IPEの果樹園2004

今週のReview

5/17-5/22

IPEのタネ

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世界の英字紙からコラムを紹介します.私が選んだ論説の内容を,かなり自由に要約し(全訳に近いものもあります),そこには自分の意見も含まれています.利用する場合は,それぞれの出典を自分で確認してください.なお著作権は,それぞれ,元の著作権に従うものと考えます.

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もし三つだけ推奨するとしたら?

1.   グローバリゼーションの正しい制度化 : もし世界が正しい市場と正しい制度,そして節度ある正しい政府によって運営されていたら!

2.   グローバリゼーションに欠けているもの : それでもGMフーズは世界を滅ぼす?

3.   超大国アメリカの意外な復活? : 本当に世界はアメリカを失っても良いのか?

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times


IHT Thursday, May 6, 2004

Slowly but steadily, India will overtake China

Jonathan Power

(コメント) かつてリチャード・ニクソンが中国を訪問したのは,ソビエト連邦に対抗する核兵器を中国が持っていたからでした.しかし,その意味では,インドも既に核兵器を持っています.しかもインドには,中国に無い,民主的な選挙の制度が機能しています.

中国の目覚しい成長に世界は夢中ですが,それは直接投資に過度に依存し,自国の企業家や銀行システムが育っていません.インドは,輸入に頼らず食糧危機を乗り越え,フェビアン型の社会主義システムを市場経済に向けて徐々に改革してきました.今では,香港や台湾の活力に頼って拡大してきた中国に比べて,インフレを抑える点でも,ハイテク部門を育てた点でも,優れています.

ウサギが息切れしてくるにつれて,亀の方が速かったと分かるだろう,と.


NYT May 6, 2004

How Much Does Information Technology Matter?

By HAL R. VARIAN

(コメント) 「ITは重要か?」という論争があるようです.ハーヴァード・ビジネス・レヴューの元編集長Nicholas G. Carrは,「ITは重要じゃない」"IT Doesn't Matter."という論文を2003年5月に書きました.これに対して,IT業界が強く反発したからです.

VARIANの答えは,IT技術が「革新」である限り,それが価格競争にも優位をもたらし,少数の企業に特別な利潤をもたらします.しかし,その技術が普及し,単なる「商品」となれば,ITだけが重要ではなくなる,というわけです.電池でも,自動車でも,技術が確立して,大量生産され,普及してしまえば,それによって少数の経営者が特別な利潤を確保できる条件ではなくなりました.ITが重要であるかどうかは,今後,ITが革新を刺激し続け,それが人々の需要を喚起できるかどうか,にかかっています.


WP Thursday, May 6, 2004

Mr. Rumsfeld's Responsibility

May 7 (Bloomberg)

Rumsfeld Reaction to Abuse Is Surprising

Ann Woolner

(コメント) ラムズフェルド国防長官が,2年前に,アフガニスタンの捕虜をジュネーブ協定から除外したことが,こうした問題の始まりであった,とWPは論じています.こうして,ラムズフェルドと国防省は,捕虜の扱いに関する外部団体の監督や調査メカニズムの必要性を否定しました.これまでも,世界中のあらゆる刑務所や収容所で,さまざまな虐待が行われてきた事実を知らなかったとは言えないはずです.

確かに,テロリストが含まれているかもしれない大量の非戦闘員を捕虜にして,ジュネーブ協定を適用するのは,「時代遅れ」の面がありました.しかし,もしラムズフェルドがそれを主張するのであれば,捕虜の虐待を防ぐためにジュネーブ協定が求めたようなセーフガード策を用意すべきでした.すでに,グァンタナモ基地で行われた虐待事件も秘密にされています.

捕虜への虐待は,何より,アメリカによるイラクの戦後統治に対する信用を破壊しました.新聞などがさまざまな事件を追及した際にも,ラムズフェルドはそれを十分に説明せず,責任者を追及しませんでした.アブ・グレイブの虐待が報道されてからも,これはジュネーブ協定に違反していない,アメリカは国際法に制約されない,という彼の考えは変わりません.そのような態度が,アメリカ軍に人権を無視させ,テロとの戦いに敗北する結果になろうとしているのに.

赤十字だけが刑務所を訪れることを許されていました.そして,繰り返し捕虜の扱いについて問題を指摘してきたと言います.国際アムネスティーも警告してきました.だから,ラムズフェルドは今も,事態が何も変わっていない,驚くことではない,という様子です.彼がその捨身を見たときは,既に問題が起きてしまってからで,手遅れでした.彼が心配するのは,メディアに写真が氾濫して,大統領選挙の行方に影響することです.

BG May 7, 2004

Rumsfeld must go

LAT May 7, 2004

He Must Go ... Immediately

By Jeffrey H. Smith

NYT May 7, 2004

Donald Rumsfeld Should Go

(コメント) バクダッド市民を略奪の最中に捨て置いても,ラムズフェルドはアメリカの勝利を祝って気にしませんでした.捕虜の人権など,どうでも良かったのではないか? 彼のこの傲慢さが,国際協定(国際法)や野党,専門家から出された多くの批判を無視させてきたのです.

