IPEの果樹園2004

今週のReview

8/2-8/7

IPEのタネ

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世界の英字紙からコラムを紹介します.私が選んだ論説の内容を,かなり自由に要約し(全訳に近いものもあります),そこには自分の意見も含まれています.利用する場合は,それぞれの出典を自分で確認してください.なお著作権は,それぞれ,元の著作権に従うものと考えます.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   貿易自由化交渉 :正しい目標に見合う,国際的な合意形成の仕組みは,まだ,遠い目標です.

2.   再建ブレトン・ウッズ体制 :変動するドルとユーロ,それに対して水準を問題にするアジア諸国の為替市場介入政策.

3.   売春 :世界最古の職業は,なぜ合法化されるべきか?

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


FT July 20 2004

Martin Wolf: Two faces of liberal democracy

By Martin Wolf

FT July 20 2004

Belgian far right highlights dilemma of democracy

(コメント) リベラリズムの思想が,これほど「市場」と「競争」に還元されて良いとは思いません.しかし,Wolfの主張(新著の紹介)は明快です.政府が市場の機能を保証するという役割に集中して権力を行使すれば,富と権力の好循環は始動するのです.問題は,このような有能で明敏な政府がどれほど少ないか,ということです.

Wolfによれば,世界の現状は「ガリバーと小人たち」でできています.ガリバーはガリバー同士の合意・国際協定により,また小人たちはガリバーにより統治されるでしょう.しかし,独裁者だけは合意を守りません.そこで,世界から独裁者を追放し,国際秩序を回復するための国際行動が求められます.それは「帝国」をなつかしがっているのではなく,大国が国際合意に従って行動することを求めている,とWolfは考えます.

「市場」と「政府」との関係が,本当に,これほど完全な補完関係であり,理解されているのであれば,グローバリゼーションは機能する,というWolfの確信も肯けます.

貿易は自由化できるし,社会主義やその他の非市場型経済モデルは駆逐されるし,小国は存在理由を失い,EUのように,市場統合を受け入れる中で消滅していくわけです.

しかしこの過程は,市場が混乱を深めるなら,逆転するのでは無いでしょうか? 「市場」についても,「政府」についても,私たちが完全な答えに至ったとは思えません.歴史上,何度も,異なるモデルを掲げて,異なる帝国を築くために,ガリバーたちは小人を吸収したわけです.それでも,今度こそ,グローバリゼーションは機能する?

国家が死滅するかに見えたヨーロッパでは,人種差別や反グローバリゼーションを唱える極右の政治活動が盛んです.しかし,今回のヨーロッパ議会選挙を見れば,その中心であったフランスとオーストリアで右翼が後退し,退潮を迎えたかに見えます.ただし,ベルギーを除いて.そのベルギーでは,主要政党が極右政党と交渉することを一切拒否したために,有権者の同情がさらに集まり,不満を吸収し,期待を高めました.

グローバリゼーションは,人々が身近な不満を政治的に表現することを難しくし,結果的に,極端な主張を支持することにより,主流派やグローバリゼーションへの不満を表明するしかない状況を先進地域に広めます.


IHT Tuesday, July 20, 2004

Japan must wean itself off the U.S.

Peter Rutland

(コメント) 「アメリカが食事をし,NATOが皿を洗う.」と,ペンタゴンのスタッフは言います.さらに付け加えるなら,日本が勘定を支払う,と.

認識ギャップは,しばしば現実のショックを増幅します.アメリカは日本の軍事的な役割をまったく無視しているのに,日本の保守政治家は日米の「特別な関係」を自慢します.日本の若者は,基本的に平和憲法を支持していますが,同時に,北朝鮮の脅威や石油への依存については,アメリカ軍の存在を受け入れます.こうした矛盾した立場は永久に維持できるものではありません.

日本がヨーロッパのモデルに移行することはできない,とRutlandは考えます.ヨーロッパとアジアでは条件が全く異なるからです.ヨーロッパを動かしたのは冷戦の終結でした.アジアにはまだ多くの共産主義国が存在し,アメリカ軍との二国間防衛協定が枠をはめています.他方,アジアの経済的なダイナミズムと統合化を,日本は日米安保に縛られて,柔軟に吸収できません.

