IPEの果樹園2004

今週のReview

11/15-11/19

IPEのタネ

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   アラファト :テロリストから民族の英雄となった人物の評価も分裂したままです.

2.   日本の景気回復 :日本の「ウェイジレス・リカバリー」について,どう思いますか?

3.   ブッシュ再選 :新しい現実に挑戦するために,この事実を理解しようとします.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


The Guardian, Thursday November 4, 2004

This is no passing phase. This is now an era

Jonathan Freedland

LAT November 4, 2004

Bush's Solid, McKinley-Style Victory

Max Boot

(コメント) フロリダを襲う嵐のように,ブッシュの4年間が過ぎ去ることを願っていた人々は,今や,そうでは無いと知りました.これは現実であり,後4年かけて,ブッシュは世界を作り変えてしまう! わたしたちはブッシュの時代を生きなければならないのです.

1000人以上の米兵を死なせ,大量破壊兵器が無くても,大統領は何の責任も取らない.ネオコンでさえブッシュの強硬策を止められません.イランでイスラム原理主義の,北朝鮮では共産主義独裁国家の,核開発計画を叩き,ダルフールでも軍事介入する? あるいはテロとの戦いに合意できれば,民主主義や人権など重要ではなくなり,資源を持つロシアや,市場を持つ中国こそ,将来の最も重要な同盟諸国になる? ・・・悪夢から覚めたいと願っていた人々は,こうした悪夢の実現に立ち会うわけです.

それは1900年の選挙でマッキンレーが得た勝利と同じでした.当時も,フィリピンを平定するために米軍が展開していました.他方,ジョンソン大統領もトルーマン大統領も,戦争によって再選されませんでした.ブッシュに対しては,ヨーロッパ諸政府に加えて,ジョージ・ソロスからビン・ラディン,ポール・クルーグマンからマイケル・ムーアまで,その再選を阻止しようと戦ったのですから,瞠目すべき大勝利と言えます.アメリカ国民の多くが,ケリーよりブッシュを,時代の好ましい指導者に選んだのです.

もちろん,民主党を始め,他の多くの人は,ブッシュをローマ帝政のカリギュラ以来,最悪の指導者であると確信しています.

The Guardian, Thursday November 4, 2004

Great vote, grisly result

Timothy Garton Ash

NYT November 4, 2004

An Industry in India Cheers Bush's Victory

By SARITHA RAI

(コメント) それは南アフリカを思わせた,とAshは嘆きます.アメリカ中で有権者が投票所に列をなしました.ホワイト・ハウスから15分も車で走れば,それはソウェトを思わせる黒人の町です.彼らにとってブッシュに投票することは死を意味する,とある女性は言います.実際,彼女の兄弟は兵士の募集に応じ,イラクに向かいます.

彼らは貧しいだけでなく,さまざまな大資本が操るメディアや弁護士たちによって騙されています.しかし,驚いたことに,黒人のおばあさんはブッシュに投票した,と言います.ブッシュは間違いなくバカだが,ケリーよりも分かりやすいから,と.そして,多くの結婚した女性はブッシュに投票しました.それは,堕胎や同性愛に対して,ブッシュが家族愛をシンボルとしたからです.

この選挙結果を受けて,ヨーロッパ人がブッシュをアメリカの代表と見なすなら,それは大間違いです.アメリカは分裂したままであり,政治家も国民も重要な問題について意見をまとめられないのです.アメリカにはヨーロッパと同じ嗜好と価値をもつ人々が多くいます.後4年を経て,そのような人々も,アメリカのソウェトも,もっとはっきりと理解するでしょう.

海外でも,ブッシュの再選を歓迎する声はあります.アラブ諸国でも,意外にブッシュ再選と米軍の増強を支持する声もあった,と言います.また,ケリーの保護主義を恐れて,ブッシュを支持する声が中国やインドにはあったわけです.


ST Nov 5, 2004

Bush's spin on manifest destiny doctrine

By Pranay Gupte

ブッシュ再選を受けて,三人の名前を思い出す.第10代John Tyler と第11代のJames Polk大統領,そして同時代のジャーナリストJohn Louis O'Sullivanである.1845年にO'Sullivanは,アメリカが領土的な拡大を目指すことはアメリカの'manifest destiny'「宿命」であると主張した.そしてこの時代に,アメリカはカリフォルニアやニュー・メキシコに及ぶ領土を拡張した.

ブッシュが先制攻撃を唱えてアフガニスタンやイラクに侵攻するまでは,第11代のPolk大統領が,アメリカは獲得可能な限りの領土を支配する資格を有する,と主張していた.現代においても,アメリカが世界の事件に関与するのは,基本的にこの「宿命」論による.もっとも善意の形として,それはジョン・F・ケネディーの創設した平和部隊であり,植民地から独立したばかりの貧しい諸国を支援するために行われた.そのせいで,今も多くの第三世界の国でケネディーの写真が飾られている.

