IPEの果樹園2004

今週のReview

10/18-10/23

IPEのタネ

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世界の英字紙HPからコラムを要約もしくは紹介します.著作権は,それぞれ,元の著作権に従います.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   イギリスにとっての「暗黒の水曜日」 :ERMを離脱したショックは,そのイギリスを蘇らせたのか?

2.   EUの移民問題 :アフリカからの移民の流れを,阻止するか,歓迎するか?

3.   黄禍論 :グローバリゼーションの中で企業と政府は何をなすべきか?

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


FT October 6 2004

Time in ERM an economic triumph, says guru

By Chris Giles, Economics Editor

FT October 7 2004

Samuel Brittan: The ERM inquest is not yet over

By Samuel Brittan

(コメント) EMS(ヨーロッパ通貨制度)や,そのERM(為替レートメカニズム)について,今では誰も覚えていないかもしれません.ただ,その否定的な印象だけが残りました.しかし当時の選択をめぐっては論争が尽きません.

1991年から97年までイギリス大蔵省の経済学者のトップを勤めたSir Alan Buddは,1992年9月16日の「暗黒の水曜日」を再評価しました.それは,当時のジョン・メージャー政権が通貨市場の投機的圧力に屈してヨーロッパ通貨システムからの離脱に追い込まれた屈辱の日であり,メージャー首相の政治的信用を失墜させて,保守党の政権運営能力に致命的な傷を負わせました.

Buddによれば,この経験を得たことで,イギリスの経済運営は革新され,人々のインフレ期待やイングランド銀行の独立性とインフレ目標導入に対する信頼が高まったのです.それはもちろん政治的な大破局でしたが,経済的には絶好の転機となりました.Buddは,慎重に選択されたというより幸運によってではあっても,イギリスは正しい時にERMに参加し,正しい時にそれを離脱した,と言います.

現在のゴードン・ブラウン蔵相はこの時期の政策を「失敗」と見ています.2003年6月の議会証言でも,「もしわれわれが,1992年にERM加盟を決意したように,テストに合格しない,間違った為替レートでユーロに参加すれば,失業は増加し,公共サービス投資も低下し,経済成長が失速するだろう」と述べました.

保守党政府が1992年にEMSを選択したのは,金利を選択する能力を犠牲にして,「より低い,安定したインフレ状態を得られる」と信じたからです.イギリスがERMに参加した時のインフレ率は10.9%,離脱したときは3.6%でした.それだけではなく,デフレによってしか得られないインフレ期待の抑制を,ERM加盟の2年間でイギリスは得たのである,とその「勝利」を称えます.それによってイギリスのインフレ目標は導入できたのだ,と.

「暗黒の水曜日」を蔵相として経験したラモント卿もBuddの講演を支持し,イギリスがインフレを抑えるには他に方法が無かった,ERMは重要な役割を果たした,と認めます.イングランド銀行の独立性の方が良かっただろうが,当時は認められなかった,と.

Brittanの考えでは,ERMはドイツ・マルクをアンカーとして調整可能な固定為替レート制度であり,独仏に対抗しては貨幣供給を管理できなかったイギリス政府も,フランスに倣って,ERMに参加し,レートの再調整を抑えたかったのだ,と言います.しかし,サッチャーが強く反対して,加盟時期は1990年まで遅れ,しかもたった2年間で離脱します.

しかし,ERMを破壊したのはドイツ再統一の方法でした.現代の経済学者の多くは,当時のDM2.95という固定レートが高すぎた,と考えています.しかしBuddは,それを維持する高金利がインフレ抑制のために必要であった,と言います.イギリスの高いインフレ率を容認してポンドを安くするより,当時のラモント蔵相がリフレ政策への誘惑を退けるため,自分をマストに縛りつけたことは正しかった,というわけです.

しかし,その後の代価である高失業率に耐えられず,ERMを離脱したことも正しかった,なぜなら(ERMに縛られるより)イングランド銀行に独立性を認める方が良い,と政府も同意したからです.その後の経済運営は非常に上手くいっている,とBuddは賞賛します.

この点で,Brittanはイギリス経済の好調さについて他の説明も可能である,と批判します.特に,インフレ率が低下したことよりも,失業率が低下したことに注目します.インフレ的な拡大やポンド危機による輸出増加などではなく,供給面での変化があったはずだ,と.1980年代のサッチャー政権が行った組合潰しのおかげだ,という者もあれば,ゴードン・ブラウンの労働者福祉の充実を主張する者もいるわけです.

Brittanは第三の要因,すなわちイギリスがインフレ無しの消費ブームを続けていることです.その理由は,イギリスが高付加価値のサービスや財の生産に特化し,交易条件が改善したのだ,と.いわば,グローバリゼーションの利益を貿易によって上手く取り込めたわけです.あるいは,住宅価格の上昇など,バブルに依存している面も大きいかもしれませんが.


