IPEの果樹園2004

今週のReview

6/14-6/19

IPEのタネ

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世界の英字紙からコラムを紹介します.私が選んだ論説の内容を,かなり自由に要約し(全訳に近いものもあります),そこには自分の意見も含まれています.利用する場合は,それぞれの出典を自分で確認してください.なお著作権は,それぞれ,元の著作権に従うものと考えます.

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三つだけ推奨するとしたら? 三つの記念日.

1.   死者には長すぎた弔辞 :国民に愛されたレーガン,というのは本当でしょうか? 笑顔が素敵な政治家? 偉大なる対話者? 結局,彼が冷戦の勝者なの?

2.   ノルマンディー上陸作戦 :武力による平和は,勝者も,敗者も,理想とは違う生活に慣れることから始まる?

3.   共産党独裁・破滅のダイナミクス :権力者も官僚も必ず腐敗する.腐敗するよりも急速に富が増えるという幸せな時代は,いつまでも続かない.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune


NYT June 2, 2004

Commentary: China should delay its bank privatisation

By Daniel Bogler

(コメント) 「中国経済の将来は金融部門の改革に依存している.」と,よく言われます.それは,Boglerも言うように,中国の主要銀行(の一部)を外資が買い取って,不良債権を処理し,近代的な銀行業の組織や技術を習得することを意味するでしょう.WTO加盟の際に合意した金融サービスの自由化が,それを急がせています.

しかし,誰が中国の銀行を買収するのでしょうか? 問題は,不良債権の全体や個々の中身が分からず,無際限に広がる銀行の組織が把握できない現状で,外資がその株式を評価できない,投資のリスクを負えない,ということです.おまけに中国の株式市場は,経済の過熱を懸念した政府の引き締め策や,さまざまな不安心理によって,すでに動揺し始めています.

もちろん,こうした問題は韓国や日本でも繰り返し議論されました.中国の銀行が株式公開し,外資に資本参加させることを,完全に排除する理由にはなりません.しかし,Boglerは,新たな投機的なヘッジ・ファンドの動きにも注目して,慎重な対応を求めます.いわゆる旧来のキャリー・トレードでも,ドルや円などを低利で借りて,それを固定レートで人民元に交換し,中国の資産を購入して高い利益を上げてきました.もし小さな株価の調整からでも通貨不安や金融不安が起きると,こうした資金が逆転して本格的な危機を発生させます.

それは,投資家の見方を反映したものです.すなわち,中国はアメリカからの資本を受け入れて,アメリカ市場に物を安く売るだけの,工場に過ぎない,と.逆に,アジアは自分たちの市場を拡大し,アメリカと分離して成長し続ける,という見方が破棄されたわけです.

NYT June 2, 2004

Chinese Provinces Form Regional Economic Bloc

By KEITH BRADSHER

(コメント) 揚子江デルタの地域が集まって,EUに匹敵する人口を持つ,地域経済協力を進めよう,という話に興味を持ちました.なるほど,中国の地域経済は戦後のヨーロッパのように地域ごとにバラバラであり,しかし他面では,現在のEUのように統一通貨を持っています.隣接する地域が取引に対する差別化や障害を取り除き,市場を統合すること,また税制の調和や政策協調を進めることは,域内市場を統合し活性化する点で非常に説得的です.

この政策が注目されるのは,伝統的に南部の経済的繁栄と政治的な独立に強い警戒感を持つはずの北京政府が,この計画を正式に支持したことだ,と言われます.江沢民時代には,北京政府がさまざまな方法で彼の人脈が広がる上海に投資を集め,超高層の都市を建設しました.これに対して,揚子江デルタの地方政府は危機感を強めていました.そして,新世代の北京政府は,むしろ地域格差や内陸部の開発に資本を必要としており,すでに税制を改革して南部の発展からも北京政府の財源を得ました.こうして,揚子江デルタの地域協力と経済発展を北京政府も支持する条件が整ったのです.

さまざまな空港建設や港湾整備による無駄,重複した工場の建設,地域間では部品調達もできない現在の中国が,また一歩,近代的な市場に近付くわけです.

FT June 4 2004

New rules put brakes on China car sales

By Richard McGregor in Shanghai

June 6 (Bloomberg)

A China Trade Deal for the Yuan to Float?

David DeRosa

(コメント) 中国政府は自動車ローンへの規制を強化して,自動車販売や自動車工場の建設,直接投資による景気の過熱を緩和しようとしています.そのことは,中国自動車市場の拡大予想や,多国籍企業の販売戦略,価格競争に影響します.また消費者は一層の値引きを期待し始めている,と指摘されています.中国に進出した日本メーカーは,本当に,利益を維持できるのでしょうか?

アメリカが中国経済に対して抱く関心は,選挙の年でもあり,もっぱら雇用問題です.中国政府は人民元を操作しているわけではなく,アジア通貨・金融危機に対して人民元の対ドル固定レートを維持した際には賞賛された同じ制度を,今や,失業の原因として非難されています.市場経済を自慢するのであれば,貨幣も完全に交換可能にして,市場で為替レートも決定しなければならない,というわけです.


FT June 3 2004

Beijing's social contract is starting to fray

By Minxin Pei

中国共産党の最も楽観的な支持者も,天安門事件を15年前に粉砕したとき,これほどの例外的な幸運が続くとは予想しなかっただろう.西側から孤立し,全国各地で民主化運動が起きて,共産党は1989年に崩壊する,と思った人も多い.ソビエト圏が崩壊したことで,誰も中国共産党がさらに15年も生き延びるとは思えなかった.