しかし,彼らは決してブッシュの写真を飾らないだろう.アメリカは軍隊や権力・支配を輸出するだけでなく,他国に嫌われるような,そのイデオロギーを輸出する.アメリカのテレビを見れば,どのトークショーでも,キリスト教福音派の原理主義者が,イスラムの異教徒や他の信仰心に欠ける者について,熱狂的に話している.しかし,190ヶ国に住む61億の人々はアメリカのキリスト教福音派ではない.

ブッシュはアメリカを右寄りの価値観,家族の価値や道徳観で支配する.他方,民主党は今も,アメリカの権力が地に落ちた1968年と同様に,ヴェトナム戦争とヒッピーや「自由恋愛」世代によるアメリカの退廃によって非難され,十分に反撃できない.

アメリカにおける政府の中心的な論争においては,宿命論を唱える以前から,長く,道徳的価値を法制化しないようにしていた.ブッシュと右派は,この歴史的な(正しい)先例を無視する.堕胎の権利を攻撃し,貧しい者が健康保険に入ることを嫌い,彼らは働こうとしない怠け者だ,という理由で貧しい者への支援を中止させる.こうしたことがブッシュの4年間で強まってきた.

ブッシュが再選されたことで,キリスト教右派の勢いは増し,国内では過激になり,海外へも輸出するだろう.アメリカの大統領がその「宿命」をどのように考えるかは,世界にとって重要だ.ブッシュが方針を変える見込みは無い.その熱狂的な支持者たちは,明白な優位以外に,ブッシュの遺産として何も望まない.それは世界にとっての恐怖である.


NYT November 5, 2004

No Surrender

By PAUL KRUGMAN

NYT November 5, 2004

Why We Lost

By ANDREI CHERNY

NYT November 5, 2004

Why They Won

By THOMAS FRANK

(コメント) ブッシュ大統領は保守的な人物ではない.彼はラディカルだ.現実のアメリカを嫌っている.と,クルーグマンは言います.彼はフランクリン・ルーズベルトが築いたアメリカの連合を破壊しました.それは社会保障,特にメディケアによって得られたものでした.また,教会と国家との区別も失わせてしまいました.

今回の選挙で,9・11と信仰の助けを借りても,ブッシュと共和党は無敵でないことを示せた.民主党は敗北主義に沈んでいるときではない,とクルーグマンは励まします.なぜならブッシュ政権Uは,汚職や秘密,失敗を続けるだろうから.アル・カイダはさらに増強されているから.ブッシュに屈するな.党派性を超えて国を統一する,というブッシュの狂言に騙されるな,と.

なぜ民主党は勝てないのか? ブッシュより優れた指導者になれたはずの二人,ゴアとケリーを支持していたCHERNYは自問します.そして,民主党が乗り越えられないのは,何が彼らの目指すものなのか,明確でないからだ,と考えます.ケリーの政策は十分に明確ですが,ブッシュのような明確な世界観が無いのです.1996年の選挙戦でクリントンが述べたように,大きな政府の時代は終わった,と皆が感じています.では,民主党は何を目指すのか?

人々は変化を期待していました.しかし,ケリーで何が変わるのか,それが明確では無いのです.デタラメであるにしても,共和党には明確なビジョンが示されています.答えを知っているとはいえないが,答えなければならない問題は分かっている.「グローバル化した世界の経済政策をどうするか?」 「多くのアメリカ人が権力に求める選択と意思決定にどう答えるか?」 「アメリカの道徳や精神をどのように満たすか?」 「共和党の外交政策を批判するより,われわれの安全をどのように確保するか?」

逆に,なぜ共和党は勝利できるのか? 社会保障を解体し,金持ちのために減税する政党が,なぜ多くの票を集めるのか? @国内で続く「文化戦争」の重要性.特に,保守派の「リベラル」批判.Aソフトな「中道戦略」.経済ポピュリズムを文化ポピュリズムで分断し,ブルー・カラーにまで支持を拡大した.

Guardian , Friday November 5, 2004

Bush will now celebrate by putting Falluja to the torch

Robin Cook

LAT November 5, 2004

Christian Conservatives Must Not Compromise

By Frank Pastor

WP Friday, November 5, 2004

The Domestic Agenda

(コメント) ブッシュ政権は軟化し,柔軟に対応する,と予想する意見もあります.選挙では,逆に,アメリカの5500万人が投票によってブッシュが退陣することを望んだのです.たとえば,ウォルフォヴィッツやラムズフェルドのようなネオコンは生き残れるでしょうか? 彼らは再選を得て,ファルージャを血祭りに挙げるのでしょうか? シャロンとどこまで手を組めるでしょうか? むしろ,ブッシュ氏がテロとの戦いを進める近道は,ネオコンを切り,シャロンを説得して,中東和平を実現することかもしれません.

しかし,キリスト教右派が妥協することなど期待できません.政府の隠してきた諸問題に,今後,難しい解決策が求められるほど,ブッシュ氏はその政治基盤をキリスト教右派に頼るでしょう.国際法を無視したテロとの戦争における囚人の扱いや,開戦と戦後処理のあり方について,どれほどヨーロッパ諸国や左派,国連が苦情を述べても,そんなことに構うことは無い.アメリカは強く,正しいのだから.世界の自由を拡大するために行動する.邪悪な世界における輝く都市として,われわれは喜んで世界の敵にもなろう! ・・・と.

