IPEの果樹園2004

今週のReview

11/8-11/12

IPEのタネ

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   イギリスからのケリー支持表明 :The GuardianThe Economistは,なぜケリーを支持するか?

2.   ブッシュ再選は保守派の勝利? :戦闘的保守主義によるアメリカの分断!

3.   財政赤字と金融危機 :アメリカに起因する不安定化に関するM. Obstfeld and K. RogoffR. Cooper異なった理解.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


ST Oct 28, 2004

6 economists = 7 or more opinions

By Pranay Gupte

NYT October 28, 2004

Where Are the Economists?

By JEFF MADRICK

(コメント) 「陰鬱な科学」であり,「曖昧な科学」でもある,経済学についての苦情を集めたものです.カーライルが念頭においたのはリカード,ミル,マルサスであり,チャーチルが不満を述べたのはジョン・メイナード・ケインズでした.アバ・ラーナーやジョージ・バーナード・ショーの皮肉もあります.バグワティとスティグリッツとを,ノーベル賞の有無で比べるべきか,それとも本の売上で比べるべきか? 全く逆のイデオロギーを掲げたハイエクとミュルダールが,ともにノーベル賞を得ています.

それは,経済学が「答」を出す学問ではなく,あくまで合理的に問題を整理し,可能な選択肢を比較する姿勢を守るからだろう,と思います.国際通貨制度の改革や為替レート制度について「答」や「正しい選択」を求めても,経済学は答えられません.多くのことが可能であり,異なった結果をもたらします.その過程や条件を吟味するからこそ,「正しい」選択,もしくは占星術や直感ではない,自分たちの目的に合った選択ができるのです.そして,現実がその予測を外れて,もしくは「超えて」進行することにも,過度に預言者として振舞わなければ,優れた経済学者は慎重に経験から学ぶでしょう.

次の大統領にとって,アメリカの経済はどうなのでしょうか? 財政赤字,個人債務,貿易赤字,保険に加入していない国民の増加,住宅バブル,そして雇用不足.しかし,重要な争点となった企業スキャンダルとその後の改革を指導したのは,経済学者ではなく,経営学や法学の専門家でした.

これほど国民の所得分配に格差が生じ,しかもそれが決して社会の富を増やしたことによる利益ではない,という批判が重役たちの株式売買に対して起きています.それでも経済学者は,むしろ,スキャンダルの元になった経営者の自社株購入やストック・オプションを正当化しています.


WP Thursday, October 28, 2004

Hold Bush Accountable

By Richard Cohen

(コメント) 「ジョージ・ブッシュを弾劾せよ.」とCohenは言います.もちろん,今の議会でブッシュを弾劾裁判にかけることはできません.しかし,ブッシュのイラク戦争と違い,クリントンのセックス・スキャンダルでは誰一人死んだわけではないのです.クリントンが大統領の職務を弾劾されるのであれば,なぜブッシュは多くの死者に対して説明を求められないのか?

イラク戦争について,あわてて打ち消したものの,ブッシュはそれを初め「十字軍」と呼びました.まさに最初の十字軍が大衆的な狂気によるものであったように,ブッシュはイラクに兵隊を送り込みました.ブッシュ支持者の72%は,イラクが実際に大量破壊兵器を持っていた,と信じており,また75%が,サダム・フセインはアル・カイダを実質的に支援していた,と考えています.どちらも事実に反する,間違った信念です.しかし,これらの信念は無から生じたのではなく,ブッシュ政権が繰り返し嘘をついたから,彼らも信じるようになったのです.

「ブッシュを弾劾せよ!」


NYT October 28, 2004

Chinese Central Bank Increases Rates for First Time in 9 Years

By KEITH BRADSHER

Oct. 31 (Bloomberg)

China's Interest Rate Move Will Shake Yuan Peg

Andy Mukherjee

FT October 29 2004

China's rate rise

(コメント) 中国が金利を上げた理由は理解できます.景気過熱でインフレが加速し,実質マイナス金利が続いて,過剰融資により,都市ではマンション群が林立し,過剰な工場建設も行われているからです.

しかし,利上げにも問題があります.@金利上昇が,ドルとの固定レートを切り上げるという期待を強めて,投機的な資本流入を促さないか? A金利上昇が,経済を「ソフト・ランディング(軟着陸)」させるほど十分なものか? B金利上昇が,銀行システムを介さない資金調達を増やさないか? C金利上昇が,経済を「ハード・ランディング(胴体着陸)」させるのではないか?

魔女のジェニーは,この程度の政策で,ビンの中に戻ってくれるでしょうか? もし金利を上げるだけであれば,投機的な資本流入がドルとの固定レートを守るために人民元に交換され,中国の外貨準備保有と国内への貨幣供給を増やし,すなわち金融引締めの失敗をもたらすでしょう.独自の金融政策を選択するには,人民元を変動させる(そして増価させる)必要がある,というわけです.

それは資本取引が自由化された世界のトリレンマ論です.もちろん,中国はまだ資本規制を続けるでしょう.ただし,その効果は定かでありません.しかも,固定された人民元の対ドル・レートを,適宜,調整することも容易ではありません.もし為替レートでも過熱した景気を調整するべきであるなら,なぜ金利だけを上げたのか? それは,おそらく,政府が銀行システムからの資本流出を恐れたからだろう,と言われます.

「中国の家計は将来の所得上昇を理由に大きく借り入れている.」「10年前なら,中国人はインフレに備えて冷蔵庫やTVを買った.今では不動産を購入してインフレをヘッジする.」とAndy Xieは言います.