NYT October 6, 2004

The Afghan Miracle

By WILLIAM SAFIRE

NYT October 6, 2004

Beaten Afghan Brides

By NICHOLAS D. KRISTOF

ST OCT 8, 2004 FRI

Democracy rises in Afghanistan

By Colin Powell

(コメント) アフガニスタンでは,民主的な選挙が行われる,という希望があります.それと同時に,テロリストや各地の軍閥,アヘン栽培や麻薬の密売ルートを取り締まる必要があります.しかし,どれほど不正や投票への妨害が危惧されても,選挙を待ち望む国民の熱意は非常に高い,とNYTは期待します.

KRISTOFは,アフガニスタン社会が今も深刻な父権制による女性差別を温存していることに憤慨します.19歳のEllahaは,家族がイランに逃れている間,大学に通い,帰国してアメリカの建設会社に仕事を得ました.会社の上司は彼女を奨学金でカナダに留学させようと計画しました.しかしそのことが家族を不安にし,父親が甥との結婚を決めてしまいます.彼女は,教育の無い,肉屋の婚約者を嫌い,家を出ます.しかし家族に追われ,避難施設で警察に捕まえられ,処女のテストを強制されます.さらに,叔父の家に監禁され,殴打されて,結婚することを承諾するしかなくなります.そして,もし結婚するなら自殺する,と言うのです.

タリバンの支配から解放されて喜ぶカブールの女性たちを材料に,「今日,女性は自由になった」とブッシュ大統領がアフガニスタンで宣言してから,すでに2年が経ちました.たとえば18歳のSohaillaは,彼女との結婚を望む男性の家族に3日間誘拐され,警察のテストで彼女が処女でなかったために,彼女も姦淫の罪で3年の刑を宣告されました.

社会に深く根付く差別を取り去るために,KRISTOFは学校における教育を望みます.学校,病院,女性のための経済的機会が必要です.そのためには,タリバンの支配を排除するだけでは不十分です.それは最初の一歩に過ぎません.

パウエル国務長官の基本的な選挙を支持する姿勢は,それがブッシュ政権でどのように扱われているにしても,正しい声明です.


WP Wednesday, October 6, 2004

Oil Fantasies

By Robert J. Samuelson

LAT October 9, 2004

A Gas Tax Now Could Save Us in the Future

By Kenneth Swift, Kenneth Swift lives in Tustin.

BG October 12, 2004

Growing militarization of our oil dependence

By Michael T. Klare

(コメント) 石油供給が不安定になり,枯渇するかもしれないのに,ブッシュもケリーも現実的な対策を示しません.ケリーは,ニクソンの頃から主張され続けている「エネルギーの自立化」を訴えます.ブッシュは,どこか他で油田が止まれば無意味になるような,南極の油田開発を期待します.ローマ・クラブがかつて行い,今ではあまり注目されなくなった,石油資源の枯渇を予測するアメリカ地質調査報告書も出ました.

実際にしなければならないのは,ハイブリッド自動車への転換など,石油の効率的な利用を促し,そもそも石油消費を抑えるような課税です.しかし,アメリカ人は夢想の上に現状を維持する選択が好きだ,とSamuelsonは悲観します.

ガソリンの値段が高すぎる? そんな不満を言う人々に,それが枯渇することを考えているのか? とSwiftは反問します.いずれ化石燃料に頼って生活する時代は終わるのだから,今から課税してガソリン価格を着実に引き上げ,その資金を他のエネルギー開発に充てるべきだ,と.また,その資金で市場の突然の価格上昇にも備えることもできるだろう,と.

実際にアメリカ政府が選択したのは,ますます不安定な政治的支配を石油供給のために支える,産油諸国への軍事的な関与拡大だ,とKlareは批判します.歴史的に見て,安定した政治的地域での採掘には限界が見え,ますます混乱した地域への依存を強めています.すなわち,ナイジェリア,イラク,インドネシア,スーダン,コロンビア,ヴェネズエラ,中央アジアなどです.そしてアメリカによる軍事的な体制維持が求められています.多くのアメリカの若者が,こうした地域からの石油に依存した代償として命を落とすでしょう.

日本はエネルギーの効率的利用で優れた技術を持っていると言いますが,同時に,世界各地で政府が資源確保に走り出している,というニュースを聞きます.


Oct. 8 (Bloomberg)

India May Have a Bill Gross Before China

William Pesek Jr.

Oct. 13 (Bloomberg)

Is India Facing Argentina-Like Debt Crisis?

William Pesek Jr.

(コメント) 「アメリカ vs.中国」という論争も盛んですが,「中国 vs.インド」も重要です.Pesek Jr.は,中国の方がインフラに優れ,投資環境に友好的な政府をもち,多くの直接投資を集めていますが,インドには中国に無い強みもある,と言います.すれは,豊富な資金を集める活発な政府債務の取引市場,債券市場です.債券の流通市場はアジアで最も流動的だ,と言います.中国がいくらトップ・ダウン式に生産の拡大を進めても,インドのように活発な企業家精神は育っていません.政府や資本市場の参加者が急速なグローバリゼーションの利益を得るには,投資家を惹きつけるインフラだけでなく,信用できる活発な資本市場が重要です.