WP Friday, November 5, 2004

What Bush Can Do to Salvage Iraq

By David Ignatius

WP Saturday, November 6, 2004

Turn Back to Iraq

(コメント) ブッシュ政権Uにイラクは再建できるか? 彼は何よりもイラクに足を取られています.アラウィは治安を回復できず,国民の支持を失いつつあるのです.ファルージャの興亡は,たとえ米軍によって勝利しても,アラウィ政権を葬るかもしれません.人々はPOIを,「イラク人民」ではなく,「イラクに小便をかける」の省略だ,と思っています.新しい政府が選挙で決まれば,ブッシュ氏は米軍の撤退を交渉できるのか?

ブッシュ再選を合図として,米軍はファルージャへの攻勢を強めました.大統領選挙において責任を問われなかったとしても,ブッシュ政権Uの評価はイラクで決まるのです.ブッシュ氏はイラクの治安回復や税制の確立,その他の現実問題に直面しています.ところが,国連のアナン事務総長は,早速,責任を回避するために戦闘の中止を求めた,とWPは懸念します.ブッシュ氏とアラウィ首相は,この機会に,戦闘の目的を説明しなければなりません.

さらに1月の選挙で勝利し,イラク再建への国際支援を得なければなりません.アナン氏やパウエル氏が離反する中で,ブッシュ政権Uは方針転換を図るでしょうか?

BG November 7, 2004

Some friendly advice to make a better second term

By Mickey Edwards

WP Monday, November 8, 2004

Bush's Ungrounded Vision

By Sebastian Mallaby

Nov. 9 (Bloomberg)

Bush Has a Narrow Window to Spend His Capital

Caroline Baum

NYT November 9, 2004

Can Bush Break the Second-Term Jinx?

By LOU CANNON

The Guardian, Thursday November 11, 2004

What to do about Bush

Timothy Garton Ash

(コメント) 元共和党議員のMickey Edwardsはブッシュ氏に求めます.@支持を広げよ.Aフランスやドイツとも手を組め.Bラムズフェルドやアシュクロフトを外して,政府を刷新せよ.C憲法をよく読め.

現実的な民主党にはビジョンが無く,ビジョンを説く共和党には現実が見えていない,とMallabyは今回の選挙を振り返ります.一体,このビジョンに酔った指導者が,戦争や財政や社会保障制度を現実に改善できるのか? すなわち,ブッシュがこの選挙で得た政治的な権限とは,所詮,政治的資本のバブルに過ぎない! どれほど魅力的なビジョンを並べる政治家も,現実を無視するなら危険でしかない.

この勝利によって,ブッシュ氏が社会保障制度再建や税制簡素化に成功するか,Baumも懐疑的です.その理由は,「再選された大統領は砂時計でしかない」からです.中間選挙で議席を失い,5年目・6年目には政府の主要メンバーが新しい仕事を見つけて移り,議員たちは次の候補者を捜し始めます.大統領が政治を行う権限は着実に失われるのです.また,ブッシュ氏はレーガン氏ほど,冷戦終結のような恵まれた国際舞台にもいないし,財政政策の転換に動きそうにありません.

ローラ・ブッシュは「イラクは民主化しつつあります」とラリー・キング.ショーで言い切りました.彼女がそう信じているから,そう言ったのです.事実が何であれ.宇宙船ブッシュ号に乗った人々がアメリカの権力を握ったことに対して,ヨーロッパは何をなすべきか? とAshは問います.そして,ブッシュに反対したアメリカの48%と協力するべきだ,と考えます.

ヨーロッパには三つの選択肢があるのです.@アメリカはオーウェルの「ビッグ・ブラザー」だと思い,交渉を断つ.Aヨーロッパ要塞を建設してアメリカに対抗する.すなわち,ジャック・シラクの選択.Bアメリカを説得する.すなわち,トニー・ブレアの選択.アメリカを無視しても,ヨーロッパは世界の主要な変化から取り残されるでしょう.他方,アメリカに対抗することは成功しません.アメリカはいつでもヨーロッパを分断し,屈服させるからです.それゆえ,Ashはシラクとブレアを合成したヨーロッパ大統領を望みます.アメリカを説得できるほど強力な外交政策,安全保障について統一した意見を示せる,ヨーロッパの大統領を選ぶことです.


The Guardian, Friday November 5, 2004

A tragedy and an opportunity

Jonathan Steele

植民地支配から民族の独立を唱えたタンザニアのニエレレのように,ヤセル・アラファトはパレスチナにとっての「国父」である.脱植民地の時代から40年を経て,彼はその最後の人となった.アラファトはその称号にふさわしい.彼は,パレスチナ民族がいる,ということを認めさせる必要があった.何十年も,アラブ諸国や,パレスチナの最後の統治者であったイギリス,その土地を蹂躙したイスラエルは,民族どころか,パレスチナ人の存在も認めなかった.

