IPEの果樹園2004

今週のReview

5/3-5/8

IPEのタネ

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世界の英字紙からコラムを紹介します.私が選んだ論説の内容を,かなり自由に要約し(全訳に近いものもあります),そこには自分の意見も含まれています.利用する場合は,それぞれの出典を自分で確認してください.なお著作権は,それぞれ,元の著作権に従うものと考えます.

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三つだけ推奨するとしたら?

1.   グローバリゼーションとアウトソーシング:グローバリゼーションがアメリカで得た汚名である「アウトソーシング」.これは一体どうしたものか?

2.   日本の景気回復・・・「玉に傷」:景気回復? いいじゃない.でも,回復したら困る人だっているのか?

3.   EU拡大の希望よりも不安?:どこまで膨張するのか? あるいは,経済的にも政治的にも,これで健全なヨーロッパが誕生するの・・・?

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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times


NYT April 22, 2004

Marking Earth Day Inc.

By GEOFFREY JOHNSON

NYT April 22, 2004

Bright Spots in the Rain Forest

By BRIAN KELLY and MARK LONDON

(コメント) 地球環境を考える日Earth Day 2004は,石油会社や木材伐採業者,化学処理された「自然」を売るコーヒー会社に身売りされてしまった,とJOHNSONは苦悩します.The timber company, Marathon Oil, ChevronTexaco, Wal-Mart, Pacific Gas and Electric, Starbucks, British Petroleum, など,彼らは同時にさまざまな自然破壊に関与し,訴訟を受けながら,消費者には「自然にやさしい」自分たちの企業イメージを熱心に広告します.

スポンサーとしてお金を出してくれるのだから,それでいいじゃないか? と思う人も多いでしょう.しかし,彼らの本当の狙いは,法的な規制が不要である,と市民に思わせることです.法律ではなく,企業の方が環境を上手く護っている,と人々が信じるなら,企業が訴訟に苦しむことも減るでしょう.また,本当に環境を護ろうとする団体や企業を,フォーマルな環境保護運動や市場から締め出すような,暗黙の「選別」を,政府・公共団体や主催者が行うかもしれません.

KELLY and LONDONは,豊かな諸国や国際機関の,現実を無視した,身勝手な環境保護を批判します.「アマゾンの熱帯雨林を護れ!」と,いくら世界が叫んでも,昨年,焼失した森林面積は,ニュー・ジャージー州よりも大きい,記録的水準に達しています.

アマゾン南部のMato Grosso州知事で,大豆の大農場を所有するBlairo Maggiは,ヨーロッパ人やアメリカ人は,「木を切られれば悲鳴を上げるが,子供が死んでも,学校に行けなくても,気にしない」と不満を示します.スラムから抜け出して,より良い生活を求め,ジャングルで焼畑をする貧しい人々に,「森林を焼かずに,スラムに戻れ!」と言えるでしょうか?

アマゾンの利用は,無秩序に行われるべきではありません.しかし,KELLY and LONDONは,アマゾンがもはや開発不可能な土地ではなく,条件によっては開発の豊かな可能性を示している点に注目します.すなわち,環境保護は開発阻止ではなく,条件にあった開発の促進であるべきだ,と.それゆえ,アマゾン流域の60〜70%は開発に適さないか,生物種の保存のために貴重であるから,開発しない土地であり,その他の土地は耕作や資源採取,養殖,発電などのために利用するべきだ,と主張します.

なるほど,環境保護だけを,あるいは,アマゾンだけを,他の問題から切り離して議論することはできない,と思いました.


NYT April 22, 2004

A World Bank Mission to Bring Help to the Poor

By ELIZABETH BECKER

WP Friday, April 23, 2004

Good News on Development

NYT April 24, 2004

World Bank Meeting to Focus on Poverty

By ELIZABETH BECKER

(コメント) 世界の貧困をめぐる,もう一つの政府として,世界銀行とその総裁Wolfensohnは資金を調達し,開発計画に投資し,関係する諸政府(アメリカ,貧困諸国,富裕諸国)を説得します.そのためにWolfensohnは,成功した投資銀行家であり,オーストラリア生まれの現在はアメリカ市民であり,フランス語が完璧で,世界銀行から汚職を追放し,世界の貧困と戦う開発融資に強い使命感を持ち,世界銀行そのものを変革して,街頭で激しい抗議を受けながらも,NGOsと対話し,さまざまな新しい融資を行いました.

しかし,クリントン政権に指名されたWolfensohnが三期目の使命を受ける可能性は,ブッシュ氏が再選された場合,無いようです.彼がモデルとするマクナマラ総裁は,他方で,国務長官としてヴェトナム戦争にも巨額の投資を行いました.テロとの戦いにこそ貧困の解消が不可欠である,と訴えて,世界の投資配分を変えるように説得しますが,ブッシュ政権を支えるイデオロギーからすれば,余計な人物かもしれません.

