IPEの果樹園2004

今週のReview

11/22-11/26

IPEのタネ

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   グローバリゼーションの政治的基礎 :インドとアメリカの選挙は何を意味するか?

2.   ドル安 :自由市場の信奉者たちも,いよいよ「調整」のときを迎えるのか?

3.   世界の大富豪 :桁外れな大富豪が生まれる現代社会を覗いてみたいですか?

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


FT November 11 2004

Ashcroft's legacy

WP Thursday, November 11, 2004

Change at Justice

(コメント) アラファトとアシュクロフト,どちらが去ったことにアメリカ人は関心を持つでしょうか? グアンタナモにおける捕囚に関する国際法無視,テロを理由とした人権無視,彫像の裸の胸を隠したり,マリファナや同性愛者に対する保守派の道徳を法律で強制したりする愚かさ.「法の支配」は,党派や偏った価値観の支配に代えられました.

その後任人事もブッシュへの忠誠を誓うAlberto R. Gonzalesです.上院が,この人事をチェックする機能を果たせるでしょうか?


FT November 11 2004

Korea cuts interest rates in surprise move

By Song Jung-a in Seoul

Nov. 12 (Bloomberg)

South Korea's Rate Cut Had a Signaling Problem

Andy Mukherjee

(コメント) 中国は金利を上げたのに,韓国は金利を下げました.なぜか? 韓国経済の景気には不安があるから? 特に,ウォン高による輸出の衰え.インフレは,目標の範囲にとどまる,と楽観した?

ウォン高はインフレを抑制しますが,輸出を損ないます.そこで景気刺激策を政府から強く求められたのではないか? と言います.しかし,すでに多額の債務を抱えた消費者は,金利を下げても支出を増やさない,とAndy Xieは予想します.また,企業も金利コストではなく,輸出の低迷によって投資を抑えたのだ,と.

アジア第三の経済でありながら,その景気回復は,一握りの企業の,少数の電器製品輸出に懸かっています.もっとドル安が進めばどうなるのか? そこで,中国と韓国の政策は早くも反対方向に動いたのです.しかし,債券市場を混乱させたことで,この「政治的な」政策変更に市場の不信が残されたようです.


ST Nov 12, 2004

Grassroots versus globalism

By Janadas Devan

世界で最強の国(アメリカ)と,人口が最多の国(インド),の選挙結果について考える上で役に立つ,二つの命題を考えてみたい.

命題1: 「社会的に意味のある生活は地域に根ざしている.特に,時間と場所に関して,地域的であるか,あるいは全く無意味であるか,だ.」

誰も群衆の中には社会についての親密なイメージを持てない.たとえばロサンジェルスに住む者が,アメリカ社会と呼ばれる何かと直接の関係を持つことなど無い.その人が直接に知っているのは自分の家族や友人であり,職場の仲間,などである.このことは,アメリカ社会,あるいは中国社会やインド社会というものが無いというわけではない.それどころか,社会や国家(民族)は明らかに存在する.国家を通じて,人々は戦争し,法律を作り,不正を取り締まり,社会的な安全網を提供し,無数の人々の社会・経済生活を決定している.

しかし,社会的存在としてわれわれを支配する密接さとは異なるレベルがある.われわれは,例えば新聞を読むとき,このことを忘れている.ファルージャ,ソマリア,ワシントン,ジャカルタなど,世界各地で起きた事件が同じページに並ぶことで,新聞や,その他のメディアは,こうした地理的に分離した出来事を共通の精神空間に存在するという印象を与える.そのような精神空間は本当に存在するが,そうした現実の直接性は,特定の地域社会で得られる日常生活の直接に経験する事実からの距離に応じて,減少する.

命題2: 「世界経済は,第一命題と完全に衝突する事実である.」

世界経済も疑いなく存在する.しかし,そこに特別な位置が無い.それは広大な取引システムであり,それに関わる人々が同じ国に住む場合よりも会う見込みがなく,彼らが会える場合よりも互いに理解する見込みもはるかに小さい.もし工業化の最初の段階がすべての価値を交換価値に還元したとすれば,その最新の段階はすべてのコミュニティーを地域性の無い空間で還流するシンボルの状態に還元してしまう.言い換えれば,世界経済とはどこにでもあり,どこにも無いのだ.

問題は,社会的存在の最初のモード,すなわちここに,今,特定のコミュニティーで,特別な空間を占めるモードを,他の,同様に現実的なモード,すなわち本質的に位置を失った,世界的モードに,どうやって結び付けるか? ということだ.

世界的モードから地域的モードを切り離すことは,明らかに,解決にならない.それは経済的な自殺行為だ.しかし,世界的モードを支持して地域的モードを抑圧することも正しくない.世界的な「われわれ」に対応した社会は無く,「われわれ」と言える人々がいないなら,社会生活には意味が無く,唯一可能なものは地域のコミュニティーであるから.

インドとアメリカは,途方も無く異なった社会であり,経済発展も異なる.しかし,彼らは同じ矛盾と格闘している.すなわち,地域的モードと世界的モードとの対立だ.

インドの場合,その矛盾は5月の選挙で明らかに示された.当時の連立政権は勝利することが確実だった.経済は例外的なほど良好で,ソフトウェア産業は世界的な役割を占め,まさにインドは「輝いていた.」 しかし,選挙で分かったように,世界的に相互連携した,主要メトロポリスに住む上昇志向の中産階級だけがそう思っていたのだ.連立政権はインドの地方の莫大な民衆によって追放された.彼らにとって,インドが世界経済の有力な経済であるかどうか,などどうでも良かったのだ.インターネットには関心が無く,地域の繋がりが重要だった.