インドの国債は,アルゼンチンと同じ,破綻への経路をたどるのか? アジアのアルゼンチン,といえば,通常はフィリピン,あるいはインドネシアを指していたはずですが,財政赤字を急増させていたインドに対して,Roubini & Hemmingが約1年前に警告を発しました.債務不履行やそれに近づいた諸国(アルゼンチン,エクアドル,パキスタン,ロシア,ウクライナ,ウルグアイ)の特徴を共有している,というわけです.しかし,選挙によってManmohan Singhが首相,P. Chidambaramが蔵相となったことで,その懸念は薄らいだ,と言います.

なぜ政府が交代するだけで債務不履行のリスクが消えたのでしょうか? インドは,政府の規模が大きく,制度の硬直性も激しいので,難しい改革が必要です.それを認めないで財政赤字を続けた強気の政府が,市場重視の改革を掲げた,資本市場に好感される改革派の政府に交代したので,市場の信認を受けられる水準が高くなった,とPesek Jr.は説明しているようです.


BG October 8, 2004

The Islamic iron curtain

By H.D.S. Greenway

(コメント) パキスタンのムシャラフ大統領が,西側とイスラム世界との間に「鉄のカーテン」を引く前に,行動せよ,と求めました.1946年の演説でイギリスのウィンストン・チャーチルが,ヨーロッパ大陸を横切る「鉄のカーテン」の存在を指摘し,東中欧諸国が東側に切り離されることを警告したように.

ブッシュ氏は,自分がチャーチルのように,ヒトラーと比肩する独裁者サダム・フセインを追放した,と自慢します.しかし,イラクの治安悪化とイスラム過激派の浸透はアメリカの軍事的な攻撃を市街地でも激化させ,さらに多くの反抗を引き起こしています.アフガニスタンやパキスタンで成立した,西側と協調する穏健なイスラム政府が,原理主義者からの攻撃に耐えられなくなる日が近づいています.


The Guardian, Friday October 8, 2004

Hungrey and homless

John O'Farrell

(コメント) 植民地に押し付けた英語と教育は,今やイギリスのジャーナリズムや金融業をインドで行った方が利益を上げられる,と気づいた企業の流出を招いています.かつて広大な植民地を築き,今や国内への移民流入を排除する結果として,各国の産業が移転される事態に直面するのであれば,それに反対するのは,所詮,無理な相談です.もちろん,少々,英単語が異なって綴られても・・・


NYT October 8, 2004

Ignorance Isn't Strength

By PAUL KRUGMAN

NYT October 12, 2004

Checking the Facts, in Advance

By PAUL KRUGMAN

(コメント) 自分の講義で,独裁者や専制を生まない社会条件として,私たち有権者が政府の「正直さ」と「プラグマティズム(あるいは政策の柔軟性)」を尊重することだ,と指摘しました.ブッシュ政権は,特に外交や安全保障に関して,こうした条件を失いつつあると思います.

KRUGMANは,ブッシュ氏が周りに集めたスタッフたちは,「上」は「下」であり,「無知」は「強さ」である,と強弁する連中であった,と憤慨します.しかし,その本当のコストがやっと国民に理解されるはずだ,と期待します.なぜなら,自分は過ちを犯さない,などと演じ続ける政治指導者は,政治の世界では上手くいっても,現実において失敗が拡大し,ごまかし切れなくなるから.現実を政治的に操縦するブッシュの無知は,強さではない.

だからこそ現実を確認しよう,とKRUGMANは言います.雇用は2003年の夏以降,170万人も増えた,景気もさらに力強く拡大するだろう,とブッシュ氏は主張します.しかし,ブッシュ氏は(大恐慌時の)ハーバート・フーバー以来,労働者の給与を減らした最初の大統領です.人口増加に見合うだけでも,経済は160万人の雇用増加を必要とします.ブッシュ氏の自慢した雇用増加は,それ以前の雇用減少よりマシとしても,大量の失業者が抱く望みを無視したものです.ブッシュ氏は2003年6月に失業率はピークを超えた,と自慢します.しかし,人口に占める有職者の比率は増加していません.職を求める人々が諦めたに過ぎないのです.

ブッシュ氏は不況と9・11を財政赤字の理由にしています.しかし,実際には赤字の3分の2が彼の減税策によって生じています.ブッシュ氏はケリーの「中産階級」への減税に反対します.しかし,ブッシュ減税の大部分は所得階層の上位10%に向けられ,特に1%の最も富裕な層に3分の1以上が与えられました.彼らの平均所得は1億円を超えます.その他にも・・・


NYT October 8, 2004

Questions for Kerry

Peter Hoey

NYT October 8, 2004

Questions for Bush

Peter Hoey

NYT October 9, 2004

Dreaming in Kabul

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) 個々の専門家が政治姿勢や政策転換の中身を公開で質問することは,もし候補とその参謀たちが真剣に回答するなら,非常に有益です.日本の政党も,マニフェストをさらに前進させては? さらに,英米の政治文化が示す強烈な「風刺」です.