ラムズフェルドが直ちに辞任すべき理由は多くあります.何よりも,彼はこの戦争を設計し,推し進めてきた責任者です.刑務所や収容所で行われた虐待の犠牲者,殺害された人々にだけでなく,この戦争で死んだアメリカ人とイラク人に,この戦争が何をもたらしたか,彼は説明しなければなりません.そして,もはや正当な理由など見当たらないとすれば,直ちに辞任し,アメリカの戦後統治を見直し,国連や他国の関与を拡大するときです.

The Guardian, Saturday May 8, 2004

Rumsfeld under fire

WP Sunday, May 9, 2004

McNamara Moment

By David S. Broder

(コメント) イギリスは,アメリカの同盟者として,イラク戦争に最も重要な役割を果たし,今や,同じような虐待問題を抱えています.ただし,イギリスにラムズフェルドは居ません.中国と対抗するミサイル防衛システムや,ヨーロッパや国連を無視したユニラテラリズムを提唱し,ハイテク兵器と少数の精鋭部隊による世界展開を好み,従来の戦争や占領を民間部門に下請けさせたラムズフェルドは,この相互依存を深めた世界で,アメリカが担う役割と,そのもたらす秩序や罪悪の重要さを指導者たちに痛感させました.特にイギリスの.イギリス政府が,もっとも切実に,ラムズフェルド更迭を願っているかもしれません.

かつてマクナマラがヴェトナム戦争で国防省を破滅させたように,ラムズフェルドは決定的な失敗を犯しつつあります.マクナマラにとって,それは「村を救うために,われわれは村を破壊する必要があった」と述べたときでした.すでに,アブ・グレイブ刑務所の映像は,ブッシュ政権を熱烈に支持してきたビジネス・エリートや保守派のコメンテーターからも,政府への評価を疑わせる発言をしています.軍のOBたちは,たとえイラクのもっとも親しい友人たちでさえ,アメリカを憎み,この行為を許さないだろう,と認めました.

彼らが愛想をつかしたのは,ラムズフェルドが「システムは機能している」と自慢したときです.虐待を告発したのは,軍の調査報告だった,と彼は胸を張ります.確かにブッシュ大統領は,「ぞっとした」と述べ,ラムズフェルドは,「深く謝罪する」と言いました.しかし,同時に,「システムは機能している」と主張し続けたのです.

システム? イラクの住民を支配するシステム? 市民を拘束し,拷問し,殺害するシステム? 自由や人権,民主主義という名目で,アメリカの軍隊がもたらしたシステムが,今も機能している.否,ラムズフェルドの軍隊が.


NYT May 7, 2004

The Oil Crunch

By PAUL KRUGMAN

NYT May 11, 2004

Surge in Jobs Mostly Bypasses the Factory Floor

By LOUIS UCHITELLE

(コメント) アメリカ経済の不安として,石油価格の上昇と雇用不足を考えることができます.もちろん,一時的な問題であれば,石油価格を下げるには金利を上げて,雇用を増やすには金利を下げるのも良いでしょうが,どちらも長期的な構造・制度問題かもしれません.

KRUGMANは,石油の供給と世界経済の拡大による需要は,長期的に価格を上げていく,という問題を指摘します.イラクの混乱やサウジ・アラビアのパイプラインなどへテロ攻撃があるという心配が強まるばかりです.新しい油田が見つかるわけでもなく,景気回復や効率的利用の限界,中国などでの石油消費増大,その他,価格の上昇を示すものばかりです.

雇用は,完全になくなるわけではありません.しかし,アウトソーシングによって減少し,新しい産業構造によってサービス部門やハイテク部門で増大するだけで,自動車産業など,製造業では減少し,たとえ自動車生産が残るとしても,メキシコの組み立て工場と連携する地域や,労働組合の無い州へ,次々と移転されます.そして新しい技術は熟練を不要にし,ますます新しい移民労働者を雇用するでしょう.

貿易赤字と金融サービスの拡大が示すように,アメリカの消費者はますます輸入や融資に依存することで,貿易や金融,流通に関わる雇用が増えるでしょう.


May 7 (Bloomberg)

Viewing the `China Syndrome' From Down Under

William Pesek Jr.

NYT May 7, 2004

China Anxiously Seeks a Soft Economic Landing

By KEITH BRADSHER

The Observer, Sunday May 9, 2004

The great mall of China

Will Hutton

(コメント) 中国が,日本やオーストラリア,アジア各国からの輸入を増やし,その成長を波及させてきたこと,特に,GDPでは世界の4%にも満たないが,世界の成長に後見する割合は何倍も重要であることから,その減速が激しい場合に,他国への影響も懸念されています.

しかし,中国の成長が何であるのか,私たちにはよく理解できていません.その投資が国営企業に向かうこと,さまざまな国際商品市場の価格上昇を引き起こしていること,部門によってはバブルや過剰投資が行われ,銀行システムや為替レート制度は資金流出の危機に瀕していること,などが知られています.しかし,外国企業や政府の開設したハイテク・パークは繁栄しています.