最近のアメリカ大統領選挙では,この矛盾がそれほど明白では無いが,多分,その水面下の争点,「道徳的価値」として争われた.このことは,ブッシュ大統領とケリー上院議員の支持基盤となったコミュニティーを見れば分かる.

「ブルーの」民主党支持はケリーが得た19州よりも,実際,もっと小さかった.例えばカリフォルニアは,100万票以上をケリーに入れたが,それは人口の多い地域だけだ.この地域を除けば,その他の地域では「レッドの」共和党支持が強い.

同じことはケリーが勝利したニュー・ヨークでも言える.ブルーは人口の多い地域だけだ.アメリカの地図は,各州の各郡が真っ赤に染まっており,それを太平洋,大西洋,メキシコ湾,五大湖,ミシシッピなどの河川に点在するブルーの地域が分断するだけであることを示している.ある評論家が指摘したように,ケリー支持者は「水都の民」であり,ブッシュ支持者は「大地の民」である.

では,水の民とは誰で,彼らが占拠する土地とは何か? それは平均よりも若い,信仰の薄い,民族の混じった,結婚せず,子供もいない人々である.その都市とは,ニュー・ヨーク,サンフランシスコ,ボストン,ロサンジェルスなど,コスモポリタンで,世界的に連携したサービス経済に依拠している.オフィス・モール,製造業の中心,子供のいる家族,教会に通う人々はブッシュの国へ,すなわち郊外地域,準郊外,内陸部の田舎町へと移動した.そこには二つのアメリカがある.彼らは異なる太鼓を叩いて行進する.

5人に一人の投票者が最も重視する点は「道徳的価値」だと答えた.その80%がブッシュに入れた,という.アメリカは不寛容と反無信仰(現世的関心)に向かっている,と民主党は心配する.それは多分誇張であるし,ハートランドの謙遜した見方であろう.沿岸部のコスモポリタン文化を信用しない人々は,田舎者や頑固者ばかりではない.彼らの大部分は,安定したコミュニティーを,家族や信念に根ざしたコミュニティーを求めている.

民主党は,ますますコスモポリタンなエリートと不利な少数派の連携に依存しており,ハートランドとの再連携を学ばねばならない.また共和党は,ますます大企業と社会的な保守層との連携となっており,両派の対立する政策要綱をバランスさせる必要がある.

それぞれが,独自に,グローバリゼーションの核心にある矛盾と戦っている.それは社会的に意味のある生活は地域にしかないが,世界経済は位置を無視し,それゆえ本質的に根っこを持たない,という事実だ.


ST Nov 12, 2004

Swooning greenback

NYT November 14, 2004

As the Dollar Declines

(コメント) ブッシュ再選は,保守派による国内改革と国際介入主義に勢いを与え,それゆえドルを下落させます.アメリカの景気が良くなれば経常赤字が増えるし,インフレ率の上昇はドル暴落を連想させます.国内政策を縛られたことを気づかれないために,雇用が改善されれば,即座に,連銀は金利引上げの余地を活かします.しかし,イラクの戦況が悪化すればどうなるか? 連銀ではなく,その他の主要諸国や国連に協調を求めるしかありません.マクロ政策でも,戦争・安全保障でも.

外国政府・中央銀行が保有するドル建資産が,相互の不信や緊急の必要から売却され始めたら,不安を感じた市場参加者が追随し始めて,誰にも止めることができなくなるでしょう.

もちろん,それは必ずしも破局ではなく,望ましい調整であるわけです.アメリカが貯蓄を増やし,財政赤字や輸入を減らし,他方,その他の世界で成長を加速し,消費や投資を増やし,輸入を増やすのであれば.そして,介入であれ,自由化であれ,世界が生産性の上昇や分配の改善を持続できるのであれば.

NYTは,ブッシュ政権Uのドル安による貿易赤字の解消を,間違った政策であると批判しています.なぜなら,それは輸出業者を一時的に救済するとしても,アメリカ経済をインフレや金利高騰のリスクにさらし,財政赤字を放置して減税に耽ることで,世界経済に占めるアメリカの役割を根本的に損なうからです.

NYT November 14, 2004

In Europe, Rising Euro Gathers Much Angst

By MARK LANDLER

The Observer, Sunday November 14, 2004

When America sneezes ...

Will Hutton

LAT November 15, 2004

The Euro Sees Red

(コメント) もし輸出による刺激が失われれば,ドイツを始め,ヨーロッパの景気や雇用は再び悪化します.ユーロ高は歓迎されません.他にも,石油価格の高騰やフランスの景気,ユーロ圏の停滞,などにも関係します.しかし,ECBは口先介入を除けば,為替市場に介入する気は無いようです.

Huttonによれば,アラファトの死去とドル安が,欧米から見た世界的な重要事件でした.繰り返された危機によって,アジアもヨーロッパも為替市場への警戒と介入を高めてきました.ところがアメリカだけは,この市場の狂気から免れていると信じたわけです.それは国際金融システムの性格と,アル・カイダが煽った安全保障の不安があったからです.

他国の政府介入によってアメリカは金融不安を免れる.これは以前からあった構図であり,ユーロが誕生した理由の一つでした.しかし,今もアジア諸国はドルで市場に介入しています.問題は,これがいつまで続けられるのか? です.なぜ未だに,アメリカの消費を通じてしか世界は景気を刺激できないのか? Huttonはこれを「ファウストの契約」と呼びます.

世界がドルの資金や債務に満ちているとき,この刺激策はパニックに繋がる可能性があります.ヨーロッパが次のエンジンであろうとするなら,ユーロを完全に機能させることです.Huttonは,ユーロ圏が金融政策や財政政策の意思決定を明確にし,ヨーロッパ全体として政策を決定するべきだ,と考えます.