日米関係は,アジアを含む,より包括的な関係に変化して行くはずです.日本やアメリカの指導者は,安全保障に関しても,それを準備しているでしょうか?


FT July 21 2004

What the IMF must do to build its future

By William Rhodes(chairman of Citicorp and Citibank and senior vice-chairman of Citigroup)

(コメント) 世界最大の民間銀行から見ると,現在の国際通貨制度,特にIMFはどう見えるのでしょうか?

IMFの主要な役割は,Rhodesによれば,5つです.@危機の予防.A民間部門との協調.B市場の信認確保.C透明性拡大.D役割の限定.

一言で言えば,IMFが民間部門の融資を市場に従って機能するように,各国政府の監視や政策変更を促すことをもっと上手くやりなさい,というわけです.政策監視や融資条件が上手くいったところでは調整と景気回復が成功し,それ以外では失敗した,と考えます.また,最近の試みである,返済の遅延に対して,債権者と債務者の交渉を促すために融資する,という方針を批判します.余計なお世話だ,というわけでしょう.債務国政府が早めに正しい政策を採用していれば(IMFが正しい監視と強制力を行使していたら),そのような事態を回避できたからです.


BG July 21, 2004

The hidden issue of class

By Robert Kuttner

(コメント) 選挙は,もちろん,社会階級間の闘いです.世の中には,裕福な資産家や破格の給与を得る重役などより,貧しい労働者の方が多いはずです.しかし,政治的な右派はリベラルな左派よりも階級の団結を上手く利用しています.Kuttnerは,なぜ政治的に右派が勝利できるのか,二つの理由を指摘します.

一つは,アメリカ人が上昇志向と中産階級意識に支配されていることです.すなわち,今も,多くの貧しい労働者や移民たちは「アメリカン・ドリームの囚人」なのです.貧しい労働者を擁護すれば,中産階級の反発を買います.庶民の利益を守って富を得たエドワーズは,裕福な弁護士だ,と共和党に非難されるのに,企業のもっと裕福な弁護士たちは共和党に献金し続けています.

もう一つは,労働者の多くが保守的な価値を優先することです.堕胎,同性愛,銃規制,テロとの戦争,などで,ケリーはブッシュを攻撃し切れません.穏健な労働者階級が離反するのを恐れるからです.クリントンはこの政治力学をよく理解し,経済的ポピュリズムと社会的保守主義を融合させました.

ブッシュが,多くの労働者を犠牲にして裕福な少数の者のために権力を行使し,所得格差を拡大してきたことは明白です.減税,規制,学校などへの公共投資,住宅,社会保障,などを通じて,ブッシュは貧困層を切り捨て,富裕層を優遇しました.その政治的な不安定さは明白です.ケリーは,その戦いを通じて,もっと中産階級の支持を得るべきです.


IHT Wednesday, July 21, 2004

What people really think of free trade

John Audley

NYT July 21, 2004

Shrimp and Mischief

(コメント) 広範な世論調査により,Audleyは,アングロ・サクソン諸国に限らず,ヨーロッパ諸国でも自由貿易は支持されている,と主張します.国民の多くは,農業でさえ,補助金を削ることを支持し,貧しい諸国が発展する上で自分たちの市場を開放することが重要だ,と考えています.反グローバリゼーションや,底辺への競争を阻止する,という意見は少数派です.

しかし同時に,グローバリゼーションの最大の受益者は多国籍企業である,と考えています.そして,労働者への教育・訓練をもっと世界中で行うべきだ,と考えます.政府が自由貿易を実現する上でなすべきことは,こうした国民の意見を反映した自由化交渉を積極的に進めることだ,とAudleyは考えます.

多くの貿易交渉が進展し始めた中で,しかし,ヴェトナムや中国からのエビ輸入に対してアメリカの業界がダンピング提訴し,113%の関税を課されたことは,多数の外国の生産者や国内の消費者を犠牲にして,少数の生産者が保護される例です.なまずに次いで輸出を妨げられたヴェトナムはアメリカの自由貿易という主張を強く疑い,中国は半導体への関税を撤廃したことを悔いるでしょう.アメリカは経済効率や自由貿易という原則を,政治的理由で,拒むわけです.