他の独立の指導者と違って,アラファトは,入植者のコミュニティーがピークを過ぎて,中枢諸国の政府が支持を弱めて行く中で戦ったのではなかった.彼は絶えず拡大する入植者の波と闘わねばならなかったし,それは意志の固い政府に支援され,屈強な軍隊と連携しており,さらに,それらを世界の超大国が支持し,少なくとも反対しなかったのだ.そこには確定された領土も無かった.今に至るまで,絶えず縮小の脅威にさらされた.

このような状況でも揺るがず,政治的団結を維持した.そして軍事的に包囲され,住居を破壊され,暗殺の標的となりながら,人々の意志を高めて抵抗を続けたことは驚くべきことである.防戦に終始することから,国家の建設を始めるまでに至ったことは,ほとんど不可能なことなのだ.アラファトはこれを成し遂げたから,彼の人民に愛された.単なる独立の象徴ではなく,尊敬と愛情を受ける人物であったから,彼は偉大なのだ.

パレスチナ人の多くは,シャロンがアラファトの死に関わっている,と確信する.彼らは今年初めのシャロンの言葉を忘れていない.シャロンは,もはやアラファトに「危害を加えない」という約束に縛られない,と述べた.またthe Jerusalem Postは昨日,シャロンが彼の手下にアラファトを「始末させた」と示唆した.だから,アラファトは毒殺されたか,感染させられた,という噂が広まるのも当然である.

一つだけ,アラファトはシャロンに助けられた.イスラエルの首相がこの3年間,アラファトとの交渉を拒否し,ジョージ・ブッシュにもアラファトを排除させたことは,逆に,内外でアラファトの支持を拡大した.いかなる障害を設けても,外交官たちの使節はアラファトのほとんど牢獄に近い住居を訪れ続けた.

交渉する前に,アラファトがパレスチナ国家を「改革」しなければならないとか,自爆テロを「管理」しなければならない,というのは馬鹿げている.イスラエルの挑発的な襲撃が「暴力の連鎖」の主要なモーターであるというのに,指導者が自由にそれを止めさせられるはずがない.

アラファトがいてもいなくても,停戦と交渉再開は彼の後継者がしなければならない.ヨーロッパの諸政府は,ロシア,アメリカ,国連とともに,シャロンの一方的なガザからの撤退をいわゆる「ロード・マップ」の過程に埋め込むよう主張しなければならない.

イスラエルの撤退は,決して,不法に占拠された領土を保持する権利を「買い取った」ように理解されてはならない.それは,ガザの境界線を決める国際的に受け入れられた文書が無いまま,西岸について以前に主張された提案やイスラエル軍が再び侵攻しないという非軍事化の進展と結び付くわけではないのだ.

難民の帰還権や領土の最終的確定を含む,西岸の諸問題が話し合われねばならない.そうでない限り,イスラエルは西岸を,人口の過密した,経済的に機能できないようなバンツースタン(南アフリカ内にあった黒人居住地)に変える一連の試みを,今後も継続するだろう.

ブッシュの再選は,アメリカの政策に,理論上,変化の可能性を与えた.二期目のブッシュ政権には政治的な制約が少ない.シャロンの一方主義を煽るようなことは止め,彼をロード・マップに復帰させることだ.

アラファトの死は,悲劇であるとともに,機会である.彼はパレスチナの父であるが,まだパレスチナ国家の父ではない.その役割は誰かが担うはずだ.誰がそれをするかは,パレスチナ人が決める.外部の者がその地位を決めても,アラファトの威光は得られない.


WP Friday, November 5, 2004

After Arafat, What?

By Dennis Ross(director for policy planning in the State Department under President George H.W. Bush and special Middle East coordinator under President Bill Clinton)

The Guardian, Saturday November 6, 2004

A time of outrage and loss

Ahmad Samih Khalidi(a former Palestinian negotiator and a senior associate member of St Antony's College, Oxford)

WP Sunday, November 7, 2004

Beyond Arafat

By Jim Hoagland

NYT November 7, 2004

Footprints in the Sand

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) アメリカ政府の中東政策に関わってきたRossは,アラファトを不決断と失敗の象徴と見なします.アラファトはパレスチナの不幸な過去を象徴しており,その未来を意味しません.彼はその重要な地位にありながら,ガザ地区や西岸で混沌とアナーキーが支配するのを放置し,問題解決に何もしてこなかった,と.

アラファト後についても,Rossは,各派の内戦が深刻になり,権威は回復されないだろう,と悲観します.しかし,たとえハマスであっても,パレスチナ人によって選出された政府の命令であれば従うだろうし,後継者を選挙によって決めることで権力を確立できる,と期待します.アラファトがパレスチナ国家の内部で選挙を求めた改革派を阻止していた,と批判します.