その成長の制御やインフレ抑制,失業や移民への救済策が,中国ではどのように行えるのか,まだ多くの論説が,アメリカやヨーロッパ,日本の過去から,ばらばらな推論を重ねています.


The Guardian, Friday May 7, 2004

Only the UN can save us

Polly Toynbee

そこでは,市民たちがでたらめに殺され,何の説明も無く投獄され,行方不明になっていた.絶望した家族たちが牢獄の外で名前を書いた紙を振り,情報を求めたが,こうした彼らの訴えは,法の支配と人権を約束して侵攻した軍隊によって,一年間も無視されていた.

アブ・グレイブでは囚人たちへの拷問が組織的に行われ,それが象徴となって,ほかへも精神的な毒が広まった.アメリカの道義的な敵対者たちでさえ,あれほど見事なPRはできなかっただろう.性的な虐待や,裸のイスラム教徒を辱めること,小便をかけ,男同士で性行為を行わせること,サダムの古い拷問部屋で犠牲者たちを「歓待せよ」というアメリカ諜報部の命令が,彼らの信念を破壊した.

残虐行為は十分に予測可能であった.絶対的な権力は,秘密になると,完全にどうしようもないものだ.平和なときには制度によって抑えられているが,戦争では,下等なものとされた捕虜たちに接することで,嫌悪感,侮蔑,暴力が喚起される.

ブッシュ大統領は,「これはわれわれがアメリカでやっていることではない」と述べた.その通りだ.それはアメリカが,外国に出ると,やることだから.アメリカの憲法は自国の市民だけを守る.自分だけしか見ようとしないアメリカ人の神話は,トマス・ペインやベンジャミン・フランクリン,トマス・ジェファーソンの理想に依拠した「自由を愛する国」だ.しかし,決してそうではなかったわけだ.

トニー・ブレアの外交顧問であるロバート・クーパーが述べたように,「われわれの中では法が維持される.しかしジャングルで戦うとき,われわれはジャングルの法に従う.」だから,イギリスのテロ容疑者は法廷の許可を得ず,弁護士もつかず,通常の,正義の要請に従わない.嫌疑不十分なら釈放されるだけだ.

侵略軍は,常に,残虐行為に手を染める.それはしばしば何年も後になって明らかになる.外国人の顔を見て,敵か味方かを区別できない場所では,侵略軍が差別的に殺害するに違いない.フセイン体制が崩壊してからも,米英軍がイラク市民の犠牲者を数えることを拒んだとき,われわれはその警鐘を聞くべきだった.

これほどの破滅的な事態を予想もせず,大統領はさらに250億ドルの支出を要請した.ネオコンの幻はすべて嘘だった.口先だけで中東の民主化を唱えた.虐待が明るみに出る前のギャラップ調査でさえ,アメリカ人を好きだ,と答えたイラク人はたった10%だった.

LSEで講演したフレッド・ハリデー教授は,これを「われわれの時代の危機」と呼んだ.彼はイラク侵攻を支持したし,WMDの疑いや安保理決議による開戦に十分な理由を認めてきた.

しかし,サダムが敗北してから,「アメリカは初期に受けた好意を破壊してしまった」と彼は言う.もはや事態は制御不可能に近く,まともな政策も無い.ブレマーは塹壕に隠れて,政治も外交も知らない軍の指揮官たちに任せている.アメリカ政府はシャロンを後押しして地域の同盟者たちを疎外し,多国籍のジハード軍を加勢した.伝統的な同盟者は,所詮,地域の腐敗した,弱体な独裁者に過ぎない.彼らは怒り,弱っている.アメリカの世界支配がもたらす「衝撃と恐怖」は,日々,無能さと失態をさらけ出す.ハリデーは,完全な崩壊と過激派の支配を避ける唯一の希望は,国連のブラヒミが指揮することだ,という.しかし,今でもアメリカ政府が国連の言うことを聞くかどうか,疑わしい.

同盟国の助けを受けず,国際法も無視して,アメリカの完全なヘゲモニーを得たい,というネオコンの夢は,好ましくもないし,可能でもなかった.それは世界中の反米勢力を急激に増やした.しかし,このままイラクが溶解するという結果は,世界にとって悪夢である.アメリカが孤立主義に戻っても,答えにならない.アメリカは唯一の超大国であり,国連も世界も,たとえば今のスーダンのように,人道的な介入を必要としている.

たとえ多くの改革が必要としても,国連があり,ブラヒミこそがイラクの最善の解決策だ.もしトニー・ブレアがまだ何かイラクの大失敗に改善できる余地を残すとすれば,それは6月末の権力委譲により,ブッシュが国連に主導権を委ねるよう,強く求めることだ.国連の指揮下において,トルコやアラブ諸国も参加した占領統治を再建する.すべての捕虜は国連に委ね,国際法の下に措く.さもなければ,イギリスも他のヨーロッパ諸国に続いて,撤退する.