ブッシュ再選の勝利の叫びは,ウォール街の直後の上昇となりましたが,海外投資家にとってはドル不安,そしてアメリカへも株価への感染,動揺となりました.アメリカの財政が動かない限り,世界の主要中央銀行も動けないわけです.どこかで危機が起きる以外は?

Nov. 17 (Bloomberg)

U.S.'s Snow Laughs Off Dollar's Drop to Record

Mark Gilbert

The Guardian, Wednesday November 17, 2004

The American way

WP Wednesday, November 17, 2004

The Dangerous Dollar

By Robert J. Samuelson

FT November 18 2004

Dollar moving in one direction only: down

By Chris Giles, Andrew Balls and Steve Johnson

Nov. 18 (Bloomberg)

The U.S. Never Had a `Strong Dollar' Policy

By John M. Berry

Nov. 18 (Bloomberg)

Dollar Cure May Be Worse Than Disease

By Caroline Baum

(コメント) スノー財務長官は介入を否定し,市場はさらにドルを売りました.スノー長官は笑いが止まりません.誰であれ,アメリカほど容易に繁栄を回復できる者は居ないのです.借金で繁栄し,その後は,ドル安で繁栄する.他方,市場は連銀もドル安を歓迎していると見ています.ドル安になれば,連銀は金利引下げを先送りできます.金融政策の余地を維持できるわけです.ともに,海外投資家への気兼ねなど何も無い.

しかし,連銀はアメリカ政府に財政悪化が債券市場を不安にする,と警告しています.それは,日本などの海外投資家を通じて,アメリカ政府に圧力をかける,という認識です.連銀には,経常収支赤字を利用して,政府に財政健全化への圧力を行使する,という奇妙なメカニズムがあると見えるわけです.他方,スノー長官に言わせれば,ドル安はヨーロッパや日本がもっと成長することを求める圧力になる,というわけです.

スノー長官の態度は,有名な(悪名高い)セリフを思い出させる,とThe Guardianは懸念します.「確かにドルはわれわれの通貨だ.しかし,ドル問題とはあなたたちの問題だ.」 アメリカ(そしてイギリス)の政策担当者に言わせれば,ユーロ圏は健全な市場経済に向けて,改革に必要なこうした鞭を必要としているわけです.アメリカ経済は,成長,生産性,雇用において優れており,それゆえ世界の貯蓄がアメリカに殺到する理由があるわけです.財務次官のジョン・テイラーは,海外の投資家がアメリカに投資したがっている,というのが経常赤字の理由だ,と言います.

しかし,これはどこかで聞いたセリフです.ラムズフェルドがヨーロッパを非難するときも,こうしたネオコンのレトリックを好みました.そこでThe Guardianは,スノー長官たちのことを「エコノ・コン」(経済政策の新保守主義)と呼びます.ブッシュ政権やウォール・ストリート・ジャーナルの社説などが共有するエコノ・コンは介入主義的なヨーロッパ,その福祉依存体質を批判します.イギリスのゴードン・ブラウン蔵相も,ヨーロッパ諸国に大西洋経済を見習うように求めます.それは現実を過度に単純化し,ヨーロッパがすべての改革を受け入れないかのように描き出します.

他方,Samuelsonは,ブッシュ政権Uの最大の問題は,財政赤字でも雇用でもなく,為替市場におけるドル暴落だ,と言います.その規模は非常に大きく,それを緩和する手立ては無く,しかもブッシュ政権は何も言いません.イラクのWMD問題とは全く逆です.

国際通貨ドルは世界の潤滑油です.ドル問題は,第二次大戦後の「ドル不足」として始まりました.当時は,援助や多国籍企業の展開を通じて,欧日のドル不足を緩和してやったのです.それでもアメリカには貿易黒字がありました.彼らはアメリカから財を買ったのです.それは現在と似ていますが,異なります.つまり,世界経済へのドルの供給は刺激となりますが,彼らはアメリカから財を買っているのではなく,輸出しているのです.アメリカは経常収支の大幅な赤字国になりました.

その理由を,Samuelsonは,アメリカの相対的に高い成長と,資本流入によるドル高,に求めます.この条件は今までアメリカにも世界にも利益をもたらしましたが,それは終わったのです.世界は望む以上のドルを受け取って,今にも吐き出そうとしています.それが世界経済を恐慌に投げ込むでしょう.ドル暴落に続いて,株価や債券価格が暴落します.それはアメリカの消費を抑制し,長期金利が上昇し,住宅債務に対して利払いが増すでしょう.欧日の企業は輸出が落ち込みます.アジアやラテン・アメリカが続くのはもちろんです.

しかし,ドル安はアメリカ以外の経済が国内の成長を回復できないという弱さを示している,とSamuelsonは考えます.ヨーロッパや日本が成長していれば,アメリカの赤字も膨張しなかったはずです.もし原因が彼らの弱さとアメリカ市場への依存であれば,よく言われるような,アメリカの財政赤字を削っても問題は解決しないのです.

FTの分析は,主要国による協調的な調整政策,すなわち,アメリカが貯蓄し,欧日が成長を刺激し,中国が通貨を切り上げる(もしくは弾力性を拡大し,増価させる)という同時並行的な政策転換が可能であれば,ドル暴落は起きない,と考えます.しかし,たとえスノー財務長官がしぶしぶ共同の責任を認めても,それは困難でしょう.

なぜ為替レートがこれほど問題になるのでしょうか? インフレ率の差や金融政策・金利の差を埋める為だけであれば,為替レートの動きはさほど不可解なものではないはずです.しかし,為替レートは金融資産の価格の一部として,不意に大きく変化し,不安定になります.たとえば,なぜ経常収支が拡大するのに今までドル高は修正されなかったのか? もし国内景気変動の調整が優先されたのであれば,為替レートの変化は無視できるものであると仮定されていたのです.

