IPEの果樹園2004

今週のReview

7/5-7/10

IPEのタネ

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世界の英字紙からコラムを紹介します.私が選んだ論説の内容を,かなり自由に要約し(全訳に近いものもあります),そこには自分の意見も含まれています.利用する場合は,それぞれの出典を自分で確認してください.なお著作権は,それぞれ,元の著作権に従うものと考えます.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   報復よりも金銭的補償を :世界貿易システムの強制力と補償メカニズム

2.   アメリカの金利引上げ :アメリカを動かすのは,マイケル・ムーアよりグリーンスパン?

3.   アジアはドル圏では無い! :金利上昇はアジアの通貨秩序をどう変えるか?

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


FT June 23 2004

An alternative to trade retaliation

By Marco Bronckers and Naboth Van Den Broek

大西洋間の貿易と経済関係を改善することが,ダブリンでのアメリカ=EU・サミットの主題であろう.中でも,特に生産的な方法は,両者が通商協定に違反した際の対応策について改善を図ることだ.現在のように,報復に訴えるのではなく,アメリカとEUが金銭的な補償で合意するべきだ.政府はそのような合意に消極的だが,これは米欧関係だけでなく,ドーハ・ラウンドの交渉にも希望を与える.

通商関係で報復を利用することはひどい結果をもたらしてきた.報復措置としては,普通,関税引き上げが用いられる.たとえば,ヨーロッパがホルモン投与の牛肉を禁止したことに対して,アメリカは,毎年,ヨーロッパからの数百億ドルに及ぶ輸入に100%の懲罰的関税を課している.ホルモン投与された牛肉の禁止はWTOのルールに違反している,と1998年に認められた.他方,この3月に,EUは40億ドルのアメリカからの輸入に報復関税を課した.それは2002年に違法性を認められたアメリカの海外売上に対する企業への免税措置を辞めさせるためのものだ.

こうした報復はルールの遵守を促すかもしれないし,促さないかもしれない.いずれにせよ,それは余りにも非生産的で,弊害が大きい.しかも,それが損害をもたらすのは正しい分野ではない.罪も無い企業が市場から完全に追い出される.関税率が上がっても,非合法な手段で被害を受けた輸出業者が補償されるわけでもない.

経済統合が進めば,通商紛争は増大する.より頻繁に報復が行われれば,米欧関係に限らず,深刻な障害となる.

発展途上諸国のほとんどが,実際には,自国の市場へのアクセスを拒むことでルールを守らせることなどできない.なぜなら彼らの経済はそれほど大きくないし,すでに余りに弱い自国経済を,報復によって傷つけ,「自分の足を撃つ」ような効果しかないと分かっているから.エクアドルが2000年に,ヨーロッパのバナナ管理体制の撤廃を求め,報復によって脅したが,EUは無視した.今度,アメリカが行っている綿花補助金をWTOがルール違反と認めたが,小さな生産諸国はこれに報復する権利を行使するだろうか? 一体,アメリカがガーナやベニンの報復を恐れることなどあるか? なぜこうした小国の輸出農家たちは,彼らに損害をもたらしたEUやアメリカから,金銭的な補償を受け取れないのか?

このように深刻な問題がありながら,発展途上諸国はWTOの同じルールに従うよう求められてきた.それは,要するに,アンフェアだ(公平じゃない).明らかにWTOの紛争処理システムは改善されるべきであり,このままでは2004年5月の期限を守れないだろう.

金銭的な補償の権利を認める利点は非常に大きい.補償は貿易額に限られないし,損害を受けた産業が補償される.それは特に,発展途上国の利益にかなう.金銭的補償は,また,報復が通常もたらす「無実の第三者」にかかる重荷を回避できる.最後に,違反を続けることで発生する補償の支払義務が,違反国の予算を制約し,国際的な市民としての責任ある行動を促す.

にもかかわらず,多くの国が,特に開発諸国が,既存の粗悪で非生産的な報復メカニズムに固執している.その多くの反対理由は技術的なものだ.しかし,本当の障害は政治的なものである.金銭的補償メカニズムは,政府にその決定のコストを支払うように強制し,国際的な約束を重視するようにさせる.・・・それが悪いことだろうか?

今や,国際通商紛争の解決に,ある種の常識をもたらし,最低限の公平さをもたらすときである.政府が国際条約に同意すれば,その約束には支払がともなう.金銭的補償の実現はWTOの貿易交渉で最優先されるべきだ.EUとアメリカは,ダブリン・サミットで指導力を示せ.


June 23 (Bloomberg)

The Fed and ECB -- Two Banks, One Oil Reality

Gene Sperling

(コメント) 石油価格が高騰すると,ハリー・トルーマンが非難したように,「片手だけの経済学者」を求めたくなります.経済学者は,いつでも,「他方では(On the other hand)」と言い訳しています.しかし,石油の価格が上昇することは,要するに,スタグフレーション的なのです.