WP Friday, May 7, 2004

Abu Ghraib as Symbol

By Charles Krauthammer

(コメント) アブ・グレイブの虐待は,信仰やイデオロギー,権力,占領を示すだけでなく,もう一つの重要なテーマを示している,とKrauthammerは考えます.それは,SEX,です.イスラム過激派のもたらす世界は,一つの重要な意味で,男性が女性を支配する世界です.アフガニスタンでタリバンが実現したように,女性は隷属し,学校にも行けません.これに対して,アメリカ軍やイスラエルがアラブ世界で実現するのは,自由な女性,です.女性たちは美しく着飾り,化粧をし,男性に従わず,Sexを楽しみます.アメリカ軍の制服を着た女性が,裸にされたイラク人の男たちを隷属させ,辱める虐待写真は,イスラム原理主義者たちが最も嫌う世界です.

Krauthammerは,こうした行為がわれわれの社会の権利を損ない,法によって裁かれることを求めます.しかし,同時に,サダム・フセインが行ってきた残虐行為や,これまでの戦争が示した破壊や人権無視とは比べ者にならないし,アラブ社会が許している女性の隷属を基準として非難し,裁くべきではない,と主張します.

BG May 9, 2004

Power turns good soldiers into 'bad apples'

By Philip G. Zimbardo

(コメント) スタンフォード大学で行われた刑務所実験(the Stanford Prison Experiment)について,心理学者が述べています.すなわち,状況によって,人間は規則や道徳的規範を容易に失い,虐待行為に耽るものです.アブ・グレイブで虐待を行ったのは,一部の腐った兵士ではなく,むしろ彼らの置かれた状況が彼らを腐らせたのだ,と.

その破滅的な影響は,2週間の計画を6日間で打ち切ったほどでした.無力な囚人たちに対して,普通の善良な学生たちが道徳的な破綻を示しました.精神的に健全で,価値観のしっかりした若者が選抜されたのに,囚人に対しては,良心の呵責を感じない,サディスティックな看守と化しました.そして個人的には囚人たちを貶めないような「良い看守」たちも,腐敗が追究されないとわかっていれば,その最悪の仲間にも反対しようとしませんでした.

実験で看守たちが行った虐待は,アブ・グレイブとそっくりです.囚人たちを裸にし,フードを被せ,鎖で繋ぎ,食事を与えず,睡眠を奪い,独房に入れ,素手でトイレを洗わせました.職務が退屈になるほど,彼らは囚人たちをおもちゃにし,虐待行為で遊びます.時とともに行為はSexを意味し,たとえば囚人たちに同性愛を強要します.そのような逸脱が判明したとき,「スタンフォード刑務所」は閉鎖されたのです.

人間の行動は,私たちが思っているより,はるかに状況に支配されます.責任が曖昧で,誰がやったか分からないような状況で,非人間的な,有害な行為を率先する仲間がいる一方で,傍観者たちは干渉しない,権力関係の浸透した状況で,特に人間のマイナス面が現れます.さらにイラクでは,秘密,無責任,命令系統の混乱,矛盾した要求,規則の不備,拘留者の意志を挫くことへの奨励,注意しようとしない傍観者ばかりでした.

アメリカの傲慢さは再考されるべきでしょう.さもなければ,若者たちの道徳が破壊されるからです.戦争というボトルに酔うことは,こうした腐敗や虐待,邪悪さのビネガーを溢れさせます.


FT May 9 2004

We need more globalisation

By Martin Wolf

(コメント) Wolfは,新著Why Globalization Works, Yale University Pressで,グローバリゼーションの成果を高く評価し,その拡大を支持します.問題があるとすれば,それは各国政府の方であり,ばらばらな世界政治と無力な国際機関の側です.グローバリゼーションについて,彼は10の命題を要約します.

1.         世界市場経済が,人類の生活を改善する,唯一の可能な答えである.

2.         個々の国家が,今も,政治論争と正当性の焦点である.超国家機関ではない.

3.         国際条約に参加し,国際レジームが公共財を供給することは,世界各国と市民すべてにとっての利益になる.開かれた市場,環境保護,国際衛生,など.

4.         そのようなレジーム(国際体制)は,特殊なテーマに限定されるべきだ.しかし,実行のための強制手段を必要とする.

5.         WTOは成功例であるが,すでにテーマを広げすぎている.

6.         レジームは,すべての国が参加するより,少数の国で,高い基準を示す方が良い.

7.         世界金融市場に参加することは,長期的に見れば,すべての国の利益になる.しかし,各国は正しい為替レート制度(それは変動レートであることが多い)を知るべきだし,健全な,適切に規制された金融システムを整備しなければならない.

8.         世界の最後の貸し手が存在しない以上,繋ぎ融資や債務の組替交渉が必要である.

9.         開発援助は,それだけで貧困が解消できるわけではないが,もっと必要だ.正しい政策を行う政府に対して,しかし,彼らが国民から必要な財源を確保しなければならない程度に.

10.      国家が完全に破綻したとき,世界社会(the global community)は有効な介入を行う能力と意志をもたねばならない.

Wolfが考えていることは,グローバリゼーションにふさわしい政治システムの実現可能性です.彼は,それが世界国家や超国家機関ではない,と言います.実際には,世界はますます統合化しながら,政治的には分裂しています.世界の貧富の格差は,グローバリゼーションによって生じているのではなく,その富の可能性を実現できる政府と,失敗する政府との差によって,生じている,と主張します.それは,貧困と政府システムの腐敗とが悪循環を成すからです.