しかし今日,この15年間が共産党の最良のときであったことを疑う者は居ない.共産党は天安門とソビエト共産主義の崩壊を生き延びたばかりか,それ以後のほとんどすべての面で繁栄した.経済的には,急速な成長をもたらし,中国のGDPを3倍にした.国際的には,中国が尊敬され,影響力を増した.また国内では,その体制が権力を確立し,いかなる組織化された反対派も阻止した.

その成功は,ある意味で幸運であったし,また天安門事件後に採用を迫られた政策のおかげであった.1990年代に加速したグローバリゼーションは,北京政府にとって,中国を直接投資FDIの魅力的な目的地とし,低コストの製造業に競争上の優位をもたらす途方も無い推進力となった.1990年から2003年までに,4800億ドル以上のFDIが流入した.

国内では,北京の支配者たちがいわゆる「新権威主義的な」開発戦略を追求した.その戦略ではグローバリゼーションと経済改革を支持して高成長を維持することが中心であった.社会的には,共産党は個人お自由を拡大した(たとえば庶民が海外旅行のパスポートを10日で取れる).政治的には飴とムチを使って,党の権威に挑戦する反対派を弾圧し,他方で,民間企業化や教授たちのような,新しい社会的エリートと協調した.共産党は情報革命の衝撃にも耐えた.予想とは逆に,今や,政府が国境内のインターネットを通じた情報の流れを厳しくコントロールしている.

しかし,北京政府の新権威主義戦略は持続可能ではない.その余りにも高度成長だけを求める姿勢は,金融や社会領域で深刻な問題をもたらす(公債の累積.不良債権.所得の不平等.環境破壊,教育や公衆衛生への投資不足).その結果,党の支配を受け入れる代わりに,個人的自由と繁栄をもたらすという,共産党と国民との間の社会契約は破綻の危機に瀕する.

最も重要なことは,社会契約が脆弱な政治的基礎に立っていることだ.新権威主義は官僚制の本質を誤解している.共産党員の多くが,官僚支配は資源を動員し,急速な成長を実現する上で,民主主義よりも有能だ,と信じている.だから天安門の平和的な学生たちの要求でさえ,弾圧しなければならない,と.

しかし,それは制約の無い権力が自壊する論理を秘めていることを無視した議論だ.莫大な経済資源を支配する者が,その権力を個人的な利益のために濫用することはしばしば起きる.汚職が蔓延し,結局,国家は開発を促すより,略奪する体制へと堕落するのだ.スハルトのインドネシアは,新権威主義体制が腐敗したクローニー資本主義へ退化した見本である.

天安門事件後の経済的成果にもかかわらず,中国の開放政策や民主化は行き詰まっている.その約束に反して,共産党は法の支配や民主主義の拡大を実行しなかった.予想されたように,制約されない権力は中国史上もっとも貪欲な汚職官吏たちを量産し,共産党のメンバーたちは,現状維持が不可能なことを意識して,体制に依拠した利益を実現するために奔走している.

この破滅の動学が,中国の将来と共産党の生存を脅かす.中国共産党は,中国人民との社会契約を書き直さなければならず,その幸運が尽きる前に,政治改革を始めるべきである.


June 3 (Bloomberg)

Argentina's Offer Insults Its Bondholders

David DeRosa

NYT June 9, 2004

Holders' Group Shuns Argentine Debt Plan

By TODD BENSON

(コメント) なぜアルゼンチンの債務不履行は解決できないのでしょうか? 政府と債権者との合意が成立しません.債務者の支払う意志が無いときでも,また,裁判所が強制できないときでも,債権者に勝つ見込みはあるのでしょうか?

債務国が成長しても,債権者への支払は少ししか増やさない,という新しい条件に,債権者は不満です.しかし,アルゼンチン政府は,これが政治的に受入れ可能なぎりぎりの条件だ,と交渉を拒否します.

二つの強制力があります.一つは,外国に資産を持つ場合.もう一つは,外国との金融取引が必要な場合,です.アルゼンチンの海外資産を差し押さえても,債務の返済にはまるで足りません.しかし,アルゼンチンが外国からの投資や融資を望むなら,国際金融市場でも破産者の資格を返上したいはずです.今は,輸出が好調で,海外からの投資を必要としない,極端な不況からの脱出過程だから,政治家たちは手柄を自慢できた,というわけです.しかし,これからは?


NYT June 3, 2004

Exchange Rates and the Economy

By HAL R. VARIAN

(コメント) 為替レートが無ければ,私たちは世界中の商品を自由に購入し,消費できません.しかし,同じ為替レートが,世界中の資産を売買し,投資するときの基準にもなっています.ここが難しいのだ,とVARIANは指摘します.消費するために比較するのと違って,投資家は将来の為替レートを予想しなければ投資できません.だから先物レートがあるわけですが,実際には必ずヘッジして投資するわけでもありません.確かに金利平価は重要ですが,先物レートが金利の動向だけで決まるわけでもなく,たとえそうでも,金融政策の変化やインフレ率を予想しなければなりません.

