿易'fair trade'に支払って欲しい.

例えば,その証明書はコーヒーの仲買人に数ペニーもらうだけで搾取されている小農民たちが,ポンドあたり1.26ドル(有機栽培であれば1.41ドル)を受け取ったことを意味する.アメリカでは公正貿易コーヒーへの需要が爆発的に伸びた.昨年の売上は90%増の1870万ポンドだった.それは今年,3000万ポンドに増えると予測されている.

われわれが彼らのコーヒーを公正な価格で買うことは,農民たちやその家族,そのコミュニティーの利益となる.たとえば,子供たちを学校に通わせ,環境を保全し,品質を改善し,土地の持続的な利用に関心を払わせる.もし公正貿易がなければ,四人家族が暮らすのに一日9.60ドルを要するエクアドルで,一人の農夫が2ドルしか稼げないから,子供たちも働かせるしかない.また,一層悲惨な状況のアフリカでは,コーヒーやココアの農場が子供たちを奴隷として輸入している.

世界中で,農民たちは貧困と債務の悪循環に苦しんでいる.彼らは国際市場と切り離され,中間的な搾取にさらされている.公正貿易証があることで,農民たちの所得は最終価格に占める公正な割合に引き上げられる.世界の貧困に対して自分たちが無力であると嘆く必要は無い.われわれんは,自分たちが支払うお金が貧しい農民たちのポケットに届く方法を見出したのだ.


The Observer, Sunday December 19, 2004

Don't weep for our lost factories

Will Hutton

Dec. 21 (Bloomberg)

Wal-Mart and Distance Can Save U.S. Textiles

Andy Mukherjee

(コメント) 逆に,彼らの賃金が余りにも安いために,われわれの賃金も引き下げられるという危機感が生まれます.

Huttonは,イギリスから炭鉱が消え,農業が消え,今や製造業も消えようとしている,と指摘します.しかし中国が「世界の工場」になっても,それは大量生産型工場の移転が,20分の1の賃金に抵抗できないからであり,それ以外の製品では異なるだろう,と考えます.すべての製造工程が中国に流出しても,それ以上に多くの雇用が研究開発や小売部門で生まれるはずだ,と.

中国式のジャガーノートによりアメリカの繊維産業は壊滅される,という誇張された危惧に対して,Mukherjeeは反論します.アメリカの時給9ドルがメキシコの2.5ドル,中国の88セント,インドの38セントに交代することは,確かに自由化の利益をもたらすでしょう.しかし,賃金はコストのごく一部でしかないのです.もう一つの重要な要因は,近接性proximity,です.Wal-Mart Stores Inc.など,アメリカのスーパー・チェーンは,北・中米やカリブ海域の,Tシャツ,ジーンズの生産者を優先します.彼らは毎週のように製品を新しくしたがるからです.それゆえ,たとえ割当制度がなくなっても,地理的制約は重要性を失いません.


NYT December 19, 2004

Whoops! It's 1985 All Over Again

By EDUARDO PORTER

(コメント) 1985年9月22日,プラザ・ホテルの「黒と白の間」が,有名なプラザ合意の舞台でした.今再び,プラザ合意を再生するべきでしょうか? その後,1989年までにドルは円に対して50%,マルクに対しては40%減価し,経常収支の赤字も漸く縮小し始めました.

確かに,IIEのBergstenはその再現を支持します.通貨政策の協調と,財政政策にも国際的な配慮を求める時代が再生されるべきだ,と考えます.しかし今,中国は同じ程度に協調を望まず,世界の不均衡はアメリカの赤字が複数の国に分散するようになっています.他方Jeffrey Frankelは,このまま外国投資家の不安が強まれば,金利の高騰と債券市場の暴落につながる,と警告します.

新しいプラザ合意に必要な条件は,アジア諸通貨の引き上げと,アジア,ヨーロッパにおける需要喚起であり,単に,為替レートを合意するだけではない,とObstfeldも注意します.そんなことが経済外交として可能なのか? 中国や日本が,アメリカの思うような協調を望むだろうか? 協調に利用できるような,財政や金融の政策余地はありません.特に,ブッシュ政権Uの政策目標に国際協調や調整は入っていません.Eichengreenはそんな合意が成立する可能性はゼロだ,と断言します.

プラザ合意そのものが国際協調の限界を示しました.政策顧問たちの意見も分裂しています.経済諮問委員会の委員長であったFeldsteinは財政赤字を責め,ドルは30%も過大評価されている,と批判して,委員長を辞任しました.しかし,その彼がブッシュ政権を支えます.保護主義をめぐる国内政治も変わりました.