KRISTOFの論説は,大統領選挙で誰に投票するべきか,オサマ・ビン・ラディン氏にも聞いてみましょう,・・・という白昼夢を描きます.

「もちろん,ブッシュ氏に投票せよ.」 とビン・ラディンは答えます.「彼の再選を強く願う.その理由は,ブッシュが自分たちの最良のリクルーターだから.アル・カイダの要員は増大している.」

「世界中でアメリカへの支持が急落し,イスラム世界では最低だ.もうすぐサウジ・アラビアやパキスタンが手に入る.その石油も,核ミサイルも,だ.ブッシュがイスラムを憎むほど,革命は容易になる.今なら私は民主的な投票を支持するだろう.世論調査が示すように,パキスタン国民のたった6%しかブッシュを支持していない.私を支持する国民は65%だ! 選挙で核兵器を手に入れてもいい.ありがとう,ブッシュ大統領! ・・・」


ST OCT 9, 2004 SAT

The new Yellow Peril

By Olivier Cattaneo

「中国はその比肩し得ない労働コストの優位を利用するだろう.中国人の労働者は5セントしか取らないが,われわれの労働者は5ドル以上も取る.われわれの製品は中国市場から押し出され,その後,中国人がわれわれに彼らの製品を売るだろう.最初は防戦し,急速に反撃として,われわれは攻撃を組織する.すでに組織はできあがった!」

これは,1899年にフランス議会で行われた演説である.1901年には経済学者Edmond Thierryによる『黄禍論The Yellow Peril』が出版された.1世紀以上も前に,フランス首相Jean-Pierre Raffarinは国内の生産力が中国やインド,ルーマニアに移転されるのを阻止する政策を提唱した.

アウトソーシング,オフショアリング,リロケーション,どれでもよい.かつて人が行方不明になると狼の責任にされた.今では,職が減るとアウトソーシングが疑われる.黄禍論が出た頃から,世界は大きく変わった.特にWTOによって自由貿易が神聖なものとなった.しかし,企業が外国に職を持ち去ってしまう論理は同じであり,政治家たちがこうした事態を非難するのも変わっていない.

海外投資は一般に規模の利益や外国市場への参入を理由に行われる.また,国内市場の変動を理由に,生産の一部を海外の下請けに出す.それでも地元に生産は残ることがある.たとえば,アメリカは今もITサービスを輸入以上に輸出している.この部門はアウトソーシングに直接の影響を受けている.アウトソーシングはしばしば競争力やコスト削減に重要な要素である.

国際貿易は進歩への道であり,新しい技術が財やサービスとして国境を越える.発明が世界に普及するのは貿易を通じてであった.経済学者のシュンペーターが唱えた「創造的破壊」の理論は繰り返し証明されてきた.新しい雇用や経済活動が古いものにとって代わるのだ.世界的なレベルでは,各国が異なった発展水準にある.だから,最も革新に富むアメリカのような国から消える仕事も,その他の国には存在する.発展した国は,革新を続け,新しい仕事を創り出すべきであって,古い仕事に執着してはならない.

2002年,ブッシュ大統領は鉄鉱輸入の関税を引き上げ,輸入割当を強いて,4万人の雇用を救う毎に,納税者に約50万ドルを負担させた.さらに,鉄鉱の高価格が,鉄鉱を消費する業界で20万人もの雇用を減らした.長期的に,競争力のない産業を温存することは幻想であり,経済全体にとって有害である.もっと少ない公共の財源を革新的な部門に有効に支出できる.また,自国の指導的な産業が海外に工場を移転するのを禁止するフランスは,現実にはそれが多国籍企業になる必要を分かっていない.

もちろん,仕事を失う不安を訴える者にとって,自由貿易,特にアウトソーシングが短期的に社会的・経済的な効果を持つことを否定するべきではない.多国籍企業は成功の代価を支払うべきだ.国内産業の競争力を高め,経済調整を促進し,世界の不平等や環境破壊を緩和しなければならない.この10年間で,アメリカは3億1000万の雇用を失い,3億3000万の雇用を得た.人々は職場をますます移動し,変化に従い,以前よりも革新を受け入れる.しかし,それは失業も伴う.

アウトソーシングを否定するより,政府は現実の挑戦を受けるべきだ.労働者たちの構造調整を促し,彼らにセーフティー・ネットを提供する.すなわち,グローバリゼーションによって職を失った者は,一時的な手当てと継続的な教育を受けられる.また海外に進出した企業や下請け企業は蔑視されてはならず,調整に貢献し,海外の利潤を自国に再投資するべきだ.発展途上諸国は外国からの投資を受入れ,比較優位を利用できる.そのために自ら貿易障壁を取り払うべきだ.また企業は,労働条件や環境基準を世界的に高めて行く必要がある.

貿易は,トマス・ホッブスが唱えたような「万人の万人に対する戦争」ではない.むしろ責任あるアウトソーシングは,イマニュエル・カントが唱えた「万国公法」の理想に近い.