さらに,VARIANは,為替レートが貿易の競争力を左右することも指摘します.すなわち,日本や多くのアジア諸国などは,輸出の拡大で景気を良くしたい(不況を回避したい)のです.政府は,雇用確保などを理由に,途方も無い額の為替市場介入を行います.ところが,日本のように景気が回復し始めて円高になり,また,中国のように景気が過熱して外貨準備を増やし続けられなくなると,介入を控えるわけです.こうした判断は,為替市場が決める各国通貨の交換レートの性格を「政治的」なものにします.

その結果,どうなるのでしょうか? たとえば,円や人民元は過度に安く維持されてきたから,介入が控えられる時期には,その反動で大きく増加し始める.他方,過度に高く維持されたドルは暴落する? それが金融市場で吸収できる場合もあれば,累積し,波及する混乱やパニックとなる場合もあるわけです.ただしVARIANは,アジア通貨のジェット・コースターについて,何も提案していません.


FT June 4 2004

Christopher Caldwell: A war is won through fear

By Christopher Caldwell

Dデイの記念式典は,いつも同じ記憶を呼び起こそうとする.ここで西ヨーロッパのナチズムからの解放が始まった,と.今回,ドイツが初めて式典に参加した.そして舞台は,アメリカが指導したイラク戦争をめぐる論争の場に変わった.反戦活動家たちは,1944年のアメリカ軍(子供たちにHersheyのチョコレート・バーを配った)を,2004年のアメリカ軍(アブ・グレイブの囚人たちに性的な拷問を行った)への非難に利用した.

ヨーロッパの指導者たちは,ホワイト・ハウスに第二次世界大戦をイラク戦の正当化に利用するな,と警告した.「もし1945年に,同じような拷問の衝撃的写真がドイツで公表されていたら,われわれは今でも,1945年5月8日(ドイツの降伏)が解放の日であるかどうか,論争しているだろう」と,Stuttgarter Zeitung 紙は書いた.

ヨーロッパ人はフランクリン・ルーズベルトのアメリカとジョージ・W・ブッシュのアメリカを比較して,反アメリカ主義に見えないように,道徳的に,アメリカの権力を拒もうとする.しかし,それは馬鹿げたことだ.アメリカとソビエト連邦とイギリスは,ナチス・ドイツを敗退させ,民主主義を押し付けた.それは道徳的に模範を示して行ったのではなく,ドイツ軍を撃破し,ドイツ人を恐怖させることで屈服させたのである.アメリカは,独裁者に権利を奪われたドイツ人のことを嘆くだけでなく,ドイツ人そのものを敵だと宣言した.

1944年の秋には,ヨーロッパに無数の連合軍兵士たちが上陸し,ヒトラーの敗北は避けられないものとなった.このときルーズベルトは,ドイツ問題の解決として,ドイツ人そのものを終わらせることまで考えていた.モーゲンソーの日記には,そのようなルーズベルトの言葉が記されている.

いくつかの推計によれば,イギリス空軍はドイツの諸都市で8万人の子供を殺した.この爆撃は,繰り返すが,戦争の終わりが分かってからも続けられた.アメリカの歴史家Gerald Lindermanは,アメリカの郵便物検閲制度が,前線から記念品として送られてきた,切り落とされた指の郵送を頻繁に止めた,と言う.また1944年の雑誌Lifeは,太平洋の戦場の記念品としてボーイフレンドが送ってくれた,日本人の頭の骨について,お礼の手紙を書く女性の写真を載せている.

戦後の平和的な秩序が確立されたことで,彼らを解放したアメリカ軍が軍事的な英雄であったが,道徳的な模範ではなかったことを,多くのヨーロッパ人は忘れてしまった.ドイツが変わったのは,自由な選択ではなく,連合軍が長年にわたってドイツ人の自由を否定したからであった.

大統領たちは,ブッシュ氏と同じように,記憶を利用してきた.しかし,彼はレトリックの罠にはまった.21世紀の人権に関して,彼は20世紀のイデオロギー戦争を戦っている.これは多分できないだろう.ブッシュ氏はラマダンの期間に,攻撃を避けようとした.イスラム教の寺院を破壊することを恐れて,ナジャフが暴力的な聖職者によって支配されるのを許した.「衝撃と恐怖」の爆撃作戦は,イラクの防衛軍に絶大な破壊的効果をもたらしたが,イラク人をより受容的にはしなかった.アメリカは一つの国を解放しようとしたが,そのもっとも効果的な戦争手段である「恐怖」を否定した.

アメリカはテロの意義を信じない.テロリズムは,市民を攻撃することで政府を攻撃することを正当と認める.それは西側では衰退した確信だ.ここに矛盾がある.独裁者やテロリストの組織は民主的なレトリックから力を得ている.サダム・フセインが略奪したから,イラク人を無差別に殺すべきだ,と主張するのは愚かであろう.しかし,ヨーロッパのインテリたちは,アメリカ人やイスラエル人,スペイン人の無差別な殺害を,そのように「理解」する傾向がある.

アメリカはイラク戦争で第二次世界大戦の勝利をもたらした政治的概念を放棄した.しかし,それはヨーロッパ人が思っているのと違う.ヨーロッパ人のように,アメリカ人も人権や個人の権利に成熟した絶対的価値をおくようになり,国民国家の考えを嫌うようになったのだ.個人の関心と国家の関心はしばしば対立し,ホワイト・ハウスでも前者より後者を追及するのを喜ぶわけではない.アメリカの有権者たちは今,ヨーロッパの有権者たちと同じように,第二次世界大戦の勝利がノルマンディーの海岸ではなく,ドレスデンの猛火から生まれた可能性を黙想している.