IMF・世銀総会は,国際銀行家と反グローバリゼーション運動家たちの年中行事となっています.それは,「不幸な誕生日」のように,毎年,多くの人々を招き寄せます.しかし,今年の総会には反対派の抗議が目立って少なく,静かだった,ということが逆にニュースになります.

実際,世界の貧困は大きく減少した,とWPは賞賛します.そして,裕福な諸国がグロテスクな農業保護に3000億ドル以上も支出する一方で,テロとの戦いを理由に,ようやく世界の援助額が500億ドルから580億ドルに増えたことを悲観するより,世界の貧困がアジアを中心に大きく減少したことに注目します.すなわち,一日1ドル以下の生活をする人々の数が,世銀統計で,1990年には世界人口の28%であったが,2001年には21%に減った,と.しかし,東アジアでは30%から16%に減りながら,アフリカでは41%から46%に増加した,という数字に何を見るべきでしょうか.中東,東欧の移行経済,ラテン・アメリカ,中央アメリカでも貧困は悪化しています.

政府の建物,高速道路や空港・港湾整備だけでなく,貧しい地域の教育や医療への投資をもっと重視したい,と世界銀行は投資の増額を訴えます.


WP Thursday, April 22, 2004

The West's Mideast Divide

By Jim Hoagland

FT April 25 2004

The futility of 'targeted killings'

By Lawrence Freedman

LAT April 25, 2004

Sell It Softly

By Joseph S. Nye Jr.

WP Wednesday, April 28, 2004

A Start on Democracy

(コメント) 答えの無いクイズ,と,答えるまでも無いクイズ.

ブッシュ大統領がシャロン首相をホワイト・ハウスで歓待した後,イスラエルはハマスの新しい指導者Abdel Aziz Rantisiを殺害しました.一体,彼らは何を相談していたのか?

暗殺事件後,OECDは,アメリカがイスラエルの加盟を支持し,EU諸国がこれに反対して,紛糾しています.他方,なぜ中国やインドは加盟しないのでしょうか?

イラクについては国連を賞賛し,多角主義を唱えるケリー氏も,イスラエル支持ではブッシュ氏に賛同します.イラクより,イスラエルが占領地で民主的な選挙を行えば,平和的に権力を移譲できるのではないでしょうか?

政治指導者を標的にした暗殺が容易になれば,戦争や内戦は必要なくなる? テロを終わらせるための暗殺,民主主義を確立するための暗殺,市場経済による繁栄をもたらす暗殺.すべてが,今の世界では正当化されるのでしょうか?

イスラエル政府が暗殺を行えば非難されます.しかし,アメリカ政府がサダム・フセインやビン・ラディンをあからさまに殺害することを目標にしても非難されないのはなぜでしょうか?

暗殺が公然と行われる世界では,むしろヒトラーやスターリン,サダム・フセインが長生きし,リンカーンやマハトマ・ガンジー,マーチン・ルーサー・キング牧師は早死にするのでは?

暗殺者は,政治システムを葬るために自爆テロを行ったのではなかったか? 彼らは,平和と統合を民衆に訴えかける表の政治世界から姿を消します.そして,報復と殲滅のレトリックを撒き散らし,憎悪の火をつけながら町をねり歩く,独裁者に心酔した特殊な親衛隊となります.

軍事力や敵対者を殺害する能力は,この複雑な社会を動かすのに適当な手段でしょうか? 政治は,軍事的に脅迫・強制するか,経済的に代償・報酬を支払うか,道徳的・規範的に説得・命令するか,を選択するはずです.

誘導ミサイルによる暗殺政治の次は,イデオローグ放送・出版による宣伝政治でしょうか? 肉体を抹殺するより,精神を抹殺する方が容易である,または,有益であると言えるでしょうか?

軍隊や警察を移植するのではなく,小学校から大学まで,アメリカが建てて,生徒から教員まで,留学させる制度の誕生です.しかし,それもペンタゴンが指揮するのでしょうか?

あるいは,それらをアメリカに代わってG8が指導するべきでしょうか? 世界の賢人会議が委託されるべきでしょうか? 貧しい村や町から代表を募るべきでしょうか? テロとの戦いで傷つき,家族を殺され,住む家を失った人々に,発言を保証するべきでしょうか?


FT April 23 2004

Fragile China

NYT April 25, 2004

China Hits the Brake, but Maybe Too Softly

By KEITH BRADSHER

(コメント) G7/8の本当の主役は中国です.世界経済の安定性は,中国の将来にかかっているからです.しかし,中国はIMFやWTOに加盟したものの,世界経済の主要な交渉に参加していません.

中国経済が過熱し,その抑制手段が国内だけでは十分でないとき,金融制度の改革や通貨・為替レート・国際資本移動の安定化に,一層の国際協力が必要なはずです.すなわち,G8が積極的に取り組むべきだ,とFTは考えます.


