IPEの果樹園2004

今週のReview

6/7-6/12

IPEのタネ

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世界の英字紙からコラムを紹介します.私が選んだ論説の内容を,かなり自由に要約し(全訳に近いものもあります),そこには自分の意見も含まれています.利用する場合は,それぞれの出典を自分で確認してください.なお著作権は,それぞれ,元の著作権に従うものと考えます.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   仕事!: いつか,デジタル時代の仕事を考え直して,どれほど下層の労働者でも自分の仕事の意味や誇りを回復できる社会ができるか?

2.   天安門事件15周年: 誰が勝者か? 民主化運動弾圧の教訓.

3.   権力の真空: イラクから世界へ,権力の真空が拡大しています.ネオ・コンが自滅しても,彼らはネオ・リベラリズムの基礎をも深く損ないました.

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times


NYT May 27, 2004

The Impact of Higher Oil Prices

By ALAN B. KRUEGER

WP Tuesday, June 1, 2004

Why Gas Prices Are Too Low

By David Ignatius

The Guardian, Thursday June 3, 2004

In 1973, rising oil prices meant recession. Not now

Larry Elliott

(コメント) クリントン大統領のスピーチ・ライターだったJAMES CARVILLEが言った名文句について,少し違う形でここに利用されています.CARVILLEは,「もし生まれ変わるとしたら,大統領でも,ローマ法王でも,4割打者でもなく,債券市場になりたい」と言ったようです.「なぜなら,そうなれば誰をも畏怖させることができるから」と.

KRUEGERは考えます.今なら,「石油市場になりたい」と思うだろう,と.2002年の初めに1ガロン1.20ドルだったガソリンが,今は2ドルもするからです.石油価格がこのように上昇すれば,それは大統領選挙の焦点となります.石油価格が大きく上がれば,その3四半期後に景気が悪化した,とUCサン・ディエゴ校のHamilton教授は主張します.石油価格は,その他のマクロ変数を動かす,典型的な実験室を提供しているわけです.

しかし,ガソリンの価格と不況とを結びつける関係について,経済学者が合意に達することは難しいようです.石油の生産物はGDPの2%に過ぎませんが,他方,さまざまな価格にコストとして入り込みます.また,石油価格の上昇がもたらす成長減速懸念は,金利によって完全に調整できる,と言われますが,反対意見もあります.どちらの効果が強いのか? 言い換えれば,生まれ変わるとしたら,債券市場の方が良いか,それとも石油市場か?

そもそも,アメリカ人が休日になればSUVを駆って高速道路を飛ぶように走ってガソリンを消耗することは,ますます混迷を深める中東地域への依存を強めるという点で,不合理な選択です.政治家が彼らの真実を告げるべきでしょう.しかし,そんなことを言えば,アメリカで政治家はやって行けません.この消耗ぶりは,インドと中国以外に,世界で並べる者など居ないでしょう.まさに,彼らが豊かになればなるほど,世界の世界需要は増大し,市場は逼迫します.

天然ガスが供給されるから大丈夫だ,という楽観論も,そのために必要な追加投資を無視しているようです.ガソリンの消耗を止めさせるには,税金を課すことです.ガソリンを高くすれば,人々はもっと燃費の良い小型車に乗り換えるでしょう.最も素晴らしい,政治的に実現不可能な提案はエネルギー経済学者のPhilip Verlegerが1973年に行ったものだ,とIgnatiusは言います.それはガロン当り50セントの課税を主張し,下院で35票しか支持されませんでした.クリントン政権で漸く可決された税はガロン当り,わずか,4.3セントです.

Verlegerは,それを累積的に増税するよう求めています.その資金で,人々の保有する燃費の悪い自動車を買い取ります.それは,アメリカの石油消費を減らし,中東地域への依存を減らし,温暖化ガスの排出規制にも大きく貢献します.しかし,その提案はあまりにも正論で,高速道路に飛び出し,オイル・カルテルとのチキン・レースを楽しむアメリカ国民の関心に,まるで合わないのです.

サウジ・アラビアのパイプラインや政治体制が破壊されるようなことが無い限り,今回の石油価格上昇は,1973年の頃の記憶を蘇らせるような事態にならないようだ,とElliottも書きます.価格は上昇しても,世界不況までは起こらない.なぜなら,@インフレを考慮すれば,石油価格はまだ安い.1970年代後半の水準の半分でしかない.A世界経済は1970年代初めのような加熱状態に無い.当時は,インフレが既に何年も加速し,ブレトン・ウッズ体制が崩壊し,国際商品価格も上昇していた.今は,不況を漸く回避したに過ぎない.B石油危機に対する政策の対応が異なる.購買力が石油の消費者から生産者に移転されるが,かつてのように,消費水準を保障するような賃金契約は無く,独立を保証された保証された中央銀行がインフレ抑制を重視した政策を決定する.COPECは,もはや世界経済の不況を喜ばないでしょう.

ブッシュ氏が中東の政治混乱を増幅しさえしなければ.


ST MAY 28, 2004 FRI

To be democratic and rich - or just rich first

By Janadas Devan

(コメント) よく聞く議論ですが,自由主義の経済学と自由主義の政治学とは,本当に,一致するのでしょうか? アメリカ人の多くは,資本主義と民主主義とをしばしば等しく重視し,互いを前提と考えます.しかし,アジアやロシア,ラテン・アメリカでは,必ずしも支持されないでしょう.現実はもっと複雑だ,と.

たとえば,ロシアで民主主義的な資本主義を目指す動きは,1991年にソ連が崩壊した後,自由でも民主的でもない,寡頭制と激しい経済格差をもたらしました.国民の資産を奪って成り上がった富豪たちを除けば,「自由主義」や「民主主義」はロシア人の多くに嫌われている,と言います.プーチンに言わせれば,強い国家(権威主義)はロシア人の遺伝子に組み込まれている,というわけです.