中国のように,9年も,金利引上げをしない中央銀行は他国に無いでしょう.利上げの決定は,政府による行政的な引締め策が期待したほどの効果を示していないことを意味します.最も深刻な問題は,すでに融資によってしか生き延びられない国営企業がどうなるか,です.もし地方の銀行や政治家が金利を無視して融資し続けるなら,金融引締めは無効です.結局,銀行システムを整理して,為替レートを変動させるしかない,とFTは言います.問題は,それに要する時間です.


ST Oct 29, 2004

One country, two worlds

By Janadas Devan

すべての世論調査が示すように,アメリカの有権者は文化的,イデオロギー的,政治的に,大きく分裂している.

教会に規則的に通う人々はブッシュ大統領と共和党を支持し,そうでない世俗的な人々はケリー上院議員や民主党を支持する.拳銃を持つ人々,妊娠中絶反対派はブッシュと共和党を支持する.銃規制や妊娠中絶を支持する人々はケリーと民主党を支持する.高校卒業か,それ以下の学歴を持つ人々の中ではブッシュと共和党を支持する者が20%も多く,逆に大学卒業の資格を持つ人々ではケリーの支持者が14%も多い.

こうした分裂の結果,主要政党はかつてのように広い支持を受けていない.アイゼンハワーやニクソンの共和党には,たとえば,強力な自由主義派閥が存在したが,今では絶滅危惧種である.同様に,トルーマンやケネディーの民主党にも保守派が存在したが,今では党を追われた.両党がよりイデオロギー的になった上に,協力関係を築く才覚が失われて,アメリカを統治することはさらに難しくなった.政治家たちは,それぞれの政党内でも選挙区を超えて協力することに慣れておらず,政党間をつなぐ関係も築けない.

正統派もはや同じ世界を共有していないのだ.彼らは単に政策に関する見解を異にするだけでなく,しばしば現実を全く異なって認識している.

メリーランド大学の調査によれば,イラクは大量破壊兵器WMDをアメリカと同盟諸国の軍隊が占領する前に破棄していた,という報告書が公表されているにもかかわらず,ブッシュ支持者の72%がイラクは大量破壊兵器を所持していたし,開発する計画を進めていた,と信じている.ケリー支持者では26%でしかない.9・11特別調査委員会が,イラクとアル・カイダのアメリカ攻撃に実質的な関係は無かった,と示しているのに,ブッシュ支持者の75%はイラクとアル・カイダが結び付いていたと信じている.ケリー支持者では,イラクが9・11に関わったと考える者は8%に過ぎない.

なぜブッシュ支持者たちは,繰り返し間違いを指摘されても,こうした信念を捨てないのか? 調査は,82%のブッシュ支持者が政府の言ったことを「知っていた」し,イラクはアル・カイダを支持し,9・11に直接関わった,と政府が述べているという印象を持っていた.彼らはそう信じる必要があったのだ.もしイラクがWMDを所持せず,9・11に関わっていなかったとしたら,彼らもイラクに侵攻し,征服したことを,正しい決断とは思えないからだ.他方,ケリー支持者はそれらの前提を間違っていると信じ,イラクがWMDを所持していなくてもブッシュは戦争しただろう,と確信している.

認識のずれは広い範囲に及んでいる.世界はアメリカの指導するイラク占領を支持しているか? と質問されると,ブッシュ支持者の31%しか,世界の多数が信仰を認めていない,と知らないし,68%は世界の意見がほぼ同数で割れている,と思っている.26%はアメリカが支持されている,と答えた.彼らはブッシュを愛し,だから彼らは世界も彼を愛している,と信じている(あるいは,信じる必要がある).

今年の選挙がこれほど熾烈なのは,ブッシュ支持者とケリー支持者が「現実についての全く異なった認識」を持っているからだ.それは「信念によるコミュニティー」と「現実によるコミュニティー」との対立である.有権者たちが事実について認識を共有することに同意しない以上,誰が勝っても,なにについて同意できないのか,同意することもできないだろう.


BG October 29, 2004

Competence or ideology?

By Joan Vennochi

BG October 29, 2004

Bush's aversion to facts

By Scot Lehigh

(コメント) 大統領選挙の争点は,イデオロギーか,職務に対する能力か,あるいは情熱か? 父のブッシュに対して,ケリーよりも明確に能力を争点として戦い,ブッシュにマサチュ−セッツ・リベラルと非難されてイデオロギーで敗北したデュカキスが,もし今,息子のブッシュと争っていたら,きっと勝てたのに,とVennochiは惜しみます.

事実と食い違った有権者の意識について,多くの論説が問題にしています.


The Guardian, Saturday October 30, 2004

The case for Kerry

アメリカ人の多くは,火曜日に,誰がアメリカの指導者になろうと,それはイギリス人の知ったことじゃない,と言うだろう.しかし,アメリカの大統領選挙が世界の他の地域に重要である二つの根源的な理由がある.まず,アメリカのパワーだ.歴史上,また,この地球上で,アメリカほどその力と行為が全人類に直接影響を及ぼす国は無い.アメリカが世界の条件を決める.その経済的,軍事的,文化的力がわれわれの生活を変える.もしアメリカが戦争すれば,われわれも巻き込まれる.もしアメリカの経済がブームや破綻を迎えれば,われわれもそれに続く.もしアメリカが気候の変動に関する世界的合意を一蹴すれば,世界全体が危うくなる.われわれの国内政治でさえ,子の3年間で劇的に示されたように,アメリカが条件を変える.われわれには投票権が無い.しかしわれわれは11月2日に自分の利益を結び付けている.あたかもオハイオやオクラホマ,オレゴンに住んでいるかのように.