WP Friday, June 4, 2004

Iraq History Lesson

By Charles Krauthammer

(コメント) 「銃声は止み,・・・世界全体が平和になった.」と,マッカーサーが宣言してからも,廃墟となり,死者の沈黙が支配したドイツや日本を除けば,世界中で戦闘が続いていた,とKrauthammerは言います.ギリシャと中国ではゲリラが内戦を続け,共産党が権力を握る寸前までフランスの社会不安は高まっていました.インド,パレスチナ,インドシナ,ビルマなど,世界中で植民地支配が終わった後の政治的混乱が続いていました.

Krauthammerは,平和が武力によってもたらされたこと,平和を維持する方法に理想的な答は無いことを指摘し,それゆえ,イラクの新しい暫定政府を,単純に,CIAに協力した亡命者たちによる傀儡でしかなく,「正当性が無い」,と非難するのは間違っている,と主張します.CIAやアメリカ軍に支援されず,どうやってシーア派の指導者がフセインを打倒できたでしょうか? フランスやジョージ・ソロスが助けてくれたか? と.


NYT June 5, 2004

Don't Know, Should Care

By JEFFREY D. SACHS

FT June 6 2004

G8 must fund war against poverty

By Jeffrey Sachs

BG June 6, 2004

Both parties ignore needs of black poor

By Kevin C. Peterson

(コメント) 貧困問題は,Sachsが言うように,アメリカ政府においても,国際会議や国際機関においても,重要な課題でありながら十分な関心を払われていません.しかし,Sachsの説得に耳を貸す政府がどれほどあるか,は疑問です.彼の提案とは,@貧しい国は「ミレニアム開発目標」に向けてアセスメントに参加せよ.A2005年から2015年までに,ODAを少なくとも倍増せよ(600億ドルから1200億ドルへ).BG8は,債務危機を招かないように,融資ではなく譲与を増やせ.C持続可能な債務水準を見直し,たとえばアフリカ諸国には債務免除せよ.DG8は,世銀やIDAなど,国際機関を通じて,融資ではなく主に譲与を3倍増にせよ.

アメリカの黒人は,アメリカ国内でも苦しんでいる,とPetersonは訴えます.黒人にとって,あからさまな敵意を示す共和党の主張も,拒否と否認を続ける民主党の主張も,自分たちに冷たいものです.多くの黒人(アフリカ系アメリカ人)の生活は,トマス・ホッブスが描いたように,「孤独で,貧しく,険悪で,残忍であり,しかも短い」のです.Petersonは,いずれの政党も,次の条件を満たさなければ黒人に支持されない,と訴えます.@すべての子供たちに良質の公教育を保証し,十分な予算を組むこと.Aエイズの流行と戦い,孤児たちのために,基金を設けること.B50週のすべてで選挙登録を確実にする法案を支持すること.

財源と発言をめぐる対立は,世界の貧困を放置させてきた政治制度の変更を求めています.


NYT June 5, 2004

Remaking Iraq Without Guns

By IRSHAD MANJI

(コメント) 拡大中東圏を民主化=安定化する構想は,アメリカの民主主義やアメリカの利権を反映した介入政策の弁解でしかない,としばしば非難されます.確かに,そうでしょう.しかし,その構想の持つ真実は,地域住民にも支持されるはずです.人々の交流を促し,教育を重視し,経済の自由化や政治の民主化に向けた若者の参加と活動を国際社会が支援することは,何にもまして重要です.

MANJIが強調するのは,銃ではなく,マイクロ・ファイナンスを拡大することです.特に,女性への教育と零細企業への融資を主張します.それらはイスラム教の教えに背くでしょうか? MANJIは,その社会を民主化するとは,民主的な憲法を制定するだけでは実現しない,と考えます.ヒトラーは,公平で,民主的な選挙により権力を握ったのです.そのために彼は,偏狭な民族主義を煽り,経済危機を深め,第一次世界大戦での軍事的敗北による怨嗟に火をつけました.バース党とは,ヒトラーを真似て作られた政党であったことを指摘します.既存の秩序を超えて民主主義を確立する最も良い方法は,庶民が経済活動に参加し,彼らへの課税と発言権とを自覚するように,支援することだ,と.


FT June 6 2004

Amity Shlaes: Reaganomics lives on

By Amity Shlaes

(コメント) レーガノミクスは死なない,とShlaesは主張します.もしその教義を正しく理解すれば.すなわち,教義1:経済成長を目指せ! そのためには,どのような反対にも屈するな.レーガンはそれを示した.たとえ航空管制官の組合Patcoが法的に許されていないストライキを行っても,彼らを解雇することなどできないと皆が思っていたとき,レーガンは1万1000人以上を解雇した.

教義2:マクロ経済学を捨て,財政赤字を気にするな! レーガンはJ.B.セーの考えに戻り,個人や企業を重視した.サッチャーは「サプライ・サイド」を嫌ったが,レーガンは企業支援や介入も辞さなかった.反映する民間経済が,常に,政府より急速に拡大すると信じていたから.

教義3:再分配的な税制を止めよ! むしろ低率の,均一税制を目指した.また,政府が税制を頻繁に変更することを止めた.

教義4:外交政策において,軍事的に征服できるとは考えなかったが,臆病に閉じこもるより,強い姿勢でソ連と交渉した.誰もソ連が存続することを疑わなかった時代に,レーガンは強い姿勢で組み合えば,ソ連を超越できる,と信じた.