NYT July 21, 2004

East Germany Swallows Billions, and Still Stagnates

By MARK LANDLER

(コメント) 1990年のドイツ再統一から今までに,1兆5000億ドルが政府により東に支出されました.東の住民は賃金や通貨,資産の価値が減ることを嫌い,西の住民は東からの大規模な移民を恐れました.その結果,東の通貨は西の通貨と同じ価値を認められ,東に対して西と同様な公共投資,インフラ整備,社会保障が与えられたのです.

しかし,1兆5000億ドルの結果が,東ドイツの大都市に広まる失業,倒産,人口流出です.大量の旧東ドイツ集合住宅が破壊され,新しい住宅群に建て替えられました.産業開発地区も設けました.しかし,東ドイツへの投資は増えませんでした.解決策は,公共投資や補助金ではない,とSaxony のGeorg Milbradt 知事は言います.Bavariaが人口減少を逆転できたのは,ミュンヘンを自動車とハイテク産業の中心地にできたからです.

補助金を止めて,労働規制を緩和し,企業の投資を誘致せよ,という処方箋を,病気そのものよりも恐れている,と批判します.


FT July 22 2004

Martin Wolf: A new approach to the oldest profession

By Martin Wolf

(コメント) 売春は,世界最古の職業と言われます.これを根絶する可能性はゼロでしょう.もしそうであれば,その有害な側面をできるだけ抑制する方が合理的です.しかし,モラリズム,道徳的な偏見により,正しい政策が阻まれます.アメリカでは,ネヴァダ州を除いて,売春が非合法です.他方,イギリスでは売春そのものは合法であり,それを仲介し,宣伝することを非合法にしています.Blunkett内務相は,一層の合法化に向けて,一歩を踏み出しました.

たとえば,動物解放運動の思想により,肉食が非合法化されたとすれば,何が起きるでしょうか? 闇市場ができるでしょう.肉の質は悪化し,健康に有害です.肉を扱う犯罪が増えるでしょう.そして,現在の「麻薬取引業者」と同じように,「食肉取引業者」が軽蔑されます.

売春が地下にもぐれば,彼女らの健康は軽視され,HIV感染を抑えることも難しくなります.売春は,貧しい家庭や子供への暴力から生じる,と非難されます.しかし,売春を非合法化して,このような社会的悪を解決できるでしょうか? 明らかに,むしろ彼らの状態を悪化させるでしょう.

では,どうすれば良いのか? おそらく異なったアプローチを比較し,自分たちの社会に適したモデルを模索することでしょう.ニュー・サウス・ウェールズでは,地方政府との合意があれば,売春宿を合法化しています.売春も,他の職業と同じように,規制されるだけです.オランダ,ギリシャ,オーストラリアの諸州で,特別な免許があれば,売春宿は合法です.病気を理由に,売春宿を特別に規制する国もありますが,これは非合法化と似た結果になるでしょう.むしろ健康診断を実施する方が良い,とWolfは言います.

最善の策は,売春を犯罪や規制から完全に解放し,その濫用,特に子供の売春を,厳しく取り締まることです.そして大人たちは,自分の意志で,この職業を選ぶことを保証するべきだ,と考えます.他方,道徳的に非難する者は,売春の社会的弊害を増幅していることを考えるべきだ,と主張します.


July 23 (Bloomberg)

Attack North Korea's Kim With Global Markets

William Pesek Jr.

(コメント) 北朝鮮の核問題よりも,北朝鮮問題を解決できない場合,アジア諸国,特に韓国,の債券市場の方が不安である,とPesek Jr.は指摘します.結局,アメリカの強硬姿勢を変えさせたのも,債券市場に不安を抱える彼らの柔軟姿勢でした.もしアメリカとの軍事衝突が起きれば,核によってではなく,債券市場によって,アジア経済は破壊されてしまうでしょう.他方,世界で最も孤立し,最も貧しい独裁国家であるからこそ,北朝鮮政府は債券市場を恐れません.そうであれば,軍事的な圧力をかけるより,北朝鮮を市場に取り込む方が,彼らに正常な交渉姿勢を学ばせる先行条件かもしれません.

「明日の朝,世界の主要な大国が一斉に北朝鮮政府を承認し,大使を派遣し,禁輸を解き,企業が望むように投資を許可した場合,何が起きるだろうか? そして,北朝鮮の消費者にそのわずかな貯金で,ナイキやパナソニック,サムソン,スターバックス,ヴォダフォンを自由に買うことを認めれば良い.」それは,イラクを軍事的に解体したタカ派が北朝鮮の独裁体制を強化したのと逆の効果を及ぼすでしょう.