しかし,特にアメリカ以外では,為替レートが貿易に影響し,それゆえ雇用にも影響します.国内の経済調整を延期(もしくは加速)し,調整の苦しみを緩和(もしくは海外に転嫁)するために,為替レートは利用されます.国内のインフレを抑制したり,財政政策や金融政策の障害を回避するためにも,利用されるのです.しかし,最後に市場の圧力が開放されていく過程で,誰が今までの関与を後悔するのか?

ドル安が進むのは,経常収支不均衡の調整過程として良いことなのか? あるいは,ドル暴落を招く悪いことなのか? 大統領選挙でケリーに投票するのとは違う意味で,海外投資家はドルと異なる選択肢を,例えばユーロを選択し始めています.しかしBaumは,投資家たちが期待するほどユーロ圏のファンダメンタルズは良くない,と言います.

またもし財政赤字が問題であれば,政府は増税で税引き後の利益を減らすより,政府支出を減らさねばならない,と考えます.経常赤字が問題なら,確実に減らすには,成長を抑えることです.しかし,世界の成長のエンジンを止めても良いのか? あるいは中国の成長を維持して,変動レートを採るように催促する?

経常収支赤字が拡大しているからドル安で調整せよ,という声に対して,それを解決するために,一層の困難を招くかもしれない,と.


WP Friday, November 12, 2004

What Hinges on Fallujah

By George F. Will

FT November 11 2004

Philip Stephens: A precarious path to peace

By Philip Stephens

(コメント) アメリカの多くの論説は,ファルージャの軍事的掃討作戦は,1月の占拠や民主的なイラクの将来にとって避けて通れないことであった,と支持しています.またイラクで,かつてボルシェビキやナチスが現れたように,イスラム過激派の拡大を食い止める必要がある,と.

ファルージャの戦闘は,アメリカとイラクの戦争が長引いているのではありません.攻撃する側は,アメリカの司令官に率いられた,アフリカから中東,中央アジア諸国,パキスタンやアフガニスタンからの兵士を含む連合軍であり,その標的は,周辺諸国などから流入した国際テロリストを含む,反政府軍・武装闘争派です.またアメリカ軍とイラクの治安維持軍とは,戦闘において,現実的な協力関係を学ぶはずです.

しかし,ブッシュ政権が軍事力に頼ってイラクを攻撃するまでは,中東世界の対抗関係は,イスラエルとイラン(イラクではなく)との間にありました.しかし今や,イランの核兵器開発を放棄させる交渉はEUが行い,ブッシュ政権はまずイラク占領に着手したわけです.ファルージャで,アメリカ兵たちは勝利しなければ帰還できません.政府にとって敗北や後退はありえません.しかし,占領が長期的に続くことを考えれば,Stephensはファルージャでの消耗戦を間違いだと考えます.

ブッシュ再選とファルージャをブレアから見れば,改革の勢いを失ってはならない,ということです.イラクで予定される選挙や,イスラエルのガザ地区撤退,アラファトの死去などを,中東和平に向けること,シャロンを交渉のテーブルに着かせ,イランを核兵器保有から遠ざけることは,イラク民主化という長期の課題とは別に,この戦争が開いた可能性を実際につかむことなのです.

The Guardian, Saturday November 13, 2004

Die, then vote. This is Falluja

Naomi Klein

The Guardian, Tuesday November 16, 2004

I wish there had been another way

Barham Salih(the deputy prime minister of Iraq)

NYT November 18, 2004

Iraq at the Tipping Point

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) これはもっと単純なことだ,と批判されています.アメリカ軍が行っているファルージャの作戦は,「投票か,さもなくば死か!」 というスローガンを,「死ね.その後で投票せよ!」 に変えただけだ,と言います.反対派を殺してから,投票で政治家を決めるであれば,それはどのような民主主義か? アメリカ海兵隊のCol Gareth Brandl准将は,「この戦いの敵には顔がある.それはサタンだ.」 と断言しました.

しかし,本当に彼らは民主主義の敵なのか? むしろ民衆の声を聞くべきではないのか? そもそも,もっと以前に選挙を行うべきではなかったのか? あるいは,アメリカ軍をもっと以前に増強しておくべきではなかったか? 政治的な代表を決めて過激派を分離し,その流入を防いでいたら,これほど混乱した事態と多くの死者は必要なかったはずです.しかし,ブッシュが選挙運動をしている間に,イラクで政治的な変化が起きる可能性はまったく無視されました.すべてはブッシュのプロパガンダだ,と匿名のアメリカ兵士は述べました.

FRIEDMANは,イラクを訪れるたびに,その帰路で自問すると言います.サダムの残党,スンニー派の叛乱,国際テロリストの保護区,・・・それが戦闘の示すものです.事態は改善しつつあるのか? 彼の印象はいつも,4対4,です.しかし,どちらが正しいのか,ファルージャによって決まる,と考えます.答はもうすぐだ,と.


FT November 12 2004

Upholding Dutch tolerant tradition

FT November 16 2004

Murder shakes Dutch faith in an open society

By Ian Bickerton

NYT November 18, 2004

Under the Cover of Islam

By IRSHAD MANJI

(コメント) Theo van Gogh殺人事件は,その報復も含めて,オランダ社会の寛容や自由の価値観を破壊しつつあります.これは二つ目の殺人事件です.最初は,2年前のPim Fortuyn殺人でした.Pim Fortuynはイスラム系移民の流入を阻止することを主張していました.しかし,そのときの犯人は動物の権利を主張する活動家でした.今回は,イスラム女性に対する抑圧を告発した映画監督に対する,明白なイスラム過激派の犯行です.