第二の理由は,反対する人もいるだろうが,アメリカがわれわれの模範であるからだ.アメリカの誕生は,人類がこの1000年で成し遂げた最大の立憲的な仕事である.その最初期から現在にいたるまで,すべての人々がアメリカに注目してきた.すべてのアメリカ大統領がアメリカを「人類の最後の希望」と見なしていたか,疑問はあるが,すべての大陸の引き続く世代がリンカーンの希望を共有し,アメリカの機会と自由に勇気付けられてきた.将来もそうであろう.アメリカほど人種差別によって歪められた国は少ないが,またアメリカのように多くの移民を受け入れ,多文化を吸収した国も無い.反アメリカ主義はかつてより強まったが,どれほど反アメリカ主義が強くとも,その同じ社会に多くのアメリカを賞賛する人々がいる.

少なくとも,アメリカが国連を作った1945年以来,アメリカの大統領選挙は常に世界の政治サイクルにおける最も影響力のある事件であった.4年前,ブッシュは全国の得票数で敗北していたが,フロリダの選挙を操作し,最高裁判所のお粗末な判断を借りて,大統領職を奪った.それ以来,こうした状況で大統領になった者にふさわしい(そして彼自身も暫くはそう言った)やり方ではなく,その逆の行動を採った.国内でも海外でも,党派的な対決姿勢を強めた.9・11のテロ攻撃は歴史的な惨劇であったが,世界的な連帯感を空前の規模で集めた.しかし3年を経て,そのような連帯意識は消えてしまった.それはイラク戦争が間違った準備や手順で行われたからであるし,また,ブッシュ政権が他国に対する攻撃的な侮蔑を示し,今日にいたるまで破滅的な結果をもたらしているからである.

タレーランの言葉を用いれば,ブッシュが大統領であることは,単なる犯罪ではなく,失敗であった.ブッシュ氏は世界最強の政府に依拠して,恐るべき失策を展開した.彼は世界をより大きな怒りと,より深刻な危険と,より深い分裂に導いた.アメリカ人に取っ手と同じように,われわれにとっても,火曜日にジョン・ケリーが当選することは重要だ.ブッシュ氏は記憶されたいかなる大統領よりも,世界におけるアメリカの名誉を傷つけた.ケリーには,このダメージを回復するチャンスがある.それは単純で,しかも重要なことなのだ.


LAT October 29, 2004

Arafat's Illness Opens a Door

LAT October 29, 2004

A Chat With Arafat Over Chicken and Chips

By Jane Kinninmont

ST Oct 30, 2004

Arafat's Palestine state still a dream

By Pranay Gupte

WP Friday, October 29, 2004

Middle East Movement

WP Friday, October 29, 2004

After Arafat, Upheaval

By David Ignatius

BG October 30, 2004

In Arafat's absence

The Guardian, Saturday October 30, 2004

The second battle of Algiers

Ron Dudai and Daphna Baram

FT October 28 2004

Gaza opportunity

LAT November 4, 2004

Who Is This Man, and Who Comes Next?

By David Grossman

(コメント) アラファトが中東和平の障害であったのか,それともパレスチナ国家にいたる団結の象徴であったのか? テロリストたちの黒幕であったのか,それとも武装闘争を求める諸党派に方針転換を説得し,その代償である国際協調・経済支援を得るための切り札であったのか? 彼の死はパレスチナの分裂と内紛を強め,ますます苛烈な多くのテロ集団を登場させるのか? それとも彼の死によって,安定化と繁栄を模索する新しい世代が登場するのか? ・・・

葬列の向こうから,人々は息を潜めて見守るでしょう.


LAT October 30, 2004

Some Meditations Before You Vote

By Stuart S. Light

この選挙は極端な党派性と憎悪によって特徴付けられる.両者が特定の集団や専門家に向けて,過度に単純化したメッセージを濫造し,偽造された「事実」を投げつける.

論理や常識,真実がゴミのようにバラバラにされ,強力な,ふんだんに資金を使ったマーケティング.マシーンが国中でうなりを上げる.私からの助言? それは静かに考える時間を持つことだ.何が本当に重要なことか? そして,あなた自身の知性と思いやりを働かせて,あなた自身の決断を導くことだ.

投票する前に,こんなことを考えてみて欲しい.

l         主張はいろいろでも,みんなアメリカ人じゃないか.

l         真実と神の祝福を,誰も独占することはできない.

l         死に臨んで,すべての兵士たちは母を呼ぶ.

l         戦争,貧困,虐待,無視によって,死ぬ子供が多すぎる.

l         恐怖は最悪の敵だ.私たちを恐れさす者は友ではない.

l         9・11は悲劇であるが,多くのことが残されたままであり,悪化さえしている.

l         9・11と同じように,無辜の民を殺してはならない.

l         戦闘からもっとも離れた者たちが,最もやかましく戦争を叫ぶ.

l         戦争はいつも,平和への困難な道を,遠回りしているだけだ.

l         表現の自由を行使するあなたを愛国的でないと非難する者は,愛国者ではありえない.

l         愛は,イスラム教,キリスト教,ユダヤ教における価値の核心である.ただ愛と理解だけが世界に平和をもたらす.