なぜアメリカは豊かで,ナイジェリアは貧しいのか? 豊かな自然資源があることは,しばしば労働や努力に応じた報酬メカニズムを破壊し,政治システムを腐敗させます.市民と政治システムに関する社会契約の質を高めることが,持続的な富をもたらす条件です.

Wolfは,また,EUとUSとを比較します.EUのように,法的な統合化を先行させて,物や人の移動を自由に行うことは,貧困を解消する一つの方法です.そして,もしそれが成長をもたらす素晴らしい条件であれば,なぜ世界は一つの国のように,財や資本,労働者の自由な移動によって富を分かち合えないのでしょうか? そこでは,世界が一つの連邦国家として,すべての市民に等しい投票権を与えている.

しかし,財源は発言と切り離せず,豊かな国は世界の財源と政治システムを握っていて,これを離そうとしません.彼らは援助を自国内に集中し,自由貿易を歪め,資本自由化を優先し,特に,大規模な移民を拒否します.国際機関が平等な国際ルールを決めて強制することなど許しません.さらに,公共財の供給には,世界の政治的分裂が「フリー・ライダー」による障害を増やします.ある国が公共財を供給するコストを負担しても,その利益の多くは何もしない他国によって享受されてしまうのです.

Wolfにとって,グローバリゼーションに対抗する幻術・呪術者たちの言葉は虚妄です.グローバリゼーションが,確実に,世界を住みよい場所に変えるためには,@市場の力をどのように利用するのか? A国際機関をどのように利用するのか? B国民国家の主権をどのように制限し,世界の政治的統合を促すのか? に答えることが重要です.


May 9 (Bloomberg)

Japan Faces Key Choices on Monetary Policy

David DeRosa

FT May 10 2004

Japan needs creative strategy

By Haruhiko Kuroda

(コメント) DeRosaは,日本の金融政策や為替政策を,まったくの市場に対する間違った反応だと考えているようです.黒田氏はどうでしょうか?

デフレを終わらせるために,株価の上昇や景気対策が必要であり,そのためには円安がともかく必要であった,と説明されているようです.日銀と財務省は協力し,金融の量的緩和をさらに拡大しながら,巨額の円売りドル買い介入を行いました.すなわち,不胎化されない介入を続ける政治的意志を,市場に示したわけです.

そのような説明で,DeRosaは納得したでしょうか? ドル暴落を救うため? アメリカの「双子の赤字」が心配だ? 本当に・・・? 世界の金融市場参加者は,日本の説明を言い訳だと思うかもしれません.不胎化されない介入による円安で景気を刺激できる時期は限られます.アメリカが日本よりも急速に成長するとき,日本は輸出を増やしても政治的に無視してもらえます.日本における量的緩和と為替介入の副作用も,これから問題になるでしょう.


NYT May 12, 2004

The Mixed-Up Politics of the Deficit

By ROBERT B. REICH

BG May 12, 2004

What Greenspan won't admit about deficit

By Robert Kuttner

(コメント) 今年のアメリカ財政赤字は5210億ドル,GDPの4.2%という記録的水準に達すると予測されています.でも,なぜか長期金利はそれほど上昇しません.なぜか? 多分,債券トレーダーには共和党支持者が多いから? それよりまともな理由を,REICHは,政党の役割が交代した,と考えます.

どれほど共和党が財政赤字を出しても,次の民主党政権がそれを解消してくれる,と市場は期待しているのです.それは,クリントン政権が成功したことです.当時,レーガン政権が残した巨額の財政赤字を,緊縮財政と増税で解消するとクリントンは主張しました.そして,実際,財政赤字の減少が金利を引き下げ,好景気によって財政を黒字にしたのです.債券市場はこれを覚えています.

しかし,なぜ共和党が財政赤字を放置し,民主党が緊縮財政を採れるのか? それはニクソンによる中国との国交回復と同じ論理だ,とREICHは言います.ニクソンほど強硬な保守派はいないから,彼が中国を訪問しても,それでアメリカが共産主義に屈するとは誰も思わないのです.同様に,共和党が財政赤字を増やしても,民主党が緊縮財政を強いても,彼らを批判する勢力は反対派にいません.

ケリーが約束する財政均衡化の公約も,結局,今のブッシュ政権を助けているだけかもしれない,というわけです.

Kuttnerは,財政赤字の別の側面を問題にしています.投資銀行家で財政赤字を非難していたS.フリードマンや,FRB議長として金融秩序を守るべきA.グリーンスパン,ハーヴァード大学教授で,ベストセラーになったテキストの著者でもあるG.マンキューが,ブッシュ政権の大型減税や戦争,減税の恒久化に従ったのはなぜでしょうか? また,財政赤字は,その規模だけでなく,まともな公共支出を増やすことと,一握りの富裕層に減税することの,違いを無視しては議論できないはずだ,と.


