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IPEのタネ 5/17/2004
政治は,社会的な可能性の選択過程です.その目標は,支配者もしくは人々の幸福であり,その手段は,軍隊もしくは言葉=演説です.優れた政治家は,その行動のエネルギーを,国民の富と情念から引き出します.普通の人間にも,どれほど破滅的な情念が満ちているか,一つの論説(Zimbardo, “Power turns good soldiers into 'bad apples'”)が印象的に示しています.
年金の未払い問題で,本当に,管直人氏が民主党の代表を辞める必要はあったのでしょうか? 私は,無かったと思います.しかし,民主党の内部をまとめきれず,代表辞任の要求に三党合意でしか応じられなかったときに,次の選挙の争点を見誤ったように思います.
小泉首相も,年金の未加入?問題だけで辞める必要は無いでしょう.しかし,未納問題を争点として受入れ,法案の修正に応じる姿勢はありませんでした.むしろ法案を通過させるために公表を遅らせ,北朝鮮再訪を自分の責任を逃れる材料として利用したのではないか,と疑いを招いた点で,日本の政治を誤らせたと思います.まるで信頼されない,こんな年金を,誰が支払うのか?
もし政治家が,未納問題にもかかわらず,年金制度の一元化と,透明で公平な負担を実現することに真剣に取り組む,と約束したなら,国民はそれを支持するでしょう.そして,未納について反省したような言辞を弄するだけでなく,政治家たちが具体的な改革にむけて競争するなら,次の年金制度は国民をより満足させたはずです.こうした論争と改革を指導できる新しい政治家が,派閥の駆け引きや官僚の思惑を超えて,国民の前へ次々と現れてほしいです.
カリフォルニアの仮装行列,と揶揄された州知事選挙が,実績のあった民主党のデイヴィスではなく,財政赤字の始末ができないで紛糾した議会を一掃できるターミネーターとして,オーストリア訛りの英語を話す,ケネディー家と結婚して野心剥き出しの,アーノルド・シュワルツネッガーを選出したとき,またアメリカの大衆迎合政治は,レーガン待望論や,ハリウッド映画,TVコマーシャルの影響で,愚かな選択をしたのだろう,などと思いました.関西人なら,横山ノックや江本猛紀,西川きよし,を思うはずです.
自衛隊だけで,イラク人の共感を得ることは難しいでしょう.日本企業が来て,雇用を増やしてほしい,と彼らは考えます.「どうしても,イラクの人を嫌いになれない.」 解放後,高遠さんはそう言いました.日本政府は和製シュワルツネッガーを探すより,彼女にイラク人の心を掴んでもらってはどうでしょうか? 自衛隊のイラク駐留経費や政府援助の1%を使って,住民に役立つプロジェクトを探し,その実施を監督してもらうのです.彼女が助けたかった子供たちや,彼女の傷ついた心にも,将来の希望を見つけてもらうために.
アブ・グレイブ刑務所の虐待や虐殺を指揮し,多くの写真や映像を残した兵士や諜報機関は,狂気に駆られたのでなければ,何を考えていたのか? 捕虜たちに精神的なダメージを与えて,その信仰や自尊心を破壊し,組織的な洗脳を解いて,自白と服従を強要するためであったかもしれません.虐待を全員に行わなくても,その映像を繰り返し見せることで,同じ効果を得ようとしたわけです.戦争やテロ防止において,どのような手段まで許されているのか,彼らを監督する基準が必要でした.
北朝鮮の金正日が築いた収容所群島は,今も,私たちのすぐ隣にあります.小泉氏の北朝鮮再訪が注目されていますが,彼は何を話し合うのでしょうか? 独裁者との戦争と交渉がどのように違うのか,アメリカのユニラテラリズムと東アジアの多角主義がどのように違うのか,アメリカ(イラク,メキシコ),EU(東欧),中国(香港,台湾,北朝鮮),などが関与する体制転換はどのように違うのか,それは私たちにとって死活問題です.正しい答えが誰にも分からない,非常に困難な選択に直面して,小泉氏や独裁者たちの政治判断とパフォーマンス(演出)が,今後,何十年も,日本の将来を制約します.
もちろん,年金改革やイラクの自衛隊,あるいは金融危機から,小泉政権が倒れ,他の誰かが異なった将来を選択するかもしれません.それは民主党政府でしょうか? もしかすると,小沢首相?(その後,辞退) 自民党の青木氏が述べたように,来年の今ごろには,民主党などなくなっている? なるほど,イラクでも日本でも,選挙に有効な政治システムが構築されるのをもっと助けるべきだ,と思いました.
ゼミのプロファイリングをしたい,と求められて,私のモットーを作りました.「合理的で,理想的な社会は,実現できる.」 私は,昆虫採集のように標本を集めて,直感を整理します.
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