FT July 25 2004

Wolfgang Munchau: EU must look beyond its borders

By Wolfgang Munchau

(コメント) アジア諸国がドルに対して為替レートを名目的に固定化したまま経常黒字を蓄積する現代の国際通貨制度は,1950−60年代のヨーロッパを再現したように見えます.中国の過剰労働力が枯渇するまで,アジア諸国は為替レートが増価することを回避するでしょう.Michael Dooleyは,これを再建ブレトン・ウッズ体制と見なします.しかし,その主張をEichengreenは批判します.理由は以下の4つです.

1.   アジア諸国は協調行動を取れない.ヨーロッパは,金価格の上昇時から,ブレトン・ウッズ崩壊においても,常に協調して行動しました.他方,今のアジア諸国にはそのような姿勢が見られません.

2.   アメリカは,1959年を除いて,経常収支の黒字国でした.短期の資本流入を超える長期の国際投資があったのです.キンドルバーガーの指摘した,世界の満期転換,銀行機能です.これは今のアメリカにありません.

3.   当時に比べて,今の資本市場は大幅に自由化され,国際化しています.ドイツは経常黒字の蓄積にもかかわらず,アジアが経験したようなバブルや危機を経験しませんでした.

4.   最も重要な違いは,ドルに変わる流動的な資産として,当時と異なり,世界にユーロが存在することです.かつてはドル建資産を嫌っても,他に代替する資産がありませんでした.今のところドル資産からの流出は起きていませんが,もしアジアの一国がドルを売ってユーロを買い始めれば,雪崩を打って資産が移転されるでしょう.

ヨーロッパ諸国は,今度は,制度を破壊するより,むしろその影響を被る側です.もし世界の不均衡が調整され始めれば,まずユーロが大きく増価する,というわけです.自分たちだけの利益を目的とした通貨政策では済まないでしょう.


BG July 25, 2004

What you won't hear

By Ralph Nader

(コメント) もし二大政党制が成立すれば,政権交代は容易になるかもしれませんが,双方の政策が似通って,少数の反対意見が無視されるのではないか,と言われます.Naderは,ケリーが触れなかった12のタブーを指摘します.たとえば,なぜ企業のスキャンダル追求を止めたのか? 結局,民主党が共和党と違うのはどこか?


NYT July 25, 2004

Wal-Mars Invades Earth

By BARBARA EHRENREICH

イングルウッドからシカゴまで,多くの町の住民を分断し,ヴァーモント州全体を論争に巻き込み,今や,大統領選挙の争点としてアメリカ全土に広まる問題となった.ジョン・ケリーは大型小売店を底なしの低賃金によって非難し,他方,ディック・チェイニーは「企業家精神と公平,清廉さ」において賞賛した.これは21世紀の中心的な論争となるだろう.地球人とウォル・マート人との対決だ.

いつその趣旨がこの惑星に付着したのか,誰も知らない.しかし,その穏やかな初期の数年は十分に正常だと思えた.正常すぎる,とさえ言えただろう.その笑顔,赤・白・青の旗をなびかせ,まるで1950年代のSFに登場する,人類の服をまとった宇宙の侵略者たちのようだった.

その後,成長し始めた.2000年までに,その規模はGMを超えた! そしてスイスよりも裕福だ! しかもそれだけじゃない.その成長の速度が問題だ.毎週,新しい店が二つ開き,アメリカの不動産を10億ドル購入する.1年間で約60万人のアメリカ人労働者が入れ替わる.私のおおよその計算では,4004年までに,アメリカのすべての土地がスーパーマーケットに占拠され,新しい店は古い店の上に建てるしかない.

ウォル・マートは,もちろん,それよりずっと前に行き詰まるだろう.もしウォル・マートで働く者しかいないなら,誰もそこで買い物できないから.ウォル・マートは,しばしば,大衆に消費至上主義をもたらす.しかし,その「提携者」(と従業員を呼ぶ)の半数以上は会社の保険にも入れない.経済に賃金引下げが広がる中,最大の雇用者であるウォル・マートも売上は伸びない.

