IPEの果樹園2004
今週のReview
2/16-2/21
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どこの家庭の料理本や医学書にも,国家の調理法や治療法は載っていません.これほど頻繁に,新しい国家の作り方や,病んだ国家の治し方が議論されているのに.
京都府北桑田郡美山町は,人口5236人,面積340平方キロ,かつて5つの村から構成された大きな町です.その山林を見て,私は,樹木の間隔が狭く,日差しが入らず下草も育たないため,荒れた土地が剥き出しになって,木の幹も痩せているな,と思いました.以前,C.W.ニコル氏の番組(森から未来をみる)が紹介した悪い森の例です.
ここには森と,その間を切り開いた田畑しかないのに,肝心の森が荒れてしまうとは,どうしたことでしょうか? もちろん,その理由は,木材が安くなって,100年かけて良い木を育てる人が居なくなったからです.今ではかやぶき屋根の住宅を保存して,もっぱら公的な資金を観光資源に投資しています.
井上ひさし氏は,小説『吉里吉里人』の中で,ズーズー弁を蔑視されてきた怨恨と,農民による国家誕生を描いています.その衝撃(笑劇)の始まりは,仙台駅のアナウンスです.「しんだぇ,しんだぇ.どなたさまも落ちる方が死んでからお乗りください.」(仙台,仙台.どなた様も降りる方が済んでからお乗りください.)
吉里吉里人を独立に向かわせた原理とは,東京で決まる「国益」には従えない,ということでした.たとえば,国語(吉里吉里語)と財源(輸出競争力のある特産品・吉里吉里石)の自立性,血肉の思想,食糧とエネルギーの自給自足,投機的な土地取引の排除,一夫一婦制と共存するフリー・セックス,価値の安定した金兌換券の発行,などです.彼らはもっと正直に生きたかったのです.
吉里吉里国のように,4187人では小さすぎないか? 中国やインドのように,10億人では大きすぎないか? 内陸国で繁栄している国はあるか? スイスはなぜ豊かなのか? ネパールやモンゴル,ルワンダは,なぜ貧しいのか? ・・・独立のメリットとは,何でしょうか?
もし「文化」が独立の理由であれば,国家の規模はさらに小さくなるでしょう.自然条件や交通・情報通信によって,その規模が変化するかもしれません.共通の言語や貨幣とともに,神話や過去の英雄,戦争と流血の歴史こそ,国家の政治的な資本です.政府はこれらを維持するために,大規模な投資を組織します.
他方,「財源」が独立の理由であれば,黒字の地域は赤字の地域を切り捨てるでしょう.そして,すべての黒字主体が一箇所(たとえば山頂の村や孤島)に集まって独立する傾向と,多くの地域が赤字を減らすために政府機能を切り捨て,国家の分裂や輸出競争を激化させる危険が増すでしょう.
実際,孤島や山岳,砂漠などは,小国をもたらしました.宮崎アニメの物語における「風の谷」も「ラピュタ」もそうです.現実において,成功した小さな国の秘訣とは何でしょうか? バチカンやモナコ,ルクセンブルグ.あるいは砂糖と奴隷で栄えた頃のハイチ? 圧倒的な競争力をもった世界商品があるとか,キリスト教徒の信仰と巡礼,献金を支配するとか,富裕層の娯楽・賭博,彼らの資産管理・脱税を擁護するとか? あるいはそこが,麻薬や宝石,奴隷,武器,犯罪の輸出拠点になるかもしれません.「カリオストロ」や北朝鮮のように.
時には,小国の存在が自然条件の結果ではなく,戦乱,疫病を蔓延させた大国の緩衝地帯,彼らの遮断・隔離政策の結果であるでしょう.裕福な者は身勝手です.資源を独占したいために独立し,使役する奴隷の身分を固定するために独立させます.
これまで独立を目指して,成功した例や失敗した例は,何を示すのでしょうか? 最新の独立国は,東チモール? では,最新の消滅国は? ユーゴスラビアもチェコスロバキアも,ハワイも,琉球も,消滅しました.
新しい国家はどのように承認されるのか? パレスチナ国家や台湾は承認されているか? クルド国家やチェチェン独立は承認されない? 領土問題が軍事衝突に至るのであれば,国境となる無人島や河川敷を,いっそ独立国か,国際統治領にしてしまえばどうか? 独立を唱えることは,そもそも,反逆罪か? 逆に,もし平和と自由貿易が保障されるのであれば,もはや国家は必要ないのでは?
国家の独立や軍事力,あるいは過熱した選挙戦に,「ユートピアの想像力」を吸い取る人々がいなくなってから,家庭の料理や傷薬と同じように,私たちは政治的な想像力を手軽に楽しめるのでしょう.
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ただしFT:Financial Times, NYT:New York Times, WP:Washington Post, LAT:Los Angeles Times, BG:Boston Globe, ST:Straits Times, IHT:International Herald Tribune
FT February 1 2004
Asia's plastic revolution
By Victor Mallet
(コメント) インターネットとクレジット・カードは,アジアの社会にどのような衝撃をもたらすのでしょうか? それは,合理主義と商業主義を日常生活の中で支配的にし,その先端を行く金融と,セックス産業,アメリカ文化をアジアに普及させる,と多くの人が予想(そして心配)していると思います.