NYT October 30, 2004

Ethnic Clashes Erupt in China, Leaving 150 Dead

By JOSEPH KAHN

ST Nov 3, 2004

Trouble in the interior

FT November 3 2004

Clashes in China raise doubts over state control

By Richard McGregor in Shanghai

(コメント) 中国内陸部において,民族対立により150人の死者.戒厳令を発動.タクシー運転手が6歳の少女を激しく殴打したことがきっかけか? しかし,中国側から正式のニュースは全く無い.中国の農村部における官僚や警察の腐敗,少数民族の抗議は,各地で社会不安を醸成している,と記事は述べています.

共産党の公表している数字でも,5万8000件の抗議活動が昨年だけで報告されました.中国の急速な経済発展は,政府が社会を安定化し,不平等を解消できるかどうか,に制約されています.あるいは,政治改革を避けて成長を加速することの限界に,今,中国は達しつつある,とFTは懸念します.


NYT October 30, 2004

The Apparent Heir

By THOMAS L. FRIEDMAN

ジョージ・H・W・ブッシュに投票しよう.・・・いや,いや,あのブッシュではなく,もう一人の.父のブッシュ氏だ.

ブッシュ氏は国民の統合を重視し,暖かく,親切な手法を採用した.民主党と協力して増税を行い,公約を破っても,経済のために良いことを選択した.また外交においても,リアリズムとアイデアリズムとの間で健全なバランスを取った.彼は,アメリカの力を強めるためにも国連を重視した.ゴルバチョフを助けて,一発の銃声も残さずに,東欧の解放,ドイツの再統合を実現した.

ブッシュ氏はサダムをクウェートから追い出し,軍事行動に利益を残しながら,しかもバクダッドには軍を侵攻させなかった.彼は同盟国無しに,特に,フランス,エジプト,シリア,サウジ・アラビアの支持なしに,アラブの国の首都を占領することを避けた.それはイスラエルの利益ではなかったが,アメリカの利益である,と彼は理解していた.中東和平は進展し,イスラエルは外交的な孤立を解消できた.また,ブッシュ氏がNAFTAの基本線を引いたのだ.

ブッシュ氏は世界で行動する際の準備や配慮,賢明さを理解していた.しかし,彼は国民にうまく接することができなかった.アメリカのユダヤ人を反発させたし,ソ連崩壊や天安門事件に対しては,もう少し上手く発言すればよかっただろう.しかし,天安門後も米中関係を維持し,その経済改革を支援した.

同盟諸国や国内両党の協力を重視し,財政赤字の解消に取り組み,理想を失わず,外交を駆使してイスラエルの安全や,アラブ諸国との和平を勧めるブッシュ氏.キリスト教原理主義者の話ばかり聞かないブッシュ氏に,清き一票を!


FT October 29 2004

Bush gambles on mobilising conservatives

By Lionel Barber, US Managing Editor

BG October 31, 2004

Walking the walk on family values

By William V. D'Antonio

The Observer, Sunday October 31, 2004

The winner is... US conservatism

Will Hutton

(コメント) Barberは,カール・ローブの選挙運動が保守派に偏り,有権者登録や投票率の点で,結果的に民主党の勝利をもたらす,と考えています.しかし,ローブの考えはブッシュの勝利をもたらしました.彼のマーケティング戦略は正しかったのです.すなわち,それぞれの有権者を特定して,ブッシュを差別化するために,大金を注いでTVコマーシャルでケリーについてのネガティブ・キャンペーンを繰り返し,有権者の間にブッシュのブランドを確立する.

父ブッシュがクリントンに敗北して以来,共和党の戦略は固まっていました.経済は重要でなく,社会問題で中道寄りの姿勢など示してはならない.財政を無視して,減税方針を貫く.宗教的右派を重視し,演説やディベートに聖書の言葉をたっぷりばら撒く.宗教的保守派はその選挙で投票所に足を向けなかった.だから父ブッシュは敗北したのだ.しかし今度は違う.彼らこそ選挙の「見えざる軍隊」だ!

ブッシュ大統領とチェイニー副大統領は,ケリーを「マサチューセッツ・リベラルだ」と,あたかも疫病に冒された人を名指しするかのように言及しました.しかし,彼らは間違っている,とD'Antonioは指摘します.・・・マサチューセッツの離婚率は1000人に2.4であり,テキサスの4.1より低い.実際,マサチューセッツは50州の中で最低であり,他方,再生派キリスト教徒の離婚率は最高の部類に属する.あるいは保守的な「バイブル・ベルト」の離婚率は,全国平均よりも約50%も高い.原因はいろいろである.若すぎる結婚.南部の低所得層.マサチューセッツの高学歴.

マサチューセッツのリベラルな人々は,教育とそれによって得られる社会的地位を非常に重視し,長く高等教育に時間を費やす.だから結婚も遅く,社会的な地位や所得が安定する.10代の出産はテキサスに比べて非常に低い.バイブル・ベルトについて主張される家族を重視する価値観は,むしろケリーの故郷であるアメリカ北東部の生活に見られる.マサチューセッツとコネチカットに代表される民主党の支持基盤は,子供たちのために時間とお金をかける家族が多い.

こうしたリベラルな人々こそ,思いやりのある,人間的な社会のために,その投資を向けているのだ.アメリカの主流を外れた(過激な)リベラル,という蔑称は誤りだ.

