Research
当研究室では,研究分野ごとにグループを構成して研究に取り組んでおり,2020年度は「デバイス班」,「バイオ班」,「計測班」,「骨班」の4班に分かれています。幾分雑食気味ですが,電気電子工学,材料工学,生命医科学など幅広い分野を横断しながら「超音波」をキーワードに広い分野で,各種波動を利用したデバイス,計測技術について研究を行っています。現在,基礎研究から実用化を目指したテーマまで,様々な企業・大学と共同研究を行っているテーマも多く,研究相談等お声掛け頂けますと幸いです。
デバイス班
デバイス班では,超音波や光を利用した各種センサ,アクチュエータ,デバイスの開発を行っています。例えば音響放射力によって人間の眼の水晶体の様に自身の形状が変化して焦点距離を変化可能な光学レンズの様なアクチュエータや,超音波による非接触マニピュレーション技術の開発を行っており,バイオテクノロジー分野への応用を目指しています。その他熱と音の相互エネルギー変換作用である熱音響現象を利用した熱音響システムなどの開発も行っています。
- 超音波式可変焦点レンズ
- 熱音響システム
- 超音波による微小物体の非接触搬送
- 掃流砂の粒径判別を目的とした圧電センサシステム
バイオ班
バイオ班では,主に超音波が生体に与える影響について検討を行っており,DNAなど分子レベルから細胞・組織までのマクロレベルまでマルチスケールでの評価を行っています。特に強力集束超音波による治療(HIFU)時に使用されるような超音波パルスによって生体内に発生するキャビテーションが,DNAや各種細胞に与えるダメージについて定量的評価を行っています。またマイクロバブルと超音波を組み合わせた局所的な薬剤投与法(超音波ドラッグデリバリシステム)の開発を行っており,バブルの作製技術の開発やその音響特性の評価,バブルの振動が細胞に与える影響について検討を行っています。
- 超音波ドラッグデリバリシステム用マイクロバブルの開発
- 音響キャビテーション発生に伴うメダカ胚への影響
計測班
血流によって生じる頸動脈皮膚表面上に発生する変位(脈波)を圧電センサで測定することにより,血管壁の硬さ評価を行っています。血管壁挙動に関する物理モデルによる数値計算,血管ファントムを用いたin vitro実験,被験者によるin vivo計測など,国内外の大学・病院と共同研究による様々な方面からのアプローチを行っています。これらの研究成果を活かし,将来的には動脈硬化性疾患を未然に防ぐことを目的とした,家庭内で使用可能な血管年齢評価装置の開発を目指しています。
- 圧電センサを用いた頸動脈波の測定
骨班
骨の超音波計測に関する研究は,当研究室において大谷先生と当時博士課程学生の細川篤氏(現在明石高専)が,骨中を伝搬する超音波が高速波・低速波に分離することを発見して以来,世界の研究をリードしてきています。手首の骨(橈骨)中に超音波パルスを伝搬させると,皮質骨や海綿骨の骨梁を伝搬する高速波と,骨髄などその他の部分を伝搬する低速波の2波に分離して伝搬します。この2波を時間領域・周波数領域で解析することにより,骨密度や骨質などを定量的に評価する手法について検討しています。また,時間領域有限差分法(FDTD)による数値シミュレーションによる現象把握も行ってます。これらの研究成果を元に,産学連携によって応用電機(株)より超音波骨密度測定装置(LD-100)が開発され,骨密度計測技術発展の一助となっています。最近では超音波照射によって骨中に発生する誘発電位,すなわち骨の圧電性についても研究しており,これらの知見が今後超音波による骨折治療技術のメカニズム解明に繋がることを期待しています。
- 超音波照射による骨の圧電特性の評価
- FDTDによる骨中の超音波伝搬シミュレーション
- Brillouin光散乱法による骨の局所的音速評価