確かに,金融もセックスも,伝統的な社会原理を脅かすでしょう(何度も破綻する?)が,それとともに,一人一人の異なった発言を集約し,市場で処理するような政治的合意が,次第に,アジアでも確立されるでしょう.そして伝統的な文化の要素は,新しい社会に再生されるのではないでしょうか?
FT February 1 2004
Dollar's threat to eurozone
By Wolfgang Munchau
Feb. 1 (Bloomberg)
Korea Gets Worked Up Over the Won's Strength
David DeRosa
(コメント) EUも韓国も,経済政策(特に為替レート)に関する主権を失っていますが,市場はそのことをさほど気にする様子もありません.EUは,アメリカが協力しない為替市場への介入を維持する政治的な合意を,ECBは得られないからです.そしてまた,ECBが域内の取引によってユーロ高の影響を吸収できる,ということを意識しているからです.ECBは,少なくとも正常な条件では,為替レートではなくインフレ率に注目しています.
他方,韓国は為替レートが不安定であることに不満を強めています.DeRosaは,それをアジア通貨危機の後遺症だ,と考えます.韓国が嫌うのは,自分たちが強いられた1997−98年の金融危機であり,それをもたらした国際的な資本移動です.その結果,「ホット・マネー」を阻止しなければならない,という確信が根付いています.
しかしDeRosaは,ホット・マネーを引き起こした間違った政策や制度を批判して,国際投資そのものを擁護します.新興市場が為替レートを固定し,しかも大きな金利差を残しているなら,資本が一方的に移動するのは当然です.そして為替レートが減価すると確信すれば,資本が流出するのも当然です.金利を動かしたくないのであれば,為替レートで調整しなければならない,というわけです.つまり,高金利であれ,増価であれ,加熱した景気を抑えるに過ぎません.
国際投資家はそれほど愚かでしょうか? 韓国の企業が利益をあげると予想して,巨額の投資をしたにもかかわらず,それがウォンを増価させて,結局,韓国企業の赤字を増やしているのです.多分,政府が介入しなければ,こうした投資が維持されることも無い,とDeRosaは考えるのでしょう.
日本や香港ではどうでしょうか? 株価を引き上げて,景気を回復させ,国内投資家が買い始めたら,自分たちは売る.あるいは,株価が下落すると,為替レートも減価することを予想して,さらに株や通貨を先に売る.株式市場が,各国の対外不均衡と景気を円滑に調整する,というようなことは言えない以上,私は中国であれ,日本であれ,韓国であれ,政府も為替レートにも関心を持つと思います.
NYT February 1, 2004
Budgets of Mass Destruction
By THOMAS L. FRIEDMAN
(コメント) ブッシュ政権とは,確信によって行動する政府なのです.確信により戦争を始め,確信により情報を選別し,確信によりイラク「再建」を進め,確信により減税を拡大する.それでも彼らは,財政は均衡させる,と約束します.しかし,ブッシュ政権にとって致命傷となるのは,WMD(大量破壊兵器)が無かったことではなく,アメリカの将来を破滅させるBMD(大量破壊予算)を唱えたことでしょう.
リンドン・ジョンソンは,ベトナム戦争で,パンもバターも求めて国を破滅に近づけた.けれど,ブッシュ政権は違う.パンもバターも,減税も求めて,しかもアメリカは繁栄する,と約束する.
FT February 2 2004
A harsh lesson on why the US deficit matters
By Stephen Cecchetti
(コメント) 赤字がたまることを気にしない政府に,国民は警戒しなければならない,とCecchettiは考えます.なぜなら,次第に金利が上昇するからです.アメリカがそれを気づかないのは,中央銀行がそれを阻止してくれるというよりも,むしろ外国から借りているからです.自国の中央銀行より,外国の投資家の方が,気前が良いのでしょうか? 遠い将来のリスクを語って不安を与えるまでもない,と弁解して,何もしない姿勢が,いつか不安に火をつけるでしょう.
NYT February 3, 2004
Another Bogus Budget
By PAUL KRUGMAN
NYT February 3, 2004
The Pinocchio Budget
WP Tuesday, February 3, 2004
Bogus Budgeting
(コメント) ごまかし予算! ピノキオ予算! 海賊予算!
NYT February 4, 2004
Sex, Lies and Bush Tapes
By NICHOLAS D. KRISTOF
(コメント) われわれの生活を脅かす真の敵を見出すには,何もアフガニスタン東部の洞窟まで探しに行く必要は無い.それはホワイトハウスの大統領執務室にいる.KRISTOFは,クリントンが大統領であった頃を懐かしがります.クリントンは,個人としてセックスにだらしなく,国民に嘘をつきました.しかし,アメリカにとって重要な保護主義と赤字予算については,国民が嫌うような真実を語って,説得しました.
ブッシュは,財政黒字に手をつけない,と選挙中に公言していました.しかし,その予算案はまったくのでたらめで,ラテン・アメリカの債務危機や日本の株価狂乱に続く,大混乱を演じています.アルゼンチンで見たように,IMFもアメリカの双子の赤字を世界経済の次の脅威として名指しで批判する始末です.