国内経済は雇用不安,国際面ではテロの増幅,分断化.これほど無能なブッシュが大統領選挙でリードしているのはなぜか? とHuttonも理解に苦しみます.その理由は,彼が安全保障というカードを多用することだけでなく,アメリカの保守派を文化的な支持基盤として囲い込んでしまったからだ,と考えます.「ケリーと民主党はヒドラのような怪物と対決している.」

1960年代末から,民主党はルーズベルトのニュー・ディール連合から離れて,新しい政治基盤を模索しています.しかしそれには保守主義に染まった政治的・知的なイデオロギーを打破する必要があるのです.共和党の基盤は,一握りの超資産家ではなく,多数の勤勉な自営業の人々であり,政府が彼らに指図したり,彼らの金を奪って支出したりすることを嫌う人々です.ブッシュは彼らの減税を約束し,票を得ています.

アメリカの都市周辺に広がる郊外には,不動産開発業者の欲望を満たす,魂の無いショッピング・モールや,果てしなく繰り返されるクローン再生された町並み,できたばかりの教会などが,アメリカ中産労働者の生活を形成しています.こうしたインスタント開発によるコミュニティーなど,まったくの脱け殻であり,根無し草の人々が生活の意味を求めて教会に通います.彼らが新共和主義の豊かな土壌となっています.

そして,一方ではアメリカ資本主義の強烈な欲望,他方にはバラバラな社会的要求を実現してきた成果としての不満と分裂が,リベラル派の政治基盤を破滅させました.同性愛,避妊,銃規制,細胞研究,その他.労働者たちは,自分たちの利益を守る政党がどこか分かっていながら,減税と保守主義を約束する共和党に投票しています.そして,9・11は間違いなく,こうした保守主義の広がりに,醜いナショナリズムや愛国心,排外主義,特に反イスラム,などに油を注いで戦闘的共和主義に変えたのです.


LAT October 31, 2004

Democracy Gone Wild

(コメント) 選挙が混乱に陥るとしたら,それはどのような場合でしょうか? 暫定投票が無視されたり,投票マシーンが止まったり,移民や軍人,囚人の票が操作されたり,団体や個人が不正な投票や選挙活動に訴訟を行うからでしょう.アメリカであれ,アフリカであれ・・・


WP Sunday, October 31, 2004

Repair the Electoral College

By Peter M. Shane

FT October 28 2004

The electoral college has to go

By David Garrow

BG November 3, 2004

What a crazy way to elect a president

By Scot Lehigh

(コメント) 選挙人団というシステムを,私は詳しく知りませんでした.もし有権者登録による一般投票の結果を参考に,各界の代表や名士,地区や移民,世代を考慮した選挙人が集まって,徹底的に議論し,最終的に合意して選挙人団がどちらかの候補に一括投票するのであれば,面白い制度だな,と思いました.実際は,その運営も選挙人数も,そうはなっていません.

最大の有権者と選挙人を得ている州で,候補者たちがほとんど選挙活動をしなかったのは,その州で優位が逆転する見込みがないからです.この点だけみても,直接選挙にするべきだ,という反対意見は強まっています.


FT October 31 2004

US deficit: The problem is a global concern

By Maurice Obstfeld and Kenneth Rogoff

(コメント) この著者たちが,このテーマで何を書くか,経済学徒ならきっと知りたいでしょう.

彼らがアメリカの経常収支赤字に警告を発したのは4年以上も前です.しかし,その後も拡大は続き,おそらく次の大統領も外国からの投資が赤字を埋めるとか,たとえ20〜40%のドル安が起きても,資本市場は柔軟に吸収できる,と楽観するでしょう.

しかし,著者たちは反対します.なぜならアメリカの双子の赤字は,際限ない安全保障の負担,地政学上の対立,高齢化と年金,石油価格,過度に刺激的なマクロ経済政策に由来しているからです.それは1980年代後半よりも,1970年代前半に似ています.当時,再選されたニクソンはドルにも世界経済にも無関心でした.世界の経常収支が均衡するとしたら,金融危機,金利高騰,急激な世界の生産低下を前提しなければなりません.

ではどうすれば良いのか? まず増税です.ブッシュ氏は二期目のレーガン政権が政策を転換したことに学ぶべきです.またFRBは金利を正常な水準に引き上げて行くでしょうし,ドイツや日本が非貿易財部門で生産性を高めることが望ましいです.なぜなら,貿易財部門で生産性が高まると,アメリカの経常赤字が一旦は悪化するからです.アジア諸国が為替レートを調整することも役立ちます.

アメリカの双子の赤字に,かつて日本とドイツが協調的なドル安誘導政策に関わりました.今は中国を筆頭に,アジア諸国が関わり,しかもユーロ市場が形成されています.このことは資本逃避とドル暴落のシナリオを1980年代より現実的にしています.


FT October 31 2004

US deficit: It is not only sustainable, it is logical

By Richard Cooper

(コメント) もちろん,この著者の意見にも大いに関心を持つべきです.

Cooperは,アメリカの経常収支赤字が持続可能ではなく,政策転換か,さもないと金融危機によって調整されるしかない,という主張に反対します.年鑑5000億ドル,GDPの5%に及ぶ巨額の資本流入が「持続可能ではない」と言えないのでしょうか?