FT October 10 2004

Amity Shlaes: A needless transatlantic dogfight

By Amity Shlaes

(コメント) 保護や補助金,政府との緊密な関係は,市場を介する関係者すべてを貧しくします.しかも,EUとアメリカがWTOで反目しあうように,国際関係も悪化させます.

エアバスへの補助金を支持する議論は,幼稚産業保護論,でした.しかし,世界市場でボーイングを追いやるほどに成長したエアバスに,この議論は適用できません.他方,ボーイングの問題は政府との緊密な関係です.さまざまな優遇策や市場競争への妨害,政治家への賄賂など,抗した関係を廃止する事由は多く現れています.なによりも,大西洋間でこれ以上の紛争を加熱させることは望ましくない,とFTは警告します.


FT October 10 2004

Daniel Bogler: The return of the Asian carry trade

By Daniel Bogler

(コメント) 低金利のアメリカでドル資金を調達して,他国の資産で利益を上げることが,国際投資家の儲け口です.こうしたキャリー・トレードには合理性があります.資金の多くはマクロ経済が良好なアジアに向かいました.しかし,FRBや中国が金融引締めに入り,アジアの債券,株式,商品から資金が流出し始めて,ヘッジ・ファンドは一気に赤字となります.

ヘッジ・ファンドのこうした資金は,中国の金融改革やアメリカの貯蓄不足を補い,長期的な改善を促すのでしょうか? あるいは崩壊を強めるだけ?


FT October 11 2004

Beware a 30 year old toxic cocktail

By Joachim Fels

石油価格の高騰により,世界は再びスタグフレーションに向かうだろう.ちょうど1990年代が,予想よりも高い成長率と,予想よりも低いインフレ率を享受できたように,この先数年は逆の事態が起きる.すなわち,成長率が衰え,インフレ率は予想を超える.マクロ経済の悪化は,多くの点で,世界がスタグフレーションに苦しんだ1970年代に似ているからである.

第一に,世界経済は再び石油価格の急上昇に苦しむ.確かに,石油が占める重要性は低下したが,状況も重要である.石油価格の高騰は心理的・投機的な需要によって起きている.それらはまた過度の金融緩和がもたらした副作用だ.すなわち,第二に,金融緩和が進み,主要国で短期金利が長期にわたって実質マイナスになっている.当時と同じように,不況を恐れる余り金融緩和が行過ぎて,供給の余剰が失われた.

第三に,政府の財政赤字が増大している.不況に対する財政的な刺激策と,税収の落ち込みにより,赤字が増えている.1970年代にはヴェトナム戦争があった.今やテロとの戦争が財政的なコストを増やしている.他方,EUは財政安定化協定を破棄してしまった.

第四に,ヨーロッパと北米の工業諸国は新しい競争国に市場を脅かされている.1970年代には,特に日本と韓国であったが,今や,中国,インド,東欧諸国などが輸出を伸ばしている.第五に,生産性の上昇が減速するだろう.アメリカはIT革命による生産性上昇を完了し,ヨーロッパは制度の硬直性によって不完全にしか実現できない.

こうして,成長率は低下し,インフレ率は上昇する.既にアメリカの余剰生産力は失われつつある.1970年代との違いは,労働市場がかつてほどインフレ調整を制度化していないことだ.しかし,行き過ぎた金融緩和だけで十分に危険である.


FT October 12 2004

Resist the siren song

NYT October 12, 2004

2 Mavericks in Economics Awarded Nobel Prize

By LOUIS UCHITELLE

(コメント) ノーベル経済学賞の教えとは,「政策の時間的整合性」であり,「金融政策の独立性」である,と言います.その硬質な合理性と人間的に不満足な命題(それはケインズ主義のおせっかいな政府の意図を挫く)は,経済学に革新をもたらした,と言います.

もし住宅が洪水で流されたら,善良な政府は住民たちを支援し,救済するべきでしょうか? Prescott-Kydlandの視点からは,政府は何もしない方が良いのです.なぜなら,もし再建を支援すれば,結局,洪水の危険がある地域に住宅をより多く建ててしまうから.

それゆえ,景気循環でも通貨危機でも,政府は安易に,その意図が良くても,介入してはなりません.むしろ,時間的な整合性と政策主体の政治的独立性が重要になります.


The Guardian, Tuesday October 12, 2004

Why not eat children?

Alan Freeman

(コメント) 企業によるグローバリゼーションにおいても社会的な正義は実現できるか? ドイツのシュレーダーが進める福祉国家解体や,ヴェネズエラのチャベス大統領が進める社会改造について,第三回社会フォーラムは論争しました.一体,経済が社会に奉仕するのか,それとも社会は経済に奉仕するのか?

ドイツ政府が改革を進めた理由は明確です.「あなたたちが求めるものは,社会的に見て無理なのだ.改革は経済的に見て避けられない.投資と成長を回復するためには,労働者の権利と賃金を切下げるしかない.」 世界化された市場では,残念ながら,市場の要求に従う以外に道は無い,と.