NYT February 4, 2004
The Debt No One Wants to Talk About
By DAVID M. WALKER
BG, 2/5/2004
The most bloated budget ever
By Jeff Jacoby
NYT February 5, 2004
Misspending Military Dollars
(コメント) 大幅な赤字が出たら,政治家たちはどうするのでしょうか? 赤字については一切黙っておく? 赤字なんて何の問題もない,と楽観する? あるいは,安全保障問題の一部として反対論を黙らせる? この赤字は必要な,良い赤字だ,正義の赤字だ,と主張し,誰にも予想できなかったし,政府としても,やむを得ない赤字だった,と説得し,遠い将来の(実現する見込みの無い)合理的な解決策を説明する?
アメリカを心配するより,もちろん,日本が心配です.しかも日本の場合,与野党とも,政治家が赤字の削減策にほとんど関心を持たない・・・?
WP Sunday, February 1, 2004
Populism Redux
(コメント) 目を閉じて,民主党の大統領候補たちの話に耳を傾ければ・・・ それはまるで2000年の大統領選挙を聞いているように感じるでしょう.アル・ゴア副大統領は言いました.「彼らは裕福な者たちのために行動し,われわれは人民のために行動する.巨大タバコ会社,巨大石油企業,巨大汚染企業,巨大制約会社.」同じように,ニュー・ハンプシャーで勝利したジョン・ケリーも演説する.「私はやつらのロビーストたちに,現在のホワイトハウスを住みかとする者たちにメッセージを送りたい.もうじきわれわれが行くから,さっさと出て行け.」
しかし,民主党の候補たちも社会的な生い立ちは共和党と変わらず,こうしたポピュリスト的な誇張された表現が,所詮,選挙用の宣伝でしかないことは明らかだ,とWPは言います.「人民」と「権力者」とを退避させるレトリックは,国民に無意味な対立を煽り,中間層を離反させるし,また政策を機能しなくするだろう,とゴアの選挙活動で副大統領候補を担ったリーバーマンは批判します.民主党が,その選挙基盤である労働組合の主張に流されたことは,言うまでもありません.
クリントンが成功したのは,たとえ指名された後ではあっても,人気者のラップ・ミュージックを批判し,人民重視のスローガンと,個人の責任や財政規律を重視する民主党中央の方針とを和解させたからであった.大企業は憎悪の対象ではなく,有効な解決策の一部でなければならない,と.
WP Sunday, February 1, 2004
Freedom vs. Equality
By George F. Will
今度の大統領選挙は,1932年以来,この国の形を大きく変える選挙となるだろう.それは,二対の政党が,主権,多角主義,予防的戦争,国家再建,など,外交政策の基本で対立していると言うだけではない.2004年が政府の本来の役割,その個人との関係について,根本的に異なる二つの見方のうち,一方の優勢を決めるからだ.
今回の選挙は,2000年にジョージ・W・ブッシュが保守派の行動を示して,最初の選挙である.共和党員たちは,小さな政府を賞賛し,教育相などを政府から追放した.「大きな政府」を(言葉だけでも)非難していたアメリカ人でさえもが,投票においては福祉国家を支持する,ということを,2000年までに,保守派は理解した.社会保障や医療保険制度は,政府の機能として最も広く支持されている.
ブッシュは,大統領候補として,ニュー・ディールの成果(社会保障)と偉大な社会(医療保険制度)の強化を約束した.今や,「強固な政府による保守主義」(それは「大きな政府」と同じではない),それこそが唯一の大衆に気に入られる保守主義である.大衆は政府に,病気,老化,そして教育の不足,という人生の三つの懸念を和らげて欲しいと思っている.こうした政府の役割を本来の保守主義に反すると思う者も居たが,それは政府が必ず強制や,自由の剥奪を意味すると,誤解しているからだ.政府は統制色を大幅に減らせるし,機会を与えて,個人が満足の行くように誘引を与えることもできる.
今日まで,二世紀にわたって,左右のイデオロギー的分断は,平等と自由に関する異なった価値評価,により決まった.リベラル派は,政府の統制を増やし,選択の自由を制限し,平等を広めた.それは,教育,保険,年金に関して,政府が提供するものに依存する形の平等である.
保守派は,これが「従属の文化」をもたらすと考えた.公共サービスへの依存が個人の能力や尊厳を損ない,教育,保険,年金における競争的な社会的対抗物がもたらす進歩を妨げる.保守派は,結果の不平等こそ自由の表明であり,進歩の条件である,と主張する.
両党派とも,政治的な計算を行う.すなわち,政府に依存する人々は,政府を大きくするリベラル派に投票するだろう.それゆえ,ブッシュの「強固な政府」がもつ4側面に対する民主党の抵抗も強かった.すなわち,学校の標準化と選択(裕福な親たちは学校を選別した),医療費の節約勘定(医療においても患者が好みを反映させ,また,価格を値切った),社会保障の選択的な投資(社会保障や年金を個人投資の機会に変えることで,政府は負担を減らし,万人を資産市場に近づけた),個人所得税の引き下げ(政府による再分配ではなく,個人の蓄財が満足をもたらす,と主張した),である.