他方,パレスチナ側で交渉に関わったKhalidiは,アラファトの積極的な役割を評価しています.パレスチナにとって重要な彼の貢献とは,イスラエルの侵攻にいつも脅かされながら,その支配下でも抵抗の組織を築いたことです.彼が率いるファタハは,パレスチナに民族としての自覚を与えました.そしてPLOを通じて,パレスチナを代表する政治組織を構築したのです.

アラファトは,1988年の平和的解決と二国家案を受諾しました.パレスチナのすべての土地を解放するまで戦う,という反対意見を退けて,現実的で,国際的にも支持された解決策を彼は選択しました.その後のオスロ合意に至る重要な妥協は,アラファトがいなければ実現できなかった,とKhalidiは言います.その重要性は,後から交渉に参加した西側の議論に見失われている,と.

アラファトはパレスチナ人民の多数を代表する,1996年の選挙で選ばれた指導者なのです.また,2000年のキャンプ・デーヴィッドで合意できなかったことをアラファトの責任にするのは間違いです.その混乱した,不完全な提案を受け入れるのは,パレスチナの精神に反する,と彼が直感したから合意できなかったのです.パレスチナ人の運動を30年以上も統合してきたアラファトを無視して,交渉相手など見つかるはずが無い,とKhalidiはシャロンやブッシュを批判します.むしろ,それは合意された1967年の境界線さえも失うことになるだろう,と警告します.

イスラエルによって分断され,孤立した地域の村々に,最小限の保障を与えることで合意させてしまうシャロンの意図を,Khalidiは嫌います.アラファトはパレスチナの解放を,この土地からイスラエルの武力によって追放された人々の声としてまとめてきました.アラファトが望んだように,彼らは,逃亡し,離散させられたパレスチナの民に,その政治的な統合を回復できる道を見出さねばならない,と考えます.

他方でHoaglandは,アラファトとその仲間たちはPLOとその支配する財政,海外からの援助を私物化していた,と非難しています.パレスチナ社会を分断し,自分たちの腐敗した利権を保持しておくために,その他のあらゆる解決策を拒んできたのだ,と.アラファトは,所詮,永遠に追放者であり,アラブ諸国の反イスラエル感情に依拠して生活し続けた軍閥の首領なのです.

FRIEDMANは,アラファトが世界で行った多くのテロよりも,オスロからキャンプ・デーヴィッドでの会談失敗後,1990年代に,自己の権力を維持するため行ったパレスチナ人の間で行ったテロに対して,歴史が彼を裁くだろう,と言います.アラファトは,アラブの指導者たちがイスラエルと合意してエルサレムを分割し,共存する道を嫌った.アラファトとフセインという二人の独裁者が去った中東世界にこそ,新しい希望が見出される,と考えます.

LAT November 10, 2004

Palestinians Need a Gandhi, Not a New Arafat

By Eric Weiner

IHT Friday, November 12, 2004

Shimon Peres: Palestinians lose a father

Shimon Peres

(コメント) アラファトの後継者は,ガンジーの伝統に学んで欲しい,とWeinerは考えます.ガンジーは,武力ではなく「魂の力」で,大英帝国に勝利しました.他方,銃弾や爆弾,投石によるインティファーダは既に4年に及び,勝利の兆しもありません.それによりパレスチナ社会は激しく疲弊しました.ハマスやイスラム聖戦機構と異なり,ガンジーは目的によって手段を正当化しませんでした.目的と手段は,その精神において統一されていたのです.

もしガンジーが生きていたら,アラファトの後継者に疑いなく述べたはずです.「暴力によって得られた自由は,決して自由ではない.」 アメリカのマーチン・ルーサー・キングJrもしばしばガンジーを引用しました.フィリピンの人民革命も,ポーランドの連帯も,・・・ そして彼らは勝利しました.

ペレス元首相の複雑なアラファト追悼文を味わってください.アラファトとペレスが交渉を重ねて,いつか真に理解し合えたら,中東世界は変わっていただろう,と思います.


BG November 11, 2004

Arafat the monster

By Jeff Jacoby, Globe Columnist

(コメント) 誰もがアラファトの名を知っており,ジャーナリストたちはさまざまに彼を評価する.しかし,アラファトに殺された多くの子供たちの名を言える者がいるか? とJacobyは批判します.

LAT November 11, 2004

How Arafat Got Away With It

Max Boot

死者を非難するのは好ましくないが,アラファトは例外だ.ヨーロッパの諸帝国が滅亡した後,第三世界で行われた失敗のすべてを現す,哀愁に満ちた人物である.

20世紀後半の「解放された」諸国では,余りにも多くの支配者たちがルイ14世の政治哲学に熱中した.毛沢東,スカルノ,ムガベ,カダフィ,ナセル.彼らの強欲さも,その残忍さと同じく,限りが無かった.

たとえ彼らがその人民を拷問にかけて苦しめても,西側世界のサロンでは名士であった.ヨーロッパやアメリカのインテリは,過去への罪悪感と革命への代償的な情念が混じりあった感覚,そして西側の基準になじまないと思えるアフリカやアジアの民に対する譲歩から,「民族解放」の名において行われるあらゆる犯罪を容認した.