2000年に私が少し勤めたとき,われわれが注文するウォル・マートの7ドル・ポロシャツでさえ夢の買い物であると言う女性と一緒だった.時給,その程度にしかならない.店によっては,従業員を食糧スタンプや福祉の給付に並ばせていた.多くの者が副職を持っていた.批判家は,ウォル・マートが10億ドルも公的な補助金を受けている,と指摘するだろう.それは,従業員たちが生きていくために必要な政府支出を含んでいない.明らかに,ウォル・マート人は,根付く前に,人類の生物学的生存条件を満たしていなかった.

しかし飢えたハイエナの食欲を持つこの生きものに,見映えを良くする時間など無かった.ウォル・マートは性的な差別でも,超過勤務への不払いでも,一晩中,従業員を店に閉じ込め,緊急の医療さえ許さなかったことで,集団訴訟を起こされている.これらはわれわれが第三世界の苦汗工場と結び付けるような労働条件だ.労働者権利協会の掲げる10の基準の内,少なくとも5つを満たせないウォル・マートは,世界最大の苦汗工場である.

その犯罪に直面して,Bentonville本社の人々は,会社が分散化しすぎているからコントロールできないのだ,と同情を訴える.しかし,ウォル・マートと地域が共存することを示せる者などいないだろう.ウォル・マートの唯一の望みは,イングルウッドで成功した見せかけの反対派,Madeline Janis-Aparicioのような連中だけだ.彼女は私に述べた.「Madeline Janis-Aparicioを破壊してもだめよ.」「責任を取らせることね.」と.他方,サービス部門の国際労働組合議長を務めるAndy Sternは,ウォル・マートと共存できる基準を確立しようとしている.組合,教会,コミュニティー活動家,環境保護運動など,ウォル・マートの無慈悲な拡大に反対するため既に立ち上がった人々を,彼は国中で連携させたいと思う.

地球とウォル・マート.それがどこから来たものであれ,われわれと共存するか,それとも母船へ帰ることだ.


NYT July 25, 2004

The Perils of Predicting Financial Bubbles

By EDUARDO PORTER

July 26 (Bloomberg)

Is U.S. Housing Bubble Fact or Fiction?

John Wasik


ST JULY 26, 2004 MON

Don't go ballistic over missile shield

By Michael Richardson

(コメント) 日本は,アメリカと協力して,アジアを包括する大陸間弾道弾の防衛システムを開発するべきでしょうか? 主に,北朝鮮のミサイルから日本を守る,と言われているシステムです.

オーストラリア政府がこの計画に参加を表明したことで,野党との論戦が激しくなっています.中国の軍備増強と近代化を刺激する,という点です.また,インドネシアではこのシステムをオーストラリアがインドネシアへの攻撃に使うだろう,という論争になっています.

アジアも長距離ミサイルの時代に入ると思われます.中国がその能力を誇示し,インドが追い上げています.何より,北朝鮮がテポドン2を実験したことで,韓国と日本が焦りました.潜水艦発射ミサイルも開発している,と新聞に報道されています.オーストラリアと日本は,北朝鮮のミサイルを着弾前に破壊するため,アメリカのイージス・レーダー・システムやパトリオット・ミサイルに注目しています.

中国はアメリカが中心となったミサイル防衛網を,自国のミサイルに対する脅威と見て批判していました.しかし,日本が北朝鮮の脅迫に対抗して,短期間に,核武装する危険を重視して,論調を変えました.もし北朝鮮が核ミサイルを保有すれば,中国もその脅威に対処しなければなりません.

日本を含めた相互確証破壊に至るまで,この悪循環は止められないのでしょうか? あるいは,多国間交渉による核武装の解除が可能であり,・・・しかも,正しいのか?


FT July 26 2004

Why power is America's weakness

By Owen Harries


FT July 26 2004

Modern China is facing an ecological crisis

By James Kynge

July 27 (Bloomberg)

Hayek, Once China's Poison, Is Now Its Prophet

Andy Mukherjee

IHT Tuesday, July 27, 2004

Philip Bowring: Keep an eye on China's grain production

Philip Bowring

(コメント) 中国経済の問題点は? 例えば環境破壊,資源不足,計画経済,統計,農業生産,農民,世界的な低金利とインフレ再燃.