移民や同化に対する政策は,オランダにおいても転換しつつあります.この超モダンな都市国家に,トルコやモロッコからの移民が約94万5000人も,主に都市の外で暮らしています.イスラム教徒も含めた,新しい寛容と自由の伝統を,オランダ社会は模索するしかないでしょう.

リベラルなイスラム教徒として,MANJIは今のアメリカやヨーロッパに広まる反イスラム感情を経験します.そこには違いがあるようです.アメリカでは決して聞かれることの無い質問を受けます.独立した女性が神を必要とするのか? なぜ信仰が必要か? ヨーロッパでは女性のかぶるヴェールであり,アメリカではテロです.ヨーロッパとアメリカの宗教観が大きく異なるのです.宗教が知識を歪め,民衆を抑圧する道具であったのか,それとも異なる人種の混じった社会で生きるための心の支えであり,獲得した権利であるのか?

イスラム教徒の中に,もちろん,さまざまな寛容さと自由,近代世界への理解があるわけです.


IHT Saturday, November 13, 2004

China should anchor U.S. East Asia policy

Eric Teo Chu Cheow

FT November 18 2004

America must show its lasting interest in Asia policy

By Matthew Goodman

(コメント) ブッシュ政権Uのアジア政策はどうなるのでしょうか? 目覚しい成長,世界人口の30%,1兆6000億ドルの外貨準備,そして何より,中国とどう付き合うのか? ブッシュ政権は多くの点で中国との連携を深めていますが,しかし,台湾問題に関しては深刻な対立の可能性があります.あるいは,中日間のバランスをどうとるか,についても?

チリにおけるAPECの首脳会議に,彼らが参加する機会があります.北朝鮮やテロ,貿易,通貨問題が議論されます.それはアジアにおける長期的なアメリカの指導力に関して考える機会にもなるでしょう.アジア諸国にとってアメリカは,台頭する中国に対するバランサー,支配されるリスクに対するヘッジなのです.

しかし,設立後15年を経ても,APECは求心力を欠いています.安全保障に関しても,自由貿易に関しても,加盟国は錯綜した個別の試みを重ねています.アメリカが重要な方針を示さなければ,時間とともに重心が移動し続けるでしょう.・・・中国へ.


FT November 12 2004

The FT Top 25 Billionaires

FT November 12 2004

Billionaires: 1 to 11

(コメント) 世界の大富豪について,私たちは詳しい情報を知りません.彼らがどのようにして資産を得たのか? どのように資産を使っているのか? 政府や銀行であれば情報開示や行動への監視が行われているのに,それを超える個人資産家たちには,私たちと同じ?自由が与えられています.それゆえ以下のリストには興味を引かれます.

FT億万長者リストでは,単に資産が大きいだけでなく,私たちの生活に対して大きな影響力をもった人物を選んだ,というわけです.すなわち,ビジネスにおける革新や,その資産の政治的.社会的な利用において,彼らが私たちの生活を大きく変えてきた!

たとえば,なぜビル・ゲイツがトップに位置付けられたのか? それは単に彼の資産が世界最大だからではなく,彼のもたらしたコンピューターがわれわれの生活を変えたからであり,彼がその資産を使って世界最大の社会貢献・慈善家として活動しているからです.

審査員は,John Kay (economist, author and FT columnist), Richard Lambert (former editor of the FT and member of the Bank of England monetary policy committee), Geoffrey Owen (former editor of the FT and senior fellow at the London School of Economics), Martin Wolf (the FT’s chief economics commentator) です.

この社会では,何が富をもたらすのか・・・? しばらく瞑想を楽しめるはずです.

1. Bill Gates ビル・ゲイツ

1975年にPaul AllenとMicrosoftを創設.世界最大の金持ちとして,推定資産額は466億ドル(約4兆9000億円).29年を経て,世界中の発達した諸国では,デスクと家庭にコンピューターを配置させた.そのほとんどすべてがMicrosoftのWindowsで作動している.

2. Rupert Murdoch ルパート・マードック

新聞一族に生まれる.1960年代末にThe Sun and News of the Worldを買収.The New York Post,20th Century Fox,Fox TV,The Times and Sunday Timesも買収する.衛星テレビにも投資する.BskyB,Star Television,DirecTV.: 資産推定額は69億ドル(約7245億円).

3. George Soros ジョージ・ソロス

ヘッジファンド業の創始者の一人.1973年にSoros Fund Managementを創設.イングランド銀行に対して1992年9月に投機攻撃をかけ,10億ドルを稼いだ.息子たちに継がせた資産は72億ドル(約7560億円).