他方,民主主義を経験したことの無い中国が,毛沢東主義に戻るより,民主主義を拡大したいと願っているのは確かなようです.最近のForeign AffairsでElizabeth Economyは,中国の政治改革が進展している,と伝えています.国家資産よりも民間の資産の方が大きくなってくれば,政府も民間の利益に従う方を好むのだろう,というわけです.共産党が候補者のほとんどを占めているとしても,地方では民主的な選挙が行われ,多くの新聞と多くの弁護士が誕生し,TVやインターネットは政府の腐敗や不当な判決を厳しく糾弾しさえするのです.富が増えることで,人々はそれを守る「法の支配」を重視し,安定した代表からなる政府を求めます.

ロシアから中国への変化を期待する者には,インドが大きな例外です.疑いなく,6億7000万人の有権者による世界最大の民主主義を運営するインドは,今も膨大な貧困を抱えています.政府は,選挙結果を受け入れて,政権を譲りました.少数派のシーク教徒であるシン首相が,イタリア生まれのソニア・ガンジー党首に指名される,というのも異例です.権力は投票箱により移行し,少数派も含めた民主的統合が機能しているのです.しかし,これまで,十分な経済成長は実現できませんでした.

Devanは,それが民主主義の本質に関係する,と言います.第三世界の民主主義は,貧しい社会の限られた富を,有権者への支持を得るために消耗してしまいます.そして,たとえば,農民には無料の電力を,労働組合には強い交渉力を,公共部門の雇用には手厚い保護を与えます.こうして富を増やすことより,富を使い果たすことで,権力が確保されるのです.


WP Thursday, May 27, 2004

Trade and Mr. Kerry

あす,ブッシュ大統領のロバート・ゼーリック通商代表が中央アメリカ自由貿易協定(CAFTA)に調印する.南北アメリカ自由貿易圏や世界の貿易自由化,といったブッシュ政権の通商政策構想において,CAFTAが大きな前進とは言えない.しかし,この5カ国を合計すれば,昨年のロシア,インド,インドネシアを加えた以上のアメリカ製品を輸入している.しかも,この通商条約はアメリカの隣接し,移民を送り込んでくる地域にとって,重要な意味を持っている.ドミニカ共和国が参加すれば,この6カ国の通商圏はラテン・アメリカにおける第二の輸出先となり,メキシコに次ぐ地位を得る.

しかし,この条約には多くの批判がある.それは特に,雇用をもたらす経済ブームを導くと言われるが,アメリカの貿易相手国が変わるだけである.この場合,アジアの輸出業者を犠牲にして,中央アメリカの服飾産業が利益を得る.偽善的に,自由貿易協定と言いながら,アメリカへの砂糖輸出には制限がある.なぜならブッシュ政権は国内の砂糖業者を保護しているから.しかし,民主党のケリー上院議員を含む反対派は,別の側面を問題にする.すなわち,この条約が中央アメリカの労働者を十分に保護していない,ということだ.

地域に雇用を維持するどのような取引も,そこで働く人々のためにならないだろうということを,理解するのは困難だ.今年の末で,アジアからの輸出を抑制してきた国際繊維協定が無効になる.もしラテン・アメリカがアメリカ市場に有利な参入を保証されなければ,この地域から雇用が失われるだろう.そこで,そのような保証を与えるとともに,労働法の不十分な遵守について苦情を聞く調査委員会を設けよう,というわけである.この委員会は罰金を科すこともできる.

ケリー氏や他の反対派の人々は,アメリカが労働者の保護についてもっと交渉すべきであった,と考える.これはグローバリゼーションをめぐる論争の一つである.貧しい国がグローバルな経済に参加する際,底辺への競争を防止するような規制を受け入れるべきか? 原則として,これはもっともな問題であり,特に,たとえば中国のように,労働者の権利が著しく損なわれている国に対しては,アメリカはそれを改善するように要求するべきだ.しかし,労働者の保護をもっと早く拡大するために通商条約に反対するのは間違いだ.こうした主張は,その国の労働者が交渉力を高める最善の方法は雇用を増やすことだ,というのを忘れている.通商条約は雇用を増やし,それゆえ労働者の権利にも,その所得にも,良いことなのだ.

議会が強く反対するので,特に民主党の反対で,この条約は選挙まで承認されないだろう.議会は,アメリカ国境のそばで民主主義を懸命に支える貧しい諸国にも,貿易を拒むようだ.ケリー氏は,自由貿易を支持してきた,という経歴に傷をつけるのか?


The Guardian, Friday May 28, 2004

An idea whose time has come

Larry Elliott

(コメント) 人類が正気であったかどうか,という点では,将来の世代にとって,地球温暖化を防止するためにできた京都議定書がなかなか批准されなかったことも話題になるでしょう.

イギリス政府の中でも,ブレア首相は政府顧問の科学者Sir David Kingが訴えるように,温暖化対策を急務と主張しますが,他方で,交通省は国家統計局が不利なデータを公表するのを激しく妨害しました.近代の工業資本主義が健全な地球と共存することはできないのでしょうか? G8はOPECに増産を促し,石油消費を抑制するために航空業界に課税する気も無いようです.

確かに保険業界は,温暖化のリスクを意識しています.しかし,彼らも京都議定書では温暖化を防げない,と考えます.なぜなら,それは大胆さを欠き,疑わしい科学的根拠しかなく,地球規模の問題にすべての国を関与させることにも失敗したからです.そこでブレア政府は,三段階の対応を明示する,より優れた提案を準備しています.すなわち,@CO2レベルの観測と上限の合意,A削減策と目標値の決定,B人類に付与された平等な排出権の分配と売買,です.

この計画により,温暖化の防止とその技術開発に投資し,しかも貧しい国には開発と対策のための資金が得られる,というわけです.しかも,Elliottは書きます.「アメリカもこの考え方を支持している.もしブレアがイラク戦争に参加することで,ワシントンとの関係において政治的資本を得たのであれば,来年のG8でイギリスが議長を務める際に,それを利用するべきだ」と.