こうしたブッシュの強固な政府による保守主義は,現代政治の矛盾を示している.すなわち,党派対立が過熱する一方で,その違いはますます小さくなった.伝統的な基準,すなわち「大きな政府」か,「小さな政府」か,ということではなくなった.そのような旧式の基準では,二つの新しい現実を見失なう.
@民主党は政府サービス提供者(公立学校の教師,政府職員組合)と政府サービスに依存する者たちの党である.彼らは「従属の文化」を助長し,自由より平等を重視する伝統的な価値観を唱える.A共和党の強固な政府は,「従属の文化」と対抗し,先覚の領域を拡大する.それゆえ,個人の能力と責任を強調する.これが共和党員の権力に求めるものであり,法的に強制された平等よりも自由を重視する伝統的な価値観である.
ブッシュが大統領になったことで,強固な政府が保守派の価値観に奉仕したのであり,それはリベラルな目標に従ったのでも,社会政策が平等か自由か,どちらを追求するべきかについて休戦を求めたのでもない.教育においても,保険や年金においても,共和党員は改革を提唱できるようになった.そして改革は,民主党員を反動的なリベラルにしてしまった.すなわち,従属の文化を擁護し,個人の選択の自由を蝕む奴らだ,と.
共和党は個人主義を拡大するために平等を犠牲にするつもりだ.他方,民主党は政府の提供するサービスに等しく依存できるという社会的な連帯を奨励して選択の自由を制限するだろう.すなわち,11月2日は,1932年以来の個人と連邦政府との関係を,まさに作り変えるかもしれないのだ.
IHT Monday, February 2, 2004
Coffee: An empty cup for growers
Phil Bloomer
(コメント) もし主要な輸出品が,コーヒーのような世界的に生産過剰となった一次産品であれば,その国は非常に貧しくなり,そこから脱出する方法も見つからないでしょう.他の生産物に転換するとしても,新しい資金や未知の生産組織に適応できる農民はほとんど居ないのです.
豊かな国やその政府と消費者が,この貧しい国の住民に一定の支援を与えて,新しい作物や雇用の機会を発見することを助けるべきだ,と,国際機関や民間支援団体は考えます.
ST FEB 3, 2004 TUE
Rebels of the world unite under banner of openness
By IMMANUEL WALLERSTEIN
(コメント) ネオ・リベラリズムに反対し,あらゆる資本の支配,帝国主義にも反対する.グローバリゼーションの中の「全共闘」? そんな雰囲気です.「これは組織ではなく,プロセスであり,運動だ.」
多元的で,多様な,信条や政府や政党と関係ない,要するに組織のヒエラルキーを持たない運動.それが「世界社会フォーラム」WSFなのです.「もう一つの世界は可能だ!」 共産主義者も国際派も包み込む,歴史上初めての反システム運動,とウォーラーステインは絶賛します.
しかしWSFも,彼によれば,三つの問題に直面しています.@オープン・フォーラムにとどまるべきか? Aアジア・アフリカ・東中欧からの参加が少ない.B内部の構造と資金の問題をどうするか?
毛派のWSF批判が取り上げられています.すなわち,WSFはトロツキスト的で,社民的で,改革派の大衆運動や,大企業に資金を出してもらうNGOsが集まったものでしかない.要するに,反革命的だ,と.彼らは特に,オープン・フォーラムの原理に反対し,目標や財源を問題にします.それは単なるトーク・ショーであり,目標は社会主義しかなく,フォード財団から金をもらって何ができるのか? と.
しかし,圧倒的な多数の参加者は,オープン・フォーラム原理を支持しており,同時に,共同行動を促す共通の制度化を望んでいます.その場合,選出されるわけでもないすべての参加者がどのように意思決定に「民主的に」参加するのか,という内部の構造問題が生じるでしょう.
ネオ・リベラリズムや世界資本主義への対抗として,WSFが機能しているのは,自転車のように,動き続けているからです.それは最初,反ダヴォス(世界経済フォーラム)でした.しかし,ムンバイでは,反ブッシュです.彼らは,もう一つの世界的な体温計を示しています.多分,「全共闘」がそうであったように.
ST FEB 3, 2004 TUE
Immigrants shouldn't act like Dracula's 'undead'
By SUNANDA K. DATTA-RAY
ST FEB 4, 2004 WED
Protectionism won't work, job migration unstoppable
By NAYAN CHANDA
ST FEB 6, 2004 FRI
Snakeheads and illegals
(コメント) 「郷に入っては郷に従え.」フランス人は,イスラム教徒が公立学校でスカーフを被ることを禁止します.しかし,移民たちは宗教的な信条と結びついた慣習を妨げられることに大きな不満を感じるでしょう.ユダヤ人の帽子,シーク教徒のターバン,キリスト教の十字架さえ禁止です.この議論に対して,さまざまな反対派が抗議しています.それはシラク大統領の決定を覆しはしませんが,大きな圧力となりました.さまざまな声が,国境を変えた政治圧力を形成します.
DATTA-RAYは,移民たちが基本原則に合意するべきだ,と考えます.自分たちの将来を改善できるという期待により,人はどこにでも移住できるでしょう.同時に,こうした移民たちは新しい社会の慣習に従い,その規範を学びます.その際,出自の文化を失うこともあります.