FT July 26 2004

Philip Stephens: A Kerry win would benefit Blair

By Philip Stephens


FT July 26 2004

Making Doha a better deal for poor countries

By Sheila Page

IHT Monday, July 26, 2004

A chance to salvage a Doha trade deal

Supachai Panitchpakdi

NYT July 26, 2004

Trade Talks in Geneva Offer More Hope This Time

By ELIZABETH BECKER

NYT July 26, 2004

In Tobacco Country, Growers Keep Their Fingers Crossed for a Windfall

By SIMON ROMERO

FT July 27 2004

Martin Wolf: Failure in Geneva would be a disaster

By Martin Wolf

IHT Wednesday, July 28, 2004

The rich gang up on the poor at trade talks

Kevin Watkins(head of research at Oxfam)

NYT July 28, 2004

Farm Subsidies Again Take Front Seat at the W.T.O.

By ELIZABETH BECKER

(コメント) Pageは,「開発ラウンド」とも呼ばれる現在の自由化交渉を,発展途上諸国の組織化や提案能力から考察します.ブラジルやインド,中国に代表されるG20は,必ずしも,最も貧しい,小国の利益を代表しません.そこで彼らはG90を結成しました.しかし,G90がどのような利益を代表するのか,どのように集団行動を組織するのか,交渉の主体となるにはまだ時間がかかるでしょう.

交渉においては,バランスがすべて,と言われます.全会一致が必要ですから,WTOの事務局が提示した原案から,結局,大きく外れることは無いのです.問題は,期限までにまとまらないことです.もしそうなれば,自由化は頓挫します.すべての国が,合意のために,部分的な妥協を引き受けるべきです.

カンクン会議を離脱し,交渉を崩壊させた西アフリカ諸国やG20は,次の交渉に参加するでしょう.しかし,アメリカ中が関心を寄せた民主党大会や,アメリカ議会では,保護主義的な主張が目立ちます.アメリカの綿花保護に対するブラジルの訴えがWTOで認められたことは重要です.インドや中国も,積極的にWTOを利用する姿勢です.

世界貿易の体制を決めるのは,今も,最大の市場を支配するアメリカとEUです.アメリカのRobert B. ZoellickとヨーロッパのPascal Lamy,彼らの交渉姿勢や合意事項が,世界の自由化交渉を動かします.ただし,彼らの任期は短く,ブッシュ大統領は11月に選挙を控えています.その意味で,長期的な取引は難しいのです.同時に,先延ばしは彼らの成果にならず,7月末の合意が必要です.

EUは,貧しい農業諸国を加盟させたことで,共通農業政策や補助金を見直す方針に転換しました.選挙を控えたアメリカ政府がむしろ守勢に立ちます.西アフリカ諸国は,自分たちのGDPを超える補助金をアメリカ政府が国内の綿花農家に与えていることに憤慨し,交渉の席を去りました.今回は,アメリカ政府もその重要性を理解している,と言います.

アメリカの姿勢が障害となっても,アメリカを欠いた合意には意味がありません.農業において対立を含みながら,WTOにおいて交渉事項が曖昧な形で決まった後,外交官たちの駆け引きが正式に始まるのです.

アメリカのタバコ農家には,輸入割当や補助金に依存した億万長者がいます.他の産業が無い,衰退地域に残された政治的な雇用創出でした.しかし,国内では反喫煙の社会運動が,国外ではブラジルなどからの競争圧力が,結局,この産業を死滅させるでしょう.

Wolfは,交渉の障害は,その過去の成果そのものである,と言います.貿易交渉の領域が広がり,国内政治を深く侵食するようになりました.紛争処理が強化されたために,ルールを無視することも難しくなりました.そして150近い加盟国では全員一致による協定の成立は難しいのです.

そこでWolfは,三つの交渉グループに注目します.まずG90は,弱小国のグループです.彼らが今回の貿易自由化交渉に関心を寄せるのは当然です.しかし,Wolfは,彼らが国際的な義務を果たし,自分たち自身の輸入関税が,生産コストを高めて輸出を妨げている,と言います.正しく関わるときだけ,自由化は彼ら自身の利益になるのだ,と.