NYT May 28, 2004

One State or Two, Israelis and Palestinians Share the Same Economy

By ANDRES MARTINEZ

(コメント) ガザ市の中央市場で肉屋をするAlshwaは,インテリファーダが2000年の秋に始まってから,売上が9割も減ったことを知ります.イスラエルが労働者の移動を禁止して,パレスチナ人に代えて,タイやフィリピンからの労働者を雇用したからです.漸く事態が落ち着いて,労働者の移動が再開されつつあり,商人たちは安堵しています.

しかし,パレスチナ自治政府で働く一人は,なぜイスラエルに働きに出なければならないのか,と問います.われわれが政府を持ち,ここに工場を建てれば,個々で働くこともできるだろう,と.しかし,パレスチナ国家だけで,彼らの商売が上手くいくとは限りません.

二つの国家に分離することは,もっと残酷な殺し合いを唱えるリアリストの統合案に比べて,平和主義的な理想を吸収しています.領土を決めて,壁を築く.そして,二度と交流はしない,というわけです.しかし,現実を忘れていないか? とMARTINEZは問います.二つの国は,一つの同じ経済を,将来も,動かすだろう.西岸とガザ地区を担当する世銀のNigel Roberts局長は,「近代の経済で,(インテリファーダと壁の建設によって)ここほど破滅的な不況を経験した経済は他に無い」と言います.

パレスチナ人は安価な労働力をイスラエルに輸出することで経済を築いてきました.自爆テロが境界を越える労働移動を妨げた結果,移民労働者は15万人から5万人に激減したのです.長期的に観れば,イスラエルとパレスチナは,秩序ある交流を回復するしかないでしょう.隣国でありながら,余りにも貧しく,彼らを憎む国が存在することに,イスラエルもいつか,これが軍事侵攻や占領の代価であった,と気づくのです.


NYT May 28, 2004

Poor Economy Is Driving East Germans From Home

By KEVIN J. O'BRIEN

(コメント) ベルリンの壁が崩壊して歓喜した東ドイツ市民たちは,今の東ベルリンを見て何を思うでしょうか? ベルリンの壁だけでなく,そのすべてが,今も崩壊し続けています.

壁が崩れた1989年11月から今にかけて,東ドイツの人口は1670万人から1360万人へと,310万人も減少しました.5人に1人が国を出たのです.しかも,能力のある若者たちが真っ先に仕事を求めて出て行きました.東の失業率は18.8%,西は8.5%です.

地方の自治体や年金制度は破産に瀕しています.再統合後,補助金によって立てられた大量のアパートも,今ではわずかに老人たちが住むだけで,次々と廃墟になり,破壊と撤去が進められています.


ST MAY 29, 2004 SAT

Japan's media puzzle: why rip 'lucky' Koizumi?

By Tom Plate

May 30 (Bloomberg)

Market Beware, for Japan's MOF Is Watching

David DeRosa

May 31 (Bloomberg)

Ripplewood's Windfalls Good for Japan, Too

William Pesek Jr.

(コメント) Plateは,日本のメディアが小泉氏の再訪朝と首脳会談について一斉に失望を示したことを間違いだと考えます.なぜか? 世界中が扱いかねている北朝鮮とその植民地支配者であった日本が交渉することは難しいからです.

大きな失望をもたらしたのは,第一に,北朝鮮政府は,反対派の一部が思っているように,崩壊を覚悟して援助をねだっているのではないことです.スターリン主義の強硬派政府が,国民に死力を尽くして戦争する覚悟をさせているなら,交渉は非常に難しいでしょう.第二に,北朝鮮と日本とは,その関係や交渉について非常に異なった感情を持っています.北朝鮮政府は,民主的な政府ではないけれど,植民地支配に対する国民の怨恨によって支えられています.わずかな支援を交渉の条件として受け入れる気は無いでしょう.第三に,日米は統一した見解を強調しますが,実際は,ブッシュ政権の一方的な政策決定に対して,日本もアジア諸国も不満を持っています.日本は中国の融和的な姿勢に近いのです.第四に,小泉氏は7月の参院選挙を控え,北朝鮮政府が11月のアメリカ大統領選挙でブッシュ氏が敗北することを期待する状況で,この時期の交渉を選択しました.最後に,小泉氏は戦後の内閣で6番目の長期政権を維持しています.失望は,小泉氏に対する初期の過小評価が改められたからでしょう.

しかし,Plateの考える最大の理由は,交渉そのものではなく,日本が強い指導者を必要としており,メディアは指導者を否定的に伝えることによって間違ったメッセージを送っている,という判断です.

DeRosaが評価するのは,日本政府の財務省,そして日銀が金融市場に対して介入する姿勢です.日本は世界市場にまで歪みを及ぼし,損害を与える気か? というわけです.

谷垣財務大臣は,金利に注目し,為替レートに注目している,と言います.さらに,今度は石油価格に注目している,と.なぜなら,それは日本経済の回復にとって重要であるから.では,もし好ましくない動きがあれば,彼は何をするのか? 日本は石油を供給できないのに,石油価格について何が出来るのか? しかし,もし彼の話を聞けば,産油国は新規投資を躊躇するかもしれません.政府が「価格に注目(監視)する」という言葉をいいかげんに乱発すれば,市場への介入をほのめかせば,長期の供給を損なうでしょう.

では,金利,国債市場に注目するのは正しいのでしょうか? それが短期金利であれば,日銀が行う仕事です.他方,中長期の国債市場に間違った印象を与えるなら,投資家は国債を保有することに虚偽の安定感を抱くでしょう.谷垣が注目すべき正しい仕事とは,累積する国債の規模とその管理です.

金利や為替レート,石油価格,そしてバブル破綻後の景気まで,日本政府は危機的な調整を「平準化」して回避するために,市場を監視し,介入を繰り返しました.その結果が膨大な国債の残高です.もし小泉氏が政府支出を厳しくチェックして効率的に配分する,と考えるなら,こうした監視や介入を頻発する財務省の姿勢を,まず,改めるべきだろう,と.

