*****************************

IPEのタネ 11/15/2004

私が集める英米の新聞すべてがブッシュ氏に反対する論説を掲げましたが,彼は再選されました.もし神(?)がいなければ,ブッシュは再選されず,アラファトはテロリストにもパレスチナの英雄にもならなかったでしょう.昨夜から今朝にかけて観た各地のニュースです.

アラファトがパリで死にました.その遺体をパレスチナ国旗で包んだ棺に納めて,静かに運ぶフランスの兵士,エジプトで始まった葬儀の準備,悲しみで街角に座り込むパレスチナ難民,パブで喜ぶイスラエル市民の様子,などが画面に映ります.・・・

アメリカのアシュクロフト司法長官は辞任し,ブッシュ政権Uの重要人事が始まりました.・・・中国のものと推測される原子力潜水艦が日本の領海を侵し,自衛隊の偵察機が今も追尾しています.・・・

日本と韓国の巨大企業,松下とLGが液晶パネルの技術利用をめぐって互いを提訴し合い,製品の輸入を差し止めて貿易戦争が始まりました.その韓国で,初の日本映画祭が開催されています.・・・台風や地震で被災した地域には雨が降っています.・・・

アフリカで,ダルフールの難民を追い散らし,虐待し,催涙ガスを撒くスーダン警察の映像を,BBCが伝えました.・・・ファルージャを爆撃する米軍は,イラク国民をテロリストから守っているのか? それともテロリストを殺すためにはイスラムの聖地を破壊し,民間人を犠牲にしても気にならないのか? なぜもっと,国民への浸透と封じ込め策を重視しないのか?・・・

戦闘が終われば,アメリカ軍は,公平な視点から調査を行える第三国(イスラム圏からの国を含む)から現地調査団を迎え入れて,報告書を作成し,公表するべきでしょう.・・・今からでも日本政府は,南京大虐殺の検証を国際調査団に依頼してはどうでしょうか?・・・

日本軍の南京大虐殺を描いた “The Rape of Nanking” の著者,アイリス・チャンIris Chang 女史が,カリフォルニアの自宅近く,自動車の中において,銃で頭を撃って自殺しました.まだ36歳でした.うつ病で入院し,最近,退院したばかりだった,と記事は伝えています.かつてジム・レーラーの番組で観た,チャンと日本の駐米大使が対話した場面を私は思い出します.日本では,今も,南京大虐殺を政治的な宣伝として非難する論調が強いのです.

もし私が優れた精神科医であれば,アラファトやチャンと会って話したかったです.他にも多くの悩みを抱えた人たちが,現実の問題に立ち向かうために健康な,そして不屈の精神を必要としています.しかし今,彼らにできるのは,本を書くか,神経症になるか,自殺するだけ・・・? あるいは,まず,憎しみや戦いをもたらす「神」を葬ることでしょう.

バラバラな世界の断片が,何かによって,集まる流れもあるはずです.情報や金融がそうだ,と思いがちですが,私は≪人≫だと思います.ある人の力が,多くの人を動かし,その声や信念が世界の断片を集める磁石のような力を帯びるのです.アラファトやブッシュは,もっぱら世界を破壊する苛烈さによって,そのようなモンスターになりました.

月曜日の衛星映画劇場で『ゴジラ』の最初の作品を観たいです.ゴジラの破壊力,文明への憎しみ,絶叫,孤立,そして悲哀.まさに彼こそモンスターでした.ただし,大怪獣ゴジラに子供たちが恐怖と共感を寄せたのは,彼が建物や兵器を壊すけれど,決して好んで人を殺したり,食べたりしないからです.子供たちに愛され,支持されて,人類を脅かす怪獣と命をかけて戦うようになったゴジラは,もはやモンスターではありません.

*****************************