インフレに関心の強いアメリカと,成長を強く求めるヨーロッパとでは,石油価格の上昇に対する中央銀行の正しい判断も異なるでしょう.


IHT Wednesday, June 23, 2004

A global order based on justice

Laila Freivalds and Jack Straw (スウェーデンとイギリスの外相)

(コメント) 日本の政治家は,こうした主張を,自国民や近隣諸国,国際社会に対して行えるでしょうか? 行えたとして,真剣に,聞いてもらえるでしょうか?

「正義の無い平和はありえない.人権の無い自由も,法の支配が無い持続的な発展もありえない.10年前にルワンダで起きた虐殺が,経済的,社会的な荒廃と対立を拡大し,われわれにも連鎖反応を及ぼした.2001年9月11日のテロは,タリバンが支配するアフガニスタンの暴力や抑圧から生じたものだった.今日の相互依存した世界で,こうした事件を防ぐために,国際法の強化,その効果的な実施が強く求められる.

国連のアナン事務総長は,昨年の秋,総会において,われわれが岐路にある,と呼びかけた.古い秩序を維持するのか? それとも,根本的な改革が必要なのか? どのようにより強固な国際秩序を築くのか?

国際法は国際政治の基礎である.戦後の多角的システムは,国連を中心に,60年間も主要な戦争を防いできた.このシステムの基礎は平和と安全の維持だった.しかし,国際法はまた,建設的な,集団的行動の基礎でもある.多くの場合,より強固な国際秩序を築くことは,既存の秩序を効果的に実施するより,新しいルールを決めることにより大きな問題を生じる.」

人道的な法律や人権は,国家と市民との関係の基本となりました.それは今日,主権がその国民に負う責任を意味し,また,相互に負う責任なのです.軍事的な介入さえ,最後の手段として,必要です.しかし,紛争の予防が優先されねばなりません.虐殺や人種浄化,内戦を防ぐ,とわれわれは約束しました.

EU加盟諸国は人権を何より重視します.それゆえ,ジンバブエには経済制裁を科しました.EUは国際社会や国際制度の強化を目指します.しかし,何が国際社会の脅威なのか,脅威の登場を阻止し,最後の手段として軍事力を行使しても,その濫用を防ぐために,われわれは共通の理解を必要としています.それこそが困難なのです.

テロは,新しい世界的脅威として重要です.テロを正当化する理由など無いけれど,世界中で多くの人々が貧困や独裁,人権を無視された状態で生きており,テロに惹かれることも事実です.スウェーデン,イギリスの両政府は,そのような事態を改善するために,債務を免除し,公正な貿易を促し,持続的な発展を支援し,環境の悪化を阻止し,良好な統治を奨励しています.

EUは,アメリカと違って,国際的な犯罪者の取締りを重視し,また拷問を禁止する国際協定も批准しています.人道的な法の遵守を実行させるために,われわれは不安定な諸国の軍を訓練し,彼らが自らルールを強制できるようにしなければなりません.また虐殺行為に関わった犯罪者たちを訴追しなければなりません.

「国際法こそが国際秩序の基礎であり,安全で繁栄する世界を築くものだ.われわれの外交政策の核心はここにある.」

FT June 24 2004

Building stronger bridges across the Atlantic

By Colin Powell and Javier Solana (アメリカ国務長官,EU外交・安全保障委員会高等代表)

WP Friday, June 25, 2004

Flouting the Rule of Law

By Zainab Bangura

(コメント) サダム・フセインのほかにも,世界の政治には著名な独裁者が争乱のタネを育てています.ジンバブエのムガベ,北朝鮮の金正日,などと並んで,リベリアのテイラーもその一人です.シエラ・レオネの政治改革を求める運動家は,隣国リベリアのテイラーが西アフリカに争乱を拡大してきたこと,それを国連もアメリカも十分に阻止できなかったことを嘆いています.

テイラーは,これまで,虐殺,集団的レイプ,手足の切断,少年兵士による蛮行,などを西アフリカに広め,反対派が武力で追い詰めると,和平交渉を主張して時間を稼ぎ,再び争乱を激化させました.国際法廷によって漸く国外追放となったものの,リベリアの隣国に依拠して政治的関与と帰国を画策しています.テイラーの目的は,リベリアを支配し,隣国シエラ・レオネのダイヤモンド鉱山を支配し,自分と自分の取り巻きの富を増やすことだけだ,と筆者は断罪します.国際法への期待は,その裏切りに対する絶望とともに,あまりにも大きいのです.

FT June 27 2004

How Nato is adapting to a changing world

By Tony Blair (イギリス首相)

FT June 28 2004

Give the transatlantic alliance a fresh start

By Charles Powell (イギリスの大西洋委員会議長)

(コメント) イギリスのブレア首相とパウエル卿は,ブッシュの選択がもたらした世界の分裂状態をもっとも深刻に受け止めていることでしょう.ブレアはアフガニスタンで,EUがアメリカとともに新しい平和と繁栄の基礎を担う責任を指摘します.