アラファトは,1969年にPLOを乗っ取ってから,この敬意を利用した.彼とその仲間は何十億ドルもの資金を得て,さまざまな敵や「協力者」に暴力を振るい,権力を保持し続けた.その報酬として,アラファトは世界的なお世辞と,ノーベル平和賞まで得た.

現代でこれほど成功したテロリストは他に居ない.彼の最大の犠牲者はイスラエルだ.そして最も苦しんでいるのはパレスチナの人民だ.もしアラファトにガンジーやマンデラの知恵があれば,とっくにガザ地区とエルサレムの一部,そして西岸の少なくとも95%で,パレスチナ国家を独立させていたはずだ.

西側指導者の中でジョージ・W・ブッシュだけが,パレスチナの殺人集団の首領とは取引しない,という勇気を示した.2002年6月の演説で,大統領はパレスチナ人民に「テロと妥協しない,新しい指導者を選びなさい」と呼びかけた.そして「寛容と自由に基づいて,民主主義を実践しなさい」 と.

アラファトの後継者が平和と多元主義を強く約束するなら,西側の褒美が得られるだろう.そしてもう暫く,アメリカと同盟諸国は,アラファト風の新しいガンマンの新世代ではなく,パレスチナの民主主義を支持して,活動する必要がある.


NYT November 5, 2004

Deadly Hatreds in the Netherlands

(コメント) 再びオランダで,移民や人種に関心を集めるような殺人事件が起きました.記事は,問題がイスラム教徒の移民ではなく,オランダ社会が多様に展開できていないことに求めています.そして,反イスラム政策が,罪も無い多くの移民や難民の生活を脅かす,と警告します.


NYT November 6, 2004

Time to Get Religion

By NICHOLAS D. KRISTOF

NYT November 6, 2004

The Values-Vote Myth

By DAVID BROOKS

LAT November 7, 2004

We're Saved. You Lost. Now What?

By Michael Skube

LAT November 8, 2004

What We Bush Voters Share: In God We Trust

By David Klinghoffer

BG November 10, 2004

Democrats: Get religion!

By Stephen Prothero

BG November 10, 2004

No, the pocketbook rules

By Robert Kuttner

(コメント) 今回の敗北の原因,大統領選挙に関する「宗教」や「文化」の影響が考察され続けています.共和党に習って宗教を重視するより,今後も,経済的困窮を扱うのが民主党なのか?


WP November 7, 2004

Darfur Slides

LAT November 8, 2004

Apply the Bush Doctrine to Sudan

By Thomas Donnelly and Vance Serchuk

LAT November 8, 2004

Unsafe for Democracy

By Andrew J. Bacevich

(コメント) 「火曜日の夜明け頃,アメリカが投票を始める数時間前に,スーダンの警察と兵士は南部ダルフールにある離散した人々のキャンプに到着した.彼らは小屋に火を放ち,人々を警棒で殴り,数知れぬ人々を銃撃した.さらに250に及ぶ家族をトラックで連れ去った.こうしたことがナイジェリアの停戦監視団からわずか8マイルしか離れていないキャンプで起きている.」

アメリカが中心となってまとめたスーダン政府への警告,アフリカ連合による戦争犯罪の監視は失敗です.少なくとも30万人に達すると言われる政府は支援した大量虐殺に対して,ブッシュ政権は何をするべきか? 国際協調による圧力の強化か,あるいは,アメリカによる武力行使か?

Bacevichの論説は,だからブッシュ・ドクトリンを適用せよ,という主張を批判します.レーガンであれ,クリントンであれ,アメリカが国際的な軍事介入を行うときは決まって「自由のために」,「民主主義を求めて戦う人々のために」 などと言います.このインスタント・ウィルソン主義は,常に使用されるわけではなく,アメリカの都合に合わせて,選別的に利用されるからです.

なぜバルカン半島には空爆し,ルワンダの虐殺は無視したのか? なぜイラクでは「正しいことをするのだ」と自慢しながら,スーダンの虐殺を放置するのか? もちろん,アメリカはヨーロッパほどアフリカ内陸部に関心が無く,スーダンにはイラクのように石油が無いからです.このような偽善性は,共和党にも民主党にも,パリにもベルリンにも遍在しています.善と悪の世界で,悪を退治すると称するアメリカは,すでに10万人のイラク人を殺して,アブ・グレイブのような虐待を行いました.それでもアメリカの支配は利益をもたらすものだ,とケリーでさえ断言します.

9・11後のアメリカがたどった道は正しくなかった.それは賢明でも,持続可能でもなく,失敗するに違いない.そして,大統領選挙がその事実を認める機会にもならなかった,と.


ST Nov 8, 2004

Much wind over gas

ST Nov 10, 2004

Japan and China on collision course

By Michael Vatikiotis

(コメント) 東シナ海に地下資源があれば,@境界を定めて個別に開発する.A地下資源が繋がっているとしたら,共同で開発する,と考えるでしょう.しかし,日中間で境界についてもトラブルが継続しており,共同開発への政治的な意志は薄弱です.無人島の領土問題から,靖国神社や歴史問題,公海を経済領域として分割する基準など,東アジアが多国間協議を重ねる必要があるわけです.