4. Silvio Berlusconi : イタリア首相.Fininvest 帝国で約100社を支配.

5. Gordon Moore : Intel共同創設者.

6. Steve Jobs : Apple共同創設者.

7. Nicholas Frank Oppenheimer : De Beersダイヤモンドの世界帝国.

8. Michael Bloomberg : Salomon Brothers,Bloomberg 金融情報メディアの創設者.

9. Ted Turner : Cable News Network (CNN) 創設者

10. Jeff Bezos : Amazon創設者.

11. Azim Premji : Wipro会長.インドのビル・ゲイツと呼ばれる.

12. Oprah Winfrey : Winfrey TV show

13. Richard Mellon Scaife : メロン財閥.

14. Ingvar Kamprad : スウェーデンのIkea創設者.

15. Michael Dell : Dellコンピューター販売創設者.まだ39歳にして142億ドル(1兆4910億円)の資産家.

16. Warren Buffett : 長期投資家.

17. Li Ka-shing : アジア最大のビジネスマン.コングロマリットで通信,不動産,電力,小売などを営む.

18. Paul Allen : Microsoft共同創設者.

19. Stephan Schmidheiny : スウェーデン・ドイツ系の資産家.

20. Pierre Omidyar : eBay創設者.

21. Thaksin Shinawatra : タイ首相.Shinawatra Computer and Communicationsなど,通信業.

22. Rafiq Hariri : 南部レバノンに生まれた.ファハド国王のために働く.建設・不動産業.

23. Carlos Slim Helu : メキシコの通信業.

24. Charles and David Koch : Koch Industries.石油と製造業を受け継ぐ.アメリカの保守主義を大規模に支援.

25. Prince Alwaleed bin Talal : ファハド国王の甥.サウジ・アラビアの投資会社Kingdom Holdingを率いる.


FT November 12 2004

The power and the glory

By John Kay

(コメント) なぜビル・ゲイツは,ロシアの石油王のように,政府によって資産を奪われないのでしょうか? なぜ通信,メディア,金融などの資産家は,政府と癒着してその国を滅ぼさないのでしょうか? 政治権力と経済的な富が増すことは,制度化され,法律によって合意された領域や行動の規則が無ければ,社会にとって非常に悪質な腐敗や圧政の温床となるわけです.

クリントン元大統領やブッシュ大統領,グリーンスパン議長やライス新国務長官と,ビル・ゲイツの資産とは,どれくらい違い,またどの程度関係があるのでしょうか? なぜ銀行強盗をするのか? と訊かれた有名な強盗Willie Suttonは,「そこにカネがあるから」 と答えたそうです.大企業や大銀行が誕生して以来,彼らが権力者と無関係でありえたことは無い,と誰もが思っているはずです.「GMにとって良いことは,アメリカにとっても良いことだ.」

今までJohn Kayの論説はあまり多く紹介しませんでした.たいてい,彼の結論には同意できないからです.しかし,この論説は面白くて,ためになる,機知に富んだ内容です.・・・もし富が市場ではなく,投票箱によって決められるとしたら,これほどの貧富の差は存続しえたでしょうか? 他方,富を規制する政府の正しい行為が,どれほど多くの不正や汚職,さまざまな企業と政治家との癒着,レント・シーキング活動に人類の時間を消耗させたことか? 富そのものが素晴らしい,富裕層こそが社会を豊かにする,という認識の逆転が,いよいよ世界に普及し始めたのか? 政府は富を守り,あるいは,富を略奪することから手を引くのか? 超富裕層こそは,その社会が自由で,真の慈善に満ちていることを示す証人なのか・・・?


ST Nov 13, 2004

Nuke stand-off: Time running out for N. Korea

By Jonathan Eyal

FT November 17 2004

Enemies find a better way to cool off

By Roger Cowe

IHT Thursday, November 18, 2004

Guide North Korea away from the brink

Gareth Evans

(コメント) ブッシュ再選後の北朝鮮を,周辺諸国が注目するのは当然です.現状維持による北朝鮮の核兵器開発をブッシュ政権Uが望まない以上,対話もしくは対決が進むでしょう.


ST Nov 13, 2004

FTAs When they do US more harm than good

By Bernard Gordon

(コメント) 自由貿易協定FTAsは,アメリカやEU,中国に先を越されて,日本も慌てて協議している二国間の貿易自由化ですが,以前から反対論がありました.それはバグワッティに代表されるように,GATTに比べて,個別に決められた優遇取り決めであり,それぞれの特別な条件が貿易を著しく複雑にして,多角的な自由化とは全く異なる結果を導きます.

このようなFTAsを東アジアも導入するべきでしょうか? 東アジアの新しい貿易パターンは,@日本がアメリカから輸入するよりも,中国から輸入する額の方が大きくなった.A北東アジアがアジア拡大の中核である.Bアメリカも中国も,東南アジアとの輸出入を伸ばしている.

このことが東アジア経済共同体の提案を復活させました.FTAsが重視されるのは,それが自由貿易への刺激となるからです.しかし,実際にその弊害を理解し,アメリカもGATTの形式に回帰するかもしれません.


FT November 15 2004

China should have faith in capital markets

By Glenn Hubbard and William Dudley

FT November 15 2004

Beijing blessings

(コメント) これまでは中国政府に,為替レートを変動させること,を説くことが多かったわけですが,この論説でHubbardらは,金融市場のメリット,を説いています.もちろん,この二つは重なっています.もし中国が金融市場の自由化に積極的になれば,為替レートの変動にも積極的になるからです.今まではむしろ,中国が資本規制していたことでアジア通貨・金融危機を回避できた,と主張されています.

Hubbardらによれば,発達した資本市場を持つことのメリットは,@成長率を高める.なぜなら,価格シグナルが有効に機能して投資機会を見い出し,またリスクを移転して投資しやすくするからです.A雇用を増やします.なぜなら,利用できる資本量が同じでも生産性をより大きく高め,賃金が上昇してもインフレに繋がりにくいからです.B政策担当者の意思決定を改善します.なぜなら株価や債券価格を通じて,政策へのフィードバックが迅速になるからです.C経済を安定化します.なぜなら,証券型の金融システムやデリバティブが経済の変動を安定化するからです.D家計の貯蓄により大きな収益をもたらします.それゆえ,より広く国民に富を分配します.

もちろん,正しく準備されていない場合,これまで資本市場から混乱を生じました.しかし,確認された欠陥は是正できます.金融検査や規制は厳密に行われる必要があります.そうすれば,金融市場の利益は非常に大きい,と分かるはずだ,と.

もう一つの論説は,中国市場に期待するラテン・アメリカの話です.かつて,低賃金労働力で市場を奪われる,と中国の輸出に警戒していたラテン・アメリカ諸国が,今や,農産物や資源など,一次産品の有力な輸出先として中国の成長に期待します.それは,たとえば鉱山や鉄道にも,長期投資を増やしています.