LAT April 23, 2004

Broken Immigration Policy

LAT April 23, 2004

A Flood of U.S. Corn Rips at Mexico

By Michael Pollan

FT April 26 2004

Controls can make migration fair

By Digby Jones (director-general of the Confederation of British Industry)

(コメント) 休日に,駐車違反で1万5000円を支払い,私はがっかりしました.しかし,アメリカで働くために,非合法移民だということで,密入国斡旋業者に9000ドル(約100万円)を支払わされ,しかも国境警備に捕まったりしたら,がっかりするどころではないでしょう.お金を支払えないと鎖で繋がれ,斡旋業者たちに小屋で監禁されます.あるいは,刑務所に入って強制送還されます.

ブッシュ政権は移民法の見直しを提案しました.短期の就労ビザを発行して,非合法移民を一掃する計画でした.しかし,誰もそれを支持しません.誰が法律の実効性を保証するのか? 誰がコストを負担するのか? 今の政策において最大のコストを強いられているのは貧しい移民たち自身です.しかし,アメリカ経済は移民労働者に多くの分野で依存し,移民流入によってロサンゼルスのような都市は繁栄できます.あるいは,犯罪や社会的コストが変化します.

アメリカはNAFTAによって関税無しに農産物を取引できるようにしましたが,補助金は止めません.その結果,アメリカの農産物がメキシコに輸出され(洪水のように!),メキシコのトウモロコシ価格は半分に下がりました.それは130万人の農民たちから仕事や所得を奪い,彼らは自分たちの畑を捨てて,都市の失業者となります.そして,アメリカに移民することを考えます.多くの場合,それは非合法移民です.

多くの家族が貧しく,食べる物も欠く生活をしながら,メキシコはアメリカに果物や野菜を輸出します.言うまでも無く,アメリカは飽食と肥満で苦しむ国です.

自由貿易は,合理的かもしれないが,あまりに短期的な利益志向であり,ほとんど狂っている,とカーネギー財団の報告書を紹介しながらPollanは警告します.小規模農家は土地を売り,ますます巨大な農地がアグリ・ビジネスの「遺伝子改良品種」による単一耕作に変えられ,大量の化学肥料に冒されます.生物種の多様性も,地力や土壌の維持も無視されて,メキシコの生態系や大地が脆弱な,不毛の大地になだれ込むぎりぎりのところまで耕作され尽くします.

イギリスの移民政策について,Jonesは,管理された合法的移民制度を主張します.移民は,さまざまな分野で賛否両論が激しく対立するからこそ,その利益を国民が広く納得できる形で行わなければならない,と考えるからです.すなわち,移民はその総数だけでなく,許容される分野や英語の習得義務など,明確な基準で,しかも,透明な選択システムにより,受け入れられるのが望ましいわけです.

また,弱い立場の移民を搾取するような企業が出ないように,政府とビジネス界は協力するべきです.そして,こうした長期的で明確な視野を持った移民政策を示すことで,潜在的な移民人口に対しても,イギリスが求める条件や姿勢を伝えることができる,と強調します.移民政策は,こうしたさまざまな観点から,その国にとって望ましいバランスを回復するための政策介入として,合理的に議論されねばならない,というわけです.

移民を,構造的に不可避な圧力と見るか,政策的に選択可能な条件と見るか,によって,その判断は異なります.具体的な移民・移民過程の全体に,政府がどのような影響を及ぼせるのか,また,それが誰の利益になるのか,検討する必要があります.


NYT April 23, 2004

Daimler Says It Won't Bail Out a Partner, Mitsubishi Motors

By DANNY HAKIM

FT April 25 2004

Japan's role in Iraq still threatens Koizumi

By Llewelyn Hughes and Richard Samuels

April 26 (Bloomberg)

Greenspan's Rate Warnings Big Risk for Japan

William Pesek Jr.

FT April 28 2004

Party time in Japan goes into self-destruct mode

By Akio Mikuni

(コメント) ついに景気が回復するかもしれない,という日本についての楽観的な評価を変化させるようなニュースと言えば,(先日までUFJでしたが)三菱自動車の再建計画崩壊であり,小泉内閣の自衛隊派遣や人質問題への対応であり,アメリカや中国で関心が高まってきた金利引上げが日本の国債や金融システムに及ぼす影響,です.

DaimlerChryslerが三菱自動車の再建計画に関与し,小型トラックのエンジン開発やアメリカ中国での販売を目指したにもかかわらず,リコール隠しの問題で信用を失い,アメリカでは販売促進のために購入者への低利融資を拡大し,回収できなくなった,という事情があるようです.三菱,という名前が「災い」し,株価全体や日本経済への不安感につながったと思います.