Vatikiotisは,貿易額1000億ドルが示すように,双方が共棲的に成長しつつある日中間で,台湾海峡よりはるかに恐るべき「新しい冷戦」が始まっている,と警告しています.私は「冷戦」のレトリックが使用されることは間違っていると思います.しかし問題があれば,直ちに積極的に交渉して解決を見出すべきでしょう.アジア間の問題解決能力を高める時期なのです.


FT November 8 2004

The economics of a second term

By Adam Posen

(コメント) ブッシュ政権Uは,もちろん,権力を用いて支持派の政治基盤を拡大し,反対派のそれを解体することに邁進するだろう,とPosenは指摘します.社会保障制度を民営化し,減税を恒久化し,企業訴訟を制限する,という三つの方針が示されています.それは,ブッシュと共和党支持者(例えばウォール街)にとって有利であり,民主党支持者(例えば弁護士)にとって不利な方針です.そして,アメリカの利益を実現する上で自分たちの利益を優先するのではなく,アメリカの利益に反しても行おうとするのです.最高裁や連邦準備制度の人選においても,ブッシュは自分の利益を押し通すでしょう.

日本でもイギリスでも,保守派の支配は永続せず,反対派が政権に就くと彼らの「改革」を葬り去ることをブッシュは学びました.だから彼は,今の内のその芽をすべて予防的に摘み取ってしまうのです.


FT November 9 2004

Japan's wageless recovery

By David Pilling

FT November 9 2004

Asia ripe for a currency shake-up

By Akio Mikuni

(コメント) 日本の景気回復は,なぜいつまでも外需や輸出向けの投資などに偏ったままで,賃金上昇と国内消費に向かわないのでしょうか? Pillingは,アメリカの景気回復を「ジョブレス・リカバリー」と呼ぶように,日本のそれは「ウェイジレス・リカバリー」だ,と言います.

日本の賃金が上昇しないのは,正規雇用契約ではない,パートタイムなどの労働者が増えているからだ,と考えられます.日本の企業慣行として正規社員を解雇することには強い抵抗があるので,企業は売上が伸びてもパートの労働者を追加するだけで,正規雇用を増やさないのです.そして,パートや派遣労働者の賃金は,厳しい競争とコスト削減が重視されるため,引き下げられてきました.

多くの経済学者は,竹中平蔵氏も含めて,日本の労働市場が弾力化する過程では(こうした賃金低下は)必要なことだ,と考えています.しかしPillingは,そうした転換過程は,高い成長で賃金が上昇し,企業利潤も配当にまわされるような場合にだけ,持続可能であろう,と的確に指摘しています.他方,黒田東彦氏は,バブル崩壊後の企業の損失は,労働者の賃金を(それと同じようには)減らさなかったため,分配を労働者に非常に有利にした.だから,今,それが調整されている,と考えます.Robert Feldmanも,こうした労働市場や賃金評価の硬直性が「正常化」されることを歓迎します.

小泉首相の求めてきた「構造改革」がいよいよ労働市場にも及んだ,というわけです.労働者は移動を促されることで,たとえ痛みを伴っても,経済的に見て合理的なシステムが生み出され,利益をもたらすだろう,と.

しかし,ピーター・タスカのような反対意見もあります.すなわち,賃金切下げは企業の利潤を増やすが,家計の支出を減らし,経済全体は沈滞する,と.パートタイム労働に依拠した景気回復では,本当のエンジンにならないわけです.これに対して,「改革」を支持する経済学者は,需要を構成する他の要因を指摘し,貯蓄行動が変わったとか,老人の金融所得がむしろ重要になっている,などと反論します.

「構造改革」の真実とは,痛みをできるだけ伴わない方がよい,ということです.それには輸出であれ,公共投資であれ,「改革」を支援する内容に向けて,需要を維持・喚起し,成長を実現しなければならなかったはずです.賃金が下がっても(下がるから)改革は進んでいる,と強弁するのは間違いではないでしょうか?


LAT November 9, 2004

Bring Down the Mind-Walls

By Timothy Garton Ash

ベルリンの壁が崩壊して15年経ったけれど,私たちの世界には,その後,多くの壁が築かれてしまった.イスラエルが築いた「フェンス」は,まさにベルリンの壁にそっくりです.アメリカやEUは貿易や移民・難民に対して周囲に壁をめぐらせ,また,キリスト教,イスラム教,ユダヤ教も壁を築いて,互いに偏見と無知,敵意を煽っています.アメリカとヨーロッパとの間にまで,愚かにも壁が築かれています.しかも,こうした壁はコンクリートや有刺鉄線ではなく,心の中に築かれているのです.それゆえ破壊することも難しい.