こうした教義を,その後の共和党は見失った,とShlaesは言います.レーガンびいきを自称するブッシュ大統領はどうか? Shlaesは,こうした教義への復帰を認めます.

ST JUNE 7, 2004 MON

Reagan, father of modern globalisation

By Pranay Gupte

(コメント) レーガンは「グローバリゼーションの父」である,とGupteが賞賛します.レーガンは,自由市場を信じ,国家間の障壁や無能な政府介入を嫌いました.当時,第三世界にはIMFなどによる自由化と監視を求めて,嫌われました.しかし,今,成功している国の多くは,レーガンのグローバリゼーションを習得した国です.そして,より安定した民主主義の価値も広まるはずだ,と考えます.

WP Sunday, June 6, 2004

An Optimist's Legacy

By George F. Will

(コメント) Willは,レーガンの資質と演技を賞賛します.アメリカ大統領が,俳優以外の者で勤まるとは思えない,とレーガンは明言しました.レーガンの優れた資質とは,その笑顔です.彼は楽天主義を広めました.そして本当に,「鉄のカーテン」や「悪の帝国」は世界から抹消されたのです.アメリカ人は新しいフロンティアが広がった,と感じました.

レーガンは中西部の広大な平原で育ち,長い旅をしました(トップに登りつめた).彼の陽気さは感染し,アイゼンハワーと同じように,その笑顔が彼の哲学でした.すなわち,アメリカ人は人生を肯定しているとき,自信が溢れ,良いことが起きる,と.彼らは入植し,砂漠を耕地に変え,独裁と戦いました.レーガンは大恐慌を経験した最後の大統領でした.1980年代に,アメリカが進歩から取り残され,統治不能になった,というインテリたちの悲観論が人々に広まったとき,レーガンの楽天さが必要とされたのです.

良い俳優は,政治家も含めて,非現実的に振舞いません.むしろ彼らは現実を作り出します.レーガンが大統領を演じたことで,希望や親しみやすさは活き活きと感じられました.デマゴーグとは違う意味で,レーガンはレトリックが民主主義に重要であることを理解しました.それは情熱や説得を消して,市民たちの自由な選択を促します.レーガンはまた,経済分野での指導力の重要性も理解していました.こうした彼の資質は,その笑顔に隠されて,大きく過小評価されています.

今日,アメリカ人は,その重大な転換期に際して,安心感を与える偉大な人物,快速帆船の満足なキャプテンであったことを感謝をこめて思い出します.彼は乗船者たちを落ち着かせ,そして海をも鎮めたのです.

BG June 7, 2004

Ronald Wilson Reagan

BG June 7, 2004

Reagan's gifts to Americans

NYT June 6, 2004

Ronald Reagan

(コメント) レーガンの遺産は複雑だ,とBGは書きます.内外における偉大な成果と,アメリカ政治の後退が同居している,と.

レーガンの時代,ソビエト連邦は崩壊し,さまざまな軍縮条約が締結された.経済は再生し,インフレも鎮圧された.しかし,「スター・ウォーズ」ミサイル防衛網は失敗し,イラン・コントラ・スキャンダルにより名を汚した.経済の好調さも大幅な減税と軍事費の増大によってもたらしたものであり,巨額の財政赤字を生んだ.彼は教育や人権のような目標には成果を挙げなかった.

未来の歴史家が見れば,レーガンの評価は三つの重大な問題に帰着する,とBGの論説は考えます.第一に,アメリカの大統領という政治体制,第二に,レーガノミクスによる経済再生とインフレ沈静化,そして,第三に,冷戦の終結です.

ケネディー暗殺後,ジョンソン,ニクソン,フォード,カーターと,アメリカ大統領の道徳的な指導力は損なわれてきました.しかしレーガンの人気は,イラン・コントラ事件後も,高かったのです.また,レーガノミクスの主役は,むしろインフレ高進を維持不可能と見たカーターやヴォルカーであったかもしれません.しかし,レーガンはその政策が効果を発揮するまで,多大の政治的,個人的なコストに耐えて,維持しました.また,大幅な減税を行っても,財政赤字をインフレによって帳消しにするようなことは拒否しました.カーターの時代に始まったソ連のアフガニスタン侵攻こそ,その崩壊をもたらした失策でした.しかしここでも,反対意見を抑えてソ連と対抗し,ゴルバチョフを説得したのはレーガンでした.

NYTは,レーガンを,冷戦の勝利した大統領として記憶されているけれど,レバノンに送った海兵隊は破局に終わったし,グレナダ侵攻はメロドラマだった,と批判します.特に,レバノンで人質となっていたアメリカ人の釈放の代価として,イランに武器を供給し,その資金でニカラグアの叛乱兵たちを非合法に養った事件はスキャンダルとなりました.

おもしろい指摘は,レーガンが権力に執着せず,複雑な政治の細部に関わらなかった,という点です.彼はいつも自分の職務について冗談を飛ばし,カーターのこまごました管理体制に飽きていた国民を喜ばせました.他方,レーガンは共和党の伝統を破壊し,財政赤字を許容する基礎を作りました.それは,減税で税金が溢れ出すという間違った論理でしたし,その後,幹部が暴露したように,財政赤字で連邦政府を縛って,民主党にも小さな政府を受け入れさせるという口実でした.