小泉首相が,イギリスに並ぶ「東の同盟国」としてブッシュ政権の安全保障に貢献するため,イラクへの自衛隊派遣を決断したことは,日本国内でさまざまな不安と反発を強めています.特に,自民党内部や保守派の合意をも超えた点で,イラク情勢が悪化した場合,政権の崩壊を意味するでしょう.また,ブッシュ政権にとって重要な意味を持つため,撤退は非常に難しいと思います.小泉氏が選択した内外の狭い許容範囲で,日本は国際的な役割の拡大に挑戦します.それが失敗した場合,政権交代だけでなく,これまでの説明不足が多くの政治的紛糾をもたらすでしょう.登場するときはアイドルでも,退場してからの影響はラテン・アメリカの独裁者風です.

日本の金融市場は,福井総裁よりもグリーンスパン議長の行動に関心を持っています.日銀は,「金融緩和を続ける」と言い,連銀は,「金融引締めは近い」と言いました.何が起きるのでしょうか?

まず,アメリカが速やかに利下げで景気を回復し,証券化した金融市場においても,銀行システムの収益が高いことを示す一方で,日本は今なお日銀の低金利政策と,不良債権処理や融資に頼る銀行システムに深刻な不安を抱えています.日本の銀行は融資を減らし,不良債権を償却する利益を安全な国債に投資することで得ているわけです.しかし,本当に景気が回復するなら,投資は国債から離れて,国債価格を下げるでしょう.銀行システム(そして財政)は,これに上手く対応する必要があります.

政府も日銀も,国債市場の円滑なシフトに多くの資源を振り向け,日本だけなら,その混乱を回避することも可能だ,とPesek Jr.は考えます.しかし,アメリカの影響は,国債についても,株価についても,予想できません.グリーンスパンが金利を引き上げた場合,両者に大きな影響が出るはずです.三國陽夫氏の指摘は,まさに,その移行の難しさに関係しています.

日本の景気回復は,主に中国などへの輸出が伸びたからであり,日本政府は円高を阻止し,楽観論を持続させるために史上空前の規模で介入し,ドル建資産への民間投資を誘導しました.しかし,その後,120円から104円への円高は,こうした民間投資の利益を吹き飛ばしたはずです.また,民間の債務を肩代わりし続け,政府債務の規模はGDP比で90年代初めの60%から160%に達し,この数年で200%を超えるとも言われます.バブル処理は,日本にとって,第二次大戦の被害と並ぶわけです.

国債価格は暴落し,金利が上昇して,景気回復も終わる? あるいは財政が破綻し,インフレと資本逃避,円安が加速する? それとも,むしろ政府から民間へ,景気回復とともに支出の主体が変化し,銀行システムに頼らず,債券市場が資金調達に活用される? 多分,そのすべてが,いろいろな割合で起きるのではないでしょうか? 楽観も悲観もできません.


WP Friday, April 23, 2004

Kerry Adrift

By Charles Krauthammer

(コメント) ケリー漂流? 国連に何を訴えるのか? 総会は無意味だ.では,安全保障理事会か? イギリスは一緒に戦った.他に,中東に無関心な中国や,フセインに加担しすぎたロシアが助けてくれるのか? フランスが,いまさら,イラクの事態収拾に協力すると思うのか? リチャード・クラークの証言やウッドワードの本がいくら注目されても,ケリーの人気はブッシュを越えない.なぜなら,ケリーの提案はいいかげんであり,戦争を指揮する資質を持たないからだ,と.


FT April 25 2004

A giant leap for Europe

By Martin Wolf

FT April 25 2004

Wolfgang Munchau: Britain in Europe

By Wolfgang Munchau

The Observer, Sunday April 25, 2004

We're all Europeans now

Will Hutton

FT April 26 2004

Companies prepare for an enlarged EU

By Stefan Wagstyl

FT April 27 2004

The shock of the new

By George Parker

(コメント) EU拡大の式典やパレード,広告が溢れる中で,日本からの関心は高くないように思います.なぜか? 貿易,投資,安全保障,移民,どの分野でも,日本はアメリカを重要なパートナーと見ており,EUはバランサーです.おそらく,通貨・金融問題に関して,アメリカに対抗する場合だけ,EUとの協調を意識します.

EU拡大も,その性格を変えることは無い,というわけです.多分?

今回の拡大が及ぶ10カ国とは,キプロスとマルタを除いて,旧共産主義圏からの加盟です.すなわち,東・中欧に安定した「西側」政治経済システムを拡大すること,が主要な目的である,と言えます.しかし,彼らの最も重要な目的は,生活水準を西欧並にしたい,ということです.貿易や投資が増えて,成長を加速させることを期待しています.もしフランスよりも2%高い成長率を実現できれば,追いつくまでにスロヴェニアが21年,リトアニアは57年かかり,もし1%しか高くないとすれば,その倍の期間を要します.