FT November 9 2004

Playing into Saddam's hands

By Shlomo Avineri

LAT November 9, 2004

The U.S. Owns the Night in Fallouja

By Anthony H. Cordesman

ST Nov 11, 2004

Fallujah: The enemy is all over

By James Marks

NYT November 11, 2004

'Groundhog Day' in Iraq

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) ファルージャの武力衝突に関する考察です.サダムの残党.サダムの用意したイラク戦のシナリオ? 国際テロリスト.困難な市街戦.兵士と民間人との区別はない? パナマのノリエガ追放作戦.至るところに敵がいる.恐怖による反撃.前線の区別も無い.火力と情報力.反乱軍の目的は政府への反抗なのか,報酬や分配なのか? イラク軍の成長.

やはりブッシュの勝利宣言は嘘でした.戦闘は続いています.それが勝利したと言えるかどうか? FRIEDMANは6つの質問を出します.@イラク国民と再建に従事する労働者は安全になったか? A最低限の治安を保つ十分な兵士はいるか? Bイラク人は憲法で保障された主権をアメリカ軍と共有しているのか? C選挙でイスラム原理主義者の政治家が多く誕生し,アメリカと一緒に,イラクを治めるのか? Dイラクと,アラブ世界全体に,アメリカを支持する心理的な転換は起きるか? Eイランや,サウジ・アラビア,シリアなどから流入するテロリストを防げるか?


NYT November 9, 2004

Informal Lenders in China Pose Risks to Banking System

By KEITH BRADSHER

(コメント) インフォーマルな金融システムが機能している以上,中国においてインフレやバブル,投機や資本逃避を,規制によって排除することは難しく,また,市場による調整手段だけで経済管理が上手く行くことも無いでしょう.


WP Wednesday, November 10, 2004

A German Lesson for Remaking Iraq

By Anne Applebaum

(コメント) ベルリンの壁が崩壊して15周年を記念して,この論説はドイツとイラクを比較しています.なぜならドイツの再統合は,全体主義を民主主義に変える,もっとも平和的な,最も秩序正しい移行過程であった,という意味で,イラクと正反対だからです.

しかし,この論説の趣旨はイラクの占領政策が失敗しても,アメリカ政府を擁護するものです.ドイツ再統合でさえ,すなわち,あれほど支持され,あれほど制度を完璧に移植し,あれほど潤沢に財政移転された場合でも,東ドイツの住民は今や不満と憎しみを抱いている.だから? イラクが長く苦しむのは当然だ!

私は,この筆者が思いついた不幸の神秘的な正当化に多くの反発が起きることを,彼自身も期待したのではないか,と考えます.

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The Economist, October 30th 2004

The other big election: Watch Ukraine

Cuba’s currency: Adios to the greenback

The Palestinians: Adieu, Arafat?

Germanophobia: War bores

The dollar: The wolf at the door

(コメント) この世から去り行く者は,たとえば,キューバのドル紙幣,ヤセル・アラファト.そして残りし者は,たとえば,ドイツへの憎悪,ドルを狙う狼たち.・・・

ウクライナの選挙も詳しく紹介されています.まるで台湾の大統領選挙のように,毒殺未遂の狂言疑惑まで登場し,実際は大富豪の寡占企業家たちが内紛を繰り返しているのかもしれません.ともかく,キューバのフィデル・カストロは,経済再生のために導入したドル流通と私企業設立を後退させました.ただしこの政策転換は,民間のドルを政府が取り上げるとともに,金融主権を回復するためドルに課税する,一種の金融政策と見ることもでき,単なる脱ドル化ではないように思います.長くアメリカの禁輸措置を受けて,しかも観光や移民などでアメリカ経済に依存しているキューバが,独自通貨を維持する方法は興味深いものです.

アラファトの有力な後継者Marwan Baerghoutiがイスラエルの牢獄にいます.ということは,もしハマスが支配を拡大し,イスラエルの手に負えないときは,彼を釈放することもあるのでしょうか? ドイツのことを30年も教えてきたイギリスの教師は,一度も,ドイツに来たことがない,と言います.ドイツ外務省は彼らを招待しました.他方で,大衆紙Daily Mailは過激な反ドイツ論説を載せて,販売部数を増やします.羽の生えた赤ん坊として描かれた天使を,槍で串刺しにしたドイツ軍人の挿絵に,私は中国の反日キャンペーンを思い出します.

結局,「狼が来たぞ!」という嘘つき少年に長く騙されてきた私たちは,本当にドルが暴落する瞬間を見過ごしてしまうのでしょうか? The Economistは,アジア諸国の「再建ブレトン・ウッズ体制」を批判するGeorge Magnusの主張を紹介します.すなわち,@アメリカはかつてのように貿易黒字を示さず,貿易赤字である,Aアジアのドル・ペッグ依存は常態ではない,B資本自由化すれば不胎化介入も効果が無い,Cドルに代わって,今やユーロがある.

The Economistは,1985年以後のドル安が再現することを不安視します.3年間でドルは主要通貨に対して50%も減価しました.インフレと証券利回りは上昇し,1987年10月に株式市場が暴落しました.しかも現在,アメリカの経常収支赤字は,当時の2倍に達しています.