他方,リー・クァン・ユーは,日本や中国が黒字を累積してアメリカの企業や技術を購入し,アメリカの消費を維持して赤字を融資すること,移民を抑えても,ホワイト・カラーの職場が流出して行くだけであることを,強国の交代や激しい競争の続く不公平な世界では当然だ,と考えます.もし平和が維持できるなら,それは素晴らしいことなのです.
FT February 6 2004
A chill wind offshore
By Christopher Caldwell
LAT February 6, 2004
If You Get the Ax, Don't Blame India
By Gautam Adhikari
(コメント) グローバリゼーションは経済的に支持されるはずです.それは相互に利益をもたらしているからです.しかし,その一部でしかない「オフショアリング(職場の海外移転・流出)」は,選挙を左右します.ひとびとは他人の足が自分の足を踏みつけていると感じています.しかも,それを除けることができない.政治的には,彼らの不満を無視できないはずです.
インドの雇用がアメリカの失業を説明するわけではない,とAdhikariも言います.アメリカで失業に苦しむのは主に製造業の労働者であり,ハイテクのエンジニアではありません.また,インドのエンジニアは,事実上,アメリカと同じ水準の高賃金を得ており,インドの労働者の中ではきわめて例外的な存在(インドの平均所得の400倍)です.労働だけを自由市場の例外にするアメリカの不満は身勝手だ,と.
NYT February 11, 2004
Watching the Jobs Go By
By NICHOLAS D. KRISTOF
ST FEB 12, 2004 THU
Jobs flight? Worry about industry flight instead
By ALVIN PANG
NYT February 12, 2004
Bush Acts to Ease the Furor Over Jobs Shipped Abroad
By ELISABETH BUMILLER
(コメント) アメリカから仕事がなくなるのは教育に投資しないからだ,とKRISTOFは考えます.アジアでマイクロチップを作り,アメリカ人はポテトチップしか作らなくなる,と人々は恐れます.しかし,実際は,アウトソーシングによってアメリカの生産性は改善され,成長を促し,インドや中国の所得も増えて,アメリカの輸出を増やす,と研究者は言います.ただし,初等教育の学校,特に算数や科学が破綻してしまえば,こうした理想は実現しないのではないか? とKRISTOFは心配します.
シンガポールのような小国では,激しい雇用流出が起きると,投資や新規産業を誘致できないのではないか,という不安があります.特に,アジアの成長は,多国籍企業の戦略拠点としてのシンガポールを不要にしないでしょうか? それでもアジアにはまだ希少な,優れた人材のプールがある,とPANGは人材確保に究極の産業政策を見い出します.
他方,アメリカでは,アウトソーシングの問題とは選挙です.大統領経済諮問委員会の委員長,N. Gregory Mankiwは,「アウトソーシングがアメリカにとってもプラスだ」と発言して,その政治音痴を激しく非難されたようです.ブッシュ氏は5億ドルを教育と職業訓練に充て,2億5000万ドルをコミュニティー・カレッジなどへ,1億2000万ドルを算数教育の改善に充てます.また2800万ドルを教師の教授法改善に使うのです.
BG, 2/3/2004
The awful truth about Iraq
By James Carroll
(コメント) 新しい,真の大統領は,真実を告げるべきである,とCarrollは考えます.
「この戦争は(間違った情報によって始められた)判断ミスだった.」アメリカの指導者たちは,この間違った戦争で亡くなった500人以上の兵士とその家族に,真実を話すことを強く嫌います.「あなたの息子さんや娘さんは,自由のためではなく,間違った戦争によって死にました.」アメリカ軍がイラクに居ることが,その意図は何であれ,そもそも間違いなのです.占領こそが憎悪を生み,死者を増やしています.そこで,新しい大統領は就任に際して宣言するでしょう.
「すべてのアメリカ軍を,今すぐ,イラクから撤退させる」と.「私がアメリカ大統領である限り,アメリカがイラクの占領から利益を得ることが無いことを保証する.」占領と搾取を完全に否定してから,アメリカ政府はアメリカ兵とイラク国民,そして世界に,深い悲しみを表します.「私たちがイラクで行ったことは間違いでした.何の罪も無いイラク人が死にました.国際秩序を破壊しました.私たちはそれを理解し,修復のために行動してきました.しかし,取り返しのつかない,不要の苦しみを与えてしまったことは分かっています.そのことを謝罪します.」
FT February 4 2004
Cowboy rides off with the bank's riches
By Gillian Tett
FT February 9 2004
Japan's monetary alchemy may not yield gold
By Richard Duncan
(コメント) なぜ新生銀行の株式上場が手放しで歓迎されないのでしょうか? もちろん,それは破綻した日本の銀行を買った外資が儲けるからです.しかも,巨額の税金を利用したからです.そして,不良債権を処理する際に,日本の企業や銀行を苦しめたからです.つまり,アメリカのハゲタカ資本家たちに,アメリカ式の再生を強いられたからです.人によっては,自分たちの内臓を食い散らされたような気分でしょう.