しかし,ドイツ社会が望むものを,政策を通じて,その政治的な支持を確立できれば,達成できる,とFreemanは主張します.まさに「もう一つの世界は可能だ」,と.ラテン・アメリカの経験,特にブラジル,アルゼンチン,ヴェネズエラは,ネオリベラル・グローバリゼーションの帰結を明確に示します.経済的合理性だけを追及すれば,それは社会的な破滅を意味します.アルゼンチンの所得格差は10年間で,25倍から64倍に拡大しました.

また,チャベスが示したように,人々は社会改革への参加を認められれば,それを熱狂的に支持する,というわけです.読み書き,教育,最低賃金など,非常に少ない権利でも,それを得た国民がアメリカの圧力を排して政府を支持する強い力となりました.アメリカが軍事展開するコロンビアの横で,ヴェネズエラは彼らの社会モデルを守りました.

ヴェネズエラは,西側に好意的な富裕層やジャーナリストから,民主的なモデルを破滅させた独裁体制である,と批判されます.しかしこの記事は,北の諸国が経済学を南に輸出するより,南から社会学を輸入する方が良い,と主張します.

「すべての経済的な選択は,現実には,社会の選択でもある.われわれは基本的な権利,すなわち教育,健康,住宅,養育,年金を守る社会を選択できる.あるいは,強欲,貪欲な不平等,生態系の破壊行為,市民生活の無秩序,社会的な絶望,に満ちた社会も選択することもできる.ジョナサン・スウィフトが示唆したように,もし経済的な効率だけが問題であれば,なぜ子供を食べてしまうことで,こうしたすべての問題を解決しないのか?」

しかしFreemanはラテン・アメリカの社会モデルを支持して,ドイツの金利を下げ,積極的な財政政策と賃金引き上げを実行するため,ヨーロッパに各国独自の金利と賃金,それゆえ再び為替レートと関税率を設けたいわけでしょうか? 政治家たちはユーロを解体する政治的なリスクを冒すより,市場統合と企業競争による経済再編(ネオ・リベラリズム)を維持するように思います.むしろ,新しい経済運営と社会モデルを展開するべきでしょう.


NYT October 11, 2004

Webs of Illusion

By BOB HERBERT

WP Monday, October 11, 2004

A Reason to Back the President?

By Sebastian Mallaby

(コメント) HERBERTも,ブッシュ陣営の「ダブル・トーク」,「パラレル・ワールド」というオーウェル的な手法を批判します.イラクを収拾する提案,雇用を創出する提案があれば,それを語るべきだ.この世界には問題があることを認める必要がある,と.

Mallabyは,二人とも今後の行動について優れた考えを示せなかった,と言います.要するに,ブッシュは攻撃的で,ケリーは協調的です.しかし,ブッシュの外交政策をあれこれと批判するケリーの弁舌には,テロと戦う覇気をブッシュほど感じない,と言います.


FT October 11 2004

Lampedusa route is now the road less travelled to Europe

By David White

FT October 12 2004

Moroccans ready to risk all for taste of good life

By Roula Khalaf

FT October 13 2004

Spain welcomes migrant workers

By Leslie Crawford in Madrid

FT October 13 2004

Trek from war zone ends in hunt for food at town dump

By Roula Khalaf

(コメント) サハラ砂漠の北端,かつてキャラバン隊の拠点であったAgadezが,今では西アフリカからヨーロッパへの移民流出の拠点となっています.しかしリビアがヨーロッパ諸国との関係を改善してから,非合法移民の移動は難しくなりました.若い男たちが,トヨタのピック・アップ・トラックに26人もしくは27人も乗って,ナイジェリア,アルジェリア南部を越え,この町へやって来ます.今では,イタリアとリビアの合同国境警備が計画され,リビアに難民受入れの収容所を建設する構想もあります.

人口600万人のリビアに,ヨーロッパを目指す移民たちが150万から250万人も居ると言われています.ウィーンに設立された移民政策研究センターは,毎年,さまざまな出身の移民80万人がEUの25カ国に入国しており,そのうち10万人がイタリアに入る,と推測します.移民たちはトラックに乗り,国境を越え,警察に尋問されるたびに金を支払います.それでもヨーロッパに入れる保証はなくなりました.

カサブランカの東120キロにあるモロッコの町Khouribgaでは,最初の成功した移民たちが送る資金で住宅建設ブームが起きています.モロッコのほとんどの家族に一人くらいは,ヨーロッパに住んでいる者が居ます.彼らは夏に新車に乗って帰国し,残された者たちに羨望を与えます.移民はきたアフリカ諸国の最大の輸出品であり,30億ドル以上の外貨を稼ぎ出し,二位の観光業を引き離します.今では奥地からも移民がKhouribgaに集まり,非合法な移動中にしばしば死亡します.支援団体は,過去5年間で4000人が死亡した,と推計しています.

