4.都市:民主主義と社会的革新――世界の対立と権力を超えて
社会編成と空間の支配:ゴジラが地上に現れ,移動しながら,破壊を繰り返す.人間のいない地球には,都市が無かった.
<思考実験>
あなたがもし神様であれば,都市をどうやって作るか?
1. 大きな建物.たとえば立派な議事堂や役所.裁判所.大学.テレビ局.などを建てる.
2. とにかく多くの人を住ませる.10万人でも,100万人でも,1000万人でも.そして住宅が建ち,ショッピング・センターができる.
3. 文化施設を集めて,知識人や芸術家を育てる.劇場.ギャラリー.図書館.
4. もっと大衆的な娯楽施設を増やす.盛り場.賭博場.映画館.
5. 企業や銀行を誘致する.世界的な大企業の本社を集めて,国際会議や金融管理センターを誘致する.:カンパニー・タウン
「それで都市になるのでしょうか? 都市の本質とは? 誰がその都市に住むのか?」
6. 紛争や貧困を避けて,世界中の移民や難民が集まる,新興企業や開拓者のための土地を用意する.安全が確保され,救済センターがあり,すべての者に基礎的な生活手段と雇用を保証する.それを「市民の権利」として宣言する.
7. 完全なセキュリティーを確保する.快適な消費生活と情報環境.アメリカやラテン・アメリカの富裕層が住む要塞都市
(1)都市とは何か?:「都市」=「市場」=「市民社会」
都市の歴史的起源
近代都市の誕生:ヨーロッパにおける競争的国家,航海術・天文学と地理的発見.城壁=要塞都市
身分社会・封建制・土地の政治的配分と独占的支配.領主的・共同体的規制の解体=離脱,都市の自由.商業活動と領主による優遇策・競争的誘致=育成政策.
近代的合理主義
契約の観念・所有権の観念.市場における売買の自由.営業の自由.
★ ルイス・マンフォード『都市の文化』『中世の都市』『歴史の都市・明日の都市』
★ 羽仁五郎『都市』1949年,『都市の論理』
市民的自由とその限界:市民と奴隷制・植民地征服
★ エリック・ウィリアムズ『コロンブスからカストロまで』
★ ラス・カサス『インディアスの破壊についての簡潔な報告』1552年
(2)都市と権力
★ T.H.マーシャル&トム・ボットモア『シティズンシップと社会的階級』
★ R.ベンディックス『国民国家と市民的権利』
★ カステル『都市・階級・権力』
★ ルイス・マンフォード『技術と文明』『権力のペンタゴン』
(3)不平等と都市叛乱
★ ハーヴェイ『都市と社会的不平等』
★ アルン・クンナニ「オルダムからブラッドフォードまで:犯された者の暴力」(人文科学研究所『社会科学』第69号)
「2001年の夏に、ランカシャーからヨークシャーにかけて燃え広がった紛争の炎は、未来を奪われ、すべての面でレイシズム(人種差別主義)に囲まれ、自分たちの指導者や代表たちにも裏切られて、初めはレイシストたちに、次には警官たちに、不本意にも、自分たちの街が侵略されるのを見守っていたパキスタン人、バングラデシュ人の第二、第三世代の若者たちが抱く怒りの大きさを示すものだった。・・・それは、肌の色、階級、警察が分けた境界線によって、引き裂かれたコミュニティーの暴力であった。それは、希望を失った者の暴力である。すなわち、犯された者の暴力(the violence of the violated)だ。」
グローバリゼーションと政治空間:通貨危機と移民
★ 『チャイナタウン・イン・ニューヨーク』
★ サッセン『グローバリゼーションの時代』
結び:社会的革新の舞台=容器,社会の核=Grid(結び目)
★ マイク・デイヴィス『要塞都市LA』
「白人はどんどんロサンゼルスから逃げ出し,増大する低所得者や賃貸住人の要求に応える市の能力は,それとともに弱まった.」
「ヒステリックな住宅所有者会は,地元のビジネスマンの支援を受けて,そもそも支配人種としての彼らのライフスタイルを支えるはずの移民労働力に,戦争の火蓋を切った.」・・・「事実上,低所得者用住宅は無いから,数千の日雇い労働者とその家族は,山腹や林の掘っ立て小屋,間に合わせのキャンプでこそこそと暮らすしかない.しばしばこれが100万ドルの邸宅から見えるところにあって,所有者が『移民汚染』の除去を(警察に)求めるわけだ.」
「『超』がつく金持たちは,ハイテク城砦を求めている.ロサンゼルス・ウェストサイドの現在の『豪邸化』熱の・・・重要な原動力となっているのは,『絶対のセキュリティーの探求』である.」