ブッシュが演出した白黒のアメリカにすむ私たちには,レーガンの灰色の世界がなかなか魅力的だ,と書いています.

June 8 (Bloomberg)

Reagan Years Sparked Investing Boom

By Chet Currier

BG June 8, 2004

Reagan's uncomplicated world

By Scot Lehigh, Globe Columnist

(コメント) レーガンの時代は,近年のバブルの前にあった,規制緩和と株式投資全盛の時代でした.あるいは,それは「自分本位」の時代であり,オリヴァー・ストーン監督の映画『ウォール・ストリート』が作られたのも1987年でした.1982年半ばまで,インフレ抑制のための不況を経て,株価は上昇し始めます.まだ,レーガンの時代は,投資家たちに長期の観点を教えた,と言われます.

他方,レーガンは単純なアイデアを広めました.正しいものも,間違ったものも.その予算案は,「ブードゥー・エコノミクス」と呼ばれました.政治や論戦がショーとして面白ければ良い,という感覚に変わったのかもしれません.

「自由は繁栄をもたらす.」「自由は勝利した.」とレーガンは説きました.「ゴルバチョフ書記長.もしあなたが平和を望むなら,ソビエト連邦と東欧に繁栄を望み,解放を求めるなら,ここへ来なさい.このベルリンの壁へ.」そして続けました.「ゴルバチョフさん,この壁を倒しなさい!」

BG June 8, 2004

Celebrating Reagan the man, not the myth

By Joan Vennochi

(コメント) 砂糖をまぶしたような思い出話は止めろ! 死んだときには,死者の家族や従順なメディアが,レーガンの様な人物を英雄にしたがるものだ.しかし,家族とメディアは別問題だ.政治家の現実を無視して,その神話を普及させるのは間違いだ.それは虚偽の聖人を創りだす.しかし,保守派のラジオ放送は,早速,ルーズベルト以来の重要な大統領というレーガンの評価に疑問を呈した者を,だれ彼となく非難し始めている.それは民主党の陰謀だ,といった具合に.

エリートたちはレーガンに夢中で,矛盾した賛美の声に飽くことも無い.小さな政府を称えるレトリックを振り回して政府を肥大化させ,赤字も増やしました.それはクリントンに託され,ブッシュによって再現されています.二期目に挑戦するにも,レーガンの赤字がブッシュを励まします.減税しても支出削減はしない.増税なんか必要ない! もう一度,バブルを? レーガンがアメリカ人に残したのは,その仕事ではなく,写真の見映えが良い大統領,という伝統だ.

バターよりも大砲にばかり支出し,その生まれは貧しかったが,政治家として持たざる者への同情には欠けていた.彼の発言や立場は,出世とともに変わったのだ.一言で言えば,イデオロギーによって異なった評価を受ける人物だろう.

BG June 8, 2004

The Gorbachev factor

By Marshall I. Goldman

(コメント) 冷戦を終わらせたのは,ブッシュではなく,ゴルバチョフでした.レーガンの「スター・ウォーズ計画」を,ゴルバチョフやソ連首脳は恐れました.相互確証破壊を否定することになるからです.ゴルバチョフはアメリカとの本格的な軍拡競争に勝てない,と考えました.レーガンが本気で,クレムリンを爆撃してやる,と叫んでいることを,彼らは知っていました.

そこで,レーガンが筋金入りの反共思想と,ソ連のすべてを軽蔑するという姿勢を持っていたにもかかわらず,ゴルバチョフは新しい建設的な反応を示して,アメリカ人とレーガンの評価を変えさせたのです.彼の前任者たちが東欧に送り込んだ軍隊を帰還させ,東欧の共産党政府を民衆が倒すのを容認し,ベルリンの壁やソビエト連邦の崩壊を平和的に行えたのは,ゴルバチョフの新思考があったからでしょう.

The Guardian, Tuesday June 8, 2004

The terrible legacy of the Reagan years

David Aaronovitch

(コメント) レーガンが第三世界に残した遺産は,グローバリゼーションではなく,無数の地雷です.レーガンは第三世界の代理戦争で,ソ連の敵を支援し,全面的な「巻き返し」戦略を唱えました.原理は単純です.「敵の敵は,味方である.」 そしてカンボジアの虐殺を加勢するような選択を行い,ニカラグアで反乱軍を支援し,グァテマラで10万人も虐殺することに手を貸した,と言われます.さらに,アンゴラ,アフガニスタン,イラク,・・・

NYT June 8, 2004

The Great Taxer

By PAUL KRUGMAN

(コメント) レーガンについて,私たちは多くの嘘を信じています.たとえば,レーガンの人気は高かったけれど,平均でクリントンが少し上です.また,その並ぶものの無い好景気を賞賛されますが,クリントンの時代より少し良い程度です.税引き後の所得では変わりません.彼の税制は,巨額の減税と,二度の大幅な増税をともないました.平時において,これほどの増税をした大統領は居ません.つまり,ブッシュと違って,レーガンは責任ある指導力を発揮したのです.彼の経済政策や外交政策は愚かでしたが,その後は,プラグマティックに考え,責任ある行動を取りました.