その理由は,@もし毎年5000億ドルの赤字が続き,毎年5%の成長を持続できれば,15ないし16年で46%というピークに達し,それ以降は減少する.A外国人がアメリカの資本ストックのネットで20%を所有するが,それは金融資産の10%程度であろう.アメリカに投資する魅力がある限り,それは維持できる.Bこの仮定では,外国人への投資収益支払が増加ために,貿易赤字は減少する必要がある.年間6兆ドルの世界貯蓄から5000億ドルがアメリカに外から流入するのも,アメリカが海外に投資するのも,当然である.Cアメリカ市場,特に記入市場の規模から言って,世界の貯蓄はこの程度ならアメリカに集まるだろう.しかも,将来の中国やインドは,豊かになって海外投資を増やす.D日本や中国が輸出を安定化するために為替市場に介入することも,度を過ぎない限り,不合理では無い.

アメリカは過少貯蓄(あるいは過剰消費)であると言われる.しかし同様に,それはその他の世界の投資家が(過剰貯蓄により)アメリカに投資する利益を求めているからだ.アメリカの財政赤字を急激に減らすような政策は,他国における投資の急増を伴わないから,間違いなく,世界不況をもたらす.だからCooperは財政赤字や経常収支を政策転換の理由にしないのです.

何が必要か? Cooperは書いていませんが,それは国際政策協調でしょう.


FT November 2 2004

Migrant workers shun long hours and low pay

By Alexandra Harney

FT November 2 2004

Allowing for an outward flow

By Lester Ross

(コメント) 中国沿海部における成長と労働力不足は,賃金上昇,労働条件の改善,地域格差の解消などに役立つでしょう.あるいは豊富な外貨準備によって,中国企業の地方への投資や,海外直接投資も始まっています.


FT November 2 2004

Martin Wolf: State building is the greatest challenge

By Martin Wolf

(コメント) Wolfは,新しい大統領の最大の課題を,破綻国家の再建計画だ,と言います.子の論説はFrancis Fukuyamaの新著を紹介しながら,その重要性を述べています.

強力な権力が失われたところでは,ホッブスの戦争状態が生じる危険があります.それ(アナーキー)は周辺地域に波及します.そこで破綻国家は,安全保障だけでなく,人権や経済発展を理由に,国際介入を必要としています.他方で,国際介入は帝国の誘惑や非難を伴います.

国家は,その強さと,社会に対する介入の範囲,によって分類できます.アメリカは国家として協力ですが,社会に介入しません.他方,シエラ・レオネは権力も介入も弱く,アジア諸国(日本・韓国・台湾など)は国家権力が強く,しかも社会への広範な介入が行われていました.しかし,最近の日本や韓国は,その両方が低下している,と言います.

Francis Fukuyamaの議論は,破綻国家,国際介入,国家の分類を経て,四つの要因,@組織編制,A政治システムの構造,B正当化,C文化,を示します.民主主義を広める,と言うだけでは,その望ましいバランスを実現できないでしょう.


LAT November 1, 2004

A Failed Presidency

BG November 1, 2004

Democracy's day

NYT November 1, 2004

What to Do on Election Day

NYT November 2, 2004

Vote, No Matter What

(コメント) ブッシュの選挙キャンペーンは自分の無能さを避けている.投票を促すために,有権者登録を助ける人々.投票に際してのいろいろな注意.できるだけ多くの人に投票を呼びかける.


BG November 2, 2004

An Election Day meditation

By James Carroll

LAT November 2, 2004

Our Condolences to the Winner

Nov. 2 (Bloomberg)

Hard Choices for Election Day and the Elected

Caroline Baum

LAT November 2, 2004

The U.N. Deserves an Apology

Robert Scheer

(コメント) 選挙の日,この国は自らを示し,その国民は自らを歴史に刻む.それは未来が姿を現すときである.アメリカの大統領選挙に投票するとき,過去をどのように理解し,現在をどのように改善し,未来をどのように打ち立てるか,という問題にあなたは影響を及ぼす.

どこにいても,誰にとっても,世界は小さく,崩れやすく,危険になった.摩天楼が崩壊し,氷河も溶解する.ウィルスも暴力も大陸に蔓延する.

選挙によって,私たちの未来を決めよう.

さて,選挙に行く前に,以下の項目について,二人の主張を確認してほしい.イラク.財政赤字.移民.エネルギー.二人はどのような選択を示しているのか?

他方,Baumは,アメリカ人に大きな選択の幅は与えられていない,と述べます.あるいは,Scheerが言うように,私たちはブッシュでもケリーでもなく,国連に投票し,アメリカ以外の人々にとっての国連という発言の場を強化するべきかもしれません.


NYT November 2, 2004

Faith in America

By PAUL KRUGMAN

(コメント) 重要なフロリダでケリーが負けたのは選挙妨害があったからか? もちろん,対立候補が優勢の選挙区で投票を減らせば,勝利は容易になります.ただし,KRUGMANが信じたほど,投票率が高くなるほどケリーに有利とはならなかったようです.


NYT November 2, 2004

Textile Quotas to End, Punishing Carolina Towns

By ELIZABETH BECKER

(コメント) タオル産業の国際競争激化は,アメリカでも日本でも,関係する地域にとって重要な問題です.しかし,全国レベルの争点にはなりません.


FT November 3 2004

Amity Shlaes: A more conservative America

By Amity Shlaes

FT November 3 2004

Quentin Peel: Sentenced to four more years

By Quentin Peel

FT November 3 200

The Democrats must woo a new demographic

By William Frey

(コメント) 圧倒的な得票によるブッシュ再選,という結果を受けて.まず,アメリカは保守化した.外交でも,社会政策でも,財政でも,アメリカは保守化に向かう.ブッシュ再選は,ロシアとイスラエルを除く,世界のあらゆる国で驚きと不安,恐怖をもって受け止められたでしょう.おそらく唯一,希望を含んだシナリオは,後4年の失政を重ねたアメリカ国民の深い後悔が,ようやく正しい教訓を学ばせる,というものです.その代償がどれほど高くついても.