次に,ブラジルや中国などのG20です.彼らは自由化の最大の受益者となるでしょう.それゆえ,たとえばG90に対する完全な国内市場開放を実行するなど,合意に向けた行動を率先して採るべきだ,と主張します.また,G20が参加しないような自由化を先進諸国だけが受け入れることは難しい,という事情も理解しておくべきです.もちろん,貿易自由化の方向を支配するのは,アメリカとEU,そして,わずかながら日本です.彼らは何よりも,農産物市場の自由化に取り組まねばなりません.

OxfamのKevin Watkinsは,スワヒリのことわざを引きます.「象が争えば草がつぶされる.象が愛し合っても草はつぶされる.」 これが国際交渉の真髄です.

誰が,何を,バランスさせているのか? フランスのシラク大統領は輸出補助金を認めないWTOの交渉に合意しないようヨーロッパ諸国に訴えます.アメリカの大統領が出す農業補助金は70億ドルに達するのに,WTOの交渉議題にも上がりません.他方,西アフリカ諸国の綿花に対する自由化要求は無視されています.

アメリカとEUが,事実上,合意に達している「大西洋コンセンサス」は,現在のドーハ・ラウンドが掲げた発展途上諸国の利益と矛盾するものです.すなわち,発展途上諸国には自由市場の原則を押し付け,農業については自国の保護や補助金をルールから除外すること.さらに,「政治的に微妙な問題だ」という理由で,他にも多くの領域を自由から免除します.それらが発展途上国の比較優位を示す領域なのです.

自国の莫大な補助金を無視して,アメリカは発展途上諸国の農産物市場開放に熱心です.しかし,ラテン・アメリカ諸国の自由化を見ても,彼らがそれに慎重であるのは当然です.農業を失った後,彼らの雇用や成長の見通しがあるのでしょうか? それにもかかわらず,欧米諸国はカンクンの交渉決裂を発展途上諸国の愚行によるものだと非難します.

犠牲者が非難されるのは,アメリカとEUが責任を回避したがっているだけです.多角的な自由化のルールや貧困の解消を目指す広範な公共的利益が,農業分野の私的な既得権に支配されている,ということです.政治家は,誰も,その失敗のコストを負わないつもりです.


NYT July 26, 2004

What Works in the Rest of the World

By WILLIAM B. GOULD IV


WP Monday, July 26, 2004

Pressure of the American Dream

By Robert J. Samuelson


BG July 26, 2004

In the spirit of the first JFK

By Edward M. Kennedy

NYT July 27, 2004

Kerry at the Wheel

By DAVID BROOKS

WP Tuesday, July 27, 2004

Winning the Populism PR War

By Howell Raines

BG July 29, 2004

Kerry's missing compass

By Jeff Jacoby, Globe Columnist

(コメント) 30年に及ぶ政治活動,20年の上院議員生活,18ヶ月の民主党候補者指名争い,8000万ドルをかけた広告活動,これらを行った上でも,ケリーとは誰なのか,国民はまだ理解できない.最高の関心を集めた受諾演説でさえ,彼が誰であるのか,聴衆には分からなかった.いつも二股をかけて,ルビコン川を渡ることは無い男.そのレトリックは攻撃的でさえあるが.共和党は,ケリーがイラク戦争についての立場を如何に変え続けたかを紹介するビデオ広告を流す.老練の政治家である以上,それが当然かもしれない.何十年も前のヴェトナム戦争が彼の目立った記憶だ.老兵たちが招待される.30年前の経験で,21世紀の優れた大統領だと保証するのか? その後の曖昧な記録は,彼が優れた指揮官となる保証にならない.彼の受諾演説が,その疑問に答える見込みも無い.

LAT July 29, 2004

A New Grand Strategy

By Gary Hart

LAT July 29, 2004

Down Deep, They Love the Guy

Max Boot

NYT July 29, 2004

What I Found in Vietnam

By JEFF SHESOL

NYT July 29, 2004

Grace Under Pressure

By JAMES FALLOWS

NYT July 29, 2004

We Are the World

By HARRY McPHERSON

WP Thursday, July 29, 2004

Mr. Kerry's Task

WP Thursday, July 29, 2004

Democrats' Shaky Convergence

By David S. Broder

WP Thursday, July 29, 2004

The Wrong Way to Be Right

By Richard Cohen

LAT July 30, 2004

Kerry's Craft

NYT July 30, 2004

Triumph of the Trivial

By PAUL KRUGMAN

ST JULY 31, 2004 SAT

What Kerry has missed

WP Friday, July 30, 2004

Missed Opportunity

(コメント) 民主党大会におけるケリー指名のお祭り騒ぎとその考察です.