不安材料も一杯あります.多くの政府が財政赤字を制限されるでしょう.しかも,失業率は跳ね上がっています.1996年,ポーランドの失業率は13%でしたが,昨年は20%です.また,チェコ共和国では3.5%から10%に増加しました.金融市場の問題,エネルギー,重工業,農業など,戦略的重要産業の再編,行政の非効率,などが指摘されています.

EUが提供する統合と構造調整のための基金(cohesion and structural funds)は,2006年末までに400億ユーロ(約473億ドル)です.しかし,新加盟国もEU財政を分担するため,純移転される額は年100億ユーロほどで,全EUのGDPの0.1%に過ぎません.2013年まで農業補助金を適用しないと決めていますから,顕著な経済格差とこの小さな援助額を,2006年以降,見直すかどうか,が政治問題になるでしょう.

既加盟国は,拡大による輸入急増や,少し矛盾していますが,移民流入を恐れています.というのも,もし新加盟国で輸出が伸びて成長が加速すれば,移民が増えることも無いでしょうから.どちらの不安も大げさだろう,とWolfは考えます.その規模はせいぜいオランダ程度であり,輸入も全体の1%に過ぎないからです.もちろん,低賃金により投資を集めますから,ポルトガルなどのように,投資を奪われる国もあるでしょう.しかし,ドイツのように裕福な諸国にとっては,安価な輸入財や労働集約部門の海外移転が好ましい結果をもたらすでしょう.

新加盟国と国境を接するドイツとオーストリアは,今後7年間,労働者の移動を自由化しないように条件をつけました.それは政治的には理解できますが,間違った判断かもしれません.移民の多くは,若い,知識や技能を持った人々であり,一時的な雇用を望んでおり,受入国の成長を促すはずです.また,ユーロ成立時の参加条件を適用されるために,ただちにユーロが採用できず,通貨不安定が起きるかもしれません.既加盟国ではインフレ率が上昇し,その抑制のためにより多くの失業を受け入れねばならないかもしれません.たがいの政治不信と経済不安は,EU内でも,保護主義的な紛争につながります.

しかし,ヨーロッパ大陸を平和的に統一したい,という彼らの政治的理想が遂に実現したわけです.楽観主義は,現実の制約を打ち破る一つの条件です.

他方,なぜイギリスではEU拡大やユーロ加盟に悲観論が強まっているのでしょうか? それは,ブレアの政治戦略にも関わることです.イギリスは従来から,独仏の政治的統合論・連邦主義に反対でした.しかし,曖昧な参加を続けるより,むしろEU憲章に国民投票で反対すれば,EUを離脱して新しいグループを形成する,という主張が現実味を帯びてきます.EU憲章は再交渉ができず,しかも全加盟国の承認を必要とするため,イギリスが反対すれば,対応を迫られます.ブレアがそれほど大きな政治的賭けを行うのは,なぜでしょうか? 当然,イラク戦に関する安全保障上の対立が,EU内の政治統合熱とイギリスの離反の背後にはあります.

そこで,HuttonのようなイギリスのEU統合論者は,ブレアではなくゴードン・ブラウンが選挙を指導するべきだ,と首相交代を求めます.

また,新しい市場と輸出拠点を求めて,EU内の企業の再編成や再立地が進んでいます.東欧諸国の政府も企業も,財政赤字や汚職,インフラ整備など,多くのことを改革し,それに対応できなければ,成長の機会を失います.

EU内の意思決定が,もっと実質的な内容に及び,スムーズに行えるように,独仏協力ではなく,もっと弾力的な指導制の確立を求めて,EU憲章が模索されています.さらに,トルコの加盟問題が重要です.前例の無い規模と格差を含むEU拡大の昂揚感は,その限界への失望や不安と紙一重です.


NYT April 25, 2004

The Orwellian Olsens

By MAUREEN DOWD

(コメント) In Bushworld,で始まる政治風刺です.ブッシュの世界.それは戦争を好むがアメリカ兵の死体を見せない世界.国旗は大統領が指揮する戦争の昂揚感だけを示す.イラクの民主主義は素晴らしいが,それは軍隊も法律も,いかなる権力も持つわけではない.ファルージャの勝利にはブルドーザーが必要だ.イラクを解放したが,「アメリカくたばれ!」と叫ぶ声は許さない.戦争の予算を示す気も無い.ブッシュは父親に相談するが,それ以上に神父に,神に相談する.神は退却を許さず,政治的敗北も認めない.たとえハイジャックを支援したアラブの王侯と談合しても,9・11の復讐が再選される理由だ.・・・


NYT April 25, 2004

The Tale of the Toaster, or How Trade Deficits Are Good

By BEN STEIN

FT April 26 2004

Trade alone does not help Third World

By Charles Rangel

BG April 28, 2004

Remedy to outsourcing: better US jobs

By Robert Kuttner

(コメント) 中国製のトースターが$6.89で売られている横に,アメリカ製のトースターが$49.99で売られている.これは何だ? とSTEINは首を傾げます.安い製品を輸入して,消費者は喜ぶ.物価も安いし,日本や中国はアメリカの金利も下げてくれるから,きっとアメリカの労働者にも良いことなのだろう.しかし,いつまでも続くのか? 日本や中国は,いつまでこんなゲームを続けるのか? アメリカはどうせドル紙幣を印刷して彼らに支払えば良いのだが.退職後,貯蓄がもたらす金利だけで生活費を賄えない老人には良くないが.あるいは,転職しなければならない製造業の労働者には苦しいことだが.こんなことは,いずれ,終わるに違いない.