しかし,なぜ外資にしか再生できなかったのか? なぜ巨額の税金を必要とするようなドンブリ勘定の保証をしたのか? なぜ日本の企業や銀行はもっと良い再建策を実現できなかったのか? つまり,アメリカ式でない不良債権処理や企業の再生を行っていたら,内臓を食われる必要も無かったはずです.
Tettは,何より,長期信用銀行にあった,知られたくない過去の不良債権を,日本政府が,それに蓋をしたまま,外資に処理させ,税金を浪費することを選んだのです.金融危機を拡大し,それを隠すために国民の負担を増幅しながら,外資に罪を被せる日本政府や金融界に,もっと国民は怒ってよい,と考えます.
この日米共存戦略と重ねて,日銀はアメリカ市場を通じた金融緩和という,錬金術師の金融政策を実行しつつあります.その規模には度肝を抜かれます.2003年の初めから,日銀が購入したアメリカの財務省証券は,27兆円,2500億ドルに達し,日本のGDPの4%以上,国民一人当たり2000ドル,全人類でも一人当たり40ドルの債券を保有したことになります.それは今年のアメリカ財政赤字の半分を賄います.
Duncanはこれを,1720年にジョン・ローが行ったミシシッピー会社の事件以来だ,と表現します.今のところ,その効果として,アメリカ政府に金利を低いまま巨額の赤字予算を通過させました.不動産バブルが沸騰しています.アメリカの輸入は,アジア,特に中国の輸出主導成長を加速し,中国の輸入は日本を含むアジア諸国を刺激しています.日銀こそ,まさに,「炎の錬金術師」ですね.
この事態は,世紀を超えた問題を提起します.すなわち,政府が資金を創造して大衆を金持ちにすることが,最終的には貨幣的な大混乱に至る連鎖を免れるのか? 日本は,世界的な規模でこの問題に挑戦しているわけです.
2003年の半ばに出た,連銀のパンフレットは,短期金利をたとえ1%に下げても,連銀にはまだ打つ手がある,と書きました.すなわち,刺激策が必要なら,ヘリコプターで空から貨幣をばら撒くのです.今や,そのヘリコプターが空中を旋回しています.ただし,その側面に描かれているのは,アメリカ国旗ではなく,日章旗です.操縦桿を握るのは,一体,誰なのか? とDuncanは問います.
The Guardian, Wednesday February 4, 2004
Be brave. The only fix for poverty is to tax the rich
Polly Toynbee
NYT February 5, 2004
Retirement Lessons From Sweden
By ALAN B. KRUEGER
NYT February 9, 2004
Whose Problem Is Health Care?
By DANIEL GROSS
BG, 2/5/2004
Our do-it-yourself economy
By Ellen Goodman
NYT February 7, 2004
A Stingy Recovery
FT February 9 2004
Electoral econom ics
(コメント) この「ジョブレス・リカバリー」を理解できない経済学者に,Goodmanが答えを教えます.それは,「DIY(自分で何でもする)経済」なのです.サービスは減らされ,人々はレジや苦情処理に行列し,問題を抱えて電話に長時間しがみつきます.それまで雇われていた人は解雇され,何でも自分でするしかない.もちろん,その解決策もあります.メールで質問すればよいのです.人々はコンピューターにしがみつきます.その答えは,たとえば,インドから来ます.
このしみったれた回復を,ブッシュ政権も,民主党も,正しく見ていない,とNYTは批判します.選挙の年には,政府は良い面を強調し,反対派は悪い面を強調します.結局,景気に関しては連銀だけが,今の政府なのです.
選挙の年に,まともな経済政策が支持される見込みなど無い,とFTは認めます.どのような政治家も,選挙のためにデマゴギーとポピュリズムを受け入れます.政治家たちに望める最善のことは,経済を致命的に悪化させるような選択をするな,ということだけです.民主党の大統領候補たちは,財界と親しいブッシュ政権を批判して,厳しい規制や税金を再導入するかもしれません.しかし,ゲッパードやディーンを退けた予備選の経過は,FTにいくらか希望をもたせます.
NYT February 7, 2004
The Nixon Recovery
By CHARLES R. MORRIS
2003年後半の力強い景気回復に加えて,雇用が伸びたという良いニュースは,ブッシュ大統領を安堵させただろう.しかし,まだ多くの不安材料がある.もしブッシュ氏が再選のために何としても景気回復を持続させたいなら,うってつけの前例がある.リチャード・ニクソンだ.彼は1972年の再選に向けて,不況から回復を創り出した.雇用をもたらすことも,成長を加速することも,ほらを吹くのではなく,実現するのは非常に難しい.なぜなら大統領に動かせる経済手段は何も無いからだ.予算は決まっているし,税金も金利もそうだ.すなわち,大統領は提案できるが,課税(減税)するのは議会だ.金利は独立した連銀が支配する.
しかしニクソンは,もし大統領が,何の抑制も長期的な配慮も捨てて,その無力な手を振り回せば,経済を回復させて,思い通りに動かすこともできることを示した.もちろん,「ニクソン景気」は短命であった.しかもアメリカはすぐに大きな代償を支払った.不幸なことに,ブッシュ氏の経済成果は,気味が悪いほど,よく似ている.