アメリカの大統領選挙は,その長い選挙運動において,アメリカ自身がこれまでの政策や方針を根本的に見直す特大ディベート会場を国民に,世界にも,提供する点で秀逸なシステムです.テロとの戦いは,冷戦後の国際秩序や新しい帝国の原理,封じ込めや民主主義の拡大,ヴェトナム戦争の敗北,新しい国際体制への指導力について,あらゆる想像を刺激します.

同時に,数億人の民主的選挙という現実が,どのような資金や組織,偏った情報,候補者たちの潰し合い,間違った論点,経済情勢の急変,海外で誘発された軍事紛争,などに支配されているかを教えます.


FT July 28 2004

More to oil spikes than Middle East

By Charles Clover and Anna Fifield


The Guardian, Wednesday July 28, 2004

The real reasons Bush went to war

John Chapman

The Guardian, Wednesday July 28, 2004

The 800lb gorilla in American foreign policy

Isabel Hilton


FT July 29 2004

The vow of silence

(コメント) 北朝鮮からの亡命が国際問題になりつつあります.FTは,その数を10万人から30万人,多くは中国に潜伏している,と推測します.もちろん,これはほんの一部でしかない,と.彼らは国際社会から無視され,支援を得られませんでしたが,事態は変化しつつあります.

北朝鮮は亡命を許さず,そもそも問題があることを認めません.韓国は表面的には歓迎しますが,実際は,膨大な数の亡命者を受け入れる負担に怯えています.中国は,北朝鮮の政治体制を支持し,また,韓国と同じ不安を抱いているために,亡命を認めません.発見すれば強制送還します.しかし,国境警備は25ドルで買収できる,と伝えています.その結果,亡命者たちは地下に潜伏して,東南アジアへ密かに移動しています.

亡命者の人権が東アジアの安全保障を安定化するために犠牲にされる現状を,FTは批判します.そして,これが東欧圏を崩壊させた亡命者の急増に至る可能性はほとんど無い,と考えます.人権と安全保障を両立させるために,北朝鮮の90年代に起きた食糧危機を改善し,中国政府は亡命者を認めて,第三国への出国を保証せよ,と.

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The Economist, June 12th 2004

Labour markets in Europe: Thirty-five hours of misery

French politics: Nicolas Sarkozy and the reform of France

The diamond cartel: The cartel isn’t for ever

Economics focus: Too many countries?

(コメント) ヨーロッパの労働時間短縮に前提されていた間違った論理.しかし,ヨーロッパの福祉型資本主義は滅ぶ必要など無い.問題は,労働組合や既得権との固定した約束に縛られた政府・政治家たち.

シラク大統領と新しい蔵相との対立.全く正反対の二人が,若くして抱いた共通の目標.モダニズムとフランスの政治経済改革.

デ・ビアス社が築いた世界のダイヤモンド・カルテル.永遠の高価格を保証するために.しかし,内戦地域からの「血まみれのダイヤモンド」は不買運動に直面する.産地を明示することはカルテルを破壊する.市場価格や産地における生産と雇用を現地政府に約束するカルテル破壊者の登場.その先にあるのは,石油市場? あるいは金市場? たとえ寡占体制によって安定しても,消費者の利益は守れない.

破綻国家の出現を防ぐためにも,グローバリゼーションを支持するWolfの新著は,世界が法的にも統合化することを望ましいと考えます.すなわち,世界には主権国家が多すぎるのです.最も貧しい国は,グローバリゼーションから最も隔離された国です.(今週号の表紙を飾った注目の写真は,その一つであるスーダンの光景です.)

それは,いわゆる帝国化ではないのか? ローマであれ,イギリスであれ,ナチス・ドイツや大日本帝国であれ,法的な統合化を実現した例です.他方,大西洋間やアジア諸国間の貿易や投資は経済的な統合化と繁栄をもたらしましたが,法的な統合化を条件とはしませんでした.

国家が減少するより,国家間の競争で良い統治が実現する方が重要です.しかし,本当に貧しく,内戦が続くような国には,どうすれば良いのか? 援助? 介入? ・・・?