ハゲタカ資本主義が,かつてジャンク・ボンドについて騒がれたように,経済の活性化や再生を促すものかどうか,私は疑わしいと思います.しかし,今日はあやめ池遊園地の廃園日です.まるでお葬式の日に,何年も忘れていた知人を訪ねるように,多くの家族が集まっていました.この土地を,新しい発想で利用してくれるなら,それがたとえ香港やテキサスのハゲタカ資本家でも,世界中から投資を集めて,利益を生み出す機会を掴んで欲しいです.地元の資本家や政治家は,彼らに対抗する新しい条件を提案できるでしょうか?


WP Friday, May 28, 2004

First in War, First in Peace

By E. J. Dionne Jr.

ノルマンディー上陸作戦の40周年記念日に,レーガン大統領は演説しました.

4年もの長い間,ヨーロッパは苦悩し続けていた.自由な諸国民は敗退し,ユダヤ人は収容所で泣き叫び,無数の人々が解放を求めていた.ヨーロッパは奴隷化され,世界はその救済を祈った.ここだ.このノルマンディーで,救済は始まった.ここに連合軍は立ち,独裁者に戦いを挑んで,人類史上に並ぶものの無い大規模な企てを開始したのだ.」

第二次世界大戦は,疑いなく,独裁者に対する戦いだった.しかし,この懐疑的な時代においては,われわれが邪推したくなっても仕方ない.記念日に,「もっとも偉大な世代」を称えることは,ノスタルジーやもっと単純だった時代を懐かしがっているのではないか? われわれは戦争に同意したわけではないし,確信も無い.

幸い,退役軍人たちが集まることで,こうした批判は退けられた.かつての時代も単純ではなかった.フランクリン・ルーズベルトはニュー・ディールを強く反対された.「良い戦争」を戦った世代は,この大恐慌から現れたのであり,確信や勝利から現れたのではない.アメリカが第二次大戦に参戦したのは,日本が真珠湾を攻撃してからだった.第一次大戦は武装した戦闘がいかに悲惨なものかを教えた.1918年に勝利した連合軍が,その後,急速に全体主義国家に取って代わられた以上,軍事力によって世界の民主主義を守るという壮大な夢はむなしかった.

私はもっとも偉大な世代について偏りのない意見を持てない.私の父や祖父,私の年老いた隣人が行ったこと,語ってくれたことに影響されている.それは情緒的だが,戦争の世代は帰還して形成される.それはまず戦争の,そして後に平和の世代だった.

その著書,"Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community,"で,Robert Putnamは,この世代を「市民的な長い一世代」と呼んでいる.というのも,彼らは注目すべき民主的な市民の集まりだったから.

彼らは1920年代に生まれた.「彼らは,1960年代後半に生まれたその孫たちに比べて,二倍も多くの市民団体に帰属していた.」「孫たちより,二倍以上も他の人々を信頼する傾向があった.」と,Putnamは書いている.投票率も二倍,政治への関心も二倍は強く,定期的に境界へ通う者も二倍近くいた.彼らは二倍もコミュニティーに貢献し,ほとんど3倍も多く日刊紙を読んでいた.

当然,彼らは市民的であった.なぜなら彼らは公共的な行動が機能すると思える時代に生きていたから.大恐慌を乗り切り,戦争に勝利した.その描写には,第二次大戦において義務ではなくコミュニティーの自発的な努力で達成された多くのことが読み取れる.彼ら自身の関心が寄り大きな関心と分かちがたく結びついていたからだ.

こんな話がある.戦争のとき,ゴムが深刻な不足を来たすと心配された.ルーズベルト大統領は,公衆に向けて,「古タイヤを,古レイン・コートを,庭の古ホースを,古靴,バス・キャップ,グローブ,何でも,ゴムで出来たものを持っている人は提供して欲しい」と呼びかけた.その結果,文字通り,何百万というアメリカ人が大統領の訴えに応えた.4週間を経ずに,およそ40万トンのゴムが,それはアメリカの男女や子供を問わず一人当り6ポンドに達するゴムが集まった.

レーガンが言うように,「市民的な長い一世代」は独裁者に立ち向かった.民主主義を守り,自国に尽くした.戦場での勇気は,平和な時代における尊い責任とコミュニティーとなった.


FT May 28 2004

IMF is sixty years on, and still contentious

By Christopher Swann

(コメント) IMF・世銀の改革について,議論の現状を整理しています.

まず,G7が制度の見直しをするために,2年前,再評価を始めました.大規模な制度改革という見通しは消え,漸進的な改修が予想されます.その理由は,1944年にアメリカ国務長官コーデル・ハルが44ヶ国を招いて作った制度が,その後の世界経済の変化について行けなかったからです.

たとえば,Ken RogoffはIMFが小さすぎるし,大きすぎる,と言います.世界経済が拡大したために,その危機に対応する消防士が小さすぎるのです.ブラジルが破綻しただけで,IMFの資源は枯渇します.

他方,その融資は大きすぎます.IMFは次々と破綻した政府への救済融資を繰り返しました.それが破綻の悪循環をもたらした,と強く批判されています.アメリカ財務省は,政府債務を組替えやすくするような集団行動条項を債券発行の条件にすることを支持しています.こうすればIMFに頼ることが少なくなるわけです.同時に,融資条件を厳しくするべきだ,と主張します.しかし,Rogoffはそれを疑います.いつでも例外扱いする事情は見つかるものだ,と.

IMFが各国の主権に深く関わるような交渉をすべきではない,という合意が形成されつつある,とCharles Wyploszは言います.消防士が夫婦の離婚話にまで口を挟むべきではないのです.