高い投票率による共和党の勝利? ヨーロッパが「新しいヨーロッパ」と「古いヨーロッパ」と揶揄されたように,アメリカにも「新しいアメリカ」が誕生していたわけです.


BG November 3, 2004

The demands of democracy

BG November 3, 2004

Not a mandate, but a contract

By Thomas Oliphant, Globe Columnist

(コメント) 選挙の結果を受け入れるとしても,彼らには強い不満と怨嗟が残っています.どうしてブッシュがわれわれの代表なのか? アメリカの民主主義は正しく機能しているのか?

ネガティブ・キャンペーンの激しさは問題でした.しかし特に,@選挙資金,A選挙人団の制度,B投票システムの改善に取り組まなかったこと,が指摘されます.雨の中を,何時間も行列して待った有権者たちがいました.

あれほど激しく戦われた選挙であったのに,有権者の選択は明確な結果を示しません.ブッシュ支持者にも,政策によって大きなばらつきがあるのです.ブッシュ氏は,彼の公約がすべて権限を付与されたなどと考えてはならない,と釘を刺します.


The Guardian, Wednesday November 3, 2004

Make asylum fair, not fast

Ruud Lubbers(UN high commissioner for refugees and former prime minister of the Netherlands)

(コメント) EUへの移民・難民について,Lubbersは問題を指摘しています.@受け入れ総数の問題.A受け入れ資格の統一の問題.B受け入れ社会への統合化支援問題.CEU加盟諸国間のコスト分担・政策調整.

加盟諸国間で受け入れ拒否を競っても問題は解決しません.それは移民を非合法な地下経済に追いやるだけです.


NYT November 3, 2004

China and Japan Jockey for Share of Russian Gas

By JAMES BROOKE

FT November 4 2004

Exxon rethinks natural gas delivery options

By Enid Tsui in Hong Kong and David Pilling in Tokyo

(コメント) ロシアのパイプライン敷設に日本政府が低利融資などで中国からルートを奪ったことで,中国政府はサハリンの油田開発に割り込み,報復を図ったのでしょうか? あるいは,日本はパイプラインもサハリン油田も,中国とロシアを含めた国際エネルギー開発公社を創設して管理し,コストも利権も概ね三等分するべきだったかもしれません.そして,サハリン油田の開発費を公社の持分に算入させてはどうでしょうか? しかしその前に,安全保障の枠組みが確立されねばならない,と言うなら,少なくとも平行して対話を進めて欲しいです.

油田を開発するアメリカ企業なら言うでしょう.要するに,すべて市場で売ればよいではないか? と.確かに,もし施設の安全や管理が信用できるなら.だから,次に問うでしょう.その開発公社は日米安保に含まれるのか? と.


LAT November 3, 2004

And the Winner Is . . .

NYT November 3, 2004

President George W. Bush

NYT November 4, 2004

The Next President Bush

WP Thursday, November 4, 2004

Mr. Bush's Victory

(コメント) ブッシュ政権Uは,もはや再選ではなく,歴史に名を残すことを意識して,何をするのか? とすべての論説が問いかけています.それはブッシュ政権Tへの疑問であり,この選挙が国民の正しい選択であったと思えるように期待し,それによって彼を制約したいからです.

2000年の選挙に勝利した後の演説で,ブッシュ氏が約束したことはまだ果たされていない,とLATは述べます.彼はゴアと合意しました.「われわれは全力を尽くして,激しい選挙戦で分裂した国を,統合に導く」.またワシントンにおける過度の党派性を取り除く,と.「どのような政治的不和よりも,アメリカ人が希望と目標を共有することの方がずっと重要である」.

ブッシュ氏は,国中に広がった怨嗟の波を鎮めて,国民的な統合に努めて欲しい,とNYTも言います.確かにブッシュ氏は勝利したが,その投票から見て,文化的な価値観の対立を利用して勝利を得たわけだ.しかし,ブッシュ政権Uが直面する課題はそれだけに止まらない.課題に応じて,さまざまな党派と協力することだ.ブッシュ氏は共和党が多数を得た議会での協力も得て,新しい施策に取り組んで欲しい,と.

両党の合意や反対勢力との和解,国際協調の再生,最高裁におけるバランスの重視,・・・ まるでブッシュ氏が再選できなかったか,再選後のプランを何も持っていないかのように多くの注文をつけて,果たして彼が聞き入れるでしょうか? 彼の当面の関心は論功行賞と主要人事では無いでしょうか?

ブッシュ氏は圧勝したわけではありません.投票した者の51%の支持を得たに過ぎないのです.むしろケリー氏の敗北宣言と,選挙後の古典的な協力姿勢が,いくらか「優等生過ぎた」のかもしれません.そしてアメリカの内外の課題を解決して行くブッシュ氏の姿勢がどの程度変わるのか,世界は事実として彼の行動を見守るほか無いのです.