Khouribgaの燐酸鉱山で働く労働者への賃金は月にわずか200ドル程度です.彼らはヨーロッパの黄金郷に憧れるのです.そして,外国で働く者は尊敬されます.しかしスペインの海岸を目指す船のいくつかは難破もしくは沈没し,息子たちの死体は彼らを待つ家族の元にも帰りません.「ここには仕事が無い.だから移民する.りんごを植えても雨が降らない.今年は雨が降った.しかし嵐が来てりんごの木を倒した.何もかもを失った.」

イタリアはアフリカからの移民を強制送還しますが,スペインは,特にラテン・アメリカからの移民労働者を歓迎します.それは特にスペイン経済の成長に必要な,スペイン人が就きたがらない職場にも弾力性を与え,高齢化する人口を支えています.労働党政府は法案を通過させ,各地で雇用されている移民労働者に自動的に労働許可書を発行するようになりました.合法的な移民として,極端な搾取を取り締まり,税金と社会保障費を支払わせます.政府は移民たちの利益代表を歓迎しています.

しかも移民たちが所得を増やすほど,消費者や銀行の預金者,資産の購入者として,スペイン経済に重要となりつつあります.スペインの銀行は移民たちの送金サービスを行い,彼らの住宅購入や資産運用にも商機を見て,そのために移民たちを雇用しています.

都市には,既に移民たちの店が独占するような職業が現れています.バルセロナのパキスタン人は家庭用のブタン・ガス.マドリードの宅配業務はペルー人やエクアドル人の小規模な店.マドリードの街角は中国人の店が多く,特に古着の売買に強い.

内戦の続くアフリカ西海岸からは難民の流出が続きます.2年前に象牙海岸を出て,徒歩でギニア,マリ,アルジェリアを何千キロも歩いた21歳の学生Vassi Gbatoは,6ヶ月前にモロッコ海岸のスペインの飛び地Ceutaに着きました.ヨーロッパを目指す多数の移民たちと一緒に,彼はタンジールの東100キロにあるBel Younech一時収容キャンプに入れられました.食べ物を探して歩き,ゴミ袋のテントで眠りながら,彼はCeutaの境界(6メートルのフェンス)を越えましたが,すぐにモロッコに連れ戻されました.「境界を越えるのはますます難しくなった.しかし私は越えるしかない.勇気がある限り,あなたもするだろう.」 多くの者が渡航船や偽造パスポートに大金を支払います.

いずれのキャンプにも代表が居ます.その一人は,自分たちは経済移民だ,と言います.彼らは仕事が欲しいし,ヨーロッパも彼らを必要としている.例えば,自分たちは畑で働くだろう,と.しかし,イタリアやドイツはきたアフリカに収容所を設けて,難民の流入を阻止しようとしています.人権団体からの非難を受けて,彼らはモロッコでの雇用機会を増やす,と述べています.

モロッコ政府は問題を放置してきましたが,非合法移民のネットワークがテロリストの隠れ家や武器の密輸ルートになるという心配から協力を始めました.警察を強化し,スペインとの合同国境警備にも合意しました.他方,人権団体はモロッコの法が人権を無視していると非難しています.


Oct. 13 (Bloomberg)

Turkey Needs Economic Policies, Not EU Membership

Matthew Lynn

(コメント) EU加盟が決まればトルコは買いか? 通貨はユーロになり,投資が殺到するから? そんな風に考えてイスタンブールの株式市場は高値を更新しています.しかし,それは単純すぎる,とLynnは批判します.

アイルランドやスペインは加盟によって成長を加速したが,ポーランドやスロヴェニア,ハンガリーはどうか? トルコは長く,困難な審査を経る.そして,トルコの人口規模7000万人は余りに大きく,所得水準3000ドル以下は余りに低い.トルコの投資環境はむしろ嫌われている.

加盟によってトルコには補助金が来る.ただし,その規模は経済構造を転換するほどではないし,アイルランドは補助金で成長したわけではない.もしそれだけであれば,なぜ東ドイツは繁栄していないのか? トルコが必要としているのはEU加盟ではなく,財政赤字削減,税率引き下げ,労働市場自由化,競争促進政策,などの健全な政策である,と言います.実際,ノルウェー,アイスランド,スウェーデンは繁栄していますが,EUに加盟していません.


NYT October 13, 2004

The Economy Unspun

(コメント) 大統領であることは,経済の運営にも責任を求められます.大統領が異なれば,経済運営も景気も異なるでしょう.労働者たちの雇用や賃金も異なるでしょう.ブッシュ氏の間違った減税政策によって,アメリカの労働者は苦しんでいる,と.


FT October 14 2004

Philip Stephens: Waiting for America’s verdict

By Philip Stephens

(コメント) もし民主党のケリー候補が当選しても,アメリカの外交姿勢に大きな変化は無い,とStephensは考えます.今後のイラクについて,もしイスラム過激派と対抗するなら,その考えはブッシュ氏と似るでしょう.むしろ冷戦期の「封じ込め」でしょうか? ケリーが国際秩序の維持を,誰と,どうやって分担するつもりなのか? アジアへのアウトソーシングをどうやって止めるのか? ロシアの民主化にどの程度踏み込んだ要求をする気か? また,パレスチナやイスラエルの指導者は,ケリーがどこまで本気で中東和平に取り組むか,心配しています.