他方,サッチャー政権の外交・防衛顧問であったパウエル卿の主張は,対立する心を開くための呼びかけです.ヨーロッパとアメリカの政治家や民衆が抱くようになった相互不信,対立を認めたうえで,それでも世界情勢は常に変化し続けており,新しい協力関係を構築して対応することがもっとも好ましい結果をもたらす,と説得します.アメリカはイラクの占領体制を改め,国連の支持を得ました.ヨーロッパも治安維持や経済再建に協力姿勢を示し,実際に展開できる軍事力を整備して,秩序維持を分担する必要があります.

NYT June 28, 2004

The Hollow Alliance

By WILLIAM SAFIRE

(コメント) NATOのイスタンブール・サミットでは,シラクもシュレーダーもイラク再建に協力する姿勢を見せることに,またブッシュとブレアには,どのような協力でも歓迎することに,政治的な利益があった,とSAFIREは言います.しかし,そんな同盟関係には中身が無い,と.ソビエト帝国の拡大を阻止するという共通の目的を失い,国際テロリズムに対する共通の目標は確立されていません.ブッシュもブレアも政権を維持できるかどうか,不透明です.他方,フランスやドイツでも,失業が高水準であるのに金融緩和できないことは政府への支持を失わせます.

あえて考えられないことを考えてみれば,ブレアもブッシュも再選され,シラクとシュレーダーは交代するかもしれない.そしてNATOは国際テロリズムと闘う新しい組織に改変される.こうしてNATOUが誕生し,人道支援の国連と補完し合えばよい,と.


NYT June 24, 2004

Doing Our Homework

By THOMAS L. FRIEDMAN

私が子供の頃,両親は私に良くこう言ったものだ.「ご飯を残しちゃいけません.中国には飢えている人だっているのだから.」 それと対照的に,私は娘たちにこう言うようになるかも知れない.「宿題をサボっちゃいけない.中国やインドには,お前の仕事を渇望している人々がいるのだから.」

大連を訪れた際に,そう思った.大通り,美しい緑,大学,技術専門学校,膨大なハイテク・パーク,それらの結び付きにより,大連にはシリコン・ヴァレーが育っている.もちろん,無数に多くの貧しい,遅れた都市が中国にはまだあるが,大連は,中国が製造業だけでなく,知識集約型の生産基地としても急速に拡大していることを示している.

20世紀前半に日本の植民地支配下にあったため,大連には日本語を知っている人々がいる.日本との近さやインターネットの利用も,知識労働者を楽しませる公園やゴルフ・コースも,大連が中国のバンガロールになる条件を示している.中国の安価な頭脳労働者は日本の3分の1の賃金で雇えるために,日本企業はアウトソーシングを進めている.コール・センターのオペレーターは,初任給が月90ドルである.

日本が戦時中にやったことは今も人々に深く恨まれているが,若者は日本企業のデータ処理,プログラム作成,コール・センターへ就職している.日本企業は2800も大連に関連企業を設立し,ハイテク産業の最初の階段を登らせた.「大連には22の大学,単科大学に,20万人以上の学生がいる」と,市長は言った.また,「市場経済の法則は,どこであれ,もっとも高価な知的資源と,もっとも安価な労働力を提供できる土地に,当然,企業を向かわせるだろう」とも述べた.

製造業と同様に,「中国人は初め雇用され,巨大な外国の製造業のために働く.そして数年で,すべての段階と過程を学習し,われわれ自身の企業を始める.ソフトウェアでも同じことだ.」 もちろん,中国には知的所有権も確立されておらず,その革新的な能力にも限界がある.しかし,急激な変化が起きている.

あなたの子供は宿題をちゃんとしていますか?


June 25 (Bloomberg)

Current Account Deficit Poses Serious Risks

John M. Berry

(コメント) 今年の1−3月で,1449億ドルという記録的水準に達したアメリカの国際収支不均衡について,アメリカ自身が心配するケースは限られていました.他国の金融自由化と世界的に統合する金融市場の円滑な調整を維持し,不良な金融機関を監督しさえすれば,アメリカは自国の不均衡を無視できたからです.

しかし,財政赤字が再現し,国際石油市場や安全保障上の不和が目立つに連れて,国際投資の不安定化が懸念され,膨大な赤字を維持しなければならない国として,アメリカに注意が向けられるなら,彼らも心配するしかないわけです.先週,ボストン連銀のカンファレンスで,元ニュー・ヨーク連銀総裁のジェラルド・コリガンが警告し,ロバート・ルービン元財務長官も賛同しました.しかし,アラン・グリーンスパン議長は無視しています.