しかし,注意する必要がある,とFTは考えます.その利益の多くは短期的なものである.なぜなら中国の今の成長率は高すぎるから.もし中国が減速すれば,一次産品価格や投資は急落するかもしれません.一次産品へのあまりに狭い投資は,歴史的に,ラテン・アメリカ諸国を苦しめてきました.政府は注意深く,輸出の飛び地に成長を限定してしまわない政策を採るべきです.

金融市場であれ,中国向け輸出であれ,市場システムのプラスの側面だけを過信しないのであれば,おそらく,こうした考察は有益でしょう.


FT November 16 2004

The world needs another Plaza Accord

By Peter Bernstein

Nov. 19 (Bloomberg)

China, Asia Currency Policies Unnerve Europe

William Pesek Jr.

(コメント) ドルの直面している問題は,初めてのことでは無い.その対応にはすでに経験がある,とBernsteinは考えます.もちろん,1985年9月22日のプラザ合意のことです.その後2年間でドルは30%減価し,アメリカの経常収支赤字は減少し始め,1991年までにほとんど均衡を回復します.

難しい問題は増えています.特に,西側諸国の政府が国際金融を支配できた1985年に比べて,今では政治も金融も,より異質な多くの主体が,非常に複雑な関係を形作っています.経済的に見ても,問題の規模がはるかに大きくなっています.特に,主要国がアメリカへの輸出を成長のエンジンとしています.彼らはアメリカの調整政策を,特にドル安を,歓迎しないのです.

しかし,民間資本の流入は既にピークを過ぎて減少しつつあります.すでに中国政府は外貨準備をドルから分散させ始めています.そしてアメリカでは保護主義が高まっています.現状維持は永久に続けられず,それゆえ,今すぐにも崩壊する危険があるのです.もしそうであれば,主要国が管理されたドル安を合意する方が,すなわちプラザ合意を再現することが,市場のパニックを待つより好ましいはずです.

アメリカの都合だけで臨時の合意を模索せずに,国際的な交渉や恒常的なルールの制度化を求めるなら,私もそう思います.また,アメリカの保護主義だけでなく,アジア諸国がユーロとドルの間で為替市場への介入を行うことは,ヨーロッパ諸国を憤慨させます.特に,中国からの輸出よりも,重商主義的な政策をアジアに広めて,変動レート制度を守ろうとしない日本政府への不満が強まっています.


FT November 16 2004

The profit motive goes to war

By Felix Rohatyn and Allison Stanger

(コメント) 共和党であれ,民主党であれ,安全保障や戦争をますます民間企業の契約として軍の外部に発注する方針は同じです.すなわち,戦争が民営化されるわけです.ハリバートンがイラクで受注した額は110億〜130億ドルと推定されます.もちろん,歴史上,支配者たちは傭兵や海賊を利用してきました.しかし現代では,民間企業が軍隊を所有し,それを地球規模で展開しているのです.その背後には,財政赤字削減の圧力や軍事技術の高度化など,さまざまな理由があります.しかし民営化された戦争は,コストの削減に繋がらず,議会の調査を免れ,何よりも戦闘員と非戦闘員,戦争と営利活動との区別を失わせてしまいます.


LAT November 16, 2004

The Mirage of Colin Powell

(コメント) 多分,リベラル派が望むほど,パウエルは大統領に強く反対しなかったのだろう,とLATは考えます.リスクを嫌ったパウエルだったが,「もし2000年にパウエルが立候補していたら,ジョージ・W・ブッシュは大統領になれなかっただろう」という文章に,私の視線は止まりました.

NYT November 16, 2004

Good Soldier Powell

NYT November 16, 2004

Colin Powell's Redeeming Failures

By WALTER ISAACSON

WP Tuesday, November 16, 2004

Mr. Powell Departs

FT November 17 2004

The legacy of a failed American salesman

By Max Boot

BG November 17, 2004

The truth about Colin Powell

By Philip H. Gordon

BG November 17, 2004

Too much the good soldier

By Derrick Z. Jackson, Globe Columnist

The Guardian, Thursday November 18, 2004

Colin and the crazies

Sidney Blumenthal

LAT November 18, 2004

Powell Shouldn't Fade Away

MARGARET CARLSON

(コメント) パウエル国務長官が去って,ライス女史が指名されました.ブッシュ大統領はパウエル・ドクトリンを採用せず,ライスの先制攻撃・一方主義を採用したのです.それは9・11後の世界には新しい原理がふさわしい,とブッシュが考えるからです.他方,政治学者や歴史家によるパウエルの評価は,まだ始まったばかりです.パウエルにもライスにも,詳しい検討を始めて欲しいです.彼らのような専門官たちは,きっとそれを意識して行動すると思うからです.


The Guardian, Tuesday November 16, 2004

This is the first attempt to create a global consciousness

Jeremy Rifkin

(コメント) チャーチルが「ヨーロッパの夢」と呼んだヨーロッパの政治的統一は,初めてヨーロッパ憲章を提案し,25の加盟諸国で,4億5500万人の討議に付されました.民主的な討議への参加として,歴史上,初めての試みです.EU統合は,ヨーロッパが再び戦火を交えないように,また,グローバリゼーションに対抗した政治的意識と制度を構築するために,誕生しました.それは領土を持たず,課税や戦争への参加を加盟国に強制しないけれど,それ以外はあらゆる国家の特徴を備えています.すなわち共通の通貨,通商政策,エネルギー,運輸,情報・通信,教育,パスポート.そして議会,法律,裁判所.