自由貿易だけで,貧しい労働者が豊かになれるわけではない,とRangelは言います.労働基準をILOが国際的に高める努力は,その条件です.アメリカが自分たちの基準を押し付けるわけではありません.ブッシュ政権の単純な貿易政策は無策です.民主党が求めるのは,@WTOの自由化交渉を再開し,Aアメリカの間違った補助金を削り,B繊維製品の輸入割当を廃止し,C国内利権による自由化交渉への介入を排除し,D貿易により影響を受ける産業や労働者に,新しい機会を与える投資を行うべきです.そのためにも,労働基準を含む自由化交渉が必要です.

Kuttnerは,アウトソーシングが,アメリカ中産階級(高賃金雇用)の没落という,より大きな問題の一部である,と考えます.その答えは,国内の改革にあります.すなわち,製造業が高賃金を実現したのは,それを保証する賃金決定や法制度,税制などが整備されていたからです.ところが,この20年間に,こうした社会制度が失われてしまいました.海外の労働者と競争しなければならなくなったことも,それを速めました.

では,どうすればよいか? Kuttnerは,サービス業の雇用機会を増やし,しかもそれらが高賃金を実現できるような,社会制度の再生を求めます.ブッシュの減税策は,グローバリゼーションによる利益を一握りの富裕層に集中させました.それを社会的に分配しなければなりません.また,ハイテク部門への投資をもっと支援するべきです.こうして,新しい高賃金経済を実現することが,アウトソーシングの脅威を解消する,と.


IHT Monday, April 26, 2004

Earth's riches should help the poor

Desmond Tutu and Jody Williams

FT April 29 2004

How Wall Street can aid the poor of the world

By Nancy Birdsall and Todd Moss

(コメント) 世界の富裕層や債券市場が,貧困解消に有益な仕組みを動かすことも可能でしょう.たとえば,Desmond Tutu and Jody Williamsは,資源豊富な諸国が,政治的腐敗や経済運営の失敗,環境破壊で貧困を悪化させる問題に対して,世界銀行が基金を設立・運営して貢献できる,と考えます.また,Nancy Birdsall and Todd Mossは,リスクをヘッジする技術で,貧しい国の子供たちのより良い将来をもたらすことができる,と考えます.

貧しい国への援助は,しばしば供与国の財政赤字や政治的判断によって変動します.また,返済可能性は,受理国の輸出市場や自然災害などに左右されます.それらが悪化すると,財政赤字やインフレ,政治不安にもつながり,貧しい国への投資が減少してしまいます.援助を含めて,将来の歳入を証券化して,金融市場がその変動リスクを負うなら,政府は安定した開発プロジェクトを実行できます.

実際,さまざまな計画が提唱され,成功している,と言います.たとえば,イギリス政府が提唱したワクチン生産を安定化する計画では,貧しい諸国へのワクチンの普及が,より確実・安価に可能になります.同様に,ウガンダとナイジェリアはコーヒー価格の変動を,ボリビアとガーナは債務返済コストへのショックを,南アフリカはHIV・エイズ対策を,カンボジアとパキスタンは初等教育から優秀な女子が進学する計画を,それぞれのリスクから資本市場でヘッジしている,と言います.


LAT April 26, 2004

War in Iraq Aims a Bullet at the Heart of the Economy

By James K. Galbraith

(コメント) 開戦当時,イラク戦争でブッシュは景気を刺激したいのではないか? と質問されたことを覚えています.私は,確か,それが主要な開戦理由とは思えないし,現代の経済においてイラク戦争による財政支出や雇用が大きな刺激にはならないだろう,と答えたように思います.

Galbraithは,すべての戦争は,当初,景気を刺激した,と言います.しかし,インフレや貿易赤字,財政赤字をもたらすに連れて,その弊害は明らかであり,結局,激しいインフレで債務を帳消しにするしかない,と言います.イラク戦争は,その意味でも,唯一の例外であった第二次世界大戦ではなく,ヴェトナム戦争と似ている,と.


ST APRIL 27, 2004 TUE

Return of high inflation? I doubt it

By Eddie Lee

FT April 27 2004

Valuable lessons lie in Asia's investment flows

By Ifzal Ali

FT April 27 2004

Martin Wolf: Big spenders keep the economy moving

By Martin Wolf

April 28 (Bloomberg)

Is Thai Economic Miracle Fizzling -- Again?