世銀についても,国際資本市場で資金を調達できる国にまで融資している,と批判されています.世銀はもっと最貧国への援助に限って,融資と区別するべきです.そうすれば裕福な国が世銀融資に干渉することも無いだろう,とTed Trumanは言います.

しかし,もっとも厄介な問題は,国際機関の代表制度です.IMF・世銀にはヨーロッパ諸国が過剰に代表を送り,中国,ブラジル,インドなど,発展途上国が少なすぎます.この問題を解決できなければ,中国の為替レートやブラジルの債務について,IMFが勧告したことを彼らが聞くはずが無い,と.


NYT May 29, 2004

A Hollow Sovereignty for Iraq

WP Saturday, May 29, 2004

An Iraq Pledge to Watch Closely

By Colbert I. King

(コメント) ブッシュ氏の言う「主権」の移譲とは,中身の無いものになるでしょう.第二次大戦の記念日.ヴェトナム戦争についてのニクソン氏の演説.イラク占領についてのブッシュ氏の演説.国民が大統領を信用できなくなり,議会が戦争に制限を課すまで,戦いは終わりません.


NYT May 29, 2004

Allen-Edmonds Keeps Its Shoes on an American Factory Floor

By AARON NATHANS

(コメント) アメリカで靴を生産し続けるというのは,どういうことを意味するのか? なぜ中国やドミニカ共和国へ工場を移転しないのか? 賃金,機械化,コンピューター,革新,品質管理,その他.工場移転にともなう問題はあっても,アメリカで生産することが日に日に難しくなります.

「グローバリゼーションによる低賃金,工場閉鎖,その他の社会問題についてデモ行進する学生たちが,皆,中国製の靴を履いている.」と,その工場主は嘆きます.しかし,彼らに他の選択肢はあるのか? 「無い」と,彼も考えます.


FT May 30 2004

Wolfgang Munchau: Risks facing eurozone

By Wolfgang Munchau

(コメント) ユーロ圏内で各国のインフレ率が収斂しないことを,専門家たちは心配しています.しかも,同じ国が平均よりも高いインフレ率を続けているのです.イタリアのベルルスコーニ首相は,それを通貨同盟の高いコストだ,と非難しています.

ECBの専門家たちは,その理由を構造的な要因,たとえば賃金交渉や価格決定のメカニズムにおけるその国の特殊な事情,に求めます.もし,通貨同盟内で,ある国のインフレ率が構造的に高く維持されるなら,一時的に実質金利を低くするという利益をもたらしますが,長期的には競争力を失って投資や雇用が減るでしょう.通貨同盟は,単一の金融政策を受け入れるだけで,自由な財政政策を保証されると理解したイタリア首相は,その構造的要因を解消できなかった責任を自分たち自身が負うべきだ,というわけです.

しかし,イタリア,スペイン,ポルトガル,ギリシャ,アイルランドと言えば,同盟の周辺部で,成長率の高い国が多いように思います.ECBが言うより,実際には,中枢部から起きた資本逃避や実質所得格差を収斂させる過程が,こうした国のインフレを持続しているのではないでしょうか? そうであれば,EU経済が長期的に収斂する過程で解消される,と思います.


FT May 30 2004

America's battle to regain respect

Lawrence Freedman

FT May 31 2004

How a superpower lost its stature

By Michael Lind

BG June 2, 2004

Bush the war leader losing key battles

By Robert Kuttner

(コメント) アメリカ政府は,イラクにおける権力の真空を恐れるより,世界政治の真空状態を心配した方が良い,とFreedmanは考えます.

イラクを占領したアメリカ軍の傲慢さは住民たちの好意を損ない,地域ごとの抵抗に変えてしまいました.独裁者や「悪の枢軸」と戦うはずの有志の連合が離散し,イギリスの保守党党首さえアメリカ政府に反対する方が選挙に有利と判断する始末です.残されたイランと北朝鮮は,フセインよりもはるかに核武装を実現しつつあるのに,アメリカ政府が今更,先制攻撃や単独行動を唱えても信じてもらえません.撤退を唱えて失敗したシャロン首相の,その後の無慈悲な政策に対しても,偏った支持を与え続けるアメリカ政府は,パレスチナ人から和平への希望を奪いました.

アメリカに代わってヨーロッパが世界政治を指導する,という楽観をもてあそぶのは一層危険です.EUは共通の目的を欠き,将来の不確実さに満ち,指導的な立場にある英仏間の関係も脆弱です.アメリカの帝国主義が後退すれば,ヨーロッパが心配しなければならないのは,その孤立主義でしょう.アメリカの支持なしに,ヨーロッパが行えることは限られます.

ブッシュ政権は,多角主義をいくらか回復し,アブ・グレイブ収容所を閉鎖して撤去すると宣言したように,政治的意志を失っていません.しかし,世界の尊敬を得られるかどうか.ジョン・ケリーは,「恐れられるのではなく,尊敬されるアメリカが,再び世界を指導して欲しい,という強い要望を世界中から聞いている」と述べました.その困難さを決して過小評価しないことだ,と.

Lindも,ファルージャやアブ・グレイブ収容所でブッシュ政権が損なった,アメリカの姿,を憂慮します.ブッシュ政権は,ネオ・コンザーバティブを破綻させただけでなく,それに代わりうるネオ・リベラリズムの基礎を,むしろより深く損ないました.アメリカのネオ・リベラリズム(もしくは人道的タカ派,軍事的国際主義者)は,冷戦期から,高度に介入主義的な政策を支持してきました.ただし,ネオ・コンと違って,アメリカは国連やNATOを介して世界を改造するはずでした.第一次湾岸戦争や,クリントン政権のバルカン介入は,軍事的な一極化と多角外交を組み合わせたネオ・リベラリズムの模範例でした.