それは,ある意味で,神聖ローマ帝国の再来です.ヴァチカンは,国家や都市国家の境界を越えて,最高の主権を要求しました.今や,ヨーロッパはヨーロッパ憲章にそれを再現するのです.ヨーロッパの夢,政治的統一と普遍的な人権の理想を掲げて,すべての人民が参加するように,と.それは余りに非現実的な,ユートピアの思想でしょうか?


The Japan Times, Monday, November 15, 2004

Last gasp of U.S. hegemony

By KEVIN RAFFERTY(a former managing editor for the World Bank)

ST Nov 17, 2004

Whither US foreign policy?

By Amitav Acharya

(コメント) アメリカのヘゲモニーが終わる日はブッシュ再選で早まった,とRAFFERTYは考えます.@ブッシュ再選を祝う市場の反応は愚かである.A大衆を騙すことで競い合うアメリカの民主主義は愚かである.Bイラクの混迷と貯蓄率の低下,外国資本への依存でアメリカは滅ぶだろう,と.

Acharya はアメリカの外交政策がDistraction and isolation(国際秩序への関心分散,孤立主義)に向かうだろう,と予想します.なぜなら,イラク戦争に大幅な関与を避けられないため,他の地域に回る軍事的・外交的余力が失われるからです.そして孤立主義は,ブッシュ政権の多角主義からの後退で既に予想されていたことです.Acharyaは,多角主義への復帰は必然である,と考えます.それは国際機関がアメリカの外交的なコストを分担し,アメリカ国民の多くも,ブッシュの方針を支持しつつ,国連の協力も支持しているからです.ネオコンの排除と,アジアへの関与が,その鍵を握るでしょう.


The Guardian, Tuesday November 16, 2004

Mission impossible for Powell's successor

Simon Tisdall

NYT November 17, 2004

The Friends of George

WP Wednesday, November 17, 2004

A New 'Dean' For the Diplomats?

By Jim Hoagland

(コメント) 政府の広報部長ではなく,新しい国務長官となるライス女史は,ブッシュ大統領が喜ぶことを話すだけでなく,真にアメリカにとって,また国際秩序にとって望ましいことを話す勇気があるのか? ブッシュ氏の先制攻撃を支持した彼女の発言は有名です.「われわれはキノコ雲をもたらす疑わしい拳銃が残されることを望まない.」 そして彼女は,大統領を支持するためなら事実を無視し,諜報機関のデータを誤って利用した.パウエルを葬ったホワイトハウスの権力抗争において,学者の経歴しかないライス女史が異なる意見を示すことなどできるのか? 忠誠心だけで国務長官は勤まらない,とNYTは警告します.

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The Economist, November 6th 2004

China’s economy: Please release me…

China’s banks: Root and branch

Mayhem, martial law and mobiles

(コメント) 世界経済に占める中国の重要性は高まりました.それゆえ,景気過熱や為替レート,金利など,中国の動きに注目が集まります.@中国は市場型の政策に移行しつつある.A金利引上げは中国の景気を抑制する効果があるだろう.しかし,中国の金融システムを支配する国営銀行は,その融資を決して市場型の審査に委ねていません.資本コストなど無視した地方の支店が,地方政府や関連企業に融資を拡大しています.その結果は投資効率の悪化,ボトルネック,過剰投資,不良再建,バブル,インフレ懸念,変動レートへの不安,固定為替レートと金融政策の放棄,資本逃避の抑圧,などです.中国経済が軟着陸に成功すると楽観できるのは,まだ当分,先のことです.

地方経済は金融引締めや社会不安の先端にあり,辺境地域の少数民族と漢民族との対立や所得格差の問題は,ついに携帯電話による結集と警察署襲撃,戒厳令などを引き起こしつつある,と言われます.


Richard Haass: The world on his desk

(コメント) 外交評議会の会長を務めるハースの論説です.ブッシュ政権Uが直面する課題について,的確に世界の政治情勢を要約しています.

外交方針は,世界情勢とアメリカの状態を考慮して,いわば掛け算で,政権の指導部が基本方針を作ります.まず世界について,@テロの脅威,Aイラク統治,Bアフガニスタン支援,C北朝鮮とイランの核問題,Dイスラエルとパレスチナの和平,Eダルフールの民族虐殺,F中国・台湾問題,Gロシアの安定化,です.

アメリカの状態は,さまざまな政治的リスクとともに,唯一の超大国でありながら,その内部に問題を抱えています.財政赤字と経常終止の赤字は,成長を蝕み,対外援助やエイズ対策,国内の財政支出も抑制させるだけでなく,金融政策にも制約となるでしょう.石油と貯蓄をますます海外に依存するアメリカは,その意味でも,イラク統治の成功に更なる努力を求められるわけです.他方,好ましい点として,中国,ロシア,日本,インドなど,大国との関係はきわめて良好だ,と指摘します.

そこで,アメリカ外交の方針は,@イラクを機能する国家として再建する,A北朝鮮とイランを国際システムに取りこむ,B中東和平交渉を復活させる,C台湾海峡の危機を先送りする,DWTOの貿易自由化交渉を強く支援する,Eダルフールに介入するアフリカ機構を多面的に支援し,スーダン政府への国際的な制裁を指導する,Fヨーロッパとの関係改善,Gテロとの戦いを継続し,アラブ世界の改革を促す,Hアメリカ自身がその経済的な基礎を健全化する.


Gangmasters: Salad days

(コメント) イギリスの沿岸で沈没し,多くの難民が溺死するような事件が,政府に移民・難民を斡旋するブローカーや人身売買組織への強い規制を求めました.しかし,この記事はイギリス人の食事が,スーパーマーケットに並ぶ,きれいなサラダが,彼ら移民労働者の大きな需要を生み出している,と紹介します.