William Pesek Jr.

April 27 (Bloomberg)

Indian Rupee Shapes Up as Asia's New Bellwether

Andy Mukherjee

(コメント) 世界景気と,アメリカ,中国の金融政策転換が,経済論争の焦点となりました.しかし,昨日までのデフレ不安が,今度はインフレ・パニックか? と納得いかない気がします.いつから世界の経済学者たちは,それほど微妙な金融管理政策を信仰するようになったのか? かつて,財政政策が信用を失ったように,今度は金融政策が「裸の王様」になる番でしょうか?

理由はある,と思います.一方では,インフレ目標を掲げる中央銀行への期待と,バブルや通貨危機に示された金融市場の不安定性に対する恐怖心です.また,他方では,世界市場に占める中国の役割が増すに連れて,中国自身の過剰投資と金融システム不安,ボトルネックや社会的不平等,政治システムの将来について,世界市場が不安を共有し始めたことです.デフレ=インフレ懸念が交代する背後には,この「世界金融市場=ドル&世界の工場=中国」という妖怪が控えているわけです.

世界経済は,常に,微妙なバランスで成り立っています.バブル崩壊にもかかわらず,大きな世界不況を免れたのは,「古いヨーロッパ(独仏)」と「古いアジア(日本)」とが構造調整に手間取っている間も,アングロサクソン経済圏(アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア)の消費が,「新しいアジア」の投資や成長に加えて,世界の需要水準を維持したからです.それが通貨や金融市場に不安を蓄積するとしても,こうして時間をかけて,世界各地の構造調整が実現できるまで,世界景気を維持する条件です.

見方を変えれば,アメリカの住宅市場? アジアの通貨や金融市場? あるいはインドや中国で,次の危機が準備されている,と言えます.「不可能の三位一体」が,中国やインドには当てはまらないのか? あるいは,時間の問題でしかない?


NYT April 28, 2004

W.T.O. Rules Against U.S. on Cotton Subsidies

By ELIZABETH BECKER

FT April 28 2004

WTO cottons on

ST APRIL 29, 2004 THU

WTO ruling a big break

(コメント) ブラジルがアメリカをWTOに訴えて,勝ちました.アメリカ政府は,国際協定に違反して,国内の綿花生産者に補助金を与えているからです.WTOは,こうして初めて,3000億ドルに達するという富裕国の農業補助金を解体し,貧しい国々に好ましい自由貿易体制への実効性ある交渉・調整手段となるかもしれません.綿花補助金こそ,カンクンでWTOの自由化交渉が決裂した主要な理由の一つです.

アメリカは,その結果に不服であれば,対応を選挙の後に遅らせるだけの理由でも,WTOに再審理を要求するでしょう.アメリカ側の言い分は,その補助金が国内農家にだけ行われるため,世界市場をゆがめない,というものでした.しかし,補助金を得て農家は増産し,国内で消費する以上の綿花は,安価に輸出されて世界価格を下げました.今や,アメリカは世界最大の綿花輸出国になっています.しかし補助金が無ければ,生産は29%,輸出は41%減少する,とブラジルは推定します.

FTは,今回の判定を,三つの点で評価します.@WTOが,厳密な計量的推定で,補助金の被害を証明したブラジルの主張を採用したこと.他の補助金でも,こうした判定が重視されるでしょう.A自由化交渉における発展途上諸国の立場を強めること.BアメリカがWTOの判定を無視することは困難であり,多角主義を受け入れる例となる.


FT April 28 2004

'We used to be sandwiched between the big powers'

By Judy Dempsey

(コメント) アメリカがイラク戦に踏み切ったとき,フランスとドイツは他のEU加盟諸国や新加盟国の意見を無視しました.「シラク大統領がわれわれの庇護者として振る舞い,ドイツ,フランス,ロシアの指導者たちが写真に収まり,握手し,歓談するのを見るのは,どんな気分か,想像もつかないだろう.」と,ポーランドの若い外交官は言います.「もちろん,冷戦の時代は終わった.しかし,その記念写真は,東ヨーロッパが再び大国の狭間に生きていることを顕著に示した.われわれはEUに加盟する際,こんなことが起きないようにしたいのだ.」東ヨーロッパ諸国は,アメリカと独仏の間で,覇権を選択しなければならない事態を望みません.

FT April 28 2004

Quentin Peel: The EU's growing pains

By Quentin Peel

(コメント) EU拡大は,新旧の加盟諸国に調整のためのコストを強制します.EU憲章など,政治的な合意のメカニズムが承認されず,各国が勝手に調整を拒否できるなら,EUを25カ国で動かすよりも,もっと少数のグループで再編する方が良い,と考える動機が強まります.そして裕福な諸国は離脱し,貧しい諸国は幻滅します.