アメリカの赤字が拡大した理由は,幾つかあります.すなわち,最も基本的には,アメリカの消費と投資が生産を超えているのです.あるいは,民間と政府の貯蓄が投資に足りません.この状況は,アメリカが他の工業諸国よりも早く成長しており,アメリカがより高い輸入性向を示すことで,ますます悪化するわけです.巨額の財政赤字は,民間部門の貯蓄を吸い取ってしまい,貯蓄不足を増幅しています.

これらの要因を改善することは,経済的にも,政治的にも,非常に困難です.まず,アメリカの赤字の大部分は利子の付いた対外債務です.短期金利が3%増えるだけで,利払いは840億ドル,GDPの0.7%も増える,とIIEのEdwin Trumanは言います.そしてまさに,インフレを抑えるために,連銀は金利を引き上げようとしています.

また,アメリカの経常赤字が続くことは,アメリカの対外投資ポジションが急速に悪化することを意味しています.海外投資家の所得のより大きな割合が,ドル建の債券に依存するのです.2002年末に,アメリカの対外債務はGDPの25%でしたが,もしそれを35%に安定化するためには,経常赤字を半分にしなければならない,とTrumanは言います.

もし貿易収支や経常収支の赤字削減をドル安によって実現しなければならないとすると,それは30%もの減価を意味し,2002年前半にピークに達してからのドル安は,まだその3分の1しか進んでいない,と言います.しかもCatherine Mannは,外国の業者がドル安の影響を消費者に転嫁したがらないことにも注目します.

もう一つの調整法方は,アメリカの貯蓄を増やす(投資を減らす)ことです.しかし,カンファレンスの参加者は誰も主張しませんでした.財政赤字を減らすことは調整に役立つが,誰もすぐに実行できるとは考えないからです.しかし,たとえ困難でも,両党は経常赤字への影響を考慮して,財政赤字を削減するべきでしょう.さもなければ,海外からの資本流入が減った際に,痛ましい結果を迎えねばなりません.

Trumanは数値例を示します.1987年から1990年にかけて,アメリカが対外調整を進めた期間,一人当りGDPの成長率は1.5%しかなかった.それ以前の5年間は平均3%であった.特に消費は1.2%しか成長せず,それ以前の5年間の3分の1でしかなかった,と.


ST JUNE 26, 2004 SAT

Increasing openness in China's foreign policy

By Evan S. Medeiros

ST JUNE 29, 2004 TUE

China's peaceful rise - a PLA general's view

By Cai Bingkui

WP Monday, June 28, 2004

The Undeclared Oil War

By Paul Roberts

IHT Tuesday, June 29, 2004

The end of the free ride in East Asia

Robyn Lim

NYT June 30, 2004

Gas and Oil Bring Japanese Money to Russia's Far East

By JAMES BROOKE

(コメント) 中国が外交的な影響力を拡大し,その国際政治上の地位を,経済的な地位とともに高めることは,将来の国際秩序にとって必要な調整でしょう.しかし,それがどのように実現するかは安易に予想できません.

中国政府が,海南島で開かれたthe Boao Forum for Asia(アジア版の世界経済フォーラム)で,'peaceful rise' という概念を採用しました.軍事的な手段で覇権を目指すようなことはしない,というメッセージを送りたかったのです.しかし,アメリカや,日本などの近隣諸国は,その言葉を必ずしも信用していません.彼らから見れば,特に,中国が台湾との問題解決に軍事力の行使を公然と主張していることは,'peaceful rise'と矛盾します.

安全保障やエネルギーの確保について,中国の急速な拡大が,日本(やロシア)との対抗関係を過熱させます.


BG June 26, 2004

Moore and Clinton star in summer blockbusters

By Dan Payne

NYT June 26, 2004

All Hail Moore

By DAVID BROOKS

June 29 (Bloomberg)

Will `Fahrenheit 9/11' Burn the Democrats?

Andrew Ferguson

BG June 30, 2004

Flick flap

NYT June 30, 2004

Calling Bush a Liar

By NICHOLAS D. KRISTOF

FT June 30 2004

Campaign Theme: The Fahrenheit 9/11 factor

By Lionel Barber, US Managing Editor

WP Thursday, July 1, 2004

Baloney, Moore or Less

By Richard Cohen

(コメント) この映画を観るために多くの議員たちが遅刻し,委員会の開催時間を遅らせたと言います.アメリカからヨーロッパまで,政治の舞台では,ブッシュへの憎しみを煽るハワード・ディーン旋風に続いて,マイケル・ムーア狂が猛威をふるっています.

今の政治について,自分で考える人のために,とても良い刺激となるでしょう,そんな風に推薦する論説もあれば,このような個人攻撃は,共和党がクリントンに浴びせた罵声と同じ政治戦略であり,アメリカのリベラル派の質を自ら落とすものだ,と拒否する論説もあります.

あなたがブッシュを既に嫌いなら,この映画を楽しめることは間違いありません.共和党陣営も,この映画を無視する戦略を急いで転換するでしょう.これまで投票しなかった若者が,この映画を観て投票するかもしれないからです.