NYT May 11, 2004

Rumsfeld Should Stay

By WILLIAM SAFIRE

(コメント) ラムズフェルドを支持する意見です.なぜか? 彼は虐待を知らなかった.タクバ報告も最後になって見た.彼は囚人の人権を主張していた.彼は政権の中枢であり,テロとの戦いを進める象徴だ.戦争において情報を集める作業には困難が伴い,要するに,戦場での例外的な事態だ.


WP Monday, May 10, 2004

For a 'New Imperialism'

By Sebastian Mallaby

FT May 11 2004

Martin Wolf: Bush is not up to the job

By Martin Wolf

May 12 (Bloomberg)

States May Bear Brunt of `New Imperialism' Costs

Joe Mysak

(コメント) 反米主義は栄え,テロリストの巣窟は減らず,破綻国家が世界に広がる.戦争はますます増えるだろう.すると,「新しい帝国主義」が必要になる.アメリカは国際的な軍事介入に協力せざるを得ないが,その場合,国際機関がそれを承認し,支持しなければならない,と.

他方,Wolfは,この複雑な世界で,外交政策を単純化したブッシュ氏とそのスタッフを批判します.戦争は何によって賄われるのか? Mysakは選挙の前に有権者たちが熟考するよう求めます.それは学校や医療保険を切り捨てることではないでしょうか? アメリカ人はセキュリティーが好きだが,安全保障を求めた結果,社会保障を失う,というNiall Fergusonの研究を紹介します.結局,帝国の辺境に向かうアメリカ人など居なくなる,と.


FT May 11 2004

New states should beware the lure of the euro

By Niall Ferguson

(コメント) 新加盟諸国は,ユーロを自国通貨として採用すべきでしょうか? それは,かつての東西ドイツ統合問題を思い出させます.

ユーロを採用した方が取引コストが削減でき,改革を大いに助け,貿易や投資が増えるのではないか,と思うはずです.IMFの研究は,新しく市場を開放する,こうした小さな国の経済にとって,変動レートの利益は限られており,むしろ変動レートが供給ショックを需要水準の霍乱に拡大する,と判断します.

しかし問題は,第二世代のユーロ採用諸国として,先にユーロに加盟した諸国と同じ条件を,一定期間,ユーロに対して独立に満たすべきだ,と求められていることです.こうした変動幅を限定した為替レートを維持する危険はイギリスが既に1992年に味わっています.しかも,当時のイギリスの為替市場より,彼らの市場はもっと小さいのです.

ソ連の計画経済から,マーストリヒトの管理協定へ移行することが,彼らにとってどのような意味を持つか,まだ分かりません.インフレ抑制,財政赤字と国債発行残高の抑制,それらが生産性の大幅な格差を前提に求められます.今は,それが低賃金や免税措置で相殺されています.しかし,EU加盟によってそのような措置を封じられ,為替レートによる調整も,財政支出やインフレによる救済も無いまま,失業と賃金低下だけに頼って調整できるでしょうか? 旧加盟諸国が恐れるのは失業者の流出です.しかし,新加盟国が恐れるのは深刻な社会・政治不安でしょう.

東西ドイツ統合が,はるかに少ない財政移転と移民によって進められた場合の混乱を,私たちは予期しなければならない,と.


FT May 11 2004

China is hot, but not overheated

Fred Hu

(コメント) 中国経済は過熱しており,金融を引き締めるべきだ,という主張を,単純すぎる,と批判しています.その理由は,@構造改革や世界市場への開放で,中国の潜在的な成長力はもっと高まっている.Aデフレよりも,この程度のインフレ(3〜5%まで)が好ましい.B資産市場のインフレも経済全体には拡大していない.C人民元は,まだ,むしろ過小評価されている.D初めて財政赤字を出したが,問題にならない.E経常収支は黒字である.F国内需要が生産を超過しても,輸入によって緩和できる.G国内貯蓄も資本流入もまだ続く.H東南アジアのような短期債務に頼っていない.I労働市場はまだまだ弛緩している,などです.成長を管理する問題はあるが,バブル崩壊の懸念は誇張である,と.


FT May 11 2004

Lex: Emerging market bonds

May 12 (Bloomberg)

Asia's Fortunes Rise Along With U.S. Dollar

William Pesek Jr.

(コメント) アメリカの金利が上昇すれば,アジアを含めた新興市場債券は暴落するのでしょうか? そうでもない,とFTは考えます.新興市場に流入する資本の持ち手は,短期的な投機的性格の資本から,長期的な機関投資家に変わっているからです.一時的な後退は起きても,彼らの長期的な需要は変わらない,と.

金利の上昇とドル安が,アジア経済の低迷と通貨危機を連想させるのは,確かに一時的には当然です.輸出や短期の資本流入に依存した経済であれば,自国の通貨が増価するのを嫌うのです.しかし,長期的に見れば,アジア経済が成長するにつれて,所得水準が上がり,産業構造も高度化します.輸出に依存せずに,国内需要が十分な成長を実現できるようになるでしょう.

通貨を安く維持することは,長期的に見て,目減りする外貨準備を溜め込むだけでなく,国内の金融緩和を放置し,インフレやバブルのもたらす混乱を処理しなければなりません.金利の上昇やドル安は,アジアがアメリカ市場への依存から自律するための必要な調整過程を促すはずです.それができなかった国だけ,再び,輸出に頼って回復するしかないわけです.他のどの国よりも,日本について言われているような解説です.