1970年代の初めまで,高インフレと低成長が続き,ニクソンの景気回復策はブッシュ氏よりも手に負えないものだった.ニクソン徒,彼の財務長官であったジョン・コナリーは,議会と連銀を脅して,真に革命的な実験を行わせた.議会が賃金と物価を統制する法案を通し,連銀は貨幣供給を増やしたのだ.
蛇口から噴出した貨幣が経済を活気付ける一方,価格統制はインフレを抑え込んだ.それは成功し,ニクソンは1972年に再選された.しかし,この成功は高く付いた.いったん価格統制が解除されると,抑圧されていたインフレが暴れ出した.悪いことに1973年のOPECによる「オイル・ショック」が重なり,二桁のインフレが生じた.結局,それは史上最も高価な再選キャンペーンとなった.
多くのアナリストは,ブッシュ式回復を同様に破局をもたらす,と見ている.ニクソンの手本に従い,ブッシュ氏は財政刺激策を全開した.この2年間で5000億ドルも財政収支を転換した.表面的には,これは経済学のテキストどおりに景気を安定化したに過ぎない.しかし,実際は,ニクソンの手本に従い,健全な税制を拒否したのだ.
ブッシュの財政政策は不況対策として考えられたものではなかった.それは,10年計画で,企業と投資からすべての税金を取り除く企ての始まりであった.理論では,すべての人が豊かになる.しかし実際は,まず財政黒字が一掃され,景気対策と称された.減税は,既に1959年以来,最低レベルの課税率であっても,意図された.
ブッシュ氏は,10年で財政は均衡する,と言う.しかし,最近のブルッキングズ研究所の報告は,その計算を奇術とみなした.むしろ,10年後には,財政赤字が8兆ドルに達するだろう.その結果は酷いものだ.金利が上昇し,競争力と成長を損なう.さらに社会保障制度が破綻するだろう.2010年になって,引退するベビー・ブーム世代は,ニクソン後の時代を黄金時代と懐かしむだろう.
FT February 3 2004
Sharing Europe's burden
By Ed Crooks
FT February 6 2004
France seeks new G7 signal on currencies
By Alan Beattie in Boca Raton, Florida
(コメント) G7を控えたヨーロッパの事情はCrooksが伝えています.ユーロ圏の規模があれば,為替レートを気に病むよりも,内需を刺激すれば良いはずです.しかし,日本もそうですが,国内の改革には政治的な障害が多く,企業の債務や市場競争は,積極的な投資を妨げています.通貨の増価で購買力を得たはずですが,消費は伸びません.消費者が次のバブルを期待するようなこともないのです.ECBが住宅投資などに与える影響は,アメリカやイギリスに比べて小さいようです.財政刺激策も,長期的な財政赤字を不安視するEU国民を動かしません.
クリスマス前の子供のようにはしゃぎだす為替ディーラーたちも,G7コミュニケには感心そうにありません.アメリカが為替レートへの介入について新しい理由をコミュニケに盛り込むとは思えないからです.アメリカの通貨当局は,「成長のアジェンダ」として,サプライ・サイドの改革に重心を移すよう求めています.
FT February 8 2004
A bad result
By Wolfgang Munchau
WP Sunday, February 8, 2004
Dollar Diplomacy
Feb. 9 (Bloomberg)
Plaza? Louvre? Boca Accord Never Had a Chance
Caroline Baum
(コメント) 財政政策は,アメリカが急激な緩和を行い,ヨーロッパは長期的な引き締めを修正できません.アメリカとヨーロッパの経済構造は異なっており,ECBはアメリカの連銀ほど為替レートを無視できないのです.
前回,大陸間の不均衡と主要通貨の為替レートによる調整が問題になったとき,G7はプラザとルーブルで合意しました.その後の国際資本移動は,こうした政府による介入を無駄なものにしました.為替レートはファンダメンタルズに任せるしかありませんが,それがアメリカの景気回復や生産性上昇を見て投資を増やすのか,赤字累積を見て投資を減らすのか,その方向は投資家の心理にかかっています.いずれにせよ,為替レートや金利が急激な変化をもたらし,市場にパニックが起きることを避けるべきだ,とWPは主張します.
WPに言わせれば,ヨーロッパや日本は,アメリカの需要拡大を利用して,改革をサボってきたのです.今こそ,アメリカが不均衡を調整する負担を代わって引き受けるように,EUは労働市場を改革し,日本は銀行システムを再建せよ,と求めます.それができないなら,中途半端に為替レートを云々するな,と.
Feb. 10 (Bloomberg)
G-7, in Four Words, Makes Case for Yuan to Rise
Andy Mukherjee
The Guardian, Monday February 9, 2004
Europe left behind as US looks to Asia
Larry Elliott
NYT February 9, 2004
Cheapening the Dollar
By EDMUND L. ANDREWS
FT February 10 2004
Paper victory over protectionists
By Martin Wolf
(コメント) なぜ日本やアジア諸国は為替レートによる調整を拒否するのか? Wolfは,それを「為替レート保護主義」と呼んだMax Cordenにより理解します.すなわち,通貨を安くして,輸出を伸ばし,輸入は規制して,外貨準備を貯め込む,というブレトン・ウッズ制度の周辺諸国が採用した政策です.彼らは,いくらヨーロッパが苦しんでも,この政策をやめません.それを止めるとしたら,外貨準備の累積が通貨供給を増やし,インフレや過剰債務が問題となるからです.