これは,所詮,極端な過激行為を好む少数派の暴言と,それによって金銭的な報酬が確実に得られると見込んだミニ放送局やミニ出版の打算的な便乗行為によって,本来の政治論争が汚染されたケースだ,と嘆く声があります.

ブッシュを嘘つきや殺人鬼と呼び,戦争を陰謀によるものと決め付けるのは,政治の質を著しく損なうでしょう.ブッシュ氏は嘘つきと言うより,自分と同じ思い込みに動かされた仲間の声だけを聞きたがる,拙劣な政治指導者であったと言うべきです.

そして,神や星条旗だけでなく,死亡した兵士の,遺族たちの悲しみまで,政治的に利用したブッシュ氏の愛国=憎悪戦略を,これで引き分けにしてはどうか?


NYT June 27, 2004

Up, Yes. But How Much, How Fast?

By EDMUND L. ANDREWS

(コメント) 40年ぶりの低金利政策を転換するグリーンスパンが直面する状況について,この記事は優れた整理を示しています.

まず,金利を上げることは誰もが必要と認めています.問題はその程度と,引き締めのスピードです.それを決めるのは,もちろん,グリーンスパンです.グリーンスパンは既に17年間もアメリカ連銀の理事会議長を務め,2006年6月末までの最後の任期が認められました.この間,二度の不況,三つの戦争,株価の暴落,バブルとその破綻,9・11のテロ攻撃,を経験しました.今や,大統領選挙が迫る中で,金融引締めを開始します.

グリーンスパンは,その行動の原則として,金融市場を驚かさない,ということを重視します.既にインフレは始まっており,それを抑えるのは時間がかかるから,インフレ高進を回避できないだろう,という非難を無視し,グリーンスパンは,アメリカ経済にまだ十分な弛緩が残されていると考えます.高金利による住宅価格や家計部門への影響も大きくない,と.そして,緩やかに引き締めても,企業や労働市場は不況に落ち込まない,と判断したわけです.もしそれが正しければ,ブッシュ氏の再選にも有利です.

また,グリーンスパンの連銀は,1994年のような,引き締めによる急激な不況を回避したい,と考えています.しかし,反対する経済理論家たちは,あの不況があったからインフレは根絶され,1990年代後半に長期の繁栄が実現できた,と主張します.「ソフト・ランディング」は不可能である,と.他方,グリーンスパンはこれまで金融市場をショックの緩和剤に利用する立場を取ってきました.低金利は,バブル破綻後のデフレを回避し,テロによる不安を抑えてきたのです.

今後,こうした緩和措置は徐々に解除される,と予告します.

FT June 28 2004

Has Greenspan underestimated the pace of inflation?

By Andrew Balls

ST JUNE 29, 2004 TUE

Rate hike may sour many a home dream

By Robert J. Shiller

(コメント) 金利が上がれば,株価や地価はどうなるか? 一般に,高金利は資産価格を下げるでしょう.しかし,予期された引き上げであれば,それが株式市場を崩壊させるようなことは無いはずです.他方,素人の買い手が支配的な住宅市場では,たとえ予期された金利上昇でも,暴落をもたらすかもしれません.なぜなら,住宅の購入を有利な投資と信じた人々が,過度に楽観的な予想を保持し,金利上昇で返済ができなくなってから,あわてて売却しようとするからです.とはいえ,住宅市場も,金融引き締めで必ず崩壊するわけではなく,価格上昇が続くと期待し続ける場合もあります.

BG June 29, 2004

Greenspan ends era of certainty

By Thomas Oliphant

FT July 1 2004

Tighter money is on the way

NYT July 1, 2004

A Move by the Fed

(コメント) Oliphantは,イラクの主権移譲も,連銀の金利引上げも,将来に対する不確実性を意味する点で共通する,と言います.連銀は,金利を上げる,と言いますが,それが経済にどのような効果を及ぼすのかは分かりません.ソフト・ランディングの指揮者として名声を得たいグリーンスパンが最後に残すのは,チープ・マネーを取り除いた後の,不確実な経済です.

景気回復過程で,賃金は最後に上がります.企業は,不況期の効率改善で,生産性を上昇させ,利潤を増やしています.消費者は少々の金利引上げにも弱気にならないでしょう.それが,グリーンスパンの観るアメリカです.しかし,日本は? 中国は? ヨーロッパは? それぞれがインフレや失業,景気回復の強さや生産性上昇に異なった性質を帯びています.世界が金利上昇の局面に転換するのは確実です.しかし,その過程は非常に複雑です.

NYT July 1, 2004

What a Rate Increase Can't Hide

By STEVEN RATTNER

NYT July 1, 2004

As Greenspan Chases Inflation, Critics Shout, 'Faster!'

By GRETCHEN MORGENSON


WP Sunday, June 27, 2004

A New Beginning

By Ayad Allawi

われわれの目的は,第一に,治安の回復,第二に,経済状況の改善,第三に,法の支配,所有権を確立,人権を尊重することである.特に,腐敗防止を重視したい.