ブッシュ氏が破滅させたものとは,ネオ・コンとネオ・リベラリズムとがともに依拠していた「アメリカの軍事力が及ぼす神秘性」でした.それは,物質的にも,道徳的にも,優位にあると思われていたのです.しかし実際は,アメリカ軍が示す圧倒的な優位が,さまざまな点で民間の下請け企業に依存した,杜撰なものであると示されました.また,原住民殺戮や奴隷制,人種隔離など,アメリカ史の暗黒面を世界は思い出したでしょう.ファシズムや共産主義からの解放者,というイメージは,大きく傷つきました.

神秘性を失ったアメリカは,もはや,ネオ・リベラリズムが行動できる余地をどこにも残さないでしょう.2004年の画期的な大統領選挙は,今が「善意の世界覇権国アメリカをいただく長い時代」の特異な時期であったのかどうかを決めるでしょう.それはアメリカと世界の将来を左右します.しかし,たとえケリーが勝利しても,アメリカは小さな目標と範囲で行動するしかないのです.

実際,Kuttnerは,ブッシュ政権の著しい政策失敗を数え上げて,9・11があったから,自分もタカ派のようになって,アフガニスタン侵攻をボスニア空爆のように支持してしまった,と後悔します.アメリカが人権擁護や核拡散防止のために積極的な役割を担うべきだ,と考えていたからだ,と.しかし,Kuttnerは考えます.これはハト派とタカ派の対立ではなかった.幻想に依拠した政策と,現実的な政策の実行力との対立であった,と.テロの時代にアメリカを守るのは,まともに撃つこともできないギャングなのか,それとも現実を直視できる者か?


ST MAY 31, 2004 MON

Strategic issues that confront a rising Asia

By LEE HSIEN LOONG

IHT Monday, May 31, 2004

U.S. sends a wrong signal to North Korea

Jon B. Wolfsthal

(コメント) シンガポールの指導者は,典型的なリアリストの主張によって,国民や国際社会に政治的な自己主張を行います.戦略的な問題について,アジアの安定化とは何を意味するか?

1.   アメリカの優位は変わらない.アメリカとの関係が最も重要である.アメリカと協力しない国は,アジアの安定を実現できない.

2.   中国の台頭も,米中関係の重要性を意味する.アメリカとの競争はあっても,対立は避けられる.

3.   アジアの戦略的な安定性は,三つの問題に関わる.@カシミール,A北朝鮮,B台湾.それぞれが,アジアに新しい一定の枠組みをもたらす.

4.   イスラム原理主義やテロによる危険を重視する必要がある.


FT May 31 2004

World needs to be open to globalisation

By Stanley Fischer

(コメント) 前IMF専務理事FischerによるWolfの新著の紹介です.グローバリゼーションに参加することで,人々は豊かになれます.どの国にとっても,自由市場と民主主義が唯一の選択肢であり,政府の役割は減少しています.その理由は,自由貿易論や,競争による生産性の上昇です.Fischerは概ねこの議論を賞賛しています.貧富の差が拡大するのはグローバリゼーションによるのではありません.だから,最貧国には一層のグローバリゼーションが求められます.外貨建の短期借り入れは危険な手段でした.しかし,発展途上諸国はもっと多くの資本を必要としており,国際資本移動の自由化が必要です.国際移民も,明らかに,世界の富を増やすでしょう.しかし,この点では豊かな国の意識が障害となります.幼稚産業保護論に共感しつつ,その他の,さまざまな保護主義の言い訳を批判します.

唯一,Fischerが反対したのは,IMFの評価です.IMFは資本自由化や危機への対応を誤った,と非難されていますが,Fischerは同意しません.IMFはタイに繰り返し警告を行いましたが,政府がそれに応じなかったのです.固定レートを維持したまま資本自由化を進める国は,それが長期的には維持できないことを知るべきだ,と主張します.資本市場における自主的な債務の組替を促す改革に賛成します.しかし,グローバリゼーションを維持する開発政策や国際制度について,Wolfは十分に議論していません.

FischerとWolf.彼らの意見は国際経済秩序の現在を示す重要な観測点だと思います.


NYT May 31, 2004

What Studs Terkel's 'Working' Says About Worker Malaise Today

By ADAM COHEN

(コメント) スタッズ・ターケルの『仕事!』が,本棚のどこかにあったはずだ,と思い出しました.

誰も聞いたことが無いような病院の助手,空港の手荷物運び人,墓掘人,などに,ターケルはインタビューします.最初は同じような,驚くべき軌跡と,ありふれた仕事の細部から始まり,一気に実存的な考えが現れます.最も低い身分の労働者であっても,仕事は探求です.日々の糧だけでなく,日々の意味を求めます.そして『仕事!』を読めば,われわれがどれほど職場を破壊してしまったかを思うでしょう.

「もちろん,私は大金を稼ぎはしない.」と,製本業者は言います.しかし,彼女は古い本を修理するのが好きです.なぜなら「本には命があるから.」 墓堀人は,訪れた下水溝の業者が墓穴の美しい輪郭や正確な角にどれほど驚いたかを思い出します.「死者の体がこの穴に入るのだ.」と彼は誇り高く言います.「だからこそ,墓を掘るには私の技量が求められる.」

人々は仕事に囚われていますが,ある人々にとって,仕事は自分の優れた能力を示し,人格を表し,自らを演じることができる舞台なのです.しかし,彼がインタビューに歩いた1970年代は,緩やかな時代でした.職場の喜びは,まだ今のように,時間決めの要求に支配されていなかったのです.30年後の今,サイモン・ヘッドは『無慈悲なニュー・エコノミー』を著しました.ハイテクと新しい経営スタイルとは,「デジタル組み立てライン」に労働者を配置します.彼らに創造力や独自の思考は求められません.

確かに生産性は大きく上昇しました.しかし,彼らの給与に入ったわけではないのです.最近の2年半だけなら,企業の利潤が87%増加し,労働者の賃金はわずか4.5%上昇しました.既に30年前から,人々は気づき始めていました.仕事が,そこで働く人々の魂を入れる器として,ますます小さくなってきた,と.