The Guardian, Thursday April 29, 2004

Unfinished symphony

Timothy Garton Ash

IHT Thursday, April 29, 2004

Europe reunites in fear and trepidation

Dominique Moisi

(コメント) この二つの論説は,たとえ問題が山積みであっても,EU統合の理念は変わらない,と宣言します.それは,平和と繁栄であり,地理的・社会的な移動性であり,近代化・民主化・そして和解のメッセージです.


FT April 28 2004

Gerard Baker: Europe's mixed blessing

By Gerard Baker

私は天邪鬼だから,皆がEU拡大を祝福しているときに,懐疑的な気分で居ることを許してほしい.私が懐疑的になる理由は,要するに,世界経済がますます自由化され,ダイナミックに変化し,弾力的になっているときに,超国家規模の厳格な官僚機構と規制,コストのかかる福祉体制に依拠したEUが,とんでもない時代錯誤に見えるからだ.

社会的市場モデルの改良に失敗し,アメリカ,イギリス,アジアなどに比べて,相互依存や通貨統合を含めても,成長の見通しは劣っていることに,新しく加盟する諸国は皮肉を感じるだろう.なぜなら,彼らはやっと共産主義の独裁者から解放されたのに,今度は,もっと硬直化した生産システムに押し込まれるのか? と不安になるだろうから.世界的に見れば,EUそのものが失敗に終わりそうである.トップ・ダウンの,官僚が牛耳っているような経済・政治組織は,加速する21世紀に残る,20世紀の化石となった思想である.

ハイテクと情報革命は,経済を地理的ブロックで考えることをますます愚かにし,これからは皆が「ネットワーク・コモンウェルス」に依拠して活動しなければならない.そして,英語,法律,政治文化など,共通の文化的紐帯をもったアメリカ・イギリス・オーストラリア・カナダ(英語圏)が,アングロ圏として,最も繁栄するだろう.なぜなら,そこに共通するものこそ,自由で,民主的な,市場経済による社会編成であって,私有財産やコモン・ロー,資本市場など,市民社会に依拠し,世界を動かす負担を引き受けた諸国であるから.

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The Economist, April 17th 2004

Wal-Mart: Learning to love it

Wal-Mart: How big can it grow?

(コメント) 予想されるように,The EconomistはWal-Martの拡大に楽観的です.それは,決して市場を独占していないし,新しい競争市場をもたらしているからです.Wal-Mart自身が,他国への進出や,地域によってはアメリカ内でも困難を見出しているにもかかわらず,その戦略は変わりません.消費者を喜ばせ,生産者や労働者も満足させ,競争企業にとってさえ有益な教訓を示すでしょう.これが市場だ,というわけです.

もちろん,一方では巨大さゆえに,その荒っぽい競争価格戦略が社会的な注目を集め,訴訟の山を築いています.また,巨大さゆえに,官僚的な硬直化を排除することが難しいかもしれません.確かに,中国から輸入する製品の安さを武器にする余地は,早期に発揮し尽くし,これから先は限られています.しかし,アメリカ市場だけでも,Wal-Martはまだまだ成長できる,と主張します.


Trust me, I’m a banker: A survey of international banking

(コメント) このかなり錯綜した?特集記事を読んで,銀行とは何であるか,日本でこそ,関係者はもっと必死に考え抜いて,新しい可能性を試して欲しい,と思いました.

たった一人の銀行家が預金と資産運用を管理するドイツの銀行は,世界有数の銀行にも負けません.また,アメリカではATMやコール・センターに依存して支店を減らし,規模拡大のために合併を繰り返す銀行ではなく,雨宿りするのに便利なほど多くの店舗を持ち,さまざまな小売業のノウハウを取り入れて顧客を開拓する銀行が成長しています.

日本の銀行は,何が変わったのでしょうか?


Economic focus: A remedy for financial turbulence?

(コメント) The Economistが,デンマークの環境アセスメント研究所と協力して行った,コペンハーゲン・コンセンサスに含まれる,国際金融システムの改良に関しては,Eichengreenが報告しました.通貨危機の被害と,解決策について,彼の最新の見解がわかります.

典型的な金融危機は,GDPを9%減少させ,アルゼンチンやインドネシアのような最悪の危機では,GDPの20%が失われました.1997年のアジア金融危機では,2200万人も貧困水準以下の人口が増えた,と言われます.もし危機を回避できていたら,その損失を回避し,安定した成長を持続できたでしょう.周期的に襲う危機は,国際金融に参加することで成長を加速する国にとって,避けられない代償でしょうか?

Eichengreenの改善案は,すでに債券発行に集団意思決定を容易にする条項を盛り込むことでしたが,ここでは,新興市場各国の通貨とドルとの為替レートを安定化し,リスクを市場でヘッジするために,その通貨もしくはバスケット通貨の証券を発行する市場を作ろう,というものです.