NYT June 8, 2004

A Fitting Tribute to Mr. Reagan

NYT June 8, 2004

Reagan's Promised Land

By DAVID BROOKS

(コメント) レーガンを称える「楽天家」の評価は間違っている,とBROOKSは考えます.レーガンを動かしたのは,未来に向けた保守主義の理想でした.彼は,アメリカの理想が世界を変えることを,決して疑いませんでした.それは危険な思想だ,と当時から反対派は批判しました.しかし,彼の「楽観」は変わりませんでした.アメリカには歴史的な使命があり,アメリカの中産階級の暮らしを疑うことは無く,その精神的な退廃にも冒されることはなかったのです.

ST JUNE 9, 2004 WED

The Reagan bequest

ST JUNE 9, 2004 WED

Politics, Reagan-style (or how to be TV savvy)

By Tom Plate

WP Tuesday, June 8, 2004

The New Dealer

By E. J. Dionne Jr.

WP Tuesday, June 8, 2004

A Paradox

By Richard Cohen

レーガンは,近代的なアメリカ大統領のイメージを変えた.レーガン以後,大統領はレーガンとして振舞うようになった.確かに,ソ連は悪の帝国であったし,福祉の悪用や大きな政府は非難された.彼はハリウッドの労働運動で果たした過去を捨てた.

レーガンは矛盾に飛んだ人物だ.政府や政策について無知で,現実と幻想とを区別しなかった.彼は人生より芝居を愛したのではないか.三幕の終わりには,夕日の大円団が待っている.単なる役者ではなく,寓話者(うそつき)だった.彼は,映画俳優として,TVを通じて信用される性格を演じることの重要性を知っていた.

テレビは指導力の中身を変えた.小集団に向けられた指導力が,今や,無限に拡大する.FDRはラジオの威力を利用し,レーガンはそれ以上にテレビを上手く利用した.彼が何であるのか,私もあなたも良く知っているが,結局,何も分かっていない.

FT June 9 2004

Reagan's biggest failure holds a lesson for Bush

By Ivo Daalder and Mac Destler

BG June 9, 2004

Reagan's heart of darkness

By Derrick Z. Jackson

WP Wednesday, June 9, 2004

Unsung Triumph

By Robert J. Samuelson

(コメント) 高インフレがレーガンを大統領にし,低インフレがレーガンの経済的再生と再選を可能にしました.高インフレへの関心は,当時,ヴェトナム戦争よりも高く,大恐慌に近いものでした.しかもインフレ率はさらに上昇し,加速しており,カーター政権は賃金・物価の統制を含む,混乱した政策で無能さを印象付けました.「あなたの生活は4年前よりも良くなっていますか?」と,レーガンは有権者に問いました.その意味は,このインフレーションのことでした.

二桁インフレが収まって,経済はストップ・ゴー政策から解放され,秩序と予測可能性が回復しました.矛盾したことに,財政を悪化させたレーガンの政府が政策能力を回復したのです.このことは,1万字以上の死亡記事の中で,ほとんど触れられていません.もちろん,インフレを沈静化したのはヴォルカーでした.しかし,ヴォルカーの政策が多くの批判を受ける中で,レーガンだけは批判しませんでした.レーガンは彼を政治的に守ったのです.Samuelsonは,このことをもっとも高く評価します.

WP Thursday, June 10, 2004

Keep Reagan's Record in Balance

By Jim Hoagland


FT June 7 2004

China is just catching up

By Yasheng Huang

IHT Wednesday, June 9, 2004

Philip Bowring: Revaluation would protect Asia against oil shocks

Philip Bowring

(コメント) 何でも問題があれば中国のせいにするのが流行っています.しかし,「中国の台頭」について正しい見方をするべきだ,とHuangは言います.それは,1.中国経済は潜在的な能力を回復しつつあるだけに過ぎない.2.「中国の台頭」は,世界にコストだけでなく多くの利益をもたらす.3.「中国の台頭」は,他国と競い合うよりも,基本的に補完的である.たとえば,他のアジア諸国と違って,中国は成長過程に積極的に直接投資を呼び込んでいる.

「中国の台頭」を恐れたり,誇張するのではなく,正常な「キャッチ・アップ過程」として歓迎するべきだ,と.またBowringは,人民元を切り上げることで,中国経済は石油価格の高騰から生じるショックを吸収し,しかも過熱を緩和できるだろう,そして,アジア諸国もこれに追随できる,と考えます.


WP Tuesday, June 8, 2004

A Test of Leadership On Sea Island

By Sam Nunn and Michele Flournoy

IHT Wednesday, June 9, 2004

How the G-8 can make a real difference

Abdoulay Wade

FT June 10 2004

Philip Stephens: The transatlantic gulf is too wide

By Philip Stephens

(コメント) サミットを何か特別な政治的仕掛けにするつもりなら,政治家たちはもっと中身のある意見交換を行うだろうと思います.ニュースのための撮影や,細かい会談日程などは公表せず,成果の報告も必要ありません.政治家たちが内政と外交とを組み合わせて,国際政治の積年の課題を相互に評価し,協力できる分野を探す機会にすれば十分です.

ブッシュ氏はイラクの収拾に必死でしょう.他方,小泉氏は,何を根拠に,北朝鮮の核廃棄を他国の政治家に請け負うのでしょうか? 政治家たちは取引します.その意味では,サミットほど「ニュース」にふさわしくない性質の会談も少ないでしょう.・・・今回も写真撮影? 裏話だけ?


FT June 9 2004

EU could use some economic optimism

By Paul de Grauwe

(コメント) ヨーロッパの景気が回復しないのは,消費者心理が改善しないからです.雇用不安や賃金低下,年金破綻,・・・日本とそっくりです.これを「ヨーロッパ硬化症」と呼んで,労働市場の改革を強化することが正しい対策でしょうか?