May 11 (Bloomberg)

Is East Asian Currency a Pipe Dream?

Andy Mukherjee

(コメント) ユーロの誕生に学ぶなら,アジアが共通して単一通貨を使用する日も来るだろうか? そのような意見もあるが,実現までには時間がかかる,とMukherjeeは考えます.

単一通貨の根拠は明快です.@アジア諸国の貿易や投資が,アメリカの政策変更によって影響を受けなくなる.A商品の価格を比較しやすくなって,アジア諸国間の貿易や投資が増える.B人や技術の移動,制度の構築も容易になる.などです.アジアは世界の成長地域であり,その保有する外貨準備の規模は投機的な攻撃も寄せ付けないでしょう.

他方で,アジアがヨーロッパのような安定化協定を結ぶこと,フィリピンのような財政破綻に近い国や,ミャンマーのような世界でも特に貧しい独裁国家から,日本のような発達した工業国まで,同じ政策を採用すること,共通の通貨を運営する政治的な統一を欠いていること,などは,実現する時期を途方も無い将来の話にするでしょう.

ベンジャミン・コーエンは “The Future of Money” の中で,グローバリゼーションが世界の通貨を減らすよりも,増やしてきたことに注目します.すなわち,グローバリゼーションの中でも,各国政府は自国の通貨発行による財源確保という便利な手段を決して手放そうとしない,ということです.しかし,黒田東彦氏が指摘するように,通貨統合は政策的な協調の結果として実現するものです.アジアは,そうした手段を育てようとしています.

投機的な攻撃に対して日本,中国,韓国がアセアン諸国にも外貨を融資し,さらには外貨準備を他国に預金したり,長期の債券市場を育成したりしています.とはいえ,ヨーロッパが新規加盟諸国にユーロを拒んだことは,アジア通貨への情熱も冷ましたはずです.


FT May 12 2004

Transfer power in Iraq to UN and Nato

By Ivo Daalder and Anthony Lake

(コメント) 国内政治に支配されたイラクの占領政策,囚人の法的な保護を無視できるとした決定,それらがことごとく大きな間違いをもたらし,アメリカの信用を損ないました.今後,アメリカ軍が撤退することにより,政権移譲後にも無秩序を拡大しないためには,6月末の政権移譲とその後の選挙活動のために安全を確保するため,アメリカ政府ではなく,国連の支配と,NATO軍の展開を要請するべきだ,と主張しています.


The Guardian, Wednesday May 12, 2004

Farming is not like any old business

Colin Tudge

遺伝子組み替え作物(GMフーズ)は,もし飢餓を減らし,雇用を増やし,環境を守るために使用されれば,素晴らしい技術である.しかし,そのような政策は存在していない.GMフーズは,他のすべての商品と同じように,利潤をもたらすビジネスだ.科学者や政治家は,GMフーズが利潤を増やすことを良いことだと言う.なぜなら飢饉で苦しむ人々が居り,2050年までに50%も,すなわち約9億人も増えるから.

しかし,飢饉は食糧生産が不足しているから起きるのではない.1840年代のアイルランドでも,最近のアルゼンチンでも,その背景には常に内戦や政治的腐敗があり,豊作にもかかわらず大量の食糧が輸出されて飢餓が生じる.短期的には,生産増が供給過剰と価格の暴落をもたらす.たとえば,コーヒー価格は5年間で70%も下落した.世界人口は2050年でほぼ安定し,増産を煽る必要はない.むしろ,世界の家畜が膨大な穀物を消費している.むしろ,肉を食べるのを減らせば良い.

ビジネスとしての農業は,危険なことに,コストの削減を求める.他の家畜を安く飼料に使ったことが,BSEを引き起こした.さらに,コスト削減は,伝統的な雇用吸収分野としての,農業から雇用を失わせる.第二次世界大戦後,20%だったイギリスの農業従事者は,今や1%ちょっとだ.口蹄疫は,人手を減らして家畜の世話ができないことから生じた.

イギリスで農民が減ることも間違っているが,発展途上諸国では人口の60%が農民である.農業の世界ビジネスが,インドの6億もの農民からも職を奪うだろう.すなわち農業の工業化は,コストを削減し,利益を増やす.そして,5億人が失業する.インドで大成功していると言うIT部門でも,その雇用は10万人に過ぎない.農業をもし単なるビジネスと見れば,土地にはもっと少ない人口しか必要ない.

その呪文を信じて,イギリスから農業は一掃される.なぜなら,世界からもっと安い農産物が買えるから.炭鉱を捨てたように,農業も辞めてしまえば良い? もちろんだ.しかし,炭鉱は所詮,貧しい鉱夫たちだけの問題であった.農業は違う.もっと影響力のある上流階層が反対する.こうして,経済原理に反して,農場の継続についてイギリス政府は悩み続ける.

GMフーズは,生産を単純化する.病気に強く,他の作物と輪作や休耕の必要が無い.放っておいても良く育ち,利益を増やす.それは世界の富をますます少数者の手に集めるだろう.伝統的な作物は,農民たちに自律性を与えた.もし世界がGMフーズを採用すれば,農民たちは農業技術を介して,少数のハイテク管理会社に支配される.政府は何も答えられない.