「第四に,われわれの政府の政策は,この国の政治プロセスを維持し,民主主義に向けて加速するものだ.その目的は国民の統一であり,すべての声,すべてのグループから話を聞いて,和解の精神を促したい.そして合意された憲法が求める自由で公正な選挙を準備する.イラクの政治権力を決めるのは,銃弾ではなく,投票であるべきだ.国家の建設が鍵である.それから排除したり,報復したりする行為は,避けねばならない.」

LAT June 29, 2004

Born Under a Cloud of Irony

Robert Scheer

(コメント) イラク暫定政府への主権委譲は,イラクの石油よりもドス黒い,とScheerは酷評します.バース党からフセイン政権に歯向かって,CIAのエージェントとなった男が,かつて自分も,同じように,自動車に爆弾を積んでテロを繰り返した男が,また,その敵が,民主主義や選挙に何を期待していると思うのか?

NYT June 29, 2004

A Secretive Transfer in Iraq

NYT June 29, 2004

Who Lost Iraq?

By PAUL KRUGMAN

(コメント) なぜブッシュ政権はイラクの情勢をここまで悪化させたのか? それは国家を経営する失敗例として,将来,研究されるでしょう.

占領初期にはテロも抑えられていました.しかし,ブレマー行政官がもっとも熱心に進めたのは「政府系企業の民営化」でした.他にも,税率を引き下げ,関税を引き下げ,外国投資を自由化しました.暴徒がパイプラインを爆破し,警官を襲い,下水管は破裂し,電力供給もストップしているのに,彼らはイラクをサプライ・サイダーの楽園にしたのです.

また,臨時行政府の職員は,政府と個人的なコネ,特別なコネを持つ者に集中しています.ネオコン,共和党の政治資金に対する大口寄付企業,などに関わる者が高位の職を得ています.しかも,彼らが何に金を使ったのかは報告されていません.

KRUGMANは結論します.「イラクを,右翼の経済理論家に遊園地として与え,友人や家族の雇用斡旋所に変え,献金してくれる企業の利益たっぷりの契約先にしたことで,ブッシュ政権はここをテロリストの最適の補充地域に変えたのだ.」

WP Tuesday, June 29, 2004

Two Steps Forward


FT June 29 2004

Martin Wolf: Three reasons to be cheerful

By Martin Wolf

(コメント) 世界経済の長期予測は「非常に明るい」とWolfは考えます.その理由は,1.アメリカの生産性上昇は続く.2.アジアの新興市場によるキャッチ・アップは続く.3.貿易と直接投資による世界市場の統合化は続く.特に,中国の台頭はこの二つを表現しています.

それは,米中二極化の世界を意味するのかもしれません.そのことは,Wolfが経済面で指摘するほど,容易に楽観できる姿では無いです.


June 30 (Bloomberg)

Can Greenspan Mitigate China's Rate Headache?

Andy Mukherjee

(コメント) アメリカが金利を引き上げれば,ドル買い介入で貨幣を過剰供給してきた中国の,中央銀行総裁がホッとしているでしょう.グリーンスパンはアメリカ経済を救済するために世界中でバブルを促しました.では,中国のバブルを抑制するために,アメリカの金融市場を動かすでしょうか? もちろん,それはありえません.だから,中国が動くのです.


FT June 30 2004

Another false dawn for Japan?

By David Pilling

(コメント) アメリカが財政赤字と経常赤字,資本流入の減少に不安を感じ,中国はインフレと人民元,失業と社会不安,金融システムなどに問題を抱えているとしたら,日本はバブル破綻後のデフレ解消と景気回復を確信してよいかどうかに疑問を残しています.さまざまな対立する意見があります.日本が,誰も予想もしなかった,長引くデフレ過程を抜け出せないことに,明確な判断を日銀でさえ示せないとしても,仕方ないでしょう.

日銀は,なぜか今までに無く強気です.明確に,景気回復が加速すると予想しています.財務次官のAkira Ariyoshiも強気です.銀行融資の残高がGDPに対する比率も下げ止まりました.融資が回復しつつあるのです.1990年の金融市場崩壊の影響は終わった,と考えます.

モルガン・スタンレーのRobert Feldmanは,企業部門の回復を重視します.多くの論者は企業の再編が遅すぎると非難し続けましたが,業績は回復し始めています.中国からの需要もあって,鉄鉱や製紙,建設機械でも業績が回復しました.企業は気づかないような形で改革を進めてきたのだ,と指摘します.

Dresdner Kleinwort Wasserstein の投資戦略顧問Peter Tasker は,日本経済が良好な外部環境によって回復した,と考えます.アメリカの金融・財政政策による刺激策,中国の加熱とアジア経済の加速,など.また,日銀の福井新総裁は積極的なデフレ阻止を唱え,財務省は輸出主導の回復を目指して円安を促す介入を続けました.こうした外部要因からでも,回復の利益は波及します.特に,土地価格の下げ止まりは注目されます.地価の下落が日本の金融システムを機能停止させてきたからです.名目成長率がプラスに転じたことも,銀行の利益を増やします.インフレが定着し,消費や住宅建設などもブームに加わるでしょう.