BG October 14, 2004

A collision of visions

BG October 14, 2004

A clear choice

By Derrick Z. Jackson, Globe Columnist

NYT October 14, 2004

The Final Debate

WP Thursday, October 14, 2004

Debate Ducking

(コメント) 3回のTV討論も,決定的な優劣は示せなかったようです.国内の経済問題ではケリーが優位.価値観・道徳問題では互角.外交問題ではブッシュが優位? だから,イラクで大きなテロが起きたり,ウォール街で市場が弱気になったりすればケリーの勝ち.イラク情勢の悪化が関心を集めず,安全保障や信仰の問題で,ケリーは十分に信頼できないと思われればブッシュの勝ち.・・・?

ケリーはマサチューセッツから来た極端にリベラルな政治家である,と非難されました.ブッシュは72年ぶりに雇用を減らした大統領である,と攻撃されました.選挙は,どちらの方が責められるべきか,を問います.二人とも難しい問題には答えようとしませんでした.社会保障の維持や財政赤字を減らす方法です.

二人の社会観は明確に異なります.ブッシュは政府の規制から自由になるべきだ,と主張し,社会保障は民営化して,税金を減らすことが正しい,と考えます.他方,ケリーはより公正な社会を求め,政府は不平等を緩和し,家族やコミュニティーを守ります.


The Japan Times, Thursday, October 14, 2004

Crisis that hangs on hearsay

By DAVID WALL

(コメント) 多国間交渉が名目と化した今も,北朝鮮からは亡命者が流出しています.北朝鮮の支配層は,今も核兵器の増産に励んでいる,と噂されているわけです.しかし,その噂を確認した者は誰もいません.6カ国協議でアメリカと北朝鮮の代表が同じことばかり言い合っているのは,互いに,この確認できない噂を交渉の対象にしているからです.WALLは,むしろ経済的なエンゲイジメント(取り込み)を図って,北朝鮮の経済状態を改善することが,政治体制の平和的な転換にも繋がる,と主張します.


WP Thursday, October 14, 2004

The China Effect

雇用を奪うことから,石油価格の高騰へと,アメリカにおける中国の話題は移っている.中国は,一方でアメリカに安価な靴や衣服を輸出している.けれど,他方で石油需要を増やし,国際価格の高騰を促している.アメリカは輸出する以上に多額の輸入をする国である.だから,もし輸入品の価格が下がれば利益を得るが,上がれば損失を被る.中国はアメリカにとって利益をもたらすのか? それとも損失をもたらすのか?

長期的に見れば,中国は世界に多くの需要をもたらして成長を牽引し,供給能力も高めるだろう.アメリカは中国の成長によって大きな市場を得られる.しかし,中国の石油消費が急増して,アメリカの消費漁を抜くことも予測される.アメリカは石油供給の国内のボトルネックを解決するとともに,長期的なエネルギーの転換を進めるべきだ.そうすれば,中国の影響はアメリカの損失よりも利益となる.議会は中国を非難しているが.

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The Economist, October 2nd 2004

Palestine and Israel: Break that bloody stalemate

(コメント) もしパレスチナとイスラエルの紛争が解決できるなら,世界の紛争地域に大きな希望となるでしょう.そのためには,アラファトも,シャロンも,交渉態度を改めるべきです.パレスチナで選挙が行われれば,新しい政治的代表が決まります.互いに軍事的な紛争を強めた結果,アラファトやシャロンが権力を維持する見込みは高いです.しかし,その結果を受けて,現実的な交渉を再開できます.

アラファトは交渉の条件を改善するために,イスラエル市民を自爆テロから守るべきです.そしてイスラエルを国家として認めることだ,とThe Economistは主張します.平和と繁栄を目指す二国案の実現を保証するために.

またシャロンは,アラファトの自由を回復し,セキュリティー・フェンスやブルドーザー,暗殺ではなく,二国案の実現によって平和を得られることを支持者に説得することです.


Debt relief: Clean slate

(コメント) 38カ国の高債務貧困国HIPCに対して公的債務免除を行うべきか? 最貧国へのすべての債務を減額するべきか? あるいは,債務免除だけでは問題を解決できないから,むしろ将来の融資と政策改善を求めるべきか? 最初の提案はアメリカ政府,次の提案はイギリス政府,最後の反対はIMFなどの国際機関が示しました.

アメリカ案は簡潔で,しかも財源を必要としません.しかし,HIPCは最貧国と同じではなく,将来の見通しも悪いです.イギリス案は最貧国を含み,各国政府による減額やIMFの金再評価にも財源を求めます.しかし,どちらの提案にも,債務を免除された諸国が再び安易な融資を受けたり,国際機関の長期的な融資財源,政策監視能力が失われたりする問題を抱えています.

貧困を減らすために,豊かな諸国が援助を増やすことは重要です.しかし,その意図を実現する国際的な社会運動がHIPCの債務免除にだけ注目するのは間違っているようです.