ニクソン・ショックのように,アメリカがこの「固定レート制」を一方的に破壊することもできます.アジアからの輸入に関税を課すか,ドルを増発してアジア通貨を買うこと(市場介入)です.アメリカ政府が良好な米中関係の維持を望み,アジアからの輸入でインフレを抑え,資本流入で金利を抑えていることを歓迎している限り,こうした行動は取らないでしょう.アメリカはドル安を,アジアは重商主義を好み,ヨーロッパが為替市場の安定化を望んでも,G7コミュニケは無視されるでしょう.
ST FEB 11, 2004 WED
The money-go-round
FT February 9 2004
America searches for its centre
By Charles Kupchan
(コメント) ブッシュ政権の軌道修正にもかかわらず,アメリカが本当にリベラルな国際主義を掲げる路線を再び確立することは無いだろう,とKupchanは考えます.なぜなら,@第二次世界大戦と冷戦を経験した指導者たちは引退した.現在のテロの脅威は,穏健派よりも,ナショナリスティックな強硬派を増やす.A民主党も共和党も,戯画的な,ポピュリズムの風潮に同調する.Bアメリカ政治の両極化は止まらない.社会的な分解,経済的な対立,政治的過激化,それらが吹聴する世界観は,穏健な国際主義を,惨めな敗北主義に変えてしまうようです.
ST FEB 10, 2004 TUE
France tries to draw a veil over its real Islamic problem
By SHADA ISLAM
(コメント) スカーフを禁止しても,イスラム教徒に対する差別や隔離は解決されません.彼らがヨーロッパ社会において民主的な権利から排除されている限り,スカーフに隠そうとしたヨーロッパの反感はなくなりません.女性たちは家庭内で伝統的な男性の支配に苦しみ,男性はヨーロッパ社会の差別に苦しみます.スカーフ論争は,組織を持たないイスラム教徒の穏健派を弱めて,過激なイスラム原理主義を広めるでしょう.ヨーロッパじゅうで,この対立が外国人への憎悪を顕在化し,極右政党に支持が集まります.しかし,イスラム教徒はヨーロッパを離れません.彼らはヨーロッパの一部であり,ここを故郷とするからです.
NYT February 10, 2004
Koreans Look to China, Seeing a Market and a Monster
By JAMES BROOKE
(コメント) 製鉄,造船,自動車,半導体,携帯電話などで,韓国企業が,一斉に,日本やアメリカとの連携から,中国との連携へ方向転換しました.2003年の海外投資の約半分は中国向けであり,中国への輸出額は50%も増加しました.中国は韓国企業を吸収して,その低価格,大量販売方式を,世界市場向けに再現します.
しかし,韓国企業の急速な資本や技術の移転は,自分たちの滅亡を早めるだけかもしれません.もし韓国企業が,急速に競争力や販売ネットワークを得た中国企業に対抗するには,中国以上に賃金や土地の安い北朝鮮と組むか,あるいは韓国経済を開放して,外国資本や企業と合弁しなければならないでしょう.南北国境地帯に投資優遇地域を設定するだけでは不十分です.韓国のチェボルそのものを世界市場において競争させ,韓国すべてを外資に友好的な特区にしなければならない,とモルガン・スタンレーのAndy Xieは考えます.
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The Economist, February 6th 2004
Microsoft: Deja vu all over again
Microsoft: Sir Bill and his dragons ?-- past, present and future
(コメント) マイクロソフトを分割するしかない,という議論です.マイクロソフトは,以前も,アメリカの司法当局と,Windowsの独占的支配力を不当に利用して,ブラウザの独占を画策した,と批判されました.そのときはネットスケープが問題でした.今回また,EUと音楽情報の配信で独占を図った,と追及されています.しかも,マイクロソフトはGoogleを買収しようと狙っている,というわけです.ええかげんにせい! と.
言語を独占的に支配する権利が個人や企業に与えられる,などというのは,とんでもない気がします.Windowsの情報を開示し,その利用から一定の料金を得るとか,もっと良い言語の開発を競わせるとか,良い方法はないのでしょうか? マイクロソフトを分割したくない政府の事情もいろいろ書いてありますが,この一企業の世界支配は許せません.
America’s election: Eatanswill revisited
(コメント) Eatanswill このディッケンズの小説を読んでないのは残念です.民主党と共和党が均衡しているために,11月の大統領選挙では,むしろ少数の独立派,中間派,ヒスパニック,ケーブルTV,などが重要になります.党派間の支持者の奪い合い,政党や候補者の個性の潰し合い,政策領域の侵しあい,あるいはTV電波を使った「空中戦」,・・・
しかし,最後は支持基盤を動かして,実際に投票所に向かわせる力が重要です.そのためには,ますます身近な問題が重要になり,選挙区ごとの争点が取り上げられ,政治は「バルカン化」する,と言います.人種,堕胎,信仰,同性愛,・・・ 結末は,小説のようには行かない?