しかし,指摘されているような構造的問題は今に始まったわけではない,とde Grauweは批判します.それを景気循環の説明に使うのは間違いなのです.しかも,問題となっている「認識」や「心理」は,1990年代初めまで,まったく逆でした.アメリカは衰退し,日本やドイツこそ健全な工業国家を発展させるモデルでした.

なぜ悲観論が支配するようになったのか? その答をde Grauweは,Frankfurt,Brussells,そして安定協定である,と考えます.ECBやEU官僚たちが政治家を促すために悲観的メッセージを送り続ければ,市民たちは将来の不安をますます強め,消費が落ち込みます.そして,不況と財政悪化とが悪循環を成したのです.


BG June 9, 2004

The torturers among us

By Robert Kuttner

NYT June 9, 2004

The Roots of Abu Ghraib

WP Wednesday, June 9, 2004

Legalizing Torture

(コメント) 拷問は,一部の逸脱行為であったのではなく,アメリカ軍が採用した公式の政策であった.アブ・グレイブによって,たとえアメリカでも,国際法を無視できる存在ではなくなる.ラムズフェルドは辞任するだけでは終われない.彼は戦争犯罪人として裁かれるべきだ.そしてブッシュは,もしこの国がまだ民主主義だと言うなら,選挙によって葬るべきである,とKuttnerは主張します


NYT June 9, 2004

Poems of Blood and Anger

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) G8サミットの主題がイラク戦争を理解することであるなら,戦争を理解する古来の正しい方法として,兵士たちの詩を読むことだ,とKRISTOFは言います.


FT June 10 2004

Europe needs to improve its fiscal discipline

By Pedro Solbes & Bosse Ringholm

(コメント) スペインとスウェーデンの財務大臣が,共同で,安定協定の改正を求めています.ヨーロッパが成長の条件を回復するためには,一方で健全な財政を維持し,他方で福祉国家の改革を急ぐことが必要です.彼らは福祉国家を放棄したいとは思いません.労働市場を弾力化し,より多くの雇用をもたらすことと,労働者の不安を取り除くことを,両立させたいと考えます.教育と福祉,R&Dや革新の奨励,ヨーロッパ市場のための社会インフラ整備,そして年金制度の改革が,社会的な結束を重視したヨーロッパ・モデルの再生を準備する,と主張します.そして,こうしたことを実現できる財政安定協定の改訂を目指すのです.

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The Economist, May 29th 2004

Remind me how I got here

America and the Middle East: Fumbling the moment

(コメント) さまざまな戦争の理由が疑わしくなった末に,独裁者を追放した後で,アメリカ軍は主権をイラク国民に移譲する,という日程が重要になっています.ブレア首相は,イラクにおける軍事行動に国民が拒否権を持つことだ,と主張しました.しかし,アメリカ政府はそのような軍への制限を容認できません.

The Economistは,「主権」が何であるかなど重要ではない,と考えます.法律的には,主権が奪われたわけでもなく,アメリカ人や安保理からイラク国民に返還される筋合いも無い.重要なのは,政府の「正当性Legitimacy」と「有効性Effectiveness」である,と.選挙までに,イラク国民はより多くの分野で権限を任されるかもしれないが,経済と軍事では,アメリカが最強の存在であることに変わりない.暫定政府や組織の名前が変わっても,アメリカが関与し続けることは必要だ,と主張します.

「アメリカと中東」という特集記事は,かつてイギリス軍が中東から撤退する転換点となった1956年のスエズ動乱を,アメリカのイラク占領と比較します.今や,イラク戦争は「間違い wrong war」だったのでしょうか? 世界は,再び,長期に及ぶ覇権の衰退を経験しているように見えます.これからも,アメリカは中東情勢を変えるでしょう.しかし,それはアメリカが中東を意のままに支配することではないし,中東にとってアメリカが必要なくなるわけでもないでしょう.


South-East Asia’s economies: No China syndrome

Central American trade: Five get anxious

(コメント) 中国経済が減速しても,東南アジアが墜落することはない,とThe Economistは指摘します.その理由は,@石油に限らず,国際商品市況は活況です.A石油価格は,近年,むしろアジアの成長と連動しています.B東南アジアの輸出先は,中国よりアメリカだ.Cアメリカ,日本,ヨーロッパの景気が回復するなら,需要を補える.D中国も,アメリカ向けの輸出に必要な東南アジアからの輸入は続ける.E中国の減速は石油価格上昇を抑制する.Fむしろ,景気を悪化させる理由はそれぞれの国内にある.

他方,多角繊維協定の廃止を前に,中央アメリカ諸国は中国からの競争に怯えています.中央アジア諸国の政府は,繊維産業の雇用を維持するために,自由貿易協定をアメリカと結び,優位を維持します.それと同時に,生産性を上げるためアメリカ企業の誘致します.市場の隙間で生き残るために特別な優遇措置や投資促進を組み合わせる様子は,戦時のブロック経済を連想させます.


The Big Mac Index: Food for thought

(コメント) 購買力平価説を前提した「ビッグ・マック指数」について,いろいろな利用法が紹介されています.@どの通貨が過大(過小)評価されているか? 為替レートの動く長期的な方向.A生活費による正しい物価や各国の経済規模.B世界の景気予測.