「普通の人々の素晴らしい夢」を描いた本です.アメリカ人が,いつか不幸な労働者たちを省みるとき,必ず読み返す本である,と.


FT June 1 2004

Italy must reform to prosper

By Fred Kapner

(コメント) イタリアやドイツは,急速に,工業力や職場を失いつつあります.ユーロによって切下げができなくなったイタリアは,脱工業化が加速しました.明らかに,イタリアに必要なことは二つだ,とKapnerは考えます.1.企業家は,イタリアの内外で,サービスや高付加価値の分野に投資を転換すること.2.政府は,そのような転換を妨げている障害を取り除くこと.細かくは,

@     インフラ整備.

A     中小企業の資本強化.

B     エネルギー・コスト

C     経営者の高齢化.

D     地方政府と政治家の腐敗,非効率性.

E     司法制度の遅さ.

F     クローニズムに冒され,硬直化した大学システム.

G     多国籍企業の少なさ.

H     研究開発投資の少なさと非効率性.

その成否は,産業地区の調整能力に依存する,と考えます.グローバリゼーションに生きる多くのイタリア企業は,中国の生産拠点も含めて,世界的な規模で,販売,物流,開発,などを再編してきました.しかし,大企業は,今も保護に逃げ込みます.

私が今治のタオル産業を調査に訪れた際,経営者の一人は中国との比較で,日本の同じような問題を指摘しました.


FT June 1 2004

Don't put blame for Iraq on Bush alone

By Moises Naim

(コメント) ブッシュ氏を責める際に,彼があのように行動する過程で,責任を負うべき他の多くの主体を見逃してはいけない,とNaimは考えます.そして,今もテロリズムは解決されておらず,戦わねばならない戦争もある,という原則を投げ出してはいけない,と.

誰のことでしょうか? Naimは列挙します.ブッシュ政権の尊大さを助長したメディアのレポーターやコメンテーター.間違った情報を伝えた諜報機関.軟弱と見られたくなかった民主党.愛国心に便乗して重要な原則を放棄した共和党.仕事を奪われたくなかった外交官たち.強硬派を煽ったジャーナリスト.視聴率だけに飢えたTVのトーク・ショー.分裂し,機能しなくなった多くのNGOや人権団体.ブレア,シラク,シュレーダー,アメリカを扱い損なった国際政治の指導者たち.アラブ諸国,そして特にアラブ連盟.もちろん,もっとも重大な責任者は9・11のテロ実行犯たちだ.アメリカがそれ以前と同じように振舞うことを不可能にした.

新しいアプローチが求められているからと言って,粗悪な考えに逃げ込んではいけない.


NYT June 1, 2004

Grading the President

By DAVID BROOKS

(コメント) ワシントンの尊敬されている,しかし高価な?雑誌,The National Journalが,政治的に独立の経済学者に依頼してブッシュ大統領の成績をつけました.財政政策は,短期がBプラス,しかし長期ではCマイナスです.そして,規制政策はB,貿易・国際経済についてBマイナスです.これではローズ奨学金をもらえないけれど,まずまず,というところだ,と.

この評価についてホワイト・ハウスのスタッフはどう思うだろうか? アメリカのジャーナリストは実際に尋ねることが出来ます.BROOKSが受けた最初の反応は,2001年と今とでは,非常に事情が異なる,ということです.バブルが破綻した後,評論家たちが騒ぎ出す前から,政府は日本型のデフレを警戒して手を打った.政府のすばやい減税政策があったから不況を回避できたのだ,と.

他方,BROOKSによれば,減税に対する批判は主に4点です.@戦時である.A減税方法が悪い.B一時的にすべきだった.C長期的なコストが大きい.そして,BROOKSは最初の三つについて,政府の評価はすでに終わった,と考えます.だから,もし政府が選挙に向けて,イラク戦争だけでなく国内問題でも争点を挙げるなら,長期の財政コストをこんな風に議論してほしい,と.

「OK.われわれは危機に瀕していたが,それは回避した.回復は本格化している.長期の問題に目を向けようじゃないか.ベビー・ブーマ世代が高齢化する結果を話し合おう.国内貯蓄を高める税制改革についても議論しようじゃないか!」


BG June 2, 2004

US pressure can help nudge China to democracy

By Wang Youcai

IHT Wednesday, June 2, 2004

Protests now flourish in China

Murray Scot Tanner

NYT June 2, 2004

The Tiananmen Victory

By NICHOLAS D. KRISTOF

(コメント) 1989年6月4日は天安門事件の15周年記念日です.Youcaiは,当時,北京大学の大学院生であり,民主化を要求する政治行動に加わって4年の禁固刑を宣告されました.彼は民主主義を本で読んだだけでしたが,天安門事件を通じて,民主主義がデモだけで作られることは無い,と考えました.社会が,その底辺から,民主的な制度を築く必要がある,と.

Youcaiは故郷に帰って,1980年代に始まった民主的選挙に,農民や民間企業経営者と協力して,参加します.しかし,地方選挙も実際には共産党に支配され,民主的なものではない,と考えるようになり,中国には複数政党政治が必要だ,と主張し始めます.そして1998年6月,中国民主党を創設します.NGOでありながら,クリントンやジスカール・デスタンが訪問するようになりました.しかし,外国からの関心が薄れた途端,中国政府はYoucaiを含むすべての中心メンバーを逮捕しました.

Youcaiは11年の禁固刑を宣告されましたが,その6年後,国際社会,特にアメリカからの強い抗議で釈放され,今は,アメリカに亡命してハーヴァード大学の研究所に居ます.彼の仲間はまだ獄中に居ます.Youcaiは彼らの釈放を求めています.そして長期的には,中国の民主化を目指します.民主的な中国は世界にとって重要です.国際社会が中国に民主化を求め,関心を持つことは重要です.そして,中国の民主化運動は続いています.民主的な制度を,事件後も,少しずつ築こうとしているのです.