LAT November 3, 2004

A Split Nation? Don't Believe It

By Niall Ferguson

NYT November 3, 2004

Living Poor, Voting Rich

By NICHOLAS D. KRISTOF

The Guardian, Thursday November 4, 2004

A moral dilemma

Sidney Blumenthal

NYT November 4, 2004

Two Nations Under God

By THOMAS L. FRIEDMAN

(コメント) アメリカはこのまま第二の南北戦争(内戦)に突入するはずではなかったでしょうか? 否,アメリカの分裂を過信するな,とFergusonは言います.むしろ,それはアメリカ民主主義の活性化でしかなく,大いに意見を対立させて,彼らの活力を引き出すのである,と.「もっとも驚いたことは,莫大な広がりをもつこの国が,政治的な分裂ではなく,驚異的な同質性を示していることだった.世界中のどこを探しても,2500マイルを(例えば,シアトルからマイアミへ)飛行して,反対の端でもほとんど違わないことに気づく国などあるだろうか? 同じスターバックでコーヒーを飲み,同じウォル・マートで買物し,同じSUVを運転する,同じような人々!」

KRISTOFに言わせれば,問題は民主党とアメリカ社会の再生です.「一つの問題は民主党のヤッピー化である.Thomas Frankが言ったように,民主党指導者たちは郊外の専門職階層を取り込むことに熱心な余り,ブルー・カラー労働者から嫌われた.」

そうではない,やはりこれは宗教戦争であり,9・11を利用したカール・ローブらの権威主義(あるいは全体主義)国家建設だった,とBlumenthalは考えます.宗教団体や説教を政治活動にそのまま拡大したのです.ケリーの政策論争に対して,ブッシュは神(と悪魔)を対峙させた.最高裁も宗教右派が支配するだろうから,ブッシュUはすべての歯止めを失う.第二次大戦後の国際協調体制は微塵も残らない.世界は非常事態にあるが,アメリカにとってどうでも良くなった,と.

この選挙結果がFRIEDMANの気持ちを落ち着かないものにしたのは,ブッシュの支持者たちが,異なった政策を主張したからではなく,異なったアメリカを主張したからです.この選挙は,現実に関わる何ものも争われず,しかも現実の全体が争われたのです.結局,どれほどイラクで死者が増えても,どれほど経済が失業に苦しんでも,ブッシュは再選されたのです.これは選挙ではなく,国家のアイデンティティー・テスト(自己診断)です.投票用紙には,ブッシュやケリーなどと書かずに,Foxテレビを観ているか? ニュー・ヨーク・タイムズを読んでいるか? と質問すれば良かったのに,と.

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The Economist, October 23rd 2004

Israel’s unlikely dove

Malaysia: Forging a nation

The presidential election: The battle for the Great Lakes

German labour: The day the factories stopped

(コメント) シャロン氏がイスラエルの安全や入植地拡大を支持してきたのは確信によります.しかし,安全に対するリスクの評価が変化すれば,支配地域を撤退することも謀略や欺瞞ではないのです.このウルトラ・ナショナリストがパレスチナ国家を嫌っていることは変えようがありません.しかし,インティファーダからガザの入植者を守ることがイスラエル兵の危険を増やす事態に,彼が方針転換を決めたのは彼自身の計算によります.そして,それが撤退計画の最後ではなく,イスラエルの国境確定に向けた準備が和平プロセスとして再開されるかどうかを決めるのは,国際的な交渉と圧力です.

マレーシアの中国人,インド人,マレー人の間に宥和を求める政府は,若者を集めた軍事訓練を始めました.それは,五大湖周辺で争われたアメリカ大統領選挙や,ドイツで争われたGMの労使紛争と同じく,国家を社会のレベルから再編し,政治的統合を再生する試みです.マレーシアではその規模が財政的に制約され,五大湖周辺では移民流入や白人労働者の保守主義が再編を阻み,ドイツではEU拡大とグローバリゼーションの市場圧力に政治介入を諦めた諸政党が労使交渉や安定した雇用の解体を容認しています.


The Economist, October 30th 2004

The incompetent or the inconherent?

(コメント) 大統領選挙の直前に,とうとうThe Economistもケリーを支持しました.その理由は,ブッシュのアメリカが継続するより,その転換を支持するから,です.

アメリカで約45万部を売るThe Economistがブッシュに反対する理由は,イラク戦争ではありません.何よりも,二人の候補者に対する深い失望が出発点です.まず9・11に対するブッシュの対決姿勢をThe Economistは高く評価します.これによって世界市場は混乱を回避できたからです.そしてアメリカは,アフガニスタンでもイラクでも勝利しました.

むしろ,ブッシュの最大の失敗としてThe Economistが挙げるのは,キューバに位置する米軍のグァンタナモ基地です.そこに収容された人々はアメリカ人を憎み,アメリカの偽善の証として生きるでしょう.ブッシュ政権は正義や法の支配,自由のために戦っているのではない,と告げています.トニー・ブレアが開発した図式を用いて,民主主義や破綻国家の再建を唱えましたが,イラク占領政策に致命的な過ちを繰り返し,アブ・グレイブ収容所の囚人虐待で世界から嫌われるようになったのです.もし中東で政策への信頼を回復しようとすれば,アメリカにできる最も重要な貢献は中東和平の推進でした.しかし,ブッシュはこれにも失敗します.

もしブッシュが再選されて方針転換し,極端な宗教的右派勢力を政策運営から切り離すならブッシュに期待するけれど,ブッシュはそうしないだろう,とThe Economistは言います.その意味で,彼への信頼や,特にアスラム世界との協力は,失われると考えたのです.他方,ケリーへの交代は今のアメリカに何より求められる,政府の説明責任,を重視させるでしょう.