ヴォルカーとベイカー3世が協力して,日本やドイツに同意させた協調政策も,ドル安は予想以上に加速してルーブル合意が必要になり,さらには1987年10月のブラック・マンデーを導いた,と批判されます.プラザ合意後の2年を経ても赤字は増大しており,それが減少するのは財政赤字削減と不況が来てからでした.外国為替市場に介入することは無意味であり,そもそも自国の利益に反して介入する国などない,と否定する者もいます.

しかしゴールドマン・サックスのHormatsは,プラザ合意のような多角的協調には利益がある,と考えます.なぜなら,市場にとって,為替レートに関してもわれわれが国際協調を進んで行える,と示すこと,それ自体が,重要だからです.

FT December 21 2004

Martin Wolf: Asia could solve America's debt trap

By Martin Wolf

(コメント) 逆にWolfは,世界的な為替レートやマクロ政策の調整が以下に困難であるかを考察した末に,世界がドル暴落や不況を回避する道は,国際金融市場の円滑な機能を一刻も早く完成させることだ,と考えます.それが完成すれば,アジアの貯蓄や消費は,ドル暴落など恐れることなく,アメリカの投資とも矛盾しなくなるはずです.アメリカは高金利による債務の悪循環から逃れ,アジアは自らの長期投資に貯蓄を回せるでしょう.

しかし,金融市場が解決するはずだ,というのは答えでしょうか?

FT December 22 2004

Too gloomy about the dollar's fall

By Desmond Lachman

Dec. 24 (Bloomberg)

Who'll Be James Dean of Dollar's `Chickie Run'?

Andy Mukherjee

(コメント) Lachmanは,Eichengreenの論説を「宿命論」と批判しています.アメリカが財政赤字を削るなら,国際協調による調整は可能になるはずだからです.

Mukherjeeは,アメリカと中国の「チキン・ゲーム」がどうなるか,を整理します.


WP Monday, December 20, 2004

Backward in China

FT December 21 2004

The world should be braced for China's expansion

By Richard McGregor

(コメント) 中国経済は急速に近代化するのに,その政治システムは逆の方向に進んでいる,とWPは懸念します.香港の民主化運動,イランの核開発,北朝鮮との交渉,などで示された中国の姿勢は,経済的利益を積極的に求めるけれども,世界の人権や安全保障には関心がない,というわけです.台湾海峡でアメリカとも対峙している中国の軍隊に,EUは武器輸出の規制を解除しようとしているが,これは間違ったシグナルになる,と.

中国のLenovo社によるIBMのパソコン部門買収は,かつて1989年に三菱がロックフェラー・センターを買収したときのように,アメリカ人を刺激しました.アメリカによる日本への圧力が増したにもかかわらず,それはまた両国が安全保障における同盟関係にあったことで緩和されてきたのです.では中国に対してはどうか? 中国はアメリカにアジアの秩序維持を頼り,またアメリカからの直接投資や技術移転に頼って,しかも世界市場や資源確保ではアメリカと対立する可能性を高めています.今回の買収に関しても,Lenovoの社長は「政治問題に触れるな」と釘を刺しましたが,もちろん,アメリカの政治家たちは騒ぎ始めるでしょう.


BG December 21, 2004

When the tears came

By Grace M. Deveney(a nurse at Massachusetts General Hospital)

(コメント) ダルフールの病院へ来て3ヶ月が経ったとき,そこで働く看護婦Deveneyはトウモロコシの粉末で作った粥を子供たちに食べさせていました.きっと彼女の子供たちなら,あれが欲しい,これは嫌いだ,などと騒いだことでしょう.そのとき突然,激しい悲しみに襲われて,涙が止まらなくなります.それまで一緒に遊んでいた子供たちが余りにも静かになったから.彼らにとって,食事が選択ではなく機会であり,それを提供する者の気まぐれで,突然,失われてしまうことを恐れているのだ,と気づいたからです.粥をもらう,まだ幼い子供たちの沈黙と動作は,彼らが生きてきた過去を示すように,ひたすら静粛であった,と.