他方,イギリスの投資銀行家Andrew Smithers は厳しい悲観論者です.日本の景気回復は自己満足に過ぎず,その根本問題は変わっていない,と.日本は貯蓄過剰であり,経済成長のために,アメリカより50%も多くの資本を投下している.企業が合理的に行動するなら,株式に対する収益率が正常なレベルに回復するまで,投資を減らさなければならない.それを始めたら,経済は再び急激に悪化するだろう,と.彼は,企業が債務比率を改善した,という評価も受け入れない.

S&PのTakahira Ogawaは,日本国債の格付けを3月に引き上げたが,移行期の難しさを指摘する.インフレは改善とリスクの両面をともなう,と.また,金利が上昇すれば企業倒産が増え,政府の財政にもより大きな穴が開く.そして,企業に対して融資し,株式を引き受ける方が,国債を購入するよりも魅力的になる.Takahira Ogawaは,政府が早急に財政赤字を埋めるため,増税し,支出を削減することを求める.たとえそれが景気回復を挫くとしても,早く行うべきだ,と.しかも,日本には労働力人口減少の長期的リスクがある.

竹中Heizo Takenaka経済金融担当大臣は,そのようなマイナスの兆候を悲観する議論など一蹴する.例えば,長期金利が上昇するのは日本経済の見通しが改善しているからだ,と.インフレがデフレよりも望ましく,成長が停滞よりも望ましい点で,経済学者は意見が一致しています.たとえ国債の利払いが増えても,同時に,企業業績が回復し,税収も増えるのです.銀行は保有する国債の価格が下落しても,他方で,保有株式の価格が上昇します.

インフレが日本の問題をすべて解消するわけではないけれど,バブルの時代が明確に終わったことを示すだろう,とPillingは結びます


WP Wednesday, June 30, 2004

Unhappy Anniversary

(コメント) 香港返還7周年.台湾がどうなるかより前に,すでに返還=併合された香港がどうなるか,私たちは注意しなければなりません.

北京政府は,選挙や情報の操作に繰り返し関与し,香港についての悲観論者の予想を実現しつつあります.「愛国的」であるかないか,を放送の基準として称揚する一方,民主化運動を支持した法律家の事務所は暴徒に襲われ,先週,放火されました.その壁には「すべての国賊は死なねばならない」と脅迫文が書かれていた,と言います.


July 1 (Bloomberg)

Fed's Rate Move May Not Kill Goldman's `A-B-C'

Andy Mukherjee

(コメント) ‘A-B-C’とは,“Asia Becomes Confident.” という意味です.昨年は,アジアの中央銀行が輸出を促すための為替市場介入で自国通貨を安くすることに注意が向けられていました.しかし,今や,アジア通貨はドルに対して最も大きく増価しつつあります.アジア諸国はインフレを抑えるために,自国通貨の増価を受け入れ始めたのです.

しかし,石油の価格が上昇し始め,アメリカは金利を引き上げる.さあ,今またアジアの新興市場から逃げ出して,金利の高くなるドル建資産に戻るときだ? “No.” とGoldmanのAdam Le Mesurierは考えます.アジアの基礎収支(経常収支と長期資本収支との合計)は良好で,投機的な資本がアジアを去っても,自分たちは残る,と.

中央銀行の為替介入は,アジアに金融緩和をもたらしまし,インフレを再現しました.今年の後半,政策担当者たちは,この問題に対処しなければなりません.すなわち,金利を上げるべきか,それとも不胎化介入を止めて増価を許すべきか? 後者の方がコストが小さい,とMukherjeeは考えます.不胎化を止めて,通貨当局が買い込んだ債券を売却すれば,過剰な貨幣が一掃されます.それは台湾の場合,GDPの0.4%程度です.

インフレ再燃こそ,アジアが変動レートへの恐怖心から解放されて,より弾力的な為替レート制度へと移行する画期となる,とLe Mesurierは考えます.日本,韓国,台湾がドル買い介入から手を引くでしょう.市場のトレンドは,こうして,貿易収支の不均衡調整を促す向きに従うのです.UC. BerkeleyのBarry Eichengreenも,今日の金融システムを,コア(中心)のアメリカと,ペリフェリ(周辺)のアジア,ラテン・アメリカからなる,という考え方を否定します.

もし周辺が自国通貨を人為的に安く維持することで輸出向けの成長を加速し,中心にキャッチ・アップすることが必要なら,中国のように2億人の低雇用労働者がいる国は,まだ何十年も,通貨を安くしなければならない.しかし,「不胎化」には費用がともなう.ユーロがドルに代わって準備に利用できるのは,まだ先だ.周辺諸国の多様な経済実態を考えれば,協力してドル買いを続けることは難しい.などを理由に,その体制を維持できないだろうと彼は考えます.