Tannerは,その後の変化を異なった視点で解釈します.天安門でケ小平は厳しい教訓を民衆に与えた.「抗議は割に合わない.(protest does not pay.)」 しかし,民衆はそれを忘れつつあります.政府統計によってさえも,デモの数は1993年の8,700件から1999年には3万2000件に増加しました.2000年には4万件を超えたと推定されます.政府や警察は,抗議を完全に弾圧するのではなく,不満の捌け口を与える方針に変化しつつあるようです.同時に,政府は景気の持続と雇用確保を非常に重視するでしょう.

KRISTOFは,天安門事件のときに自転車で広場に向かい,デモ隊が銃撃される様を目撃しました.そして今,誰が勝者であったか,を確認します.中国は,政治を除いて,すべてが改革派の勝利を示しています.貿易や投資で西側に結びついた中国では,共産主義が色あせました.(化粧品の)エイボン・レディー,MBA取得競争,マイケル・ジョーダン,ヴォーグ・マガジン,・・・マルクスの声は聞こえません.

弾圧者の判断は正しかった,と言います.中国に「ブルジョア的な自由は許さない.」 彼らは知っていたのです.もし民衆がエディー・マーフィーを観て,タイトなピンクのドレスを着て,スターバックスの棚で注文に殺到するなら,革命はおしまいだ.店ではさまざまなコーヒーを注文できるのに,政治家を投票できないなんて!?


WP Wednesday, June 2, 2004

Hopeful Omens in Iraq

By Fareed Zakaria

(コメント) ブッシュ政権は,漸く,イラク政策を正しい方向に修正し始めました.遅すぎたとは言え,有益な変化だ,とZakariaは考えます.穴に落ちたら,少なくとも,それ以上に深く穴を掘るな,という最初の教訓を学んだ,というわけです.

ブッシュ政権が修正した主な政策とは,1.追加の兵士は必要ない.2.国連の政治的な役割を排除.3.バース党の完全解体.4.軍事力による完全制圧,です.それらは,1.2万人の兵士を補充.2,同盟者として国連が選挙を監視.3.チャラビを無視して,軍隊の再生へ.4.注意深い軍事・政治戦略で,地元の指導者を重視,へ変わりました.こうした方針が14ヶ月前に選択されていたら,事態はどれほど今よりも良好であっただろうか,とZakariaは想像します.

既に試みられた愚かな政策の結果として,将来も国連は権威を弱め,イラク人は暫定政府を信頼できないでしょう.しかし,なすべきことは明らかです.@政府が国民から信任を得ること.A外からの支援を国際化すること.さまざまな悪い点も残っているが,いずれにせよ,イラク政策は現実を踏まえて成熟しつつある,と.

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The Economist, May 22nd 2004

Lexington: It’s a gas

Oil: Pain at the pump

(コメント) 大統領は湾岸地域で安全保障上のリスクと戦い,国内ではガソリン価格の上昇と戦う.インフレが認められれば,連銀は金利を上げるだろう.大統領の支持率は40%で上下する.ブッシュ氏のことか? と言えば,そうではありません.1980年夏のジミー・カーター大統領のことです.そして,カーター氏はロナルド・レーガンに敗北しました.

石油価格は今年の選挙で争点とならないまま,イラクや雇用が議論されてきました.しかし,今や,有権者はガソリン・スタンドでガロン当り2ドルもする表示を見るたびに,ブッシュ政権に怒りを覚えるでしょう.ガソリン価格は,ファルージャよりも,リチャード・クラークの証言よりも,ブッシュ氏に打撃を与えます.

ヨーロッパ(そして日本)の人々は,アメリカ人がガソリン価格に抱く感情を理解できない.なぜなら彼らは,アメリカ人のように,自動車で生活し,食事し,眠っていないから.また,ヨーロッパでは価格の大きな部分が税金だ.

こうしたガソリン価格の政治学は,1980年以来,大きく変わりました.ガソリンは(インフレを調整すれば)当時よりもずっと安くなったのです.1980年夏にはガソリン・スタンドで約3ドルした,と言います.なんともアメリカ的でない光景であるが,毎週,水曜日だけ後退で行列し,ガソリンの配給を受けた.ガソリンの高価格は,アメリカが陥った経済的苦境の象徴でした.インフレと失業は高まり,アメリカは日本に買収されつつありました.

当時と今との最大の違いは,二人の大統領の政治的な力でしょう.カーターは弱く,無能である,と見なされました.イランの人質事件を解決できなかったのです.カーターは事態を見過ごしすぎました.他方,ブッシュはあまりに何にでも手を出します.その結果,財政赤字が膨張しても,ブッシュ氏を弱く,無能だと非難する者は居ません.サウド家の激変やガソリン税の議論が,アメリカ政治を再び大きく変える可能性もあります.

アメリカは世界の石油問題の中心です.なぜなら,世界の石油生産の4分の1を消費し,ドライブのシーズンにはアメリカ人の自動車がガソリンを消尽し,国内のさまざまな供給上のボトルネックと,地域ごとにバラバラな環境規制で,アメリカのガソリン市場はバルカン化しています.今年は特に,精製上の問題が発生しています.サウジ・アラビアやイラクなど,中東の産油諸国は安全保障をアメリカの軍隊に依存し,ヴェネズエラの政情不安も深刻です.


Israel and Palestine: Can the dangerous vacuum in Gaza be peacefully filled?

(コメント) イスラエルの行為は,パレスチナ人の多くに,56年前のイスラエル建国とパレスチナの故郷喪失を思い出させます.エルサレムの壁やガザ地区への侵攻,ブルドーザーによる住宅の破壊は,国際法を無視しているだけでなく,イスラエル政府の唱える目的も達成できていない,と国際アムネスティーは批判します.すなわち,イスラエル軍は,海やエジプト軍に阻まれ,どこにも逃げるところの無い130万人のパレスチナ人をますます追い詰めて,彼らがハマスら強硬派の手に落ちることを促すだけである,と.