The Guardian, Tuesday December 21, 2004

America's war on itself

George Monbiot

(コメント) Monbiotは考えます.アメリカというのは不思議な国だ.自分で大金を注いで再建するはずの平和や経済活動を,他方で,一生懸命に世界中で破壊する.オサマ・ビン・ラディンを育てたり,国連を破壊しようとしたり,京都議定書やブエノス・アイレス会議もぶちこわした.自分の右手と左手が何をしているのか,それさえも良く分かっていないのだろう・・・

「私には,アメリカの外交政策に関して,眠っていても浮かんでくるほど,消すことのできない心象がある.膨大な軍隊の前衛が,敵を求めて世界中で行進している.彼らは遠くに軍隊を見つけて,そこから退避する.砲撃が開始された.しかし彼らは知らない.その標的となっているのは自分たちの後衛ではないか? ・・・」


NYT December 21, 2004

To Supply China, South African Mines Want More Trains

By NICOLE ITANO

ST Dec 21, 2004

China's foreign policy pumped by oil

By Paul Basken and Demian Mclean

NYT December 23, 2004

China Emerging as U.S. Rival for Canada's Oil

By SIMON ROMERO

(コメント) 成長のために資源を希求する中国は世界の果てにも出向くつもりです.アフリカであれ,ラテン・アメリカであれ,資源を搬出させるためなら運河や鉄道,道路,港湾を建設するでしょう.南アフリカ,オーストラリア,ブラジル,・・・彼らの投資は奔流となって富をもたらし,資源のありかを探します.

世界第二の石油消費大国となって,石油輸入量が急増している中国は,アメリカがイランの核開発に対する禁輸措置を安保理に求めた際,拒否権を行使しました.イランとの関係を深め,あるいはコロンビアへ,さらにはカナダにも石油を求めて介入します.


WP Tuesday, December 21, 2004

Social Security Slam-Dunk

By Richard Cohen

(コメント) 「社会保障制度の危機」とブッシュ氏が呼ぶようになったものは,国内において探索が始まった「大量破壊兵器(WMD)」である,とCohenは批判します.実際の危機があろうが,なかろうが,とにかくブッシュには危機が必要だから.そしてこれは,ブッシュ政権が見つけた,もう一つの「スラム・ダンク」である,と.ブッシュ氏の社会保障計画は,事実ではなく,もっぱらイデオロギーによって組み立てられています.そして再び機能しない計画に基づき,軍隊を送り込むのか? ただし今度は,イラクではなくわれわれの財布の中に!


NYT December 22, 2004

Grim Realities in Iraq

NYT December 22, 2004

Wave of the Future

By WILLIAM SAFIRE

(コメント) ファルージャの攻防を征して,アメリカのイラク統治がいよいよ選挙に向けた準備を進められるはずではなかったか? 武装集団がどこからか現れ,イラク市民やアメリカ兵を襲い,警察署や兵舎を爆撃しています.死者は増え続けているのです.

あとわずか6週間でイラク全土の投票が行えるのか?  NYTは否定的です.アメリカがイラクに侵攻して21ヶ月を経た今でも,10万人の兵力では治安を回復するのに十分では無い,と認めるのがやっとです.イギリスを除けば,アメリカが頼れるような国際的支援はなく,イラクの警察や軍隊はまるで準備ができていません.このままでは国民全体に正当性の認められた政府を樹立するはずであった選挙も,むしろシーア派とクルド人に支持され,スンニー派がボイコットした,分裂状態を反映してしまうでしょう.スンニー派の主要な勢力を占拠に参加させるために,時期を延期するような余裕も政府にはありません.イラクの旧体制を破壊するため,すべてのバース党員や軍人を占領政策から排除したことが大きな失敗となりました.

SAFIREは,これほど事態が悪化するとは予想していなかったものの,サダム・フセインの独裁体制を取り除いたことは正しかった,とその成果を確認します.それは正義の戦争であり,テロの本拠地で戦われ,アラブ世界から憎しみを取り除いて自由をもたらすという正しい目的を掲げていた,と.

確かに戦略の違いはあるだろうが,SAFIREはこの戦争の成功を示す基準はある,と考えます.すなわち @イラクの統一を維持し,国民は自由になった.Aアメリカ軍の大規模な駐留がアラブ世界の民主化を促す.B文字を読めない2000万人のイラク人が自由に暮らせることに対して,それを支援した政府が選挙で勝利している.オーストラリア,アフガニスタン,アメリカで.そしてウクライナでも独裁は排除された.

アメリカとその同盟者だけが,自由を世界にもたらす,とSAFIREは確信します.