ではなぜ,アジアは今も,まるで「ドル圏」のように並んで行動するのか? それは,中国が人民元をドルに固定し,アジア諸国は中国との競争に特別な配慮が必要だからです.もし人民元が変動するようになれば,アジア諸国の中央銀行は通貨を異なった形で見るようになるでしょう.

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The Economist, June 12th 2004

Back to the 1970s?

Global inflation: A ghost from the past

(コメント) 1960年代のインフレ率は,開発諸国の平均で2〜3%でした.それが1974年に13%に達し,その後8年間は7〜12%でした.1979年10月にポール・ヴォルカーが連銀議長になって,金融政策をインフレ抑制に方向転換します.その後,インフレ率は世界中で低下しました.今,この成果をグリーンスパンは失いつつあるのではないか? という不安が生じています.

長期的にはインフレも上下に変動してきたが,インフレ率の上昇はいつも金融的な過度の緩和と,戦争などの政府の財政的負担が結び付いて起きました.今も,G7の財政赤字は過去50年来のピークに達し,世界の通貨政策は1970年代以来の大幅な緩和を示しています.それでもインフレを無視する多数派は,中央銀行の姿勢や能力を過信しているし,債券市場の機能や判断を重視し過ぎているかもしれません.

「もし火星人が,先の訪問から25年ぶりに,地球を訪れたとしよう.彼は,この20年間で中央銀行がインフレを制圧したことを知らない.もちろん,昨年のデフレ騒ぎも知らない.また金融市場が恐れるほど,グリーンスパンを恐れもしない.彼は,アメリカ経済で急激に弛緩が解消されていると指摘するだろう.この1年間の名目成長率は7%,インフレ率も3%で,なお上昇している.これから考えて,彼は短期金利が4%程度ではないか,と思うはずだ.すなわち,実質でプラスの水準を維持する程度.そこで,もし彼にアメリカの今の金利が1%である,と教えてやれば,彼は跳び上がって(彼の投資と一緒に)火星へ逃げ帰るだろう.」

連銀が金利をどの程度上げるか,ではなく,なぜもっと早く引き締めなかったのか? どこまで引き上げるべきか? と問うべきだ,というのがThe Economistの意見です.ポール・ヴォルカーが言いました.「中央銀行のもたらす権力は,貨幣を創り出す権力であり,究極において,それを破壊する権力である.」

アメリカの金融緩和は,今回,アジアの(特に,人民元をドルに固定した中国の)景気過熱をともなって,インフレを拡大してきました.また,もし今,金利を引き上げても,その効果によってインフレが低下するには2年を要する,と言われています.


Europe v. America: Mirror, mirror on the wall

(コメント) ドルとユーロとが比較され,アメリカ経済とヨーロッパ経済とが,しばしば,比較されます.通説が言うほど,ヨーロッパは老人と失業者ばかりの,革新も成長もしない経済なのでしょうか? 幾つかの研究が,こうした通説を批判しました.

その要点は,基礎となる統計が異なっている,ということと,ヨーロッパ人はアメリカ人ほど金銭的な満足だけに向かわない,ということです.アメリカの労働生産性の伸びが抜きん出ているというのは間違いであり,資本の収益がアメリカで高いから経常赤字が大きくても資本流入で賄える,というのも間違いでした.ヨーロッパの方が優れている,とは言えませんが,アングロ・サクソン型資本主義を圧倒的な優秀さで世界化する,という主張は誇張であり,そのような言辞を弄した理論家たちは間違っていたのです.

もちろん,ヨーロッパは構造改革を進めるべきですし,労働人口の減少にも対処しなければなりません.少なくとも,今の社会保障を維持したいなら,もっと長時間働くことだ,とThe Economistは釘をさします.


Japanese bonds: Higher rates, and a good thing too

(コメント) 国債価格が暴落するぞ,と,狼の来たことを何度も告げて回った少年のように,走り回ることは無い,とThe Economistは考えます.国債の利回りが回復したのは,全体として,良い兆候なのですから.投資家たちは,いよいよ,インフレが再来することを予想し始めたわけです.それこそ,日銀が年来の悲願を成就しつつある徴です.日銀がしなければならないことは,この過程を円滑に,徐々に,進めることです.そうすれば,国債市場でパニックは起きません.

デフレが解消されて,需給のギャップが縮小しつつあることは歓迎されるべきです.国債価格の下落を,金融機関でさえ悲観するわけでは無いでしょう.なぜなら,利回りが改善しており,それは融資の伸びと収益が改善していることを意味するからです.銀行は国債の購入を減らすでしょう.その理由は,今後,彼らがより多くの融資をするからです.他方,資産の傷みが激しい保険業界は,この問題を深刻に受け止めるでしょう.