社会,経済,政治的な,根本的見直しが必要だ.そうでなければ,GMフーズは世界を豊かにできない.


FT May 13 2004

Philip Stephens: The looming catastrophe

By Philip Stephens

(コメント) トニー・ブレアは10月に政権を失い,ジョージ・ブッシュも11月に敗北する.ジョン・ケリー大統領とゴードン・ブラウン首相は米英軍を急遽引き上げることに合意し,混乱するイラクは内戦の中に見捨てられる.サウジ・アラビアではイスラム原理主義の攻撃で王制が崩壊する.石油価格はばれる60ドルに急騰し,世界経済をスタグフレーションが襲う.アメリカはますます孤立し,孤立主義を強め,グローバリゼーションが世界を保護主義に転換する・・・

そんな予測が,たとえ起こりそうに無いとしても,可能性を示す現状では,アメリカが現地政府に治安を委ねることや,国際会議を開いて国連に主導権を譲ることが,もっと真剣に議論されても良さそうです.しかし,ワシントンでは少数派の意見です.

アメリカがもっと憎まれて,最後に敗走するしかなくなったとき,皮肉なことに,イラクの愛国者たちは宗派や民族を超えて政治的統一を実現し,世界はアメリカの孤立主義を回避するために,その超大国の地位を尊重するようになるかもしれない・・・  可能性としては.

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The Economist, May 1st 2004

Is California back?

In need of a makeover: A survey of California

(コメント) カリフォルニアと,イラクと,日本とを比べたとき,どこが最初に混乱から抜け出すでしょうか? また,それはなぜでしょうか?

その太平洋に面した,800マイルの砂漠へ,1848年に金が見つかって以来,人々は何度も押し寄せました.石油,映画,航空機,宇宙ロケット,半導体,コンピューター,バイオテクノロジー,ナノテクノロジー,・・・ トップレスのショーガール,チョコレート・ズッキーニ・ケーキ,科学教会,など,など.

民間企業の奇跡により,その土地は2002年に3500万人の人口を抱え,1兆4000億ドルのGDPを生み出しています.カリフォルニアは,中国を抑えて,世界第6位の経済圏です.LA Countyだけでも,ロシアを抑えて,世界第16位です.

日本よりもイラクは国内に多くの差異を抱え,統治が困難です.しかし,カリフォルニアはもっと多くの,途方も無い差異を抱えています.統治が困難でないわけがないのです.それでも市民たちが良質の統治を実現できるとしたら,何が違うのでしょうか? 良い学校教育,活発な民間経済,そして,シュワルツネッガー?


EU enlargement: Something to celebrate

The future of Europe: A club in need of a new vision

(コメント) The Economistは,EU拡大を賞賛します.特に,新加盟諸国がEUの理想に,新しい活力をもたらすように,と願っています.EUの旧加盟諸国,特に独仏の目指す政治統合,EU憲章には反対です.そしてマーストリヒト,移民規制,保護と補助金,などが,新加盟諸国によって糾弾されることを望みます.もう一つの統合モデルを目指すべきだろう,と.


Mobile telecoms: Why phones are replacing cars

Mobile phones: Battling for the palm of your hand

(コメント) 携帯電話の爆発は,何を意味するか? それは,世界を自動車産業に代わって,改造する,とThe Economistは予想します.携帯電話は,情報産業と,家電産業と,発展途上諸国の生産拠点を繋ぐグローバリゼーションが,一つに合体した産業です.もはや携帯電話会社というものに止まりません.

携帯電話は,豊かな国の若者と発展途上諸国の世界市場を捉えて,爆発的に伸び続けています.The Economistは,携帯電話がPCのように,ウィンドウズやインテルの独占市場にはなる,とは考えません.また,台湾や中国の製造業に吸収されてしまう,とも考えません.

それが,環境を守り,市場による競争型のグローバリゼーションを完成させる点で,The Economistの志向にぴったり一致したことは明らかです.世界は,自動車でも,石油でも,EUでもなく,携帯電話が作り変える,と.


The problems with Kerrynomics

Panama and its canal: Manifest destiny meets democracy

Banking in South-East Asia: Recuperating

(コメント) ケリーの公約を支える経済学は疑わしい.パナマの将来は運河で決まる.東南アジアの銀行部門改革は政府介入によって進んではいない.

特に興味深いのは,パナマです.パナマ運河が拡張されれば,世界の船舶がその建造規格を変えるでしょう.パナマ運河を通過できるか,できないか,が重要だからです.アメリカ政府はパナマ運河をなかなか手放しませんでした.漸くそれをパナマ政府に委ねたか,と言えば,そうでもありません.運河は独立の機関が運営し,パナマの政治や財政と切り離されています.

・・・切り離す? しかし,選挙が近付けば,パナマの財政支出と運河の拡張工事に必要な資本調達,住民の立ち退きに必要な補償,などが問題になります.グローバリゼーションと民主主義は,それほど相性が良くない,と分かります.