LAT December 23, 2004

Not Home for the Holidays

NYT December 23, 2004

Christmas Eve of Destruction

By MAUREEN DOWD

CSM the December 24, 2004 edition

From your silent night, a call for compassion

By Gretchen Van Deusen

(コメント) 今年のクリスマスでは,戦場の兵士たちに想いを寄せる論説が欠かせないわけです.常に痛烈なDOWDは,ブッシュの神権政治を批判します.

私は,Van Deusenの表した,深い敬虔な心と,強固で,簡明なクリスマス精神の叙述に共感します.貧富の差を超えて,アメリカの特権を省みて,宗教や民族の違いを超えて,戦争によって奪われた子供や家族が示す悲しみによって,何より戦争が終わって欲しいと願います.

「戦争に暴力はつきものだ,という人もあるだろう.しかし,多くのアメリカ人にとって,どのような立場であれ,その悲しみに無感覚でいることはもはや不可能だ.「スマート」爆弾の誤爆で砕かれた子供の死体を抱く母の泣き叫ぶ姿を撮った写真から逃げ出すことはできない.「動くものは何でも撃て」という誰かの声で撃ち殺されたわが子を嘆き,心が張り裂けたイラク人の父親.大学へ入学するための資金を稼ぐためにイラクで従軍し,殺されてしまった19歳の息子をニュー・ジャージーに連れ帰る母親.」

「しかし,政治がどうあろうとも,われわれが自分自身のために,そしてわれわれの戦争で傷ついた数知れぬ人々のために,できること,なすべきことが一つある.それは,われわれを一つにする共通の人間性を意識し続けることである.それが苦しいときでも.また,たとえ亡くなった子供が「悪い子(テロリスト)」であっても.「われわれの敵」である親たちに共感することは愛国的でないと見なされようとも.」

人類が失ってはならない,最も重要な特質とは「共感(もしくは感情移入)」 “empathy” です.

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The Economist, December 11th 2004

Europe’s housing market: Lifting the roof

The global housing market: Flimsy foundations

(コメント) 住宅市場のバブルは,世界景気を拡大し,あるいは日本経済が長期に停滞する要因となりました.アメリカやイギリスは,バブル崩壊前の日本と,どのような点で類似し,どの程度まで異なっているのでしょうか?

住宅市場のバブルについて,The Economistはグリーンスパンの懐疑説を批判し,その影響を抑えるように求めます.しかし同時に,ヨーロッパ経済の改革や,世界経済の不均衡を改善する豊作として,ECBが金融緩和したり,住宅金融市場を改善したりできる,と主張します.

それは矛盾しているのではないか?  The Economistは,金融政策が正しく行われ,市場が機能するなら,景気の調整において生じるバブルは制御できる,と考えます.つまり,日本の(そして,今やグリーンスパンの)政策は失敗であった,と.


Russian energy firms: Ivan at the pipe

(コメント) ロシアが石油と天然ガスによって権力政治を復活させる傾向は,国内でも国際間でも,石油価格が高い間は続きそうです.それに対抗できる方法も限られています.

ロシアのオリガークたちは,石油・資源と銀行を支配し,金融市場や不正な資本逃避によって,国内だけでなく,世界中の政治家や官僚を買収しています.東中欧から中国,EUまで,石油資源の供給をますますロシアに依存する形で,プーチンやKGBと秘密警察の幹部たちと交流し,その信頼関係を強化することに向かいます.

バルト3国や東欧諸国はロシアの石油支配に抵抗してきましたが,いずれも供給を止める露骨な介入と買収で,国内秩序まで腐食されました.国際資本市場ではなく,明らかにEUが,その制度化された監視機能と権力の民主化を拡大することで,ロシア政治と石油の誘発する社会的腐食・崩壊を食い止めてほしい,と彼らは願っています.


Famine insurance: Hedging against the horsemen

(コメント) 飢餓が起きる典型的な時間経路は良く知られています.また飢餓を逃れるために農民たちは信頼する少数の作物を植えて,逆に,凶作の危険を増し,その際も,一斉に農機具や土地を売って,市場価格を暴落させます.たとえ雨が降っても,次の耕作を始めることさえできません.そうであれば,保険をかけるか,債券を発行することで,飢餓救済の資金を一部でも調達し,耕作を多様化し,農民たちに次の耕作を準備させることができるのではないか? という提案がなされるわけです.

すべての飢餓を解決するわけではなくとも,もし国際的な支援が共通基金として運用されれば,こうした保険契約や債券発行を利用することで,飢餓の基本型を抑制できるかもしれません.